説明

金属ナノ構造体アレーの製造方法および複合材料の製造方法

【課題】従来、製造が困難であった材質の金属ナノ構造体アレーを、煩雑な工程を経ることなく大面積で製造する方法を提供する。
【解決手段】微細開口配列を有するモールドを金属表面に型押しした後に、前記モールドを前記金属表面から除去することにより、前記金属表面に金属ナノ構造体を形成することを特徴とする金属ナノ構造体アレーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ナノワイヤーや金属ナノ突起などの金属ナノ構造体が金属表面に配列するように形成された金属ナノ構造体アレーの製造方法、およびAlとポーラスアルミナとで構成される複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サブミクロンからナノメートルスケールの微細な直径と、サブミリからマイクロメートルスケールの長さを有するナノワイヤーは、触媒、センサー、電子・光学デバイス等への適用が期待されている。代表的な金属ナノワイヤーアレーの製造方法には、めっき法、CVD(Chemical vapor deposition)法、レーザーアブレーション法などが挙げられる。めっき技術を用いた場合、陽極酸化ポーラスアルミナの有する細孔の規則配列をテンプレートとして細孔中に金属を充填し、その後、適切な方法でアルミナを除去すると、金属ナノワイヤーが得られる。またCVD技術を用いて、シリコン基板等の表面の金ナノ微粒子等を核として金属ナノワイヤーおよび金属酸化物ナノワイヤーを形成可能である。レーザーアブレーション法では、レーザーをバルク材等に照射することで、金属ナノワイヤーおよび金属酸化物ナノワイヤーが形成可能である。
【0003】
また、特許文献1には、陽極酸化表面層等によって形成された型押し面を有し、金、銀、プラチナ、鉛、イリジウム、亜鉛等の金属の型押しに適用される型押し具が記載されているが、金属ナノワイヤーアレー等の金属ナノ構造体の具体的な形成方法について詳細な記載はない。
【特許文献1】特表2003−531962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、金属ナノ構造体アレーを形成可能な材料の種類は、それぞれの製造方法に応じて限定されるため、材料によっては金属ナノ構造体アレーの製造が困難であるといった問題点があった。このため、Alナノワイヤーアレー等の金属ナノ構造体アレーを簡便に得る方法は確立されていない。
【0005】
このような現状に鑑み、本発明の課題は、従来、製造が困難であった金属ナノ構造体アレーを、煩雑な工程を経ることなく大面積で製造する方法を提供することにある。
【0006】
また、本発明の他の課題は、上記金属ナノワイヤーを用いて製造される複合材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る金属ナノ構造体アレーの製造方法は、微細開口配列を有するモールドを金属表面に型押しした後に、前記モールドを前記金属表面から除去することにより、前記金属表面に金属ナノ構造体を形成することを特徴とする方法からなる。例えば、サブマイクロからナノメートルスケールの直径を有する細孔が配列された陽極酸化ポーラスアルミナメンブレンを、任意の金属表面に設置しプレスすることで、細孔中で金属をナノワイヤー状に成型し、しかる後にメンブレンを除去することで、煩雑な工程を経ることなく簡便に、所望の金属からなるナノ構造体アレーを製造することが可能となる。上記ナノ構造体アレーは、直径1μm以下のナノ構造体が規則配列されたアレー構造を形成しており、ナノ構造体は、直径15〜500nmのワイヤー状または突起状の構造を形成していることが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る金属ナノ構造体アレーの製造方法において、前記金属ナノ構造体が金属ナノワイヤーまたは金属ナノ突起からなり、前記モールドを、前記金属ナノ構造体を形成するナノ構造体素材の融点未満の温度条件下で、かつ、0.2t/cm〜190t/cmの圧力条件下で、前記金属表面に型押しすることにより、前記金属ナノ構造体のアスペクト比を制御することが可能となる。このように、ナノ構造体素材の種類に応じてモールドを金属表面に型押しする際の圧力等を変化させることによって、ナノ構造体素材の融点未満の温度において、金属ナノ構造体の長さを直径で割ったアスペクト比(アスペクト比=長さ[nm]/直径[nm])を制御することが可能となる。ちなみに、代表的なナノ構造体素材について融点の数値例を挙げると、Alでは660℃、Biでは271℃、Znでは420℃であるので、ナノ構造体素材の種類に応じて、これらの温度以下で加圧することにより、金属ナノ構造体のアスペクト比を制御することができる。さらに、本発明の製造方法を利用して製造される機能性材料の用途に応じて、金属ナノ構造体を所望の形状に設計することが可能となる。また、型押しの際のプレス圧力を適切に制御することで、金属ナノ構造体アレーをインプリントプロセスにより形成することが可能となる。
