説明

金属付着促進剤として有用なグラフトポリオレフィン

有機過酸化物を使用した反応押出によりアクリル酸でグラフトされたポリプロピレンを生成するための改善された方法であって、改善は、前記ポリプロピレンが導入される点から下流側で前記アクリル酸及び前記過酸化物を押出機に供給するステップを含み、前記アクリル酸は、1時間あたり25ポンドを超える供給量で添加され、前記過酸化物は、1時間あたり2ポンドを超える供給量で添加され、総供給量は1時間あたり500ポンドを超え、このように生成されたPP−g−AAは、1分間あたり約200dgを超えるメルトフローレートを有する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願人は、米国特許法第119条に従い、ともに「金属付着促進剤として有用な高フローアクリル酸/ポリプロピレングラフト(HIGH FLOW ACRYLIC ACID/POLYPROPYLENE GRAFT USEFUL AS METAL ADHESION PROMOTER)」という名称の、米国特許仮出願第60/809041号(2006年5月25日出願)及び米国特許仮出願第60/846668号(2006年9月22日出願)の利益を主張する。
【0002】
本発明は、ポリプロピレンベースポリオレフィンの金属に対する付着を改善する、アクリル酸でグラフトされたポリプロピレン等の機能性ポリオレフィンを含む材料、及び該材料を生成するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリオレフィンを金属表面に付着させる必要がある商業的用途は数多くある。これらの種類の用途の例としては、ポリオレフィンの金属インサートへのパイプコーティング、粉体コーティング、及びオーバーモールディングが挙げられる。しかし、ポリオレフィンの非極性的性質に起因して、これらの材料は金属に対し良好に付着しない。金属−ポリオレフィン間の付着を改善するために、極性基を有する機能化ポリオレフィンがポリオレフィン添加剤として使用されることがある。そのような極性基の例としては、無水マレイン酸及びアクリル酸が挙げられる。
【0004】
また、その他、木や極性プラスチック等の非金属極性材料にポリオレフィンを付着させることが望ましい場合がある。これらの場合において、アクリル酸又は無水マレイン酸で機能化されたポリオレフィンである添加剤が付着を改善することができる。
【0005】
これらの付着促進剤の主要な要件は、ポリオレフィンとの適合性を有すること、及び処理の間ポリオレフィン−金属界面に移動することである。付着促進剤は、界面に至ると、金属表面と相互作用し結合することができる。
【0006】
アクリル酸でグラフトされたポリプロピレン(PP−g−AA)は、ポリプロピレンと金属との間、及びポリプロピレン含有熱可塑性エラストマーと金属との間の結合を改善するために使用される付着促進剤の例である。市販のPP−g−AA製品は、Polybond(登録商標)1001及びPolybond1002の商標でケムチュラコーポレーション(Chemtura Corporation)社から入手可能である。これらの材料は、ポリプロピレンベースポリオレフィンの金属に対する付着を改善するが、残念ながらメルトフローが比較的低く、したがって、金属インサートへのオーバーモールディング等の高温処理中はポリオレフィン−金属界面への移動においてあまり効率的ではない。Polybond1001及びPolybond1002は、それぞれ約40dg/分及び20dg/分のメルトフローレートを有する、約6%のアクリル酸でグラフトされたポリプロピレンである。
【0007】
PP−g−AAの最も一般的な生成方法は、制御条件下での有機過酸化物を使用する反応押出によるものである。このプロセスにおいて、ポリプロピレンが押出機(多くの場合二軸押出機)に供給され、溶融される。通常射出によりアクリル酸及び有機過酸化物が溶融物に導入される。溶融物中でアクリル酸の重合及びグラフト化が行われるが、溶融物は通常、未反応アクリル酸及び過酸化物分解生成物を除去するための吸引口を有する押出機ゾーンに供給されて通過した後、スクリュー上をダイに向かって運搬され、そこで材料が押し出されペレット化される。この一般的なプロセスは、当技術分野では周知である。
【0008】
