説明

酸素濃縮器

【課題】酸素濃縮器が正常な状態で使用されていないこと、特に吸気口等が閉塞していることを使用者に早期に報知できる安全性の高い酸素濃縮器を提供する。
【解決手段】原料空気を導入する空気取入部と、空気取入部を介して導入された原料空気から圧縮空気を生成する空気圧縮部と、空気圧縮部で生成された圧縮空気から窒素を分離して高濃度酸素を生成するPSA部と、PSA部により生成された高濃度酸素を酸素出口から放出する酸素供給部と、吸気口から外気を導入して排気口に向けて送風することにより空気圧縮部を冷却する送風部と、を備えた酸素濃縮器において、吸気口又は排気口が閉塞しているか否かを監視し、吸気口又は排気口が閉塞していると判定した場合に、その旨を報知部から報知させる(閉塞状態監視部)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を導入して高濃度の酸素を放出する酸素濃縮器に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素濃縮器は主として、呼吸器疾患の患者が在宅で酸素を吸入する在宅酸素療法(HOT:home oxygen therapy)において使用されるもので、PSA式と酸素富化膜式が知られている。
図1は、一般的なPSA式の酸素濃縮器の概略構成を示す図である。図1に示すように、PSA式の酸素濃縮器1は、空気取入部10、空気圧縮部20、PSA部30、酸素貯留部40、及び酸素供給部50を備えている。
【0003】
酸素濃縮器1において、空気取入部10から導入された原料空気は、空気圧縮部20で圧縮されて圧縮空気となり、この圧縮空気がPSA部30に送出される。
PSA部30は、酸素より窒素を早く吸着する性質を有するゼオライト等の吸着剤が充填された2本のシーブベッド(吸着塔)33A、33Bを有している。シーブベッド33A、33Bに圧縮空気が送り込まれて加圧状態になると、窒素及び水分が吸着されて酸素だけが通過し、高濃度酸素が生成される。一方、窒素を吸着したシーブベッド33A、33Bが減圧状態(例えば大気圧)に戻されると、吸着していた窒素が脱離して放出され、シーブベッド33A、33Bの吸着能力が再生される。つまり、PSA部30において、2本のシーブベッド33A、33Bで交互に加圧減圧を繰り返すことにより、連続して高濃度酸素を生成することができる。
【0004】
PSA部30で生成された高濃度酸素は、一旦酸素貯留部40の製品タンク41に貯留された後、圧力調整部(圧力レギュレータ)42により一定圧力に調整される。そして、高濃度酸素は酸素供給部50から一定流量で放出され、当該酸素濃縮器1に接続された鼻カニューラや酸素マスク等を介して使用者(患者)の体内に供給される。
【0005】
上述した酸素濃縮器1においては、原料空気は空気圧縮部20で圧縮されることにより温度上昇するため、そのままではPSA部30における窒素の吸着効率が低下する。そこで、空気圧縮部20で生成された圧縮空気は、空気圧縮部20の下流に接続された冷却パイプを通過することにより冷却されるようになっている。また、空気圧縮部20及び冷却パイプの近傍には、これらを冷却するための送風部(例えば冷却ブロワ)70が配設される(例えば特許文献1、2)。
具体的には、特許文献1には供給する酸素流量に応じて必要風量を設定し、冷却ブロワの回転数(駆動モータを回転させるための動力)を制御する技術が開示されている。特許文献2には周囲の環境温度に応じて必要風量を設定し、冷却ブロワの回転数を制御する技術が開示されている。また、一定の送風量(設定風量)を得るために、冷却ブロワの回転数を検出し、この検出結果をフィードバックして駆動モータの動力が制御される方式の冷却ブロワも知られている(例えばインバータ制御方式)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−537号公報
【特許文献2】特開2004−18313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、冷却ブロワにより吸気口から取り入れられた空気は、空気圧縮部に向けて送風され、排気口から排気される。そのため、吸気口や排気口が閉塞していると、冷却風が適切に循環されずに筐体内部の温度上昇を招く。例えば、吸気口又は排気口が壁面に近接する状態で酸素濃縮器が設置されていると、吸気口又は排気口が閉塞してしまう虞がある。
