説明

重量物移送用のプッシュプル装置及び方法

【課題】同一の装備で、重量物が搭載された補機トレーンをスキッドレール上で押す力と引っ張る力を互いに同一の大きさで発生させ、補機トレーンを押す又は引っ張る方法で移送できるようにする。
【解決手段】スキッドレール110上で移動可能に、前方側及び後方側にガイドローラ20が設けられたフレームカバー2と、フレームカバー2の内側の同一方向にピストンロッド3dが固定され、油圧によって作動する多数のランチングシリンダ3と、ランチングシリンダ3の後方側にそれぞれ結合され、ランチングシリンダ3をスキッドレール110上に固定又は解除するクランプ装置4と、を備える。補機トレーンで重量物の移送中、反対方向に補機トレーンを移動しなければならない場合、既存のようにウインチ等のような別途の設備無しに、プッシュプル装置のみで移動が可能であるので、作業の簡便性及び効率性を確保することができるという効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物移送用のプッシュプル装置に関し、より詳しくは、重量物が搭載された補機トレーンをスキッドレール上で押す力と引っ張る力を互いに同一の大きさで発生させ、上記補機トレーンを押す又は引っ張る方法で移送可能にした重量物移送用のプッシュプル装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、船舶建造工法としては、土を掘って大型船を建造した後、水を満たして進水するドライドックを使用する船舶建造工法と、地上で船舶をブロックに分けて製作した後、クレーンを用いて、このブロックを海上のフローティングドックに移してから、組立て作業を通じて船舶を建造する海上建造工法と、地上で船舶全体を完全に建造してから、海上のバージ船に移送させて進水する陸上建造工法とがある。
【0003】
上記陸上建造工法は、ドライドックによる船舶建造工法のように土を掘ってドックを作る作業が必要なく、地上で船舶の全体を完全に建造するので、揺れる海上で船舶を建造する海上建造工法に比べて、船舶建造作業が容易であるという利点はあるものの、数万トン級以上の重量を有する地上の大型船を海上に運搬するための技術的な難点があった。
【0004】
このような陸上建造工法の技術的な難点を克服するために、近来は、図1に示すような補機トレーンを用いた重量物移送装置が使用されており、地上の床面に設置されるスキッドレール110と、このスキッドレール110に沿って移動可能に下部側にホイールが取り付けられ、油圧ジャッキ121を有し、この油圧ジャッキ121のジャッキアップ動作によって、上部側に重量物を搭載する補機トレーン120と、重量物が搭載された補機トレーン120をスキッドレール110上で押して又は引っ張って移送させるプッシュプル装置130と、で構成される。
【0005】
また、上記プッシュプル装置130では、通常、プッシュプルグリッパジャッキが用いられる。このプッシュプルグリッパジャッキは、油圧によって、地面上に突設された別途のクランプ用レールをつかんでクランプする又は解除するクランプ装置131と、このクランプ装置131と結合され、ピストンロッド132dの端部が、補機トレーン120や補機トレーンの上部構造体に直接連結される油圧シリンダ132と、で構成される。
【0006】
このように構成されたプッシュプル装置130は、スキッドレール110に対するクランプ装置131のクランプ動作と共に、油圧シリンダ132の作動によって、ピストンロッド132dが、スキッドレール110上の補機トレーン120や上部構造体を押して移送し、スキッドレール110に対するクランプ装置131の解除と、ピストンロッド132dの後進によって、クランプ装置131がスキッドレール110に沿って前進した後、再度スキッドレール110に対するクランプ装置131のクランプ動作とピストンロッド132dの前進によって、補機トレーン120や上部構造体を押して移送することを繰り返しながら、重量物が搭載された補機トレーン120をスキッドレール110上で移送させるようにしている。
【0007】
一方、上記油圧シリンダ132は、図2に示すように、前方側及び後方側にシリンダの内部にオイルが出入するポートA(132a)とポートB(132b)とが設けられ、これらのポートA(132a)及びポートB(132b)から供給される油圧によって、ピストン132cが左右に移動する複動ピストン式油圧シリンダで構成される。
