説明

金属屑回収装置

【課題】摩擦攪拌接合用工具を用いた亀裂の補修により発生した金属屑を回収することができる金属屑回収装置を提供する。
【解決手段】液体中で、部材の表面にある亀裂に対して先端部を押し付けて回転させることで、摩擦攪拌接合により亀裂を補修する摩擦攪拌接合用工具を備える金属屑回収装置であって、前記摩擦撹拌接合用工具の回転部に設けられた撹拌翼と、前記摩擦撹拌接合用工具の周囲を囲みつつ前記摩擦撹拌接合用工具の先端部側が開口する開口部を有し、前記摩擦撹拌接合用工具の先端部を前記部材に押し付けた時に前記開口部が前記部材の表面に当接して前記摩擦撹拌接合用工具の全周囲を囲む空間を形成するとともに、前記空間外に前記亀裂を補修した時に発生する金属屑を通過させない部材で構成された囲い隔壁と、前記囲い隔壁により囲まれた空間内で発生する前記金属屑を回収する金属屑回収手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、液体ナトリウム等の液体中で、部材の表面に生じている亀裂の補修を行う摩擦攪拌接合用工具の金属屑回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
部材の表面に生じている亀裂の補修を行う亀裂の補修方法として、摩擦撹拌溶接方法がある。この摩擦撹拌溶接方法は、工具と加工物との間に発生した熱や、変形されて混合される加工物材料から塑性流動の結果として生じる熱などの摩擦熱を利用し、亀裂の補修を行う方法である。ここで発生した摩擦熱は、加工品材料を軟化させ、それらを混ぜ合わせることを可能とし、亀裂を補修する。
【0003】
このような摩擦撹拌溶接方法や摩擦撹拌溶接工具として、下記特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された補修方法は、液体ナトリウム中で回転工具を亀裂に押し付けて回転させることにより、摩擦攪拌接合によって亀裂を補修するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−083267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の亀裂の補修装置は、液体ナトリウム中で回転工具を加工物の亀裂に押し付けて回転させることで、摩擦攪拌接合により亀裂を補修している。この場合、補修部は、液体ナトリウムの残留もなく、加工物と同等の引張強度を得られるものの、補修部の表面に摩擦攪拌接合による施工に伴ってバリなどの金属屑が発生してしまう。補修部の周囲に発生した金属屑は、加工物の使用中に、各種機器の障害の要因となるおそれがある。そのため、この金属屑を回収することが望まれているが、液体ナトリウム中は、視認性も悪く、切削した金属屑を回収することは容易ではない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、摩擦攪拌接合用工具を用いた亀裂の補修により発生した金属屑を回収することができる金属屑回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の金属屑回収装置は、液体中で、部材の表面にある亀裂に対して先端部を押し付けて回転させることで、摩擦攪拌接合により亀裂を補修する摩擦攪拌接合用工具を備える金属屑回収装置であって、前記摩擦撹拌接合用工具の回転部に設けられた撹拌翼と、前記摩擦撹拌接合用工具の周囲を囲みつつ前記摩擦撹拌接合用工具の先端部側が開口する開口部を有し、前記摩擦撹拌接合用工具の先端部を前記部材に押し付けた時に前記開口部が前記部材の表面に当接して前記摩擦撹拌接合用工具の全周囲を囲む空間を形成するとともに、前記空間外に前記亀裂を補修した時に発生する金属屑を通過させない部材で構成された囲い隔壁と、前記囲い隔壁により囲まれた空間内で発生する前記金属屑を回収する金属屑回収手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、金属回収装置の囲い隔壁が、摩擦撹拌接合用工具の全周囲を囲む空間を形成しているため、摩擦撹拌接合時に発生する金属屑は囲い隔壁内で閉じ込められるとともに、撹拌翼により流動する液体ナトリウムと共に囲い隔壁の外周である隔壁側に向かって移動する。このため、囲い隔壁に囲まれた空間内で発生する前記金属屑を、金属屑回収手段により回収することができる。
【0009】
本発明の金属屑回収装置の前記金属屑回収手段は、前記摩擦撹拌接合用工具の先端部を貫通させつつ前記囲い隔壁の開口部を塞ぐ底板部材であることが、好ましい。
【0010】
この構成によれば、囲い隔壁の外周である隔壁側に向かって移動した金属屑は、金属屑回収手段である底板部材の上に滞留するので、金属屑を回収することが容易にできる。
【0011】
本発明の金属屑回収装置の前記金属屑回収手段は、前記囲い隔壁の内側において前記囲い隔壁と所定間隔をおいて筒状に形成され、前記摩擦撹拌接合用工具を囲むように設けられ、前記囲い隔壁側に前記液体および前記金属屑を通過させる部材で構成された内側隔壁と、前記囲い隔壁の開口部側において、前記囲い隔壁の端部と前記内側隔壁の端部との間を連通して設けられ、前記所定間隔の外に前記液体を通過させる一方で前記金属屑は通過させない部材で構成された金属屑遮蔽壁と、を備えることが、好ましい。
