説明

金属イオン及びハロゲンイオンの含有量が少ない感熱記録材料の製造方法。

【目的】 サーマルヘッドの金属部を腐食することが無い上地肌の着色が少ない感熱記録材料の製造方法を提供すること。
【構成】 実質的に無色の発色成分Aと、該発色成分Aと加熱時に反応して発色する実質的に無色の発色成分Bのうちの一方をマイクロカプセルに内包するマイクロカプセルを含有するマイクロカプセル液、及び、少なくともマイクロカプセル化されない前記発色成分を固体分散物として、若しくは水に難溶性又は不溶性の有機溶媒に溶解した後、得られた溶液を、水溶性高分子及び界面活性剤を含有する水溶液中に混合攪拌して乳化分散せしめた乳化分散物として含有する分散物とを混合してなる塗布液を支持体上に直接又は他の塗膜を介して塗布する感熱記録材料の製造方法であって、前記マイクロカプセルのマイクロカプセル化終了時及び/又は、前記乳化分散物の乳化分散終了時に、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを用いてイオン交換処理することを特徴とする感熱記録材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は感熱記録材料の製造方法に関し、特にサーマルヘッド適性に優れる上、地肌の着色が少ない感熱記録材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】感熱記録方法は、使用する記録装置が簡便であるにもかかわらず信頼性が高い上メインテナンスも不要であることから、近年目覚ましい発展を遂げ様々な用途に応用されている。そこで最近、熱記録によって多色画像やフルカラーの画像を記録する提案もなされている。
【0003】一般に、感熱記録における発色成分としては、電子供与性染料前駆体(発色剤)と電子受容性化合物(顕色剤)の組み合わせ又はジアゾ化合物(発色剤)とカップリング成分(顕色剤)の組み合わせが用いられる。この場合、常温で発色剤と顕色剤の接触による発色を防止し、記録材料の生保存性を高める観点から、少なくとも発色剤か顕色剤の何れか一方をマイクロカプセル化することが好ましく、又ジアゾ化合物を使用した場合には、熱記録後光定着することができるという利点がある。
【0004】通常、ジアゾ化合物を使用する場合には、ジアゾ化合物をマイクロカプセル化することが行われるが、この場合、マイクロカプセルに内包されずに残存したジアゾ化合物が感熱記録層中に含有されると地肌汚れの原因となる。そこで、マイクロカプセル化終了時には、マイクロカプセル化されなかったジアゾ化合物を、イオン交換樹脂を用いて除去する方法等が採用されているが、十分でなく、更に改善することが望まれていた。
【0005】一方、熱記録に使用するサーマルヘッドは主として金属質の発熱体からなっており、これは記録時における400〜700℃の温度下において、感熱記録層中に存在するナトリウムイオン(Na+ )、カリウムイオン(K+ )或いは塩素イオン(Cl- )等によって腐食されることが知られている。
【0006】そこで、かかる金属腐食からサーマルヘッドを保護するために、該表面を酸化アルミニウム、酸化ルテニウム等の酸化金属の薄い被膜で保護すると共に、感熱記録層に含有されるナトリウムイオン、カリウムイオン或いは塩素イオンを所定量まで低減させることが行われているが(例えば、特公昭59−25672号)、尚、簡便且つ効率良く、上記のイオンを更に低減させることのできる方法の開発が望まれていた。
【0007】特に、多色感熱記録材料の場合には、支持体上に感熱記録層を多層重層塗布法によって効率よく設けることにより感熱記録材料の製造適性を向上させる観点、又、感熱記録層各層の層間の混合を防止して色分離性を向上させる観点から、感熱記録層に含有されるマイクロカプセルや乳化分散物に使用される保護コロイド或いはバインダーとして用いる水溶性高分子として、特に両性高分子であるゼラチンを使用することが望まれる。
【0008】しかしながら、ゼラチンは一価の金属イオン(例えば、Na+ 、K+ )及びハロゲンイオン(例えばCl- )の各イオンを多量に含んでいるので、このようなゼラチンをマイクロカプセル等の保護コロイド等として使用した感熱記録材料を用いて画像を記録した場合には、これらのイオンによりサーマルヘッドの金属部分が腐食されて破壊され易いという欠点があった。
【0009】しかしながら、保護コロイドとして水溶性高分子、特にゼラチンを使用したマイクロカプセルや乳化分散物から、従来のイオン交換処理法によって上記のイオンやジアゾ化合物を除去しようとした場合には、マイクロカプセルや乳化分散物がイオン交換処理中に凝集して沈澱するので、これらのイオン等を除去することが困難となるという欠点があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者等は上記の欠点を解決すべく、鋭意検討した結果、水溶性高分子を保護コロイドとして用いたマイクロカプセルを含有する溶液及び/又は乳化分散物を、2種類のイオン交換樹脂及び/又は膜によって処理することにより、良好な結果が得られることを見出し本発明に到達した。従って、本発明の目的は、サーマルヘッドの金属部を腐食することが無い上地肌の着色が少ない感熱記録材料の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の上記の目的は、実質的に無色の発色成分Aと、該発色成分Aと加熱時に反応して発色する実質的に無色の発色成分Bのうちの一方をマイクロカプセルに内包するマイクロカプセルを含有するマイクロカプセル液、及び、少なくともマイクロカプセル化されない前記発色成分を固体分散物として、若しくは水に難溶性又は不溶性の有機溶媒に溶解した後、得られた溶液を、水溶性高分子及び界面活性剤を含有する水溶液中に混合攪拌して乳化分散せしめた乳化分散物として含有する分散物とを混合してなる塗布液を支持体上に直接又は他の塗膜を介して塗布する感熱記録材料の製造方法であって、前記マイクロカプセルのマイクロカプセル化終了時及び/又は、前記乳化分散物の乳化分散終了時に、陽イオン交換樹脂と陽イオン交換膜の少なくとも一方、及び陰イオン交換樹脂と陰イオン交換膜の少なくとも一方を用いてイオン交換処理することを特徴とする、金属イオン及びハロゲンイオンの含有量が少ない感熱記録材料の製造方法によって達成された。
【0012】本発明に用いる発色成分A及びBは、加熱による物質の接触に基づく発色反応を生ずる物質であり、具体的には電子供与性染料前駆体(発色剤)と電子受容性化合物(顕色剤)の組み合わせ又はジアゾ化合物(発色剤)とカップラー(顕色剤)の組み合わせである。
【0013】電子供与性染料前駆体としてはトリアリールメタン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、チアジン系化合物、キサンテン系化合物、スピロピラン系化合物等が挙げられるが、特にトリアリールメタン系化合物及びキサンテン系化合物が、発色濃度が高いので有用である。
【0014】これらの具体例としては、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(即ちクリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノ)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,3−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(o−メチル−p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド;
【0015】4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンズヒドリンベンジルエーテル;N−ハロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン;ローダミン−B−アニリノラクタム、ローダミン(p−ニトロアニリノ)ラクタム、ローダミン−B−(p−クロロアニリノ)ラクタム;
