説明

重車両の輸送方法

【課題】輸送時高さを法令で定められている高さ制限値以下にして重車両を輸送する簡易かつ汎用性の高い重車両の輸送方法を提供する。
【解決手段】輸送専用タイヤ4が装着されたホイールローダ1を自走によりトレーラ2に積載し、ホイールローダ1の前後の各アクスルの両側部位に対応するように所要の枕木6をトレーラ2上に設置し、次いで、ホイールローダ1に装着されている輸送専用タイヤ4の空気を抜いて輸送時高さ(積載時全高)Hを法令で定められている高さ制限値以下に低下させ、その後、トレーラ連結車によりホイールローダ1を目的地まで輸送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばホイールローダやホイール式油圧ショベルのような重車両をトレーラ連結車等の輸送車両に積載して輸送する重車両の輸送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばホイールローダをトレーラに積載して輸送する場合に、ホイールローダに装着される正規タイヤに替えて小径車輪を装着することにより、輸送時高さ(積載時全高)が車両制限令(道路法)、道路交通法、道路運送車両法等で定められている高さ制限値(3.8m以下)を超えないようにして、特殊車両通行許可制度を利用しなくてもホイールローダをトレーラ連結車により輸送することのできる輸送方法が実用に供されている。この輸送方法において、小径車輪が装着されたホイールローダは自走によりトレーラの段差を乗り越えることができないために、トレーラに対するホイールローダの積み降ろし作業は起重機を用いて行われる。
【0003】
なお、関連先行技術として、例えば特許文献1にて提案されているものがある。この特許文献1には、選択的に作動可能な圧力リリーフ弁を用いることにより、車両のタイヤの圧力を所定値に選択的に減少させてタイヤの牽引力を向上させたり、車両の全体高さを低下させたりする旨の記載がなされている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−72113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の輸送方法では、起重機を用いたホイールローダの積み降ろし作業が大掛かりで面倒であり、また出発地および目的地にそれぞれ起重機設備が整っていなければ当該輸送方法が成立しないため、汎用性が低いという問題点がある。
【0006】
一方、前記特許文献1には、選択的に作動可能な圧力リリーフ弁により車両の全体高さを低下させる旨の記載は成されているが、輸送時高さ(積載時全高)を法令で定められている高さ制限値以下にして重車両を輸送する方法に適用する旨を示唆する記載はない。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、輸送時高さを法令で定められている高さ制限値以下にして重車両を輸送する簡易かつ汎用性の高い重車両の輸送方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、第1発明による重車両の輸送方法は、
重車両を輸送車両に積載して輸送する重車両の輸送方法であって、
(a)前記重車両を自走により前記輸送車両に積載する工程、
(b)前記重車両のタイヤの空気を抜いたときにそのタイヤに代わって前記重車両の車重を支えるための支持具を、前記重車両の所定の部位に対応するように前記輸送車両上に設置する工程および
(c)前記重車両のタイヤの空気を抜いて前記重車両の車高を低下させるとともに、前記支持具に前記重車両の車重を支持させる工程
を含むことを特徴とするものである。
【0009】
また、第2発明による重車両の輸送方法は、
重車両を輸送車両に積載して輸送する重車両の輸送方法であって、
(a)前記重車両に輸送専用タイヤを装着する工程、
(b)前記輸送専用タイヤが装着された前記重車両を自走により前記輸送車両に積載する工程および
(c)前記輸送専用タイヤの空気を抜いて前記重車両の車高を低下させる工程
を含むことを特徴とするものである。
【0010】
また、第3発明による重車両の輸送方法は、
重車両を輸送車両に積載して輸送する重車両の輸送方法であって、
(a)前記重車両に輸送専用タイヤを装着する工程、
(b)前記輸送専用タイヤが装着された前記重車両を自走により前記輸送車両に積載する工程、
(c)前記輸送専用タイヤの空気を抜いたときにその輸送専用タイヤに代わって前記重車両の車重を支えるための支持具を、前記重車両の所定の部位に対応するように前記輸送車両上に設置する工程および
(d)前記輸送専用タイヤの空気を抜いて前記重車両の車高を低下させるとともに、前記支持具に前記重車両の車重を支持させる工程
を含むことを特徴とするものである。
【0011】
また、第4発明による重車両の輸送方法は、
重車両を輸送車両に積載して輸送する重車両の輸送方法であって、
(a)前記重車両に輸送専用タイヤを装着する工程、
(b)前記輸送専用タイヤが装着された前記重車両を自走により前記輸送車両に積載する工程、
(c)前記輸送専用タイヤの空気を抜いて前記重車両の車高を低下させる工程、