【0012】
この構成によれば、金属回収装置の囲い隔壁が、摩擦撹拌接合用工具の全周囲を囲む空間を形成しているため、摩擦撹拌接合時に発生する金属屑は囲い隔壁内で閉じ込められるとともに、撹拌翼により流動する液体ナトリウムと共に囲い隔壁の外周である隔壁側に向かって移動する。このため、囲い隔壁の外周である隔壁側に向かって移動した金属屑は、金属屑回収手段を構成する内側隔壁を通過した後に金属屑遮蔽壁の上に滞留するので、金属屑を確実に回収することができる。
【0013】
本発明の金属屑回収装置の前記金属屑回収手段は、前記囲い隔壁が前記液体を通過させる一方で前記金属屑は通過させない部材で構成され、前記金属屑が絡まる態様で前記囲い隔壁内に前記金属屑を取り込むことが、好ましい。
【0014】
この構成によれば、囲い隔壁が、摩擦撹拌接合用工具の全周囲を囲む空間を形成しているため、摩擦撹拌接合時に発生する金属屑は囲い隔壁内で閉じ込められるとともに、撹拌翼により流動する液体ナトリウムと共に囲い隔壁の外周である隔壁側に向かって移動する。このため、囲い隔壁の外周である隔壁側に向かって移動した金属屑は、金属屑回収手段である隔壁に絡まる態様で捕捉されるので、金属屑を回収することができる。
【0015】
本発明の金属屑回収装置の前記金属屑回収手段は、前記囲い隔壁により囲まれた空間内の前記液体を吸引する吸引手段を有することが、好ましい。
【0016】
この構成によれば、摩擦撹拌接合時に発生する金属屑を他の金属屑回収手段の吸引手段であるポンプで吸引するので、確実に金属屑を回収することができる。これによれば、回収した金属屑を液体ナトリウム中に残存させることなく液体ナトリウム中から持ち出すことが容易にできる。
【0017】
本発明の金属屑回収装置の前記液体は、液体ナトリウムであることが、好ましい。
【0018】
この構成によれば、液体ナトリウム中で摩擦攪拌接合により亀裂を補修した場合でも金属屑を回収することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の摩擦撹拌接合用工具の金属屑回収装置によれば、摩擦攪拌接合用工具を用いた亀裂の補修により発生した金属屑を回収することができる金属屑回収装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本実施例1に係る金属屑回収装置の概略構成図である。
【図2】図2は、本実施例2に係る金属屑回収装置の概略構成図である。
【図3】図3は、本実施例2に係る金属屑回収装置の下面図である。
【図4】図4は、本実施例2に係る金属屑回収装置の下面図である。
【図5】図5は、本実施例3に係る金属屑回収装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る金属屑回収装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に記載した内容により限定されるものではない。また、以下に記載した下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに以下に記載した下記実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0022】
以下の実施例では、高速増殖炉や次世代実証炉のプラント配管等に用いられる摩擦撹拌接合用工具の金属屑回収装置を例にして説明する。プラント配管中を流れる液体としては液体ナトリウムを対象としている。なお、これに限定されるものではなく、液体ナトリウム冷却炉の原子炉以外の補修対象設備にも適用することができ、また、液体ナトリウム以外の液体金属や水などの液体中での亀裂補修にも適用することができる。例えば、軽水炉の原子炉容器内の水中で原子炉容器の内面や炉心槽の外面の亀裂補修を行う場合などにも適用することができる。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の実施例1に係る摩擦撹拌接合用工具の金属屑回収装置の概略構成図である。以下、「摩擦撹拌接合用工具の金属屑回収装置」を「金属屑回収装置」という。
【0024】
本実施例1において、図1に示すように、金属屑回収装置20は、摩擦攪拌接合用工具10を備えている。摩擦攪拌接合用工具10は、液体ナトリウムなどの液体中で、部材31の表面32に生じた亀裂33を、摩擦攪拌接合(FSW:Friction Stir Welding)によって補修するためのものである。
【0025】
摩擦攪拌接合用工具10は、図示しない駆動装置の出力軸に保持される回転部11と、この回転部11の先端部に装着されるヘッド部12とを有している。
【0026】
ヘッド部12は、回転部11の回転軸心Zを中心とする円柱形状をなし、回転部11の先端部に一体に固定されてなり、この回転部11と共に回転可能となっている。このヘッド部12は、円柱形状の先端部の面15に、回転軸心Z上で突出したピン部13を有している。ピン部13は、ヘッド部12と同心の円錐台形状をなし、このヘッド部12の先端部に突出するように一体に固定されてなり、ヘッド部12と共に回転可能となっている。