米国特許第3862265号及び関連した米国特許第3953655号は、改質ポリマー、特にポリオレフィンを開示しており、これらは、出発原料としてのポリマー(例えばポリオレフィン)ベースストックよりも改善されたフローと、ある場合には改善された付着性を有すると言われている。改質ポリマーは、押出機中で、多くの場合分解が関与する制御反応により生成されるが、その際、分布が最大となる条件、又は激しい混合条件の下で開始剤が射出され、ベースポリマーにおいて認め得るレオロジー的(例えば分子量分布)変化が発生する。ある実施形態において、分解プロセス中、モノマーもまたベースストックにグラフトされる。本発明の高フローPP−g−AAポリマーの種類の調製の例は記載されていない。これらの特許は、あるグラフトポリオレフィンポリマーが、ナイロン又はポリエステル等の極性ポリマーに対する改善された付着、及び金属爪に対する改善された付着を示すことを開示しているが、金属又は極性樹脂に対する付着を改善するために、本発明の高フローPP−g−AAポリマーがその他の非機能化ポリオレフィン又はTPVへの添加剤として使用されることが望ましい場合の、当該ポリマーの利点を開示したものはない。
【0009】
米国特許第6448343号は、熱可塑性加硫物の形成が、2つのポリマーにより達成され得ることを開示しており、一方のポリマーをカルボン酸無水物でグラフトするか、若しくはそれと共重合させ、次いで該酸無水物グラフトポリマーを、該酸無水物と反応して架橋するアミノシランと反応させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、1000dg/分まで、好ましくは約100dg/分から約500dg/分の範囲のメルトフローレートを有するPP−g−AA材料を生成することである。
【0011】
本発明の他の目的は、極性材料、特に金属にポリプロピレンベースポリオレフィンを付着させるための改善された材料の開発であるが、本発明の高メルトフローPP−g−AA材料はまた、ナイロン、ポリエステル、ポリカーボネート、及び極性基を含有するその他のポリマー等の極性樹脂に対するポリプロピレンベースポリオレフィンの付着を改善するための添加剤としても有用である。例えば、本発明の高メルトフローPP−g−AA材料を含む熱可塑性加硫物(TPV)又は他のポリプロピレンベースポリオレフィンでは、従来知られた材料を含有するTPV又は他のポリプロピレンベースポリオレフィンと比較して、オーバーモールディングプロセスにより生成された物体において極性樹脂基材上への付着が改善される。
【0012】
本発明の高フローPP−g−AA材料の他の効用には、金属の粉体コーティングの改善、金属パイプのパイプコーティングの改善、繊維への製造の改善(スパンボンドプロセスにより調製されたものを含む)、及び水性エマルジョンの調製能力の改善が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
より具体的には、本発明は、有機過酸化物を使用する反応押出によりアクリル酸(PP−g−AA)でグラフトされたポリプロピレンを生成するための方法における改善に関し、該改善は、前記ポリプロピレンが導入される点から下流側で前記アクリル酸及び前記過酸化物を押出機に供給するステップを含み、
前記アクリル酸は、1時間あたり25ポンドを超える供給量で添加され、前記過酸化物は、1時間あたり2ポンドを超える供給量で添加され、総重量は1時間あたり500ポンドを超え、
このように生成されたPP−g−AAは、1分間あたり約200dgを超えるメルトフローレートを有する。
【0014】
他の態様において、本発明は、有機過酸化物を使用する反応押出によりアクリル酸でグラフトされたポリプロピレンを付着促進剤として使用するステップを含む、ポリプロピレンポリマーの極性材料に対する付着を増加させるための方法に関し、
前記アクリル酸及び前記過酸化物は、前記ポリプロピレンが導入される点から下流側で押出機に供給され、
前記アクリル酸は、1時間あたり25ポンドを超える供給量で添加され、前記過酸化物は、1時間あたり2ポンドを超える供給量で添加され、総重量は1時間あたり500ポンドを超え、
このように生成されたアクリル酸でグラフトされたプロピレンは、1分間あたり約200dgを超えるメルトフローレートを有する。
【0015】
さらに他の態様において、本発明は、有機過酸化物を使用した反応押出によりアクリル酸でグラフトされたポリプロピレンを付着促進剤として使用するステップを含む、ポリプロピレンの熱可塑性加硫物に対する付着を増加させるための方法に関し、
前記アクリル酸及び前記過酸化物は、前記ポリプロピレンが導入される点から下流側で押出機に供給され、