【0016】2−ベンジルアミノ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−シクロヘキシルメチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−イソアミルエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−オクチルアミノ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−エトキシエチルアミノ−3−クロロ−2−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン;
【0017】ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンジルロイコメチレンブルー、3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン、3,3’−ジクロロ−スピロ−ジナフトピラン、3−ベンジルスピロジナフトピラン、3−プロピル−スピロ−ジベンゾピラン等がある。
【0018】電子受容性化合物としてはフェノール誘導体、サリチル酸誘導体、ヒドロキシ安息香酸エステル等が挙げられる。これらの中でも特に、ビスフェノール類、ヒドロキシ安息香酸エステル類が好ましい。
【0019】これらの一部を例示すれば、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクロロフェニル)プロパン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸及びその多価金属塩、3,5−ジ(tert−ブチル)サリチル酸及びその多価金属塩、3−α,α−ジメチルベンジルサリチル酸及びその多価金属塩、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−2−エチルヘキシル、p−フェニルフェノール、p−クミルフェノール等が挙げられる。
【0020】電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物からなる感熱記録層には、その反応を促進するための増感剤を添加することが好ましい。増感剤としては、分子内に芳香族性の基と極性基を適度に有している低融点有機化合物が好ましく、その具体例としてはp−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、α−ナフチルベンジルエーテル、β−ナフチルベンジルエーテル、β−ナフトエ酸フェニルエステル、α−ヒドロキシ−β−ナフトエ酸フェニルエステル、β−ナフトール−(p−クロロベンジル)エーテル、1,4−ブタンジオールフェニルエーテル、1,4−ブタンジオール−p−メチルフェニルエーテル、1,4−ブタンジオール−p−エチルフェニルエーテル、1,4−ブタンジオール−m−メチルフェニルエーテル、1−フェノキシ−2−(p−トリルオキシ)エタン、1−フェノキシ−2−(p−エチルフェノキシ)エタン、1−フェノキシ−2−(p−クロロフェノキシ)エタン、p−ベンジルビフェニル等が挙げられる。
【0021】一方、ジアゾ化合物と該ジアゾ化合物と熱時反応して発色するカプラーを含有する感熱発色層には、公知の光分解性のジアゾ化合物、該ジアゾ化合物と反応して色素を形成しうるカプラー及び必要に応じて用いられる、ジアゾ化合物とカプラーとの反応を促進する塩基性物質等である。
【0022】本発明で言う光分解性のジアゾ化合物は主に芳香族ジアゾ化合物を指し、更に具体的には芳香族ジアゾニウム塩、ジアゾスルホネート化合物、ジアゾアミノ化合物等を意味する。これらの中でも、熱感度の点から、特にジアゾニウム塩を使用することが好ましい。
【0023】ジアゾニウム塩とは一般式Ar−N2 + - (式中Arは芳香族部分を表し、N2 + はジアゾニウム塩、X -は酸アニオンを表す)で表される化合物である。これらはAr部分の置換基の位置や種類によって様々な最大吸収波長を持つ。
【0024】本発明で用いられるジアゾ化合物の具体例としては、4−(N−(2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)ブチリル)ピペラジノ)ベンゼンジアゾニウム、4−ジオクチルアミノベンゼンジアゾニウム、4−(N−(2−エチルヘキサノイル)ピペラジノ)ベンゼンジアゾニウム、4−ジヘキシルアミノ−2−ヘキシルオキシベンゼンジアゾニウム、4−N−エチル−N−ヘキサデシルアミノ−2−エトキシベンゼンジアゾニウム、3−クロロ−4−ジオクチルアミノ−2−オクチルオキシベンゼンジアゾニウム、2,5−ジブトキシ−4−モルホリノベンゼンジアゾニウム、2,5−オクトキシ−4−モルホリノベンゼンジアゾニウム、2,5−ジブトキシ−4−(N−(2−エチルヘキサノイル)ピペラジノ)ベンゼンジアゾニウム、2,5−ジエトキシ−4−(N−(2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)ブチリル)ピペラジノ)ベンゼンジアゾニウム、2,5−ジブトキシ−4−トリルチオベンゼンジアゾニウム、3−(2−オクチルオキシエトキシ)−4−モルホリノベンゼンジアゾニウム、等が挙げられる。本発明においては、特にこれらのヘキサフルオロフォスフェート塩、テトラフルオロボレート塩、1,5−ナフタレンスルホネート塩が、水に対する溶解性が小さく、有機溶剤に可溶であるので有用である。
【0025】本発明に用いられるジアゾ化合物と熱時反応して発色するカプラーとしてはレゾルシン、フロログルシン、2,3−ジヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸ナトリウム、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸モルホリノプロピルアミド、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシ−6−スルファニルナフタレン、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アニリド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸エタノールアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸オクチルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸−N−ドデシルオキシプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸テトラデシルアミド;
【0026】アセトアニリド、アセトアセトアニリド、ベンゾイルアセトアニリド、2−クロロ−5−オクチルアセトアセトアニリド、1−(2−テトラデカノキシフェニル)−2−カルボキシメチルシクロヘキサン−3,5−ジオン、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン、1−(2’−オクチルフェニル)−3−メチル−5−ピラゾロン、1−(2’,4’,6’−トリクロロフェニル)−3−ベンズアミド−5−ピラゾロン、1−(2’,4’,6’−トリクロロフェニル)−3−アニリノ−5−ピラゾロン、1−フェニル−3−フェニルアセトアミド−5−ピラゾロン等が挙げられる。これらのカプラーは2種以上併用しても良い。
【0027】ジアゾニウム塩とカプラーの反応を促進する塩基性物質としては、無機あるいは有機の塩基性化合物の他、加熱時に分解してアルカリ物質を放出するような化合物も含まれる。上記塩基性化合物として代表的なものには、有機アンモニウム塩、有機アミン、アミド、尿素及びチオ尿素、それらの誘導体、チアゾール類、ピロール類、ピリミジン類、ピペラジン類、グアニジン類、インドール類、イミダゾール類、イミダゾリン類、トリアゾール類、モルホリン類、ピペリジン類、アミジン類、フォルムアジン類、ピリジン類等の含窒素化合物が挙げられる。
