説明

重量センサ

【課題】本発明は、歪抵抗素子の抵抗値が変化しやすく、重量センサから発生する出力信号の感度を大きくすることができる重量センサを提供することを目的とするものである。
【解決手段】この目的を達成するために、本発明の重量センサは、起歪体11における筒部11aを押圧する押圧部材32を起歪体11の長手方向に移動させることにより起歪体11における連接部22から筒部11aに対してモーメント力が作用するように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート等の荷重を測定するための重量センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の重量センサは、図10〜図12に示すように構成されていた。
【0003】
図10は従来の重量センサの斜視図、図11は同重量センサにおける起歪体の展開図、図12は同重量センサの回路図である。
【0004】
図10〜図12において、1は円筒形状の起歪体で、この起歪体1の外側面には、一対の横方向歪抵抗素子2および一対の縦方向歪抵抗素子3を設けている。また、前記起歪体1の外側面には、前記横方向歪抵抗素子2および縦方向歪抵抗素子3と電源電極4、GND電極5および出力電極6とを回路パターン7で電気的に接続することにより構成された図11に示すようなブリッジ回路を備えているものである。
【0005】
以上のように構成された従来の重量センサについて、次に、その動作を説明する。
【0006】
図13に示すように、まず、従来の重量センサを上下の相手側取付部材8により挟持する。そして、この状態で、押圧部材9に荷重がかかり、円筒形状の起歪体1に、軸方向と平行な方向に圧縮力が作用すると、一対の縦方向歪抵抗素子3の抵抗値が小さくなるとともに、一対の横方向歪抵抗素子2の抵抗値が大きくなる。そして、この一対の縦方向歪抵抗素子3および一対の横方向歪抵抗素子2は、電源電極4、GND電極5、出力電極6および回路パターン7でブリッジ回路を構成しているため、出力電極6から起歪体1に作用する圧縮力に応じて出力信号を出力するものである。そして、この出力信号は、前記電源電極4、GND電極5および出力電極6と電気的に接続されたリード線(図示せず)により外部回路(図示せず)に出力され、重量センサに負荷される荷重を電気信号として出力するものであった。
【0007】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平6−207866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した従来の構成においては、円筒形状からなる起歪体1に軸方向と平行な方向に圧縮力を作用させているため、起歪体1自体が変形の抵抗となって、一対の横方向歪抵抗素子2および一対の縦方向歪抵抗素子3の抵抗値が変化しにくくなり、その結果、重量センサから発生する出力信号の感度が小さくなってしまうという課題を有していた。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、歪抵抗素子の抵抗値が変化しやすく、重量センサから発生する出力信号の感度を大きくすることができる重量センサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
【0011】
本発明の請求項1に記載の発明は、外表面に歪抵抗素子とこの歪抵抗素子と回路パターンにより電気的に接続された電極とを設けた筒部とこの筒部の内側面から内方に向かって設けた連接部と被挟持部とからなる固定部とを設けた起歪体と、この起歪体における被挟持部を挟持して固定する固定部材と、前記起歪体における筒部を押圧する押圧部材と、前記起歪体における歪抵抗素子からの出力信号を処理する処理回路を設けたケースとを備え、前記押圧部材を起歪体の長手方向に移動させることにより起歪体における連接部から筒部に対してモーメント力が作用するように構成したもので、この構成によれば、起歪体における筒部を押圧する押圧部材を起歪体の長手方向に移動させることにより起歪体における連接部から筒部に対してモーメント力が作用するように構成しているため、起歪体における筒部の外表面は変形しやすくなり、これにより、起歪体に設けた歪抵抗素子の抵抗値も変化しやすくなるため、重量センサから発生する出力信号の感度を大きくすることができるという作用効果を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明の重量センサは、外表面に歪抵抗素子とこの歪抵抗素子と回路パターンにより電気的に接続された電極とを設けた筒部とこの筒部の内側面から内方に向かって設けた連接部と被挟持部とからなる固定部とを設けた起歪体と、この起歪体における被挟持部を挟持して固定する固定部材と、前記起歪体における筒部を押圧する押圧部材と、前記起歪体における歪抵抗素子からの出力信号を処理する処理回路を設けたケースとを備え、前記押圧部材を起歪体の長手方向に移動させることにより起歪体における連接部から筒部に対してモーメント力が作用するように構成しているため、起歪体における筒部の外表面は変形しやすくなり、これにより、起歪体に設けた歪抵抗素子の抵抗値も変化しやすくなるため、重量センサから発生する出力信号の感度を大きくすることができるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態における重量センサについて、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施の形態における重量センサの側断面図、図2は同重量センサの側面図、図3は同重量センサにおける起歪体の展開図、図4は同重量センサにおける処理回路の回路図である。
