説明

金属体表面へのパターン形成方法および金属体

【課題】 金属体表面にパターンを形成する方法において、パターン形成後の金属体表面の面一性を保ちつつ、より正確で審美性の高いパターン形成を行うことができる技術を提供する。
【解決手段】 、展延された多層状金属体14の表面に、階段状の外側から内側に近づくに従って、金属層12h,12g,12f,...のうちより下層の金属層に達するパターン形状の凹部16を形成する。凹部16は、階段状に形成され、最内側は表面から金属層12fの内部に達し、その外側は表面から金属層12fの上面まで達し、最外側は12gは金属層12gの上面まで達している。凹部16を形成するために除去した金属が内部に残り、それが最終的に得られるパターン部分18に生じてしまうことを効果的に抑制し、所望のパターンを安定して形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属体表面へのパターン形成方法および金属体に関する。
【背景技術】
【0002】
リングやペンダントなどの金属製の装身具などにおける金属体の表面に、文字、図形、記号などのパターンを形成する方法としては、たとえば以下の方法が知られている。すなわち、パターンを金属体表面に打刻、彫刻してパターンを形成する方法がある。あるいは金属体表面のパターン部分あるいは非パターン部分を腐食させることでパターンを形成する方法がある。これらの方法は、非パターン部分の金属体表面の高さと、パターン部分の金属体表面の高さとを異ならせることによって、金属体表面にパターンを形成するものである。
【0003】
また別の方法として、打刻などにより形成したパターン形状の凹部に、パターン形状に加工した材質の異なる金属をはめ込むか、あるいは材質の異なる金属を溶かして凹部内に流し込むことで金属体表面にパターンを形成する方法がある(特許文献1参照)。この方法は、表面にパターンが形成される金属体と、凹部にはめ込まれ、あるいは流し込まれてパターンを構成する金属との間の色や光沢の違いなどにより、金属体表面にパターンを形成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−52425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の色の違いなどによってパターンを形成する方法の場合、金属体表面の高さを異ならせることでパターンを形成する方法とは異なり、パターン形成後の金属体表面の高さは一定であり、面一性が保たれている。したがって、金属体表面の高さを異ならせることでパターンを形成する方法とは異なる審美性を有する。
しかしながら、パターン形状に加工した金属をはめ込む方法では、金属をパターン形状に加工する際に高い加工精度が要求される。また加工精度には限界があるため、金属体表面への審美性の高いパターン形成が困難である。また、金属を流し込む方法では、パターンが複雑な場合にはパターン形状凹部の細部にまで金属を流し込むことができず、正確なパターン形成が困難である。そのため、金属体表面への審美性の高いパターン形成が困難である。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、金属体表面にパターンを形成する方法において、パターン形成後の金属体表面の面一性を保ちつつ、より正確で審美性の高いパターン形成を行うことができる技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した従来技術の問題点を解決し、上述した目的を達成するために、本発明の金属体表面へのパターン形成方法は、材質の異なる複数の金属板を積層する積層工程と、積層された前記複数の金属板同士を接合して複数の金属層が積層された多層状金属体を形成する接合工程と、前記多層状金属体の表面を除去して、所定の金属板に達する所定のパターン形状の凹部を形成するパターン形成工程と、前記多層状金属体における非パターン部分の表面を押圧して前記凹部の表面高さと前記非パターン部分の表面高さをそろえる平面化工程とを有し、前記パターン形成工程は、階段状の外側から内側に近づくに従って前記複数の金属層のより下層の金属層に達するように前記凹部を形成する。
【0008】
好適には、本発明の金属体表面へのパターン形成方法は、前記金属層の硬度が高くなるに従って当該金属層が前記凹部を形成する段差が小さくなるように前記凹部を形成する。
