説明

野菜培養システム

【課題】構成を簡単化するとともに、コストダウンを達成し、しかも、培地を製造する作業を簡素化するとともに、所要時間を短縮し、しかも、病害虫の発生を未然に防止し、又は抑制する。
【解決手段】底面に貯排水層Dを有する薄型のトレーTの内底面を覆うように防根用の不織布Fを設けてなり、この不織布Fの上にバーク堆肥のみを収容してバーク堆肥層Bを構成してなり、バーク堆肥層Bに播種した野菜種を発芽させてなり、バーク堆肥層Bの表面に除虫菊粉末Jを手撒きしてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として薄型にすることができる野菜培養システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一般家庭において、野菜を培養することが普及しつつあり、庭が全くないマンション等の高層住宅においても、野菜を培養することが一般化してきている。
そして、このような野菜培養のために使用する資材として、種々の形状、構成のプランターが提供されている。
ところで、近年は、野菜専用のプランターが提供されるようになってきている。
このような野菜専用プランターは、一般的に、より多くの培養土を収容できるように、深さが大きいものになっている。
したがって、培養土を収容し、かつ野菜を培養している状態では、野菜専用プランターが全体として著しく重くなり、設置位置を変更することが著しく困難になってしまう。
また、ある種の野菜の培養が終了した後、次の野菜を培養するに当っては、通常は、培養土の入れ替え、残根の除去等を行う必要があるが、野菜専用プランターが大容量であることを考慮すれば、ベランダ等でこのような作業を行うことは著しく困難である。
【0003】
このような不都合を考慮して、薄型のトレーを用いて野菜を培養することが提案されている(特許文献1参照)。
特許文献1に記載されたものは、薄型のトレーの底部に防根透水シート及び親水性不織布を設け、その上に、細かい粒子の無農薬土壌を深さ4cm以下で収容し、この無農薬土壌層で野菜を培養するようにしている。ここで、細かい粒子の無農薬土壌としては、堆肥を用いて土壌を団粒化してなるものであって、4〜8メッシュの篩いで選別されたものが使用されている。
そして、特許文献1によれば、無農薬土壌が少なく有効に栽培できる、と記載されている。
また、荒地でも軒先、マンションのベランダでもトレーによる野菜の栽培及び作業ができる、と記載されている。
【0004】
特許文献1に記載のものは、堆肥を用いて土壌を団粒化してなるものであって、4〜8メッシュの篩いで選別されたものを無農薬土壌として採用しているので、無農薬土壌を製造するための作業が煩雑化するだけでなく、堆肥を混合してから団粒構造が形成されるまでに時間がかかるという問題がある。
また、防根透水シートのみならず、親水性不織布が必要なので、構成が複雑化するとともに、コストアップを招いてしまうという問題がある。
さらに、無農薬土壌を用いているので、病害虫の被害を受けてしまう可能性が高くなってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−288369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、以下の通りである。
○本発明が解決しようとする第1課題
構成を簡単化するとともに、コストダウンを達成することである。
○本発明が解決しようとする第2課題
培地を製造する作業を簡素化するとともに、所要時間を短縮することである。
○本発明が解決しようとする第3課題
病害虫の発生を未然に防止し、又は抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するための手段は、本願の[特許請求の範囲]の各請求項に記載された発明である。
特許請求の範囲、明細書、図面等の用語の解釈上の疑義を解消すべく、以下、用語の説明を行うこととする。
<用語の説明>
○薄型のトレーとは、幅方向、長さ方向のサイズに対して十分に小さい深さ方向のサイズを有するものである。ここで、十分に小さいとは、1/3以下であり、好ましくは、1/10以下であることを意味する。
○貯排水層とは、ある程度の貯水性能、及びある程度の排水性能を有する層である。この貯排水層は、薄型のトレーの底部に設けられた層であり、例えば、貯水用の凹所が適宜間隔で設けられ、かつ非凹所に排水穴が適宜間隔で設けられたものが例示できる。
○不織布とは、繊維を織らずに絡み合わせたシート状のものである。
○防根用の不織布とは、野菜の根が不織布を通り抜けて出てしまうことを防止することができる不織布である。
○バーク堆肥とは、樹木の剪定くず等の樹木の幹の部分を粉砕し発酵させて作った堆肥である。ただし、樹木の皮の部分(バーク)を発酵させて作った堆肥、又は樹皮を主体とし、発酵補助剤として米ぬか、鶏ふん等を添加した状態で発酵させて作った堆肥、又は家畜ふん類、食品残渣、汚泥等が主体の堆肥に樹皮を添加した堆肥であってもよい。
○除虫菊粉末とは、除虫菊を乾燥させて粉末にしたものである。好ましくは、除虫菊の花を乾燥させて粉末にしたものである。
