説明

金合金メッキ液

【目的】 金属アレルギーの原因となるニッケル塩、コバルト塩などを含まずにメッキの色調を著しく異ならせず、しかも延性、耐磨耗性に富み、厚いメッキが可能で光沢の得られる金合金メッキ液を提供する。
【構成】 弱有機酸とアルカリで所定のPHに調整した電導塩を10〜500g/Lと、シアン化第一金アルカリ塩、シアン化第二金アルカリ塩からなる群より選ばれた金化合物を金属金として0.2〜10g/L含有し、更に卑金属として鉄塩を金属鉄として0.05〜10g/L、チタン塩を金属チタンとして0.001〜5g/L含有する金合金メッキ液。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光沢、延性のある金合金メッキ液に関する。
【0002】
【従来の技術】従来公知の金メッキ液は、卑金属としてコバルト塩、ニッケル塩、インジウム塩などを含有している。しかし上記従来のメッキ液では析出物の硬度はビッカース硬さで150〜280Hv程度と小さく柔らかいものであった。更にメッキ層そのものの延性が乏しく2〜3μm以上の厚さのメッキを施すとメッキ層に割れが入り、メッキ厚を厚くして光沢を得ることも困難であった。また更に、ニッケル塩、コバルト塩などは金属アレルギーの主な原因であり、金属アレルギーに敏感な人には利用できないという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、金属アレルギーの原因であるニッケル塩、コバルト塩などを除くと、得られるメッキは純金となり、硬度が低下し、色調も異なるので好ましくなく、また金属アレルギーに関係のないインジウム塩だけでは色調が黄緑色となり、装飾品としては用途が限定されてしまい、新技術の開発が望まれていた。本発明は上記従来技術の欠点を解消するためになされたものであり、金属アレルギーの原因となるニッケル塩、コバルト塩などを含まずにメッキの色調を著しく異ならせず、しかも延性に富み、厚いメッキが可能で光沢の得られる金合金メッキ液を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明金合金メッキ液は、弱有機酸とアルカリで所定のPHに調整した電導塩を10〜500g/Lと、シアン化第一金アルカリ塩、シアン化第二金アルカリ塩からなる群より選ばれた金化合物を金属金として0.2〜10g/L含有し、更に卑金属として鉄塩を金属鉄として0.05〜10g/L、チタン塩を金属チタンとして0.001〜5g/L含有することを特徴とする。
【0005】
【実施例】金化合物は、シアン化第一金ナトリウム、シアン化第一金カリウム、シアン化第二金ナトリウム、シアン化第二金カリウムからなる群より選ばれ、金属金に換算した量で0.2〜10g/Lを含有される。上記の金化合物の量が金属金に換算して0.2g/L未満になると、電流効率が低く作業性が低下し、10g/Lより多いと作業での金のロスが多くなりコスト的な負担が大きくなり好ましくない。また金化合物の種類は上記の群から選ばれたどの化合物でもよいが、シアン化第一金カリウムが原料の入手しやすさの点から好ましい。また本発明では上記の金化合物は1種だけ用いてもよいが、2種以上を混合することもできる。
【0006】鉄塩はシュウ酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、硫酸塩などの水容性鉄塩化合物の群より選ばれ、金属鉄に換算して0.05〜10g/Lを含有される。上記の鉄塩の量が金属鉄に換算して0.05g/L未満になると、延性、光沢性の効果が確保できず、10g/Lを超えると水に安定して溶解しなくなり好まれない。
【0007】チタン塩はシュウ酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、硫酸塩、フッ酸塩などの化合物の群より選ばれ、金属チタンに換算して0.001〜5g/Lを含有される。上記チタン塩の量が金属チタンに換算して0.001g/L未満になると、耐磨耗性、延性、光沢性色調の改善の効果が確保できず、5g/Lを超えるとメッキ液に安定して溶解しない。
【0008】電導塩はクエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、リン酸塩などの化合物の群より選ばれ、塩として10〜500g/Lを含有される。上記電導塩の量が10g/L未満では鉄、チタンが安定して溶解せず、500g/Lを超えると過飽和になり好ましくない。
