金属メッキ製品
【目的】 従来のAu−Niメッキと同等の特性を有しながら、Ni等の金属アレルギーを引き起こし得る有害金属を含まない新規のメッキ層を備えた製品を実現する。
【構成】 メッキ液の浴組成の金属成分を、AuとFeにTi又はInを加えたものとすることにより、Niを用いることなく、従来と同様の耐磨耗性を有するとともに、従来品と同様の色調を備えた金属メッキ製品が得られる。
【構成】 メッキ液の浴組成の金属成分を、AuとFeにTi又はInを加えたものとすることにより、Niを用いることなく、従来と同様の耐磨耗性を有するとともに、従来品と同様の色調を備えた金属メッキ製品が得られる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は金属メッキ製品に係り、特に、Ni等の金属アレルギーを引き起こす有害金属を含まない金属メッキを施す技術に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、時計やネックレス等の装身具、装飾品等において、装飾性を高めかつ耐蝕性を向上させるために、金色や銀色を呈する金属メッキが施されている。この金属メッキとしては、多くの場合、耐磨耗性の高いNi合金からなるメッキ層が形成されている。しかし、特に装身具においては、Hg、Ni、Co、Cr等の金属によって引き起こされる金属アレルギーが問題となってきている。これらのうち、Niは上述のようにメッキに欠かせない元素であるためにその影響は大きい。
【0003】Niを含有する製品が長時間皮膚に接触していると、汗に含まれるClイオンの反応によりNiイオンが溶出し、皮膚の蛋白質と結合してアレルゲンが形成される。このアレルゲンに対応する抗体が一旦生体内に形成されると、アレルゲンが体内に侵入する際に表皮細胞を破壊し、皮膚炎、湿疹等の症状を引き起こす。この抗体は長期間体内に残存するため、アレルギー症状は数年から数十年続く場合がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】現在、Ni、Cr、Co等の有害金属を含まないメッキが望まれているが、装身具に欠かせない金色等の彩色や光沢を失わず、しかも、メッキ層としての耐蝕性、耐磨耗性を満足するメッキ層の形成は極めて困難であった。そこで、一部ではNiの含有量を低減した製品が製造されているが、アレルギー体質の人には微量でも充分に発症する場合がある。
【0005】そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、上記の4つのアレルギー金属を全く含まない新規のメッキ層を施した製品を実現することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成するために、本発明の金属メッキ製品は、表面上に、Au、Fe及びTiの各金属成分を本質的に含むメッキ液を用いた電解メッキ処理により光沢のある金色を呈する金属メッキ層を形成してなるものである。
【0007】ここで、金属メッキ層は、Auの含有比率を97〜99%、Feの含有比率を0.5〜2.5%、Tiの含有比率を0.05〜0.5%の範囲にそれぞれ調整された金属メッキ層を形成してなることが好ましい。
【0008】特に、電導塩としてPHを2.5〜4.0にアルカリで中和した弱有機酸を用い、Fe塩(metal)として0.5〜2g/L、Ti塩(metal)として0.5〜2g/L、Au塩(metal)として3〜8g/Lに調整したメッキ液を用いて電解メッキ処理を行うことが好ましい。
【0009】次に、表面上に、Au、Fe及びInの各金属成分を本質的に含むメッキ液を用いた電解メッキ処理により光沢のある金色を呈する金属メッキ層を形成してなる場合もある。
【0010】ここで、金属メッキ層は、Auの含有比率を97〜99%、Feの含有比率を0.5〜2.5%、Tiの含有比率を0.05〜1.0%の範囲にそれぞれ調整された金属メッキ層を形成してなることが好ましい。
【0011】特に、電導塩としてPHを2.5〜4.0にアルカリで中和した弱有機酸を用い、Fe塩(metal)として0.5〜2g/L、In塩(metal)として0.5〜2g/L、Au塩(metal)として3〜8g/Lに調整したメッキ液を用いて電解メッキ処理を行うことが好ましい。
【0012】
【作用】請求項1によれば、メッキ液の組成として、Au、FeにさらにTiを加える事によって、メッキ層の耐摩耗性が向上し、その内部応力も低減されるので、良好なメッキ層が得られるとともに、従来のAu−Niメッキに類似した色調を得ることができる。
【0013】請求項2によれば、メッキ液中の金属組成を所定範囲にすることによって、色調のばらつきの少ない安定した条件でメッキ層を形成することができる。
【0014】請求項3によれば、メッキ液の組成として、Au、FeにさらにInを加える事によって、メッキ層の耐摩耗性が向上するとともに、従来のAu−Niメッキに類似した色調を得ることができる。
【0015】請求項4によれば、メッキ液中の金属組成を所定範囲にすることによって、耐摩耗性の良好な安定した条件でメッキ層を形成することができる。
【0016】請求項5、6によれば、メッキ層の良好な色調と耐摩耗性とをより安定的に得ることができる。
【0017】
【実施例】次に、図面を参照して本発明に係る金属メッキ製品の実施例を説明する。この実施例は、黄銅若しくは亜鉛合金により形成された時計用外装部品を素材とし、この素材の表面上にメッキ層を形成したものである。メッキ層としては、Cu、Sn−Cu、純Pd等のNiを含まない下地メッキ層を電解メッキにより形成し、その上に、Au及びFeを含み、Niを含まない仕上げメッキ層を形成する。下地メッキ層と仕上げメッキ層はともに2層以上形成する場合もある。
