説明

量子的な真空エネルギの取り出し

宇宙のいかなる所でも入手可能な電磁量子的な真空のエネルギを、熱、電気、機械エネルギ又は他のパワーの形態で利用可能なエネルギに変換するためのシステムが開示される。適切な振動数で電磁量子的な真空エネルギを抑制することにより、変化が、エネルギの放出を生じる電子のエネルギ準位に効果を与える。電磁量子的な真空のモードの抑制は、カシミールキャビティ内で起こる。カシミールキャビティは、電磁モードが制限されるいかなる領域にも向けられる。原子がカシミールキャビティに入ったとき、外殻電子に対して最も顕著な効果を与える電子の軌道エネルギの増加が生じる。このエネルギは本発明の装置に捕獲される。このカシミールキャビティからの出現により、原子は周囲の電磁量子的な真空によって再エネルギ化される。このようにしてエネルギが局所的に取り出されて、電磁量子的な真空により全体的に再び満たされる。この過程が際限なく繰り返される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
マックス・プランクは、1912年にゼロ点エネルギの概念を提唱した。そして、この考え方は、1913年にアルバート・アインシュタインとオット・シュテルンとによって研究された。1916年には、ヴァルター・ネルンストが、宇宙はゼロ点エネルギで満たされていることを提唱した。近年の確率論的電気力学の場は、これらの考え方に基づいている。
【0002】
時を同じくして、原子の構造及び安定性は、悩ましい問題であった。ラザフォードの原子模型は、太陽(原子核)の周りの惑星(電子)の運動に対する類推に基づいていた。しかし、これはもっともらしいものではなかった。軌道上の電子は、ラーモアの定理に従う放射(ラーモア放射(Larmor radiation))をして、直ちにエネルギを失い、かくして、1秒の1兆分の1よりも短い時間スケールで原子核へと螺旋状に動くので、安定状態となることは不可能である。今では、確率論的電気力学(SED)理論の背景内で、ゼロ点エネルギの吸収を含むもっともな説明が知られている。1975年に、ボワイエ(Boyer)によって、可能な最も簡単な原子及び原子状態である基底状態における水素原子が、古典的なラザフォードの水素原子に対して正しい半径で、ゼロ点エネルギのラーモア放射と吸収との間の平衡状態にあることが示された。
【0003】
この説明は1913年には知られていなかったので、ニールズ・ボーアは、離散エネルギ準位のみが1つの原子内の電子に有効であるという簡単な仮定によって、異なる考え方を提唱した。この理論の大筋が、1920年代に量子論を発展させた。古典的なゼロ点エネルギの概念は、10年ほど忘れられていた。しかし、同様の概念が、ハイゼンベルグの不確定性原理の定式化により、1927年に量子的な概念として再び提唱された。この原理によると、調和振動子の最小エネルギは、hf/2の値である。ここで、hはプランク定数、fは振動数である。従って、ランダムエネルギのこの最後に残った量を振動系から取り除くことは、不可能である。
【0004】
電磁場も量子論で量子化されるべきであるので、同様の形式が、量子的な振動子の特性と電磁場の波動との間に導かれる。この結果、振動数、伝播方向及び偏波状態からなる電磁場のいかなる可能なモードの最小エネルギも、hf/2であることが推論される。このエネルギに場の全ての可能なモードを掛けることによって、電磁量子的な真空(electromagnetic quantum vacuum)が与えられる。この電磁量子的な真空は、エネルギ密度及びスペクトルに関して、プランク、アインシュタイン、シュテルン及びネルンストにより10年ほど前に研究された古典的なゼロ点エネルギと同一の特性を有する。
【0005】
古典的なゼロ点場を加えた古典物理学を含む研究の大筋は、トレバ・マーシャルとティモシー・ボワイエとによって、1960年代に再論され、確率論的電気力学(SED)と称された。SEDは、以下のような疑問を呈する。「どの量子特性、量子過程又は量子法則が、古典物理学にゼロ点電磁場を加えたのみで説明されることができるか。」初期の2つの成功は、黒体スペクトルの古典的な(即ち、量子物理学を含まない)導出と、ラーモア放射をするがゼロ点放射を吸収する水素原子における古典的な軌道上の電子が、古典的なボーア半径で平衡軌道を有することの発見と、であった。ティモシー・ボワイエによるこの問題への初期のアプローチ(1975年)は、H.E.パソフによって完成された(1987年)。これら解析は、軌道上の電子を調和振動子として扱った。
【0006】
この結果は、水素の原子核の正確なクーロン場における古典的な電子軌道をシミュレーションしたダニエル・コールとY.ゾウ(Y. Zou)との最近の研究により、大きな新しい発展をし、このような現実的な原子は、放出及び吸収過程のランダムな特性により、量子力学に従って、原子核から所定の距離の範囲にあることが明らかになった。平均位置は、正しいボーア半径であるが、実際の位置の分布は、対応するシュレディンガー方程式の電子の確率分布を非常に正確に再現しており、原子は、波動関数によって表されると考えられる。(SEDの説明では、電子は、不鮮明(“smeared out”)である。なぜならば、電子は、波動関数ではなくて、電磁量子的な真空のゆらぎの連続的な摂動を受ける点粒子のようなものであるからである。)
この理論の明確な結果は、電子軌道に対応する振動数での電磁量子的な真空の減少が、軌道の崩壊を生じるであろうことである。なぜならば、ラミナー放射対吸収における不均衡を生じ得るからである。
【0007】
電磁量子的な真空エネルギのスペクトルは、振動数の3乗に比例する。真空エネルギが電子の通常の(“normal”)軌道の振動数で抑制されれば、電子が、比較的高い振動数の軌道の内側に螺旋状に動くであろう。そして、このようにして、電子が、振動数の3乗でのスペクトルの増加による電磁量子的な真空エネルギスペクトルを有する新たな平衡状態となるであろう。
【0008】
SEDの解釈が、ボワイエ、パソフ、コール及びゾウの解析が示すような水素原子に対して正しければ、この解釈は、他の全ての原子及びこれらの多電子状態に同様に当てはまらなければならない。この場合、励起状態から低いエネルギ状態への電子の遷移は、瞬間的な量子的なジャンプではなく、1つの安定軌道から他への急速な崩壊を含む。電子軌道の安定性に対する基礎の詳細も、SED理論によって決定されなければならないが、単一の電子の水素の場合からの論理上の外挿法は、明らかである。全ての原子における電子軌道は、放射対吸収の平衡状態によって決定されなければならず、かくして、適切な振動数での電磁的なゼロ点場のモードの抑制を含む修正を受ける。
【0009】
電子軌道の修正は、原子内の電子のエネルギ準位間の自然遷移と本質的には同じ過程であり、それ故、このような過程で放出されたエネルギは、通常の遷移エネルギと同じようにして捕獲され得ることが必要とされる。
【0010】
原子を、電磁量子的な真空の適切なモードを抑制するマイクロ構造体を出入りするように移動させることによって、電磁量子的な真空からのエネルギの取り出しが果されることができる。これは、マイクロカシミールキャビティとして扱われることができる。
【0011】
現実のエネルギ源としての電磁量子的な真空は、水素のs準位とp準位との間のラムシフト、ファン・デル・ワールス力、アハラノフ−ボーム効果、電子回路のノイズによって示される。
【0012】
しかし、電磁量子的な真空の最も重要な効果は、カシミール力の存在である。カシミール力は、平行な導電プレート間に働く力であり、電磁量子的な真空エネルギの放射圧効果として解釈されることができる。壁面が導電性であるキャビティ内の電磁波は、横方向の成分の境界条件を扱わなければならない理由のために、所定の波長に制限される。結果として、カシミールキャビティでは、平行なプレートの間で、これらプレートの間隔よりも長い波長の放射モードを効果的に排除するであろう。そして、外部への電磁量子的な真空放射の過度の圧力が、プレートを互いに押圧する。カシミール力に関する非常に多くの文献があり、この力の実体性が、諸問題(いわゆる静摩擦(“stiction”))及び可能な制御機構としての両方で、マイクロエレクトロメカニカル構造(MEMS)技術の実験室実験から提案されている。
【0013】
モードの排除は、プレートの間隔dに等しい波長では、すぐには始まらない。モードの抑制は、d以上の波長に対して最も強いが、階段状の(“stairway”)d/nが、nが増加するのに従って減少する影響により、d/nの間に落ちる波長に対して同様に生じ始める。我々は、可能な最大の物理的なサイズのカシミールキャビティを利用することができるように、このようにして生じるdよりも短い波長に対するモードの部分的な抑制を使用することを提案する。
【0014】
研究者らは、エネルギがゼロ点エネルギから取り出された(“extracted”)とき、エネルギがなおも保存され、かつ第2法則が犯されていないので、熱力学の法則が犯されていないことを示した。コールとパソフとは、これらを犯していないことを示す熱力学的な解析を行い、文献発表した。また、フォワードによる思考実験(1984年)が、実用的ではないが簡単なエネルギの取り出しの実験を示した。
【0015】