【0008】
この場合、ピストン132cは、ピストンロッド132dが設けられていない一側面が、ピストンロッド132dが設けられている他側面よりも断面積が大きく、油圧を大きく受けるので、ピストンロッド132dの後進時よりもピストンロッド132dの前進時に、大きな力が発生するようになる。
【0009】
このため、ピストンロッド132dの前進によって、重量物が搭載された補機トレーン120をスキッドレール110上で動かすことができる力を100とすると、ピストンロッド132dを後進させるときは、100の力が発生せず、一般に、半分以下の力が発生することにより、重量物が搭載された補機トレーン120を動かすことができなくなる。
【0010】
結果として、従来のプッシュプル装置130は、実質的に補機トレーン120を押して移送させるプッシング作用のみを行い、引っ張り(プル)による補機トレーン120の移送は殆ど不可能であるため、ウインチ等のような別途の設備を利用しなければならず、これにより、作業の煩わしさ及び不便さはもとより、作業の非効率性をもたらすという問題点があった。
【0011】
これとともに、従来のプッシュプル装置130では、クランプ装置131によって油圧シリンダ132がスキッドレール110に固定された状態で、ピストンロッド132dの前進により、補機トレーン120の移送が行われてから、スキッドレール110に対するクランプ解除及びピストンロッド132dの後進により、クランプ装置131がスキッドレール110に沿って前進するとき、補機トレーン120に対して押す力が連続的に作用せず途切れる。
【0012】
したがって、再度クランプ装置131を用いて、油圧シリンダ132をスキッドレール110に固定した後、ピストンロッド132dを前進させ、補機トレーン120を押すときは、動摩擦力に比べて2倍となる静摩擦力を克服しなければならないことにより、さらに最初のような大きな力を必要とするため、重量物が搭載された補機トレーンの移送が容易ではないだけでなく、静止動作及び加減速区間によって移送時間がかかり過ぎる。これにより、海上に位置したフローティングドック等にロードアウトの際、下げ潮及び上げ潮の潮差に長時間対応しなければならない等、危険にさらされる時間が長くなり、ロードアウトに最適な上げ潮時間(6時間)以内の移送が不可能である等、適用に制限を多く受け、重量物移送の非効率性をもたらすという問題点があった。
【0013】
上述された従来の技術と類似する特許文献として、韓国公開特許第2006‐0017558号公報がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】韓国公開特許第2006−0017558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、同一の装備で、重量物が搭載された補機トレーンをスキッドレール上で押す力と引っ張る力を互いに同一の大きさで発生させ、この補機トレーンを押す又は引っ張る方法で移送することができるようにすることにある。
【0016】
また、他の目的は、重量物が搭載された補機トレーンをスキッドレール上で押して又は引っ張って移送するとき、一般に用いられるプッシュプル装置のように、往復動の最初と最後における静止区間を除去することにより、この補機トレーンに作用する力が途切れることなく連続的に作用するようにすることにある。
【0017】
また、さらに他の目的は、スキッドレールとして一般の鉄道レールを用いるとき、別途のクランプ用レールを設置せず、スキッドレールをクランプ用として活用できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、スキッドレール上で移動可能に、前方及び後方にガイドローラが設けられたフレームカバーと、前記フレームカバーの内側の同一方向にピストンロッドが固定され、油圧により作動する多数のランチングシリンダと、前記ランチングシリンダの後方側にそれぞれ結合され、ランチングシリンダをスキッドレール上に固定又は解除するクランプ装置と、を備えることを特徴とする重量物移送用のプッシュプル装置が提供される。
【0019】