【0027】
図1に示すように、摩擦撹拌接合用工具10で亀裂33を補修する場合、この摩擦撹拌接合用工具10は、部材31の表面32に対して回転軸心Zを垂直に配置し、当該回転軸心Zを中心に矢印Bの方向に回転部11を回転させる。そして亀裂33に対して摩擦撹拌接合用工具10の先端部(ヘッド部12)のピン部13を押し付けると、亀裂33において、部材31と摩擦攪拌接合用工具10のピン部13との摩擦により、部材31が塑性流動化し、摩擦攪拌接合用工具10のピン部13が亀裂33の深さ方向へと部材31内に入り込んでいき、摩擦攪拌接合用工具10のヘッド部12の面15が部材31の表面32に当接する。そして、塑性流動化された範囲で部材31が攪拌されることにより、亀裂33が接合される。更に、部材31の表面32に倣うようにヘッド部12を矢印Aの方向に移動させることで、順次、部材31が塑性流動化されて攪拌され、亀裂33全体が摩擦攪拌接合によって補修される。そして、摩擦攪拌接合による施工においては、亀裂33の補修に伴ってバリなどのように薄膜の金属屑34が発生することがある。
【0028】
本実施例1の金属屑回収装置20は、上記金属屑34を回収するためのものである。図1に示すように、金属屑回収装置20は、撹拌翼14と、囲い隔壁30と、金属屑回収手段である底板部材24とを有して構成されている。
【0029】
撹拌翼14は、上述した摩擦攪拌接合用工具10における回転部11に設けられている。撹拌翼14は、回転部11の外周に突出した板片状のもので、回転軸心Zの延在方向に長尺に形成され、かつ回転軸心Zに対して傾斜または湾曲して形成されている。
【0030】
囲い隔壁30は、保持部21と、隔壁23とで構成されている。保持部21は、回転部11の基端部側を回転可能に保持するものである。保持部21は、回転部11の回転軸心Zを中心とする円形状の板片状をなし、かつ回転軸心Zに対して自身の板面が垂直に設けられている。このため、保持部21は、摩擦撹拌接合用工具10によって亀裂33を補修するとき、部材31の表面32に対して自身の板面がほぼ平行に配置される。この保持部21は、例えば、金属板やプラスチック板等のように、摩擦攪拌接合により部材31の表面32の亀裂33を補修した時に発生する金属屑34を通過させない部材で構成されている。
【0031】
隔壁23は、回転部11の回転軸心Zを中心とする円筒形状に形成されている。隔壁23は、基端部側が保持部21の外周部分の下面22に接合することで閉塞されているとともに、先端部側が開口した開口部を有している。また隔壁23は、摩擦攪拌接合により部材31の表面32の亀裂33を補修した時に発生する金属屑34を通過させない部材で構成されている。囲い隔壁30及び隔壁23の部材としては、例えば、ワイヤーメッシュデミスターのような部材、三次元網目構造のフィルタ、不織布のような部材、金属メッシュ網、多孔性板等を挙げることができる。
【0032】
このように、囲い隔壁30は、全体として、回転部11の先端部側が開口した開口部を有する逆円筒籠状に形成され、摩擦撹拌接合用工具10の全周囲を囲む空間を形成している。さらに、囲い隔壁30は、摩擦攪拌接合により部材31の表面32の亀裂33を補修した時に発生する金属屑34を通過させない部材で構成されている。
【0033】
金属屑回収手段である底板部材24は、回転部11の回転軸心Zを中心とし、隔壁23の先端部に固定されることで、隔壁23の開口部を塞ぐように円形状の薄い板片として構成されている。底板部材24は、その中心に摩擦撹拌接合用工具10の先端部(ヘッド部12)を貫通させる貫通孔を有し、その他の部分で隔壁23の開口部を塞ぐように設けられている。この底板部材24は、回転軸心Zに対して略垂直に設けられている。つまり、摩擦撹拌接合用工具10によって部材31の表面32の亀裂33を摩擦攪拌接合する際、図1において、部材31の表面32と略平行な状態で設けられる。
【0034】
本実施例1においては、上述した摩擦撹拌接合用工具10の摩擦攪拌接合によって亀裂33を補修する時、摩擦撹拌接合用工具10の回転部11に固定されている撹拌翼14が先端部(ヘッド部12)と共に回転する。この撹拌翼14の回転により摩擦撹拌接合用工具10周囲の液体ナトリウムは撹拌されて旋回流のように流動する。さらに、本実施例1においては、金属屑回収装置20の囲い隔壁30が、摩擦撹拌接合用工具10の全周囲を囲む空間を形成している。このため、先端部(ヘッド部12)周辺で発生した金属屑34は、当該金属屑34を通過させない囲い隔壁30内で閉じ込められるとともに、流動する液体ナトリウムと共に囲い隔壁30の外周である隔壁23側に向かって移動していく。そして金属屑34は、隔壁23に衝突した後、その下方の底板部材24の上に落下し、底板部材24の上に滞留する。なお液体ナトリウムは、矢印Cで示したように隔壁23を通過して隔壁23に囲まれた空間(囲い隔壁30)の外へ出て行くことになる。そして、液体ナトリウム中から摩擦攪拌接合用工具10及び金属屑回収装置20を引き上げることで、底板部材24の上に滞留した金属屑34を液体ナトリウム中に残存させることなく液体ナトリウム中から持ち出すことができる。