この場合、冷却ブロワに外気が導入されず、冷却ブロワを回転させる際の負荷が減少するため、冷却ブロワの回転数が上昇する。そして、回転数制御をしている冷却ブロワでは、電圧を低下させることにより回転数が一定となるように制御される。しかしながら、吸気口等の閉塞状態が改善されるわけではないので、筐体内部の温度は次第に上昇することとなる。
【0008】
このように、従来の酸素濃縮器では、吸気口等の閉塞を直接的に検出できる構成となっていないため、筐体内部の温度上昇に伴う動作異常(例えば酸素濃縮機能の低下)が発生する危険性が高くなる。言い換えると、筐体内部の温度上昇に基づいて吸気口等が閉塞していることを検出することは可能であるが、温度上昇に伴う動作異常の方が早く発生して警告がなされるため、実用的ではない。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、酸素濃縮器が正常な状態で使用されていないこと、特に吸気口等が閉塞していることを使用者に早期に報知できる安全性の高い酸素濃縮器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る酸素濃縮器は、原料空気を導入する空気取入部と、
前記空気取入部を介して導入された前記原料空気から圧縮空気を生成する空気圧縮部と、
前記空気圧縮部で生成された圧縮空気から窒素を分離して高濃度酸素を生成するPSA部と、
前記PSA部により生成された高濃度酸素を酸素出口から放出する酸素供給部と、
吸気口から外気を導入して排気口に向けて送風することにより前記空気圧縮部を冷却する送風部と、
前記吸気口又は前記排気口が閉塞しているか否かを監視し、前記吸気口又は前記排気口が閉塞していると判定した場合に、その旨を報知部から報知させる閉塞状態監視部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、送風部の閉塞状態を監視することにより、酸素濃縮器が正常な状態で使用されていないこと、特に吸気口等が閉塞していることを使用者に早期に報知することができる。したがって、筐体内部の温度上昇により酸素濃縮器の機能が低下する前に、使用者が設置状態等を改善できる、安全性に優れた酸素濃縮器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一般的なPSA式の酸素濃縮器の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る酸素濃縮器の配管系統の概略構成を示す図である。
【図3】実施の形態に係る酸素濃縮器の制御系統の概略構成を示す図である。
【図4】冷却ブロワの吸気口又は排気口の閉塞状態を監視するための閉塞状態監視処理の一例について示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図2は、本発明の一実施の形態に係る酸素濃縮器の配管系統の概略構成を示す図である。図2に示す酸素濃縮器1は、空気取入部10、空気圧縮部20、PSA部30、酸素貯留部40、酸素供給部50を備えたPSA式の酸素濃縮器である。
【0014】
空気取入部10は、原料空気となる外気を筐体内に取り入れる部分で、吸気フィルタ11、ヘパフィルタ12等を備えている。吸気フィルタ11は、筐体に設けられた空気取入口13を介して導入された原料空気からゴミや埃等の空中浮遊粒子を除去する。ヘパフィルタ12は、吸気フィルタ11により除去されなかった微細粒子を除去する。空気取入口13から導入された原料空気は、吸気フィルタ11、ヘパフィルタ12によって濾過され、空気圧縮部20に送出される。
【0015】
空気圧縮部20は、導入された原料空気を圧縮して圧縮空気を生成する、いわゆるコンプレッサである。空気圧縮部20の下流には、温度上昇した圧縮空気を冷却するために放熱効果に優れた冷却パイプ21が配管される。原料空気は空気圧縮部20で圧縮されることにより温度上昇しており、そのままではPSA部30における窒素の吸着効率が低下するため、冷却パイプ21を通過させることにより原料空気を冷却するようになっている。