好適には、本発明の金属体表面へのパターン形成方法は、前記金属層の硬度が高くなるに従って当該金属層が前記凹部を形成する前記階段状のステップ幅が短くなるように前記凹部を形成する。
好適には、本発明の金属体表面へのパターン形成方法は、前記複数の金属層の階段状のステップの下層に位置する層の硬度を基に算出した指標値を、前記凹部が形成された層の硬度で除算して比率を算出し、当該比率が大きくなるに従って当該ステップの面積が大きくなるように前記ステップの形状を決定するステップ形状決定工程をさらに有し、前記パターン形成工程は、前記ステップ形状決定工程で決定した形状になるように前記ステップを凹部を形成する。
【0009】
好適には、本発明の金属体表面へのパターン形成方法は、前記接合工程における金属板同士の接合は、前記金属板の拡散接合あるいはろう接により行われる。
好適には、本発明の金属体表面へのパターン形成方法は、前記多層状金属体を、前記金属板の積層方向に直交する所定方向を軸にしてねじる、ねじり工程をさらに含む。
好適には、本発明の金属体表面へのパターン形成方法は、前記パターンは、文字、記号、図形のいずれか1つを含む。
【0010】
本発明の金属体は、材質の異なる複数の金属板を積層する積層工程と、積層された前記複数の金属板同士を接合して複数の金属層が積層された多層状金属体を形成する接合工程と、前記多層状金属体の表面を除去して、階段状の外側から内側に近づくに従って前記複数の金属層のより下層の金属層に達するように所定のパターン形状の凹部を形成するパターン形成工程と、前記多層状金属体における非パターン部分の表面を押圧して前記凹部の表面高さと前記非パターン部分の表面高さをそろえる平面化工程とによって製造されている。
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、金属体表面にパターンを形成する方法において、パターン形成後の金属体表面の面一性を保ちつつ、より正確で審美性の高いパターン形成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る金属体の構成を示す概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態に係る金属体表面へのパターン形成方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】図3(A)〜(E)は、実施形態1に係る金属体表面へのパターン形成方法を説明するための概略断面図である。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態の変形例を説明するための図である。
【図5】図5は、本発明の第1実施形態のその他の変形例を説明するための図である。
【図6】図6は、本発明の第2実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同様の符号を付し、以下の説明において詳細な説明を適宜省略する。
【0014】
[第1実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る金属体10の構成を示す概略断面図である。
図1に示すように、実施形態2の金属体10は、材質の異なる複数の金属層12(12a〜12h)が積層された多層状の金属体である。積層された複数の金属層12はお互いが接合されて金属体10は多層状金属体14となっている。また、金属体10は、金属層12の積層方向に圧縮された圧縮部分と非圧縮部分とを有し、圧縮部分の表面と非圧縮部分の表面との境界において、金属層12が不連続となっている。具体的には、圧縮部分では金属層12hが露出し、非圧縮部分では、金属層12hと材質の異なる金属層12fが露出している。そして、非圧縮部分が文字、記号、図形などのパターン部分18を形成し、圧縮部分が非パターン部分17を形成している。また、圧縮部分の表面高さと非圧縮部分の表面高さとがそろっていて、金属体10の表面は平面となっている。
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る金属体表面へのパターン形成方法について説明する。
本実施形態では、パターン部分18の金属を除去し、非パターン部分17を押圧して金属体表面にパターンを形成した。
【0016】