○牛ふん堆肥とは、牛ふんを単独で、又はもみ殻、稲わらなどの補助材を混合した状態で発酵させて作った堆肥である。ただし、バーク堆肥層に混入する場合には、乾燥された状態の牛ふん堆肥が用いられる。
○野菜苗の株元とは、野菜苗が培地から出た部分である。
○培地とは、野菜を培養(栽培)するためのものであり、本考案では、バーク堆肥層である。
○野菜培養システムとは、野菜を培養(栽培)するためのシステムであり、本考案では、野菜を培養(栽培)するためのものである。
【0008】
本発明者は、上記の従来技術が有する各種の問題点に鑑み、鋭意研究を重ねて、本発明を完成した。
本発明者が、本発明が解決しようとする課題の重要性に気付く契機となったのは、従来技術の問題点を生じる最大の原因が、培地を作成するための作業を簡素化するとともに、所要時間を短縮する必要性に気付いていなかったことである。
本発明者が、本発明が解決しようとする課題の重要性に気付く他の契機となったのは、従来技術の問題点を生じる他の最大の原因が、無農薬土壌にこだわるあまりに、病害虫による被害を未然に防止する必要性に気付いていなかったことである。
本発明者は、培地を作成するための作業を簡素化するとともに、所要時間を短縮することができるものはないかと種々検討・模索を重ねて本発明を完成した。
本発明者は、病害虫による被害を未然に防止し、又は抑制することができるものはないかと種々検討・模索を重ねて本発明を完成した。
課題を解決するための手段は、本願の特許請求の範囲の各請求項に記載の考案であり、その具体的な解決手段は、以下の通りである。
【0009】
○第1の発明(請求項1に記載の発明)
上記の課題を解決するための第1の発明(請求項1に記載の発明)は、
底面に貯排水層を有する薄型のトレーの内底面を覆うように防根用の不織布を設けてなり、この不織布の上にバーク堆肥のみを収容してバーク堆肥層を構成してなり、バーク堆肥層に播種した野菜種を発芽させてなり、バーク堆肥層の表面に除虫菊粉末を手撒きしてなることを特徴とする野菜培養システムである。
○第2の発明(請求項2に記載の発明)
上記の課題を解決するための第2の発明(請求項2に記載の発明)は、
除虫菊粉末を、発芽した野菜苗の株元近傍に手撒きしてなることを特徴とする請求項1に記載の野菜培養システムである。
○第3の発明(請求項3に記載の発明)
上記の課題を解決するための第3の発明(請求項3に記載の発明)は、
バーク堆肥層は、乾燥牛ふん堆肥を25重量%含むものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の野菜培養システムである。
【発明の効果】
【0010】
○第1の発明の効果
第1の発明によれば、
底面に貯排水層を有する薄型のトレーの内底面を覆うように防根用の不織布を設けてなり、この不織布の上にバーク堆肥のみを収容してバーク堆肥層を構成してなり、バーク堆肥層に播種した野菜種を発芽させてなり、バーク堆肥層の表面に除虫菊粉末を手撒きしてなる
という特徴的な構成要件により、
構成を簡単化するとともに、コストダウンを達成することができ、しかも、培地を作成するための作業を簡素化するとともに、所要時間を短縮することができ、しかも、病害虫による被害を未然に防止し、又は抑制することができる野菜培養システムを提供することができた。
すなわち、本発明が解決しようとする第1課題、第2課題、及び第3課題を達成することができ、当業者予測不可能な顕著な効果を奏することができた。
○第2の発明の効果
第2の発明によれば、
除虫菊粉末を、発芽した野菜苗の株元近傍に手撒きしてなる
という特徴的な構成要件により、
病害虫による被害を未然に防止し、又は抑制することができる野菜培養システムを提供することができた。また、除虫菊粉末の散布量を必要最小限にすることができた。
すなわち、本発明が解決しようとする第3課題を達成することができ、当業者予測不可能な顕著な効果を奏することができた。
○第3の発明の効果
第3の発明によれば、
バーク堆肥層は、乾燥牛ふん堆肥を25重量%含むものである
という特徴的な構成要件により、
構成を簡単化するとともに、コストダウンを達成することができ、しかも、培地を作成するための作業を簡素化するとともに、所要時間を短縮することができる野菜培養システムを提供することができた。また、野菜の培養に最適な肥効を達成することができた。
すなわち、本発明が解決しようとする第1課題、及び第2課題を達成することができ、当業者予測不可能な顕著な効果を奏することができた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の野菜培養システムの一実施形態を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の野菜培養システムの実施の形態を詳細に説明する。
第1の発明の野菜培養システムは、
底面に貯排水層を有する薄型のトレーの内底面を覆うように防根用の不織布を設けてなり、この不織布の上にバーク堆肥のみを収容してバーク堆肥層を構成してなり、バーク堆肥層に播種した野菜種を発芽させてなり、バーク堆肥層の表面に除虫菊粉末を手撒きしてなることを特徴としている。
第2の発明の野菜培養システムは、
除虫菊粉末を、発芽した野菜苗の株元近傍に手撒きしてなることを特徴としている。