【0009】
本発明の金属ナノ構造体アレーの製造方法において、前記微細開口配列を有するモールドは、モールド素材を陽極酸化処理することによって形成されることが好ましい。例えば、サブマイクロからナノメートルスケールの直径を有する細孔が配列された陽極酸化ポーラスアルミナメンブレンを、任意の金属表面に設置しプレスすることで、細孔中で金属をナノ構造体状に成型し、しかる後にメンブレンを除去することで、煩雑な工程を経ることなく簡便に、所望の金属からなるナノ構造体アレーを高精度で製造することが可能となる。
【0010】
また、前記微細開口配列を有するモールドは、陽極酸化処理されたポーラスアルミナメンブレンのレプリカとして形成することもできる。
【0011】
上記のような微細開口配列形成方法は、非特許文献としてのScience, 268(1995) 1466-1468や、特許文献としての特開2006−68827に詳しく記載されている。例えば、上記非特許文献に記載される微細開口配列形成方法を利用した微細開口配列を有するモールド形成方法の一例として、めっき処理を用いて、陽極酸化されたポーラスアルミナメンブレンのレプリカとしてのモールドを形成することができる。例えば、陽極酸化処理されたポーラスアルミナメンブレンの片面に金属薄膜をコートして、細孔中に金属、金属酸化物、ポリマーなどのピラーアレー構造体素材(第1の物質)を充填した後、ポーラスアルミナメンブレンを溶解除去することでピラーアレー構造体を形成させる。その後、該ピラーアレー構造体の空隙を埋めるように、上記金属薄膜を導通層とした電気めっきを行うことによって、金属製のモールドを作製することができる。
【0012】
また、上記特許文献に記載される微細開口配列形成方法を利用した微細開口配列を有するモールド形成方法の他の例として、陽極酸化ポーラスアルミナメンブレンの細孔内およびアルミナ基材の周りを金属、金属酸化物、ポリマーなどのピラーアレー構造体素材(第1の物質)で充填および被覆した後、アルミナ部分のみ選択的に溶解除去することにより形成されたピラーアレー構造体をモールド形成用の鋳型として用い、微細開口配列を有するモールドを形成することができる。上記ピラーアレー構造体は、各ピラーが上層と下層の2層で支持された構造体であることから、アルミナ部分を溶解除去した後でも各ピラーの直立構造を保持することが可能である。そのため、膜面に対して直交した細孔が規則配列した微細開口配列を有するモールドを作製する際の鋳型として適している。上記ピラーアレー構造体の空隙にモールド素材(第2の物質)の充填を行い、その後、ピラーアレー構造体素材(第1の物質)で構成されているピラー構造体部分を除去することで、細孔配列規則性に優れた微細開口配列を有するモールドが作製できる。モールド素材(第2の物質)としては、例えば、金属、金属塩、無機酸化物、モノマー、ポリマーのいずれかを用いることができ、とくに、フッ素系樹脂(例えば、”テフロン”(登録商標))を用いることができる。
【0013】
本発明の金属ナノ構造体アレーの製造方法において、前記金属表面が少なくともAl、Au、Pt、Pd、Ag、Cu、Zn、SnもしくはBiのいずれか、またはそれらの合金からなる場合には、前記モールドをウエットエッチングにより前記金属表面から溶解除去することが可能である。このように、モールドを溶解除去することにより、アスペクト比100またはそれ以上の非常に高いアスペクト比を有する金属ナノ構造体を簡便に形成することが可能となる。とくに、前記金属ナノ構造体がアスペクト比として3.5以上、あるいは長さとして1μm以上の金属ナノワイヤーからなる場合には、このようにモールドを溶解除去する方法を用いることが好ましい。金属をナノワイヤー状に成型するためのポーラスアルミナメンブレンとしては、形成目標とするナノワイヤーの長さよりも膜厚が厚いポーラスアルミナメンブレンを使用できる。また、硬度の低い金属表面を用いれば、金属ナノワイヤー部分長さの長い金属ナノワイヤーアレーを形成し易くなる。