【0015】
図1〜図4において、11はフェライト系ステンレスにより円筒形状に構成された起歪体で、この起歪体11は筒部11aが鉛直方向に設置されるとともに、この筒部11aの外側面にAgからなる第1の電源電極12、第2の電源電極13、第1の出力電極14、第2の出力電極15およびGND電極16を互いに近傍に位置するように設けている。また、前記起歪体11における筒部11aの下側の外側面には、一対の第1の下側歪抵抗素子17を直列に設けており、そして、この第1の下側歪抵抗素子17は、一端を回路パターン18により前記第1の電源電極12と電気的に接続し、かつ他端を第1の出力電極14と接続している。そしてまた、前記起歪体11における筒部11aの下側の外側面には、一対の第1の下側歪抵抗素子17の間に位置して一対の第2の下側歪抵抗素子19を設けており、そして、この第2の下側歪抵抗素子19は、一端を回路パターン18により前記第2の電源電極13と電気的に接続し、かつ他端をGND電極16と電気的に接続している。さらに、前記起歪体11における筒部11aの上側の外側面には、前記一対の第1の下側歪抵抗素子17の上側に位置して、一対の第1の上側歪抵抗素子20を直列に設けている。そして、この第1の上側歪抵抗素子20は、一端を回路パターン18により前記第1の下側歪抵抗素子17および第1の出力電極14に電気的に接続し、かつ他端をGND電極16と接続している。さらにまた、前記起歪体11における筒部11aの上側の外側面には、前記一対の第1の上側歪抵抗素子20の間に位置して、一対の第2の上側歪抵抗素子21を設けており、そして、この第2の上側歪抵抗素子21は、一端を回路パターン18により前記第2の下側歪抵抗素子19および第2の出力電極15と電気的に接続し、かつ他端を第2の電源電極13と電気的に接続することによりブリッジ回路を構成している。また、前記円筒形状の起歪体11には筒部11aから内側に連接される連接部22を設けており、さらにこの連接部22の先端には、連接部22より幅厚の被挟持部23を設け、そしてこの被挟持部23と前記連接部22とで固定部24を構成している。
【0016】
25は金属製の下側押圧部で、この下側押圧部25は前記起歪体11における筒部11aの下端をシートゴムからなる弾性体26を介して支持するとともに、孔27を有している。28は金属製の上側押圧部で、この上側押圧部28は前記起歪体11における筒部11aの上端を支持するとともに、孔30およびかしめ孔31(図示せず)を有している。そして、前記下側押圧部25と上側押圧部28とで押圧部材32を構成している。33は樹脂製のケースで、このケース33はかしめ部34(図示せず)を有しており、このかしめ部34(図示せず)を上側押圧部28におけるかしめ孔31(図示せず)に挿入するとともに、先端をかしめることにより、ケース33に押圧部材32を固定している。また、前記ケース33にはポリイミド製の回路基板35を設けており、そして、この回路基板35は前記起歪体11における第1の電源電極12、第2の電源電極13、第1の出力電極14、第2の出力電極15、およびGND電極16と電気的に接続しているものである。さらに、前記回路基板35にはICからなる処理回路36を設けており、そして、この処理回路36により、起歪体11における第1の下側歪抵抗素子17、第2の下側歪抵抗素子19、第1の上側歪抵抗素子20、第2の上側歪抵抗素子21および回路パターン18から構成されるブリッジ回路の出力信号を処理しているものである。また、前記ケース33にはコネクタ端子37を有するコネクタ部38を設けており、そして、このコネクタ端子37は前記回路基板35に電気的に接続するとともに、出力信号を外部に出力しているものである。
【0017】
以上のように構成された本発明の一実施の形態における重量センサにおいて、次に、その組立方法について説明する。
【0018】
まず、ステンレス板(図示せず)の上面にガラスペースト(図示せず)を印刷した後、約850℃で約10分間焼成して起歪体11を形成する。
【0019】
次に、前記起歪体11における筒部11aの外側面に位置して銀のペースト(図示せず)を印刷し、約850℃で約10分間焼成することにより、前記起歪体11における筒部11aの外側面に第1の電源電極12、第2の電源電極13、第1の出力電極14、第2の出力電極15、GND電極16および回路パターン18を形成する。
【0020】
次に、前記起歪体11における筒部11aの外側面にメタルグレーズ系ペースト(図示せず)を印刷した後、約130℃で約10分間乾燥し、その後、前記起歪体11を約850℃で約10分間焼成することにより、第1の下側歪抵抗素子17、第2の下側歪抵抗素子19、第1の上側歪抵抗素子20および第2の上側歪抵抗素子21を形成する。
【0021】
次に、下側押圧部25の上面に弾性体26を接着した後、この弾性体26の上面に起歪体11における筒部11aを載置する。
【0022】
最後に、前記起歪体11における筒部11aの上面に上側押圧部28を接着すると同時に、下側押圧部25の上面に上側押圧部28を接着する。
【0023】