前記アクリル酸は、1時間あたり25ポンドを超える供給量で添加され、前記過酸化物は、1時間あたり2ポンドを超える供給量で添加され、総供給量は1時間あたり500ポンドを超え、
このように生成されたPP−g−AAは、1分間あたり約200dgを超えるメルトフローレートを有する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上述のように、本発明は、有機過酸化物を使用した反応押出によりアクリル酸でグラフトされたポリプロピレンを生成するための方法における改善に関し、該改善は、前記ポリプロピレンが導入される点から下流側で前記アクリル酸及び前記過酸化物を押出機に供給するステップを含み、
前記アクリル酸は、1時間あたり25ポンドを超える供給量で添加され、前記過酸化物は、1時間あたり2ポンドを超える供給量で添加され、総重量は1時間あたり500ポンドを超え、
このように生成されたPP−g−AAは、1分間あたり約200dgを超えるメルトフローレートを有する。
【0017】
本発明のプロセスは、好ましくは二軸押出機を使用して、反応押出プロセスにおける反応変数を制御することにより、非常に高いメルトフローのPP−g−AA生成物を生成することができる。主要な変数は、過酸化物供給量、アクリル酸供給量、及び総供給量を含む。
【0018】
本発明によれば、過酸化物の供給量は1時間あたり2ポンドを超え、好ましくは1時間あたり約2ポンドから約20ポンドの範囲であり、より好ましくは1時間あたり約4ポンドから約15ポンドである。アクリル酸の供給量は1時間あたり25ポンドを超え、好ましくは1時間あたり約25ポンドから約250ポンドの範囲であり、より好ましくは1時間あたり約50ポンドから約150ポンドである。総供給量は、1時間あたり500ポンドを超え、好ましくは1時間あたり500ポンドから5000ポンドの範囲であり、より好ましくは1時間あたり1000ポンドから3000ポンドの範囲である。押出機を相応した大きさとし、またアクリル酸及び過酸化物の供給量も比例して増加させれば、1時間あたり5000ポンドを超える総供給量が達成可能である。
【0019】
本発明の実践に用いられるアクリル酸は、好ましくは精製アクリル酸である。
【0020】
本発明において使用可能な過酸化物は広範である。好ましい過酸化物は、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン(ルペロックス社(Luperox GmbH)製Luperox101)である。使用可能な他の過酸化物には、過酸化ジクミル、過酸化t−ブチルクミル、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、過酸化ジ−t−ブチル、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−ヘキシン−3、過酸化ジイソプロピル、過酸化ジラウリル、3,3,5−トリメチル1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、t−ブチル過酸化水素、t−アミル過酸化水素、クミル過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル、エチルペルオキシベンゾエート等が含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
本発明の実践において使用されるグラフトコポリマーを作製するために使用されるポリプロピレンは、0.1〜100dg/分(230℃、2.16Kg)のメルトフローレートを有するポリプロピレンのホモポリマー又はコポリマーであってもよい。
【0022】
本発明のPP−g−AA材料中のアクリル酸濃度は、典型的には約3重量パーセントから約10重量パーセントの範囲である。好ましくは、アクリル酸は、約4重量パーセントから約8重量パーセント、より好ましくは約5重量パーセントから約8重量パーセントの範囲で存在する。
【0023】
本発明の高メルトフローPP−g−AA材料は、プロピレンポリマー、例えばポリプロピレンベースポリオレフィンを、極性材料、特に、アルミニウム、銅、ステンレススチール等の金属、並びに、ナイロン、ポリエステル、ポリカーボネート、及び極性基を含有するその他のポリマー等の極性樹脂に付着させるのに有用である。例えば、本発明の高メルトフローPP−g−AA材料を含有する熱可塑性加硫物(TPV)又は他のポリプロピレンベースポリオレフィンでは、従来知られた材料を含有するTPV又は他のポリプロピレンベースポリオレフィンと比較して、オーバーモールディングプロセスにより生成された物体において極性樹脂基材上への付着が改善される。