【0035】
なお、囲い隔壁30の保持部21および隔壁23を通過しない金属屑34の大きさとしては、例えば0.1mm以上より大きいものを想定しており、保持部21および隔壁23は、この大きさの金属屑34を通過させないように設計されている。
【0036】
このように、本実施例1の金属屑回収装置20は、摩擦撹拌接合用工具10の回転部11に設けられた撹拌翼14と、摩擦撹拌接合用工具10の周囲を囲みつつ摩擦撹拌接合用工具10の先端部側が開口する開口部を有し、摩擦撹拌接合用工具10の先端部(ヘッド部12)を部材31に押し付けた時に、開口部が部材31の表面に当接して摩擦撹拌接合用工具10の全周囲を囲む空間を形成するとともに、空間外に亀裂を補修した時に発生する金属屑34を通過させない部材で構成された囲い隔壁30と、囲い隔壁30により囲まれた空間内で発生する金属屑34を回収する金属屑回収手段と、を有する。
【0037】
この金属屑回収装置20によれば、金属回収装置20の囲い隔壁30が、摩擦撹拌接合用工具10の全周囲を囲む空間を形成しているため、摩擦撹拌接合時に発生する金属屑34は囲い隔壁30内で閉じ込められるとともに、撹拌翼14により流動する液体ナトリウムと共に囲い隔壁30の外周である隔壁23側に向かって移動する。このため、囲い隔壁30に囲まれた空間内で発生する金属屑34を、金属屑回収手段により回収することができる。
【0038】
また、本実施例1の金属屑回収装置20では、金属屑回収手段は、摩擦撹拌接合用工具10の先端部(ヘッド部12)を貫通させつつ囲い隔壁30の開口部を塞ぐ底板部材24である。
【0039】
この金属屑回収装置20によれば、囲い隔壁30の外周である隔壁23側に向かって移動した金属屑34は、金属屑回収手段である底板部材24の上に滞留するので、金属屑34を回収することができる。
【0040】
なお、底板部材24は、外周側の隔壁23から内側の回転軸心Zに向かって上方に略円錐形状に傾斜するように形成してもよい。このように構成することにより、底板部材24の上に滞留した金属屑34を液体ナトリウム中に残存させることなく液体ナトリウム中から持ち出すことができる。
【0041】
ところで、本実施例1においては、他の金属屑回収手段として、吸引手段を備えていてもよい。吸引手段は、金属屑34を捕集するフィルタ25と、ポンプ26とを有している。フィルタ25は、液体ナトリウムを通過させる一方、上記金属屑34を通過させないものである。ポンプ26は、保持部21に形成された吸引口29から保持部21の内側面22と隔壁23とに囲まれた空間内にある液体ナトリウムを、金属屑34と共に吸引するものである。フィルタ25は、吸引口29とポンプ26との間の吸引経路27に設けられている。
【0042】
このように、吸引手段を備えた金属屑回収装置20によれば、摩擦撹拌接合時に発生する金属屑34を吸引手段であるポンプ26で吸引し、フィルタ25で捕集するので、確実に金属屑34を回収することができる。
【0043】
なお、本実施例1においては、吸引手段を備えた場合、囲い隔壁30に囲まれた空間内の液体ナトリウムをポンプ26で吸引して金属屑34を回収することができることから、底板部材24を設けなくてもよい。
【実施例2】
【0044】
図2は、本発明の実施例2に係る摩擦撹拌接合用工具の金属屑回収装置の概略構成図である。なお、摩擦攪拌接合用工具10は、上述した実施例1と同様であるため、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。図3及び図4は、本実施例2の金属屑回収装置(図2)の下面図である。
【0045】
本実施例2において、図2に示すように、金属屑回収装置20は、撹拌翼14と、囲い隔壁30と、内側隔壁42と、金属屑遮蔽壁43とを有して構成されている。また囲い隔壁30と、内側隔壁42と、金属屑遮蔽壁43とで金属屑回収手段を構成している。
【0046】
撹拌翼14は、上述した摩擦攪拌接合用工具10における回転部11に設けられている。撹拌翼14は、回転部11の外周に突出した板片状のもので、回転軸心Zの延在方向に長尺に形成され、かつ回転軸心Zに対して傾斜または湾曲して形成されている。
【0047】
囲い隔壁30は、保持部21と、隔壁41とで構成されている。保持部21は、回転部11の基端部側を回転可能に保持するものである。保持部21は、回転部11の回転軸心Zを中心とする円形状の板片状をなし、かつ回転軸心Zに対して自身の板面が垂直に設けられている。このため、保持部21は、摩擦撹拌接合用工具10によって亀裂33を補修するとき、部材31の表面32に対して自身の板面がほぼ平行に配置される。この保持部21は、例えば、金属板やプラスチック板等のように、摩擦攪拌接合により部材31の表面32の亀裂33を補修した時に発生する金属屑34を通過させない部材で構成されている。
【0048】
