説明

酸素濃縮器システム並びにタブレット端末及び酸素濃縮器

【課題】酸素濃縮器の設定完了及びエラー発生を、患者の移動範囲内のいずれの場所においても確認できる。
【解決手段】酸素濃縮器システムにおいて、遠隔操作装置が入力機能と表示機能を備えたタッチパネルを有するタブレット端末であり、酸素濃縮器及びタブレット端末がBluetooth規格による近距離無線通信手段をそれぞれ備え、タブレット端末は、タッチパネルに入力された酸素濃縮器に対する設定情報を前記酸素濃縮器に送信する手段と、酸素濃縮器において設定情報による設定が完了したことを示す設定完了情報を前記酸素濃縮器から受信する手段と、設定完了情報の受信に応じてタッチパネルに設定完了の表示を行う手段と、を有し、酸素濃縮器は、タブレット端末から設定情報を受信する手段と、設定完了情報を前記タブレット端末に送信する手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、在宅酸素療法に用いる酸素濃縮器及びこれと無線通信を行う遠隔操作装置であるタブレット端末を備えたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、在宅酸素療法に用いる酸素濃縮器が知られている。酸素濃縮器の一例では、コンプレッサーにより室内空気を吸気して吸着筒に加圧供給し、吸着筒内の吸着剤が空気中の窒素を吸着分離し、酸素濃縮ガスを得る。酸素濃縮ガスは、加湿器により加湿され、延長チューブを介して、患者の装着する鼻カニューラへ供給される。
【0003】
使用時には、医師の処方に従った流量及び吸入時間を設定する。酸素濃縮器にはこれらを設定するための操作部が設けられている。酸素濃縮器の動作中、種々のエラーが発生する可能性がある。例えば、流量異常、酸素濃度異常、加湿器装着不良、警報用バッテリー電圧低下、コンプレッサー異常、電源遮断(停電)、装置異常等である。これらのエラーが発生した場合、所定のセンサにより検知され、アラーム等の警報が発せられかつ点滅等のエラー表示が行われる。
【0004】
また、酸素濃縮器と有線接続された端末装置を備えたシステムもある。端末装置の操作により酸素濃縮器の動作を設定することができる。
【0005】
さらに特許文献1には、いわゆるリモコンと呼ばれる無線遠隔操作装置により酸素濃縮器の動作を設定するシステムが開示されている。このリモコンは赤外線リモコンであり、一般的には一方向通信である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−68569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の酸素濃縮器またはその遠隔操作装置も含めた酸素濃縮器システムには次のような問題点がある。
酸素濃縮器と有線接続されたパソコン等の固定型遠隔操作装置は携帯困難であるため、設定したり動作状況表示を確認したりする場所が限られる。通常、在宅酸素療法を行っている患者は、例えば自宅の1つの部屋に酸素濃縮器を設置しておき、自宅内の各部屋に移動できる長さの延長チューブを介して鼻カニューラを装着し、様々な場所に移動しながら生活を送っている。エラーが発生したとき、酸素濃縮器及び固定型遠隔操作装置から警報が発せられても、屋内の別の場所にいる患者はそれに気付かないおそれもある。
【0008】
また、患者がエラーに気付かない場合を考慮して、エラー発生時には常に遠隔操作装置から外部機関(主治医や機器管理者等)に自動的に通知されるようにすると、患者自身で簡単に復旧できる程度のエラー(例えば延長チューブの潰れ等)であっても外部機関は患者に連絡をとって注意を促したり、患者宅に急行したりしなければならず、労力や費用の負担が大きくなる。
【0009】
また、遠隔操作装置が一方向無線通信のリモコンの場合、リモコンを用いて設定した後に、実際に酸素濃縮器において正常に設定が完了したことを、手元のリモコンで確認することができない。
【0010】
さらに赤外線通信の範囲は、たかだか1つの部屋内に限られるため、酸素濃縮器を設置した部屋でなければ設定ができない。
【0011】
