説明

野球用グローブ

【課題】グローブの型作りの経験が少なくても、使用者が捕球操作し易い型に容易に型付けすることができ、また、型付けしなくても購入後にすぐに使用することのできる野球用グローブを提供する。
【解決手段】補給面を備えた手袋状の外皮の内部に指袋を設けてなるグローブ本体1のうち、母指挿入部1Aに挿入された母指Y1のMP関節P1に相当する部位又は小指挿入部1Eに挿入された小指Y5のMP関節P5に相当する部位若しくは前記両指Y1,Y5のMP関節P1,P5に相当する部位に、捕球面側への折り曲げ操作抵抗を低減する脆弱部W1,W2を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野球やソフトボールなどで捕球するために手に装着して使用される野球用グローブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の野球用グローブでは、捕球面を備えた手袋状の外皮の内部に指袋を設けてなるグローブ本体のうち、前記外皮を構成する非捕球面側の甲皮部の小指挿入部に、当該甲皮部の母指挿入部側に向かって突出する延長連結部が形成されているとともに、前記甲皮部の母指挿入部側から小指挿入部側に向って延出したバンド部の先端部分が、前記延長連結部の先端部分に対して実質的に相対姿勢が変更不能な状態で連結紐にてX字状に緊締固定されている。
【0003】
また、前記外皮を構成する捕球面側の掌皮部と前記指袋を構成する捕球面側の内皮との間には、母指挿入部の先端側から基端部側を経由して手の手根部に相当する部位に至る領域に沿って緩衝機能を備えたフェルト等の肉厚の芯材が配設されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−271780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
新品の野球用グローブは硬くて開けたり、閉じたりする操作が難しく、捕球ミスを誘発する可能性が高いため、使用者が最も捕球操作し易い型に型付けすることが行われている。
野球用グローブの型付け方法としては、例えば、オイルの塗り込みや湯揉み操作等によって皮を柔らかくするとともに、グローブ本体の母指挿入部と小指挿入部の先端同士が近接して捕球面が略三角形状となるように、グローブ本体の母指付け根部及び小指付け根部を木槌等で幾度と無く叩き込んで折れ目の癖を付け、さらに、グローブ本体の捕球面を木槌等で幾度と無く叩き込んで皮を伸ばすことにより広いポケット状に捕球面を作ることが行われている。
【0006】
しかし、上述の野球用グローブでは、グローブ本体における母指挿入部の先端側から手の母子球に相当する部位に至る領域、及び、小指挿入部の先端側から手の小指球に相当する部位に至る領域が硬く補強されているため、グローブの型作りの経験が少ない場合では、使用者が捕球操作し易い型に型付けすることが難しい。
特に、小児が用いる場合では、手が小さいために至適な屈曲部位に曲げ操作し易く型作りするのは難しく、捕球し難いグローブになっていた。
【0007】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、グローブの型作りの経験が少なくても、使用者が捕球操作し易い型に容易に型付けすることができ、また、型付けしなくても購入後にすぐに使用することのできる野球用グローブを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の野球用グローブの第1の特徴構成は、捕球面を備えた手袋状の外皮の内部に指袋を設けてなるグローブ本体のうち、母指挿入部に挿入された母指のMP関節に相当する部位又は小指挿入部に挿入された小指のMP関節に相当する部位若しくは前記両指のMP関節に相当する部位に、捕球面側への折り曲げ操作抵抗を低減する脆弱部を設けてある点にある。
【0009】
本願発明者は、グローブ本体の母指挿入部に挿入された母指のMP関節 (中手指節間関節)の働き及び小指挿入部に挿入された小指のMP関節 (中手指節間関節)の働きが、グローブの母指挿入部及び小指挿入部における各屈曲部位での曲がり易さに大きく関係していることを知見した。
この知見に基づいて、グローブ本体のうち、母指挿入部に挿入された母指のMP関節に相当する部位又は小指挿入部に挿入された小指のMP関節に相当する部位若しくは前記両指のMP関節に相当する部位に脆弱部を設けることにより、新品の野球用グローブであっても捕球面側への折り曲げ操作を容易に行うことができる。