【0024】
以下の説明は、「TPV」という用語に詳しくない者のために記載される。
【0025】
熱可塑性エラストマー(TPE)は、従来の熱硬化性ゴムの機能特性を示しながら繰り返し溶融することができ、したがって従来の熱可塑性樹脂製造機器での処理に適している。TPEの大部分は、一方に対し不溶性のゴム材料(エラストマー)を含む相と、流動性の熱可塑性材料相の2つの相を有する。ゴム材料は分散相として存在し、流動性の熱可塑性材料は連続相である。
【0026】
原則としてTPE中のゴムを架橋する必要はないが、より良好な耐薬品性、機械的特性、及び相分離のより良好な制御を得るためには架橋技術を使用することが効率的であることが実証されている。そのようなTPE組成物は、分割された領域への相分離を達成するために架橋反応及びプロセスが使用される場合、熱可塑性加硫物(TPV)と呼ばれる。熱可塑性の特性を維持するためには、ゴム相のみを架橋させることが不可欠である。TPV技術のより幅広く詳細な説明及び検討については、例えば、Rubber Chemistry and Technology、vol.69、pp476〜493、+1996のS.Abdou−Sabet、R.C.Puydak及びC.P.Raderを参照されたい。
【0027】
架橋プロセス及び化学薬品の選択は、処理要件、例えば処理温度での反応速度、エラストマーとの適合性、熱可塑性樹脂との副反応、効率(架橋剤の各分子により生成される架橋の数)、望ましくない反応がないこと、毒性及び危険性、色、並びに臭気により支配される。
【0028】
そのようなTPVの一例は、米国特許第3130535号に記載のEPDM/PPである。EPDM及びポリプロピレンは、内蔵ミキサー中で十分混合され、EPDMを架橋するために過酸化物が添加される。過剰の過酸化物及び/又は過度に高い処理温度及び/又は過度に反応性のポリマーは、ポリプロピレン相の分解及び/又はスコーチをもたらす。反対に、不十分な量の過酸化物及び/又は低すぎる処理温度及び/又は反応性に乏しいEPDMは、不十分な架橋をもたらす。
【0029】
本発明のPP−g−AA材料は、ポリプロピレンポリマーの極性材料に対する付着の改善に有用である。本明細書で使用される「ポリプロピレンポリマー」という用語は、ポリプロピレンホモポリマーだけでなく、プロピレンを大部分として含むポリマー、具体的にはプロピレンを50重量%以上、好ましくは80重量%以上含むポリマーをも意味する。後者のポリマーの例としては、ランダムコポリマー、例えばプロピレン−エチレンランダムコポリマー、交互コポリマー又はセグメントコポリマー、ブロックコポリマー、例えばプロピレン−エチレンブロックコポリマー、前記ポリプロピレン樹脂と1種又は複数種の他の熱可塑性樹脂(高密度ポリエチレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1等)とのポリマーブレンド等を挙げることができる。
【0030】
「ポリプロピレンホモポリマー」及び「ポリプロピレンポリマー」という用語はまた、長鎖分岐ポリプロピレンを含むように意図される。
【0031】
これらのポリプロピレンポリマーは、例えば、周期表の第IVb族、第Vb族、第VIb族、又は第VIII族の金属の1種又は複数種を通常含有する触媒を使用した触媒重合等、様々な方法により調製されるポリプロピレンポリマーのいずれであってもよい。これらの金属は通常、π配位でもσ配位でもよい少なくとも1種の配位子、典型的には酸化物、ハロゲン化物、アルコラート、エステル、エーテル、アミン、アルキル、アルケニル、及び/又はアリールを含む。これらの金属錯体は、遊離した形態であっても、又は基材上(典型的には活性塩化マグネシウム、塩化チタン(III)、アルミナ、若しくは酸化ケイ素上)に固定されていてもよい。これらの触媒は、重合媒体に可溶性であっても不溶性であってもよい。重合においては触媒を単独で使用しても、又はさらなる活性剤(典型的にはアルキル金属、ハロゲン化金属、ハロゲン化アルキル金属、酸化アルキル金属、若しくは金属アルキルオキサンであり、該金属は周期表の第Ia族、第IIa族、及び/又は第IIIa族元素である)を使用してもよい。活性剤は、さらなるエステル基、エーテル基、アミン基又はシリルエーテル基で都合よく修飾することができる。これらの触媒系は通常、フィリップス(Phillips)触媒、スタンダードオイルインディアナ(Standard Oil Indiana)触媒、チーグラー(−ナッタ)(Ziegler(−Natta))触媒、TNZ(デュポン(DuPont))触媒、メタロセン、又はシングルサイト触媒(SSC)と呼ばれる。