(d)前記輸送車両により前記重車両を目的地まで輸送する工程、
(e)前記輸送専用タイヤに空気を充填した後に、前記重車両を自走により前記輸送車両から降ろす工程および
(f)前記輸送専用タイヤを正規タイヤに付け替える工程
を含むことを特徴とするものである。
【0012】
また、第5発明による重車両の輸送方法は、
重車両を輸送車両に積載して輸送する重車両の輸送方法であって、
(a)前記重車両に輸送専用タイヤを装着する工程、
(b)前記輸送専用タイヤが装着された前記重車両を自走により前記輸送車両に積載する工程、
(c)前記輸送専用タイヤの空気を抜いたときにその輸送専用タイヤに代わって前記重車両の車重を支えるための支持具を、前記重車両の所定の部位に対応するように前記輸送車両上に設置する工程、
(d)前記輸送専用タイヤの空気を抜いて前記重車両の車高を低下させるとともに、前記支持具に前記重車両の車重を支持させる工程、
(e)前記輸送車両により前記重車両を目的地まで輸送する工程、
(f)前記輸送専用タイヤに空気を充填し、前記支持具を取り外した後に、前記重車両を自走により前記輸送車両から降ろす工程および
(g)前記輸送専用タイヤを正規タイヤに付け替える工程
を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、重車両を自走にて輸送車両に積載して後にその重車両に装着されているタイヤの空気を抜いてその重車両の車高を低下させることにより、輸送時高さ(積載時全高)を車両制限令(道路法)、道路交通法、道路運送車両法等で定められている高さ制限値(3.8m以下)を超えないようにされる。本発明によれば、特殊車両通行許可制度を利用しなくても重車両を輸送車両により輸送することができる。また、従来の輸送方法では必要されていた起重機を用いた作業が不要になるため、簡易に実施可能で汎用性が高いという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明による重車両の輸送方法の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態は、重車両としてホイールローダに本発明が適用された例である。
【0015】
図1乃至図3には、本発明の一実施形態に係る重車両の輸送方法を説明する図が示されている。
【0016】
本実施形態の輸送方法は、ホイールローダ1を、図示省略されるトラクタと重量物運搬用セミトレーラ2(以下、単に「トレーラ2」という。)とが連結されてなるトレーラ連結車(本発明の「輸送車両」に相当する。)に積載して輸送する方法であって、以下に述べる第1工程〜第7工程を含むものである。
【0017】
まず、出発地において、図1(a)に示されるように、ホイールローダ1に装着される正規タイヤ3に替えて輸送専用タイヤ4を装着する(第1工程)。次いで、同図(b)(c)に示されるように、トレーラ2に対するホイールローダ1の乗り降りを補助する傾斜台5をトレーラ2の後端の近傍位置に設置して、輸送専用タイヤ4が装着されたホイールローダ1を自走によりトレーラ2に積載する(第2工程)。ここで、前記正規タイヤ3は、作業条件に適合するように選定された建設車両用のニューマチックタイヤである。また、前記輸送専用タイヤ4は、輸送時に専ら使用されるニューマチックタイヤであって、空気が充填されたときのタイヤ容積と空気が抜かれたときのタイヤ容積との差が比較的大きく設定されてなるものである。なお、輸送専用タイヤ4のタイヤ径は正規タイヤ3のタイヤ径と略同じに設定されており、輸送専用タイヤ4が装着されたホイールローダ1はトレーラ2の段差を容易に乗り越えることができる。
【0018】
次いで、図2(a)に示されるように、前記輸送専用タイヤ4の空気を抜いたときにその輸送専用タイヤ4に代わってホイールローダ1の車重を支えるための支持具として例えば枕木6を、ホイールローダ1の前後の各アクスルの両側部位に対応するように合計4つトレーラ2上に設置する(第3工程)。その後、同図(b)に示されるように、輸送専用タイヤ4の空気を抜いてホイールローダ1の車高を低下させるとともに、前記枕木6にホイールローダ1の車重を支持させる(第4工程)。こうして、輸送時高さ(積載時全高)Hが車両制限令(道路法)、道路交通法、道路運送車両法等で定められている高さ制限値(3.8m以下)以下にされる。なお、ホイールローダ1は、目的地への輸送に臨んでトレーラ2に図示されないワイヤロープやチェーンによって固定される。
【0019】
前記第4工程により輸送時高さHを法令で定められている高さ制限値以下にして後に、トレーラ連結車によりホイールローダ1を目的地まで輸送する(第5工程)。当該目的地において、図3(a)に示されるように、輸送専用タイヤ4に空気を充填し、枕木6を取り外した後に、同図(b)に示されるように、傾斜台5を利用して、ホイールローダ1を自走によりトレーラ2から降ろす(第6工程)。その後、同図(c)に示されるように、ホイールローダ1に装着される輸送専用タイヤ4に替えて正規タイヤ3を装着する(第7工程)。
【0020】