第3の発明の野菜培養システムは、
バーク堆肥層は、乾燥牛ふん堆肥を25重量%含むものであることを特徴としている。
【0013】
[図1]は、本発明の野菜培養システムの一実施形態を概略的に示す縦断面図である。
この野菜培養システムは、底面に貯排水層Dを有する薄型のトレーTの内底面を覆うように防根用の不織布Fを設けてなる。そして、不織布Fの上にバーク堆肥のみを収容して培地としてのバーク堆肥層Bを構成してなる。
貯排水層Dは、貯水用の凹所D1を所定の配列パターンで、かつ所定の間隔で設けるとともに、非凹所部分に所定の配列パターンで、かつ所定の間隔で排水穴D2を設けてなるものである。この構成を採用すれば、排水穴D2により水分量が過剰になって根腐れを生じることを防止でき、しかも、トレーTが薄型であることに起因する水分保持性能の低下を抑制することができる。
上記の構成の薄型のトレーTは、ポリエステル100%で構成されていることが好ましく、耐用年数を約10年にすることができる。また、長さ及び幅を300mmに設定し、貯排水層Dの上面までの深さを35mmに設定した場合に、総重量が294gになるように、厚さが設定されている。具体的には、厚さが約3mmに設定されている。また、凹所D1の深さを10mmに、直径を20mmに、長さ及び幅方向のピッチを50mmに、それぞれ設定している。これらのサイズは一例であり、本考案の薄型のトレーTは、これら以外のサイズにすることができる。
このバーク堆肥層Bとしては、樹木の剪定くず等の樹木の幹の部分を粉砕し発酵させて作った堆肥であることが好ましく、完全なリサイクルバーク堆肥からなるバーク堆肥層Bとなる。ただし、種々の組成のバーク堆肥を採用することができる。そして、乾燥牛ふん堆肥を25重量%含むものであることが好ましく、良好な肥効を実現することができる。
このバーク堆肥層Bの表層部に野菜の種を播種し、発芽に必要な条件を保つことにより、野菜苗を発芽させることができる。
発芽した後は、病害虫による被害を受ける可能性があるので、野菜苗Vの株元に除虫菊粉末Jを手撒きすることにより、病害虫による被害を未然に防止し、又は抑制することができる。
野菜苗Vは、その後、病害虫による被害を殆ど受けることなく生育するので、化学農薬を全く使用しない野菜培養を実現することができる。
【0014】
そして、野菜の生長に伴って根の長さが伸びると共に、根の数が増加するが、防根用の不織布Fを用いているので、根が薄型のトレーTの外部に出てしまうことを未然に防止することができる。
また、薄型のトレーTを採用しているので、バーク堆肥層Bの厚みを小さくすることができ、鉢底石を用いなくても、良好な排水性を達成することができる。また、貯排水層Dによって、良好な貯水性も達成することができる。もちろん、バーク堆肥の必要量を少なくすることができるので、コストダウンを実現することができる。換言すれば、単位量のバーク堆肥で培養できる野菜苗の数を多くすることができる。
薄型のトレーTは、任意のサイズに設定することができるが、深さ(貯排水層Dの上面までの深さ)を4cm以下に設定することが好ましく、十分な野菜の培養、良好な排水性を実現することができる。ただし、平面サイズについては、培養する野菜の数、野菜の種類などに応じて任意に設定することができる。
また、全体としての重量を小さくすることができるので、非力な人でも簡単に持ち運ぶことができる。
散布する除虫菊粉末Jの量は、任意に設定することができる。具体的には、培養する野菜の病害虫に対する耐性、栽培する時期(栽培に適した時期か、栽培に適していない時期)などを考慮して、散布する除虫菊粉末Jの量を増減すればよい。
ただし、実際の病害虫による被害の発生の程度に応じて散布する除虫菊粉末Jの量を増減するようにしてもよい。
また、バーク堆肥は、樹皮、牛ふん等をリサイクルすることにより製造されるものであるから、地球環境にやさしいものであり、これらの原材料を焼却処分する場合と比較して、二酸化炭素の発生量を大幅に低減することができ、地球温暖化の抑制に貢献することができる。
【符号の説明】
【0015】
T 薄型のトレー
D 貯排水層
D1 凹所
D2 排水穴
F 防根用の不織布
B バーク堆肥層
V 野菜苗
J 除虫菊粉末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に貯排水層(D)を有する薄型のトレー(T)の内底面を覆うように防根用の不織布(F)を設けてなり、この不織布(F)の上にバーク堆肥のみを収容してバーク堆肥層(B)を構成してなり、バーク堆肥層(B)に播種した野菜種を発芽させてなり、バーク堆肥層(B)の表面に除虫菊粉末(J)を手撒きしてなることを特徴とする野菜培養システム。
【請求項2】
除虫菊粉末(J)を、発芽した野菜苗(V)の株元近傍に手撒きしてなることを特徴とする請求項1に記載の野菜培養システム。
【請求項3】
バーク堆肥層(B)は、乾燥牛ふん堆肥を25重量%含むものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の野菜培養システム。

【図1】
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