説明

重量物用の段ボール梱包箱、およびそのクレーン荷役方法

【課題】重量物の電気機器製品を段ボール梱包箱に梱包した状態の荷姿でクレーンにより吊り運搬する場合でも、強度の弱い段ボール梱包箱に吊り荷重を掛けることなく、安全にクレーン荷役が行えるようにする。
【解決手段】吊りボルト4aを設けた電気機器4を梱包する段ボール梱包箱1が、上面フラップ1aで蓋をし、底部にはスキッド1bを備え、さらに電気機器4と上面フラップ1aの間に上部スペーサ3を介装した箱体になるものにおいて、電気機器4の吊りボルト4aに位置を合わせて、上部スペーサ3の四隅に吊りボルト逃げ用の切欠部3cを形成するとともに、上面フラップ1aには開閉可能な窓フラップ1cを切込み形成し、クレーンで吊り運搬する際には、前記窓フラップ1cを開放した上で、上部スペーサ3の切欠部3cを通じて電気機器4の吊りボルト4aにクレーンの吊りワイヤを直接通して運搬する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場から出荷する製品の輸送にあたって、1台ずつクレーンによる荷役を必要とする比較的大型で重量物の電気機器を梱包する段ボール梱包箱、およびそのクレーン吊りによる荷役方法に関する。
【背景技術】
【0002】
頭記した重量物の電気機器製品を工場から出荷して国内,国外の顧客に輸送する場合に、従来は製品を木枠などで作られた頑丈な梱包箱で梱包して輸送するのが一般的であった。しかしながら、木材の梱包資材はリサイクルの問題があり、また外国に輸出する場合には輸出先国の検疫から梱包箱の燻蒸処理を要するなどの問題があることから、昨今では木材の梱包資材の代替として、軽量,かつリサイクルが可能で燻蒸処理も必要ない強化段ボールで作った梱包箱が採用されるようになっており、その一例として重量物の電気機器(例えば、無停電電源装置)を梱包する段ボール製の梱包箱として、その箱体の内側に緩衝材を配置するとともに、箱体の底部に段ボールの積層体からなるスキッド(足)を一体に設けてフォークリフトによる荷役,段積みに対応できるようにした構造の段ボール梱包箱が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−315474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、段ボール製の梱包箱は強度的に限界があり、例えばクレーンを使って重量物の電気機器を梱包した荷を船積みするなどの荷役作業には不適である。すなわち、段ボール製の梱包箱にアイボルトなどの吊りボルトを取り付けクレーンにワイヤで吊るには強度が不足し、また梱包箱にワイヤを巻き付けてクレーンで吊る方法は荷役作業の途中で姿勢のバランスが崩れて荷が落下する危険がある。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、重量物の電気機器製品を段ボール梱包箱に梱包した状態の荷姿でクレーンにより吊り運搬する場合でも、梱包箱自身に過大な吊り荷重を加えることなく、電気機器自身に設けた吊りボルトを利用して安全にクレーン荷役が行えるように改良した段ボール梱包箱、およびそのクレーン荷役方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明によれば、器体上面に吊りボルトを設けた重量物の電気機器を梱包する段ボール梱包箱で、その上面をフラップで蓋をする段ボール製の箱体には電気機器の器体上面と上面フラップとの間に段ボール製の上部スペーサを介装し、箱体底部にスキッドを備えたものにおいて、
電気機器の吊りボルトに位置を合わせて、前記上部スペーサに吊りボルト逃げ用の切欠部を形成するとともに、箱体の上面フラップには開閉可能な窓フラップを切込み形成する(請求項1)。
【0007】
また、前記の段ボール梱包箱において、上部スペーサを左右の分割体に二分した上で、“クレーン吊り”,“段積み”の荷役に合わせて前記分割体の突き合わせ方向を変更できるようにする(請求項2)。
【0008】
そして、前記構成の段ボール梱包箱で梱包した電気機器をクレーンに吊って運搬する際には、梱包箱の上面に形成した窓フラップを開放した上で、上部スペーサの切欠部を通じて電気機器の吊りボルトにクレーンの吊りワイヤを直接通して吊り運搬するようにする(請求項3)。