空気圧縮部20で生成された圧縮空気は、冷却パイプ21において冷却され、PSA部30に送出される。
なお、空気圧縮部20の上流(ヘパフィルタ12の下流)には、空気圧縮部20の動作音に対して消音効果を発揮する膨張型消音器(サイレンサ)を配設するのが望ましい。
【0016】
空気圧縮部20及び冷却パイプ21の近傍には、これらを冷却するための冷却ブロワ70が配設される。冷却ブロワ70は、筐体に設けられた吸気口(図示略)から外気を吸引し、空気圧縮部20及び冷却パイプ21に向けて送風する。送風された冷却風は、筐体に設けられた排気口(図示略)から排気される。なお、冷却ブロワ70の吸気口として、前述の空気取入口13を共用してもよい。
冷却ブロワ70は、例えば筐体内部に設けられた温度センサ71(図3参照)による検出結果(環境温度)に基づいて、又は酸素センサ43による検出結果(酸素濃度)に基づいて、必要風量が設定される。具体的には、検出された環境温度が低い場合又は酸素濃度が高い場合には、空気圧縮部20等が効率よく冷却されていると判断できるので、必要風量が低く設定される。一方、検出された環境温度が高い場合又は酸素濃度が低い場合には、空気圧縮部20等の冷却が不足していると判断できるので、必要風量が高く設定される。
【0017】
冷却ブロワ70には、冷却ブロワ70の回転数を検出する回転センサ72が接続されている(図3参照)。回転センサ72による検出結果をフィードバックして冷却ブロワ70への供給電圧を変化させる(いわゆるインバータ制御)ことにより、冷却ブロワ70はほぼ一定の回転数で動作する。
例えば、冷却ブロワ70の吸気口が閉塞していると、冷却ブロワ70に外気が導入されず、冷却ブロワ70を回転させる際の負荷が減少するため、冷却ブロワ70の回転数が上昇する。この場合、冷却ブロワ70への供給電圧を低下させることにより、冷却ブロワ70の回転数が一定に保持される。つまり、一定電圧が供給されている状態で、冷却ブロワ70の回転数が上昇することに基づいて、冷却ブロワ70の吸気口又は排気口が閉塞していることを検知できる。
【0018】
PSA部30は、空気圧縮部20で生成された圧縮空気から窒素を分離して高濃度酸素を生成し、酸素貯留部40に送出する部分で、流路切換部31、排気サイレンサ32、シーブベッド(吸着塔)33A、33B、パージオリフィス34、均圧弁35、逆止弁36、36等を備えている。
【0019】
流路切換部31は、4つの切替弁SV1〜SV4を備えたマニホールド(多岐管)で構成され、空気圧縮部20で生成された圧縮空気をシーブベッド33A、33Bに交互に送出するとともに、シーブベッド33A、33Bを交互に大気圧に開放して窒素富化空気を排出させる。
具体的には、流路切換部31では、切替弁SV1が“開”、切替弁SV2が“閉”とされることにより、空気圧縮部20からシーブベッド33Aに向かう流路が開通される一方で、シーブベッド33Aから排気サイレンサ32に向かう流路が閉鎖される。同時に、流路切換部31では、切替弁SV3が“閉”、切替弁SV4が“開”とされることにより、空気圧縮部20からシーブベッド33Bに向かう流路が閉鎖される一方で、シーブベッド33Bから排気サイレンサ32に向かう流路が開通される。この場合、空気圧縮部20で生成された圧縮空気がシーブベッド33Aに送出され、シーブベッド33Bからは窒素富化空気が放出されて排気サイレンサ32を介して排気されることとなる。
また、切替弁SV1〜SV4が上記と逆の状態となっている場合は、空気圧縮部20で生成された圧縮空気がシーブベッド33Bに送出され、シーブベッド33Aからは窒素富化空気が放出されて排気サイレンサ32を介して排気されることとなる。切替弁SV1〜SV4の開閉状態は、例えば10秒間隔で切り替えられる。
【0020】
排気サイレンサ32は、酸素濃縮器1の筐体に設けられた排気口(図示略)に接続され、シーブベッド33A、33Bから放出された窒素富化空気を筐体の外部に排出する際の排気音を消音する。
【0021】