図2は、本発明の実施形態に係る金属体表面へのパターン形成方法の流れを説明するためのフローチャートである。
図3(A)〜図3(E)は、本発明の実施形態に係る金属体表面へのパターン形成方法を説明するための概略断面図である。
【0017】
ステップST1:
まず、図3(A)に示すように、材質の異なる複数の金属板11(11a〜11h)を積層する。金属板11の材質としては、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、真鍮(黄銅)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、ステンレス、タンタル(Ta)、あるいはこれらの混合物などが用いられる。複数の金属板11はそれぞれ異なる材質からなるものであり、色や光沢の度合いなどの視覚的に認識される性質が異っている。金属板11の厚さは約0.3〜1.0mmである。なお、材質の異なる金属板11は、少なくとも2種類あればよい。
【0018】
ステップST2:
次に、図3(B)に示すように、積層された複数の金属板11同士を接合して複数の金属層12が積層された多層状金属体14を形成する。各金属板11(11a〜11h)によって金属層12(12a〜12h)が形成される。金属板11同士の接合は、たとえば金属板11を密着させ、金属板11の融点以下の温度条件で、金属板11の塑性変形ができるだけ生じない程度に加圧して、金属板11同士の接合面間に生じる原子の拡散を利用して接合する拡散接合により行われる。拡散接合を行う際の条件はたとえば以下の通りである。すなわち、500〜1200℃、200〜500kgf/cm2まで加熱・加圧して行う。なお、金属板11同士の接合は、ろう接により行ってもよい。
【0019】
ステップST3:
次に、図3(C)に示すように、多層状金属体14は所定厚さとなるまで展延される。具体的には、たとえば所定の間隔を開けて回転可能に設置された2つのローラ間に多層状金属体14を挿通して表面を押圧することにより、多層状金属体14は展延される。これにより、多層状金属体14は約0.5〜2.0mm程度にまで展延される。
【0020】
ステップST4:
次に、図3(D)に示すように、展延された多層状金属体14の表面に、所定のパターン形状の凹部16を形成する。凹部16の形成は、たとえばレーザー照射、彫刻、腐食(エッチング)などにより凹部形成領域の金属を除去することにより行われる。これにより、多層状金属体14の表面にパターン形状の凹部16が形成される。凹部16の表面には金属層12fが、非パターン部分17の表面には金属層12fと材質の異なる金属層12hが形成される。
【0021】
以下、凹部16の形成方法を詳細に説明する。
すなわち、図3(D)に示すように、展延された多層状金属体14の表面に、階段状の外側から内側に近づくに従って、金属層12h,12g,12f,...のうちより下層の金属層に達するパターン形状の凹部16を形成する。
図3および図4に示すように、凹部16は、階段状に形成され、最内側は表面から金属層12fの内部に達し、その外側は表面から金属層12fの上面まで達し、最外側は12gは金属層12gの上面まで達している。
上述したように凹部16を形成することで、凹部16を形成するために除去した金属が内部に残り、それが最終的に得られるパターン部分18に生じてしまうことを効果的に抑制し、所望のパターンを安定して形成することができる。
また、上述したように、階段状のパターンで凹部を形成することで、最終的に形成されるパターン部18と非パターン部17との境界のグラデーションが滑らかになり、優れたデザイン性を発揮できる。
【0022】
なお、上述した実施形態では、金属層12fの上面および金属層12gの上面に達する凹部を形成したが、これらの金属層の内部に食い込むように、あるいはこれらの金属層を貫通するように凹部を形成してもよい。
また、図5に示すように、一つのステップを形成するために段差を、複数の金属層に跨って形成してもよい。図5の例では、一つのステップstep1を形成する段差が、金属層12h,12g,12fを跨って形成されている。
さらには、図6に示すように、一つの金属層に複数の段差を形成してもよい。段差の数は、複数であれば特に限定されない。図6の例では、金属層12hに2つのステップStep1,2が形成されている。凹部16の平面側(図3の上から見た側)の形状は、ストライプ状、円形あるいは楕円形等である。
【0023】