【0032】
これらのポリプロピレンは、エチレン、C〜C20−α−オレフィン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセン、C〜C20アルカンジエン、C〜C12シクロアルカンジエン、及びノルボルネン誘導体からなる群から選択される1種又は複数種のコモノマーを含む、ポリプロピレンランダムコポリマー、交互コポリマー若しくはセグメントコポリマー、又はブロックコポリマーであってもよく、プロピレン及びコモノマーの総量は100%である。
【0033】
本発明のPP−g−AAにより極性材料に対する付着が改善され得るプロピレンポリマーのさらなる例としては、プロピレン/イソブチレンコポリマー、プロピレン/ブタジエンコポリマー、プロピレン/シクロオレフィンコポリマー、プロピレンのエチレン及びジエン(ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、又はエチリデン−ノルボルネン等)とのターポリマー、プロピレン/1−オレフィンコポリマー(1−オレフィンはin situで生成)、並びにプロピレン/一酸化炭素コポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
他の例としては、ポリプロピレンと、プロピレン/エチレンコポリマー、プロピレン/ブチレンコポリマー、ポリエチレン(HDPE若しくはLDPE等)、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリ−4−メチルペンテン、又は交互若しくはランダムポリアルキレン/一酸化炭素コポリマーとのブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。これらのブレンドは、好ましくはブレンドの総重量に対し少なくとも50重量%のポリプロピレンを含む。
【0035】
ポリプロピレンポリマーとブレンドされる場合、PP−g−AAは通常、ポリプロピレンポリマー及びPP−g−AAの総重量を基準として、約2重量パーセントから約30重量パーセントの範囲で存在する。好ましくは、PP−g−AAは、約5重量パーセントから約25重量パーセント、より好ましくは約10重量パーセントから約20重量パーセントの範囲で存在する。
【0036】
さらなる詳細がなくても、当業者は、本明細書における説明を用いて、最も完全な範囲まで本発明を利用することができると考えられる。以下の実施例は、請求される発明の実践にあたり当業者への追加的な手引きとなるために含められる。提供される実施例は、本願の教示に寄与する業績の単なる代表例である。したがって、これらの実施例は決して、添付の請求項に定義される本発明を限定することを意図しない。
【実施例】
【0037】
プロセス条件及び生成物の性質を以下の表1に示す。樹脂はポリプロピレンホモポリマー(230℃でMFR4dg/分、2.16Kg)である。使用された過酸化物は、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン(Luperox101)である。アクリル酸は精製アクリル酸である。押出機は、92mm Werner&Pfleiderer二軸ZSK(9バレル構成(3240mm))である。ポリプロピレン添加はバレル1で行う。過酸化物及びアクリル酸の射出はバレル4で行う。吸引口はバレル7及び8にある。バレル温度(ゾーン1〜9)は、それぞれ、300/340/370/340/350/350/350/360/360°Fである。ダイは345°Fに設定する。
表1 プロセス条件/生成物の性質
【表1】

【0038】
表1のINV−1、INV−2、INV−3、及びINV−4は、本発明による実施例である。以下の実施例において、Polybond1001(MFR40dg/分)を比較のために使用する。
【0039】
PPホモポリマー、PPコポリマー、及びTPVの金属表面に対する付着