シーブベッド33A、33Bは、流路切換部31を介して送られてきた圧縮空気から窒素を分離し、高濃度酸素を生成する。シーブベッド33A、33Bには、酸素より窒素を早く吸着する性質を有するゼオライト等の吸着剤が充填されている。ゼオライトとは、結晶中に微細孔をもつアルミノ珪酸塩(例えばアルカリ土類金属を含む結晶性含水アルミノ珪酸塩)からなる多孔質材料であり、市販されている各種のゼオライトを使用することができる。
【0022】
シーブベッド33A、33Bは、流路切換部31によって空気圧縮部20からの流路が開通されているとき、圧縮空気が送り込まれて加圧状態となる。このとき、シーブベッド33A、33Bでは、窒素及び水分が吸着され、酸素だけが通過するため、高濃度酸素が生成される(吸着工程)。
シーブベッド33A、33Bで生成される高濃度酸素の濃度は、例えば90%程度に調整される。また、ゼオライトは窒素のみならず水分をも吸着するので、シーブベッド33A、33Bで生成される高濃度酸素は極めて乾燥した状態となる(例えば湿度0.1〜0.2%)。
【0023】
一方、シーブベッド33A、33Bは、流路切換部31によって排気サイレンサ32への流路が開通されているとき、大気圧に開放されて減圧状態となる。このとき、ゼオライトに吸着していた窒素及び水分が脱離され、シーブベッド33A、33Bから窒素富化空気が放出され、排気サイレンサ32を介して排気される。これにより、シーブベッド33A、33Bの吸着能力が再生される(再生工程)。
【0024】
シーブベッド33A、33Bは、逆止弁36、36を介して酸素貯留部40の製品タンク41に接続されている。逆止弁36、36は、製品タンク41に貯留された高濃度酸素がシーブベッド33A、33Bに逆流するのを防止する。
【0025】
また、シーブベッド33A、33Bの下流側は、パージオリフィス34を有する配管で接続されている。一方のシーブベッド33A(又は33B)で生成された高濃度酸素は、逆止弁36を介して酸素貯留部40に送出されるとともに、パージオリフィス34を介して他方のシーブベッド33B(又は33A)に送出される。生成された高濃度酸素の一部が他方のシーブベッド33B(又は33A)に送り込まれることにより、当該シーブベッド33B(又は33A)の再生工程が効率よく行われる。パージオリフィス34のオリフィス径によって、それぞれの流路における高濃度酸素の流量が制御される。
【0026】
また、シーブベッド33A、33Bの下流側は、均圧弁35を有する配管で接続されている。再生工程にあるシーブベッド33A、33Bを吸着工程に切り替える際、減圧(大気圧)下にそのまま圧縮空気を流入させると窒素の吸着効率が悪い。そのため、切換時に均圧弁35が“開”とされ、シーブベッド33A、33Bの圧力が平均化される。
【0027】
酸素貯留部40は、PSA部30で生成された高濃度酸素を一時的に貯留しておく部分で、製品タンク41、圧力調整部(圧力レギュレータ)42、酸素センサ43、及び圧力センサ44等を備えている。
【0028】
製品タンク41は、シーブベッド33A、33Bで生成された高濃度酸素を貯留するための容器である。シーブベッド33A、33Bから送出された高濃度酸素を一旦製品タンク41に貯留しておくことにより、高濃度酸素の濃度変動及び圧力変動が抑制されるので、使用者に安定した濃度および流量で高濃度酸素を供給できる。
【0029】
圧力調整部42は、供給する高濃度酸素の流量を制御するために、高濃度酸素の圧力を使用に適した一定圧に調整する。製品タンク41に貯留されている高濃度酸素の圧力は、製品タンク41への流入又は製品タンク41からの流出がある限り少なからず変動する。この場合、正確な流量制御が困難となる上、酸素センサ43による正確な濃度測定が困難となる。そのため、圧力調整部42により高濃度酸素が一定圧に調整されるようになっている。
【0030】
酸素センサ43は、圧力調整部42から送出された高濃度酸素の濃度を、所定の間隔(例えば20分)又は連続して検出する。酸素センサ43には、例えばジルコニア式や超音波式のセンサが好適である。測定対象となる高濃度酸素の圧力が変動していると正確な測定が困難となるため、一般には、酸素センサ43は圧力調整部42の下流に流量制限オリフィス45を介して接続される。