ステップST5:
次に、図3(E)に示すように、多層状金属体14における凹部16の表面高さと非パターン部分17の表面高さとをそろえる。多層状金属体14の表面の平面化は、非パターン部分17の表面を押圧することにより行われる。多層状金属体14の表面の押圧は、たとえば所定の間隔を開けて回転可能に設置された2つのローラ間に多層状金属体14を挿通することにより行う。これにより、非パターン部分17の金属層12が圧縮されて陥没し、多層状金属体14の表面が面一となり、凹部16が形成されていた部分は金属層12fが露出したパターン部18となる。ここで、パターン部分18と非パターン部分17との境界において、金属層12が不連続となる。本実施形態では、パターン部18には、非パターン部分17の表面にある金属層12hと色などの異なる金属層12fが露出している。その結果、多層状金属体14の表面にパターンが形成される。
【0024】
以上説明した方法によって、金属体表面に所定のパターンが形成される。
【0025】
本実施形態の金属体表面へのパターン形成方法によれば、上述したように凹部16を形成することで、凹部16を形成するために除去した金属が内部に残り、それが最終的に得られるパターン部分18に生じてしまうことを効果的に抑制し、所望のパターンを安定して形成することができる。
また、本実施形態の金属体表面へのパターン形成方法によれば、上述したように階段状のパターンで凹部を形成することで、最終的に形成されるパターン部18と非パターン部17との境界のグラデーションが滑らかになり、優れたデザイン性を発揮できる。
また、本実施形態の金属体表面へのパターン形成方法によれば、レーザー照射によって凹部16を形成するため、より正確なパターン形成が可能となるため、より審美性の高いパターン形成を行うことができる。
【0026】
また、本実施形態の金属体表面へのパターン形成方法によれば、非パターン部分17の表面を除去して多層状金属体14の表面を平面化するとともに、パターン部分18と非パターン部分17との境界で金属層12を不連続とすることでパターンを形成している。そのため、パターン形状の凹部16に金属をはめ込む方法や金属を流し込む方法に比べて、パターン部分18と非パターン部分17との境界における整合性が高くなる。また、多層状金属体14の表面におけるより精度の高い平面性が得られる。よって、高い加工精度を必要とせずに、より審美性の高いパターン形成を行うことができる。
【0027】
材質の異なる金属をパターン形状の凹部16に流し込んでパターンを形成する場合には、流し込む金属とパターンが形成される金属との融点が所定程度異なる必要がある。そのため、使用可能な金属の材質が制限されてしまう。しかしながら、また、本実施形態の金属体表面へのパターン形成方法によれば、金属体表面へのパターン形成方法によれば、材質が異なる金属同士の融点が異なる必要はないため、使用可能な金属の材質が制限されない。
【0028】
また、本実施形態の金属体表面へのパターン形成方法によれば、パターン部分18において露出する金属と非パターン部分17において露出する金属との種類を変更することで、色や光沢の度合いなどの違いを自由に組み合わせることができるため、より審美性の高いパターン形成が可能となる。
【0029】
また、パターン形状の凹部16にパターン形状に加工した金属をはめ込む方法や金属を流し込む方法では、はめ込んだ金属あるいは流し込んだ金属が、使用時の摩擦、衝撃などにより凹部16から離脱、剥離してしまうおそれがあった。しかしながら、また、本実施形態の金属体表面へのパターン形成方法によれば、金属体10自体を構成する金属層12を金属体10の表面上で不連続とすることでパターンを形成しているため、パターンが離脱、剥離してしまうおそれがない。
【0030】
[第2実施形態]
図6は、本発明の実施形態に係る金属体表面へのパターン形成方法における図3(D)に示す凹部16の形成のその他の例について説明する。
本実施形態では、図4に示すように積層された複数の金属層の階段状の段差h(12h),h(12g)は、金属層12h,12gの硬度が高くなるに従って小さくなるように形成する。
なお、当該段差が複数層に跨る場合は、各層の硬度と、各層に跨る段差の大きさの割合を考慮して算出した硬度を基に、段差の大きさを決定する。すなわち、段差の大きさの割合が大きくなるにしたがって、その層の硬度が最終的に算出される硬度に大きく反映されるように、硬度を算出する。