【0010】
それ故に、従来のように、グローブ本体の母指付け根部及び小指付け根部を木槌等で幾度と無く叩き込んで折れ目の癖を付け必要性がない、又は折れ目の癖を付ける手数を軽減することができるから、グローブの型作りの経験が少ない場合でも、使用者が捕球操作し易い型に容易に型付けすることができる。
【0011】
成人は浅指屈筋のみを使うことのできる選手もいるため、MP関節曲がりとPIP関節曲がりの2タイプの選手がいるが、小児は小指MP関節を屈曲させて捕球する選手がほとんどであることが判明した。小児の場合では、特に小指においては、小児は力が小さいため浅指屈筋、深指屈筋の両方を使うためMP関節(中手指節間関節)だけで折り曲げ操作することになるが、このような発育段階においても、上述の如く、グローブ本体における母指のMP関節に相当する部位又は小指のMP関節に相当する部位若しくは前記両指のMP関節に相当する部位に脆弱部を設けることにより、使用対象者が手の小さな小児であっても捕球し易い型に容易に型付けすることができる。
【0012】
本発明の野球用グローブの第2の特徴構成は、前記グローブ本体の小指側の脆弱部が、グローブ本体の手挿入口を形成する状態で前記外皮を構成する非捕球面側の甲皮部の母指挿入部側から延出されるベルト部と前記甲皮部の小指挿入部側部位とを、前記小指挿入部に挿入された小指のMP関節に相当する部位において、捕球面側への折り曲げ操作に伴う相対姿勢変更を許容する状態で接合することにより構成されている点にある。
【0013】
上記構成によれば、前記外皮を構成する非捕球面側の甲皮部の母指挿入部側から延出されるベルト部と前記甲皮部の小指挿入部側部位との接合位置を、小指挿入部に挿入された小指のMP関節に相当する部位に変更し、且つ、ベルト部と甲皮部の小指挿入部側部位とを、小指のMP関節による捕球面側への折り曲げ操作に伴う両者の相対姿勢変化を許容する状態で結合するだけの改良で済むので、従来に近い生産性を維持することができ、型作りの容易な野球用グローブを製造コスト面で有利に製作することができる。
【0014】
本発明の野球用グローブの第3の特徴構成は、前記グローブ本体の母指側の脆弱部が、前記外皮を構成する捕球面側の掌皮部と前記指袋を構成する捕球面側の内皮との間に介装される芯材のうち、前記母指挿入部に挿入された母指のMP関節に相当する部位を他の部位よりも屈曲抵抗の小さな屈曲促進部に形成することにより構成されている点にある。
【0015】
上記構成によれば、前記外皮を構成する捕球面側の掌皮部と前記指袋を構成する捕球面側の内皮との間に介装される芯材の一部である母指のMP関節に相当する部位を屈曲促進部に形成するだけの改良で済むので、前記グローブ本体を構成する外皮及び指袋の製作工程数の増加を抑制することができ、型作りの容易な野球用グローブを製造コスト面で有利に製作することができる。
【0016】
本発明の野球用グローブの第4の特徴構成は、前記ベルト部と前記甲皮部の小指挿入部側部位との接合箇所が、前記小指挿入部の中心線に対して各指挿入部に挿入された各指のMP関節に相当する部位を結ぶMP関節ライン方向の外方側に偏倚して配置されている点にある。
【0017】
上記構成によれば、前記ベルト部と甲皮部の小指挿入部側部位との相対向する部位のうち、前記接合箇所からMP関節ライン方向の内方側の自由端までの寸法が偏芯代の分だけ長くなり、グローブ本体の小指挿入部におけるMP関節相当部位での屈曲操作をより容易に行うことができる。
【0018】
本発明の野球用グローブの第5の特徴構成は、前記ベルト部と前記甲皮部の小指挿入部側部位との接合箇所が、紐状部材による一箇所での締め込みで構成されている点にある。
【0019】
上記構成によれば、前記ベルト部と前記甲皮部の小指挿入部側部位との接合箇所が、紐状部材による複数箇所での締め込みで構成されている場合に比して、グローブ本体の小指挿入部におけるMP関節相当部位での屈曲操作をより容易に行うことができる。
【0020】
本発明の野球用グローブの第6の特徴構成は、前記ベルト部が、甲皮部の母指挿入部側から延出される第1分割ベルト部と、前記甲皮部の小指挿入部側部位に接合される第2分割ベルト部とに分割構成されているとともに、前記第1分割ベルト部と第2分割ベルト部とが長さ調整可能に接合されている点にある。