またさらに、患者にとって操作容易で表示が分かり易い遠隔操作装置は、未だ提示されていないのが現状である。
【0012】
以上の問題点に鑑み本発明は、酸素濃縮器の設定完了及びエラー発生を、患者の移動範囲内のいずれの場所においても確認することができる遠隔操作装置を提供することを目的とする。さらに、操作容易で表示が分かり易い遠隔操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の構成を提供する。
本発明による酸素濃縮器システムは、在宅酸素療法に用いる酸素濃縮器及び前記酸素濃縮器と無線通信を行う遠隔操作装置を備えた酸素濃縮器システムにおいて、前記遠隔操作装置が入力機能と表示機能を備えたタッチパネルを有するタブレット端末であり、前記酸素濃縮器及び前記タブレット端末が互いに送受信を行うためのBluetooth規格による近距離無線通信手段をそれぞれ備え、前記タブレット端末は、前記タッチパネルに入力された前記酸素濃縮器に対する設定情報を前記酸素濃縮器に送信する手段と、前記酸素濃縮器において前記設定情報による設定が完了したことを示す設定完了情報を前記酸素濃縮器から受信する手段と、前記設定完了情報の受信に応じて前記タッチパネルに設定完了の表示を行う手段と、を有し、前記酸素濃縮器は、前記タブレット端末から前記設定情報を受信する手段と、前記設定完了情報を前記タブレット端末に送信する手段と、を有することを特徴とする。
【0014】
上記の酸素濃縮器システムにおいて、前記酸素濃縮器は、エラー種類とエラーコードを対応づけて予め保存したエラーコードデータベースと、酸素濃縮器の動作におけるエラーの発生及びエラー種類を検知するセンサ手段と、前記センサ手段がエラーを検知したことに応じて前記エラーコードデータベースを参照することにより検知されたエラー種類に該当するエラーコードを取得する手段と、取得したエラーコードを含む動作エラー発生情報を前記タブレット端末に送信する手段と、をさらに有し、前記タブレット端末は、エラーコードとエラー対策情報を対応づけて予め保存したエラー対策データベースと、前記動作エラー発生情報を受信したことに応じて前記エラー対策データベースを参照することにより受信したエラーコードに該当するエラー対策情報を取得する手段と、取得したエラー対策情報を含むエラー通知情報を前記タッチパネルに表示する手段と、をさらに有することが好適である。
【0015】
上記の酸素濃縮器システムにおいて、前記酸素濃縮器は、前記タブレット端末との通信エラーを検知する通信エラー検知手段と、前記通信エラー検知手段が通信エラーを検知したことに応じて前記酸素濃縮器にて警報を発する警報手段と、前記通信エラーを検知したことに応じて前記酸素濃縮器にて通信エラー発生を示す表示を行う表示手段と、をさらに有することが好適である。
【0016】
上記の酸素濃縮器システムにおいて、前記タブレット端末は、前記酸素濃縮器との通信エラーを検知する通信エラー検知手段と、前記通信エラー検知手段が通信エラーを検知したことに応じて前記タブレット端末にて警報を発する警報手段と、前記通信エラーを検知したことに応じて前記タブレット端末にて通信エラー発生を示す表示を行う表示手段と、をさらに有することが好適である、
【0017】
上記の酸素濃縮器システムにおいて、前記酸素濃縮器は、動作状況を示す1又は複数の値を一定時間毎に計測する計測手段と、前記計測手段により計測された計測データを前記タブレット端末に送信する手段と、をさらに有し、前記タブレット端末は、受信した前記計測データを動作履歴データベースに格納する手段と、前記タッチパネルに入力された動作履歴閲覧要求に応じて前記動作履歴データベースを参照し該当する動作履歴を取得する手段と、取得した動作履歴を前記タッチパネルに表示する手段と、をさらに有することが、好適である。
【0018】
本発明によるタブレット端末は、上記の酸素濃縮器システムにおけるものである。
【0019】
本発明による酸素濃縮器は、上記の酸素濃縮器システムにおけるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明による酸素濃縮器システムは、酸素濃縮器とタブレット端末がBluetooth規格による近距離無線通信手段を備えることにより、一般的な長さの延長チューブの到達範囲で規定される患者の移動範囲内のいずれの場所においてもタブレット端末と酸素濃縮器との間の通信が可能となる。