【0018】下地メッキ層は、素材のレベリング性(平滑性)を高め、仕上げメッキ層との密着性を高め、更に素材の耐蝕性を向上させるために形成するものであり、金属アレルギーを考慮しない場合には、Ni、Pd−Ni系が用いられていた。しかし、下地メッキ層と言えども、Ni等の有害金属を含む場合には表面の仕上げメッキ層を介して有害金属が溶出するというデータがあるため、下地メッキ層についても、無害な金属メッキを施す必要がある。
【0019】この下地メッキ層に関しては、上記従来のメッキ層に対抗しうる密着性と耐蝕性を備えた代替品として、Cuメッキ、Cu−Sn、純Pdメッキが開発されている。これらのメッキ層の詳細は、特開平5−70989号公報に開示されている。本実施例の場合には下地メッキ層は上記のものが好ましいが、本実施例以外の素材に被着される場合にはそのメッキ組成は素材に応じて種々異なる組成で形成されてよい。
【0020】仕上げメッキ層は、AuとFeの他にTi又はInを含有するメッキ液により電解メッキにより形成される。これらのメッキ層は、従来のAu−Ni系とほぼ同様の色度及び光沢を備え、しかも時計用外装部品に使用しても充分な硬度若しくは耐摩耗性を備えている。
【0021】〔第1実施例〕本実施例は、時計の胴、蓋、ベゼル、リューズ、バンド、中留め等として用いられる時計用外装部品の黄銅の素材表面上に、下地メッキ層1としてCuメッキ層を形成し、次に、下地メッキ層2としてCu−Snメッキを施した後、その表面上に、Au,Fe,Tiの3つの金属元素を含むメッキ液を用いて電解メッキを施し、仕上げメッキ層を形成したものである。
【0022】メッキ液の組成は、金化合物、鉄塩、チタン塩、電導塩、PH調整用の弱有機酸及び/又はアルカリ、光沢剤等からなる。
【0023】金化合物は、一般に、シアン化第1金ナトリウム、シアン化第1金カリウム、シアン化第2金ナトリウム、シアン化第2金カリウム等の1種若しくは2種以上の混合物である。
【0024】鉄塩は、一般に、シュウ酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、硫酸塩等の水溶性鉄塩化合物からなる。
【0025】チタン塩は、一般に、シュウ酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、硫酸塩、フッ酸塩等からなる。
【0026】電導塩は、一般に、クエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、リン酸塩等からなる。
【0027】メッキ液は、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、リン酸、シュウ酸等の弱有機酸と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリとによって後述するようにPH調整が行われる。
【0028】まず、本実施例のAu−Fe−Ti系メッキによるメッキ層と、Tiを含有しない他のAu−Feメッキによるメッキ層とを比較するために、本実施例に用いるメッキ液Aと、金属としてTiを含まない他の2種のメッキ液(比較例としてメッキ液B、メッキ液C)とを比較した。この比較は、メッキ時の電流密度を変えて光沢の得られる範囲を測定する電流密度別光沢範囲評価、メッキ層の内部応力をみるメッキ付け時の内部応力評価、メッキ皮膜の耐磨耗性評価、及びAu−Niメッキによって得られる色調基準の上限値(L* =87.87、a* =0.92、b* =33.40)との色差の大小をみる色調評価である。各メッキ層の形成条件を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】ハルセル試験器(株式会社山本鍍金試験器製)によりメッキ層の光沢の得られる範囲を測定した。この結果を図6に示す。図6に示すように、本実施例に使用するメッキ液Aではクモリ又はヤケの範囲(図中斜線部)は電流密度3A/dm2 以上であるのに対し、メッキ液Bは2.1A/dm2 以上、メッキ液Cでは2.4A/dm2 以上でクモリ又はヤケがみられた。
【0031】次に、本実施例のメッキ液A、メッキ液B、及びメッキ液Cについて、スパイラル応力測定による内部応力評価をスパイラル鍍金応力計(株式会社山本鍍金試験器製)により行った。このときの評価結果を図7R>7に示す。図7に示すように、メッキ液Aで形成したメッキ層は他のメッキ層に比べて内部応力が低く良好な皮膜が得られることがわかる。
【0032】メッキ層の耐磨耗性を調べるために、往復運動磨耗試験を磨耗試験機NUS−ISO−3(スガ試験機株式会社製)により行った。ここで試験荷重は400g、摩耗輪は9μmのアルミナ研磨紙を用いた。メッキ液の組成、メッキ条件は表1に示したものと同じである。その結果を図8に示す。図8に示すように、メッキ液Aにより形成したメッキ層は、他のメッキ液B,Cにより形成されたメッキ層よりも極めて高い耐磨耗性を示した。
【0033】最後に、上記の各メッキ層の色調を、Gemcolor2(カルニュー光学工業株式会社製)により測定し、色調基準の上限値(L* =87.87、a* =0.92、b* =33.40)との色差ΔE* ab={(ΔL* )2 +(Δa* )2 +(Δb* )2 }1/2を求めた。この結果を図9に示す。