隔壁41は、回転部11の回転軸心Zを中心とする円筒形状に形成されている。隔壁41は、基端部側が保持部21の外周部分の下面22に接合することで閉塞されているとともに、先端部側が開口した開口部を有している。また隔壁41は、摩擦攪拌接合により部材31の表面32の亀裂33を補修した時に発生する金属屑34及び液体ナトリウムを通過させない部材で構成されている。隔壁41の部材は、例えば、液体を通過させない金属板やプラスチック板等を挙げることができる。
【0049】
このように、囲い隔壁30は、全体として、回転部11の先端部側が開口した開口部を有する逆円筒籠状に形成され、摩擦撹拌接合用工具10の全周囲を囲む空間を形成している。さらに、囲い隔壁30は、摩擦攪拌接合により部材31の表面32の亀裂33を補修した時に発生する金属屑34を通過させない部材で構成されている。
【0050】
内側隔壁42は、回転部11の回転軸心Zを中心とする円筒形状に形成されている。内側隔壁42は、基端部側が保持部21の外周部分の下面22に接合することで閉塞されているとともに、先端部側が開口した開口部を有している。内側隔壁42は、隔壁41の内側に位置し、隔壁41と内側隔壁42とで二重筒を形成している。また内側隔壁42は、液体ナトリウムと共に金属屑34を通過させる部材で構成されている。内側隔壁42の部材としては、ワイヤーメッシュデミスターのような部材、金属メッシュ網、多孔性板、パンチングメタル等を挙げることができる。また内側隔壁42は、内側から外側へ一度通過した金属屑34を逆の内側方向へ通過させない構成となっている。金属屑34を一方方向だけに通過させる構造としては、例えば金属メッシュ網の編み目をミクロに見た場合、ベンチュリー管のように、金属屑34が通過する方向(液体ナトリウムの流れ)の上流側が広く、下流側が狭くなっている構造が挙げられる。また例えば、パンチングメタルの穴形状をミクロに見た場合、金属屑34が通過する方向(液体ナトリウム流れ)の上流側から下流側にかけてすり鉢形状である構造が挙げられる。なお内側隔壁42の構成はこれに限定されることはない。
【0051】
金属屑遮蔽壁43は、隔壁41の開口部側において、隔壁41の端部と内側隔壁42の端部との間を連通して設けられている。つまり金属屑回収手段である、支持部21と隔壁41と内側隔壁42と金属屑遮蔽壁43とで囲まれた空間44を形成している。金属屑遮蔽壁43は、液体ナトリウムを通過させる一方で金属屑34は通過させない部材で構成されている。金属屑遮蔽壁43の部材は、例えば、ワイヤーメッシュデミスターのような部材、三次元網目構造のフィルタ、不織布のような部材、金属メッシュ網、多孔性板等を挙げることができる。
【0052】
本実施例2においては、上述した摩擦撹拌接合用工具10の摩擦攪拌接合によって亀裂33を補修する時、摩擦撹拌接合用工具10の回転部11に固定されている撹拌翼14が先端部(ヘッド部12)と共に回転する。この撹拌翼14の回転により摩擦撹拌接合用工具10周囲の液体ナトリウムは撹拌されて旋回流のように流動する。さらに、本実施例2においては、金属屑回収装置20の囲い隔壁30と内側隔壁42とが、摩擦撹拌接合用工具10の全周囲を囲む空間を形成している。このため、先端部(ヘッド部12)周辺で発生した金属屑34は、当該金属屑34を通過させない囲い隔壁30内で閉じ込められるとともに、流動する液体ナトリウムと共に内側隔壁42を通過して囲い隔壁30の外周である隔壁41側に向かって移動していく。そして金属屑34は、内側隔壁42を通過した後に金属屑遮蔽壁43の上に滞留する。つまり金属屑34は、金属屑回収手段である、保持部21と隔壁41と内側隔壁42と金属屑遮蔽壁43とで囲まれた空間44内に滞留することになる。そして、液体ナトリウム中から摩擦攪拌接合用工具10及び金属屑回収装置20を引き上げることで、保持部21と隔壁41と内側隔壁42と金属屑遮蔽壁43とで囲まれた空間44内に滞留した金属屑34を液体ナトリウム中に残存させることなく液体ナトリウム中から持ち出すことができる。なお液体ナトリウムは、矢印Dで示したように内側隔壁42を通過した後、金属屑遮蔽壁43を通過して摩擦撹拌接合用工具10の全周囲を囲む空間の外へ出て行くことになる。
【0053】
なお、囲い隔壁30の保持部21および隔壁41を通過しない金属屑34の大きさとしては、例えば0.1mm以上より大きいものを想定しており、保持部21および隔壁41は、この大きさの金属屑34を通過させないように設計されている。
【0054】
このように、本実施例2の金属屑回収装置20は、摩擦撹拌接合用工具10の回転部11に設けられた撹拌翼14と、摩擦撹拌接合用工具10の周囲を囲みつつ摩擦撹拌接合用工具10の先端部側が開口する開口部を有し、金属屑34を通過させない部材で構成された囲い隔壁30と、囲い隔壁30の内側において囲い隔壁30と所定間隔をおいて筒状に形成され、摩擦撹拌接合用工具10を囲むように設けられ、囲い隔壁30側に液体および金属屑34を通過させる部材で構成された内側隔壁42と、囲い隔壁30の開口部側において、囲い隔壁30の端部と内側隔壁42の端部との間を連通して設けられ、所定間隔の外に液体を通過させる一方で金属屑34は通過させない部材で構成された金属屑遮蔽壁43と、囲い隔壁30により囲まれた空間内で発生する金属屑34を回収する金属屑回収手段と、を有する。