また、前記ランチングシリンダは、互いに反対方向にシリンダ動作が行われる1対の第1及び第2のランチングシリンダで構成され、前記クランプ装置は、互いに反対にクランプ動作が行われる1対の第1及び第2のクランプ装置で構成されることを特徴とする。
【0020】
また、前記クランプ装置は、油圧装置によって、スキッドレールのヘッド上部に押し付けられるプッシュプレートと、前記スキッドレールのヘッドの下部両側に設けられ、油圧装置の作動によって、スキッドレールのヘッドの下部に押し付けられる顎部と、を備えることを特徴とする。
【0021】
また、フレームカバーの内側の同一方向にピストンロッドが固定された1対の油圧シリンダに、互いに反対方向に油圧を供給する油圧供給ステップと、前記油圧シリンダのうち一方の油圧シリンダのピストンロッドが前進するとき、その油圧シリンダに結合されたクランプ装置によって、スキッドレールに油圧シリンダを固定するクランプ固定ステップと、前記油圧シリンダのうち他方の油圧シリンダのピストンロッドが後進するとき、その油圧シリンダに結合されたクランプ装置による油圧シリンダの固定を解除するクランプ解除ステップと、前記油圧供給ステップとクランプ固定及び解除ステップとによる繰り返し動作によって、重量物が搭載された補機トレーンを、レール上で連続的に押して又は引っ張って移送する重量物移送ステップと、からなることを特徴とする重量物移送用のプッシュプル方法が提供される。
【0022】
本発明の他の側面によって、スキッドレールに沿って転がり又は摺動移動可能に配置されたフレームカバーと、前記スキッドレールと平行に前記フレームカバーの内部に位置し、ピストンロッドの端部が前記フレームカバーの内側に固定された油圧シリンダと、前記油圧シリンダを前記スキッドレールに固定し又はその固定を解除させるように構成されたクランプ装置と、を備える重量物移送用のプッシュプル装置が提供される。
【0023】
本発明のまた他の側面によって、重量物移送用のプッシュプル移送方法が提供され、前記プッシュプル移送方法は、スキッドレールに沿って転がり又は摺動移動可能にフレームカバーを配置し、端部が前記フレームカバーの内側に固定される油圧シリンダを、前記スキッドレールと平行に前記フレームカバーの内部に位置させ、前記油圧シリンダが前記スキッドレールに固定されたとき、前記ピストンロッドを前進駆動させ、前記固定が解除されたとき、前記ピストンロッドを後進駆動させることを含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、重量物が搭載された補機トレーンをスキッドレール上で押す力と引っ張る力が互いに同一に行われるようにし、上記補機トレーンを押して又は引っ張って移送させることにより、補機トレーンの船積みを進めるうちに、再度反対方向に補機トレーンを移動しなければならないとき、既存のようにウインチ等のような別途の設備無しに、プッシュプル装置のみで移動が可能であるので、作業の簡便性及び効率性を確保することができる。
【0025】
また、重量物が搭載された補機トレーンを、スキッドレール上で押して又は引っ張って移送するとき、前記補機トレーンに作用する力が途切れることなく、連続的に作用するようにすることにより、重量物移送作業がさらに容易になるだけでなく、重量物移送の迅速性を確保することができる。
【0026】
また、スキッドレールのヘッドの上部側のプッシュプルと下部側の顎部が、油圧装置による強い押付け力によって、スキッドレールに対するクランプ動作が行われるように構成されることにより、クランプ動作の確実性及び正確性を期することができるだけでなく、スキッドレールに別途の構造物を加えることなく、通常の鉄道レールをそのまま使用することにより、使用の簡便性を期することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】一般の重量物移送装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】図1の油圧シリンダの構造を示す例示図である。
【図3】本発明に係る装置の全体的な構成を示す正面図である。
【図4】本発明に係る装置の全体的な構成を示す平面図である。
【図5】本発明に係る装置の第1実施例を示す例示図である。
【図6】本発明に係る装置の第1実施例を示す例示図である。