【0028】これらの具体例としてはトリシクロヘキシルアミン、トリベンジルアミン、オクタデシルベンジルアミン、ステアリルアミン;アリル尿素、チオ尿素、メチルチオ尿素、アリルチオ尿素、エチレンチオ尿素;2−ベンジルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール;2−ウンデシルイミダゾリン、2,4,5−トリフリル−2−イミダゾリン、1,2−ジフェニル−4,4−ジメチル−2−イミダゾリン、2−フェニル−2−イミダゾリン;
【0029】1,2,3−トリフェニルグアニジン、1,2−ジシクロヘキシルグアニジン、1,2,3−トリシクロヘキシルグアニジン、グアニジントリクロロ酢酸塩;N,N’−ジベンジルピペラジン;4,4’−ジチオモルホリン、モルホリニウムトリクロロ酢酸塩;2−アミノベンゾチアゾール、2−ベンゾイルヒドラジノベンゾチアゾール等がある。これらは、2種以上併用することもできる。
【0030】本発明においては、発色剤の少なくとも一方は、常温で発色剤と顕色剤の接触を防止するといった感熱記録層の生保存性の観点(カブリ防止)、及び希望の熱エネルギーで発色させるような発色感度の制御の観点等からカプセル化する。本発明で使用することのできるマイクロカプセルの製造方法には界面重合法、内部重合法、外部重合法の何れの方法をも採用することができるが、特に、発色剤等を非水溶剤に溶解又は分散せしめてなる芯物質を、保護コロイドとして水溶性高分子を溶解した水溶液中で乳化した後、その油滴の周囲に高分子物質の壁を形成させる界面重合法を採用することが好ましい。
【0031】高分子物質を形成するリアクタントは油滴の内部及び/又は油滴の外部に添加される。高分子物質の具体例としては、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、スチレンメタクリレート共重合体、スチレン−アクリレート共重合体等が挙げられる。好ましい高分子物質はポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートであり、特に好ましくはポリウレタン及びポリウレアである。高分子物質は2種以上併用することもできる。
【0032】例えばポリウレアをカプセル壁材として用いる場合には、ジイソシアナート、トリイソシアナート、テトライソシアナート、ポリイソシアナートプレポリマー等のポリイソシアナートと、ジアミン、トリアミン、テトラアミン等のポリアミン、アミノ基を2個以上含むプレポリマー、ピペラジン若しくはその誘導体又はポリオール等とを、水系溶媒中で界面重合法によって反応させることにより容易にマイクロカプセル壁を形成させることができる。
【0033】又、例えばポリウレアとポリアミドからなる複合壁若しくはポリウレタンとポリアミドからなる複合壁は、例えばポリイソシアナートと酸クロライド若しくはポリアミンとポリオールを用い、反応液となる乳化媒体のpHを調整した後加温することにより調製することができる。これらのポリウレアとポリアミドとからなる複合壁の製造方法の詳細については、特開昭58─66948号公報に記載されている。
【0034】更に、加熱時にマイクロカプセル壁を膨潤させるために固体増感剤を添加することもできる。固体増感剤はマイクロカプセル壁として用いるポリマーの可塑剤と言われるものの中から、融点が50℃以上、好ましくは120℃以下で常温では固体であるものを選択して用いることができる。例えば、壁材がポリウレア、ポリウレタンから成る場合には、ヒドロキシ化合物、カルバミン酸エステル化合物、芳香族アルコキシ化合物、有機スルホンアミド化合物、脂肪族アミド化合物、アリールアミド化合物等が好適に用いられる。
【0035】前記保護コロイドとして用いられる水溶性高分子は天然又は合成の公知の高分子の中から適宜選択される。これらは両性高分子であっても良い。両性高分子の具体例としてはゼラチンが挙げられる。又合成高分子としては、例えばポリビニルアルコール、変性ポリビニールアルコール、メチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、エチレン/マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0036】これらの水溶性高分子の中でも、多色感熱記録材料の製造適性等の向上の観点から、両性高分子を使用することが好ましく、特に多層重層に適したゼラチン又はその誘導体を使用することが好ましい。本発明で使用することのできるゼラチンは特に限定されるものではなく、アルカリ処理ゼラチン或いは酸処理ゼラチン等、又ゼラチン誘導体としては、ゼラチンの官能基の一部を変性した変性ゼラチン(例えば、フタル化ゼラチン等)等を使用することができる。本発明においては、サーマルヘッドの腐蝕を防止する観点から、特に、後述するイオン含有量の少ないゼラチン及びその誘導体を使用することが好ましい。
【0037】本発明においては、記録材料の地肌の着色及びサーマルヘッドの金属腐食を防止するために、主として保護コロイドとして使用した水溶性高分子に由来する1価の金属イオンやハロゲンイオンを除去すると共に、マイクロカプセルに内包されなかったジアゾ化合物を効率良く除去して、地肌汚れの発生を防止するという観点から、上記のようにして得られたマイクロカプセルを含有する溶液を、陽イオン交換樹脂及び陽イオン交換膜のうち少なくとも一方と、陰イオン交換樹脂及び陰イオン交換膜の少なくとも一方を用いてイオン交換処理することが必要である。
【0038】陽イオン交換樹脂は、ポリスチレン等の母体合成樹脂の側鎖に、リン酸基、カルボキシル基、スルホン基等の酸性基が結合してなるものであり、陰イオン交換樹脂は、アミノ基、アンモニウム基或いはイミノ基等の塩基性基が結合してなるものである。イオン交換樹脂の具体例としては、アンバーライトIR−120、アンバーライトIR−120B、アンバーライトIR−118、アンバーライトIR−121、アンバーライトIR−122、アンバーライトIR−124、アンバーライト200C、アンバーリストXN−1004、アンバーリストXN−1005、アンバーリストA−26、アンバーリストA−27、アンーバーリストA−21、アンバーライトLA−1(以上オルガノ株式会社製のイオン交換樹脂の商品名)等が挙げられる。
【0039】陽イオン交換膜は、陽イオンを選択的に透過させる膜であり、母体である膜の側鎖にリン酸基、カルボキシル基、スルホン基等の酸性基が結合してなるものである。陰イオン交換膜は、陰イオンを選択的に透過させる膜であり、アミノ基、アンモニウム基或いはイミノ基等の塩基性基が膜に結合してなるものである。
【0040】イオン交換膜の具体例としては、アシプレックスK−101(旭化成工業株式会社製のイオン交換膜の商品名)、セミレオンCMV、セミレオンAMV(以上旭硝子株式会社製のイオン交換膜の商品名)、ネオセプタCL−25T、ネオセプタAV−4T(以上徳山曹達株式会社製のイオン交換膜の商品名)、エイエムエフ イオン(AMF ion)C−60、エイエムエフ イオン(AMF ion)A−60(エイエムエフ(AMF)社製のイオン交換膜の商品名)等が挙げられる。
【0041】これらのイオン交換樹脂や膜の種類は、マイクロカプセルを含有する溶液中に含有される物質に即して、適宜選択される。本発明において、特に、両性高分子(例えばゼラチンなど)を保護コロイドとして使用した場合には、イオン交換処理中に前記保護コロイドが凝集・沈澱してイオン交換を妨げるので、これを防止する観点から、カルボキシル基を有する弱酸性イオン交換樹脂又は膜、及び、第1アミン基、第2アミン基或いは第3アミン基を有する弱塩基性イオン交換樹脂又は膜によってイオン交換処理することが好ましい。