【0014】
また、本発明の金属ナノ構造体アレーの製造方法において、前記金属表面が、Al、Au、Ti、Pt、Pd、Ag、Cu、Zn、Sn、Bi、Li、NaもしくはTaのいずれか、またはそれらの合金からなる場合には、前記モールドを物理的に前記金属表面から剥離除去することが可能である。このように、モールドを物理的、機械的に金属表面から剥離除去することにより、酸やアルカリ等に溶解しやすい金属表面にも金属ナノ構造体を形成することが可能となる。とくに、前記金属ナノ構造体が、アスペクト比として1.0以下、あるいは長さとして300nm以下の金属ナノ突起からなる場合には、このようにモールドを物理的に剥離する方法を用いることが好ましい。
【0015】
本発明の金属ナノ構造体アレーの製造方法において、前記モールドには予め離型処理が施されていることが好ましい。とくに、モールドが物理的に剥離除去される場合には、離型処理によってモールドが剥離除去されやすくなるので、モールドを複数回使用することが容易となる。
【0016】
また、本発明の他の課題を解決するために、本発明に係る複合材料の製造方法は、請求項1〜8に記載の方法によって形成された金属ナノ構造体としてのAlナノワイヤーに陽極酸化処理を施すことにより、Alとポーラスアルミナとで構成される複合材料を製造することを特徴とする方法からなる。本発明に係る金属ナノ構造体アレーの製造方法を用いて得られたAlナノワイヤーの表面にポーラスアルミナ層を形成させるためには、例えば、電解液として酸性溶液(例えば硫酸溶液)を用いつつ、直流電圧(例えば10〜15V)を印加することにより陽極酸化処理することができるが、このような処理条件に限定されるものではない。
【0017】
さらに、本発明に係る複合材料の製造方法において、陽極酸化処理の後にめっき処理を施すことが好ましい。例えば、陽極酸化処理後に塩化金酸水溶液中で交流電圧(例えば8〜12V)を印加することにより、ポーラスアルミナの細孔中に金ナノ微粒子を析出させることが可能となるが、このような処理条件に限定されるものではない。得られたAl−ポーラスアルミナ−金ナノ微粒子複合材料には、金ナノ微粒子の表面近傍に形成される局在表面プラズモン共鳴に基づく光電場増強場を利用した、ラマン信号等の光応答信号の増強効果が期待される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る金属ナノ構造体アレーの製造方法によれば、サブマイクロからナノメートルスケールの直径を有する細孔が配列された陽極酸化ポーラスアルミナ膜等を、任意の金属表面に設置しプレスすることで、細孔中に充填された金属をナノワイヤーなどの金属ナノ構造体に形成することが可能となり、しかる後に陽極酸化ポーラスアルミナ膜を金属表面から除去することにより、細孔の形状を反映した形状を有する金属ナノ構造体アレーが得られる。プレス直後には、ナノ構造体はポーラスアルミナメンブレン等の細孔中に形成されているので、例えばアルミナ膜を溶解除去もしくは剥離除去するだけで、目標とする金属ナノ構造体アレーを得ることができる。とくに、めっき技術では形成困難であったAlナノワイヤーアレーやLiナノ突起アレー等が簡便に形成可能となる。したがって、煩雑な工程を経ることなく、効率よく所望の金属で構成されたナノ構造体アレーを容易に大面積で作製可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の望ましい実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、金属ナノワイヤーアレー形成の概略プロセス(A)〜(D)を示す説明図である。モールド形成用のモールド素材としてのアルミニウム1(Al)の表面を陽極酸化することにより、Al板表面に陽極酸化ポーラスアルミナ2が形成され(図1(A))、アルミニウム1部分が除去されることにより、陽極酸化ポーラスアルミナメンブレン3が得られる(図1(B))。このようにして得られたメンブレン3をモールドとして用いる。メンブレン3を、所定の温度および圧力条件下で金属ナノワイヤー4形成用の金属5表面に型押しすることにより、メンブレン3のナノ細孔をほぼ埋める程度に金属5が導入され(図1(C))、ウエットエッチング等によってメンブレン3を溶解除去することにより、ナノワイヤー4が金属5の表面に形成された金属ナノワイヤーアレーが得られる(図1(D))。
【0020】