【0021】
患者がタブレット端末に酸素濃縮器の設定情報を入力すると、設定情報が酸素濃縮器に送信され、そして酸素濃縮器において設定が完了すると、酸素濃縮器から設定完了情報がタブレット端末に送信され、表示される。これにより、確実に設定が行われたことを確認できる。
【0022】
酸素濃縮器の動作に何らかのエラーが発生した場合、タブレット端末にエラー対策情報を含むエラー通知情報が表示されるので、患者が酸素濃縮器から離れているとき(例えば別の部屋や別の階にいるとき)であっても、酸素濃縮器のエラー及びその対策を即座に知ることができる。
【0023】
酸素濃縮器とタブレット端末との間に通信エラーが発生した場合、酸素濃縮器又はタブレット端末のいずれか(又は双方)において通信エラーを検知し、警報を発しかつ通信エラーを示す表示を行うので、患者はすぐに対処できる。
【0024】
酸素濃縮器の動作状況を一定時間毎に計測し、計測データをタブレット端末に送信し、タブレット端末はそれを動作履歴データベースに保存するので、タブレット端末においていつでも動作履歴を確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による酸素濃縮器システムの全体構成を概略的かつ模式的に示した構成図である。
【図2】タブレット端末から酸素濃縮器の設定を行う処理の一例を示すシーケンス図である。
【図3】酸素濃縮器の動作エラー時の処理の一例を示すシーケンス図である。
【図4】酸素濃縮器における通信エラー検出時の処理の一例を示すシーケンス図である。
【図5】酸素濃縮器の動作履歴をタブレット端末に保存する処理の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(1)全体構成
図1は、本発明による酸素濃縮器システムを含む在宅酸素療法システムの一実施例の全体構成を概略的かつ模式的に示した構成図である。
【0027】
酸素濃縮器システムは、患者の自宅等で用いられるタブレット端末1及び酸素濃縮器2から構成される。酸素濃縮器2は、例えば、患者の自宅の一室に設置される。タブレット端末1は、患者の近傍に置かれ、患者の自宅内での移動に伴って持ち運ばれることが望ましい。
【0028】
在宅酸素療法システムは、患者の自宅に設置される酸素濃縮器システムに加え、酸素濃縮器システムのタブレット端末1と外部ネットワーク3を介して接続される管理サーバ4と、外部ネットワーク3に接続可能な主治医等端末5及びコールセンター端末6を備えている。管理サーバ4は、酸素濃縮器管理者により設置された在宅療法システムの主幹サーバである。外部ネットワーク3は、インターネットや公衆回線等の種々のネットワークを総合的に表したものである。
【0029】
主治医等端末5は、主治医や酸素濃縮器管理者の各担当等が使用するパーソナルコンピュータ等の端末であり、管理サーバ4にアクセスして情報を送受信したり、メールサーバ機能をもつ管理サーバ4から電子メールを受信したりすることができる。
【0030】
コールセンター端末6は、例えば、患者が機器や治療に関して相談する機関が設置したコールセンターにおける通話用端末である。
【0031】
酸素濃縮器2は、酸素濃縮機能として、コンプレッサーにより室内空気を吸気して吸着筒に加圧供給する吸気部22と、吸着筒内の吸着剤により空気中の窒素を吸着分離する窒素分離部23と、窒素分離された後の酸素濃縮ガスの流量を調節する流量調節部24と、酸素濃縮ガスを加湿する加湿部24と、酸素取出部25とを備える。酸素濃縮ガスは、酸素取出部25に接続された延長チューブ26を介して、患者の装着する鼻カニューラ27へ供給される。延長チューブ26の長さは、患者の自宅内での移動範囲をカバーできるように設定されている。
【0032】
酸素濃縮器2は、制御機能として、適宜のプログラムを実行するCPUを備えた制御部20を有する。制御部20は、センサ部20A、入力部20B、表示部20C、警報部20D、近距離無線通信部20E及びエラーコードデータベース(エラーコードDB)20Fの各機能を制御する。