【図7】本発明に係る装置の第1実施例を示す例示図である。
【図8】本発明に係る装置の第2実施例を示す例示図である。
【図9】本発明に係る装置の第2実施例を示す例示図である。
【図10】本発明に係る装置の第2実施例を示す例示図である。
【図11】本発明に係る装置の第3実施例を示す例示図である。
【図12】本発明に係る装置の第3実施例を示す例示図である。
【図13】本発明に係る装置の第3実施例を示す例示図である。
【図14】図1におけるスキッドレールの設置状態を示す断面図である。
【図15】図1におけるスキッドレールの設置状態を示す断面図である。
【図16】図1におけるスキッドレールの設置状態を示す断面図である。
【図17】図1におけるスキッドレールの設置状態を示す断面図である。
【図18】本発明に係る装置のクランプ装置を示す断面図である。
【図19】本発明に係る装置のガイドローラを示す断面図である。
【図20】本発明に係る装置の固定ローラを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付した図面に基づき、本発明の好適な実施形態について詳述する。
【0029】
図3は、本発明に係る装置の全体的な構成を示す正面図であり、図4は、その平面図である。
【0030】
これらに図示するように、本発明のプッシュプル装置は、油圧発生装置1から油圧が供給されて作動するようになっており、外部には、フレームカバー2が設けられている。フレームカバー2には、スキッドレール110に沿って移動可能に、前方側及び後方側にガイドローラ20が設けられている。
【0031】
上記油圧発生装置1もまた、スキッドレール110に沿って移動可能に、フレーム11の前方側及び後方側にガイドローラ12が設けられている。フレーム11の内部には、エンジン13、ジェネレータ14、モータ15及び油圧ポンプ16が装着され、磁力による動力で油圧を発生させるように構成されている。油圧発生装置1は、フレームカバー2が移動するスキッドレール110上で一緒に移動し、又は、上記スキッドレール110と隣接した他のスキッドレール110に沿って移動することができる。
【0032】
また、フレームカバー2の内部には、複数個のランチングシリンダ(launching cylinders)3と、このランチングシリンダ3を、クランプ動作によって、スキッドレール110に固定又は解除するクランプ装置(clamping devices)4とが設けられており、クランプ装置4は、ランチングシリンダ3の後方側に結合されて一緒に動くように構成されている。
【0033】
これとともに、油圧発生装置1とランチングシリンダ3及びクランプ装置4との統合制御のために制御装置5が設けられている。この制御装置5もまた、スキッドレール110に沿って移動可能に構成され、制御装置5の内部には、油圧発生装置1とランチングシリンダ3及びクランプ装置4のようなプッシュプル関連装置に設けられた各種の計器及びセンサで検出されるデータを表示するディスプレイと油圧制御機構が設けられている。
【0034】
また、制御装置5は、油圧発生装置1と連結され、スキッドレール110に沿って引っ張られながら、操作者が搭乗した状態でシステムを制御することができるように、又は、油圧発生装置1の側面に設けられた制御パネルを用いて歩きながらシステムを制御することができるように構成されている。ここで、符号21は、フレームカバーの浮き上がりを防止する役割をする固定ローラを示す。
【0035】
図5乃至図7は、本発明に係る装置の第1実施形態を示す例示図である。
【0036】
これらに図示するように、本発明では、フレームカバー2の内側に複数個のランチングシリンダ3のピストンロッド3dが互いに平行に固定され、それぞれのピストンロッド3dは、後方側にクランプ装置4が結合されている。
【0037】
また、フレームカバー2の後方側には、重量物が搭載された補機トレーンが連結されている。以下、重量物が搭載された補機トレーンを「荷重(load)」という。
【0038】
このように構成された本発明では、先ず、図5に示すように、クランプ装置4のクランプ動作によって、スキッドレール110にランチングシリンダ3が固定された状態で、ランチングシリンダ3のポートB(3b)から油圧が供給される。この供給された油圧によって、ピストン3c及びピストンロッド3dが前進し、フレームカバー2を押して移送させる。