図2は、図1のプロセスにより形成されたAlナノワイヤーアレーのSEM(走査型電子顕微鏡)による観察結果を示す図である。図2に示されるように、本発明に係る金属ナノ構造体アレーの製造方法を用いることにより、アスペクト比100またはそれ以上の非常に高いアスペクト比を有するAlナノワイヤー6を、Al表面に形成することが可能である。
【0021】
図3は、金属ナノ突起アレー形成の概略プロセス(A)〜(D)を示す説明図である。図3(A)〜(B)は図1の(A)〜(B)と同様であるが、図3(C)において、メンブレン3のナノ細孔の比較的浅い部分にのみ金属5が導入される点が図1(C)の場合と異なっている。その後、メンブレン3を物理的に剥離除去または化学的に溶解除去することにより、金属ナノ突起7が金属5の表面に形成された金属ナノ突起アレーが得られる(図3(D))。
【0022】
図4は、図3のプロセスにより形成されたAlナノ突起アレーのSEMによる観察結果を示す図である。図4によれば、図2に示されるナノワイヤー6よりも低アスペクト比の、アスペクト比0.5〜5程度のAlナノ突起8が、Al表面に形成されている。
【0023】
図5は、図2のナノワイヤー6の表面に陽極酸化処理を施すことにより得られた複合材料のSEMによる観察結果を示す図である。このようにして製造された複合材料には、母体としてのAlの表面に陽極酸化ポーラスアルミナ9の層が形成されているので、ポーラスアルミナ9のナノ細孔を利用した機能性材料としての用途が期待される。
【0024】
図6は、図5の複合材料に金(Au)めっき処理をすることにより、図5のポーラスアルミナ9のナノ細孔中に金ナノ微粒子10が導入された複合材料のSEMによる観察結果を示す図である。
【0025】
図7は、図6の複合材料を用いてピリジンの表面増強ラマン信号を測定した結果を示す波数特性図(スペクトル図)である。図7によれば、図6のナノ微粒子10に吸着したピリジン由来のラマン信号が、波数1014cm−1および1040cm−1付近に検出されていることがわかる。このように、本発明に係る方法を用いて製造された複合材料に、光応答信号の増強作用を付加することにより、触媒、センサー、電子・光学デバイス等への幅広い適用が期待される。
【0026】
〔実施例〕
実施例1[Alナノワイヤーの形成]
純度99.99%のAl板を、過塩素酸/エタノール浴を用い電解研磨を施した後、表面にテクスチャリング処理を施し、0.1Mリン酸溶液を電解液として、浴温−3℃、強攪拌条件下、200Vの定電圧条件下にて陽極酸化を16時間行うことで、Al板表面に高規則細孔配列を有するポーラスアルミナを形成した。ポーラスアルミナのナノ細孔を、10wt%リン酸水溶液を用いたウエットエッチング処理により拡大した。陽極酸化されていないAl部分をヨウドメタノールにより溶解除去後、バリア層をウエットエッチングもしくはドライエッチングにより除去することで、ポーラスアルミナのスルーホールメンブレンを得た。得られたスルーホールメンブレンをAl表面に密着させ、300℃の加熱条件下にて約190t/cmで5分間加圧することで、メンブレンのナノ細孔中にAlを導入、充填した。その後、メンブレンをクロムリン酸水溶液で溶解除去して、直径約330nm、長さ約80μmのAlナノワイヤーを得た。
【0027】
実施例2 [ナノインプリントプロセスによるAlナノワイヤーアレーの形成]
実施例1と同様の方法で得られた孔径280nmの細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナのスルーホールメンブレンをAl表面に設置し室温(20℃)にて約2.2t/cmで加圧することで、メンブレンのナノ細孔中にAlを導入した。その後、メンブレンを機械的に剥離することで、ワイヤー長さの揃ったAlナノワイヤーアレー(ワイヤー長さ=約1μm:アスペクト比3.6)を得た。剥離したメンブレンを異なるAl表面へプレス後に剥離することで、Alナノワイヤーのアレー(ワイヤー長さ=約1μm:アスペクト比3.6)を得た。
【0028】
実施例3 [Alナノワイヤーの形状制御]
細孔周期500nm、細孔径330nmのポーラスアルミナをプレスすることで、直径が330nmのAlワイヤーを作製した。細孔周期100nm、細孔径60nmのポーラスアルミナをプレスすることで直径が50nm〜60nmのAlワイヤーを作製した。ポーラスアルミナの形状を制御することで、ナノワイヤーの直径を50nm〜330nmに制御可能であることを確認した。
【0029】
実施例4 [Auナノワイヤーの形状制御]