【0034】図9に示すように、メッキ液Aによるメッキ層は他のメッキ液に比べて全体的に色差が小さく、しかも色差の小さい領域が最も広い。なお、色差の目安としては、色差が3以上になると色調が明確に異なって見える場合が一般的である。
【0035】以上のように、本実施例のAu−Fe−Ti系のメッキ層は、Tiを含まないAu−Fe系のメッキ液よりも全ての点で優れており、しかもAu−Niメッキの代替品として用い得ることがわかる。
【0036】本実施例では、上記のような構成により、金属金(以下、単にAuという。)を4.5〜7.0g/L、金属鉄(以下、単にFeという。)を0.5〜2.0g/L、金属チタン(以下、単にTiという。)を0.5〜2.0g/Lの範囲で含有させたメッキ液を作成してメッキ処理を行った。液温は33〜37℃、浴のPHは3.2〜3.5、電流密度は1.5A/dm2 である。
【0037】このメッキ液により、Au−Fe−Ti系のメッキ層の色調について測定した結果を図1に示す。メッキ処理の条件によって異なるものの、全体としては従来の色調基準色調基準の上限値よりも若干赤味が強い程度で、18Kと24Kのちょうど中間の色調が得られることがわかる。
【0038】図2は、液温35℃、電流密度1.5A/dm2 、Auを5.5g/L、Feを1.0g/L、Tiを1.0g/Lの浴組成とし、浴のPHを3.0〜4.0に変化させて形成した場合の色調データを示す。ここで、■はPH=3.0、■はPH=3.2、■はPH=3.4、■はPH=3.6、■はPH=3.8である。PH=4.0の場合にはクモリが出て実用可能なメッキ層が得られなかった。この図からわかるように、PH=3.2〜3.6の範囲では色調のばらつきが少なく、安定したメッキ層が形成できる。
【0039】図3は、液温35℃、電流密度1.5A/dm2 、Feを1.0g/L、Tiを1.0g/L、浴のPHを3.2とし、Auの濃度を2.83〜9.60g/Lの範囲で変化させて形成した場合の色調データを示す。ここで、■はAu=2.83g/L、■は同4.24、■は同5.83、■は同7.16、■は同8.24、■は同9.60である。この図からわかるように、金濃度が4.5〜7.0g/Lの範囲では色調のばらつきが少なく、安定したメッキ層が形成できる。図4は、液温35℃、電流密度1.5A/dm2 、Auを5.5g/L、Feを1.0g/L、Tiを1.0g/Lの浴組成とし、浴のPHを3.2〜3.6に変化させて形成した場合の耐磨耗性試験の結果を示す。ここで、時計用外装部品の耐磨耗性としては330DS/μm以上であれば良好であると考えることができるので、浴のPHが3.5以下であれば安定した耐磨耗性を得ることができる。
【0040】図5は、図1に示すものと同様の条件で作成したメッキ層の厚さと耐磨耗試験における耐磨耗回数との関係を、従来の時計用外装部品に用いられていたAu−Ni系のメッキ層と比較した結果を示すものである。この図からわかるように、耐磨耗特性は従来品とほぼ同様であり、まったく問題がない。
【0041】以上のように、本実施例では、Au−Fe−Ti系のメッキ液により電解メッキを行うことにより、色調と耐磨耗性の双方を満足させたメッキ層を得ることができる。色調は従来のAu−Ni系メッキの色調とは若干の差はあるものの、純金に近い色調であり、時計用外装部品や他の装身具に使用しても全く問題のないものである。耐磨耗性は従来のAu−Ni系メッキと全く同程度の性能を備えているため、完全な代替品として使用できる。さらに、上記のように比較的特性の安定したメッキ条件範囲が得られたため、製品のばらつきが抑制され、歩留りが向上するとともに、製造コストを低減できるという効果を奏する。
【0042】〔第2実施例〕次に、上記第1実施例と同様に、素材の表面上に形成された下地メッキ層の上に、Au−Fe−In系のメッキ層を形成する第2実施例を説明する。この実施例では、第1実施例のチタン塩の代わりにインジウム塩をメッキ液に混合し、上記と同様に、メッキ層の色調及び耐磨耗性を測定した。
【0043】表2はメッキ液組成としてAuを4.0g/L、Feを1.0g/Lの濃度とし、金属インジウムの濃度(以下、単にInという。)を0.6、1.1、1.6g/Lと3段階に変えて形成したメッキ層の試験結果を示すものである。液温は35℃、液のPHは3.0に調整した。電流密度は表中に示すように5段階に変えてメッキ層を形成した。試験方法は第1実施例と同様である。また、この場合における色調データを図10に示す。
【0044】
【表2】
【0045】表3は、メッキ液組成としてAuを4.0g/L、Inを1.6g/Lの濃度とし、Feを2.0、3.0、4.0g/Lと3段階に変えて形成したメッキ層の試験結果を示すものである。液温は35℃、液のPHは約3.0である。試験方法は第1実施例と同様である。また、この場合における色調データを図11に示す。
【0046】
【表3】
【0047】これらによれば、耐磨耗性においては、浴組成におけるFeの含有量が1.0〜2.0g/Lのときの高電流密度の場合及び浴組成におけるFeの含有量が4.0g/Lのときを除いて、ほぼ要求水準(例えば330DS/μm以上)を満たしている。
【0048】また、色調については、全ての場合にほぼ色調基準の下限値から上限値の中間の色調を有しており、いずれの試料においても要求水準をほぼ満たすものと思われる。
【0049】表2の試料について色調データを示す図10R>0において、■は浴組成におけるInの含有量が0.6g/Lの場合、■は浴組成におけるInの含有量が1.1g/Lの場合、■は浴組成におけるInの含有量が1.6g/Lの場合である。それぞれについて複数の点がプロットされているのは、電流密度を5段階に変えて形成したためである。各場合とも、電流密度が上がるにつれて色調が青方向にずれている。