【0033】
センサ部20Aは、各種センサ又は計測器等を有し、酸素濃縮器2の動作状況をモニタリングする。正常値や正常範囲以外の動作すなわちエラーが発生したことを検知し、エラーの種類を特定する。好適には、動作状況を示す値を一定時間毎に計測し、計測値を適宜の記憶部(図示せず)に記憶する。モニタリング対象は、流量、酸素濃度、加湿器着脱状況、警報用バッテリー電圧、コンプレッサー圧力、電源遮断(停電)等である。
【0034】
入力部20Bは、酸素濃縮器2の本体筐体上に設けられた入力操作ボタン及び入力信号処理機能を有する。これにより、酸素濃縮器2のオンオフ及び動作の設定(初期設定及び途中変更を含む)を行う。
【0035】
表示部20Cは、酸素濃縮器2の本体筐体上に設けられたLED表示素子や液晶表示素子及び表示信号処理機能を有する。
【0036】
警報部20Dは、スピーカー等の音響信号発生器及び音響信号処理機能を有する。
【0037】
近距離無線通信部は、Bluetooth規格による無線通信機能を有する。例えば、制御部20から出力される信号をBluetooth規格の無線通信信号に変換する変換器により実現される。通信距離(電波強度)は、在宅酸素療法を行う患者の一般的な移動範囲を想定すると、約10〜30m程度に設定することが好ましい。
【0038】
エラーコードDB20Fは、エラーの種類とエラーコードを対応づけて予め保存している。例えば、表1のようなデータ構成とする。「エラーコード」は各エラーを固有に識別するコードである。「エラー内容」はエラーの種類を示す。
【0039】
【表1】

【0040】
タブレット端末1は、平板状の筐体の片面上に表示機能と入力機能を兼ねるタッチパネルを設けた携帯可能なコンピュータ端末装置である。所望するアプリケーションを導入することにより、当該アプリケーションに特化した装置として使用可能となる。本発明では、在宅酸素療法を主とした在宅医療のためのアプリケーションを導入する。在宅医療アプリケーションの主たる機能は、酸素濃縮器2の管理機能であり、酸素濃縮器管理機能制御部10により制御される。補助的機能として、患者のための種々のサービスを提供する患者管理機能があり、患者管理機能制御部11により制御される。
【0041】
酸素濃縮器管理機能制御部10は、入力部10A、表示部10B、警報部10C、動作履歴保存部10D、サーバ通信部10E、近距離無線通信部10F、エラー対策データベース(エラー対策DB)10G及び動作履歴データベース(動作履歴DB)10Hの各機能を制御する。
【0042】
入力部10A及び表示部10Bは、タッチパネルと連携し、表示部10Bによりタッチパネル上に所定の画面を表示する。表示される画面内には、表示専用部分と、指でタッチすることで入力操作として解釈される部分とがある。入力部10Aは、入力操作の処理を行う。
【0043】
警報部10Cは、スピーカー等の音響信号発生器及び音響信号処理機能を有する。
【0044】
動作履歴保存部10Dは、酸素濃縮器2から受信した動作状況を示す計測データを、動作履歴DB10Hに格納する処理を行う。
【0045】
サーバ通信部10Eは、酸素濃縮器管理機能に関連する情報を、外部ネットワーク3を介して管理サーバ4と送受信する処理を行う。
【0046】
近距離無線通信部10Fは、酸素濃縮器2の近距離無線通信部20EのBluetooth規格に対応した通信機能を有し、酸素濃縮器2との間で送受信を行う。
【0047】
エラー対策DB10Gは、エラーの種類と当該エラー対策とを対応づけて予め保存している。例えば、表2のようなデータ構成とする。「エラーコード」は、上述の表1と同じものであり、「エラー内容」はエラーの種類を示す。「エラー対策」は、エラー発生時にタッチパネルに表示されるエラー通知情報に含まれるエラー対策情報の内容を示す。エラー対策情報の具体的な表示としては、例えば、患者等(看護・介護者を含む)により解決可能である場合はその手順を表示する。その場合、文字のみでなくイラストや動画も利用して分かり易く表示することが好ましい。また例えば、患者等では解決不可能であって主治医等に自動的に通報した場合は、主治医等への通報を無事完了した旨を表示する。
