説明

金型装置及びパネル成形方法

【課題】 シワの発生を抑制し美観に優れたパネルを歩留まり良く製造することのできる金型装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 下型であるコラプスポンチ1と、最終製品形状前の絞り成形されたパネル2を前記コラプスポンチ1に押し付けるパネル押さえ手段であるパネル押さえパッド3と、前記パネル2を前記コラプスポンチ1とで最終製品形状に成形する上型であるリストセクダイ4と、最終製品形状前のパネル2の一端側部2aを保持し、成形加工開始から成形加工終了時まで前記パネル2に張力を付与する張力付与手段とを備える。張力付与手段は、パネル2に形成した位置決め孔7と、この位置決め孔7に嵌入するブロック9に設けた位置決めピン8とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型装置及びパネル成形方法に関し、詳細には、シワ発生防止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、絞り加工されたパネルを最終的に所定の形状に成形するに際しては、パネルの部位によっては割れやしわが発生する場合がある。これら割れやしわの発生を抑える技術の一例として特許文献1に記載された加工方法が開示されている。
【0003】
この加工方法は、絞り成形されたパネルを可動ダイスにセットし、パネルのフランジを寄せ曲げ刃によって可動ダイス側に押圧させ、フランジを凹状に寄せ曲げ成形するに当たり、寄せ曲げ刃が最初にフランジに当接する位置から寄せ曲げ加工終了位置までの距離を、フランジの寄せ曲げ成形される全ての部位に亘って同一となるように予めパネルの絞り加工を行う。
【0004】
このようにすれば、フランジの曲げ加工部位の全長に亘って寄せ曲げ刃の加工タイミングを同一とすることができ、局部的な伸びや縮みの発生を吸収することができ、割れやしわの発生を抑えることができる。
【特許文献1】特開平7−214183号公報(第3頁及び第4頁、第1図及び第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の加工方法では、寄せ曲げ刃によってパネルが可動ダイス側に押し付けられて引き込まれて行くに過ぎないため、成形時にはパネルに張力が付与されないことによって、製品にシワが発生してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、シワの発生を抑制し美観に優れたパネルを歩留まり良く製造することのできる金型装置及びパネル成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の金型装置は、下型と、最終製品形状前の絞り成形されたパネルを前記下型に押し付けるパネル押さえ手段と、前記パネルを前記下型とで最終製品形状に成形する上型と、最終製品形状前のパネルの一端側部を保持し、成形加工開始から成形加工終了時まで前記パネルに張力を付与する張力付与手段とを備える。
【0008】
また、本発明のパネル成形方法は、最終製品形状前のパネルの一端側部を保持し、成形加工開始から成形加工終了時まで前記パネルに張力を付与しながら下型と上型とで成形を行う。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、最終製品形状前のパネルの一端側部を保持して成形加工開始から成形加工終了時までパネルに張力を付与して下型と上型とで成形するので、成形加工終了時まで張力が付与された状態を維持したまま下型と上型とでパネルが成形されることから、シワの発生を抑制することができる。したがって、シワの少ない美観に優れたパネルを提供することができると共に、歩留まりを大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
「第1の実施の形態」
図1は第1の実施の形態における金型装置の断面図、図2は第1の実施の形態における金型装置に備わるスクラップ排除手段の斜視図である。
【0012】