【0042】本発明におけるイオン交換処理方法は特に限定されるものではなく、公知のバッチ処理方法の他カラム処理方法等を使用することができる。この場合、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を混ぜ合わせた混床方式を採用することも別々に配置した複床方式を採用することも、或いは、イオン交換樹脂とイオン交換膜との組合わせ若しくは陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の組合わせを採用することもできる。
【0043】本発明においては、マイクロカプセルに内包されなかった発色成分を固体分散させても良いが、実質的に透明な感熱発色層を設けて多色画像の画像品質を向上させる観点から、水に難溶性又は不溶性の有機溶剤に溶解せしめた後、これを水溶性高分子を保護コロイドとして含有すると共に必要に応じて更に界面活性剤を含有する水相と混合し、乳化分散しても良い。乳化分散を容易にする観点からは、界面活性剤を用いることが好ましい。
【0044】この場合に使用される有機溶剤は、例えば、特開平2−141279号公報に記載された高沸点オイルの中から適宜選択することができる。これらの中でもエステル類を使用することが、乳化分散物の乳化安定性の観点から好ましく、中でも、燐酸トリクレジルを単独又は混合して使用した場合には顕色剤の乳化分散安定性が特に良好であり好ましい。上記のオイル同士、又は他のオイルとの併用も可能である。
【0045】本発明においては、上記の有機溶剤に、更に低沸点の溶解助剤として補助溶剤を加えることもできる。このような補助溶剤として、例えば酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル及びメチレンクロライド等を特に好ましいものとして挙げることができる。場合により、高沸点オイルを含まず、低沸点補助溶剤のみを用いることもできる。
【0046】これ等の成分を含有する油相と混合する水相に、保護コロイドとして含有せしめる水溶性高分子は、公知のアニオン性高分子、ノニオン性高分子、両性高分子の中から適宜選択することができる。好ましい高分子としては、例えばポリビニルアルコール、ゼラチン、セルロース誘導体等を挙げることができるが、カプセル化の場合と同様に、多色感熱記録材料の製造適性向上の観点からゼラチンが好ましく、特に、サーマルヘッドの腐蝕を防止する観点から、後述するイオン含有量の少ないゼラチンを使用することが好ましい。
【0047】又水相に含有せしめる界面活性剤は、アニオン性又はノニオン性の界面活性剤の中から、上記保護コロイドと作用して沈澱や凝集を起こさないものを適宜選択して使用することができる。好ましい界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、アルキル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム塩、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)等を挙げることができる。
【0048】発色成分の乳化分散は、上記成分を含有した油相と保護コロイド及び界面活性剤等を含有する水相を、高速撹拌、超音波分散等、通常の微粒子乳化に用いられる手段を使用して混合分散せしめることにより、容易に行うことができる。又、油相の水相に対する比(油相重量/水相重量)は、0.02〜0.6が好ましく、特に0.1〜0.4であることが好ましい。0.02以下では水相が多すぎて希薄となり十分な発色性が得られず、0.6以上では逆に液の粘度が高くなり、取り扱いの不便さや塗液安定性の低下をもたらす。
【0049】本発明においては、主として水溶性高分子中に含まれる1価の金属イオンやハロゲンイオンを除去し、サーマルヘッドの金属腐食を防止する観点から、上記乳化分散物を、前記マイクロカプセルを含有する溶液をイオン交換処理したと同様の方法で、イオン交換処理することが必要である。但し、本発明は、前記マイクロカプセルを含有する溶液と上記乳化分散物のうちの何れか一方のみを前述した方法によりイオン交換処理する場合も包含する。
【0050】本発明においては、発色助剤を感熱記録層中に添加することもできる。本発明で用いることのできる発色助剤とは、加熱記録時の発色濃度を高くする、もしくは最低発色温度を低くする物質であり、発色成分の融解点を下げたりカプセル壁の軟化点を低下せしめる作用により、ジアゾ化合物、塩基性物質、カップリング成分等が反応し易い状況を作るためのものである。
【0051】発色助剤としては、フェノール化合物、アルコール性化合物、アミド化合物、スルホンアミド化合物等があり、具体例としては、p−tert−オクチルフェノール、p−ベンジルオキシフェノール、p−オキシ安息香酸フェニル、カルバニル酸ベンジル、カルバニル酸フェネチル、ハイドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、キシリレンジオール、N−ヒドロキシエチル−メタンスルホン酸アミド、N−フェニル−メタンスルホン酸アミド等の化合物を挙げることができる。これらは、芯物質中に含有させてもよいし、乳化分散物としてマイクロカプセル外に添加してもよい。
【0052】本発明においては、感熱記録層に、発色素材等の各種の素材を支持体上又は、既に塗布された感熱記録層や中間層の上に固着させるためにバインダーを使用する。このバインダーは感熱記録材料に通常使用される公知のバインダーの中から適宜選択されるが、特に多色感熱記録材料を製造する場合には、多層重層塗布に好適なゼラチンを主成分として用いて感熱記録材料を製造することが好ましい。この場合、サーマルヘッドの金属腐食による破壊を防止する観点から、特にNa+ 、K+ 及びCl- の各イオンが、各々Na+ <10ppm、K+ <10ppm並びにCl- <30ppmであるゼラチン及び/又はゼラチン誘導体を使用することが好ましい。
【0053】上記ゼラチンは、特に限定されるものではなく、アルカリ処理ゼラチン或いは酸処理ゼラチン等、又ゼラチン誘導体としては、ゼラチンの官能基の一部を変性した変性ゼラチン(例えば、フタル化ゼラチン等)等を挙げることができる。ゼラチン又はゼラチン誘導体中からNa+ 、K+ 及びCl- を取り除くことは、ゼラチン水溶液を公知のアニオン交換樹脂(例えば弱酸性陽イオン交換樹脂)やカチオン交換樹脂(例えば弱塩基性陰イオン交換樹脂)中に通すことにより容易に行うことができる。
【0054】上記バインダーとして、ゼラチンと共に他のバインダーを併用することもできる。この場合、バインダー中のゼラチンの量は50重量%以上であることが好ましく、65重量%以上とすることが特に好ましい。上記他のバインダーとしてはポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アラビヤゴム、ポリビニルピロリドン、カゼイン、スチレン−ブタジエンラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンラテックス、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の各種エマルジョン等をあげることができる。
【0055】バインダーの使用量は、固形分に換算して0.5〜5g/m2 となるようにすることが好ましい。本発明では、以上の素材の他に酸安定剤としてクエン酸、酒石酸、シュウ酸、ホウ酸、リン酸、ピロリン酸等を添加しても良い。
【0056】本発明においては、感熱記録層の上部に保護層を設けることが好ましい。保護層に透明性が要求される場合には少なくともケイ素変性ポリビニルアルコール及びコロイダルシリカからなるものとすることが好ましい。保護層を感熱記録層の最上層に設けた場合には、感熱記録層表面の機械的強度を向上させることができる。
【0057】保護層中には熱記録時のサーマルヘッドとのマッチング性の向上、保護層の耐水性の向上等の目的で、顔料、金属石鹸、ワックス、架橋剤等が添加される。これらの顔料、金属石鹸、ワックス、架橋剤等の詳細については、例えば、特開平2−141279号公報に記載されている。