【0048】
【表2】

【0049】
動作履歴DB10Hは、酸素濃縮器2から受信した動作状況を示す計測データを保存する。例えば、表3のようなデータ構成とする。「計測時」は、計測した年月日時分秒を示す。「運転/停止」は酸素濃縮器2のガス供給のオンオフ状態を示す。「流量」及び「酸素濃度」等は、各動作パラメータの計測データである。
【0050】
【表3】

【0051】
患者管理機能制御部11は、動的コンテンツ部11A、静的コンテンツ部11B、サーバ通信部11C及び患者管理機能関連データベース(患者管理機能関連DB)11Dを制御する。動的コンテンツ部11A及び静的コンテンツ部11Bは、それぞれタッチパネルに対する入力機能及び表示機能を含む。
【0052】
動的コンテンツ部11Aは、患者がタッチパネルから情報を入力したり、管理サーバ4により定期的に更新されたりすることが可能な各種コンテンツを含む。「療養日誌」、「カレンダー」、「外来往診申込」、「ボンベ注文」、「コールセンター通信」、「災害時対応」等があるが、これらは一例である。
【0053】
例えば、「療養日誌」コンテンツは、患者が入力した毎日の生活、食事、服薬等の状況を適宜の記憶部(図示せず)に保存する。この療養日誌を管理サーバ4にアップロードすると、管理サーバ4はこれを適宜のデータベースに格納する。主治医は、主治医等端末5から管理サーバ4にアクセスし、療養日誌を閲覧して治療に役立てることができる。あるいは、管理サーバ4のメールサーバ機能により、療養日誌を電子メールとして主治医等端末5に送信してもよい。
【0054】
また例えば、「カレンダー」コンテンツには、主治医の診察日等のスケジュールを入力することができる。入力は、患者がタッチパネルから行ってもよいが、主治医が診察日等を決定して管理サーバ4にアップロードすることにより、管理サーバ4からタブレット端末1に自動的に送信され、「カレンダー」に書き込まれるようにしてもよい。
【0055】
「外来往診申込」コンテンツでは、受診日や往診日の予約を、また「ボンベ注文」コンテンツでは、酸素ボンベの注文を管理サーバ4経由で行うことができる。
【0056】
「コールセンター通信」コンテンツでは、患者がコールセンターに相談したい場合、自動的にコールセンター端末6に接続し、タブレット端末1とコールセンター端末6の間で通話することができる。タブレット端末1には通話機能も備わっているものとする。
【0057】
「災害時対応」コンテンツでは、災害発生等における避難時に、管理サーバ4と通信することにより、患者の安否確認を送信し、また携帯し必要とする酸素ボンベ本数を確認することができる。
【0058】
静的コンテンツ部11Bは、患者管理機能関連DB11Dに予め格納されている酸素濃縮器2の取扱説明書、手引き、在宅酸素療法に関する種々の情報等を、閲覧要求の入力に応じてタッチパネル上に表示させる。
【0059】
サーバ通信部11Cは、患者管理機能に関連する情報を、外部ネットワーク3を介して管理サーバ4と送受信する処理を行う。
【0060】
患者管理機能関連DB11Dは、患者管理機能に関連する種々の情報をデータベース化して格納している。
【0061】
(2)動作設定時の処理
図2は、タブレット端末1から酸素濃縮器2の設定を行う処理の一例を示すシーケンス図である。以下の説明では、図1中の符号を参照する場合がある(図3〜図6も同様)。
・ステップS21:タブレット端末1のタッチパネルにより入力部10Aに設定情報を入力する。酸素濃縮器2上の入力部20Bにおいて入力可能な全ての設定は、タブレット端末1のタッチパネルからも入力可能とする。設定情報には、例えば、酸素濃縮器の運転/停止、酸素濃縮ガスの流量/供給時間の設定が含まれる。ここでの設定は、動作開始前に行う初期設定と、動作中に変更する変更設定の双方の意味を含む。
【0062】
また、安静時用、労作時用、就寝時用など、異なる流量や供給時間からなる複数の設定パターンを所定の記憶部に予め記憶しておき、タッチパネルに表示された「安静時」、「労作時」、「就寝時」等の名称のみを選択すれば、記憶された設定パターンが読み出されるようにしてもよい。