【0031】
圧力センサ44は、製品タンク41に貯留された高濃度酸素の圧力を検出する。圧力センサ44による検出結果に基づいて、製品タンク41に貯留された高濃度酸素の圧力が正常な範囲に保持されているかを確認できる。圧力センサ44は、200kPa程度の圧力を検出可能な測定レンジの比較的広いものであればよく、微少な圧力変動を検出できる程度の精度は要求されない。
【0032】
酸素供給部50は、酸素貯留部40から送出された高濃度酸素を、使用者の呼吸に同調して酸素出口55から放出する部分で、バクテリアフィルタ51、同調弁52、及び圧力センサ53等を備えている。
【0033】
バクテリアフィルタ51は、使用者に清浄な高濃度酸素を供給するために、高濃度酸素に含まれる細菌類を捕集して除菌する。
【0034】
同調弁52は、ポートP1〜P3を有する三方弁で構成され、使用者の呼吸に応じて開通する流路を切り替えるとともに、流路の開度を調整することで使用者に供給する高濃度酸素の流量を制御する。同調弁52のポートP1にバクテリアフィルタ51が接続され、ポートP2に酸素出口55に接続され、ポートP3に圧力センサ53が接続される。
例えば、同調弁52が開いたとき、ポートP1とポートP2を結ぶ流路(第1流路)が開通され、高濃度酸素が酸素出口55から放出される。一方、同調弁52が閉じたとき、ポートP2とポートP3を結ぶ流路(第2流路)が開通され、使用者の呼吸に伴う圧力変動が圧力センサ53によって検出可能となる。
【0035】
圧力センサ53は、使用者の呼吸を検出するためのセンサであり、同調弁52のポートP3に接続されるとともに、同調弁52の下流側(ポートP2と酸素出口55を結ぶ流路)に流量制限オリフィス54を介して接続されている。したがって、同調弁52が“閉”となっている状態(第2流路が開通している状態)では使用者の呼吸に伴って変化する圧力を検出することができ、同調弁52が“開”となっている状態(第1流路が開通している状態)では酸素供給に伴って変化する圧力を検出することができる。
なお、使用者の呼吸に伴う微少な圧力変動を確実に検出するため、圧力センサ53としては、測定レンジが±4kPaのものが好適である。
【0036】
酸素濃縮器1では、圧力センサ53による検出結果に基づいて、同調弁52の開閉状態が制御される。具体的には、同調弁52が“閉”となっている状態で、圧力センサ53により陰圧が検出されると、同調弁52が瞬時に“開”とされ、高濃度酸素の供給が開始される。そして、所定時間(例えば0.08秒)経過後、同調弁52が“閉”とされることにより、所定量の高濃度酸素が放出される。酸素供給部50から放出された高濃度酸素は、酸素出口55に接続された鼻カニューラや酸素マスクを介して使用者に供給される。
なお、高濃度酸素は極めて乾燥した状態となっているので、酸素出口55の上流に、高濃度酸素を加湿するための加湿部を配設してもよい。
【0037】
図3は、本実施の形態に係る酸素濃縮器の制御系統の概略構成を示す図である。
図3に示すように、制御部60は、CPU(Central Processing Unit)61、RAM(Random Access Memory)62、ROM(Read Only Memory)63等を備えている。CPU61は、処理内容に応じたプログラムをROM63から読み出してRAM62に展開し、展開したプログラムと協働して酸素濃縮器1の各ブロックの動作を制御する。
【0038】
具体的に説明すると、制御部60には、酸素貯留部40の酸素センサ43、酸素供給部50の圧力センサ53、温度センサ71、回転センサ72、姿勢センサ73、その他の各種センサからの検出信号が入力される。姿勢センサ73は、酸素濃縮器1の設置状態(上下、左右、前後)を検出できる3軸加速度センサであり、半導体式のMEMS(Micro Electro Mechanical System)センサが好適である。
また、制御部60には、操作ボタン等を有する操作部81において、例えば使用者による供給流量の設定が行われた場合に、設定流量を指示する操作信号が入力される。