【0021】
上記構成によれば、型作りの容易化を図りながら、使用者の手の大きさに応じてグローブ本体の手挿入口の大きさを調整することができる。
【0022】
本発明の野球用グローブの第7の特徴構成は、前記屈曲促進部が、前記芯材における母指のMP関節に相当する部位の一部又は全部を切断することにより構成されている点にある。
【0023】
上記構成によれば、前記芯材における母指のMP関節相当部位の一部又は全部を切断するだけであるから、前記型作りの容易な野球用グローブを製造コスト面で一層有利に製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本願発明の第1実施形態を示す野球用グローブの背面図
【図2】野球用グローブの正面図
【図3】野球用グローブの小指側から見た側面図(a)と要部の分解斜視図(b)
【図4】グローブ本体を構成する外皮と指袋との分離時の斜視図
【図5】指袋の掌皮部と芯材との配置関係を示す平面図(a)とそれのVb−Vb線拡大断面図
【図6】グローブ本体と手のMP関節との関係を示す背面図
【図7】本願発明の第2実施形態を示す野球用グローブの小指側から見た側面図
【図8】本願発明の第3実施形態を示す要部の分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔第1実施形態〕
図1〜図6に示す野球用グローブは、母指挿入部(第1指挿入部)1A、示指挿入部(第2指挿入部)1B、中指挿入部(第3指挿入部)1C、環指挿入部(第4指挿入部)1D、小指挿入部(第5指挿入部)1Eを有する手袋状のグローブ本体1と、このグローブ本体1の母指挿入部1Aと示指挿入部1Bとの間に配設される皮革製の捕球用ウェブ2とを紐状部材の一例である皮革製の連結紐3により連結して構成されている。
【0026】
前記グローブ本体1は、捕球面を構成する手袋状の外皮4の内部に指が嵌り込む指袋5を設けてなり、前記母指挿入部1Aに挿入された母指Y1のMP関節P1に相当する部位及び小指挿入部1Eに挿入された小指Y5のMP関節P5に相当する部位の各々に、捕球面側への折り曲げ操作抵抗を低減する脆弱部W1、W2が設けられている。
【0027】
前記外皮4は、手形状に裁断された補給面側の掌皮部4Aと同じく手形状に裁断された非捕球面側の甲皮部4Bとを手袋状に縫着して構成されている。
【0028】
前記甲皮部4Bの手挿入口6側の開口端縁で、且つ、人差指挿入部1Bの基端縁1bから小指挿入部1Eの基端縁1eまでの領域の開口端縁が、図4、図6に示すように、各指挿入部1A〜1Eに挿入された各指Y1〜Y5のMP関節(中手指節間関節)P1〜P5に相当する部位を結ぶMP関節ラインRに略沿う又はそれに近い状態で沿う半径の大きな緩やかな円弧状に形成されている。
【0029】
前記甲皮部4Bにおける小指挿入部1Eの基端縁1eの外側角部は、前記MP関節ラインRの湾曲方向とは逆アールの円弧状に形成されているとともに、前記甲皮部4Bにおける母指挿入部1Aの基端部1aには、甲皮部4Bにおける小指挿入部1Eの基端縁1e側に向って延出される皮革製の帯状のベルト部7の基端部7aが縫着されている。
【0030】
このベルト部7は、甲皮部4Bの母指挿入部1A側から延出される第1分割ベルト部7Aと、前記甲皮部4Bにおける小指挿入部1Eの基端側部位に接合される第2分割ベルト部7Bとに分割構成されているとともに、前記第1分割ベルト部7Aと第2分割ベルト部7Bとが長さ調整可能に接合されている。
【0031】
具体的には、前記第1分割ベルト部7Aの連結部分に二列状態で形成された合計8つの紐挿通孔7bと、第2分割ベルト部7Bの連結部分に二列状態で形成された合計4つの紐挿通孔7cとに対して、紐状部材の一例である皮革製の連結紐3の挿通位置を選択することにより、ベルト部7の長さを二段階(複数段階)に調整可能なベルト長さ調整手段が構成されている。
【0032】
前記指袋5は、図4に示すように、着用者の手掌面に対する接触面を備えた略手形状の内皮8に、当該内皮8の手甲側面との間に各指Y1〜Y5の挿入空間を区画形成する皮革や繊維製等の指挿入空間形成用可撓体、具体的には、母指挿入空間形成用可撓体9A、示指挿入空間形成用可撓体9B、中指挿入空間形成用可撓体9C、環指挿入空間形成用可撓体9D、小指挿入空間形成用可撓体9Eを縫着して構成されている。
【0033】