水素原子の確率論的電気力学(SED)の解釈において、基底状態では、古典的な軌道上の電子の速度がc/137に実効的に等しいと解釈されている。この軌道は、電磁的なゼロ点場からの古典的な電磁場の放出と吸収との間の平衡状態により、ボーア半径において安定である。この考え方は、まず、ボワイエによって提唱され(1975年)、続いて、パソフによって洗練され(1987年)、さらに、コールとゾウとの詳細なシミュレーションによってさらに高められた(2003、2004年)。彼らのシミュレーションにより、この解釈における電子の統計的な運動が、シュレディンガー波動関数の確率密度分布を再現することが論証された。この解釈と量子力学の解釈との間の1つの明白な違いは、量子力学においては、電子の1s状態は、角運動量がゼロであると見なされ、一方、SEDの解釈においては、電子は、瞬間的な角運動量mcr/137=h/2πを有する、ということである。しかし、ニキッシュによるSEDシミュレーションは、時間平均角運動量が、軌道平面のゼロ点摂動により、量子的な場合にはゼロであるであることを示している。従って、十分な軌道(“orbits”)に亘って平均化されたこの古典的な電子(“classical electron”)は、同じ半径の確率密度を有する原子核の周りの球の対称な体積を満たすであろう。なぜならば、シュレディンガー波動関数及びゼロのネット角運動量が、量子的な振る舞いと完全に一致するからである。
【0016】
SEDにおける原子のボーア半径は、0.529Å(オングストローム)である。これは、軌道を維持することができるゼロ点放射の波長が、2π×0.529×137=455Å(0.0455μm)であることを意味する。この波長及びカシミールキャビティにおけるこれより短い波長でのゼロ点放射の抑制は、加速された電荷の古典的な放出とλ<455Åでのゼロ点放射との間の新たな平衡状態によって決定される低いエネルギ状態へと、電子の崩壊を与えることが必要とされる。ここで、λはカシミールプレートの間隔dに依存している。(コールとゾウとのSEDシミュレーションと同様に)エネルギの平衡状態の変化は、0.1〜0.2μmのかなり長い波長で果されることができるので、電子の量子的な確率密度の末端(tail end)が、5つのボーア半径を超えて広がっていることに注意する。
【0017】
この軌道の振動数は6.6×1015−1であるので、原子がカシミールキャビティにどんなに早く注入されたとしても、この過程は、軌道上の電子によって実験されたように遅いであろう。それ故、我々は、新しいサブボーア基底状態への崩壊が、突然の光放射のサインよりも、むしろ熱の形態でエネルギを徐々に放射されることを含むと仮定する。
【0018】
電子の結合エネルギは13.6eVであるので、我々は、この過程で放出されたエネルギの量が、d=250Å付近のカシミールキャビティ(及び上述のような大きなキャビティ)内に水素原子を注入するためには、1ないし10eVのオーダであると仮定する。電子は、キャビティから出て、ゼロ点場からエネルギを吸収し、この電子の通常の状態に再び励起されるであろう。この過程において取り出されるエネルギ(熱)は、ゼロ点場を与ることで生じ、SEDの解釈では、このゼロ点場は宇宙全体に亘って光速で流れている。我々は、局所的にエネルギを効果的に取り出し、このエネルギを全体的に再び満たす。海洋から少量の水を取り出すことを想像しよう。つまり、海洋は減少されるが、実際には減少し続けない。
【0019】
標準温圧(STP)で自然に生じる水素は2原子分子であるので、解離過程が、カシミールキャビティ内への水素原子の注入より先に行われる必要がある。我々は、安全かつ安価であるという効果を有する単原子気体(希ガス)を用いることによって、この複雑さを回避し、多電子に対する修正の効果を与える。
【0020】
我々は、以下の3つの理由に関して、自然に生じる単原子気体を使用する。
(1) 解離過程が必要でない。
(2) 比較的重い元素の原子は、水素の約2ないし4倍であるので、利用することができ、製造が容易な比較的大きなカシミールキャビティにより効果を与えられることができる。
(3) 比較的重い元素は、複数の外殻電子を有し、これら外殻電子のうちのいくつかは、カシミールキャビティ内のゼロ点放射の減少によって同時に効果を与えられることができる。
以下の5つの希ガスが、特に適している。
He(Z=2、r=1.2Å)
Ne(Z=10、r=1.3Å)
Ar(Z=18、r=1.6Å)
Kr(Z=36、r=1.8Å)
Xe(Z=54、r=2.05Å)
これら全ての元素は、複数のns電子を含む。Heは、2つの1s電子を有する。Neは、2つの1s電子及び2s電子を有する。Arは、2つの1s、2s及び3s電子を有する。Krは、2つの1s、2s、3s及び4s電子を有する。Xeは、2つの1s、2s、3s、4s及び5s電子を有する。
【0021】
最外電子が他の電子に対して完全に遮蔽されていると仮定すると(大まかな仮定)、この電子の軌道の速度は、r−1/2のスケールであり(周期の2乗が長半径の3乗に比例するケプラーの関係として知られている)、かくして、r/vに比例するλは、r3/2のスケールである。この場合であれば、比較的大きな半径は、外側の電子殻のエネルギに対する効果を有する大きなカシミールキャビティに対して、r3/2として解釈される。それ故、我々は、d=0.1μm(又は1μmと同程度)を有するカシミールキャビティが、最も外側の対のs電子のエネルギ準位を減少させる効果を有し、同様に、p電子及び中間部の殻のs電子を有することが好ましいと推測する。
【0022】
0.1μmのカシミールキャビティは、このようなキャビティへのHe、Ne、Ar、Kr又はXe原子の各々の注入に対して、1ないし10eVの放出を生じる、と推測することがもっともである。
【0023】
理論的なカシミールキャビティの計算を行ったジョーダン・マクレイによると、長い円筒形のキャビティは、キャビティに対して内向きの力を生じる。カシミール力のモードの排除(“exclusion of modes”)の解釈において、これは、直径0.1μmの円筒形のキャビティが、外殻電子の所望の崩壊を与え、続いてエネルギが放出されることを意味する。
【0024】
今では、電磁量子的な真空の場は、形式的には、通常の量子論における原子の安定性のために必要であることが理解されている(Milonni, 1994)。確率論的電気力学として知られた物理学の分野において、この概念は、水素原子における電子の基底状態の基礎となることが、理論及びシミュレーションによって示されている。古典的なボーア軌道は、SED理論における電磁量子的な真空のゼロ点ゆらぎからのエネルギのラミナー放射と吸収との平衡状態により決定される。適切なゼロ点ゆらぎの抑制に基づいて、平衡状態は、この遷移間のエネルギ放出により、電子が、通常は自然に見られることのない低いエネルギ準位へと崩壊されるように、乱されるであろう。適切な寸法のカシミールキャビティは、このゼロ点ゆらぎの抑制を果すことができる。カシミールキャビティは、電磁モードが抑制又は制限されるいかなる領域にも向けられる。このように適切に設計されたカシミールキャビティに電子が入り、電子のエネルギ準位がシフトされて、エネルギが放出される。電子は、カシミールキャビティを出て、周囲のゼロ点ゆらぎからエネルギを吸収することによって、電子の通常の状態に戻る。これは、ゼロ点ゆらぎを与えてエネルギの取り出しサイクルを果すことを可能にする。理論的には証明されていないが、ゼロ点ゆらぎからエネルギのラミナー放射と吸収との同様の平衡状態が、水素だけでなく、ゼロ点エネルギ(ゼロ点ゆらぎと関連するエネルギ)の取り出しのための触媒として使用されるいかなる原子にも適用可能な、全ての原子の電子状態の基礎とならなければならない。また、類似する過程が、同様のエネルギの取り出しサイクルを与える分子結合の基礎となると考えられる。
【0025】
以下は、関連事項として扱われる特許文献のリストである。
【0026】
米国特許第5,018,180号には、Kenneth R. Shouldersにより、高い電荷密度を使用したエネルギ変換が開示されている。これは、火花放電における電荷のクラスタの形成に関連している。電荷の静電反発力が、カシミール力のような力により電荷のクラスタに克服されることが推測される。この発明は、カシミールキャビティにおける原子からのエネルギ放出を扱っておらず、それ故、本発明には関係ない。
【0027】
米国特許第5,590,031号には、Franklin B. MeadとJack Nachamkinとにより、電磁放射エネルギを電気エネルギに変換するためのシステムが開示されている。この発明は、カシミールキャビティ内の原子からのエネルギ放出を扱っておらず、それ故、本発明には関係ない。
【0028】
米国特許第6,477,028号には、Fabrizio Pintoにより、エネルギの取り出しのための方法及び装置が開示されている。少なくとも1つの物理的なファクタを変えるための提案が、カシミール力に効果を与え、即ち、環境ファクタを変えることによって、このような物理的なファクタに効果を与え、かくしてカシミール力の系を非保存の系にする。カシミールキャビティ内の原子からのエネルギ放出を扱っておらず、それ故、本発明には関係ない。
【0029】
米国特許第6,593,566号には、Fabrizio Pintoにより、エネルギの取り出しのための方法及び装置が開示されている。粒子を加速及び減速させるための方法及び装置は、粒子の表面の相互作用に基づいている。この発明は、カシミールキャビティ内の原子からのエネルギ放出を扱っておらず、それ故、本発明には関係ない。
【0030】
米国特許第6,665,167号には、Fabrizio Pintoにより、エネルギの取り出しのための方法が開示されている。米国特許第6,477,028号も同様である。この発明は、カシミールキャビティ内の原子からのエネルギ放出を扱っておらず、本発明には関係ない。
【発明の概要】
【0031】