細孔周期500nm、細孔径300nmのポーラスアルミナをプレスすることで、直径が300nmのAuワイヤーを作製した。細孔周期100nm、細孔径40nmのポーラスアルミナをプレスすることで直径が40nmのAuワイヤーを作製した。細孔周期63nm、細孔径25nmのポーラスアルミナをプレスすることで直径が25nmのAuワイヤーを作製した。細孔周期30nm、細孔径15nmのポーラスアルミナをプレスすることで直径が15nmのAuワイヤーを作製した。ポーラスアルミナの形状を制御することで、ナノワイヤーの直径を15nm〜300nmに制御可能であることを確認した。
【0030】
実施例5 [Biナノワイヤーの形状制御]
細孔周期500nm、細孔径300nmのポーラスアルミナをプレスすることで、直径が300nmのBiワイヤーを作製した。細孔周期30nm、細孔径15nmのポーラスアルミナをプレスすることで直径が15nmのBiワイヤーを作製した。ポーラスアルミナの形状を制御することで、ナノワイヤーの直径を15nm〜300nmに制御可能であることを確認した。
【0031】
実施例6 [Auナノワイヤーアレーの形成]
実施例1と同様の方法で得られた孔径330nmの細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナのスルーホールメンブレンをAl表面に密着させ、300℃の加熱下にて約190t/cmで加圧することで、メンブレンのナノ細孔中にAuを導入した。その後、メンブレンをクロムリン酸水溶液で溶解除去して、直径約330nm、長さ10μm(アスペクト比30)のAuナノワイヤーのアレーを得た。
【0032】
実施例7 [Ptナノワイヤーアレーの形成]
実施例1と同様の方法で得られた孔径330nmの細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナのスルーホールメンブレンをPt表面に密着させ300℃の加熱下にて約190t/cmで加圧することで、メンブレンのナノ細孔中にPtを導入した。その後、メンブレンをクロムリン酸水溶液で溶解除去して、直径約330nm、長さ10μm(アスペクト比30)のPtナノワイヤーのアレーを得た。
【0033】
実施例8 [Pdナノワイヤーアレーの形成]
実施例1と同様の方法で得られた孔径330nmの細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナのスルーホールメンブレンをPd表面に密着させ、300℃の加熱下にて約190t/cmで加圧することで、メンブレンのナノ細孔中にPdを導入した。その後、メンブレンをクロムリン酸水溶液で溶解除去して、直径約330nm、長さ20μm(アスペクト比60)のPdナノワイヤーのアレーを得た。
【0034】
実施例9 [Agナノワイヤーアレーの形成]
実施例1と同様の方法で得られた孔径280nmの細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナのスルーホールメンブレンをAg表面に密着させ、300℃の加熱下にて約190t/cmで加圧することで、メンブレンのナノ細孔中にAgを導入した。その後、メンブレンをクロムリン酸水溶液で溶解除去して、直径約280nm、長さ10μm(アスペクト比35)のAgナノワイヤーのアレーを得た。
【0035】
実施例10 [Cuナノワイヤーアレーの形成]
実施例1と同様の方法で得られた孔径280nmの細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナのスルーホールメンブレンをCu表面に密着させ、300℃の加熱下にて約190t/cmで加圧することで,メンブレンのナノ細孔中にCuを導入した。その後、メンブレンをクロムリン酸水溶液で溶解除去して、直径約280nm、長さ1.5μm(アスペクト比5.3)のCuナノワイヤーのアレーを得た。
【0036】
実施例11 [Biナノワイヤーアレーの形成]
実施例1と同様の方法で得られた孔径330nmの細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナのスルーホールメンブレンをBi表面に密着させ、室温にて約190t/cmで加圧することで、メンブレンのナノ細孔中にBiを導入した。その後、メンブレンを水酸化ナトリウム水溶液で溶解除去して、直径約300nm、長さ10μm(アスペクト比33)のBiナノワイヤーのアレーを得た。
【0037】