本実施の形態の金型装置は、図1に示すように、下型であるコラプスポンチ1と、最終製品形状前の絞り成形されたパネル2をコラプスポンチ1に押し付けるパネル押さえ手段であるパネル押さえパッド3と、パネル2をコラプスポンチ1とで最終製品形状に成形する成形ダイであるリストセクダイ4と成形終了間際にパネル2をカットするトリミングダイであるトリムセクダイ5とからなる上型と、パネル2の一端側部2aを保持し成形加工開始から成形加工終了時までパネル2に張力を付与する張力付与手段とを備えている。
【0013】
コラプスポンチ1は、プレス機のベース(図示は省略する)上に固定され、トリミングして最終製品形状となったパネル2を取り出すときに横に移動可能とされている。
【0014】
パネル押さえパッド3は、パネル2の成形部分以外の他端側部2bをコラプスポンチ1に押し付けて当該パネル2をクランプする。かかるパネル押さえパッド3は、上型がパネル2を成形する前に先行してパネル2をクランプし、成形終了後に上型が待避した後にパネル2のクランプ状態を回避するようになっている。このパネル押さえパッド3は、プレス機が下死点となったときに最大限に撓み、パネル2を押し潰さないようにし、また、プレス機が上死点となったときに元の状態に復帰する。例えば、パネル押さえパッド3には、ウレタンなどの弾性体が使用される。
【0015】
リストセクダイ4は、プレス機のラムに取り付けられたカムスライド6の先端に固定されている。このリストセクダイ4は、コラプスポンチ1と協働してパネル2を最終製品形状に成形するダイとして形成されている。
【0016】
トリムセクダイ5は、リストセクダイ4に固定されている。このトリムセクダイ5は、前記コラプスポンチ1と前記リストセクダイ4による成形終了間際にパネル2の不要部分をカットするダイとして形成されている。
【0017】
そして、これらリストセクダイ4とトリムセクダイ5は、ラムに固定されたカムスライド6がコラプスポンチ1に接近する前進動作とコラプスポンチ1から離間する待避動作を繰り返すことで、最終製品形状前の絞り加工されたパネル2を成形しトリミングする。
【0018】
張力付与手段は、パネル2の一端側部2aに形成した位置決め孔7に挿入される位置決めピン8と、この位置決めピン8を固定するブロック9と、前記位置決め孔7に挿入される位置決めピン8の突き出し量を増減する突き出し量調整手段とからなる。
【0019】
位置決めピン8は、トリミングされてスクラップとなるパネル2の一端側部2aに形成される長孔形状の位置決め孔7に嵌入されるようになっている。この位置決めピン8は、前記位置決め孔7への挿入を容易なものとするためにその先端部が球面形状とされている。なお、位置決めピン8は、破損防止のために硬い材料で形成されている。
【0020】
ブロック9は、パネル2の一端側部2aの形状に応じた傾斜面9aを上面とした矩形体ブロックとして形成されている。そして、このブロック9の傾斜面9a上に、前記位置決めピン8を前記位置決め孔7に嵌入させるようにしてパネル2の一端側部2aを位置決め載置させるようにしている。
【0021】
突き出し量調整手段は、位置決めピン8の下端に設けた雄ねじ部10と、この雄ねじ部10を螺合させる雌ねじ部11と、この雌ねじ部11を内面に形成し前記位置決めピン8を挿入させる孔部12とからなる。
【0022】
位置決めピン8の下端に設けた雄ねじ部10を、前記孔部12の雌ねじ部11に螺合させることで、前記位置決めピン8を前記ブロック9に取り付けると共に、それらの螺合位置を調整することで、前記位置決めピン8の突き出し量を増減可能としている。なお、本実施の形態では、一つのブロック9に対して位置決めピン8を所定距離を置いて2つ設けており、さらに、ブロック9もパネル2の大きさに応じて2つ設けている。
【0023】
また、本実施の形態の金型装置には、トリムセクダイ5でカットしたスクラップを、前記位置決めピン8から取り外して落下させるスクラップ排除手段が設けられている。スクラップ排除手段は、図2に示すように、スクラップとなるパネル2の一端側部2aを跳ね上げる跳ね上げ部材13と、この跳ね上げ部材13を上下動させる駆動部材であるエアーシリンダー14とからなる。
【0024】