【0058】又、感熱記録層上に均一に保護層を形成させるために、保護層形成用塗布液には界面活性剤が添加される。この場合の界面活性剤としてはスルホコハク酸系のアルカリ金属塩や弗素含有界面活性剤等があり、具体的にはジ−(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸、ジ−(n−ヘキシル)スルホコハク酸等のナトリウム塩又はアンモニウム塩等が挙げられる。
【0059】又、保護層中には、製造される感熱記録材料の帯電を防止するための界面活性剤、高分子電解質等を添加しても良い。保護層の固形分塗布量は通常0.2〜5g/m2 、好ましくは1g〜3g/m2 となるようにすることが好ましい。保護層に透明性が要求されない場合には、公知の保護層を適宜設ければ良い。
【0060】本発明において、多色感熱記録材料を製造する場合には、各層の熱分画を更に良好なものとするために、各発色層の間に中間層を設けることが好ましい。中間層の素材としては、水溶性高分子若しくは疎水性高分子のエマルジョン又はラテックス等が好ましい。
【0061】水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸共重合体及びそのエステル、ブタジエン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルピロリドン、エチレン−アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、酸化デンプン、燐酸化デンプン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、硫酸化セルロース、ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。
【0062】疎水性高分子のエマルジョン又はラテックスとしては、スチレン−ブタジエン共重合体、カルボキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等が挙げられる。中間層として、ゼラチンを主成分とする層を設けて製造する場合には、前記バインダーとして使用する場合と同様に、イオン交換処理したゼラチンを使用することが好ましい。
【0063】本発明で用いる支持体は不透明であっても透明であっても良い。不透明な支持体としては紙、合成紙、アルミ蒸着ベース、後記する透明な支持体に白色顔料をコートしたもの等を挙げることができる。支持体に用いられる紙としてはアルキルケテンダイマー等の中性サイズ剤によりサイジングされた熱抽出pH6〜9の中性紙(例えば、特開昭55−14281号)を用いると、経時保存性の点で有利である。
【0064】一方、透明な支持体としては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、三酢酸セルロースフィルム等のセルロース誘導体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリアクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられ、これらを単独或いは貼り合わせて用いることができるが、特にポリエステルフィルムに耐熱処理、帯電防止処理を施したものが好ましい。
【0065】透明支持体の厚みとしては20〜200μmのものが用いられ、特に50〜100μmのものが好ましい。本発明において、高分子フィルムの支持体を用いる場合には、支持体と感熱記録層の接着性を高めるためにこれらの間に下塗層を設けることが好ましい。下塗層の素材としては、ゼラチンや合成高分子ラテックス、ニトロセルロース等が用いられる。下塗層の塗布量は0.1g/m2 〜2.0g/m2 の範囲、特に0.2g/m2 〜1.0g/m2 の範囲とすることが好ましい。
【0066】下塗層は、感熱記録層がその上に塗布された時に、感熱記録層中に含まれる水により膨潤する結果、感熱記録層の画像を悪化させる原因となることがあるので、硬膜剤を用いて硬化させることが望ましい。硬膜剤としては、例えば特開平2−141279号公報に記載されているものを挙げることができる。
【0067】これらの硬膜剤の添加量は、下塗素材の重量に対して、0.20重量%から3.0重量%の範囲で、塗布方法や希望の硬化度に合わせて適切な添加量を選ぶことができる。用いる硬化剤によっては、必要ならば、更に苛性ソーダを加えて、液のpHをアルカリ側にする事も、或いはクエン酸等により液のpHを酸性側にする事もできる。
【0068】又、塗布時に発生する泡を消すために、消泡剤を添加する事も、或いは、液のレベリングを良くして塗布筋の発生を防止するために、活性剤を添加する事も可能である。更に、下塗層を塗布する前には、支持体の表面を公知の方法により活性化処理する事が望ましい。活性化処理の方法としては、酸によるエッチング処理、ガスバーナーによる火焔処理、或いはコロナ処理、グロー放電処理等が用いられるが、コストの面或いは簡便さの点から、米国特許第2,715,075号、同第2,846,727号、同第3,549,406号、同第3,590,107号等に記載されたコロナ放電処理が最も好んで用いられる。
【0069】本発明においては、電子供与性染料前駆体或いはジアゾ化合物を内包したマイクロカプセル及び少なくとも顕色剤を固体分散又は乳化分散した分散物、バインダー、その他の添加物を含有した塗布液を作り、上質紙或いは前記フイルム等の支持体の上にバー塗布、ブレード塗布、エアナイフ塗布、グラビア塗布、ロールコーティング塗布、スプレー塗布、ディップ塗布等の塗布法により塗布乾燥して、固形分が2.5〜25g/m2 の感熱記録層を設けることにより感熱記録材料を製造することができる。
【0070】本発明においては、各感熱記録層中の発色成分(電子供与性染料前駆体及び顕色剤の和又はジアゾニウム化合物とカプラーの和)が0.5〜3.0g/m2 の範囲、特に0.8〜2.0g/m2 の範囲となるようにすることが好ましい。必要に応じて、米国特許第2,761,791号、同第3,508,947号、同第2,941,898号、及び同第3,526,528号明細書、原崎勇次著「コーティング工学」253頁(1973年朝倉書店発行)等に記載された方法等により2層以上に分けて、同時に塗布する方法も可能であり、塗布量、塗布速度等に応じて適切な方法を選ぶことができる。
【0071】本発明の製造方法に用いる塗布液に、顔料分散剤、増粘剤、流動変性剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤及び着色剤等を必要に応じて適宜配合することは、特性を損なわない限り何ら差し支えない。本発明においては、サーマルヘッドの金属部分の腐食を防止する観点から、一つの記録面を形成する全塗布層中のNa+ 及びK+ 並びにCl- の全量を100mg/m2 以下とするように感熱記録材料を製造することが特に好ましい。従って、ゼラチン以外にNa+ 、K+ 又はCl- を含む素材又はそれらを放出し易い素材の使用量をできるだけ低減することが好ましい。
【0072】又、塗布液等の調製時に通常使用する水道水等には、Cl- 等が多量に含まれているので、これらのイオンをイオン交換処理によってとり除いたイオン交換水を使用することが好ましい。尚、塗布層中に含まれているこれらのイオンは、感熱記録材料を4時間熱水抽出処理をした後、抽出液をミクロフィルターで濾過し、濾液をイオンクロマトグラフィー又は原子吸光法によって測定することにより定量することができる。
【0073】本発明の方法によって製造された感熱記録材料は、高速記録の要求されるファクシミリや電子計算機のプリンター用多色感熱記録材料として用いることができる。尚、発色剤としてジアゾ化合物を用い、光定着をさせる場合には、特に光分解用の露光ゾーンを持たせる。