本実施形態において、硬度としては、例えば、ビッカース硬さが用いられる。
【0031】
また、本実施形態では、上記積層された複数の金属層の階段状のステップのステップ幅s(12h),s(12g)は、金属層12h,12gの硬度が高くなるに従って短くなるように形成する。
このとき、各ステップに対応する段差が複数層に跨る場合は、各層の硬度と、各層に跨る割合を考慮して算出した硬度を基に、ステップ幅を決定する。すなわち、段差の大きさの割合が大きくなるにしたがって、その層の硬度が最終的に算出されるステップ幅に大きく反映されるように、硬度を算出する。
【0032】
本実施形態では、上述したように、凹部の段差およびステップ幅を決定することで、各金属層の硬度に応じて展延時に図3の横方向に移動する各金属層の量を、最終的に各金属層によって形成される凹部16の部分に均一性を持たせるように規定することができる。すなわち、展延時において、硬度が小さい金属層ほど、図3中横方向に広く移動する。そのため、上述したように金属層の硬度に応じて、段差の大きいさとステップ幅を決定することで、展延後に各層によって形成される凹部16の内径を均一に近づけることができる。
【0033】
[第3実施形態]
本実施形態では、例えば、図2に示すステップST1の前に、以下に示すステップ形状決定工程を行う。
すなわち、ステップ形状決定工程では、複数の金属層の階段状のステップの下層に位置する層の硬度の平均値(指標値)を、前記凹部が形成された層の硬度で除算して比率を算出する。
そして、当該比率が大きくなるに従って面積(ステップの幅)が大きくなるように、凹部16を構成するステップの形状を決定する。
このとき、各ステップの下層に複数層がある場合に、各層の硬度と、下層の全体の厚みにおける各層の厚みの割合を考慮して算出した硬度を基に、上記硬度(指標値)を算出する。すなわち、厚みの割合が大きくなるにしたがって、その層の硬度が最終的に算出される硬度に大きく反映されるように、硬度を算出する。
【0034】
そして、図2に示すステップST4では、上記ステップ形状決定工程で決定した形状になるように凹部16を形成する。
【0035】
すなわち、展延時において各金属層が図3の横方向(厚み方向と直交する方向)に延びる量は、当該金属層の下層に位置する金属層の硬度と密接に関係する。下層の金属層に対して硬度が小さい金属層は、図3の横方向に延びる量は多くなる。
本実施形態では、上述したように凹部16を形成すると、ステップST5で展延したときに、各層が図3の横方向(厚み方向と直交する方向)に延びる量が多い(硬度が小さい)金属層ほど、ステップの面積を大きくするので、延びた後の凹部16を形成する領域のサイズを、他の層と均一に近づけることができる。
【0036】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【0037】
例えば、上述の実施形態1において多層状金属体14が展延される前に、多層状金属体14を金属層12の積層方向に直行する所定方向を軸にして、所定量だけねじるようにしてもよい。これによれば、多層状金属体14の表面に複数の金属層12からなる層状模様が現れるため、より審美性を高めることができる。この多層状金属体14に上述の方法によりパターンを形成した場合には、パターン部分18と非パターン部分17との境界において表面の模様が不連続となることで、パターンが視覚的に認識される。
【0038】
また、多層状金属体14は、いわゆる杢目金であってもよい。ここで、木目金には、色などの異なる金属を複数枚積層したものに、所定の文様などのパターンを掘った金属体、いわゆるグリ彫りの施された金属体を含む。
【0039】
上述の各実施形態に係る金属体および金属体表面へのパターン形成方法は、リングやペンダント、ネックレス、イヤリング、カフス、ブローチ、タイタック、バングル、バックル、チョーカー、ブレスレットなどの金属製装身具の他に、ナイフ、刀剣、スプーン、貴金属製宝石箱、貴金属製の花瓶および水盆、コンパクト、時計、喫煙用具などに適用することができる。
【0040】
なお、各図において、金属板11の枚数、金属層12の層数は8枚の場合を示しているが特にこれに限定されない。金属板11、金属層12の厚さ、積層枚数、多層状金属体14の展延後の厚さなどは、パターンが形成された金属体10が最終的に加工されるものに応じて適宜変更することができる。
【0041】