【0039】
また、図6に示すように、スキッドレール110に固定されていたランチングシリンダ3がクランプ装置4の解除によって固定が解除された後、ランチングシリンダ3のポートA(3a)から油圧が供給されると、フレームカバー2に固定されているピストン3c及びピストンロッド3dによって、ランチングシリンダ3及びクランプ装置4がフレームカバー2の進行方向に前進する。
【0040】
その後、再度クランプ装置4のクランプ動作によって、スキッドレール110にランチングシリンダ3が固定され、ランチングシリンダ3のポートB(3b)からシリンダ内部に油圧が供給され、ピストン3c及びピストンロッド3dがフレームカバー2を押して移送する動作を繰り返しながら、フレームカバー2の後方側に連結された荷重100を引っ張って移送するようになる。
【0041】
一方、図7に示すように、フレームカバー2の後方側に連結されていた荷重100を、フレームカバー2の前方側に連結する場合は、荷重100をフレームカバー2が押して移送するようになる。
【0042】
図8乃至図10は、本発明に係る装置の第2実施形態を示す例示図である。
【0043】
ここで、本実施形態の特徴は、荷重100を押して又は引っ張って移送するとき、荷重100に作用する力が途切れなく連続的に作用するようにすることにある。
【0044】
このため、上述したランチングシリンダを、油圧供給が互いに反対方向に行われる第1ランチングシリンダ31と第2ランチングシリンダ32とに分離構成し、クランプ装置4も、互いに反対にスキッドレール110に対するクランプ動作が行われる第1クランプ装置41と第2クランプ装置42とに分離構成している。
【0045】
また、第1ランチングシリンダ31及び第2ランチングシリンダ32の各ピストンロッド31d、32dは、本発明の第1実施形態と同様に、フレームカバー2の内側に互いに平行に固定されている。第1及び第2ランチングシリンダ31、32は、それぞれのシリンダ内部に連通するポート1A(31a)及びポート1B(31b)とポート2A(32a)及びポート2B(32b)を含む。
【0046】
このように構成された本発明では、油圧供給ステップ−クランプ固定ステップ−クランプ解除ステップ−荷重移送ステップからなるプッシュプル方法が、これらのステップの連続動作によって行われる。以下、これについて、添付図面に基づき、より具体的に説明する。
【0047】
(油圧供給ステップ)
このステップでは、フレームカバー2の内部に同一方向にピストンロッド31d、32dが互いに平行に固定された第1ランチングシリンダ31及び第2ランチングシリンダ32のポート1B(31b)及びポート2A(32a)にそれぞれ油圧を供給し、この供給された油圧によって第1ランチングシリンダ31及び第2ランチングシリンダ32のピストン31c、32c及びピストンロッド31d、32dは、互いに反対方向、すなわち、第1ランチングシリンダ31のピストン31c及びピストンロッド31dは前進方向に、第2ランチングシリンダ32のピストン32c及びピストンロッド32dは後進方向に移動しようとする力が発生する。
【0048】
(クランプ固定ステップ)
このステップでは、油圧供給によって前進する第1ランチングシリンダ31のピストン31c及びピストンロッド31dの力がフレームカバー2に作用するようにする。これらのピストン31c及びピストンロッド31dの力がフレームカバー2に作用するためには、第1ランチングシリンダ31がスキッドレール110に固定されていなければならない。
【0049】
従って、第1クランプ装置41は、第1ランチングシリンダ31のピストン31c及びピストンロッド31dが油圧供給によって前進するとき、スキッドレール110をつかんで固定するクランプ動作を行う。
【0050】
この際、第1ランチングシリンダ31と反対方向に作動する第2ランチングシリンダ32の後方側の第2クランプ装置42は、スキッドレール110に対するクランプ動作を行わない。
【0051】
(クランプ解除ステップ)
このステップでは、スキッドレール110に対する第1クランプ装置41のクランプ動作を解除することにより、第1ランチングシリンダ31が第1クランプ装置41と一緒にスキッドレール110に沿って前進するようにしている。
【0052】