前記内皮8の示指形成部8Aと中指形成部8B及び環指形成部8Cの各捕球面側には、各指形成部8A〜8Cの先端から突出してこれに対応する外皮4側の各指挿入部1B〜1D内の奥側に挿入配置される緩衝機能を備えたフェルト状の指芯10A〜10Cが縫着されているとともに、前記指芯10A〜10Cの突出先端部側の手甲側面には反り防止用の補強皮11A〜11Cが縫着されている。
【0034】
前記外皮4の掌皮部4Aと前記指袋5を構成する捕球面側の内皮8との間には、グローブ本体1における母指挿入部1A内の先端側から当該母指挿入部1Aの基端部を経由して手の母子球に相当する部位に至る領域に配置される帯状厚肉の第1芯材13と、グローブ本体1における小指挿入部1E内の先端側から当該小指挿入部1Eの基端部に至る領域に配置される帯状厚肉の第2芯材14とが介装され、この両芯材13,14とグローブ本体1とが紐状部材の一例である皮革製の連結紐3で緊締固定されている。
【0035】
前記グローブ本体1の母指側の脆弱部W1が、前記第1芯材13のうち、前記母挿入部1Aに挿入された母指Y1のMP関節P1に相当する部位を他の部位よりも屈曲抵抗の小さな屈曲促進部に形成することにより構成されている。
【0036】
前記屈曲促進部は、図5に示すように、前記第1芯材13における母指Y1のMP関節P1に相当する部位の一部を切断することにより構成されている。
つまり、前記第1芯材13の中間層となる緩衝機能を備えたフェルト13Aを、母指Y1のMP関節P1に相当する部位で切断分離し、このフェルト13Aの分割フェルト体13Aa,13Abの表面及び裏面にわたって、表面層を構成する両不織布13Bを当て付けて縫着することにより、両分割フェルト体13Aa,13Abを一つのフェルト13Aとして取り扱うことができるように構成されている。
【0037】
尚、前記第1芯材13を、母指Y1のMP関節P1に相当する部位で完全に切断分離しても良く、また、前記第1芯材13の中間層となるフェルト13Aに、フェルト13Aの厚みよりも小なる切込み深さで一つ又は複数の切込みを形成してもよい。
【0038】
また、前記フェルト13Aの両分割フェルト体13Aa,13Abのうち、前記母指挿入部1Aに対応する一方の分割フェルト体13Aaの厚みが、手の母子球に相当する部位に配設される他方の分割フェルト体13Abの厚みよりも大に構成されているとともに、前記母指挿入部1A側の一方の分割フェルト体13Aaと捕球面側に位置する不織布13Bとの対面間には、反り防止用の樹脂板13Cが介装されている。
【0039】
前記第1芯材13の小指挿入部1E側の端部13aは、小指Y5のMP関節P5に相当する部位よりも少し母指挿入部1A側に偏倚した部位に配置され、前記第2芯材14の母指挿入部1A側の端部14aは、小指Y5のMP関節P5に相当する部位よりも少し小指挿入部1Eの先端側に偏倚した部位に配置されている。
【0040】
そのため、小指Y5のMP関節P5に相当する部位を挟んで相対向する第1芯材13の端部13aと第2芯材14の端部14aとの隣接間に形成される空隙Sが、小指挿入部1Eに挿入された小指Y5のMP関節P5に相当する部位に設けられる捕球面側への折り曲げ操作抵抗を低減する脆弱部W2の一部を構成している。
【0041】
前記第2芯材14は、中間層となる緩衝機能を備えたフェルトの表裏に表面層を構成する両不織布13Bを当て付けて縫着することにより構成されている。
【0042】
前記グローブ本体1の小指側に設けられる脆弱部W2の主体は、図3に示すように、前記ベルト部7の第2分割ベルト部7Bと前記甲皮部4Bの小指挿入部1Eの基端部とを、前記小指挿入部1Eに挿入された小指Y5のMP関節P5に相当する部位において、捕球面側への折り曲げ操作に伴う相対姿勢変更を許容する状態で連結紐3にて接合することにより構成されている。
【0043】
詳しくは、前記甲皮部4Bの小指挿入部1Eの外側縁に沿って形成されている紐挿通孔4bのうち、小指挿入部1Eの中心線Zに対してMP関節ラインR方向の外方側に偏倚した最基端側に形成されている一つの紐挿通孔4bと、第2分割ベルト部7Bの周縁で、小指挿入部1Eの中心線Zに対してMP関節ラインR方向の外方側に偏倚した外側縁に沿って形成されている二つの紐挿通孔7dのうち、小指挿入部1Eの基部側に位置する一つの紐挿通孔7dとにわたって連結紐3を挿通して結合してある。
【0044】