【0050】表3の試料について色調データを示す図11R>1において、■は浴組成におけるFeの含有量が2.0g/Lの場合、■は浴組成におけるFeの含有量が3.0g/Lの場合、■は浴組成におけるFeの含有量が4.0g/Lの場合である。それぞれについて複数の点がプロットされているのは、電流密度を5段階に変えて形成したためである。各場合とも、電流密度が上がるにつれて色調が青方向にずれている。
【0051】上記データに基づいてメッキの最適条件を、浴組成においてAuを4.0g/L、Feを2.0g/L、Inを1.6g/Lとし、液のPHを3.0、液温を35℃、電流密度を1.5A/dm2 と仮設定した。この仮設定した条件では、最も高い耐磨耗性を備えたメッキ層が得られる。
【0052】この仮設定した条件で、時計用外装部品についてメッキ層の厚さを3μmとして試験を行ったところ、この条件でもメッキ層が厚くなることによってメッキ層にクラックの発生する場合があることが判明した。
【0053】そこで、表4に示すように、上記仮設定した条件を中心にして浴組成を変化させて、3μmのメッキ層を形成し、クラックの発生の有無を調べた。ここで、各試料について上記と同様の色調、耐磨耗性とともに、スパイラル応力測定を行った。
【0054】
【表4】
【0055】この表において、試料番号1〜14は、上記と同様に浴組成における金属成分比を変えるとともに、浴中の電導塩の量を変えることにより浴比重を変えてメッキ層を形成した場合を示している。その結果、上記仮設定した条件で形成した試料8ではクラックが発生する場合があるが、浴比重を高めた条件で形成した試料14ではクラックの発生が抑制されることが判明した。
【0056】この場合の色調データをグラフ化したものを図12に示す。最適条件の試料14を含め、殆どの場合に問題のない色調が得られている。
【0057】上記クラックの発生と、スパイラル応力試験の内部応力のデータとは表4に示すように明確な相関を示している。本実施例では、浴比重を調整する(増加させる)ことによりクラックの抑制又は内部応力の低減を図ることができ、得られた色調にも問題がないことから、Au−Fe−In系で充分に実用的なメッキ層を得ることが可能であることが実証された。
【0058】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、Au−Fe−Ti系、又はAu−Fe−In系のメッキ液により電解メッキを行うことにより、色調と耐磨耗性の双方を満足させたメッキ層を得ることができる。色調は従来のAu−Ni系メッキの色調とは若干の差はあるものの、純金に近い色調であり、時計用外装部品や他の装身具に使用しても全く問題のないものである。耐磨耗性は従来のAu−Ni系メッキと全く同程度の性能を備えているため、完全な代替品として使用できる。さらに、上記のように比較的特性の安定したメッキ条件範囲が得られたため、製品のばらつきが抑制され、歩留りが向上するとともに、製造コストを低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1実施例(Au−Fe−Ti系メッキ)の色調データを示すグラフである。
【図2】同実施例において、所定組成のメッキ液のPHを変えて形成したメッキ層の色調データを示すグラフである。
【図3】同実施例において、メッキ液の金属金の含有量を変えて形成したメッキ層の色調データを示すグラフである。
【図4】同実施例において、所定組成のメッキ液のPHと耐磨耗性との関係を示すグラフである。
【図5】同実施例の耐磨耗回数(往復磨耗試験)を、従来の時計用外装部品に形成されるAu−Ni系メッキの耐磨耗回数と比較して示すグラフである。
【図6】同実施例及び2つの比較例のメッキ処理時の電流密度に対して、得られたメッキ層の光沢の有無を調べるために行ったハルセル試験の結果を示す図(a)〜(c)である。
【図7】同実施例及び2つの比較例のメッキ層の厚さと、スパイラル応力試験により求めた内部応力との関係を示すグラフである。
【図8】同実施例及び2つの比較例について調べた耐磨耗性試験(往復磨耗試験)の結果を示すグラフである。
【図9】同実施例及び2つの比較例について調べた電流密度と色調との関係を示すグラフである。
【図10】本発明に係る第2実施例(Au−Fe−In系メッキ)における色調データをInの浴組成別に示すグラフである。
【図11】同実施例における色調データをFeの浴組成別に示すグラフである。
【図12】同実施例におけるクラック対策実験における製作試料の色調データを示すグラフである。
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は金属メッキ製品に係り、特に、Ni等の金属アレルギーを引き起こす有害金属を含まない金属メッキを施す技術に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、時計やネックレス等の装身具、装飾品等において、装飾性を高めかつ耐蝕性を向上させるために、金色や銀色を呈する金属メッキが施されている。この金属メッキとしては、多くの場合、耐磨耗性の高いNi合金からなるメッキ層が形成されている。しかし、特に装身具においては、Hg、Ni、Co、Cr等の金属によって引き起こされる金属アレルギーが問題となってきている。これらのうち、Niは上述のようにメッキに欠かせない元素であるためにその影響は大きい。