跳ね上げ部材13は、パネル2の一端側部2aを上方へ持ち上げるように跳ね上げることで、前記位置決めピン8から前記位置決め孔7を引っ掛かりなく外してスクラップを金型の下方へ落下させることのできるように、前記一端側部2aと接触する面が位置決めピン8側に向かって次第に下降するような傾斜面13aを有した平板として形成されている。この跳ね上げ部材13は、ブロック9の両脇と、2つのブロック9の間にそれぞれ設けられ、長尺状をなすプレート15上に固定されている。
【0025】
エアーシリンダー14は、前記プレート15の下方に配置され、進退ロッド16の先端に当該プレート15を固定させている。かかるエアーシリンダー14は、進退ロッド16を本体部から上方へ向けて延ばすことで前記プレート15を持ち上げ、進退ロッド16を本体部内に向けて没することで前記プレート15を下降させる。このエアーシリンダー14を動作させることで、前記プレート15に固定した跳ね上げ部材13が上下動可能となる。
【0026】
次に、前記した金型装置を使用してパネルを最終製品形状に成形するパネル成形方法について説明する。
【0027】
図3は最終製品形状前の絞り成形されたパネルの一例を示す斜視図、図4は図3に示すパネルのA−A線断面図である。ここでは、自動車部品であるボディーサイドアウターのフロントピラーを成形する例として説明する。
【0028】
先ず、図5に示すように、パネル2を孔開けトリミング金型を使用して位置決め孔7を開けると共に不要な部分をカットする。すなわち、パネル2をダイ17にセットした後、孔開けパンチ18でパネル2の一端側部2aに位置決め孔7を開ける。また、トリミングパンチ19で不要部分をカットする。位置決め孔7としては、例えば10×20(mm)の長孔に加工する。
【0029】
図6は位置決め孔加工及びトリミングされた後のパネルの断面図を示す。図6中二点鎖線は、最終製品形状を示している。
【0030】
次に、図7に示すように、パネル2の他端側部2bをコラプスポンチ1の上に配置すると共に、ブロック9に設けた位置決めピン8に、パネル2の一端側部2aに形成した位置決め孔7を嵌入させる。そして、パネル押さえパッド3を下降させて前記パネル2の他端側部2bを押さえ込む。これで、パネル2は、一端側部2aと他端側部2bとが共に位置決めされることになる。
【0031】
次に、上型を下降させてパネル2を最終製品形状に成形する。上型を下降させると、リストセクダイ4とトリムセクダイ5の先端がほぼ同時にパネル2に接触する。このリストセクダイ4とトリムセクダイ5がパネル2に接触して成形が開始されると、パネル2は、他端側部2bがパネル押さえパッド3でコラプスポンチ1に押し付けられた状態にあり、一端側部2abも位置決めピン8に引っ掛けられて位置規制された状態にあるから、パネル2の両端が移動を規制され、リストライクの初期からパネル2に張力が付与される。つまり、パネル2は、引っ張られた状態を初期状態から成形終了時まで維持しながらリストセクダイ4とコラプスポンチ1とによって成形されて行く。
【0032】
そして、図8に示すように、リストセクダイ4とコラプスポンチ1とが突き当たって最終成形段階に達すると、そのリストライク終了間際にトリムセクダイ5によってパネル2の不要部分がトリミングされる。その結果、スクラップ20が製品部分から切り離されることになる。なお、先行するセクダイにてパネル2をくわえ込み、リストライクとトリミングを同時にする型構造に比べると、トリムコンディションが良いためバリを防ぐことができる。
【0033】
次に、図9に示すように、エアーシリンダー14を作動させて跳ね上げ部材13を上昇させる。そして、図10に示すように、この跳ね上げ部材13の上面に形成した傾斜面13aをスクラップ20に接触させて上方に持ち上げ、前記位置決めピン8から位置決め孔7を抜いてスクラップ20を矢印Aで示すように金型の下方へ落下させる。
【0034】