宇宙のいかなる所でも入手可能な電磁量子的な真空のエネルギの部分を、熱、電気、機械エネルギの形態又は他のパワーの形態で利用可能なエネルギに変換するためのシステムが、開示される。これは、確率論的電気力学(SED)の理論によって予測された原子の電子配置に対する効果を使用して果される。SED理論の背景内では、原子内の電子のエネルギ準位が、電磁量子的な真空からの放射エネルギのラミナー放射対吸収の平衡状態により決定されることが予測される。適切な振動数で電磁量子的な真空エネルギを抑制することによって、変化が、エネルギの放出、即ち解放を生じる電子のエネルギ準位に効果を与えることができる。このエネルギの変化は、電子が励起状態から低い電子状態へと遷移するので、光子の通常の放出に類似しているが、比較的長い時間スケールにおける変化では、1つのエネルギ状態から他へのジャンプ(“jump”)よりもむしろ連続的な遷移が起こる。電磁量子的な真空のモードの抑制は、カシミールキャビティ内で起こることがよく知られている。カシミールキャビティは、電磁モードが抑制又は制限されるいかなる領域にも向けられる。原子が、適切なマイクロカシミールキャビティに入ったとき、かくして、外殻電子に対して最も顕著な効果を与える電子の軌道エネルギの増加が生じる。このようなエネルギは、請求項に記載の装置に捕獲される。このようなマイクロカシミールキャビティからの出現により、原子は、周囲の電磁量子的な真空によって再エネルギ化される。このようにして、エネルギが、局所的に取り出されて、電磁量子的な真空により全体的に再び満たされる。この過程が、際限なく繰り返されることができる。この過程は、全ての入手可能なエネルギが、電磁量子的な真空のエネルギ含有量を与えることで起こる点で、エネルギ保存と一致する。システムの2つの変形例が、以下に開示される。このシステムは、1連のマイクロカシミールキャビティを気体が通る間、複数の電磁量子的な真空エネルギの取り出しを可能にし、自活的に(self-sustaining)繰り返し可能なようにして動作される。同様の効果が、分子結合に作用することによって発生されることができる。ここに開示される装置は、発電機にサイズが合わせられたプラントにパワーを供給するために、小さなバッテリに代わって設けられる適用装置に対して、サイズとエネルギ出力とが合わせられる。電磁量子的な真空は、全宇宙に広がっていると考えられるので、請求項に記載の電磁量子的な真空からパワーを引き出す装置は、無尽蔵なパワー源として効果的であることができる。
【0032】
本発明は、以下に簡潔に記載される図面と共に、以下の詳細な説明を参照することによって理解されることができる。
【0033】
この概念の第1の実施の形態は、気体が通る又は気体が流れる内部及び外部の容積(volume)からなるカシミールキャビティを利用する。原子のサイズスケールであるこのカシミールキャビティは、プレートのスケールがプレートの間隔よりもかなり大きい導電性材料の複数の平行プレート、若しくはシリンダの長さが直径よりもかなり大きい導電性材料の複数のシリンダと隣接している領域である。カシミールキャビティの他の形態も、同様の効果を発生させることができ、カシミールキャビティという用語は、ゼロ点場のモードを抑制できるいかなる容積をも示すように使用される。必要なことは、キャビティの内部対外部の電子のエネルギ準位の著しい違いを生じるようにして、電子のエネルギ準位に適したカシミールキャビティのモードを抑制することである。
【0034】
このような実施の形態は、以下の概念を論証している。
(a)複数のカシミールキャビティを有する装置を使用することであって、これらキャビティを通って特定の気体を流れさせ、
これらカシミールキャビティは、気体がキャビティを通って流れたとき、気体からエネルギが放出されるように構成され、特定の気体が選択されている、ことと、
(b)放出された気体の少なくとも一部を集めるための手段と、を具備する方法。
(a)少なくとも1つのカシミールキャビティを有する装置を与えることであって、特定の気体をこのキャビティに出入りさせ、
前記カシミールキャビティは、気体がキャビティに入って、気体からエネルギが放出されるように構成され、特定の気体が選択されている、ことと、
(b)放出されたエネルギの少なくとも一部を集めるための手段と、を具備する方法。
電子配置に変化を与えるための手段。宇宙のいかなる所でも入手可能な電磁量子的な真空のエネルギの部分を、熱、電気、機械エネルギの形態又は他のパワーの形態で利用可能なエネルギに変換するためのシステム。
エネルギが放出される過程において、電子配置に変化を与えるための手段。
電子配置が、周囲の電磁量子的な真空の放射に晒されることによって再エネルギ化されることを可能にするための手段。
カシミールキャビティと、電磁量子的な真空の放射が自由に進行する領域と、が交互に設けられた複数の対からなるマイクロ構造体を使用すること。
原子が、完全に電磁量子的な真空のスペクトルに晒される領域と、スペクトルの部分が遮蔽される領域とが交互に設けられた領域を通るように、対向した対のプレートに対する導電ストリップを使用すること。この結果、原子は、局所的な媒体にエネルギの差をダンプ(即ち放出)する。
対の層を分離するためのスペーサを使用すること。
効果を(かなり)高めるための複数の導電ストリップを使用すること。
1対の上部が、隣接する対の底部となるように、両側にストリップを有するこのようなプレートを積層すること。同一の導電ストリップを有する各々が、各対のパートナーのストリップを有するカシミールキャビティを形成している。
マイクロサイズの厚さを有し、導電プレートと非導電プレートとが交互に設けられたサンドウィッチ層を使用すること。マイクロメートル又はサブマイクロメートルの直径の孔が、エッチング又は他の技術によって取り入れられる。
交互に設けられたカシミールセグメントと非導電セグメントとを有する複数の平行なカシミールトンネルを製造するための、このようなサンドウィッチ層の積層、共レジストレーション(co-registration)及びアライメント。
効果を(かなり)高めるための複数のセグメントを使用すること。
このようなシステムでの媒体として単原子気体を使用すること。
エネルギの付随的な放出を有する分子結合を修正する目的のために、このようなシステムでの単原子気体を使用すること。
これら過程が生じる閉じた繰り返しシステム。
請求項に係る特定の実施の形態に限定されず、製造可能かつ動作可能な形態及び寸法。
気体の流れが、閉じたシステムに始まり、維持されるための手段。
電子軌道の変化から放出されるエネルギが、熱、電気、機械エネルギの形態又は他のパワーの形態で利用可能なエネルギに変換されるための手段。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、各々が本発明に係るカシミールキャビティの複数の層(multiplicity)を含む1セットのチャネルの概略図である。
【図2】図2は、本発明に従い、量子的な真空エネルギを局所的に利用可能なパワーに変換するためのシステムの概略図である。
【図3】図3は、各々が本発明に係るカシミールキャビティの複数の層を含む1ブロックのトンネルの概略図である。
【図4A】図4Aは、結合されたウェハ内の本発明に係るカシミールチャネルの概略図である。
【図4B】図4Bは、図4Aと同様の概略図である。
【図4C】図4Cは、図4A並びに図4Bと同様の概略図である。
【図4D】図4Dは、図4Aないし図4Cと同様の概略図である。
【図5A】図5Aは、本発明に係るカシミールチャネルによって流体を振動させるための装置の概略図である。
【図5B】図5Bは、図5Aと同様の概略図である。
【図5C】図5Cは、図5Bと同様の概略図である。
【図6A】図6Aは、本発明に係るカシミールキャビティの内壁の反射特性を切り替える装置の概略図である。
【図6B】図6Bは、図6Aと同様の概略図である。
【図7A】図7Aは、本発明に従い、カシミールキャビティの内壁を離間するための装置の概略図である。
【図7B】図7Bは、図7Aと同様の概略図である。
【図8】図8は、本発明に従い、非対称なカシミールキャビティの入口及び出口を組み込んだ装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
カシミールチャネル
図1に示されるこの実施の形態は、説明のために10×10cmのサイズで示された2つの正方形の平行プレート12、14を含む。各々のプレートに、10μmの非導電ストリップにより分離され、幅10μm、全長10cmである5000個の導電ストリップ16が並設されている。これらストリップに対して垂直に、0.1ないし1cmの間隔で、0.1μmの高さを有するスペーサ材18が配置されている。5000個のカシミールストリップを形成するように、これらプレートを対向させて配置し、ストリップをアライメントする。
【0037】
スペーサに対して平行かつストリップに対して垂直に、10cm/sの気体の流速を仮定すると、毎秒1.3×1020の遷移を生じる。
【0038】
遷移あたり1ないし10eVのエネルギ放出は、全体のカシミールキャビティに対してエネルギ放出の21ないし210ワットに相当する。10以上のこのような積層は、10×10×10cmのブロックに対して、210ないし2100ワットを与えることができた。
【0039】
これは、熱光起電性(thermophotovoltaic)過程を使用して直接的に、又は熱交換器を使用して直接的でなく、電気に変換されることができる。前述の実施の形態でのように、放出された放射を捕獲する1つの手段は、水浴を有する器具に囲繞されている必要がある。
【0040】
上述の寸法は、単に例示に過ぎない。装置は、小さい寸法にも、かなり大きい寸法にも調整されることができる。
【0041】
図2に示されたこの形式のエネルギ発生装置の必須の構成部材は、
(1) 複数の導電ストリップを有し、平行な複数のカシミールチャネルのアレイ10
(2) 複数のトンネルを通り、気体の連続した繰り返しを与えるポンプ22
(3) 放出されたエネルギを捕獲するための手段24
(4) 出力された熱を、電気又は他の利用可能なパワーの形態に変換することが可能な熱光起電装置、熱交換器又は他の装置26
である。
【0042】