【0063】
またさらに、酸素濃縮器2上の入力部20Bからの入力を受け付けないようにロックするための設定情報を、タブレット端末1から送れるようにしてもよい。
【0064】
・ステップS22:酸素濃縮器管理機能制御部10は、入力された設定情報を近距離無線通信部10Fを介して酸素濃縮器2へ送信する。酸素濃縮器2は、近距離無線通信部20Eにて設定情報を受信する。
・ステップS23:設定情報は、酸素濃縮器2の制御部20へ送られる。
【0065】
・ステップS24:制御部20は、設定情報に応じて酸素濃縮器2の設定を完了する。
・ステップS25:制御部20は、設定完了を示す設定完了情報を近距離無線通信部20Eへ出力する。
・ステップS26:近距離無線通信部20Eは、設定完了情報をタブレット端末1へ送信する。
【0066】
・ステップS27:タブレット端末1の酸素濃縮器管理機能制御部10は、設定完了情報の受信に応じて表示部10Bに対しタッチパネル上に設定完了の表示を行わせる。設定完了の表示は、単に酸素濃縮器2へ設定情報を送信したのみでなく、酸素濃縮器2において確実に設定が完了したことを意味する。
【0067】
(3)動作エラー時の処理
図3は、酸素濃縮器2の動作エラー時の処理の一例を示すシーケンス図である。
・ステップS31:酸素濃縮器2のセンサ部20Aが動作エラーを検知し、制御部20に通知する。例えば、センサが異常信号を検知したとき、または計測値が正常範囲を逸脱したとき、動作エラーと判断する。同時に、検知したセンサの種類、検知箇所又は計測値等に基づいてエラーの種類を特定する。動作エラーとしては、流量異常、酸素濃度異常、加湿器装着不良、加湿器水量不足、警報用バッテリー電圧低下、コンプレッサー異常、電源遮断(停電)、その他の装置異常等がある。
【0068】
・ステップS32、S33:制御部20は、エラーコードDB20Eを参照することにより、エラー種類に対応するエラーコードを取得する。
【0069】
・ステップS331:取得したエラーコードを含む動作エラー発生情報を近距離無線通信部20Eに出力する。近距離無線通信部20Eは、動作エラー発生情報をタブレット端末1へ送信する。
・ステップS332、S333:タブレット端末1の酸素濃縮器管理機能制御部10は、動作エラー発生情報の受信に応じてエラー対策DB10Gを参照することにより、受信したエラーコードに対応するエラー対策情報を取得する。
【0070】
・ステップS334:酸素濃縮器管理機能制御部10は、表示部10Bに対しタッチパネル上にエラー対策情報を含むエラー通知情報を表示させる。タッチパネルには、エラーの発生及びエラーの種類に加えてエラー対策情報が表示される。このとき、そのエラー対策が患者等によりその場で実行可能なものかそれ以外のものかを判断できるように、異なるエラー表示色を用いるなど、明確にかつ分かり易く表示する。患者等がその場で実行可能なエラー対策である場合は、その実行によりエラーは解決され、正常に復帰する。患者等が実行可能なエラー対策については、文字のみでなくイラストや動画等も用いて表示することが好ましい。なお、エラー対策が患者等により実行不可能な場合にも、エラー対策情報(例えば「主治医に連絡しました」等)は表示される。患者に安心感を与えるためである。
・ステップS335:さらに、警報作動が設定されているエラー種類の場合は、警報部10Cが警報を発する。
【0071】
・ステップS335:エラー対策が患者等により実行不可能な場合は、サーバ通信部10Eにより管理サーバ4へ自動アクセスし、エラー通知情報を送信する。管理サーバ4は、エラー通知情報を受信すると、エラー種類に応じて所定の対応を実行する。
【0072】
・ステップS34、S35:一方、酸素濃縮器2の本体筐体上においても、警報部20Dに警報を出させ、表示部20Cにエラー発生表示を行わせる。
【0073】
(4)通信エラー時の処理
図4は、酸素濃縮器2における通信エラー検出時の処理の一例を示すシーケンス図である。酸素濃縮器2とタブレット端末1は、Bluetooth規格により互いの間でのみ通信するように初期設定され、常時、互いを認識する通信を行っている。従って、タブレット端末1が、酸素濃縮器2から離れすぎた場合、酸素濃縮器2は、タブレット端末1を認識できなくなる。