そして、制御部60は、これらの入力信号に基づいて、例えば空気圧縮部20や冷却ブロワ70の駆動モータの回転数を制御したり、流路切換部31の切替弁SV1〜SV4や同調弁52の開閉状態や開度を制御したりする。このような制御により、酸素濃縮器1から設定流量で高濃度酸素が供給される。
【0039】
また、制御部60は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)や発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などからなる表示部82における表示に係る制御や、スピーカ83からの音声出力に係る制御を行う。表示部82及びスピーカ83は、使用者に各種の情報を報知する際に用いられる。
図示を省略するが、酸素濃縮器1に無線LAN(Local Area Network)やBluetooth(登録商標)等の通信ネットワークに接続可能なインターフェースを設け、外部機器との間で各種データを送受信できるようにしてもよい。
【0040】
さらに、制御部60は、回転センサ72及び姿勢センサ73からの検出信号に基づいて、冷却ブロワ70の吸気口又は排気口が閉塞しているか否かを判定する。そして、吸気口又は排気口が閉塞している場合には、その旨を表示部82又はスピーカ83によって使用者に報知する。この処理は、具体的には図4に示すフローチャートに従って行われる。
【0041】
図4は、冷却ブロワ70の吸気口又は排気口の閉塞状態を監視するための閉塞状態監視処理の一例について示すフローチャートである。この閉塞状態監視処理は、CPU61がROM63に格納された所定のプログラムを実行することにより実現される。
ここでは、側面に吸気口、上面に排気口を設けた略直方体状の酸素濃縮器1を例に挙げて説明する。この酸素濃縮器1において、吸気口が水平方向、排気口が垂直上方向を向いている状態が、適切な姿勢(設置状態)となる。
また、酸素濃縮器1では、環境温度や酸素濃度に基づいて空気圧縮部20等を冷却するための必要風量が設定され、この必要風量に応じて冷却ブロワ70への供給電圧が設定されているものとする。
【0042】
図4のステップS101において、制御部60は、回転センサ72からの検出信号に基づいて、冷却ブロワ70の回転数を取得する。冷却ブロワ70の吸気口又は排気口が閉塞していない正常時においては、一定電圧が冷却ブロワ70に供給され、供給電圧に応じたほぼ一定の回転数で冷却ブロワ70は動作する。一方、冷却ブロワ70の吸気口又は排気口が閉塞していると、供給電圧が同じであるにも関わらず、冷却ブロワ70の回転数が上昇する。この場合、一定の送風量が保持されるように、冷却ブロワ70への供給電圧を低下させ、回転数を低下させる制御が行われる。
【0043】
ステップS102では、取得された回転数が正常であるか否かを判定する。例えば、正常時における冷却ブロワ70の回転数を基準回転数とし、この基準回転数との差が予め定められた所定の範囲にあるか否かによって、取得された回転数が正常であるか否かを判定する。つまり、冷却ブロワ70の回転数が大きく変動した場合に、回転数異常が検出される。冷却ブロワ70の吸気口又は排気口が閉塞している場合には、冷却ブロワ70の回転数が一時的に基準回転数よりも大幅に高くなるため、回転数異常が検出されることになる。
ステップS102において、取得された回転数が正常でないと判定した場合はステップS103に移行する。一方、取得された回転数が正常であると判定した場合は、吸気口及び排気口の何れも閉塞していないと判断できるので、ステップS101からの処理を繰り返す。
【0044】
ステップS103では、姿勢センサ73からの検出信号に基づいて、酸素濃縮器1が適切な姿勢で設置されているか否かを判定する。具体的には、酸素濃縮器1の筐体に形成された吸気口又は排気口が底面(設置面と接触する面)となっているか否かを判定する。これにより、吸気口又は排気口が姿勢異常により閉塞されているか否かを判断できる。
ステップS103において、酸素濃縮器1の姿勢は適切、すなわち吸気口又は排気口の形成面は底面になっていないと判定した場合はステップS104に移行する。一方、酸素濃縮器1の姿勢は不適切、すなわち吸気口又は排気口の形成面が底面になっていると判定した場合はステップS105に移行する。