Polybond1001及びINV−4(10%及び20%)を、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー、及びTPVとブレンドし、30mm ZSK押出機を使用してコンパウンドした。コンパウンドを厚さ7〜10ミルのフィルムに圧縮成形した。フィルムを幅1インチの片に切断し、ヒートシーラー内で約400℃で5〜30秒間、アルミニウム及びステンレススチールの2つの片上に圧縮ラミネートした。ASTM D−429により180°剥離強度を測定し、線形インチあたりのポンドとしてデータを記録した。
【0040】
配合された生成物とアルミニウム又はステンレススチールのラミネート片の剥離強度を試験した。対照サンプルは付着促進剤を一切含まず、一方試験サンプルは、それぞれ10%又は20%のPOLYBOND1001(比較例)又はINV−4(本発明の実施例)を含んだ。
【0041】
TPVのPPコポリマー上への付着(Profax SG702)
射出オーバーモールディングによるTPVのポリプロピレンに対する付着のために、サンプルを成形前に3時間、90℃で乾燥させた。BOY15S射出成形機上でTPVコンパウンドを試験棒(6インチ×2.25インチ×0.075インチ)に射出成形した。試験試料を半分に切断し、Negri Bossi V−17−110FA射出成形機のゲートから分離した型穴に挿入し、ポリプロピレン(Profax SG702)を300〜330°Fで射出成形し型を埋めた。
【0042】
成形サンプルを試験片(6インチ×0.5インチ×0.075インチ)に切断し、2インチ/分のスピードでサンプルの付着を試験し、ピーク負荷(lb力/線形インチ)として記録した。
【0043】
ブレンド配合物は以下の成分を含んだ。ブレンド組成、並びにポリプロピレンポリマー/金属及びTPV/金属の剥離強度データを表2に列挙する。
【0044】
ポリプロピレンホモポリマー配合物は、スノコケミカルズ(Sunoco Chemicals)社製Sunoco PP D040W6(MFR4dg/分)(80%、90%及び100%)、Polybond1001又はINV−4(0%、10%、20%)、並びにケムチュラコーポレーション(Chemtura Corporation)社製Naugard B25プロセス安定化剤(0.2%)を含有した。ポリプロピレンコポリマー配合物は、バセル(Basell)社製ヘテロ相ポリプロピレンコポリマーHifax KA805A(80%、90%及び100%)、Polybond1001又はINV−4(0%、10%、20%)、並びにケムチュラコーポレーション(Chemtura Corporation)社製Naugard B25プロセス安定化剤(0.2%)を含有した。TPVベース配合物は、テクノールアペックス(Teknor Apex)社製ポリプロピレンベースTPV、Uniprene7100(硬度50及び87)(80%、90%及び100%)、Polybond1001又はINV−4(0%、10%、20%)、並びにケムチュラコーポレーション(Chemtura Corporation)社製Naugard B25プロセス安定化剤(0.2%)を含有した。
【0045】
ポリプロピレンホモポリマー及びTPVの付着
スノコ(Sunoco)社製PPホモポリマー(D040W6、MFR4dg/分)を厚さ7〜10ミルのフィルムに圧縮成形した。配合されたTPVから作製したフィルム上にこれらのフィルムをヒートシールし、ASTM D−429に従い剥離強度を測定し、線形インチあたりのポンドでデータを記録した。
【0046】
結果:金属との付着
付着促進剤を含まないポリプロピレンホモポリマーは、いずれの金属にも付着を示さなかった。アルミニウムの場合の剥離強度は、Polybond1001を本発明の付着促進剤と置き換えると、ゼロから0.66lb(10%)及び0.1から1.43(lb)(20%)に改善した。ステンレススチールの場合、Polybond1001配合生成物からは付着は見られなかったが、INV−4配合生成物に関しては、剥離強度が0.31lb及び1.62lb(10%及び20%)に改善した。
【0047】
ポリプロピレンコポリマー配合物の場合、付着促進剤なしではアルミニウムにもステンレススチールにも付着は見られず、Polybond1001及びINV−4を使用した場合はともに同様の付着であった。
【0048】
本発明の高フロー付着促進剤を有するTPV配合物は、Polybond1001と比較して、10%レベル及び20%レベルの両方において極めて改善された付着を示した。付着促進剤がない場合、TPVはアルミニウムにもステンレススチールにも付着を示さなかった。
【0049】