なお、位置決めピン8と位置決め孔7との引っ掛かかりが強くスクラップ20を排除し難い場合は、図11に示すように、位置決めピン8のブロック9からの突出量を少なくするように調整する。こうすることで、位置決めピン8と位置決め孔7との引っ掛かり量が減り、スクラップ20をブロック9から容易に排除することができる。また、位置決めピン8と位置決め孔7との引っ掛かり量が大きいとパネル2に大きな張力が掛かり、リストライク時にパネル2の一部に割れが生じることが考えられるが、位置決めピン8の突き出し量を下げてパネル2が位置決めピン8から外れ易くすることで割れを防止することが可能となる。
【0035】
以上のように、本実施の形態によれば、最終製品形状前のパネル2の一端側部2aを保持して成形加工開始から成形加工終了時までパネル2に張力を付与して下型と上型とで成形するので、成形加工終了時まで張力が付与された状態を維持したまま下型と上型とでパネル2を成形することが可能となることから、シワの発生を抑制することができる。したがって、シワの少ない美観に優れたパネル2を提供することができると共に、歩留まりを大幅に向上させることができる。
【0036】
また、本実施の形態によれば、張力付与手段を、パネル2に形成した位置決め孔7に挿入される位置決めピン8と、この位置決めピン8を固定するブロック9とで構成したことから、パネル2への張力付与を簡単な構造で構成することができ、装置コストも低く抑えることができる。
【0037】
また、本実施の形態によれば、位置決めピン8の突き出し量を増減する突き出し量調整手段を有しているので、位置決めピン8と位置決め孔7との引っ掛かり量を適宜調整することができ、スクラップ20を排除するときに位置決めピン8に引っ掛かることなく排除できる。また、この突き出し量調整手段で位置決めピン8の位置決め孔7に対する突き出し量を少なくすることで、パネル2が位置決めピン8から外れ易くして当該パネル2の割れを防止することができる。
【0038】
「第2の実施の形態」
図12は第2の実施の形態の金型装置の断面図、図13から図15は第2の実施の形態の金型装置でパネルを成形する工程を順次示す工程断面図である。
【0039】
本実施の形態の金型装置は、図12に示すように、下型であるポンチ21と、最終製品形状前の絞り加工されたパネル2をポンチ21に押し付けるパネル押さえ手段であるパネル押さえパッド22と、パネル2をポンチ21とで最終製品形状に成形するカムセクダイ23である上型と、パネル2の一端側部2aを保持し成形加工開始から成形加工終了時までパネル2に張力を付与する張力付与手段とを備えている。
【0040】
ポンチ21は、プレス機のベース(図示は省略する)上に固定されている。かかるポンチ21には、後述するカムパッド24に形成される段付き部26と同一形状の段差部29が形成されている。この段差部29は、第1傾斜面29aと、この第1傾斜面29aに連接する急勾配の第2傾斜面29bと、この第2傾斜面29bに連接する緩やかな第3傾斜面29cからなる。
【0041】
パネル押さえパッド22は、パネル2の成形部分以外の他端側部2bをポンチ21に押し付けて当該パネル2をクランプする。かかるパネル押さえパッド22は、上型がパネル2を成形する前に先行してパネル2をクランプし、成形終了後に上型が待避した後にパネル2のクランプ状態を回避するようになっている。このパネル押さえパッド22は、プレス機が下死点となったときに最大限に撓み、パネル2を押し潰さないようにし、また、プレス機が上死点となったときに元の状態に復帰する。例えば、パネル押さえパッド22には、ウレタンなどの弾性体が使用される。
【0042】
カムセクダイ23は、プレス機のラムに取り付けられたカムスライド(図示は省略する)の先端に固定されている。このカムセクダイ23は、ポンチ21と協働してパネル2を最終製品形状に成形するダイとして形成されている。そして、このカムセクダイ23は、ラムに固定されたカムスライドがポンチ21に接近する前進動作とポンチ21から離間する待避動作を繰り返すことで、最終製品形状前の絞り加工されたパネル2を成形する。
【0043】
張力付与手段は、パネル2の一端側部2aを前記ポンチ21に押し付けてその一端側部2aを段差形状となす段付き部を有したパッドであるカムパッド24と、このカムパッド24をポンチ21に押し付ける押圧部材であるタンカーシリンダー25とからなる。
【0044】