また、各図において、金属層12の圧縮部分と非圧縮部分とが完全に切断されているように示されている。同様に、金属層12のずれ部分と非ずれ部分とが完全に切断されているように示されている。しかしながら、各図は本発明を模式的に示しているものである。したがって、本発明は図示された形状に限定されるものではなく、圧縮部分と非圧縮部分とが、あるいはずれ部分と非ずれ部分とが、それぞれ連結された状態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
11、11a〜11h 金属板、 12、12a〜12j
金属層、 14 多層状金属体、 16 凹部、 17 非パターン部分、 18 パターン部分



【特許請求の範囲】
【請求項1】
材質の異なる複数の金属板を積層する積層工程と、
積層された前記複数の金属板同士を接合して複数の金属層が積層された多層状金属体を形成する接合工程と、
前記多層状金属体の表面を除去して、所定の金属板に達する所定のパターン形状の凹部を形成するパターン形成工程と、
前記多層状金属体における非パターン部分の表面を押圧して前記凹部の表面高さと前記非パターン部分の表面高さをそろえる平面化工程と
を有し、
前記パターン形成工程は、
階段状の外側から内側に近づくに従って前記複数の金属層のより下層の金属層に達するように前記凹部を形成する
金属体表面へのパターン形成方法。
【請求項2】
前記金属層の硬度が高くなるに従って当該金属層が前記凹部を形成する段差が小さくなるように前記凹部を形成する
請求項1に記載の金属体表面へのパターン形成方法。
【請求項3】
前記金属層の硬度が高くなるに従って当該金属層が前記凹部を形成する前記階段状のステップ幅が短くなるように前記凹部を形成する
請求項2に記載の金属体表面へのパターン形成方法。
【請求項4】
前記複数の金属層の階段状のステップの下層に位置する層の硬度を基に算出した指標値を、前記凹部が形成された層の硬度で除算して比率を算出し、当該比率が大きくなるに従って当該ステップの面積が大きくなるように前記ステップの形状を決定するステップ形状決定工程
をさらに有し、
前記パターン形成工程は、前記ステップ形状決定工程で決定した形状になるように前記ステップを凹部を形成する
請求項3に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記接合工程における金属板同士の接合は、前記金属板の拡散接合あるいはろう接により行われる
請求項3または請求項4に記載の金属体表面へのパターン形成方法。
【請求項6】
前記多層状金属体を、前記金属板の積層方向に直交する所定方向を軸にしてねじる、ねじり工程をさらに含む
請求項3または請求項4に記載の金属体表面へのパターン形成方法。
【請求項7】
前記パターンは、文字、記号、図形のいずれか1つを含む
請求項3または請求項4に記載の金属体表面へのパターン形成方法。
【請求項8】
材質の異なる複数の金属板を積層する積層工程と、
積層された前記複数の金属板同士を接合して複数の金属層が積層された多層状金属体を形成する接合工程と、
前記多層状金属体の表面を除去して、階段状の外側から内側に近づくに従って前記複数の金属層のより下層の金属層に達するように所定のパターン形状の凹部を形成するパターン形成工程と、
前記多層状金属体における非パターン部分の表面を押圧して前記凹部の表面高さと前記非パターン部分の表面高さをそろえる平面化工程と
によって製造された金属体。
【請求項9】
前記金属体は、杢目金であることを特徴とする
請求項8に記載の金属体。
【請求項10】
前記パターンは、文字、記号、図形のいずれか1つを含む
ことを特徴とする請求項9に記載の金属体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−10287(P2013−10287A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145208(P2011−145208)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【特許番号】特許第4808288号(P4808288)
【特許公報発行日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(504235137)株式会社杢目金屋 (4)
【Fターム(参考)】