以上に述べたように、本実施形態においては、ホイールローダ1を自走にてトレーラ連結車に積載して後にそのホイールローダ1に装着されている輸送専用タイヤ4の空気を抜いてそのホイールローダ1の車高を低下させることにより、輸送時高さ(積載時全高)Hを車両制限令(道路法)、道路交通法、道路運送車両法等で定められている高さ制限値(3.8m以下)を超えないようにされる。本実施形態によれば、特殊車両通行許可制度を利用しなくてもホイールローダ1をトレーラ連結車により輸送することができる。また、従来の輸送方法では必要されていた起重機を用いた作業が不要になるため、簡易に実施可能で汎用性が高いという利点がある。
【0021】
なお、本実施形態では、図1(a)に示される第1工程においてホイールローダ1に装着される正規タイヤ3に替えて輸送専用タイヤ4を装着するようにされているが、正規タイヤ3の空気を抜いた状態での積載時全高が法令で定められている高さ制限値以下になるようであれば、正規タイヤ3を装着したままで第2工程〜第6工程を実施するようにしてもよい。また、輸送専用タイヤ4が、空気が抜かれた状態でもホイールローダ1の車重を安定的に支持し得る構造を備えるものである場合、枕木6を用いない態様もあり得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る重車両の輸送方法を説明する図(1)
【図2】本発明の一実施形態に係る重車両の輸送方法を説明する図(2)
【図3】本発明の一実施形態に係る重車両の輸送方法を説明する図(3)
【符号の説明】
【0023】
1 ホイールローダ
2 トレーラ
3 正規タイヤ
4 輸送専用タイヤ
5 傾斜台
6 枕木

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重車両を輸送車両に積載して輸送する重車両の輸送方法であって、
(a)前記重車両を自走により前記輸送車両に積載する工程、
(b)前記重車両のタイヤの空気を抜いたときにそのタイヤに代わって前記重車両の車重を支えるための支持具を、前記重車両の所定の部位に対応するように前記輸送車両上に設置する工程および
(c)前記重車両のタイヤの空気を抜いて前記重車両の車高を低下させるとともに、前記支持具に前記重車両の車重を支持させる工程
を含むことを特徴とする重車両の輸送方法。
【請求項2】
重車両を輸送車両に積載して輸送する重車両の輸送方法であって、
(a)前記重車両に輸送専用タイヤを装着する工程、
(b)前記輸送専用タイヤが装着された前記重車両を自走により前記輸送車両に積載する工程および
(c)前記輸送専用タイヤの空気を抜いて前記重車両の車高を低下させる工程
を含むことを特徴とする重車両の輸送方法。
【請求項3】
重車両を輸送車両に積載して輸送する重車両の輸送方法であって、
(a)前記重車両に輸送専用タイヤを装着する工程、
(b)前記輸送専用タイヤが装着された前記重車両を自走により前記輸送車両に積載する工程、
(c)前記輸送専用タイヤの空気を抜いたときにその輸送専用タイヤに代わって前記重車両の車重を支えるための支持具を、前記重車両の所定の部位に対応するように前記輸送車両上に設置する工程および
(d)前記輸送専用タイヤの空気を抜いて前記重車両の車高を低下させるとともに、前記支持具に前記重車両の車重を支持させる工程
を含むことを特徴とする重車両の輸送方法。
【請求項4】
重車両を輸送車両に積載して輸送する重車両の輸送方法であって、
(a)前記重車両に輸送専用タイヤを装着する工程、
(b)前記輸送専用タイヤが装着された前記重車両を自走により前記輸送車両に積載する工程、
(c)前記輸送専用タイヤの空気を抜いて前記重車両の車高を低下させる工程、
(d)前記輸送車両により前記重車両を目的地まで輸送する工程、
(e)前記輸送専用タイヤに空気を充填した後に、前記重車両を自走により前記輸送車両から降ろす工程および
(f)前記輸送専用タイヤを正規タイヤに付け替える工程
を含むことを特徴とする重車両の輸送方法。
【請求項5】
重車両を輸送車両に積載して輸送する重車両の輸送方法であって、
(a)前記重車両に輸送専用タイヤを装着する工程、
(b)前記輸送専用タイヤが装着された前記重車両を自走により前記輸送車両に積載する工程、
(c)前記輸送専用タイヤの空気を抜いたときにその輸送専用タイヤに代わって前記重車両の車重を支えるための支持具を、前記重車両の所定の部位に対応するように前記輸送車両上に設置する工程、
(d)前記輸送専用タイヤの空気を抜いて前記重車両の車高を低下させるとともに、前記支持具に前記重車両の車重を支持させる工程、
(e)前記輸送車両により前記重車両を目的地まで輸送する工程、
(f)前記輸送専用タイヤに空気を充填し、前記支持具を取り外した後に、前記重車両を自走により前記輸送車両から降ろす工程および
(g)前記輸送専用タイヤを正規タイヤに付け替える工程
を含むことを特徴とする重車両の輸送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−290541(P2006−290541A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−113319(P2005−113319)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】