【0055】
この金属屑回収装置20によれば、金属回収装置20の囲い隔壁30が、摩擦撹拌接合用工具10の全周囲を囲む空間を形成しているため、摩擦撹拌接合時に発生する金属屑34は囲い隔壁30内で閉じ込められるとともに、撹拌翼14により流動する液体ナトリウムと共に囲い隔壁30の外周である隔壁41側に向かって移動する。このため、囲い隔壁30に囲まれた空間内で発生する金属屑34を、金属屑回収手段により回収することができる。
【0056】
また、本実施例2の金属屑回収装置20では、金属屑回収手段は、囲い隔壁30の内側において囲い隔壁30と所定間隔をおいて筒状に形成され、摩擦撹拌接合用工具10を囲むように設けられ、囲い隔壁30側に液体ナトリウムおよび金属屑34を通過させる部材で構成された内側隔壁42と、囲い隔壁30の開口部側において、囲い隔壁30の端部と内側隔壁42の端部との間を連通して設けられ、所定間隔の外に液体ナトリウムを通過させる一方で金属屑34は通過させない部材で構成された金属屑遮蔽壁43と、を備える。すなわち、金属屑回収手段は、摩擦撹拌接合用工具10の全周囲を囲む空間を形成している、囲い隔壁30と内側隔壁42と金属屑遮蔽壁43とで囲まれた空間44を構成している。
【0057】
この金属屑回収装置20によれば、囲い隔壁30の外周である隔壁41側に向かって移動した金属屑34は、内側隔壁42を通過して前記空間44に入った後に金属屑遮蔽壁43の上に滞留するので、金属屑34を回収することができる。
【0058】
ところで、本実施例2においては、他の金属屑回収手段として、吸引手段を備えていてもよい。吸引手段は、金属屑34を捕集するフィルタ25と、ポンプ26とを有している。フィルタ25は、液体ナトリウムを通過させる一方、上記金属屑34を通過させないものである。ポンプ26は、保持部21に形成された吸引口29から保持部21の内側面22と隔壁41と内側隔壁42と金属屑遮蔽壁43とに囲まれた空間44内にある液体ナトリウムを、金属屑34と共に吸引するものである。フィルタ25は、吸引口29とポンプ26との間の吸引経路27に設けられている。
【0059】
このように、吸引手段を備えた金属屑回収装置20によれば、摩擦撹拌接合時に発生する金属屑34を吸引手段であるポンプ26で吸引し、フィルタ25で捕集するので、確実に金属屑34を回収することができる。
【0060】
なお、本実施例2においては、吸引手段を備えた場合、囲い隔壁30と内側隔壁42とに囲まれた空間内の液体ナトリウムをポンプ26で吸引して金属屑34を回収することができることから、金属屑遮蔽壁43を設けなくてもよい。
【0061】
また、吸引手段を備えた場合、図3に示すように、隔壁41と内側隔壁42とで囲まれた二重筒のように形成した空間44内に移動した金属屑34を吸引するための吸引口29の位置は空間44内であればよい。内側隔壁42は、内側から外周側の隔壁41側へ一度通過した金属屑34を逆の内側方向へ通過させない構成となっているため、空間44内に回収された金属屑34は容易にポンプ26で吸引することができる。
【0062】
また、図4に示すように、空間44の内側隔壁42を液体ナトリウムの旋回流の流れの上流側に向かって一部分が開口した開口部45とし、流れの下流側では内側隔壁42と隔壁41を連通して袋小路部46としてもよい。この場合、撹拌翼14により撹拌された液体ナトリウムの旋回流の流れと共に移動した金属屑34は開口部45から矢印Eで示したように空間44内に回収され、袋小路部46側に集められる。さらに、この構成において吸引手段を設ける場合は、空間44内に移動した金属屑34を吸引するための吸引口29の位置は袋小路部46側の空間44内に設けることが好ましい。この構成により、袋小路部46側に集められた金属屑34が吸引手段により吸引されるので確実に金属屑34を回収することができる。
【実施例3】
【0063】
図5は、本発明の実施例3に係る摩擦撹拌接合用工具の金属屑回収装置の概略構成図である。なお、摩擦攪拌接合用工具10は、上述した実施例1と同様であるため、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0064】
本実施例3において、図5に示すように、金属屑回収装置20は、撹拌翼14と、囲い隔壁30とを有して構成されている。
【0065】
撹拌翼14は、上述した摩擦攪拌接合用工具10における回転部11に設けられている。撹拌翼14は、回転部11の外周に突出した板片状のもので、回転軸心Zの延在方向に長尺に形成され、かつ回転軸心Zに対して傾斜または湾曲して形成されている。
【0066】
囲い隔壁30は、保持部21と、金属屑回収手段である隔壁51とで構成されている。保持部21は、回転部11の基端部側を回転可能に保持するものである。保持部21は、回転部11の回転軸心Zを中心とする円形状の板片状をなし、かつ回転軸心Zに対して自身の板面が垂直に設けられている。このため、保持部21は、摩擦撹拌接合用工具10によって亀裂33を補修するとき、部材31の表面32に対して自身の板面がほぼ平行に配置される。この保持部21は、例えば、金属板やプラスチック板等のように、摩擦攪拌接合により部材31の表面32の亀裂33を補修した時に発生する金属屑34を通過させない部材で構成されている。