【0045】
ステップS104では、吸気口又は排気口が閉塞していることを、表示部82における表示又はスピーカ83からの警告音によって報知する。使用者は、吸気口又は排気口が閉塞していること自体を知得できるので、吸気口又は排気口が壁面等に近接していないかや、吸気口に紙などの異物が吸引されていないか等を確認することにより、改善に努めることができる。
【0046】
ステップS105では、酸素濃縮器1の設置状態が不適切であることによって吸気口又は排気口が閉塞していることを、表示部82における表示又はスピーカ83からの警告音によって報知する。使用者は、酸素濃縮器1の設置状態が不適切であることを知得できるので、適切な状態に移行させることにより吸気口又は排気口の閉塞を容易に解消できる。
【0047】
なお、冷却ブロワ70の吸気口又は排気口が閉塞していない場合(ステップS102で“YES”)でも、酸素濃縮器1の姿勢が適切でない場合がある。この場合は、酸素濃縮器1の設置状態を確認するよう、使用者に報知するようにしてもよい。例えば、携帯型の酸素濃縮器1は、バッグや自動車に設置されることもあるが、その際の設置状態の誤りを事前に改善させることができる。
【0048】
このように、本実施の形態に係る酸素濃縮器1は、原料空気を導入する空気取入部(10)と、空気取入部(10)を介して導入された原料空気から圧縮空気を生成する空気圧縮部(20)と、空気圧縮部(20)で生成された圧縮空気から窒素を分離して高濃度酸素を生成するPSA部(30)と、PSA部(30)により生成された高濃度酸素を酸素出口(55)から放出する酸素供給部(50)と、吸気口から外気を導入して排気口に向けて送風することにより空気圧縮部(20)を冷却する送風部(冷却ブロワ70)と、を備えている。
また、吸気口又は排気口が閉塞しているか否かを監視し、吸気口又は排気口が閉塞していると判定した場合に、その旨を報知部(表示部82、スピーカ83)から報知させる閉塞状態監視部(制御部60、図4のフローチャート)を備えている。
【0049】
酸素濃縮器1では、冷却ブロワ70の閉塞状態が常時監視されているので、酸素濃縮器1が正常な状態で使用されていないこと、特に吸気口等が閉塞していることを使用者に早期に報知することができる。したがって、筐体内部の温度上昇により酸素濃縮器1の機能が低下する前に、使用者は設置状態等を改善することができる。すなわち、酸素濃縮器1は、極めて安全性の高い酸素濃縮器である。
【0050】
また、酸素濃縮器1は、送風部(冷却ブロワ70)の駆動モータの回転数を検出する回転数検出部(回転センサ72)を備え、送風部(冷却ブロワ70)は、供給電圧を変化させることにより回転数がほぼ一定となるように制御される。そして、閉塞状態監視部(制御部60)は、送風部(冷却ブロワ70)に一定電圧が供給されている状態で、回転数検出部(回転センサ72)により回転数の上昇が検出された場合に、吸気口又は排気口が閉塞していると判定する。
これにより、回転数が自動的に制御される従来の冷却ブロワの構成をそのまま利用することができるので、特別な構成要素を追加することなく、本発明を実現することができる。
【0051】
また、酸素濃縮器1は、当該酸素濃縮器(1)の設置状態を検出する姿勢検出部(姿勢センサ73)を備えている。そして、閉塞状態監視部(制御部60)は、姿勢検出部(姿勢センサ73)による検出結果に基づいて、具体的には、姿勢検出部(姿勢センサ73)により吸気口又は排気口の形成面が底面となっていることを検出された場合に、吸気口又は排気口が姿勢異常により閉塞していることを報知部(表示部82、スピーカ83)から報知させる。
これにより、吸気口又は排気口が閉塞している原因も報知して、設置状態を改善させるという細かい指示を使用者に提供することができる。