【0074】
・ステップS41:近距離無線通信部2Eは、タブレット端末1を認識できなくなったとき、制御部20に通信エラーを通知する。
・ステップS42:制御部20は、警報部20Dに対し通信エラーの発生を知らせる警報を出させる。
・ステップS43:同時に制御部20は、表示部20Cに対し通信エラーの発生を知らせる表示を行わせる。
【0075】
図示しないが、図4に示した通信エラー検出時の処理は、タブレット端末1においても同様に実行可能である。タブレット端末1もまた、酸素濃縮器2を認識できなくなったとき、通信エラーの発生を示す警報を発し、表示を行うことができる。
【0076】
(5)動作履歴の保存及び閲覧の処理
図5は、酸素濃縮器2の動作履歴をタブレット端末1に保存する処理の一例を示すシーケンス図である。
・ステップS51:酸素濃縮器2のセンサ部20Aにて、一定時間毎に動作状況を示す1又は複数の動作パラメータの値を計測する。動作パラメータは、例えば、ガス供給のオンオフ状態、流量、酸素濃度等である。
・ステップS52:制御部20は、計測データを近距離無線通信部20Eを介してタブレット端末1に送信する。この送信は、逐次行ってもよく、あるいは、一定量の計測データをまとめて行ってもよい。
【0077】
・ステップS53:タブレット端末1の酸素濃縮器管理機能制御部10は、動作履歴保存部10Dに対し、受信した計測データを動作履歴DB10Hに保存させる。
・ステップS54:酸素濃縮器管理機能制御部10は、受信した計測データが正常である場合は、表示部10Bに対して正常動作中であること示す表示を行わせる。例えば、タッチパネル上の帯状領域内において点滅状態が左右方向に移動するような動画像により、流量が正常であることを示す。このような表示は、患者に安心感を与える。
【0078】
・ステップS55:患者等が、過去の動作履歴を閲覧したい場合、動作履歴の閲覧要求がタッチパネルから入力部10Aに入力される。このとき、閲覧条件も入力される。例えば、どの動作パラメータの履歴を閲覧したいか、どの期間の履歴を閲覧したいか、等である。
・ステップS56、S57:酸素濃縮器管理機能制御部10は、動作履歴DB10Hを参照することにより、閲覧条件に該当する動作履歴を取得する。
【0079】
・ステップS58:酸素濃縮器管理機能制御部10は、表示部10Bに対しタッチパネル上に動作履歴を表示させる。
【0080】
(6)その他の処理
タブレット端末1のその他の機能として、酸素濃縮器2の動作エラーが発生したとき、酸素濃縮器管理機能制御部10は、予め登録されている患者の家族の携帯電話番号又は携帯電話メールアドレスに対し、音声又は文字によるエラー通知情報を自動送信するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1:タブレット端末、10:酸素濃縮器管理機能制御部、10A:入力部、10B:表示部、10C:警報部、10D:動作履歴保存部、10E:サーバ通信部、10F:近距離無線通信部、10G:エラー対策DB、10H:動作履歴DB、11:患者管理機能制御部、11A:動的コンテンツ部、11B:静的コンテンツ部、11C:サーバ通信部、11D:患者管理機能関連DB
2:酸素濃縮器、20:制御部、20A:センサ部、20B:入力部、20C:表示部、20D:警報部、20E:近距離無線通信部、20F:エラーコードDB、22:吸気部、23:窒素分離部、24:流力調節部、25:酸素取出部、26:延長チューブ、27:鼻カニューラ
3:外部ネットワーク
4:管理サーバ
5:主治医等端末
6:コールセンター端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
在宅酸素療法に用いる酸素濃縮器及び前記酸素濃縮器と無線通信を行う遠隔操作装置を備えた酸素濃縮器システムにおいて、
前記遠隔操作装置が入力機能と表示機能を備えたタッチパネルを有するタブレット端末であり、