【0009】上記PHは弱有機酸とアルカリで中和して所定の数値に調整される。PH調整用の弱有機酸としては例えばクエン酸、酒石酸、グルコン酸、リン酸、シュウ酸等が挙げられ、アルカリとしては例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0010】本発明金合金メッキ液は、従来公知の方法、条件で取り扱うことができる。例えば電圧2〜15V、電流密度0.1〜10A/dm2 等の条件で使用できる。
【0011】次に具体的実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
(実施例1)
金合金メッキ液組成シアン化第二金カリウム 1g/L(金属金として)
シュウ酸 30g/Lシュウ酸第一鉄 0.05g/L(金属鉄として)
フッ化チタン 0.001g/L(金属チタンとして)
PH 3.5 (水酸化カリウムで中和)
上記組成の金合金メッキ液によるメッキ浴を温度40℃とし、電圧3V、電流密度2A/dm2 で黄銅素材10cm×15cm×0.1cmの板に銅合金用の一般の前処理〔アルカリ脱脂(マクダミッド社 WSP)、次いで電解脱脂(マクダミッド社 DEW)、次いで酸浸漬(5%Wt 硫酸)〕を施した後、20分間メッキしたところ、明るい色調の光沢のある、割れのない金メッキが5μm得られ、剥離強度試験の結果、良好な耐磨耗性、密着性を有していることが確認された。
【0012】(実施例2)
金合金メッキ液組成シアン化第一金カリウム 5g/L(金属金として)
グルコン酸 500g/Lグルコン酸第二鉄 5g/L(金属鉄として)
硫酸化チタン 2g/L(金属チタンとして)
PH 3.5 (水酸化カリウムで中和)
上記組成の金合金メッキ液によるメッキ浴をを用いて、温度35℃とし、電圧3V、電流密度1A/dm2 、メッキ時間を90分間とした以外は実施例1と同様にしてメッキ処理したところ、光沢のある、割れのない金メッキが18μm得られ、180度折り曲げ試験を行った結果、割れも入らず、剥離もない耐磨耗性の良好な皮膜であった。
【0013】(比較例1)実施例1のメッキ液からフッ化チタンを除いたメッキ液を使用し、実施例1と同様の方法でメッキしたところ、金メッキが5μm得られたが、色調が暗く耐磨耗性の低いメッキ皮膜であり、実施例1とは大きく異なる結果であった。
【0014】(比較例2)実施例1のメッキ液からシュウ酸第一鉄を除いたメッキ液を使用し、実施例1と同様の方法でメッキしたところ、得られた金メッキは外観光沢がなく、実施例1とは大きく異なる結果であった。
【0015】(比較例3)実施例2のメッキ液から硫酸チタンを除いたメッキ液を使用し、実施例2と同様の方法でメッキしたところ、金メッキが5μm得られたが、色調が暗く耐磨耗性の低く、実施例2とは大きく異なる結果であった。
【0016】(比較例4)実施例2のメッキ液から酒石酸第一鉄を除いたメッキ液を使用し、実施例2と同様の方法でメッキしたところ、得られた金メッキは外観光沢がなく、実施例2とは大きく異なる結果であった。
【0017】
【発明の効果】以上説明したように、本発明金合金メッキ液は特定の金化合物を特定の金属金の特定量含有し、かつ金属アレルギーの原因であるニッケル塩、コバルト塩を含有せず、その代わりに特定の鉄塩と特定のチタン塩とを、おのおの特定量含有する組成を有しているので、金属アレルギーに敏感な人にも扱え、かつメッキの色調を著しく異ならせず、しかも延性、耐磨耗性に富み、厚いメッキが可能で光沢の得られるメッキを行うことができる効果を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 弱有機酸とアルカリで所定のPHに調整した電導塩を10〜500g/Lと、シアン化第一金アルカリ塩、シアン化第二金アルカリ塩からなる群より選ばれた金化合物を金属金として0.2〜10g/L含有し、更に卑金属として鉄塩を金属鉄として0.05〜10g/L、チタン塩を金属チタンとして0.001〜5g/L含有することを特徴とする金合金メッキ液。

【公開番号】特開平7−18484
【公開日】平成7年(1995)1月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−186455
【出願日】平成5年(1993)7月28日
【出願人】(390021027)株式会社ビクトリア (4)
【出願人】(000002325)セイコー電子工業株式会社 (3,629)