このシステムの好ましい特性は、蓄積されたエネルギを局所的に放出し、かつこのエネルギを全体的に吸収することである。かくして、放出されるエネルギを捕獲するための手段24は、驚くことに、気体による量子的な真空エネルギの捕獲を妨げることなく、放出されたエネルギを捕獲することができる。これは、真空の場が、全ての空間を透過し、遮蔽されることができないという事実による。(カシミールキャビティが真空エネルギのモードを減少させる理由は、これらが遮蔽することではなく、むしろ、電磁モードのいくつかがこれらの内部に存在することができない破壊的な干渉によるものである。)第2の理由は、手段24が、量子的な真空エネルギの捕獲を遮蔽せず、吸収されたエネルギは、この手段24により吸収されない支配的な波長の電磁モードであり、一方、放出されたエネルギは、手段24が非常に大きな吸収係数のための比較的長い波長とすることができる、ということである。このような場合は、例えば、手段24が水浴を有する場合である。
【0043】
第1の2つの構成部材は、封止された構造体に閉じ込められている。第3及び第4の構成部材は、この構造体の内部又は外部にあることができる。
【0044】
上述の装置の変形体は、1対の上部が、隣接する対の底部となるように、複数の積層プレートからなる。
【0045】
カシミールトンネル
図3に示された概念の一実施の形態は、複数の平行な直径0.1μmのカシミールトンネルである。シリンダの長さが幅の100倍となるようにすれば、カシミールトンネルの長さはz=10μmである。我々は、各々が10μmの長さの交互に設けられた導電材料と非導電材料とからなるセグメント化されたトンネルを提案する。1cmの長さでは、このような500個のセグメントの対であり、1cmの長さ全体に亘ってセグメント化されたカシミールトンネルにより、原子の各遷移に対して500個のエネルギ放出のイベント(各々が1ないし10eVを与える)を生じる。
【0046】
図3に示されるように、10μmの厚さで交互に設けられた層でできた1cmのカシミールブロック(“Casimir Block”)を考える。直径0.1μmの複数のトンネル32が、層34に垂直な立方体を通るようにドリルで穴が開けられることができると仮定する(これは、もちろん物理的には可能でなく、トンネルの製造は、異なるようにして果されなければならない)。断面の10パーセントが、13億個のトンネルへの入口を有する。放出されたエネルギ量は、これらトンネルを通る気体の流速に比例する。
【0047】
0.1cmの全断面積を通る10cm・s−1の流速は、トンネルを通る流れの1秒当たり1cmの気体を与える。これは、STPでは、2.7×10個の原子である。非常に簡単に封止され、閉じたループのポンピングシステムが、このような連続的な気体流を維持することができる。各原子は、通過する間、500回相互作用するので、1cmの立方体全体で、1秒当たり1.3×1022個の遷移が生じる。遷移当たり1ないし10eVのエネルギ放出は、セグメント化されたトンネルのカシミール立方体全体で2150ないし21500ワットのエネルギ放出に相当する。
【0048】
明らかに、直径0.1μmを有する13億個のトンネルにドリルで穴を開けることは不可能である。しかし、まず、夫々の層に孔をエッチングし、次に、積層を組立てるように、マイクロチップ技術を使用することが可能である。積層の非常に良い共レジストレーションとアライメントとが、果される必要がある。
【0049】
これは、熱光起電性過程を使用して直接的に、又は熱交換器を使用して直接的でなく、電気に変換されることができる。
【0050】
放出されたエネルギを捕獲するための1つの手段は、水浴を有する器具を囲繞することである。水は、赤外線を非常に効果的に吸収する。2ないし200μmの範囲の波長に対して、水の吸収係数は、10cm−1よりも大きい。それ故、水の層は、1mmの厚さであり、囲繞しており、装置は、全ての放出された赤外線のほとんどを十分に吸収する。水は加熱されることができ、所望の形態のエネルギに変換される。
【0051】
上述の寸法は、単なる例である。装置は、小さい寸法とかなり大きな寸法との両方にスケールが合わせられることができる。
【0052】
この形式のエネルギ発生装置の必須の構成部材は、
(1) セグメント化された平行な複数のカシミールトンネル32のアレイ
(2) 複数のトンネルを通り、気体の連続した繰り返しを与えるポンプ22
(3) 放出されたエネルギを捕獲するための手段24
(4) 出力された熱を、電気又は他の利用可能なパワーの形態に変換することが可能な熱光起電装置、熱交換器又は他の装置26
である。
【0053】
第1の2つの構成部材は、封止された構造体に閉じ込められている。第3及び第4の構成部材は、この構造体の内部又は外部にあることができる。
【0054】
結合されたウェハのカシミールチャネル
本発明の基本概念は、複数のカシミールキャビティから出入りするように気体を流すことである。気体がカシミールキャビティの外側にあるとき、量子力学的な真空の電磁モードの広い範囲が、気体の原子の電子軌道状態と相互作用するように利用可能である。気体がカシミールキャビティを通るとき、利用可能なモードの範囲は制限され、気体は、エネルギが局所的に利用可能であるように、この気体の電磁エネルギの一部を与える。気体がカシミールキャビティから再び出るとき、気体の原子の電子軌道の状態のエネルギは、量子力学的な真空の場から再び放出される。かくして、エネルギが、全体的に取り入れられ、局所的に伝達される。
【0055】
結合されたウェハを有する基本装置の構成が、図4Aないし図4Dに示されている。装置は、1cmである。図4Bにおいて、南縁部(south edge)41から見ると、この装置は、南側から北側へ装置を横断して延びた複数のスペーサによって分離された2つの基板42、44からなる。これらスペーサは、高さd、幅w、中心から中心までの間隔sを有する。これらスペーサ48によって規定された小さなギャップが、図4Bに示されるように、装置の南縁部及び北縁部(north edge)の所で、開口部へと延びている。図4Cにおいて、東縁部(east edge)から見ると、上方基板44と下方基板42との各々が、東縁部から西縁部(west edge)へと延びた導電ストリップ46で覆われている。これらストリップは、不連続であり、この不連続性は、ストリップがスペーサ48によって交差している各領域で生じる。これらストリップは、幅wと中心から中心までの間隔sを有する。装置の中心領域では、東縁部に近い所から西縁部に近い所へとコンジット43を形成するように取り除かれた両基板の領域がある。このコンジットは、縁部に対して全ての方向に延びていないが、図4Aに示されるように、各端部で代わりにシール45で封止されている。最終的には、中心部の断面積を東側から示した図4Dに示されるように、図4Aにおいて、孔47が、上方基板を通るように延びている。この孔は、図4A並びに図4Cに示されるコンジット43と接続されている。図4A並びに図4Dに示されるように、コネクタリング49が、上方基板に取着された孔を囲繞している。
【0056】
この装置に対する機能を果すように、図2に示された気体チューブ28は、封止接続を形成している上方基板から延びたコネクタリング49に取着されている。加圧気体が、チューブと、上方基板内の孔47とを通って、これら基板の間のコンジット43へと、流れる。コンジット43からの気体が、中心領域から、基板の間のギャップを通って、北縁部及び南縁部へと流れる。これらスペーサは、気体が、北縁部及び南縁部に達するまで、導電ストリップ46で覆われた領域とこれらストリップで覆われていない領域との間を交互に流れるように案内される。北縁部及び南縁部では、気体が、基板の間のギャップから逃げる。逃げた気体は、図示されない周囲のエンクロージャに捕獲され、閉じたループを形成している装置の上部の中心部の所で、チューブ28を通って孔内にポンピングされる。このようにして、気体は、複数のカシミールキャビティを通過する。気体の原子又は分子が、非導電性の領域にあるとき、これら原子又は分子は、囲まれた電磁場からエネルギを吸収して、導電コーティングの間のギャップ、即ちカシミールキャビティ内に入るとき、これらエネルギの一部を放出する。
【0057】
装置は、図2に示された水浴のような、放出されたエネルギを捕獲するための手段24によって囲繞されている。水は、赤外線を非常に効果的に吸収する。2ないし200μmの範囲の波長に対して、水の吸収係数は、10cm−1よりも大きい。それ故、水の層は、1mmであり、囲繞しており、水を加熱するための熱エネルギが与えられると、装置は、放出された赤外線のほとんどを十分に吸収する。この熱エネルギは、加熱源として直接的に使用されたり、当業者にとって既知の従来技術の手段26によって所望の形態のエネルギに変換されたりすることができる。
【0058】
好ましい実施の形態における材料及び寸法は、以下の通りである。上方基板44と下方基板42とは、サファイアであり、周囲の電磁スペクトルの大部分が透過性であり、熱伝導性であり、硬く、丈夫(robust)である。各基板の厚さは、250μmである。導電領域46は、当業者にとって既知の従来技術の通常のフォトリソグラフィにより形成される。各導電ストリップの幅wは、2μmであり、4μmの中心から中心までの間隔sを形成するように、2μmの非導電領域によって分離されている。ストリップは、複数のギャップを有し、これらギャップには、複数のスペーサ48が設けられる。導電コーティング46は、40nmの厚さを有する白金である。スペーサ48は、当業者にとって既知の通常の手段によって堆積されパターン化されたシリコン酸化物からなる。スペーサ全体の高さdは、200nmであり、幅は、5μmであり、中心から中心までの間隔sは、0.5mmである。スペーサは、各基板の上に100nmの厚さの層を堆積させて、これらを接合することによって形成される。コンジット43の中心部の領域は、通常のダイヤモンド鋸を使用して基板に切断される。切断面が約100μmであるコンジットを形成するように、幅100μm、深さ50μmである。上方基板にドリルで開けられた孔47は、1mmの直径を有し、2.5mmの直径を有するリングによって囲繞されている。リング49は、エポキシ樹脂によって上方基板に取着されている。これら基板は、各基板の上に、シリコン酸化物のスペーサの間に形成される結合を有する直接結合(Plol, 1999)により互いに圧力結合されている。