すなわち、ポート1A(31a)から油圧が供給されると、第1ランチングシリンダ31のピストン31c及びピストンロッド31dは後進する力を発生するが、この際、ピストン31c及びピストンロッド31dは、フレームカバー2に固定されているので、直接的な後進が行われず、反力によって第1ランチングシリンダ31が前進し、第1ランチングシリンダ31と一緒に第1クランプ装置41も一緒に移動する。
【0053】
この際、第2ランチングシリンダ32のピストン32c及びピストンロッド32dは、油圧供給によって前進し、第2クランプ装置42は、クランプ固定ステップにおけるように、スキッドレール110に対するクランプ動作を行い、前進する第2ランチングシリンダ32のピストン32c及びピストンロッド32dの力がフレームカバー2に作用されるようにする。
【0054】
(重量物移送ステップ)
このステップでは、上述のように、油圧供給ステップとクランプ固定及び解除ステップによって、第1ランチングシリンダ31のピストンロッド31dがフレームカバー2を押し、第2ランチングシリンダ32及び第2クランプ装置42は、スキッドレール110に沿って前進し、さらに、第2ランチングシリンダ32のピストンロッド32dがフレームカバー2を押し、第1ランチングシリンダ31及び第1クランプ装置41は、スキッドレール110に沿って前進することを繰り返しながら、シリンダの力を荷重100に連続的に作用させることにより、荷重100を引っ張って移動するようになる。
【0055】
この際、図10に示すように、荷重100がフレームカバー2の前方に連結されると、フレームカバー2が荷重を押して移送させるようになり、荷重100がフレームカバー2の前方又は後方に連結されるいずれの場合にも、ピストンのピストンロッドが設けられていない一側面に油圧が供給され、フレームカバー2を同一の力で押すようになるので、荷重100を引っ張って又は押して移送させることが可能となる。
【0056】
図11乃至図13は、本発明に係る装置の第3実施形態を示す例示図である。
【0057】
上述のように、本発明の第1実施形態及び第2実施形態では、一つのフレームカバーの内部に、1対のランチングシリンダ及びクランプ装置を備え、互いに反対に同時に作動するように構成することにより、補機トレーンに対する力の伝達が途切れなく連続的に行われるようにしているが、本発明の第3実施形態は、1対のフレームカバー2、すなわち、一方のフレームカバー2に内蔵された複数個のランチングシリンダ及びクランプ装置は、互いに同じ動作を行い、他方のフレームカバー2に内蔵された複数個のランチングシリンダ及びクランプ装置は、一方のフレームカバー2に内蔵されたランチングシリンダ及びクランプ装置と反対に作動するように構成したことを特徴とするものである。
【0058】
これをさらに具体的に説明すると、図11に示すように、第1フレームカバー2aの内部には、複数個の第1ランチングシリンダ31及び第1クランプ装置41を備え、第2フレームカバー2bの内部には、複数個の第2ランチングシリンダ32及び第2クランプ装置42を備えている。油圧供給によって第1ランチングシリンダ31のピストン31c及びピストンロッド31dが前進すると、第2ランチングシリンダ32のピストン31c及びピストンロッド31dは、後進方向に油圧を受けて、第2ランチングシリンダ32及び第2クランプ装置42がスキッドレール110に沿って同時に前進する。
【0059】
また、図12に示すように、第1ランチングシリンダ31のピストン31c及びピストンロッド31dが後進方向に油圧を受け、第1ランチングシリンダ31及び第1クランプ装置41が前進するとき、第2ランチングシリンダ32のピストン32c及びピストンロッド32dは、油圧供給によって前進することにより、荷重100に連続的な力を提供することができ、本発明の第1実施形態及び第2実施形態よりも、大きな力で荷重100を引っ張って移送させるようになる。
【0060】
また、図13に示すように、荷重100が第1フレームカバー2a及び第2フレームカバー2bの前方側に位置した場合は、荷重100が押されて移送される。
【0061】
図14乃至図17は、図1におけるスキッドレールの形態を示す例示図である。
【0062】