【0003】Niを含有する製品が長時間皮膚に接触していると、汗に含まれるClイオンの反応によりNiイオンが溶出し、皮膚の蛋白質と結合してアレルゲンが形成される。このアレルゲンに対応する抗体が一旦生体内に形成されると、アレルゲンが体内に侵入する際に表皮細胞を破壊し、皮膚炎、湿疹等の症状を引き起こす。この抗体は長期間体内に残存するため、アレルギー症状は数年から数十年続く場合がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】現在、Ni、Cr、Co等の有害金属を含まないメッキが望まれているが、装身具に欠かせない金色等の彩色や光沢を失わず、しかも、メッキ層としての耐蝕性、耐磨耗性を満足するメッキ層の形成は極めて困難であった。そこで、一部ではNiの含有量を低減した製品が製造されているが、アレルギー体質の人には微量でも充分に発症する場合がある。
【0005】そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、上記の4つのアレルギー金属を全く含まない新規のメッキ層を施した製品を実現することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成するために、本発明の金属メッキ製品は、表面上に、Au、Fe及びTiの各金属成分を本質的に含むメッキ液を用いた電解メッキ処理により光沢のある金色を呈する金属メッキ層を形成してなるものである。
【0007】ここで、金属メッキ層は、Auの含有比率を97〜99%、Feの含有比率を0.5〜2.5%、Tiの含有比率を0.05〜0.5%の範囲にそれぞれ調整された金属メッキ層を形成してなることが好ましい。
【0008】特に、電導塩としてPHを2.5〜4.0にアルカリで中和した弱有機酸を用い、Fe塩(metal)として0.5〜2g/L、Ti塩(metal)として0.5〜2g/L、Au塩(metal)として3〜8g/Lに調整したメッキ液を用いて電解メッキ処理を行うことが好ましい。
【0009】次に、表面上に、Au、Fe及びInの各金属成分を本質的に含むメッキ液を用いた電解メッキ処理により光沢のある金色を呈する金属メッキ層を形成してなる場合もある。
【0010】ここで、金属メッキ層は、Auの含有比率を97〜99%、Feの含有比率を0.5〜2.5%、Tiの含有比率を0.05〜1.0%の範囲にそれぞれ調整された金属メッキ層を形成してなることが好ましい。
【0011】特に、電導塩としてPHを2.5〜4.0にアルカリで中和した弱有機酸を用い、Fe塩(metal)として0.5〜2g/L、In塩(metal)として0.5〜2g/L、Au塩(metal)として3〜8g/Lに調整したメッキ液を用いて電解メッキ処理を行うことが好ましい。
【0012】
【作用】請求項1によれば、メッキ液の組成として、Au、FeにさらにTiを加える事によって、メッキ層の耐摩耗性が向上し、その内部応力も低減されるので、良好なメッキ層が得られるとともに、従来のAu−Niメッキに類似した色調を得ることができる。
【0013】請求項2によれば、メッキ液中の金属組成を所定範囲にすることによって、色調のばらつきの少ない安定した条件でメッキ層を形成することができる。
【0014】請求項3によれば、メッキ液の組成として、Au、FeにさらにInを加える事によって、メッキ層の耐摩耗性が向上するとともに、従来のAu−Niメッキに類似した色調を得ることができる。
【0015】請求項4によれば、メッキ液中の金属組成を所定範囲にすることによって、耐摩耗性の良好な安定した条件でメッキ層を形成することができる。
【0016】請求項5、6によれば、メッキ層の良好な色調と耐摩耗性とをより安定的に得ることができる。
【0017】
【実施例】次に、図面を参照して本発明に係る金属メッキ製品の実施例を説明する。この実施例は、黄銅若しくは亜鉛合金により形成された時計用外装部品を素材とし、この素材の表面上にメッキ層を形成したものである。メッキ層としては、Cu、Sn−Cu、純Pd等のNiを含まない下地メッキ層を電解メッキにより形成し、その上に、Au及びFeを含み、Niを含まない仕上げメッキ層を形成する。下地メッキ層と仕上げメッキ層はともに2層以上形成する場合もある。
【0018】下地メッキ層は、素材のレベリング性(平滑性)を高め、仕上げメッキ層との密着性を高め、更に素材の耐蝕性を向上させるために形成するものであり、金属アレルギーを考慮しない場合には、Ni、Pd−Ni系が用いられていた。しかし、下地メッキ層と言えども、Ni等の有害金属を含む場合には表面の仕上げメッキ層を介して有害金属が溶出するというデータがあるため、下地メッキ層についても、無害な金属メッキを施す必要がある。
【0019】この下地メッキ層に関しては、上記従来のメッキ層に対抗しうる密着性と耐蝕性を備えた代替品として、Cuメッキ、Cu−Sn、純Pdメッキが開発されている。これらのメッキ層の詳細は、特開平5−70989号公報に開示されている。本実施例の場合には下地メッキ層は上記のものが好ましいが、本実施例以外の素材に被着される場合にはそのメッキ組成は素材に応じて種々異なる組成で形成されてよい。
【0020】仕上げメッキ層は、AuとFeの他にTi又はInを含有するメッキ液により電解メッキにより形成される。これらのメッキ層は、従来のAu−Ni系とほぼ同様の色度及び光沢を備え、しかも時計用外装部品に使用しても充分な硬度若しくは耐摩耗性を備えている。