【0059】
装置の製造における工程は、明確に記載されていないが、当業者にとって既知の従来技術である。
【0060】
背景部分にある計算によれば、このような単一の装置によって生成されるパワーは、8気圧の入力圧に対して、1ないし10ワットであると見積もられる。
【0061】
カシミールポア(Casimir pore)を通る気体のポンピングは、パワーを必要とする。我々は、装置により生成されたことのチェックとして、どれくらいのパワーが必要とされるか試験する。カシミールブロックが、1cmの面積につき、1cmの厚さと0.25の気孔率を有する直径200nmの孔を含むと仮定する。我々は、標準温圧(STP)で、1秒につき1cmのフラックスを生じるのに必要とされる圧力及びパワーを見つける。
【0062】
Royらによる論文(1993年)の図10(a)によると、760トル(所定の大気圧に等しい)の圧力降下が、60μmの厚さを通り、約5mol/m・−sの流れから生じ、10cm/sの気体の速度に対応する。10のファクタだけ速度を減少させて、適切なユニット変換をして、この結果に60μmだけ分割した1cm(10μm)の比率の厚さを掛けることによって、17気圧に相当する1700Paの圧力を生じ、所望の気体の流れを発生させることが必要とされる。これに1cm・s−1の気体のフラックスを掛けることによって、1.7ミリワットの必要なパワーを生じる。これらカシミールポアを通る温度及び構造の変化が抵抗を生じ、幾分多く大きな圧力を必要とすることが推測されるので、これら結果は近似的である。いかなる場合においても、約1.7ミリワットの必要なパワーは、我々の見積もりのパワーの放出の2.2ないし22キロワットよりもかなり小さいので、気体の流れを発生させるために使用されるパワーよりもかなり大きなパワーが発生される。
【0063】
寸法及び材料が、かなり変えられることもでき、なおもこの発明の部分であることが理解される。以下は、排他的ではないが、このような変形例のリストである。
i. 基板は、シリコン、ガラス、セラミック、プラスチックのような他の絶縁材料又は部分的な導電材料であっても良い。
ii. 導電ストリップは、銅、アルミニウム、金、銀、ケイ化物、インジウムスズ酸化物のような透明な導体のような他の導体で形成されることができる。
iii. ストリップを堆積させる代わりに、産業上既知の技術を使用して、ストリップが、表面から突出し、気体の流れと潜在的に干渉し、ストリップが、導体を堆積させたリセスをエッチングすることによって、又はストリップの間の絶縁層を覆うように平面化技術を使用することによって、窪ませられることができる。
iv. スペーサの材料は、例えば、フォトレジスト、電子ビームレジストに使用されるポリマ、金属、他の材料から形成されることができる。
v. スペーサを堆積させる代わりに、スペーサが、基板の一方の側又は両側にエッチングにより形成されることができる。
vi. スペーサの高さは、1nmないし数μmであることができる。
vii. 基板は、圧力結合又はシアノアクリレートのような接着剤の使用によって結合されることができる。
viii. 構造体全体の寸法は、単一のスペーサ対の間の距離から、数メートルの幅の大きなプレートの導電/非導電領域まで変化されることができる。
ix. 夫々の装置は、厚い構造体を形成するように、互いに挟み込まれることができる。例えば、250μmの厚さの基板に代わって、50μm以下の厚さを有するマイクロシートが、密な構造体が形成されるように使用されることができる。
x. 動作する流体は、気体の原子の全ての記述が、様々な分子に拡張されることができるように、初めに説明された希ガスに加えて、気体の変化に幅があっても良い。
xi. 動作する流体は、気体及び気体の原子の全ての記述が、様々な形式の液体に拡張されることができるように、液体であることができる。約100℃内での動作に対して、可能な液体の1つは、エチレングリコールである。高い温度動作に対して、液体は、ナトリウムであることができる。
xii. マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)技術を使用して形成されたマイクロモータが、チャネルを通る気体をホンピングするために使用されることができる。
xiii. カシミールキャビティは、カーボンナノチューブで形成されることができる。
xiv. パターンは、自己組織化単分子層を使用して形成されることができる。
xv. 装置は、自然に形成される構造体を組み込むことができる。例えば、ケイ藻のシェル(Goho, 2004a)は、数十nmの大きさの孔を含むことを特徴とするパターン化されたシリコン酸化物からなる。これらは、カシミールキャビティを形成するための導体で必要とされるようにコーティングされることができる。
xvi. 水浴が、放出されたエネルギの波長を実質的に吸収する他の材料、又は装置に置き換えられることができる。ガラス、有機ポリマ、熱起電力装置を含むこのような材料は、当業者にとって既知の従来技術である。
xvii. 吸収材料は、装置全体を囲繞しているよりも、例えば気体が流れるチャネルを覆っている装置に配置されることができる。このような配置は、吸収体が、エネルギを放出している気体のおおまかな放出波長内にあることを可能にすることができる。
【0064】
カシミールチャネルを通って振動する気体
上述の実施の形態で説明された装置は、カシミールキャビティ領域(導電層の間)と、露光領域(導電層がない)との間で、複数の遷移に亘って原子をポンピングすることによって、気体の原子を非常に多くの遷移に晒す。装置を通る気体をポンピングする代わりに、気体原子が、カシミールキャビティと露光領域との間で前後に簡単に振動されることができる。
【0065】
必ずしも必要ではないが、これを可視化する簡単な方法は、最も効率的な動作装置が、図4Aないし図4Dの装置であると考えられるが、北縁部及び南縁部で封止されたギャップである。コネクタリングによってチューブに接続する代わりに、リングが、金属の厚いダイアフラムで覆われている。装置を封止する前に、装置は、所望の動作する気体で満たされる。そして、超音波トランデューサが、パワーを供給され、気体を急速に圧縮したり膨張させたりし、カシミール領域と露光領域との間で前後に振動させる。
【0066】
垂直に振動する流れ装置が、図5Aないし図5Cに示されている。図5Aは、上面図であり、複数の小さな孔54が、基板の表面に形成されている。この装置は、コネクタリング58により囲繞されている。孔の拡大された断面が、図5Bに示されている。孔54は、直径d、中心から中心までの間隔d、深さt、表面での導電領域56の厚さtを有する。装置全体の中心部の断面積は、図5Cに示されている。これは、基板(図示されないが孔及び導電層)と、周辺のコネクタリングと、コネクタリングの上部に取着された薄いダイアフラム57とを示している。
【0067】
ギャップと孔とは、選択された動作する気体59で満たされている。超音波トランデューサ又は他の高周波振動源が、ダイアフラム57と接触して配置され、パワーが供給される。これは、内方及び外方に代わって、気体の原子を、各孔の上部に形成されたカシミール領域55を通させる気体圧振動をする。上部の単一導電層に代わって、複数の交互の導電層及び非導電層が、効果を複合的に与えるように、孔の上部に形成されることができる。図4Aないし図4Dの実施の形態でのように、装置は、水浴24のような放出されたエネルギを吸収するための手段によって囲繞されている。
【0068】
装置が、以下のように製造される。導電層56は、スパッタリングのような真空蒸着を使用して、若しくは陽極又は無電解めっきにより液体から、堆積される。これら層は、電子ビームリソグラフィ又はフォトリソグラフィのような当業者にとって既知の方法によりパターン化される。代わって、複数の孔54が、当業者にとって既知のリソグラフィマスクを形成するように、自己組織化単分子層を使用して形成されることができる。これら孔は、例えばイオンミリングのような20の深さ対直径の比率の高いアスペクト比にエッチングされる。外側リング58は、エポキシ樹脂を使用して取着され、この領域は、所望の動作する気体59で満たされて、ダイアフラム57が、エポキシ樹脂を使用して取着される。
【0069】
好ましい実施の形態における材料及び寸法は、以下の通りである。基板52は、サファイアであり、直径2.54cm、厚さ250μmである。導電層56は、1μmの厚さtのアルミニウムである。孔54の深さtは、4μmである。孔の直径dは、0.2μmであり、中心から中心までの間隔sは、0.3μmである。
【0070】
形状、寸法、調整技術及び材料は、かなり変えることができ、なおも本発明に含まれることが理解されなければならない。以下は、排他的ではないが、このような変形例のリストである。
i. カシミールキャビティは、カーボンナノチューブで形成されることができる。
ii. 動作する流体は、気体の原子の全ての記述が、様々な形式の分子に拡張されることができるように、初めに説明された希ガスに加えて、気体の変化に幅があっても良い。
iii. 動作する流体は、気体及び気体の原子の全ての記述が、様々な形式の液体に拡張されることができるように、液体であることができる。約100℃内での動作に対して、可能な液体の1つは、エチレングリコールである。高い温度動作に対して、液体は、ナトリウムであることができる。
iv. 気体の原子を、カシミールキャビティの領域から出入りするように動的に振動させる代わりに、振動が、周囲の熱による振動(例えばブラウン運動)をすることができる。