そのため、前記ベルト部7の第2分割ベルト部7Bと甲皮部4Bの小指挿入部1Eの基端部との相対向する部位のうち、前記連結紐3で緊締固定される接合箇所からMP関節ラインR方向の内方側の自由端までの寸法が偏芯代の分だけ長くなり、且つ、前記第2分割ベルト部7Bと甲皮部4Bの小指挿入部1Eの基端部とが、連結紐を3による一箇所での締め込みで緊締固定されているため、例えば、前記第2分割ベルト部7Bと前記甲皮部4Bの小指挿入部1Eの基端部とが、MP関節ラインR方向の複数箇所で緊締固定されている場合に比して、グローブ本体1の小指挿入部1EにおけるMP関節P5相当部位での屈曲操作をより容易に行うことができる。
【0045】
前記第2分割ベルト部7Bの外側縁に形成された他方の紐挿通孔7dは、前記掌皮部4Aに形成されている多数の紐挿通孔4aのうちの対応する一つと連結紐3にて緊締固定されている。
【0046】
前記第2分割ベルト部7Bには、前記小指挿入部1E内に入り込む細幅の延長ベルト部7eが一体形成され、この延長ベルト部7eの先端に形成された紐挿通孔7fには、外皮4と指袋5とを結合する連結紐3の一部で、前記甲皮部4Bの基端部の中心線Z側に寄った位置にある紐挿通孔4bに挿通されている連結紐3を挿通して締付け固定されている。
【0047】
〔第2実施形態〕
上述の第1実施形態では、前記ベルト部7を、甲皮部4Bの母指挿入部1A側から延出される第1分割ベルト部7Aと、前記甲皮部4Bにおける小指挿入部1Eの基端側部位に接合される第2分割ベルト部7Bとに分割構成したが、図7に示すように、甲皮部4Bの母指挿入部1A側から延出された一つのベルト部7の先端部を、第1実施形態と同じ形態で甲皮部4Bにおける小指挿入部1Eの基端側部位に接合してもよい。
【0048】
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
また、この第2実施形態において、前記甲皮部4Bの親指挿入部1Aの基端部とベルト部7の基端部との間に、ベルト部7の長さを複数段階に調整可能なベルト長さ調整手段を設けてもよい。
【0049】
〔第3実施形態〕
上述の第1実施形態では、前記ベルト部7の第2分割ベルト部7Bに、前記小指挿入部1E内に入り込む細幅の延長ベルト部7eを一体形成したが、図8に示すように、前記延長ベルト部7eを省略して実施してもよい。
【0050】
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0051】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の各実施形態では、前記グローブ本体1の母指挿入部1Aに挿入された母指Y1のMP関節P1に相当する部位及び小指挿入部1Eに挿入された小指Y5のMP関節P5に相当する部位の各々に、捕球面側への折り曲げ操作抵抗を低減する脆弱部W1、W2を設けたが、前記グローブ本体1の母指挿入部1Aに挿入された母指Y1のMP関節P1に相当する部位のみに、捕球面側への折り曲げ操作抵抗を低減する脆弱部W1を設けてもよく、さらに、前記グローブ本体1の小指挿入部1Eに挿入された小指Y5のMP関節P5に相当する部位のみに、捕球面側への折り曲げ操作抵抗を低減する脆弱部W2を設けてもよい。
【0052】
(2)前記脆弱部W1、W2を構成する手法として、上述の各実施形態では、甲皮部4Bにおける小指挿入部1Eの基端側部位とベルト部7とを、小指挿入部1Eに挿入された小指Y5のMP関節P5に相当する部位において、捕球面側への折り曲げ操作に伴う相対姿勢変更を許容する状態で接合する方法、前記グローブ本体1内に設けられている芯材13における母指Y1のMP関節P1に相当する部位の一部又は全部を切断する方法、前記グローブ本体1内に設けられている複数の芯材13、14間に形成される空隙Sを、小指Y5のMP関節P5に相当する部位に配置する方法を例示したが、この方法に限定されるものではなく、例えば、甲皮部4Bにおける小指挿入部1Eの基端側部位とベルト部7とを弾性体を介して連結する方法、或いは、前記グローブ本体1における母指Y1のMP関節P1に相当する部位又は小指Y5のMP関節P5に相当する部位にスリット状の切込みを入れる方法等を採用してもよい。
【0053】
(3)上述の各実施形態では、前記屈曲促進部を、前記芯材13における母指Y1のMP関節P1に相当する部位の一部又は全部を切断することにより構成したが、例えば、前記芯材13における母指Y1のMP関節P1に相当する部位に他の部位よりも屈曲抵抗の小さな弾性体を設けて、前記屈曲促進部を構成してもよい。