【0021】〔第1実施例〕本実施例は、時計の胴、蓋、ベゼル、リューズ、バンド、中留め等として用いられる時計用外装部品の黄銅の素材表面上に、下地メッキ層1としてCuメッキ層を形成し、次に、下地メッキ層2としてCu−Snメッキを施した後、その表面上に、Au,Fe,Tiの3つの金属元素を含むメッキ液を用いて電解メッキを施し、仕上げメッキ層を形成したものである。
【0022】メッキ液の組成は、金化合物、鉄塩、チタン塩、電導塩、PH調整用の弱有機酸及び/又はアルカリ、光沢剤等からなる。
【0023】金化合物は、一般に、シアン化第1金ナトリウム、シアン化第1金カリウム、シアン化第2金ナトリウム、シアン化第2金カリウム等の1種若しくは2種以上の混合物である。
【0024】鉄塩は、一般に、シュウ酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、硫酸塩等の水溶性鉄塩化合物からなる。
【0025】チタン塩は、一般に、シュウ酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、硫酸塩、フッ酸塩等からなる。
【0026】電導塩は、一般に、クエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、リン酸塩等からなる。
【0027】メッキ液は、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、リン酸、シュウ酸等の弱有機酸と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリとによって後述するようにPH調整が行われる。
【0028】まず、本実施例のAu−Fe−Ti系メッキによるメッキ層と、Tiを含有しない他のAu−Feメッキによるメッキ層とを比較するために、本実施例に用いるメッキ液Aと、金属としてTiを含まない他の2種のメッキ液(比較例としてメッキ液B、メッキ液C)とを比較した。この比較は、メッキ時の電流密度を変えて光沢の得られる範囲を測定する電流密度別光沢範囲評価、メッキ層の内部応力をみるメッキ付け時の内部応力評価、メッキ皮膜の耐磨耗性評価、及びAu−Niメッキによって得られる色調基準の上限値(L* =87.87、a* =0.92、b* =33.40)との色差の大小をみる色調評価である。各メッキ層の形成条件を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】ハルセル試験器(株式会社山本鍍金試験器製)によりメッキ層の光沢の得られる範囲を測定した。この結果を図6に示す。図6に示すように、本実施例に使用するメッキ液Aではクモリ又はヤケの範囲(図中斜線部)は電流密度3A/dm2 以上であるのに対し、メッキ液Bは2.1A/dm2 以上、メッキ液Cでは2.4A/dm2 以上でクモリ又はヤケがみられた。
【0031】次に、本実施例のメッキ液A、メッキ液B、及びメッキ液Cについて、スパイラル応力測定による内部応力評価をスパイラル鍍金応力計(株式会社山本鍍金試験器製)により行った。このときの評価結果を図7R>7に示す。図7に示すように、メッキ液Aで形成したメッキ層は他のメッキ層に比べて内部応力が低く良好な皮膜が得られることがわかる。
【0032】メッキ層の耐磨耗性を調べるために、往復運動磨耗試験を磨耗試験機NUS−ISO−3(スガ試験機株式会社製)により行った。ここで試験荷重は400g、摩耗輪は9μmのアルミナ研磨紙を用いた。メッキ液の組成、メッキ条件は表1に示したものと同じである。その結果を図8に示す。図8に示すように、メッキ液Aにより形成したメッキ層は、他のメッキ液B,Cにより形成されたメッキ層よりも極めて高い耐磨耗性を示した。
【0033】最後に、上記の各メッキ層の色調を、Gemcolor2(カルニュー光学工業株式会社製)により測定し、色調基準の上限値(L* =87.87、a* =0.92、b* =33.40)との色差ΔE* ab={(ΔL* )2 +(Δa* )2 +(Δb* )2 }1/2を求めた。この結果を図9に示す。
【0034】図9に示すように、メッキ液Aによるメッキ層は他のメッキ液に比べて全体的に色差が小さく、しかも色差の小さい領域が最も広い。なお、色差の目安としては、色差が3以上になると色調が明確に異なって見える場合が一般的である。
【0035】以上のように、本実施例のAu−Fe−Ti系のメッキ層は、Tiを含まないAu−Fe系のメッキ液よりも全ての点で優れており、しかもAu−Niメッキの代替品として用い得ることがわかる。
【0036】本実施例では、上記のような構成により、金属金(以下、単にAuという。)を4.5〜7.0g/L、金属鉄(以下、単にFeという。)を0.5〜2.0g/L、金属チタン(以下、単にTiという。)を0.5〜2.0g/Lの範囲で含有させたメッキ液を作成してメッキ処理を行った。液温は33〜37℃、浴のPHは3.2〜3.5、電流密度は1.5A/dm2 である。
【0037】このメッキ液により、Au−Fe−Ti系のメッキ層の色調について測定した結果を図1に示す。メッキ処理の条件によって異なるものの、全体としては従来の色調基準色調基準の上限値よりも若干赤味が強い程度で、18Kと24Kのちょうど中間の色調が得られることがわかる。
【0038】図2は、液温35℃、電流密度1.5A/dm2 、Auを5.5g/L、Feを1.0g/L、Tiを1.0g/Lの浴組成とし、浴のPHを3.0〜4.0に変化させて形成した場合の色調データを示す。ここで、
【0039】図3は、液温35℃、電流密度1.5A/dm2 、Feを1.0g/L、Tiを1.0g/L、浴のPHを3.2とし、Auの濃度を2.83〜9.60g/Lの範囲で変化させて形成した場合の色調データを示す。ここで、