【0074】多色感熱記録材料に対する記録ヘッドと露光ゾーンの配列には、大別して2種の方法がある。一つは一度記録した後、光分解用の光照射を行ない、この光照射に前後して、記録材料の送り機構により、一度記録した所にもう一度記録できるように記録材料が記録待期の状態に戻り、次に又、記録し、又光照射を行ない、記録材料がもとに戻る動作をくり返す、いわゆる1ヘッド多スキャン方式である。もう一つは、記録したい色の数だけ記録ヘッドを持っており、その間に光照射ゾーンを有しているいわゆる多ヘッド1スキャン方式であり、必要に応じて両方式を組合わせてもよく、又必要に応じてヘッドにかける熱エネルギーを変化させてもよい。
【0075】光分解用の光源としては、希望する波長の光を発する種々の光源を用いることができ、例えば種々の螢光灯、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、各種圧力の水銀灯、写真用フラッシュ、ストロボ等種々の光源を用いることができる。又、光定着ゾーンをコンパクトにするため、光源部と露光部とを光ファイバーを用いて分離してもよい。 又、場合によっては、一度記録した記録材料を太陽光や螢光灯の光の中に含有される可視光領域の光で定着した後もう一度記録して、多色サンプルを得ることもできる。
【0076】次に、本発明の製造方法によって製造された多色感熱記録材料を使用して容易に良好な多色画像を得るための方法を説明する。本発明の製造方法によって、例えば支持体の一方の面に、支持体側から順次シアン発色層、マゼンタ発色層及びイエロー発色層となるように、各層を重層に設けることによりフルカラーの多色感熱記録材料を製造する。この場合、各層の発色を独立に行い、記録する多色画像を自然色に近づけるために、少なくとも上二層の発色層には、特開昭61─40192号に開示されているようなジアゾ化合物のカップリング発色反応と、光定着反応の系を採用することが好ましい。
【0077】即ち、まず初めに低熱エネルギーの熱記録で一方の面の最上層のイエロー発色層を独立に発色させる。その後、イエローのジアゾ化合物のみを選択的に光分解する特定波長の光源を用いて光定着する。次に相対的に前回より高熱エネルギーで内側にある熱感度の低いマゼンタ発色層を熱記録してマゼンタ発色層を独立に発色させ、次いでマゼンタのジアゾのみを選択的に光分解する特定波長の光源を用いて光定着する。更に、前回より高熱エネルギーでマゼンタ層より内側にあるシアン発色層を熱記録し独立に発色させる。この場合、三層の一番下側にあるシアン発色層は必ずしも光定着を必要としない。
【0078】上記の場合においてはシアン、マゼンタ及びイエローを各々独立に支持体の一方の面に発色させることができるのでシアン、マゼンタ、イエロー、シアン+マゼンタ(ブルー)、マゼンタ+イエロー(レッド)、シアン+イエロー(グリーン)、シアン+マゼンタ+イエロー(ブラック)の計7色が色分離良く実現される。
【0079】一般に多層の多色記録材料の場合には、最内層を除く他の層を透明感熱記録層とすることが、各発色が鮮やかになるので好ましい。本発明においては、支持体として透明な支持体を用い、上記3層の内何れか一層を透明な支持体の裏面に塗布することにより、上記同様の多色感熱記録材料を製造することもできる。この多色感熱記録材料の場合には、画像を見る側と反対側の面の最上層の感熱記録層を透明とする必要はない。
【0080】又、シアン発色層、マゼンタ発色層若しくはイエロー発色層の中から何れか2層を適宜選択して支持体上に順次設け、2色又は3色の多色感熱記録材料を製造することができることは当然である。尚、製造された多色感熱記録材料に印加熱エネルギーを適度に加減して与えることにより各発色単位の発色をコントロールして中間色を適宜再現することができることは、当業者であれば容易に理解することができる。
【0081】
【発明の効果】以上詳述した如く、本発明の感熱記録材料の製造方法によると、水溶性高分子を保護コロイドとして用いると共に、発色剤を内包するマイクロカプセル及び/又は乳化分散した発色剤を、陽イオン交換樹脂又は陽イオン交換膜及び陰イオン交換樹脂又は陰イオン交換膜によってイオン交換処理するので、サーマルヘッドの金属部を腐食することが無い上地肌の着色が少ない感熱記録材料を製造することができる。
【0082】
【実施例】以下、本発明を実施例によって更に詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。尚、添加量を示す「部」は「重量部」を示す。
【0083】実施例1.以下に、イエロー、マゼンタ及びシアンの3色を独立に熱記録することのできるフルカラーの感熱記録材料の製造方法の例を示す。尚、実施例1において使用した水は全て水道水である。
【0084】(1)シアン感熱記録層液の調製(電子供与性染料前駆体を内包するカプセル液の調製)
1.A液3−(o−メチル−p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1’−エチル−2’−メチルインドール−3−イル)フタリド(電子供与性染料前駆体)を酢酸エチル20部に溶解させた後これにアルキルナフタレン(高沸点溶媒)20部を添加し、得られた溶液を加熱して均一に混合した。得られた溶液に、キシリレンジイソシアナート/トリメチロールプロパンの3/1付加物20部を添加して均一に攪拌し、A液を調製した。
【0085】2.B液ゼラチン6重量%水溶液54部中にドデシルスルホン酸ナトリウム2重量%水溶液2部を添加してB液を調製した。B液にA液を加え、ホモジナイザーを用い、乳化分散し、電子供与性染料前駆体の乳化分散液を得た。得られた乳化分散液に水68部を加え、混合して均一にした後、該混合液を攪拌しながら50℃に加熱し、マイクロカプセルの平均粒子径が1.2μmとなるようにカプセル化反応を3時間行わせてカプセル液を得た。
【0086】(カプセル液のイオン交換処理)得られたカプセル液100重量部に対して、弱酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライトIRC−50(水素イオン型):オルガノ株式会社製の商品名)20部及び弱塩基性陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−68(遊離塩基型):オルガノ株式会社製の商品名)20部を添加し、混合してイオン交換処理を1時間行った後、該イオン交換樹脂を濾過によって取り除き、イオン交換処理をしたカプセル液を得た。
【0087】(顕色剤乳化分散液の調製)1,1−(p−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン(顕色剤)5部、トリクレジルホスフェート0.3部及びマレイン酸ジエチル0.1部を酢酸エチル10部中に溶解させた。得られた溶液を、ゼラチン6重量%水溶液50g及び2重量%ドデシルスルホン酸ナトリウム水溶液2gを混合した水溶液に投入し、ホモジナイザーによって10分間乳化して顕色剤乳化分散液を得た。
【0088】(乳化分散液のイオン交換処理)得られた乳化分散液100重量部に対して、弱酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライトIRC−50(水素イオン型):オルガノ株式会社製の商品名)20部及び弱塩基性陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−68(遊離塩基型):オルガノ株式会社製の商品名)20部を添加し、混合してイオン交換処理を1時間行った後、該イオン交換樹脂を濾過によって取り除き、イオン交換処理をした乳化分散液を得た。
【0089】(塗布液の調製)イオン交換処理をした、電子供与性染料前駆体を含有するカプセル液/顕色剤乳化分散液を重量比で1/4となるように混合して塗布液を得た。