【発明の効果】
【0009】
上記した段ボール梱包箱の構造,およびクレーン荷役方法によれば、重量物の電気機器を段ボール梱包箱に梱包したままの荷姿で、梱包箱に過大な吊り荷重を加えることなしに、僅かに梱包箱の上面に形成した窓フラップを開いてクレーンの吊りワイヤを電気機器の吊りボルトに直接通すことで、安全に荷をクレーンで吊り運搬することができる。
【0010】
また、上部スペーサを左右の分割体に分け、“段積み”の荷役に合わせて前記分割体の突き合わせ方向を変更するようにしたことにより、荷を倉庫などに段積みして保管する状態での梱包箱の圧縮強さを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例による段ボール梱包箱の構造を、該梱包箱で梱包する重量物の電気機器とともに表した分解斜視図である。
【図2】図1の段ボール梱包箱に梱包した荷姿の外観斜視図である。
【図3】図1における上部スペーサの構造図であって、(a)はスペーサの分割体を左右に分離した状態、(b),(c)はそれぞれ上部スペーサを“クレーン吊り”,“段積み”に対応する向きに突き合わせた状態を表す斜視図である。
【図4】図1の段ボール梱包箱に梱包した電気機器をクレーン吊りした状態の斜視図である。
【図5】図4のクレーン吊り運搬後に段ボール梱包箱を段積みした状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図5に示す実施例に基づいて説明する。
まず、重量物の電気機器を梱包する段ボール製梱包箱の構造を図1により説明する。図1において、1は直方体形状の段ボール梱包箱、2は梱包箱1の箱体底部,および内周に配した緩衝スペーサ、3は箱体内部の上側に配した段ボール製の上部スペーサ、4は梱包対象物である重量物の電気機器、4aは電気機器4の器体上面の四隅に植設した吊りボルト(アイボルト)である。
【0013】
上記の段ボール梱包箱1は強化段ボールで作られたものであり、その上部側には胴部の周囲四辺に上面フラップ1aを形成し、箱体の底部側には段ボールの積層ブロックになるスキッド(足)1bを備えている。そして、この梱包箱1で電気機器4を梱包するには、梱包箱1の底部に敷いた緩衝スペーサ2の上に電気機器4を載せ、かつ電気機器4の周囲と梱包箱1との間の隙間に別な緩衝スペーサ2を装填した上で、電気機器4の上に上部スペーサ3を重ね合わせ、この状態で前記の上フラップ1aを折り重ねして蓋をする。ここまでの構造は従来の段ボール梱包箱と基本的に同じであり、その荷姿を図2に示す。なお、図中の符号5は段ボール梱包箱1の周囲に巻き付けた結束バンドである。
【0014】
ここで、図示実施例の段ボール梱包箱1には、前記した上面フラップ1aの各片に対して、電気機器4の吊りボルト4aの設置位置に合わせて開閉可能な小形サイズの窓フラップ1cが切込み形成されている。なお、この窓フラップ1cはその一辺が梱包箱1の胴部に連なるヒンジ形のフラップで、その輪郭に沿って切込線を入れるか、ミシン目を入れておき、上面フラップ1aを折り重ねて梱包箱1の上面に蓋をした状態で外部から窓フラップ1cを開閉できるようしている。
【0015】
一方、上部スペーサ3には、その四隅のコーナーに電気機器4の吊りボルト4aを逃がすように切欠部3cが切欠き形成されている。また、図示例の上部スペーサ3は、図3(a)で示すように左右の分割体3aと3bに二分割されており、図1に示した製品出荷時の梱包状態(クレーンで吊り荷役を行う以前の状態)では前記切欠部3cが外側を向くように分割体3a,3bを左右に突き合わせて梱包箱1の中に組み込むようにしている。
【0016】
なお、図3(c)は後記のように現地に輸送した電気機器4を段ボール梱包箱1に梱包したまま倉庫などに段積みする場合の上部スペーサ3の向きを表しており、この段積み状態では分割体3aと3bを図3(b)と逆向きに入れ替え、梱包箱1の四隅に加わる圧縮荷重が強度的に弱い切欠部3cに直接加わらないようにしている(上部スペーサ3の切欠部3cが梱包箱1の四隅に向くと、箱体の圧縮強さが低下する)。
【0017】