v. 装置の形態は、動作する気体が、左側の領域と右側の領域との間で前後に押圧されるように、図7A並びに図7B(後の実施の形態の一部として記載されている)のMEMS装置と同様の形態であることができる。
vi. パターンは、自己組織化単分子層として形成されることができる。
vii. 装置は、自然に形成される構造体を組み込むことができる。例えば、ケイ藻のシェル(Goho, 2004a)は、数十nmの大きさの孔を含むことを特徴とするパターン化されたシリコン酸化物からなる。これらは、カシミールキャビティを形成するための導体で必要とされるようにコーティングされることができる。
viii. ポンピングが、自然に生じる機構によって駆動されることができる。例えば、いくつかのイーストセルは、1.6kHzで自然に振動されることが判っている(Goho, 2004b)。気体が、カシミールキャビティと露光領域との間で前後に振動されるように使用されることができる。
ix. 水浴が、放出されたエネルギの波長を実質的に吸収する他の材料、又は装置に置き換えられることができる。ガラス、有機ポリマ、熱起電力装置を含むこのような材料は、当業者にとって既知の従来技術である。
x. 吸収材料は、装置全体を囲繞しているよりも、例えば気体が流れるチャネルを覆っている装置に配置されることができる。このような配置は、吸収体が、エネルギを放出している気体のおおまかな放出波長内にあることを可能にすることができる。
【0071】
可撓性ポリマのカシミールキャビティ
動作する気体を移動させるよりもむしろ、動作する気体を流す(図4Aないし図4D)、又はカシミールキャビティを出入りするように動作する気体を振動させる(図5Aないし図5C)ことによって、キャビティの内壁の特性が切り替えられることができ、キャビティの可能なモードにおいてシフトを生じる。この過程は、図4Aないし図4Dの実施の形態の気体を流す装置を与える真空の電磁エネルギをトラップするのと同じ結果を与える。これを果すための1つの方法は、動作する気体を、可撓性のフォトニック結晶に形成されたギャップに与えることである。フォトニック結晶は、電磁放射の帯域をブロックし、透過させ、この帯域の波長範囲は、材料特性と小さな繰り返し構造体の間隔とに依存している。可撓性のフォトニック結晶は、可撓性ポリマの薄膜のシリコン柱体のような、アレイ又は強固な物質を嵌入することによって形成されることができる。このような2次元スラブのフォトニック結晶構造の電磁(又は光学)特性は、当業者にとって既知である(Park, 2002)。
【0072】
図6A並びに図6Bは、このようなフォトニック結晶の装置を示している。図6Aは、上面図であり、ポリマフィルム64の両端に金属支持部62を示している。フォトニック結晶で形成された硬い柱体は、ポリマに埋封されている。フィルムが紙面上に延びるのに従って、紙面に垂直な平面に離間された柱体が減少し、電磁帯域を変化させる。図6Bは、支持部62、ポリマフィルム64、動作する気体69で満たされたこのフィルム内のギャップを示す端面図である。(明確化のために、柱体は図示されていない。)ギャップの大きさは、十分なカシミール効果を発生させるために十分に小さく、例えば200nmである。長さ又は幅は、小さなギャップを維持するために十分に小さくされる必要があり、例えば1μmである。静止物体に一方の支持部を取着し、ピエゾ電気結晶のような振動子に他方の支持部を取着することによって、延伸が起こり、他の静止支持部に対向する側に取着されることができる。図4Aないし図5Dの実施の形態でのように、この装置は、水浴24のような放出エネルギを吸収するための手段によって囲繞されている。
【0073】
形状、寸法、調整技術及び材料は、かなり変えることができ、なおも本発明に含まれることが理解されなければならない。以下は、排他的ではないが、このような変形例のリストである。
(1) ポリマを延伸させる代わりに、この装置を囲繞している空気又は液体を通る音響信号で調整されることができる。
(2) ポリマを延伸させる代わりに、周囲の熱振動で調整されることができる。動作する気体及び構造体が加熱されるのに従って、振動が増加する。
(3) 硬い柱体に埋封されたポリマは、動作する気体で満たされた小さな球体内に形成されることができる。これら球体は、体積で満たされる、又は部分的に満たされることができ、圧力が、この球体の体積を囲み、全体積に対して圧力を調整することによって、体積を通る音響信号を通過させることによって、又は熱振動によって、調整される。この調整は、動作する気体を囲繞しているフォトニック結晶の帯域に変化を与える。この装置の形状は、図6A並びに図6Bでは実質的に異なるが、機能は同じである。
(4) 動作する流体は、気体の原子の全ての記述が、様々な形式の分子に拡張されることができるように、初めに説明された希ガスに加えて、気体の変化に幅があっても良い。
(5) 動作する流体は、気体及び気体の原子の全ての記述が、様々な形式の液体に拡張されることができるように、液体であることができる。約100℃内での動作に対して可能な液体の1つは、エチレングリコールである。高い温度動作に対して、液体は、ナトリウムであることができる。
(6) 水浴が、放出されたエネルギの波長を実質的に吸収する他の材料又は装置に置き換えられることができる。ガラス、有機ポリマ、熱起電力装置を含むこのような材料は、当業者にとって既知の従来技術である。
(7) 吸収材料は、装置全体を囲繞しているよりも、例えば気体が流れるポリマフィルムで、この装置に配置されることができる。このような配置は、吸収体が、エネルギを放出している気体のおおまかな放出波長内にあることを可能にすることができる。
【0074】
カシミールキャビティの内壁の間隔の調整
動作する気体を移動させるよりもむしろ、動作する気体を流す(図4Aないし図4D)、カシミールキャビティを出入りするように動作する気体を振動させる(図5Aないし図5C)、又は通過帯域を変化させるようにキャビティの内壁の特性を切り替える(図6A並びに図6B)ことによって、キャビティの内壁間の間隔が調整されることができる。これは、上述の実施の形態の流れる気体の装置を与えるゼロ点エネルギをトラップするのと同じ結果を与える。これを果すために、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)に形成されたギャップに動作する気体を与えることができる。
【0075】
MEMS技術は、ミニチュアの機械装置を構築するための半導体リソグラフィ技術に有用である。カシミール効果は、MEMS装置において明らかになってきている。2001年には、ベル研究所ルーセントテクノロジ(Bell Labs Lucent Technologies)のChanと同僚らが、まず、MEMS装置におけるカシミール力の効果を論証した。球体を覆う金が、薄いトーションロッド上の基板の上に懸吊されたポリシリコンプレートからなるMEMSのシーソーペダルの近くに与えられる。ベル研究所の研究者らは、プレートをロックする際のカシミール力の効果を論証した。
【0076】
本発明において、我々は、カシミールキャビティの内壁の間の間隔を調整するために、MEMS技術を利用する。(我々は、ベル研究所の論証でなされたように、この間隔を変化させるためのカシミール力を利用するのではないことに注意する。)これを果すために使用される基本的なMEMS装置が、図7A並びに図7Bに示されている。側面図が、図7Aである。2つの導電電極76が、基板の上に示されている。枢動ポリシリコンプレート74が、基板72の上方に懸吊されて示されている。導電層77が、このプレートの裏面に形成されている。上面図が、図7Bである。枢動プレート74は、ギャップ73により囲繞された中心部の矩形領域を形成している。枢動アーム75が、矩形の上部及び底部の所で、囲繞領域にこのプレートを接続している。初めの実施の形態でのように、装置は、水浴のような放出エネルギを吸収するための手段24によって囲繞されている。
【0077】
装置は、以下のように機能する。動作する気体は、枢動プレート74と基板72との間の領域を満たす。まず、枢動プレートと左電極との間に、電圧が印加される。これによって、これら2つの表面によって形成されたカシミールキャビティの寸法を変化させて、プレートの左側と基板との間の距離を最小にする。そして、枢動プレートと右電極との間に、電圧が印加される。これによって、これら2つの表面によって形成されたカシミールキャビティの寸法を変化させて、プレートの右側と基板との間の距離を最小にするように、プレートを枢動させる。電圧は、プレートを前後に振動させるように、これら2つの電極間で交互に切り替えられる。振動する動作は、非常に小さいエネルギが振動を維持するために必要とされるように、枢動のトーション力によって非常に高められる。
【0078】
このようなMEMS装置を製造するための技術は、当業者にとって既知である。
【0079】
形状、寸法、調整技術及び材料は、かなり変えることができ、なおも本発明に含まれることが理解されなければならない。以下は、排他的ではないが、このような変形例のリストである。
i. MEMS装置を使用する代わりに、カシミールキャビティは、基板と懸吊された導電シートとの間に形成されることができる。同様の技術が、たとえ比較的大きな間隔であっても、静電音響スピーカーを形成するために使用される。
ii. ギャップは、導電体で覆われたギャップの両側にポリマで形成されることができ、このギャップは、動作する気体で満たされる。そして、ポリマは、2つの導電体により形成されたカシミールキャビティの間隔が調整されるように、図6A並びに図6Bの実施の形態のように、延伸されることができる。この図は、図6Bに示されたのと同様に見ることができる。
iii. ポリマを延伸させる代わりに、この装置を囲繞している空気又は液体を通る音響信号で調整されることができる。