【0090】(2)マゼンタ感熱記録層液の調製(ジアゾ化合物を内包するカプセル液の調製)4−N−(2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)ブチリル)ピペラジノベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロフォスフェート(ジアゾ化合物:365nmの波長の光りで分解)2.0部を酢酸エチル20部に溶解した後、更にアルキルナフタレン20部を添加した。得られた溶液を加熱して均一に混合し、次いでキシリレジンイソシアナート/トリメチロールプロパンの3/1付加物(カプセル壁剤)15部を添加した後、均一に混合してジアゾ化合物の溶液を得た。
【0091】得られたジアゾ化合物の溶液を、ゼラチンの6重量%水溶液54部とドデシルスルホン酸ナトリウム水溶液2部を混合した溶液に添加した後、該溶液を、ホモジナイザーを使用して乳化分散した。得られた乳化分散液に水68部を加え、均一に混合して得られた溶液を攪拌しながら40℃に加熱し、カプセルの平均粒子径が1.2μmとなるように3時間カプセル化反応を行わせてジアゾ化合物を内包するカプセル溶液を得た。
【0092】(カプセル溶液のイオン交換処理)得られたカプセル溶液100重量部に対して、弱酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライトIRC−50(水素イオン型):オルガノ株式会社製の商品名)20部及び弱塩基性陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−68(遊離塩基型):オルガノ株式会社製の商品名)20部を添加し、混合してイオン交換処理を1時間行った後、該イオン交換樹脂を濾過によって取り除き、イオン交換処理したカプセル溶液を得た。
【0093】(カプラー乳化分散液の調製)1−(2’−オクチルフェニル)−3−メチル−5−ピラゾロン(カプラー)2部、1,2,3−トリフェニルグアニジン2部、トリクレジルホスフェート0.3部及びマレイン酸ジエチル0.1部を酢酸エチル10部中に溶解した。得られた溶液を、ゼラチンの6重量%水溶液50gとドデシルスルホン酸ナトリウム2重量%2gを混合した水溶液中に投入た後ホモジナイザーを用いて10分間乳化し、カプラー乳化分散液を得た。
【0094】(カプラー乳化分散液のイオン交換処理)得られた乳化分散液100重量部に対して、弱酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライトIRC−50(水素イオン型):オルガノ株式会社製の商品名)20部及び弱塩基性陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−68(遊離塩基型):オルガノ株式会社製の商品名)20部を添加し、混合してイオン交換処理を1時間行った後、該イオン交換樹脂を濾過によって取り除き、イオン交換処理をしたカプラー乳化分散液を得た。
【0095】(塗布液の調製)イオン交換処理をした、ジアゾ化合物を含有するカプセル液/カプラー乳化液を重量比で2/3となるように混合して、塗布液を得た。
【0096】(3)イエロー感熱記録層液の調製(ジアゾ化合物を内包するカプセル液の調製)2,5−ジブトキシ−4−トリルチオベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロフォスフェート(ジアゾ合物:420nmの波長の光りで分解)3.0部を酢酸エチル20部に溶解した後、更に高沸点溶媒としてアルキルナフタレン20部を添加し、得られた溶液を加熱して均一に混合した。
【0097】得られた溶液に、カプセル壁剤としてキシリレンジイソシアナート/トリメチロールプロパンの3/1付加物を15部添加し、均一に混合してジアゾ化合物の溶液を得た。得られたジアゾ化合物の溶液を、ゼラチンの6重量%水溶液54部とドデシルスルホン酸ナトリウム水溶液2部を混合した水溶液に添加した後、ホモジナイザーを使用して乳化分散した。得られた乳化分散液に水68部を加え、均一に混合した溶液を更に攪拌しながら40℃に加熱し、カプセルの平均粒子径が1.3μmとなるように3時間カプセル化反応を行わせてカプセル溶液を得た。
【0098】(カプセル液のイオン交換処理)得られたカプセル液100重量部に対して、弱酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライトIRC−50(水素イオン型):オルガノ株式会社製の商品名)20部及び弱塩基性陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−68(遊離塩基型):オルガノ株式会社製の商品名)20部を添加し、混合してイオン交換処理を1時間行った後、該イオン交換樹脂を濾過によって取り除き、イオン交換処理をしたカプセル液を得た。
【0099】(カプラー乳化分散液の調製)2−クロロ−5−(3−(2,4−ジ−tert−ペンチル)フェノキシプロピルアミノ)アセトアセトアニリド2部、1,2,3−トリフェニルグアニジン1部、トリクレジルホスフェート0.3部及びマレイン酸ジエチル0.1部を酢酸エチル10部中に溶解した。得られた溶液を、ゼラチンの6重量%水溶液50gとドデシルスルホン酸ナトリウム2重量%2gを混合した水溶液中に投入した後ホモジナイザーを使用して10分間乳化し、カプラー乳化分散液を得た。
【0100】(カプラー乳化分散液のイオン交換処理)得られた乳化分散液100重量部に対して、弱酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライトIRC−50(水素イオン型):オルガノ株式会社製の商品名)20部及び弱塩基性陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−68(遊離塩基型):オルガノ株式会社製の商品名)20部を添加し、混合してイオン交換処理を1時間行った後、該イオン交換樹脂を濾過によって取り除き、イオン交換処理をしたカプラー乳化分散液を得た。
【0101】(塗布液の調製)イオン交換処理をした、ジアゾ化合物を含有するカプセル液/カプラー乳化分散液を重量比で2/3となるように混合して、塗布液を得た。
【0102】(4)中間層液の調製イオン交換処理を行ってNa+ 及びK+ が各々10ppm未満、Cl- が30ppm未満となったゼラチンの6重量%水溶液を中間層液とした。
【0103】(5)保護層液の調製イタコン酸変性ポリビニルアルコール(KL−318:クラレ株式会社製の商品名)の6重量%水溶液100gとエポキシ変性ポリアミド(FL−71:東邦化学株式会社製の商品名)の30重量%分散液10gとを混合した液に、ステアリン酸亜鉛40重量%分散液(ハイドリンZ:中京油脂株式会社製の商品名)15gを添加して保護層液を得た。
【0104】(6)感熱記録材料の作製厚み75μmのポリエチレンテレフタレートの片面上に、スライドタイプホッパー式ビード塗布装置を使用して、スライド上で、支持体から順にシアン感熱記録層液、中間層液、マゼンタ感熱記録層液、中間層液、イエロー感熱記録層液及び保護層液となるように多層重層塗布し、乾燥して多色感熱記録材料を得た。
【0105】塗布量は、乾燥後の固形分換算で、支持体側から順次シアン感熱記録層が7.0g/m2 、中間層が3.0g/m2 、マゼンタ感熱記録層が7.5g/m2 、中間層が3.0g/m2 、イエロー感熱記録層が8.0g/m2 及び保護層が1.0g/m2 となるように各塗布液を塗布した。
【0106】(7)塗布層中のNa+ 、K+ 及びCl- の含有量の測定塗布層中におけるこれらのイオンの含有量について、該感熱記録材料のサンプルを4時間熱水抽出処理した後、抽出液をミクロフィルターで濾過し、濾液を原子吸光分析機を使用してNa+ 、K+ 及びCl- の合計量を測定したところ、70mg/m2 であった。
【0107】(8)熱記録サーマルヘッドL−34B型(TDK株式会社製の商品名)を用いて、単位面積当たりの記録エネルギーが34mJ/mm2 となるように印加電力及びパルス幅を調節して、得られた記録材料にイエローの画像を記録した。次いで、発光中心波長420nm及び出力40Wの紫外線ランプ下に10秒間曝してイエロー感熱記録層を光定着した後、サーマルヘッドの記録エネルギーを68mJ/mm2 となるように印加電力及びパルス幅を調節して更にマゼンタの画像を記録した。