【0067】
隔壁51は、回転部11の回転軸心Zを中心とする円筒形状に形成されている。隔壁51は、基端部側が保持部21の外周部分の下面22に接合することで閉塞されているとともに、先端部側が開口した開口部を有している。また隔壁51は、摩擦攪拌接合により部材31の表面32の亀裂33を補修した時に発生する金属屑34を途中で通過させない部材で構成されている。
【0068】
このように、囲い隔壁30は、全体として、回転部11の先端部側が開口した開口部を有する逆円筒籠状に形成され、摩擦撹拌接合用工具10の全周囲を囲む空間を形成している。さらに、囲い隔壁30は、摩擦攪拌接合により部材31の表面32の亀裂33を補修した時に発生する金属屑34を途中で通過させない部材で構成されている。
【0069】
隔壁51は、摩擦攪拌接合により部材31の表面32の亀裂33を補修した時に発生する金属屑34を隔壁51の途中で通過させずに絡まる態様で捕捉する部材で構成されている。つまり、隔壁51が液体ナトリウムを通過させる一方で金属屑34は通過させない部材で構成され、金属屑34が絡まる態様で隔壁51内に金属屑34を取り込むようになっている。隔壁51の部材としては、例えば、目の粗さの違うメッシュ状のフィルタを何層にも積層した部材を挙げることができる。つまり積層タイプのワイヤーメッシュデミスターのような構成で、摩擦撹拌接合用工具10の全周囲を囲む空間内側のメッシュは金属屑34が通過できる目の粗さであり、外側に向かって順次目の粗さが細かくなり、少なくとも一番外側のメッシュは金属屑34が通過できない目の粗さであるような部材で構成されたもので、液体ナトリウムは通過することができるものである。また、例えば、三次元網目構造のフィルタで金属屑34が内側から外側に通過する途中でフィルタ部材に絡まるように捕捉されるものである。また、例えば、不織布のような部材を何層にも積層した部材を挙げることができる。さらに、例えば、三次元織物のような部材を挙げることができる。なお隔壁51を構成する部材は、上述したもの限ることはなく、金属屑34を隔壁51の途中で通過させずに捕捉する部材であれば適用することができる。
【0070】
本実施例3においては、上述した摩擦撹拌接合用工具10の摩擦攪拌接合によって亀裂33を補修する時、摩擦撹拌接合用工具10の回転部11に固定されている撹拌翼14が先端部(ヘッド部12)と共に回転する。この撹拌翼14の回転により摩擦撹拌接合用工具10周囲の液体ナトリウムは撹拌されて旋回流のように流動する。さらに、本実施例3においては、金属屑回収装置20の囲い隔壁30が、摩擦撹拌接合用工具10の全周囲を囲む空間を形成している。このため、先端部(ヘッド部12)周辺で発生した金属屑34は、当該金属屑34を途中で通過させない囲い隔壁30内で閉じ込められるとともに、流動する液体ナトリウムと共に囲い隔壁30の外周である隔壁51側に向かって移動していく。そして金属屑34は、隔壁51を通過する途中で絡まる態様で捕捉される。そして、液体ナトリウム中から摩擦攪拌接合用工具10及び金属屑回収装置20を引き上げることで、隔壁51の途中で絡まる態様で捕捉された金属屑34を液体ナトリウム中に残存させることなく液体ナトリウム中から持ち出すことができる。なお液体ナトリウムは、矢印Fで示したように隔壁51を通過して摩擦撹拌接合用工具10の全周囲を囲む空間の外へ出て行くことになる。
【0071】
なお、囲い隔壁30の保持部21および隔壁51を通過しない金属屑34の大きさとしては、例えば0.1mm以上より大きいものを想定しており、保持部21および隔壁51は、この大きさの金属屑34を通過させないように設計されている。
【0072】
このように、本実施例3の金属屑回収装置20は、摩擦撹拌接合用工具10の回転部11に設けられた撹拌翼14と、摩擦撹拌接合用工具10の周囲を囲みつつ摩擦撹拌接合用工具10の先端部側が開口する開口部を有し、金属屑34を途中で通過させない部材で構成された囲い隔壁30と、囲い隔壁30により囲まれた空間内で発生する金属屑34を回収する金属屑回収手段と、を有する。
【0073】
この金属屑回収装置20によれば、金属回収装置20の囲い隔壁30が、摩擦撹拌接合用工具10の全周囲を囲む空間を形成しているため、摩擦撹拌接合時に発生する金属屑34は囲い隔壁30内で閉じ込められるとともに、撹拌翼14により流動する液体ナトリウムと共に囲い隔壁30の外周である隔壁51側に向かって移動する。このため、囲い隔壁30に囲まれた空間内で発生する金属屑34を、金属屑回収手段により回収することができる。
【0074】
また、本実施例3の金属屑回収装置20では、金属屑回収手段は、囲い隔壁30が液体ナトリウムを通過させる一方で金属屑34は通過させない部材で構成され、金属屑34が絡まる態様で囲い隔壁30内に金属屑34を取り込む隔壁51である。
【0075】