通常、船舶を建造する造船所では、フォークリフトのような運搬車両の使用が頻繁に行われるので、床面に敷かれるスキッドレール110は、図14及び図15に示すように、レール設置溝113の内部に設けられ又は高さを低くして設けられ、あるいは、図16に示すように、スキッドレールを設置せず、床面に鉄板110bを敷き、その上を補機トレーンのホイール122が走行するようにしている。
【0063】
従って、スキッドレールに対するクランプ装置のクランプ動作が難しくなるので、スキッドレールに沿って地面上に突設される別途のクランプ用レールを多数設けていなければ、スキッドレールに対するクランプ動作が行われないようにしている。
【0064】
図17は、一般の鉄道レールの形態をなすスキッドレール110aであり、このスキッドレール110aを用いる場合は、上記のように、スキッドレール110に別途のクランプ用レールを加える作業が必要なくなるので、床面にレール設置溝113を深く掘ってスキッドレール110を床面の高さに合わせて設置するようになる。
【0065】
本発明のクランプ装置4は、鉄道レールの形態を有する通常のスキッドレール110aをクランプするのに好適な構造からなるものであり、以下、これについて、添付した図面に基づき、詳述する。
【0066】
図18は、本発明に係る装置のクランプ装置を示す断面図である。
【0067】
これに図示のように、本発明のクランプ装置4は、スキッドレールヘッド111の上部側に接触するプッシュプレート44と、スキッドレールヘッド111の下部側に接触する顎部45とを備え、これらのプッシュプレート44と顎部45は、油圧装置43の作動によって、スキッドレールヘッド111の上下部に強く押し付けられ、スキッドレール110に対するクランプ動作が行われるようにしている。
【0068】
この動作過程をさらに具体的に説明すると、上部ポート43cから油圧装置43の内部に油圧が供給されると、ピストン43aが下降しながら、ロッド43bがプッシュプレート44を上部から下部側に強く押圧し、下部側の顎部45は、反力によって上部側に移動しながら、スキッドレールヘッド111の下部側を下部から上部側に強く押圧するようになり、プッシュプレート44及び顎部45は、スキッドレールヘッド111の上下部側に強く押し付けられることにより、スキッドレール110に対するクランプ動作が行われるようになる。
【0069】
また、下部ポート43dから油圧装置43の内部に油圧が供給されると、ピストン43aが上昇しながら、ロッド43bがプッシュプレート44に対する押圧を解除し、顎部45は、反力によって下部側に移動しながら、スキッドレールヘッド111から分離されることにより、スキッドレール110に対するクランプ動作を解除するようになる。
【0070】
図19は、本発明に係る装置のガイドローラを示す断面図であり、図20は、本発明に係る装置の固定ローラを示す断面図である。
【0071】
図19に示すように、油圧発生装置1及びフレームカバー2のガイドローラ12、20は、通常の鉄道レールの形態をなし、固定具112によって地面に固定されたスキッドレール110aに転がり接触するように構成される。
【0072】
また、図20に示すように、スキッドレールヘッド111の下部側には、フレームカバー2が重量物を押すとき、フレームカバーの先端部が上方に浮き上がらないように、固定ローラ21が設けられている。
【符号の説明】
【0073】
1 油圧発生装置
2 フレームカバー
3 ランチングシリンダ
4 クランプ装置
11 フレーム
12 ガイドローラ
13 エンジン
14 ジェネレータ
15 モータ
16 油圧ポンプ
20 ガイドローラ
31、32 第1及び第2のランチングシリンダ
41、42 第1及び第2のクランプ装置
43 油圧装置
44 プッシュプレート
45 顎部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキッドレール(110)上で移動可能に、前方及び後方にガイドローラ(20)が設けられたフレームカバー(2)と、
前記フレームカバー(2)の内側にピストンロッド(3d)が同一方向に固定され、油圧発生装置(1)から供給される油圧によって作動する複数のランチングシリンダ(3)と、
前記ランチングシリンダ(3)の後方側にそれぞれ結合され、ランチングシリンダ(3)をスキッドレール(110)上に固定又は解除するクランプ装置(4)と、を備えることを特徴とする重量物移送用のプッシュプル装置。