実施例12 [Alナノワイヤーアレーの形成]
実施例1と同様の方法で得られた孔径280nmの細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナのスルーホールメンブレンをAl表面に密着させ、室温にて約2.2t/cmで加圧することで、メンブレンのナノ細孔中にAuを導入した。その後、メンブレンを機械的に剥離して、直径約280nm、長さ1μm(アスペクト比3.6)のAlナノワイヤーのアレーを得た。
【0038】
実施例13 [Auナノワイヤーアレーの形成]
実施例1と同様の方法で得られた孔径280nmの細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナのスルーホールメンブレンをAu表面に密着させ、室温にて約2.2t/cmで加圧することで、メンブレンのナノ細孔中にAuを導入した。その後、メンブレンを機械的に剥離して、直径約280nm、長さ1μm(アスペクト比3.6)のAuナノワイヤーのアレーを得た。
【0039】
実施例14 [Tiナノ突起アレーの形成]
実施例1と同様の方法で得られた孔径280nmの細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナのスルーホールメンブレンをTi表面に設置し、300℃の加熱下にて約190t/cmで加圧することで、メンブレンのナノ細孔中にTiを導入した。その後、メンブレンを機械的に剥離して、直径約280nm、高さ300nm(アスペクト比1.1)のTiナノ突起のアレーを得た。
【0040】
実施例15 [Taナノ突起アレーの形成]
実施例1と同様の方法で得られた孔径330nmの細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナのスルーホールメンブレンをTa表面に設置し、300℃の加熱下にて約190t/cmで加圧することで、メンブレンのナノ細孔中にTaを導入した。その後、メンブレンを機械的に剥離して、直径約330nm、高さ200nm(アスペクト比0.6)のTaナノ突起のアレーを得た。
【0041】
実施例16 [Liナノ突起アレーの形成]
実施例1と同様の方法で得られた孔径330nmの細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナのスルーホールメンブレンを、不活性ガスであるAr雰囲気下においてLi表面に設置し、室温にて約0.2t/cmで加圧することで、メンブレンのナノ細孔中にLiを導入した。その後、メンブレンを機械的に剥離して、直径約330nm、高さ100nm(アスペクト比0.3)のLiナノ突起のアレーを得た。また、Liの場合と同様の手法を用いて、Naナノ突起のアレーが得られることも確認された。
【0042】
実施例17 [陽極酸化Alナノワイヤーアレーの形成]
実施例1で形成されたAlナノワイヤーアレーを、0.3M硫酸を電解液として、浴温1℃、弱攪拌条件下、12Vの定電圧条件下にて陽極酸化を5分間行うことで、表面にポーラスアルミナ層を有するナノワイヤーアレーを得た。
【0043】
実施例18 [Auナノ微粒子と陽極酸化Alナノワイヤーアレーの複合体の形成]
実施例17で形成した陽極酸化Alナノワイヤーを、0.7gの硫酸を含む2.5mM塩化金酸水溶液中において、浴温30℃、弱攪拌条件下、9Vの交流電圧を印加することで、陽極酸化Alナノワイヤー表面に形成されたナノ細孔中に直径20nmのAuナノ微粒子を析出させた。
【0044】
実施例19 [Auナノ微粒子と陽極酸化Alナノワイヤーアレーの複合体を用いたラマン信号の増強]
実施例18で得られたAuナノ微粒子と陽極酸化Alナノワイヤーの複合体を、1.2Mのピリジン溶液に浸漬し、乾燥窒素流で乾燥させた後、顕微ラマン分光装置により、Auナノ微粒子表面および表面付近に吸着したピリジン分子由来のラマン信号を1014cm−1と1040cm−1付近に検出した。
【0045】
実施例20 [Auナノワイヤーアレーを用いたラマン信号の増強]
実施例4、6および13で得られたAuナノワイヤーを1.2Mのピリジン溶液に浸漬、乾燥窒素流で乾燥させた。その後、顕微ラマン分光装置により、いずれのAuナノワイヤーにおいても、Auナノワイヤーに吸着したピリジン分子由来のラマン信号を1014cm−1と1040cm−1付近に検出した。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る方法により製造される金属ナノ構造体アレー、およびAlとポーラスアルミナとで構成された複合材料は、触媒、センサー、電子・光学デバイス等に応用可能なナノテク素材として、広範な用途への適用が期待される