カムパッド24の先端には、パネル2の一端側部2aを段差形状とする段付き部26が形成されている。段付き部26は、パネル2の一端側部2aを段差形状とする第1形成面26aと、この第1形成面26aに連接する急勾配の第2形成面26bと、この第2形成面26bに連接する緩やかな第3形成面26cからなる。第1形成面26aは段差部29の第1傾斜面29aと、第2形成面26bは第2傾斜面29bと、第3形成面26cは第3傾斜面29cとそれぞれほぼ同じ形状とされている。このカムパッド24は、カムセクダイ23に形成された切り欠き部27内にスライド自在に設けられている。
【0045】
タンカーシリンダー25は、切り欠き27の底部に設けられている。そして、このタンカーシリンダー25のロッド28の先端には、前記カムパッド24が取り付けられている。このタンカーシリンダー25のロッド28を進退動作させることで、前記カムパッド24がスライド自在とされる。
【0046】
次に、前記した金型装置を使用してパネルを最終製品形状に成形するパネル成形方法について説明する。
【0047】
先ず、図12に示すように、最終製品形状前の絞り加工されたパネル2をポンチ21の上にセットする。そして、パネル押さえパッド22を下降させて前記パネル2の他端側部2bを押さえ込む。
【0048】
次に、上型を下降させてパネル2を最終製品形状に成形する。上型を下降させると、図13に示すように、カムセクダイ23に先行してカムパッド24が、パネル2の一端側部2aを、ポンチ21の段差部29に押し付ける。このとき、カムパッド24の先端に形成された段付き部26とポンチ21に形成された段差部29とで前記パネル2を挟み込むため、該パネル2の一端側部2aが段差形状に成形される。また、タンカーシリンダー25でカムパッド24が押圧されることにより、パネル2の一端側部2aがクランプされた状態とされる。
【0049】
そして、図14に示すように、パネル2の一端側部2aと他端側部2bとが押さえ込まれた後に、カムセクダイ23がパネル2に接触して当該パネル2を成形加工開始する。このとき、パネル2には張力が付与されているのでシワが発生することなくカムセクダイ23とポンチ21とで最終製品形状に成形されてゆく。最終成形間際では、図15に示すように、カムパッド24に形成された段付き部26とポンチ21に形成された段差部29からパネル2の一端側部2aが外れ、カムセクダイ23にて最終製品形状に成形される。
【0050】
成形が完了したらカムセクダイ23を上昇させカムパッド24をパネル2から待避させる。そして、パネル押さえパッド22を上昇させた後、ポンチ21から成形されたパネル2を取り出す。
【0051】
以上のように、本実施の形態によれば、最終製品形状前のパネル2の一端側部2aを保持して成形加工開始から成形加工終了時までパネル2に張力を付与して下型と上型とで成形するので、成形加工終了時まで張力が付与された状態を維持したまま下型と上型とでパネル2を成形することが可能となることから、シワの発生を抑制することができる。したがって、第1の実施の形態と同様、シワの少ない美観に優れたパネル2を提供することができると共に、歩留まりを大幅に向上させることができる。
【0052】
また、本実施の形態によれば、パネル2の一端側部2aをポンチ21に押し付ける段付き部26を有したカムパッド24と、このカムパッド24をポンチ21に押し付けるタンカーシリンダー25とで張力付与手段を構成しているので、装置コストを低く抑えることができる。
【0053】
以上、本発明を適用した具体的な実施の形態について説明したが、上述の実施の形態は本発明の一例であり、これら実施の形態に制限されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1の実施の形態における金型装置の断面図である。
【図2】第1の実施の形態における金型装置に備わるスクラップ排除手段の斜視図である。
【図3】最終製品形状前の絞り成形されたパネルの一例を示す斜視図である。
【図4】図3に示すパネルのA−A線断面図である。
【図5】孔開けトリミング金型にてパネルに位置決め孔を加工すると共に不要部分をトリミングする工程を示す断面図である。
【図6】位置決め孔加工及びトリミングされた後のパネルの断面図を示す。