【0052】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形の態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、酸素濃縮器1において、回転センサ72の代わりに、又はこれに追加して、冷却ブロワ70の送風量を検出する流量センサを設け、この流量センサにより検出された送風量に基づいて、吸気口又は排気口が閉塞しているか否かを判定するようにしてもよい。この場合、流量センサにより検出された送風量に基づいて、一定の送風量が保持されるように(一定の回転数となるように)、冷却ブロワへの供給電圧を制御することもできる。
また例えば、PSA部30の流路切換部31を2つの三方弁を用いた構成とすることもできる。その他、酸素濃縮器の基本的な酸素濃縮機能に係る構成は実施の形態で示した態様に限定されない。
また、本発明は、設置状態が比較的頻繁に変化する携帯型の酸素濃縮器に適用して有用であるが、据え置き型の酸素濃縮器に適用することもできる。
【0053】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0054】
1 酸素濃縮器
10 空気取入部
11 吸気フィルタ
12 ヘパフィルタ
13 空気取入口
20 空気圧縮部
21 冷却パイプ
30 PSA部
31 流路切換部
32 排気サイレンサ
33A、33B シーブベッド
34 パージオリフィス
35 均圧弁
36 逆止弁
40 酸素貯留部
41 製品タンク
42 圧力調整部
43 酸素センサ
44 圧力センサ
45 流量制限オリフィス
50 酸素供給部
51 バクテリアフィルタ
52 同調弁
53 圧力センサ
54 流量制限オリフィス
55 酸素出口
60 制御部(閉塞状態監視部)
61 CPU
62 RAM
63 ROM
70 冷却ブロワ(送風部)
71 温度センサ
72 回転センサ(回転数検出部)
73 姿勢センサ(姿勢検出部)
81 操作部
82 表示部(報知部)
83 スピーカ(報知部)
SV1〜SV4 切替弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料空気を導入する空気取入部と、
前記空気取入部を介して導入された前記原料空気から圧縮空気を生成する空気圧縮部と、
前記空気圧縮部で生成された圧縮空気から窒素を分離して高濃度酸素を生成するPSA部と、
前記PSA部により生成された高濃度酸素を酸素出口から放出する酸素供給部と、
吸気口から外気を導入して排気口に向けて送風することにより前記空気圧縮部を冷却する送風部と、
前記吸気口又は前記排気口が閉塞しているか否かを監視し、前記吸気口又は前記排気口が閉塞していると判定した場合に、その旨を報知部から報知させる閉塞状態監視部と、を備えることを特徴とする酸素濃縮器。
【請求項2】
前記送風部の駆動モータの回転数を検出する回転数検出部を備え、
前記送風部は、供給電圧を変化させることにより回転数が一定となるように制御され、
前記閉塞状態監視部は、前記送風部に一定電圧が供給されている状態で、前記回転数検出部により回転数の上昇が検出された場合に、前記吸気口又は前記排気口が閉塞していると判定することを特徴とする請求項1に記載の酸素濃縮器。
【請求項3】
当該酸素濃縮器の設置状態を検出する姿勢検出部を備え、
前記閉塞状態監視部は、前記姿勢検出部による検出結果に基づいて、前記吸気口又は前記排気口が姿勢異常により閉塞していることを報知部から報知させることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸素濃縮器。
【請求項4】
前記閉塞状態監視部は、前記姿勢検出部により前記吸気口又は前記排気口の形成面が底面となっていることを検出された場合に、前記吸気口又は前記排気口が姿勢異常により閉塞していることを報知部から報知させることを特徴とする請求項3に記載の酸素濃縮器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−183160(P2012−183160A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47629(P2011−47629)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000112602)フクダ電子株式会社 (196)