【請求項2】
前記ランチングシリンダ(3)は、互いに反対方向にシリンダ動作が行われる1対の第1及び第2のランチングシリンダ(31、32)で構成され、
前記クランプ装置(4)は、互いに反対にクランプ動作が行われる1対の第1及び第2のクランプ装置(41、42)で構成されることを特徴とする請求項1に記載の重量物移送用のプッシュプル装置。
【請求項3】
前記第1ランチングシリンダ(31)及び第1クランプ装置(41)は、第1フレームカバー(2a)の内部に複数個設けられ、前記第2ランチングシリンダ(32)及び第2クランプ装置(42)は、第2フレームカバー(2b)に複数個設けられることを特徴とする請求項2に記載の重量物移送用のプッシュプル装置。
【請求項4】
前記クランプ装置(4)は、油圧装置(43)によって、スキッドレール(110)のヘッド(111)の上部に押し付けられるプッシュプレート(44)と、
前記スキッドレール(110)のヘッド(111)の下部両側に設けられ、油圧装置(43)の作動によって、スキッドレール(110)のヘッド(111)の下部に押し付けられる顎部(45)と、を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の重量物移送用のプッシュプル装置。
【請求項5】
スキッドレールの上に沿って移動可能に形成され、荷重に連結されたフレームカバーを、前記フレームカバーの内部に装着された油圧シリンダ及びクランプ装置が、前記スキッドレールに対するクランプ動作及びフレームカバーに固定されたピストンロッドの前進によって、押して又は引っ張って移送させることを特徴とする重量物移送用のプッシュプル方法。
【請求項6】
フレームカバーの内側の同一方向にピストンロッドが固定された1対の油圧シリンダに、互いに反対方向に油圧を供給する油圧供給ステップと、
前記油圧シリンダのうち一方の油圧シリンダのピストンロッドが進行するとき、その油圧シリンダに結合されたクランプ装置によって、スキッドレールに油圧シリンダを固定するクランプ固定ステップと、
前記油圧シリンダのうち他方の油圧シリンダのピストンロッドが後進するとき、その油圧シリンダに結合されたクランプ装置による油圧シリンダの固定を解除するクランプ解除ステップと、
前記油圧供給ステップとクランプ固定及び解除ステップによる繰り返し動作によって、重量物が搭載された補機トレーンを、レール上で連続的に押して又は引っ張って移送する重量物移送ステップと、からなることを特徴とする重量物移送用のプッシュプル方法。
【請求項7】
スキッドレールに沿って転がり又は摺動移動可能に配置されたフレームカバーと、
前記スキッドレールと平行に前記フレームカバーの内部に位置し、ピストンロッドの端部が前記フレームカバーの内側に固定された油圧シリンダと、
前記油圧シリンダを前記スキッドレールに固定し又はその固定を解除させるように構成されたクランプ装置と、を備えることを特徴とする重量物移送用のプッシュプル装置。
【請求項8】
スキッドレールに沿って転がり又は摺動移動可能にフレームカバーを配置し、
端部が前記フレームカバーの内側に固定される油圧シリンダを、前記スキッドレールと平行に前記フレームカバーの内部に位置させ、
前記油圧シリンダが前記スキッドレールに固定されたとき、前記ピストンロッドを前進駆動させ、前記固定が解除されたとき、前記ピストンロッドを後進駆動させることを特徴とする重量物移送用のプッシュプル方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公表番号】特表2010−529937(P2010−529937A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512092(P2010−512092)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【国際出願番号】PCT/KR2008/003541
【国際公開番号】WO2008/156343
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(509344917)サンドン シップビルディング アンド マリン エンジニアリング カンパニー リミテッド (1)