【0054】
(4)前記グローブ本体1の指袋5の内面に、母指挿入部1Aに挿入された母指Y1のMP関節P1に相当する部位及び小指挿入部1Eに挿入された小指Y5のMP関節P5に相当する部位を目視確認可能な状態で表示する指標線等のMP関節表示部を設けてもよい。
【0055】
(5)野球用グローブとしては、前記グローブ本体1を構成する外皮4及び指袋5の一部に樹脂が用いられているものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本願発明は、型付けしなくても購入後にすぐ使用できる野球用グローブとして、また、グローブの型作りの経験が少なくても、使用者が捕球操作し易い型に容易に型付けすることのできる野球用グローブとして良好に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
P1 母指のMP関節
P2 示指のMP関節
P3 中指のMP関節
P4 環指のMP関節
P5 小指のMP関節
R MP関節ライン
W1 母指側の脆弱部
W2 小指側の脆弱部
Y1 母指
Y2 示指
Y3 中指
Y4 環指
Y5 小指
Z 中心線
1 グローブ本体
1A 母指挿入部
1B 示指挿入部
1C 中指挿入部
1D 環指挿入部
1E 小指挿入部
3 紐状部材(連結紐)
4 外皮
4A 掌皮部
4B 甲皮部
5 指袋
6 手挿入口
7 ベルト部
7A 第1分割ベルト部
7B 第2分割ベルト部
8 内皮
13 芯材(第1芯材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
捕球面を備えた手袋状の外皮の内部に指袋を設けてなるグローブ本体のうち、母指挿入部に挿入された母指のMP関節に相当する部位又は小指挿入部に挿入された小指のMP関節に相当する部位若しくは前記両指のMP関節に相当する部位に、捕球面側への折り曲げ操作抵抗を低減する脆弱部を設けてある野球用グローブ。
【請求項2】
前記グローブ本体の小指側の脆弱部が、グローブ本体の手挿入口を形成する状態で前記外皮を構成する非捕球面側の甲皮部の母指挿入部側から延出されるベルト部と前記甲皮部の小指挿入部側部位とを、前記小指挿入部に挿入された小指のMP関節に相当する部位において、捕球面側への折り曲げ操作に伴う相対姿勢変更を許容する状態で接合することにより構成されている請求項1記載の野球用グローブ。
【請求項3】
前記グローブ本体の母指側の脆弱部が、前記外皮を構成する捕球面側の掌皮部と前記指袋を構成する捕球面側の内皮との間に介装される芯材のうち、前記母指挿入部に挿入された母指のMP関節に相当する部位を他の部位よりも屈曲抵抗の小さな屈曲促進部に形成することにより構成されている請求項1記載の野球用グローブ。
【請求項4】
前記ベルト部と前記甲皮部の小指挿入部側部位との接合箇所が、前記小指挿入部の中心線に対して各指挿入部に挿入された各指のMP関節に相当する部位を結ぶMP関節ライン方向の外方側に偏倚して配置されている請求項2記載の野球用グローブ。
【請求項5】
前記ベルト部と前記甲皮部の小指挿入部側部位との接合箇所が、紐状部材による一箇所での締め込みで構成されている請求項2又は4記載の野球用グローブ。
【請求項6】
前記ベルト部が、甲皮部の母指挿入部側から延出される第1分割ベルト部と、前記甲皮部の小指挿入部側部位に接合される第2分割ベルト部とに分割構成されているとともに、前記第1分割ベルト部と第2分割ベルト部とが長さ調整可能に接合されている請求項2、4又は5記載の野球用グローブ。
【請求項7】
前記屈曲促進部が、前記芯材における母指のMP関節に相当する部位の一部又は全部を切断することにより構成されている請求項3記載の野球用グローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−249886(P2012−249886A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125756(P2011−125756)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【出願人】(000108258)ゼット株式会社 (36)