以上のようにして構成され、かつ組み立てられた本発明の一実施の形態における重量センサについて、次に、その動作を説明する。
【0024】
図5に示すように、予め、ボルト39を立設した支持板40の上面に、前記ボルト39の外周に位置して、第1のカラー41を載置する。そして、この第1のカラー41の上面に被挟持部23の下面が当接するように載置した後、被挟持部23の上面に第2のカラー42を載置する。その後、ボルト39にナット43を締結することにより、第1のカラー41と第2のカラー42とで被挟持部23を挟持するもので、すなわち、ボルト39、支持板40、第1のカラー41、第2のカラー42およびナット43で固定部材44を構成しているものである。
【0025】
そして、この組立初期の状態においては、図6、図7に示すように、起歪体11における筒部11aに押圧部材32が当接するが、荷重は零の状態となっている。
【0026】
そして、押圧部材32に上方から下方に向かって荷重が付加されると、起歪体11における連接部22に、図8に示すようにせん断荷重が加わる。そして、このせん断荷重によって、連接部22に連接した円筒形状の起歪体11における筒部11aの外側面には、図9に示すようにモーメント力が作用し、これにより、起歪体11の上端の径は大きくなり、かつ上側の外側面は引っ張られる。
【0027】
したがって、起歪体11の外側面に設けられた一対の第1の上側歪抵抗素子20および一対の第2の上側歪抵抗素子21の抵抗値は大きくなるとともに、一対の第1の下側歪抵抗素子17および一対の第2の下側歪抵抗素子19の抵抗値は小さくなる。
【0028】
上記したように本発明の一実施の形態においては、押圧部材32を起歪体11の長手方向に移動させることにより起歪体11における連接部22から筒部11aに対してモーメント力が作用するように構成しているため、起歪体11における筒部11aの外表面は変形しやすくなり、これにより、起歪体11に設けた第1の下側歪抵抗素子17、第2の下側歪抵抗素子19、第1の上側歪抵抗素子20および第2の上側歪抵抗素子21の抵抗値も変化しやすくなるため、重量センサから発生する出力信号の感度を大きくすることができるという効果が得られるものである。
【0029】
また、第1の電源電極12および第2の電源電極13に5Vを印加するとともに、GND電極16を接地して、第1の出力電極14と第2の出力電極15との差動電圧を処理回路36で信号処理することにより、起歪体11に加わる荷重を測定することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係る重量センサは、歪抵抗素子の抵抗値が変化しやすく、重量センサから発生する出力信号の感度を大きくすることができるという効果を有するものであり、特に、車両用シート等の荷重を測定するための重量センサ等において有用となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態における重量センサの側断面図
【図2】同重量センサの側面図
【図3】同重量センサにおける起歪体の展開図
【図4】同重量センサにおける処理回路の回路図
【図5】同重量センサを固定部材に固定した状態を示す側断面図
【図6】同重量センサの起歪体における筒部に押圧部材が当接するとともに荷重が零の状態を示す側断面図
【図7】同重量センサの起歪体における筒部に押圧部材が当接するとともに荷重が零の状態を示す側面図
【図8】同重量センサの起歪体における筒部に押圧部材から荷重が負荷された状態を示す側断面図
【図9】同重量センサの起歪体における筒部に押圧部材から荷重が負荷された状態を示す側面図
【図10】従来の重量センサの斜視図
【図11】同重量センサにおける起歪体の展開図
【図12】同重量センサの回路図
【図13】従来の重量センサを相手側取付部材に取り付けた状態を示す側断面図
【符号の説明】
【0032】
11 起歪体
11a 筒部
12 第1の電源電極
13 第2の電源電極
14 第1の出力電極
15 第2の出力電極
16 GND電極
17 第1の下側歪抵抗素子
18 回路パターン
19 第2の下側歪抵抗素子
20 第1の上側歪抵抗素子
21 第2の上側歪抵抗素子
22 連接部
23 被挟持部
24 固定部
32 押圧部材
33 ケース
36 処理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面に歪抵抗素子とこの歪抵抗素子と回路パターンにより電気的に接続された電極とを設けた筒部とこの筒部の内側面から内方に向かって設けた連接部と被挟持部とからなる固定部とを設けた起歪体と、この起歪体における被挟持部を挟持して固定する固定部材と、前記起歪体における筒部を押圧する押圧部材と、前記起歪体における歪抵抗素子からの出力信号を処理する処理回路を設けたケースとを備え、前記押圧部材を起歪体の長手方向に移動させることにより起歪体における連接部から筒部に対してモーメント力が作用するように構成した重量センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−91453(P2010−91453A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262526(P2008−262526)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】