iv. ポリマを延伸させる代わりに、周囲の熱振動で調整されることができる。動作する気体及び構造体が加熱されるのに従って、振動が増加する。
v. 導体で内面を覆ったポリマは、動作する気体で満たされた小さな球体内に形成されることができる。これら球体は、体積で満たされる、又は部分的に満たされることができ、圧力が、この球体の堆積を囲み、全体積に対して圧力を調整することによって、体積を通る音響信号を通過させることによって、調整される。この調整は、動作する気体を囲繞しているフォトニック結晶の帯域に変化を与える。この装置の形状は、図7A並びに図7Bでは実質的に異なるが、機能は同じである。
vi. 動作する流体は、気体の原子の全ての記述が、様々な形式の分子に拡張されることができるように、初めに説明された希ガスに加えて、気体の変化に幅があっても良い。
vii. 動作する流体は、気体及び気体の原子の全ての記述が、様々な形式の液体に拡張されることができるように、液体であることができる。約100℃内での動作に対して可能な液体の1つは、エチレングリコールである。高い温度動作に対して、液体は、ナトリウムであることができる。
viii. 水浴が、放出されたエネルギの波長を実質的に吸収する他の材料又は装置に置き換えられることができる。ガラス、有機ポリマ、熱起電力装置を含むこのような材料は、当業者にとって既知の従来技術である。
ix. 吸収材料は、装置全体を囲繞しているよりも、例えば基板と、気体を収容している領域のキャップとを覆って、この装置に配置されることができる。このような配置は、吸収体が、エネルギを放出している気体のおおまかな放出波長内にあることを可能にすることができる。
【0080】
我々は、図7A並びに図7BのMEMS装置は、左側領域及び右側領域の間を前後に動作する気体が移動するために使用されることができることを注意する。この機能は、図5Aないし図5Cの実施の形態で一貫しており、動作する気体は、カシミールキャビティを出入りするように振動される。
【0081】
吸収手段を有する非対称なカシミールキャビティの出入り
この実施の形態に先立って、我々は、本発明に含まれる過程を復習した。本発明全体の一般的な概念は、真空場(ゼロ点場としても知られている)を含む周囲の電磁モードに対して非平衡状態の気体が、カシミールキャビティに入ることである。本発明全体の目的のために、カシミールキャビティは、電磁モードが制限される領域として規定される。この領域に近づくと、空間を維持している電磁モードが制限され、気体の原子の電子軌道のエネルギが減少される。この減少の結果として、熱エネルギが与えられると、過度のエネルギが、装置により放出され、吸収される。原子がカシミールキャビティ内にあるときまでに、ほぼ全ての過度のエネルギが、(気体の流れが非常に速くならない限り)放射される。気体の原子は、カシミールキャビティを通り、この領域から他の領域に現れ、電磁モードの幅の広い範囲を維持し、気体の原子の電子軌道のエネルギが、以前の値に再び上げられる。エネルギの欠乏に対する補填が、周囲の電磁モードから与えられる。
【0082】
本発明の概念の1つは、気体がカシミールキャビティに近づいたときに放出された過度のエネルギが、局所的に伝達され、エネルギの欠乏は、キャビティから出現し、全体的な供給源から供給される気体によって補填されなければならないことである。このようにして、周囲の電磁場は、利用可能なエネルギを与えるようにトラップされる。過度のエネルギを放出することと、欠乏エネルギを供給することとの両方が、ネットエネルギが与えられることなく、局所的に果されることが可能である。同様に、過度のエネルギを放出することと、欠乏エネルギを供給することとの両方が、ネットエネルギが再び与えられることなく、全体的に果されることが可能である。このような可能性を避けるために、我々は、過度のエネルギが局所的に放出され、エネルギの欠乏が全体的に供給されることを確実にするように、装置に非対称性を与える。
【0083】
このような実施の形態の概念が、図8に示されている。この図は、初めの実施の形態のいくつかの図に示されたのと同様に、チャネル88を示している。気体は、2つの基板82、83の間に制限され、チャネル内を通って矢印の方向に流れる。上述のように、気体は、基板が導電層で覆われていない領域87から、覆われている領域86へと流れる。ここでの違いは、基板が吸収層で覆われるように、中間領域84が設けられていることである。この吸収領域は、原子がカシミールキャビティ(導電)領域に近づくのに従って、原子から放出された過度のエネルギを吸収する。この吸収領域は、実質的に導電性でなく、それ故、この領域に維持された電磁モードを実質的に制限しない。このカシミールキャビティ(導電)領域を出ると、原子は、非吸収領域87である他の領域を直ちに通る。かくして、原子がカシミールキャビティに近づくと、原子は、過度のエネルギが吸収領域86によって吸収されるので、過度のエネルギを局所的に伝達させる。カシミールキャビティから出ると、気体の原子は、エネルギに対する局所的な供給源がないので、これらエネルギの欠乏を非局所的に、即ち全体的に供給させる。
【0084】
1つの見解として、本発明のさらなる態様が、気体の原子のおおまかな1つの放出波長内で、放出と同時に、吸収領域をシミュレーションする。気体の原子がカシミールキャビティから出て、エネルギが供給されるとき、このような所定の間隔内にこのような層は設けられない。基板は、基板が放出波長を吸収しないように選択される。
【0085】
吸収層は、ガラス(通常は不純物を含むアモルファスシリコン酸化物)を含むことができ、また、基板は、サファイアを含むことができる。ガラスは、サファイアよりも遠赤外線における幅の広い吸収帯を有する。幅の広い他の材料が、吸収層、非吸収又は吸収性の少ない基板を形成するために与えられることができる。このような材料は当業者にとって既知であり、表やハンドブックで入手可能である。
【0086】
図8に示された領域の連続部分は、図4Aないし図4Dの実施の形態に示された複数のストリップ構造体を形成するために繰り返されることができる。
【0087】
チャネル及び装置の寸法は、図4Aないし図4Dの実施の形態とほぼ同じである。同様に、気体の流れを与えるための取着部、スペーサ及び装置の他の態様は、図4Aないし図4Dの実施の形態に示されたものと同じである。導電層の長さは、現れる原子が吸収領域からの放射にほぼアクセスできないように選択される。図2の実施の形態と同様に、水浴のような、放出されたエネルギを吸収するための手段24を有する装置を囲繞する必要がないことに注意する。
【0088】
装置の製造は、当業者によく知られているので、明白には図示されない。
【0089】
形状、寸法、調整技術及び材料は、かなり変えることができ、なおも本発明に含まれることが理解されなければならない。以下は、排他的ではないが、このような変形例のリストである。
i. 基板は、シリコン、ガラス、セラミック、プラスチックのような他の絶縁材料又は部分的な導電材料であっても良い。
ii. 導電ストリップは、銅、アルミニウム、金、銀、ケイ化物、インジウムスズ酸化物のような透明な導体のような他の導体で形成されることができる。
iii. ストリップは、基板に窪ませられるか、表面から突出されることができる。
【0090】
iv. 夫々の装置は、厚い構造体を形成するように、互いに挟み込まれることができる。例えば、250μmの厚さの基板に代わって、50μm以下の厚さを有するマイクロシートが、密な構造体が形成されるように使用されることができる。
v. 動作する流体は、気体の原子の全ての記述が、様々な分子に拡張されることができるように、初めに説明された希ガスに加えて、気体の変化に幅があっても良い。
vi. 動作する流体は、気体及び気体の原子の全ての記述が、様々な形式の液体に拡張されることができるように、液体であることができる。約100℃内での動作に対して、可能な液体の1つは、エチレングリコールである。高い温度動作に対して、液体は、ナトリウムであることができる。
vii. マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)技術を使用して形成されたマイクロモータが、チャネルを通る気体をホンピングするために使用されることができる。
viii. カシミールキャビティは、カーボンナノチューブで形成されることができる。
ix. パターンは、自己組織化単分子層を使用して形成されることができる。
【0091】
装置は、自然に形成された構造体を組み込むことができる。例えば、ケイ藻のシェル(Goho, 2004a)は、数十nmの大きさの孔を含むことを特徴とするパターン化されたシリコン酸化物からなる。拡張する必要があれば、これらは、カシミールキャビティを形成するための導体として必要であるように覆われることができる。
【0092】
代表的な実施の形態及び詳細が、本発明の図示目的のために示されたが、添付の請求項で規定される本発明の範囲から逸脱することなく、ここに記載された方法及び装置に様々な変形が与えられることは当業者にとって自明であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲環境から電磁放射を取り出し、かつ集めるためのシステムであって、
(a) (i)流体がカシミールキャビティ内に通されたとき、周囲環境から電磁放射を受けて、(ii)エネルギの少なくとも一部を放出する能力を特徴とする流体供給部と、
(b) 前記流体により放出された前記電磁放射の少なくとも一部を集めるように構成された第1の構成体と、
(c) 所望の経路を規定し、この経路に沿って前記流体を収容するための手段を有する第2の構成体と、
(d) 前記所望の経路内に配置されたカシミールキャビティを有し、前記流体が前記所望の経路に沿って収容されるのに従って、この流体が前記キャビティを出入りされるように、前記第2の構成体と協同する第3の構成体と、を具備し、