前記酸素濃縮器及び前記タブレット端末が互いに送受信を行うためのBluetooth規格による近距離無線通信手段をそれぞれ備え、
前記タブレット端末は、前記タッチパネルに入力された前記酸素濃縮器に対する設定情報を前記酸素濃縮器に送信する手段と、前記酸素濃縮器において前記設定情報による設定が完了したことを示す設定完了情報を前記酸素濃縮器から受信する手段と、前記設定完了情報の受信に応じて前記タッチパネルに設定完了の表示を行う手段と、を有し、
前記酸素濃縮器は、前記タブレット端末から前記設定情報を受信する手段と、前記設定完了情報を前記タブレット端末に送信する手段と、を有することを特徴とする酸素濃縮器システム。
【請求項2】
前記酸素濃縮器は、エラー種類とエラーコードを対応づけて予め保存したエラーコードデータベースと、酸素濃縮器の動作におけるエラーの発生及びエラー種類を検知するセンサ手段と、前記センサ手段がエラーを検知したことに応じて前記エラーコードデータベースを参照することにより検知されたエラー種類に該当するエラーコードを取得する手段と、取得したエラーコードを含む動作エラー発生情報を前記タブレット端末に送信する手段と、をさらに有し、
前記タブレット端末は、エラーコードとエラー対策情報を対応づけて予め保存したエラー対策データベースと、前記動作エラー発生情報を受信したことに応じて前記エラー対策データベースを参照することにより受信したエラーコードに該当するエラー対策情報を取得する手段と、取得したエラー対策情報を含むエラー通知情報を前記タッチパネルに表示する手段と、をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の酸素濃縮器システム。
【請求項3】
前記酸素濃縮器は、前記タブレット端末との通信エラーを検知する通信エラー検知手段と、前記通信エラー検知手段が通信エラーを検知したことに応じて前記酸素濃縮器にて警報を発する警報手段と、前記通信エラーを検知したことに応じて前記酸素濃縮器にて通信エラー発生を示す表示を行う表示手段と、をさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載の酸素濃縮器システム。
【請求項4】
前記タブレット端末は、前記酸素濃縮器との通信エラーを検知する通信エラー検知手段と、前記通信エラー検知手段が通信エラーを検知したことに応じて前記タブレット端末にて警報を発する警報手段と、前記通信エラーを検知したことに応じて前記タブレット端末にて通信エラー発生を示す表示を行う表示手段と、をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の酸素濃縮器システム。
【請求項5】
前記酸素濃縮器は、動作状況を示す1又は複数の値を一定時間毎に計測する計測手段と、前記計測手段により計測された計測データを前記タブレット端末に送信する手段と、をさらに有し、
前記タブレット端末は、受信した前記計測データを動作履歴データベースに格納する手段と、前記タッチパネルに入力された動作履歴閲覧要求に応じて前記動作履歴データベースを参照し該当する動作履歴を取得する手段と、取得した動作履歴を前記タッチパネルに表示する手段と、をさらに有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の酸素濃縮器システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの酸素濃縮器システムにおけるタブレット端末。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかの酸素濃縮器システムにおける酸素濃縮器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−249856(P2012−249856A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125382(P2011−125382)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(595123276)株式会社星医療酸器 (1)