次に、前記の段ボール梱包箱1で梱包した重量物の電気機器4を工場から出荷して納品先現地に輸送する間で行う荷役作業について説明する。まず、製品を工場から出荷する際の荷姿は図1で述べたように上部スペーサ3を図2(b)の向きにセットし、箱体の上面に形成した窓フラップ1cは閉じておく。
【0018】
この梱包荷姿で、クレーンを使って電気機器4を吊り移送する場合には、まず地上で段ボール梱包箱1の上面四隅に切込み形成した窓フラップ1cを開き、この状態で電気機器4の器体上面に重ね合わせた上部スペーサ3の切欠部3cを通じてクレーンの吊りワイヤを吊りボルト3aに通した後、図4で示すようにクレーンのフック6に吊りワイヤ7を掛けてクレーンにより吊り荷役を行う。これにより、段ボール梱包箱1には過大な吊り荷重が加わることがなく、荷を安全に運搬することができる。この場合に、電気機器4の器体上面と梱包箱1の上面フラップ1aの間には上部スペーサ3が介装されているので、電気機器4が箱体の中で上下に動くことはない。なお、クレーン吊り荷役が終了すると、梱包箱1の窓フラップ1cは元の状態に閉じておく。
【0019】
一方、納品先に運搬した電気機器4を段ボール梱包箱1に梱包したまま倉庫などにフォークリフトを使って段積み保管する場合には、段積み荷役を実施する前に梱包箱1の上面フラップ1aを開放し、上部スペーサ3の分割体3a,3bの突き合わせ姿勢を図3(c)のように左右に入れ替えて切欠部3cが梱包箱1の四隅に位置しないように変更した上で、上面フラップ1a,および窓フラップ1cを折り畳んで蓋をする。そして、フォークリフトのフォークを梱包箱1の底部に設けたスキッド1bの間に差し入れ、図5のように段積みする。
【0020】
この段積み状態では、段ボール梱包箱1の上部スペーサ3の分割体3a,3bが図示のような向きに突き合わせセットされていて、切欠部3cの位置が梱包箱1の四隅から外れるので、梱包箱の安全な圧縮強さを確保できる。
【0021】
なお、図示実施例では電気機器4の4本の吊りボルト4aが器体上面の四隅に設けてあり、この吊りボルト4aの配置に合わせて段ボール梱包箱1の窓フラップ1c,および上部スペーサ3の切欠部3cを四隅に形成している。しかし、電気機器4の機種,形状,重量によっては吊りボルト4aの本数,取付け位置が異なる場合があることから、その場合には前記した段ボール梱包箱1の窓フラップ1c,上部スペーサ3の切欠部3cを吊りボルトの位置に合わせて形成するものとする。
【符号の説明】
【0022】
1 段ボール梱包箱
1a 上面フラップ
1b スキッド
1c 窓フラップ
3 上部スペーサ
3a,3b 分割体
3c 切欠部
4 重量物の電気機器
4a 吊りボルト
6 クレーンのフック
7 吊りワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
器体上面に吊りボルトを備えた重量物の電気機器を梱包する段ボール梱包箱であって、上フラップで蓋をする段ボール製の箱体には電気機器の上面と上フラップとの間に段ボール製の上部スペーサを介装し、箱体底部にスキッドを備えたものにおいて、
電気機器の吊りボルトに位置を合わせて、前記上部スペーサに吊りボルト逃げ用の切欠部を形成するとともに、箱体の上面フラップには開閉可能な窓フラップを切込み形成したことを特徴とする重量物用の段ボール梱包箱。
【請求項2】
請求項1に記載の段ボール梱包箱において、上部スペーサを左右の分割体に二分した上で、“クレーン吊り”,“段積み”の荷役に合わせて前記分割体の突き合わせ方向を変更するようにしたことを特徴とする重量物用の段ボール梱包箱。
【請求項3】
請求項1に記載の段ボール梱包箱で梱包した電気機器をクレーンに吊って運搬する際に、梱包箱の窓フラップを開放した上で、上部スペーサの切欠部を通じて電気機器の吊りボルトにクレーンの吊りワイヤを直接通して吊り運搬するようにしたことを特徴とする重量物用段ボール梱包箱のクレーン荷役方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−62084(P2012−62084A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206878(P2010−206878)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】