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施態様に係る金属ナノワイヤーアレー形成の概略プロセス(A)〜(D)を示す説明図である。
【図2】図1のプロセスにより形成されたAlナノワイヤーアレーのSEM観察結果を示す図である。
【図3】本発明の他の実施態様に係る金属ナノ突起アレー形成の概略プロセス(A)〜(D)を示す説明図である。
【図4】図3のプロセスにより形成されたAlナノ突起アレーのSEM観察結果を示す図である。
【図5】図2のAlナノワイヤー6の表面に陽極酸化処理を施すことにより得られた複合材料のSEM観察結果を示す図である。
【図6】図5の陽極酸化ポーラスアルミナ9のナノ細孔中に金ナノ微粒子10が導入された複合材料のSEM観察結果を示す図である。
【図7】図6の複合材料を用いてピリジンの表面増強ラマン信号を測定した結果を示すスペクトル図である。
【符号の説明】
【0048】
1 アルミニウム(Al)
2、9 ポーラスアルミナ
3 メンブレン
4、6 ナノワイヤー
5 金属
7、8 ナノ突起
10 ナノ微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細開口配列を有するモールドを金属表面に型押しした後に、前記モールドを前記金属表面から除去することにより、前記金属表面に金属ナノ構造体を形成することを特徴とする金属ナノ構造体アレーの製造方法。
【請求項2】
前記金属ナノ構造体が金属ナノワイヤーまたは金属ナノ突起からなり、前記モールドを、前記金属ナノ構造体を形成するナノ構造体素材の融点未満の温度条件下で、かつ、0.2t/cm〜190t/cmの圧力条件下で、前記金属表面に型押しすることにより、前記金属ナノ構造体のアスペクト比を制御する、請求項1に記載の金属ナノ構造体アレーの製造方法。
【請求項3】
前記金属ナノ構造体が、アスペクト比3.5以上もしくは長さ1μm以上の金属ナノワイヤー、または、アスペクト比1以下もしくは長さ300nm以下の金属ナノ突起からなる、請求項2に記載の金属ナノ構造体アレーの製造方法。
【請求項4】
前記金属表面が少なくともAl、Au、Pt、Pd、Ag、Cu、Zn、SnもしくはBiのいずれか、またはそれらの合金からなり、前記モールドをウエットエッチングにより前記金属表面から溶解除去する、請求項3に記載の金属ナノ構造体アレーの製造方法。
【請求項5】
前記金属表面が、Al、Au、Ti、Pt、Pd、Ag、Cu、Zn、Sn、Bi、Li、NaもしくはTaのいずれか、またはそれらの合金からなり、前記モールドを物理的に前記金属表面から剥離除去する、請求項3に記載の金属ナノ構造体アレーの製造方法。
【請求項6】
前記微細開口配列を有するモールドが、モールド素材を陽極酸化処理することによって形成されている、請求項1〜5のいずれかに記載の金属ナノ構造体アレーの製造方法。
【請求項7】
前記微細開口配列を有するモールドが、陽極酸化処理されたポーラスアルミナメンブレンのレプリカとして形成されている、請求項1〜5のいずれかに記載の金属ナノ構造体アレーの製造方法。
【請求項8】
前記モールドに予め離型処理が施されている、請求項1〜7のいずれかに記載の金属ナノ構造体アレーの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法によって形成された金属ナノ構造体としてのAlナノワイヤーに陽極酸化処理を施すことにより、Alとポーラスアルミナとで構成される複合材料を製造することを特徴とする複合材料の製造方法。
【請求項10】
前記陽極酸化処理において電解液として酸性溶液を用いる、請求項9に記載の複合材料の製造方法。
【請求項11】
前記陽極酸化処理の後にめっき処理を施す、請求項9または10に記載の複合材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−156005(P2010−156005A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333665(P2008−333665)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(591243103)財団法人神奈川科学技術アカデミー (271)