【0108】更に、発光中心波長365nm及び出力40Wの紫外線ランプ下に15秒間曝してマゼンタ感熱記録層を光定着した後、サーマルヘッドの記録エネギーが102mJ/mm2 となるように印加電力及びパルス幅を調節してシアン画像を記録した。この結果、イエロー、マゼンタ及びシアンの各発色画像の他に、イエローとマゼンタの記録が重複した画像部分は赤色に、マゼンタとシアンの記録が重複した画像部分は青色に、イエローとシアンの記録が重複した部分は緑色に、及びイエロー、マゼンタ及びシアンの記録が重複した画像部分は黒色に発色した。
【0109】以上のようにして、サーマルヘッド(L−34B)の常用定格で画像(印字)長2,000mまで画像を記録したところ、サーマルヘッドの金属部の腐食は全く起こらなかった。又、得られた記録画像は、白濁が無く光透過性が高い上鮮明で地肌着色が少なく、コントラストが高い、高品位の画像であった。
【0110】実施例2.水道水に代えて、イオン交換処理をした水を使用した他は、実施例1と全く同様にして感熱記録材料を作製し、全く同様にしてサーマルヘッド(L−34B)の常用定格で画像(印字)長2,000mまで記録したところ、サーマルヘッドの金属部の腐食は全く起こらなかった。又、得られた記録画像は白濁が無く光透過性が高い上、鮮明で地肌着色が少なく、コントラストが高い、高品位の画像であった。尚、実施例1と全く同様にして感熱記録材料のイオン含有量を測定したところ80mg/m2 であった。又、得られた記録画像は実施例1の場合と同様に、高品位の画像であった。
【0111】実施例3.乳化剤分散物をイオン交換処理しなかった他は、実施例1と全く同様にして記録材料を作製し、全く同様にしてサーマルヘッド(L−34B)の常用定格で、画像(印字)長2,000mまで記録したところ、サーマルヘッドの金属部の腐食は全く起こらなかった。又、得られた記録画像は白濁が無く光透過性が高い上、鮮明で地肌着色が少なく、コントラストが高い、高品位の画像であった。尚、実施例1と全く同様にして感熱記録材料のイオン含有量を測定したところ90mg/m2 であった。又、得られた記録画像は実施例1の場合と同様に高品位の画像であった。
【0112】比較例1.マイクロカプセル液及び乳化分散物をイオン交換処理しなかった他は、実施例1と全く同様にして記録材料を作製し、全く同様にしてサーマルヘッド(L−34B)の常用定格で、画像(印字)長2,000mのところまで記録したところ、900mで、サーマルヘッドの金属部の腐食が原因で起こるヘッド切れが生じた。尚、実施例1と全く同様にして感熱記録材料のイオン含有量を測定したところ150mg/m2 であった。又、得られた記録画像は、地肌が着色しており、コントラストが低く品位のない画像であった。
【0113】比較例2.実施例1で行ったカプセル液のイオン交換処理の代わりに、カプセル液100重量部に対して強酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライトIR−118(H)水素イオン型;オルガノ株式会社製の商品名)20部及び弱塩基性陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−68(遊離塩基型):オルガノ株式会社製の商品名)20部を添加し、混合してイオン交換処理を行ったところ、カプセル液に凝集が生じた。
【0114】比較例3.実施例1で行ったカプラー乳化分散液のイオン交換処理の代わりに、乳化分散液100重量部に対して比較例2と同様のイオン交換処理を行ったところ、乳化液に凝集が生じた。
【0115】比較例4.実施例1で行ったカプセル液のイオン交換処理の代わりに、カプセル液100重量部に対して弱酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライトIRC−50(水素イオン型):オルガノ株式会社製の商品名)20部及び強塩基性陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−400(Cl- 型のものをOH- 型に交換したもの):オルガノ株式会社製商品名)20部を添加し、混合してイオン交換処理を行ったところ、カプセル液に凝集が生じた。
【0116】比較例5.実施例1で行ったカプラー乳化分散液のイオン交換処理の代わりに、乳化分散液100重量部に対して比較例4と同様なイオン交換処理を行ったところ、乳化液に凝集が生じた。
【0117】実施例4.実施例1において使用した弱酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライトIRC−50(水素イオン型)、オルガノ株式会社製の商品名)20部の代わりに弱酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライトIRC−84(水素イオン型)、オルガノ株式会社製の商品名)20部を用いた他は、実施例1と全く同様にして感熱記録材料を作製し、画像を記録して評価を行ったところ、実施例1と全く同様の結果を得た。
【0118】実施例5.実施例1で使用した弱塩基性陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−68(遊離塩基型):オルガノ株式会社製の商品名)20部の代わりに弱塩基性陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−45(水素イオン型):オルガノ株式会社製の商品名)20部を用いた他は、実施例1と全く同様にして感熱記録材料を作製して画像を記録し、評価を行ったところ、実施例1と全く同様の結果を得た。以上の結果をまとめて表1に示した。
【0119】
【表1】


以上の結果は、本発明の製造方法によって作製した感熱記録材料が、サーマルヘッドを腐食することがない上、地肌の着色も少ない感熱記録材料であることを実証するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】実質的に無色の発色成分Aと、該発色成分Aと加熱時に反応して発色する実質的に無色の発色成分Bのうちの一方をマイクロカプセルに内包するマイクロカプセルを含有するマイクロカプセル液、及び、少なくともマイクロカプセル化されない前記発色成分を固体分散物として、若しくは水に難溶性又は不溶性の有機溶媒に溶解した後、得られた溶液を、水溶性高分子及び界面活性剤を含有する水溶液中に混合攪拌して乳化分散せしめた乳化分散物として含有する分散物とを混合してなる塗布液を支持体上に直接又は他の塗膜を介して塗布する感熱記録材料の製造方法であって、前記マイクロカプセルのマイクロカプセル化終了時及び/又は、前記乳化分散物の乳化分散終了時に、陽イオン交換樹脂と陽イオン交換膜の少なくとも一方、及び陰イオン交換樹脂と陰イオン交換膜の少なくとも一方を用いてイオン交換処理することを特徴とする、金属イオン及びハロゲンイオンの含有量が少ない感熱記録材料の製造方法。
【請求項2】マイクロカプセル及び/又は乳化分散物を調製する際に保護コロイドとして使用する水溶性高分子が両性高分子である請求項1に記載の金属イオン及びハロゲンイオンの含有量が少ない感熱記録材料の製造方法。
【請求項3】イオン交換処理の手段として、弱酸性イオン交換樹脂と弱酸性イオン交換膜のうちの少なくとも一方、及び弱塩基性イオン交換樹脂と弱塩基性イオン交換膜のうちの少なくとも一方を使用する請求項2に記載の金属イオン及びハロゲンイオンの含有量が少ない感熱記録材料の製造方法。

【公開番号】特開平5−185736
【公開日】平成5年(1993)7月27日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−24808
【出願日】平成4年(1992)1月14日
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)