この金属屑回収装置20によれば、囲い隔壁30の外周である隔壁51側に向かって移動した金属屑34は、金属屑回収手段である隔壁51に絡まって捕捉されるので、金属屑34を回収することができる。
【0076】
ところで、本実施例3においては、他の金属屑回収手段として、吸引手段を備えていてもよい。吸引手段は、金属屑34を捕集するフィルタ25と、ポンプ26とを有している。フィルタ25は、液体ナトリウムを通過させる一方、上記金属屑34を通過させないものである。ポンプ26は、保持部21に形成された吸引口29から保持部21の下面22と隔壁23とに囲まれた空間内にある液体ナトリウムを、金属屑34と共に吸引するものである。フィルタ25は、吸引口29とポンプ26との間の吸引経路27に設けられている。
【0077】
このように、吸引手段を備えた金属屑回収装置20によれば、摩擦撹拌接合時に発生する金属屑34を吸引手段であるポンプ26で吸引し、フィルタ25で捕集するので、確実に金属屑34を回収することができる。
【0078】
また吸引手段を備えた場合、図5に示すように、隔壁51側に移動した金属屑34を吸引するための吸引口29の位置は隔壁51の厚さ方向の中央部付近に設けられているが、これに限ることはなく、摩擦撹拌接合用工具10の全周囲を囲む空間内であればよい。なお、金属屑34をポンプ26で吸引する場合は、隔壁51を構成する部材の少なくとも一番外側は液体ナトリウムを通過させないようにしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10 摩擦攪拌接合用工具
11 回転部
12 ヘッド部(先端部)
13 ピン部
14 撹拌翼
20 金属屑回収装置
21 保持部
22 保持部下面
23、41、51 隔壁
24 底板部材
25 フィルタ
26 ポンプ
27 吸引経路
28 吸引される液体ナトリウム
29 吸引口
30 囲い隔壁
31 部材
32 部材表面
33 亀裂
34 金属屑
42 内側隔壁
43 金属屑遮蔽壁
45 開口部
46 袋小路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中で、部材の表面にある亀裂に対して先端部を押し付けて回転させることで、摩擦攪拌接合により亀裂を補修する摩擦攪拌接合用工具を備える金属屑回収装置であって、
前記摩擦撹拌接合用工具の回転部に設けられた撹拌翼と、
前記摩擦撹拌接合用工具の周囲を囲みつつ前記摩擦撹拌接合用工具の先端部側が開口する開口部を有し、前記摩擦撹拌接合用工具の先端部を前記部材に押し付けた時に前記開口部が前記部材の表面に当接して前記摩擦撹拌接合用工具の全周囲を囲む空間を形成するとともに、前記空間外に前記亀裂を補修した時に発生する金属屑を通過させない部材で構成された囲い隔壁と、
前記囲い隔壁により囲まれた空間内で発生する前記金属屑を回収する金属屑回収手段と、
を有することを特徴とする金属屑回収装置。
【請求項2】
前記金属屑回収手段は、前記摩擦撹拌接合用工具の先端部を貫通させつつ前記囲い隔壁の開口部を塞ぐ底板部材であることを特徴とする請求項1に記載の金属屑回収装置。
【請求項3】
前記金属屑回収手段は、
前記囲い隔壁の内側において前記囲い隔壁と所定間隔をおいて筒状に形成され、前記摩擦撹拌接合用工具を囲むように設けられ、前記囲い隔壁側に前記液体および前記金属屑を通過させる部材で構成された内側隔壁と、
前記囲い隔壁の開口部側において、前記囲い隔壁の端部と前記内側隔壁の端部との間を連通して設けられ、前記所定間隔の外に前記液体を通過させる一方で前記金属屑は通過させない部材で構成された金属屑遮蔽壁と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の金属屑回収装置。
【請求項4】
前記金属回収手段は、前記囲い隔壁が前記液体を通過させる一方で前記金属屑は通過させない部材で構成され、前記金属屑が絡まる態様で前記囲い隔壁内に前記金属屑を取り込むことを特徴とする請求項1に記載の金属屑回収装置。
【請求項5】
前記金属屑回収手段は、前記囲い隔壁により囲まれた空間内の前記液体を吸引する吸引手段を有することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の金属屑回収装置。
【請求項6】
前記液体は、液体ナトリウムであることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の金属屑回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−200772(P2012−200772A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68841(P2011−68841)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(文部科学省、平成22年度 エネルギー対策特別会計委託事業「液体金属中で適用可能な摩擦撹拌接合補修装置の開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】