10%では、INV−4付着促進剤を使用した場合の剥離強度は、Polybond1001の場合よりも20倍高く、同様に20%では4〜7倍を超える高さであった。同様の付着を達成するのに必要な付着促進剤の量が著しく削減される、或いは同じ付着促進剤レベルでより高い付着を得ることができるため、この結果は非常に有意義である。
【0050】
データを以下の表2に列挙する。
【0051】
結果:ホモPP/TPVにおける付着
この場合、付着は、Polybond1001及びINV−4を配合したサンプル両方において非常に良好であった。良好な付着及び試験中に生じた凝集破壊により、フィルムは剥離することができなかった(つまりフィルムは剥離する前に破損した)。示したデータは、破壊(破損)時の最大値を示す。Polybond1001及びINV−4の性能は、表中の付着データに基づいては差別化できないが、試験破壊により示されるように付着は強固であった。
表2 ブレンド組成及び剥離強度データ
【表2】

【0052】
表3 ホモポリマーPP及びTPV剥離強度データ
【表3】

【0053】
射出オーバーモールディングによるポリプロピレンに対するTPVの付着
軟質材料(TPV等)の硬質ポリマー基材(ポリプロピレン、ナイロン、PC、PMMA、及びABS等)上への射出オーバーモールディングは、広範な民生用アプリケーションにわたり、硬質/軟質の組合せを提供するために非常に一般的となってきている。しかし、2種のポリマーが互いに付着しなければならず、したがって、特別なグレードの付着性TPV、又はTPVにブレンドされると剛性基材への付着を補助する添加剤を必要とする。
【0054】
以下の表4は、柔軟性が異なる2種のTPVのポリプロピレンに対する付着への、INV−4の効果を示す。最初のデータは、両方のPolybond生成物の添加がある程度付着を改善するが、INV−4はPolybond1001よりもやや良好に作用することを示唆している。射出オーバーモールディングプロセス中の付着はいくつかの要因に依存し、プロセスはまだ最適化されていない。
【0055】
AA−g−PPを含有するTPVの非極性剛性ポリプロピレンへの改善された付着に対する可能な説明としては、拡散性で比較的低分子量のポリプロピレン材料が界面に存在し、極性ポリアクリル酸成分による不連続相としての付着への影響が最小限であることを挙げることができる。これは、比較的低分子量の材料であるINV−4がPolybond1001よりも効果的であるという観察によって支持される傾向にある。
【表4】

【0056】
本発明が基づく原則から逸脱しない範囲で行うことができる多くの変更及び修正を鑑み、本発明の対象となる保護範囲の理解のために添付の請求項を参照されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機過酸化物を使用する反応押出によりアクリル酸でグラフトされたポリプロピレンを生成するための方法であって、前記ポリプロピレンが導入される点から下流側で前記アクリル酸及び前記過酸化物を押出機に供給するステップを含み、
前記アクリル酸は、1時間あたり25ポンドを超える供給量で添加され、前記過酸化物は、1時間あたり2ポンドを超える供給量で添加され、総供給量は、1時間あたり500ポンドを超え、
このように生成されたPP−g−AAは、1分間あたり約200dgを超えるメルトフローレートを有することを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
アクリル酸が、1時間あたり約25ポンドから約250ポンドの範囲の供給量で添加され、総供給量が、1時間あたり約500ポンドから5000ポンドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アクリル酸が、1時間あたり約50ポンドから約150ポンドの範囲の供給量で添加され、総供給量が、1時間あたり約1000ポンドから3000ポンドである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
過酸化物が、1時間あたり約2ポンドから約20ポンドの範囲の供給量で添加され、総供給量が、1時間あたり約500ポンドから5000ポンドである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記過酸化物が、1時間あたり約4ポンドから約15ポンドの範囲の供給量で添加され、総供給量が、1時間あたり約1000ポンドから3000ポンドである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