【図7】第1の実施の形態の金型装置にてパネルを成形する成形工程を示す断面図である。
【図8】第1の実施の形態の金型装置にてパネルを成形するトリミング工程を示す断面図である。
【図9】第1の実施の形態の金型装置にてパネルを成形する上型待避工程を示す断面図である。
【図10】第1の実施の形態の金型装置にてパネルを成形するスクラップ排除工程を示す断面図である。
【図11】位置決めピンの突き出し量を少なくした状態を示す第1の実施の形態の金型装置の断面図である。
【図12】第2の実施の形態の金型装置の断面図である。
【図13】第2の実施の形態の金型装置にてパネルを成形するパネル一端側部の押さえ工程を示す断面図である。
【図14】第2の実施の形態の金型装置にてパネルを成形する成形工程を示す断面図である。
【図15】第2の実施の形態の金型装置にてパネルを成形する成形完了工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1…コラプスポンチ(下型)
2…パネル
3…パネル押さえパッド(パネル押さえ手段)
4…リストセクダイ(上型)
5…トリムセクダイ(上型)
6…カムスライド(上型)
7…位置決め孔
8…位置決めピン(張力付与手段)
9…ブロック(張力付与手段)
10…雄ねじ部(突き出し量調整手段)
11…雌ねじ部(突き出し量調整手段)
13…跳ね上げ部材(スクラップ排除手段)
14…エアーシリンダー(スクラップ排除手段)
21…ポンチ(下型)
22…パネル押さえパッド
23…カムセクダイ(上型)
24…カムパッド(張力付与手段)
25…タンカーシリンダー(張力付与手段)
26…段付き部(張力付与手段)
29…段差部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下型と、
最終製品形状前の絞り成形されたパネルを前記下型に押し付けるパネル押さえ手段と、
前記パネルを前記下型とで最終製品形状に成形する上型と、
最終製品形状前のパネルの一端側部を保持し、成形加工開始から成形加工終了時まで前記パネルに張力を付与する張力付与手段とを備えた
ことを特徴とする金型装置。
【請求項2】
請求項1に記載の金型装置であって、
前記張力付与手段は、前記パネルに形成した孔に挿入される位置決めピンと、この位置決めピンを固定するブロックとからなる
ことを特徴とする金型装置。
【請求項3】
請求項2に記載の金型装置であって、
前記ブロックには、前記孔に挿入される前記位置決めピンの突き出し量を増減する突き出し量調整手段が設けられている
ことを特徴とする金型装置。
【請求項4】
請求項1に記載の金型装置であって、
前記張力付与手段は、前記パネルの一端側部を前記下型に押し付けてその一端側部を段差形状となす段付き部を有したパッドと、このパッドを下型に押し付ける押圧部材とからなる
ことを特徴とする金型装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3の何れか一つに記載の金型装置であって、
前記上型は、前記パネルを前記下型とで最終製品形状に成形する成形ダイと、成形終了間際に前記パネルをカットするトリミングダイとを有し、
前記トリミングダイでカットしたスクラップを、前記張力付与手段から取り外し落下させるスクラップ排除手段を備えた
ことを特徴とする金型装置。
【請求項6】
請求項5に記載の金型装置であって、
前記スクラップ排除手段は、前記スクラップの一端側部を跳ね上げる跳ね上げ部材と、この跳ね上げ部材を上下動させる駆動部材とからなる
ことを特徴とする金型装置。
【請求項7】
最終製品形状前の絞り成形されたパネルをパネル押さえ手段で下型に押さえ付けて前記下型と上型とで最終製品形状に成形するパネル成形方法において、
前記最終製品形状前のパネルの一端側部を保持し、成形加工開始から成形加工終了時まで前記パネルに張力を付与しながら前記下型と前記上型とで成形を行う
ことを特徴とするパネル成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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