【0040】図5は、図1に示すものと同様の条件で作成したメッキ層の厚さと耐磨耗試験における耐磨耗回数との関係を、従来の時計用外装部品に用いられていたAu−Ni系のメッキ層と比較した結果を示すものである。この図からわかるように、耐磨耗特性は従来品とほぼ同様であり、まったく問題がない。
【0041】以上のように、本実施例では、Au−Fe−Ti系のメッキ液により電解メッキを行うことにより、色調と耐磨耗性の双方を満足させたメッキ層を得ることができる。色調は従来のAu−Ni系メッキの色調とは若干の差はあるものの、純金に近い色調であり、時計用外装部品や他の装身具に使用しても全く問題のないものである。耐磨耗性は従来のAu−Ni系メッキと全く同程度の性能を備えているため、完全な代替品として使用できる。さらに、上記のように比較的特性の安定したメッキ条件範囲が得られたため、製品のばらつきが抑制され、歩留りが向上するとともに、製造コストを低減できるという効果を奏する。
【0042】〔第2実施例〕次に、上記第1実施例と同様に、素材の表面上に形成された下地メッキ層の上に、Au−Fe−In系のメッキ層を形成する第2実施例を説明する。この実施例では、第1実施例のチタン塩の代わりにインジウム塩をメッキ液に混合し、上記と同様に、メッキ層の色調及び耐磨耗性を測定した。
【0043】表2はメッキ液組成としてAuを4.0g/L、Feを1.0g/Lの濃度とし、金属インジウムの濃度(以下、単にInという。)を0.6、1.1、1.6g/Lと3段階に変えて形成したメッキ層の試験結果を示すものである。液温は35℃、液のPHは3.0に調整した。電流密度は表中に示すように5段階に変えてメッキ層を形成した。試験方法は第1実施例と同様である。また、この場合における色調データを図10に示す。
【0044】
【表2】
【0045】表3は、メッキ液組成としてAuを4.0g/L、Inを1.6g/Lの濃度とし、Feを2.0、3.0、4.0g/Lと3段階に変えて形成したメッキ層の試験結果を示すものである。液温は35℃、液のPHは約3.0である。試験方法は第1実施例と同様である。また、この場合における色調データを図11に示す。
【0046】
【表3】
【0047】これらによれば、耐磨耗性においては、浴組成におけるFeの含有量が1.0〜2.0g/Lのときの高電流密度の場合及び浴組成におけるFeの含有量が4.0g/Lのときを除いて、ほぼ要求水準(例えば330DS/μm以上)を満たしている。
【0048】また、色調については、全ての場合にほぼ色調基準の下限値から上限値の中間の色調を有しており、いずれの試料においても要求水準をほぼ満たすものと思われる。
【0049】表2の試料について色調データを示す図10R>0において、
【0050】表3の試料について色調データを示す図11R>1において、
【0051】上記データに基づいてメッキの最適条件を、浴組成においてAuを4.0g/L、Feを2.0g/L、Inを1.6g/Lとし、液のPHを3.0、液温を35℃、電流密度を1.5A/dm2 と仮設定した。この仮設定した条件では、最も高い耐磨耗性を備えたメッキ層が得られる。
【0052】この仮設定した条件で、時計用外装部品についてメッキ層の厚さを3μmとして試験を行ったところ、この条件でもメッキ層が厚くなることによってメッキ層にクラックの発生する場合があることが判明した。
【0053】そこで、表4に示すように、上記仮設定した条件を中心にして浴組成を変化させて、3μmのメッキ層を形成し、クラックの発生の有無を調べた。ここで、各試料について上記と同様の色調、耐磨耗性とともに、スパイラル応力測定を行った。
【0054】
【表4】
【0055】この表において、試料番号1〜14は、上記と同様に浴組成における金属成分比を変えるとともに、浴中の電導塩の量を変えることにより浴比重を変えてメッキ層を形成した場合を示している。その結果、上記仮設定した条件で形成した試料8ではクラックが発生する場合があるが、浴比重を高めた条件で形成した試料14ではクラックの発生が抑制されることが判明した。
【0056】この場合の色調データをグラフ化したものを図12に示す。最適条件の試料14を含め、殆どの場合に問題のない色調が得られている。
【0057】上記クラックの発生と、スパイラル応力試験の内部応力のデータとは表4に示すように明確な相関を示している。本実施例では、浴比重を調整する(増加させる)ことによりクラックの抑制又は内部応力の低減を図ることができ、得られた色調にも問題がないことから、Au−Fe−In系で充分に実用的なメッキ層を得ることが可能であることが実証された。
【0058】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、Au−Fe−Ti系、又はAu−Fe−In系のメッキ液により電解メッキを行うことにより、色調と耐磨耗性の双方を満足させたメッキ層を得ることができる。色調は従来のAu−Ni系メッキの色調とは若干の差はあるものの、純金に近い色調であり、時計用外装部品や他の装身具に使用しても全く問題のないものである。耐磨耗性は従来のAu−Ni系メッキと全く同程度の性能を備えているため、完全な代替品として使用できる。さらに、上記のように比較的特性の安定したメッキ条件範囲が得られたため、製品のばらつきが抑制され、歩留りが向上するとともに、製造コストを低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1実施例(Au−Fe−Ti系メッキ)の色調データを示すグラフである。