前記カシミールキャビティは、(i)前記流体が前記キャビティに入ったとき、周囲環境から受けた電磁エネルギを含むこの流体が、このエネルギの少なくとも一部を前記第1の構成体に放出させて、(ii)前記流体が前記キャビティから出たとき、周囲環境から電磁エネルギを再び受けるように、周囲環境及び前記第1の構成体と十分に連通するように配置されている、システム。
【請求項2】
前記第2の構成体は、前記流体が、前記経路に沿って、前記カシミールキャビティを出入り可能に流されるように構成されている請求項1のシステム。
【請求項3】
前記第2及び第3の構成体は、前記カシミールキャビティが、前記流体に対して移動されるように構成されており、代わって、前記流体が、前記カシミールキャビティを出入りするように通される請求項1のシステム。
【請求項4】
前記所望の経路を規定している前記手段は、前記流体を収容するための閉じた通路を規定しており、
前記第2の構成体は、同じ前記流体が前記カシミールキャビティを出入りするサイクルを与えるように構成されている請求項1のシステム。
【請求項5】
前記通路は、ループ経路を規定しており、
前記第2の構成体は、前記流体が、前記カシミールキャビティを出入り可能に、前記通路を通って前記経路の周りに流されるように構成された機構を有する請求項4のシステム。
【請求項6】
前記第2の構成体は、前記流体を、前記カシミールキャビティの出入りによって、前記通路を通って前後に流れさせるための機構を有する請求項4のシステム。
【請求項7】
前記流体は、気体である請求項1のシステム。
【請求項8】
前記気体は、単原子気体である請求項7のシステム。
【請求項9】
前記気体は、分子性気体である請求項7のシステム。
【請求項10】
前記第1の構成体は、電磁エネルギを吸収するための材料でできたコンテナを有し、
この吸収材料は、前記カシミールキャビティを少なくとも囲繞している請求項1のシステム。
【請求項11】
前記吸収材料は、液体である請求項6のシステム。
【請求項12】
前記液体材料は、水である請求項11のシステム。
【請求項13】
前記第3の構成体は、前記カシミールキャビティを、前記第1及び第2の離間位置の間で前後に移動させるように構成されている請求項3のシステム。
【請求項14】
前記カシミールキャビティは、対向壁を有し、
前記第3の構成体は、前記カシミールキャビティの両壁の位置を、前記第1及び第2の離間位置の間で前後に移動させるように構成されている請求項1のシステム。
【請求項15】
周囲の電磁量子的な真空から電磁エネルギを取り出し、かつ集めるためのシステムであって、
(a) 気体がキャビティ内に通されたとき、周囲の電磁量子的な真空から得られた電磁エネルギを含むこの気体から、前記エネルギの少なくとも一部を放出させるように構成された少なくとも1つのカシミールキャビティを規定している第1の構成体と、
(b) 周囲の電磁量子的な真空に配置された第2の構成体であって、
前記気体の気体源と、
この気体が、周囲の電磁量子的な真空から前記カシミールキャビティに入り、このキャビティを出て、周囲の電磁量子的な真空へと戻るように、前記第1の構成体と協同する機構と、を有し、
かくして、前記気体が前記カシミールキャビティ内に入ったとき、この気体が、この気体のエネルギの少なくとも一部を放出して、周囲の電磁量子的な真空に戻って、周囲の電磁量子的な真空から電磁エネルギを再び受け、また、
前記機構と前記第1の構成体とは、前記流体が、前記キャビティと前記気体との間の相対運動により前記カシミールキャビティを出入りするように、互いに協同する、第2の構成体と、
(c) 前記流体により放出された前記電磁エネルギの少なくとも一部を捕獲するための第3の構成体と、を具備し、
この第3の構成体は、前記気体により放出された前記電磁エネルギの少なくとも一部が、吸収体により捕獲されるように、前記カシミールキャビティに対して所定の位置に配置された手段を有する、システム。
【請求項16】
(a) 複数のカシミールキャビティを有する第1の構成体であって、これらカシミールキャビティの各々は、流体がこのキャビティ内に通されたとき、周囲環境から得られた電磁エネルギを含むこの流体が、前記エネルギの少なくとも一部を放出させるように構成されている、第1の構成体と、
(b) 周囲の電磁量子的な真空に配置された第2の構成体であって、
前記流体の流体源と、
この流体が、周囲の電磁量子的な真空から前記カシミールキャビティに入り、このキャビティを出て、周囲の電磁量子的な真空へと戻るように、前記第1の構成体と協同する手段と、を有し、
かくして、前記流体が前記カシミールキャビティ内に入ったとき、この流体が、この流体のエネルギの少なくとも一部を放出して、周囲の電磁量子的な真空に戻って、周囲の電磁量子的な真空から電磁エネルギを再び受け、また、
前記手段と前記第1の構成体とは、前記流体が、前記キャビティと前記気体との間の相対運動により前記カシミールキャビティを出入りするように、互いに協同する、第2の構成体と、
(c) 前記流体により放出された前記電磁エネルギの少なくとも一部を捕獲するための第3の構成体と、を具備するシステム。
【請求項17】
前記手段は、周囲環境から前記カシミールキャビティを通って周囲環境に戻るように延びた少なくとも1つの流路を有し、
前記カシミールキャビティは、前記通路内に配置された複数の導電ストリップによって規定されており、これら導電ストリップは、
前記通路の一方の側に離間して配置されたストリップである第1のグループと、
この第1のグループの夫々のストリップとアライメントされ、前記通路の他方の側に離間して配置されたストリップである第2のグループと、を有し、
これらアライメントされた対のストリップの各々は、前記カシミールキャビティを形成するように、互いに関連して配置されている請求項16のシステム。
【請求項18】
(a) 流体がキャビティ内に通されたとき、周囲環境から得られた電磁エネルギを含むこの流体が、前記エネルギの少なくとも一部を放出するように構成された少なくとも1つのカシミールキャビティを規定している第1の構成体を与えることと、
(b) 前記流体の流体源を与えることと、
(c) 前記流体が、周囲の電磁量子的な真空から前記カシミールキャビティに入り、このキャビティを出て、周囲の電磁量子的な真空へと戻させることであって、
かくして、前記流体が前記カシミールキャビティ内に入ったとき、この流体が、この流体のエネルギの少なくとも一部を放出して、周囲の電磁量子的な真空に戻って、周囲の電磁量子的な真空から電磁エネルギを再び受け、また、
前記流体が、前記キャビティと前記流体との間の相対運動により前記カシミールキャビティを出入りされる、ことと
(d) 前記流体により放出された前記電磁エネルギの少なくとも一部を捕獲することを具備する方法。
【請求項19】
周囲環境から電磁放射を取り出し、かつ集める方法であって、
(a) (i)流体がカシミールキャビティ内に通されたとき、周囲環境から電磁放射を受けて、(ii)エネルギの少なくとも一部を放出する能力を特徴とする流体供給部を与えることと、
(b) 前記流体により放出された前記電磁放射の少なくとも一部を集めるように構成された第1の構成体を与えることと、
(c) 所望の経路を規定し、この経路に沿って前記流体を収容するための手段を有する第2の構成体と、
(d) 前記所望の経路内に配置されたカシミールキャビティを有する第3の構成体を与えることと、
(e) 前記流体が前記所望の経路に沿って収容されるように、この流体が、前記キャビティを出入りするように通されることと、
(f) (i)前記流体が前記キャビティに入ったとき、周囲環境から受けた電磁エネルギを含むこの流体が、このエネルギの少なくとも一部を前記第1の構成体に放出させて、(ii)前記流体が前記キャビティから出たとき、周囲環境から電磁エネルギを再び受けるように、周囲環境と前記第1の構成体と十分に連通するように、前記カシミールキャビティを配置することと、を具備する方法。
【請求項20】
(a) 少なくとも1つの機構を規定している第1の構成体であって、
流体が前記機構に通されたとき、周囲環境から得られた電磁エネルギを含む所望の流体を形成している原子及び分子が、前記エネルギの少なくとも一部を放出するようにして、形態を変化させるように設計されている、第1の構成体と、
(b) 周囲環境に配置された第2の構成体であって、
前記気体の気体源と、
この気体が、周囲の電磁量子的な真空からカシミールキャビティに入り、このキャビティを出て、周囲の電磁量子的な真空へと戻るように、前記第1の構成体と協同する手段と、を有し、
かくして、前記気体が前記カシミールキャビティ内に入ったとき、この気体が、この気体のエネルギの少なくとも一部を放出して、周囲の電磁量子的な真空に戻って、周囲の電磁量子的な真空から電磁エネルギを再び受け、また、
前記手段と前記第1の構成体とは、前記流体が、前記キャビティと前記気体との間の相対運動により前記カシミールキャビティを出入りするように、互いに協同する、第2の構成体と、
(c) 前記流体により放出された前記電磁エネルギの少なくとも一部を捕獲するための第3の構成体と、を具備するシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−504728(P2010−504728A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529164(P2009−529164)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/037096
【国際公開番号】WO2008/039176
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(509079282)ジョビオン・コーポレーション (1)