過酸化物が、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
過酸化物が、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
有機過酸化物を使用する反応押出によりアクリル酸でグラフトされたポリプロピレンを付着促進剤として使用するステップを含む、ポリプロピレンポリマーの極性材料に対する付着を増加させるための方法であって、
前記アクリル酸及び前記過酸化物は、前記ポリプロピレンが導入される点から下流側で押出機に供給され、
前記アクリル酸は、1時間あたり25ポンドを超える供給量で添加され、前記過酸化物は、1時間あたり2ポンドを超える供給量で添加され、総供給量は、1時間あたり500ポンドを超え、
このように生成されたPP−g−AAは、1分間あたり約200dgを超えるメルトフローレートを有する、前記方法。
【請求項9】
極性材料が金属である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
金属が、アルミニウム、銅、及びステンレススチールからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
極性材料が、極性基を含有するポリマーである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
極性材料が、ナイロン、ポリカーボネート、及びポリエステルからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
アクリル酸が、1時間あたり約25ポンドから約250ポンドの範囲の供給量で添加され、総供給量が、1時間あたり約500ポンドから5000ポンドである、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
アクリル酸が、1時間あたり約50ポンドから約150ポンドの範囲の供給量で添加され、総供給量が、1時間あたり約1000ポンドから3000ポンドである、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
過酸化物が、1時間あたり約2ポンドから約20ポンドの範囲の供給量で添加され、総供給量が、1時間あたり約500ポンドから5000ポンドである、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
過酸化物が、1時間あたり約4ポンドから約15ポンドの範囲の供給量で添加され、総供給量が、1時間あたり約1000ポンドから3000ポンドである、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
過酸化物が、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンである、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
過酸化物が、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
有機過酸化物を使用する反応押出によりアクリル酸でグラフトされたポリプロピレンを付着促進剤として使用するステップを含む、ポリプロピレンの熱可塑性加硫物に対する付着を増加させるための方法であって、
前記アクリル酸及び前記過酸化物は、前記ポリプロピレンが導入される点から下流側で押出機に供給され、
前記アクリル酸は、1時間あたり25ポンドを超える供給量で添加され、前記過酸化物は、1時間あたり2ポンドを超える供給量で添加され、総供給量は、1時間あたり500ポンドを超え、
このように生成されたPP−g−AAは、1分間あたり約200dgを超えるメルトフローレートを有する、方法。

【公表番号】特表2009−538371(P2009−538371A)
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512130(P2009−512130)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/012309
【国際公開番号】WO2007/139837
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(508201282)ケムチュア コーポレイション (69)
【Fターム(参考)】