【図2】同実施例において、所定組成のメッキ液のPHを変えて形成したメッキ層の色調データを示すグラフである。
【図3】同実施例において、メッキ液の金属金の含有量を変えて形成したメッキ層の色調データを示すグラフである。
【図4】同実施例において、所定組成のメッキ液のPHと耐磨耗性との関係を示すグラフである。
【図5】同実施例の耐磨耗回数(往復磨耗試験)を、従来の時計用外装部品に形成されるAu−Ni系メッキの耐磨耗回数と比較して示すグラフである。
【図6】同実施例及び2つの比較例のメッキ処理時の電流密度に対して、得られたメッキ層の光沢の有無を調べるために行ったハルセル試験の結果を示す図(a)〜(c)である。
【図7】同実施例及び2つの比較例のメッキ層の厚さと、スパイラル応力試験により求めた内部応力との関係を示すグラフである。
【図8】同実施例及び2つの比較例について調べた耐磨耗性試験(往復磨耗試験)の結果を示すグラフである。
【図9】同実施例及び2つの比較例について調べた電流密度と色調との関係を示すグラフである。
【図10】本発明に係る第2実施例(Au−Fe−In系メッキ)における色調データをInの浴組成別に示すグラフである。
【図11】同実施例における色調データをFeの浴組成別に示すグラフである。
【図12】同実施例におけるクラック対策実験における製作試料の色調データを示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 表面上に、Au、Fe及びTiの各金属成分を本質的に含むメッキ液を用いた電解メッキ処理により光沢のある金色を呈する金属メッキ層を形成してなる金属メッキ製品。
【請求項2】 請求項1において、前記金属メッキ層は、Auの含有比率を97〜99%、Feの含有比率を0.5〜2.5%、Tiの含有比率を0.05〜0.5%の範囲にそれぞれ調整された金属メッキ層を形成してなる金属メッキ製品。
【請求項3】 表面上に、Au、Fe及びInの各金属成分を本質的に含むメッキ液を用いた電解メッキ処理により光沢のある金色を呈する金属メッキ層を形成してなる金属メッキ製品。
【請求項4】 請求項3において、前記金属メッキ層は、Auの含有比率を97〜99%、Feの含有比率を0.5〜2.5%、Tiの含有比率を0.05〜1.0%の範囲にそれぞれ調整された金属メッキ層を形成してなる金属メッキ製品。
【請求項5】 請求項2において、電導塩としてPHを2.5〜4.0にアルカリで中和した弱有機酸を用い、Fe塩(metal)として0.5〜2g/L、Ti塩(metal)として0.5〜2g/L、Au塩(metal)として3〜8g/Lに調整したメッキ液を用いて電解メッキ処理を行ったことを特徴とする金属メッキ製品。
【請求項6】 請求項4において、電導塩としてPHを2.5〜4.0にアルカリで中和した弱有機酸を用い、Fe塩(metal)として0.5〜2g/L、In塩(metal)として0.5〜2g/L、Au塩(metal)として3〜8g/Lに調整したメッキ液を用いて電解メッキ処理を行ったことを特徴とする金属メッキ製品。
【請求項1】 表面上に、Au、Fe及びTiの各金属成分を本質的に含むメッキ液を用いた電解メッキ処理により光沢のある金色を呈する金属メッキ層を形成してなる金属メッキ製品。
【請求項2】 請求項1において、前記金属メッキ層は、Auの含有比率を97〜99%、Feの含有比率を0.5〜2.5%、Tiの含有比率を0.05〜0.5%の範囲にそれぞれ調整された金属メッキ層を形成してなる金属メッキ製品。
【請求項3】 表面上に、Au、Fe及びInの各金属成分を本質的に含むメッキ液を用いた電解メッキ処理により光沢のある金色を呈する金属メッキ層を形成してなる金属メッキ製品。
【請求項4】 請求項3において、前記金属メッキ層は、Auの含有比率を97〜99%、Feの含有比率を0.5〜2.5%、Tiの含有比率を0.05〜1.0%の範囲にそれぞれ調整された金属メッキ層を形成してなる金属メッキ製品。
【請求項5】 請求項2において、電導塩としてPHを2.5〜4.0にアルカリで中和した弱有機酸を用い、Fe塩(metal)として0.5〜2g/L、Ti塩(metal)として0.5〜2g/L、Au塩(metal)として3〜8g/Lに調整したメッキ液を用いて電解メッキ処理を行ったことを特徴とする金属メッキ製品。
【請求項6】 請求項4において、電導塩としてPHを2.5〜4.0にアルカリで中和した弱有機酸を用い、Fe塩(metal)として0.5〜2g/L、In塩(metal)として0.5〜2g/L、Au塩(metal)として3〜8g/Lに調整したメッキ液を用いて電解メッキ処理を行ったことを特徴とする金属メッキ製品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開平9−3685
【公開日】平成9年(1997)1月7日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−159146
【出願日】平成7年(1995)6月26日
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(390021027)株式会社ビクトリア (4)
【公開日】平成9年(1997)1月7日
【国際特許分類】
【出願日】平成7年(1995)6月26日
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(390021027)株式会社ビクトリア (4)
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