金属微粒子を含む生体関連物質固定化担体を有する生体関連物質固定化アレイ
【課題】簡便な方法で検体中の微量な生体関連物質を高感度に検出すること。
【解決手段】生体関連物質が固定され、且つ金属微粒子を有する担体が、基板に配置された、生体関連物質固定化アレイ。
【解決手段】生体関連物質が固定され、且つ金属微粒子を有する担体が、基板に配置された、生体関連物質固定化アレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象となる検体を高感度に検出するための生体関連物質固定化アレイ、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病気の診断、原因の解明のために、DNAマイクロアレイやプロテインアレイ等と呼ばれる遺伝子やタンパク質等の生体関連物質を検出するバイオチップが開発されている。バイオチップを使用する際、検体中の微量な生体関連物質を検出するために、抽出したDNAを増幅させる工程が必要となる。この増幅工程におけるバラツキが、検出結果の定量的解釈に影響を及ぼすため、DNAの増幅工程を省くために検出感度を向上させる必要がある。
【0003】
一方、生体関連物質を検出する方法において、高感度な測定方法として金属微粒子を利用した蛍光法が検討されている。例えば、プローブ分子を含む検出スポットに金属微粒子を近接させて基板に規則的に配列する方法(特許文献1参照。)、プローブ分子であるDNAを修飾した銀ナノ粒子を基板に固定し、蛍光標識された検体中の分子と反応させる方法(非特許文献1参照。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−85607号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Biochem.Biophys.Res.Comm.,2003年,第306号,p.213
【発明の概要】
【発明が解決しようとする手段】
【0006】
しかしながら、上記提案された方法は、煩雑な工程を必要とし、コストも高くなる等の問題がある。
【0007】
従って、本発明の主な目的は、簡便な方法で検体中の微量な生体関連物質を高感度に検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、アレイの担体中に金属微粒子を含ませることにより上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、生体関連物質が固定され、且つ金属微粒子を有する担体が、基板に配置された、生体関連物質固定化アレイ、及びその製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡便な方法により検体中の微量な物質を高感度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例において、中空繊維束を製造する際に使用した配列固定器具を示す模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
(1)生体関連物質が固定化された担体
(1−1)生体関連物質
本発明において、生体関連物質は、プローブ又はターゲット分子として本発明に用いることができるものであれば限定されるものではなく、例えば、核酸(DNA、RNA等)、タンパク質、ペプチド、抗体、糖鎖及びレクチン等が挙げられる。
【0014】
本発明において、プローブとは、検体中に含まれるターゲット分子を特異的に捕捉するための生体関連物質であり、個々のターゲット分子に応じた構造を持った分子を指す。プローブは所定のターゲット分子を特異的に認識できる生体関連物質であれば、どのような種類の分子種であっても良く、天然物であっても人工的に合成されたものであってもよい。このような生体関連物質プローブとしては、例えば、核酸プローブ、タンパク質プローブ、ペプチドプローブ、抗体プローブ、レクチンプローブ等が挙げられる。また、ターゲット分子とは、解析の対象となる任意の生体関連物質を指す。
【0015】
本発明において、ある種のDNAやRNAなどの核酸がターゲット分子である場合、ターゲット分子の塩基配列に相補的な配列を有し、これらの塩基配列を特異的に認識して捕捉することができる核酸をプローブとして使用することができる。また、タンパク質やペプチドなどがターゲット分子である場合、それらを抗原として特異的に認識するような抗体をプローブとして使用することができる。また逆に、抗体をターゲット分子とし、それらの抗原となるようなタンパク質やペプチドなどをプローブ分子として使用することもできる。
【0016】
さらに、糖鎖をターゲット分子とする場合は、レクチンなどをプローブとして使用することができる。すなわち、ある特定の分子(A)がある特定の分子(B)に特異的に結合する性質がある場合、Aがターゲット分子として検出対象となるのであれば、Bがプローブとなり、逆にBがターゲット分子となるのであれば、Bがプローブとなり、逆にBがターゲット分子となるのであれば、Aがプローブとなる。
【0017】
(1−2)担体
本発明において、担体とは、生体関連物質を担持させるための支持体を指す。生体関連物質は、担体に固定化することで、個々の生体関連物質を他の生体関連物質と混じりあわない状態で独立に存在させることが可能である。
【0018】
本発明において、生体関連物質の担体は、所望の生体関連物質を固定化できるゲルであれば限定されるものではなく、例えばアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルアミノエトキシエタノール、N−アクリロイルアミノプロパノール、N−メチロールアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸、アリルデキストリン等から選ばれた少なくとも一種類以上の単量体と、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能性単量体を、水性媒体中で共重合したゲルが挙げられる。他の方法として、例えば、アガロース、アルギン酸、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等のゲル又はこれらを架橋したゲルを用いることができる。
【0019】
(1−3)固定化
本発明において、生体関連物質の固定とは、生体関連物質を担体から遊離させないための処理である。本発明では、プローブ等の生体関連物質をそのままゲルに固定化してもよく、また生体関連物質に化学修飾を施した誘導体や、必要に応じて変性させた生体関連物質を固定化してもよい。
【0020】
生体関連物質のゲルへの固定化には、生体関連物質をゲルに物理的に包括する方法を利用してもよく、ゲル構成成分への直接的な結合を利用してもよい。また、生体関連物質を一旦高分子体や無機粒子などに共有結合又は非共有結合により結合させ、それらをゲルに包括固定化してもよい。例えば、生体関連物質として核酸を利用する場合には、核酸の末端基にビニル基を導入し(WO98/39351)、アクリルアミド等のゲル構成成分と共重合させることができる。共重合においては、単量体、多官能性単量体及び重合開始剤と共に共重合する方法、単量体及び重合開始剤と共に共重合したのち、架橋剤でゲル化する方法などがある。また、アガロースを臭化シアン法でイミドカルボネート化しておき、末端アミノ化した核酸のアミノ基と結合させてからゲル化することもできる。この際、ゲルは、核酸を固定化したアガロースと他のゲル(例えばアクリルアミドゲル等)との混合ゲルにしてもよい。
【0021】
(2)金属微粒子を有する担体
本発明において、金属微粒子の材料は、金、銀、アルミニウム、銅及び白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属である。また、これら金属の合金であってもよい。あるいは、これらの金属種で作られた微粒子の表面に他の金属種がコーティングされたもの、例えば、銀微粒子の表面に金がコーティングされた金属微粒子を使用してもよい。これらの金属種は、酸化に対して安定であり、かつ局在プラズモン共鳴による蛍光増強効果が大きくなることから好ましい。
【0022】
本発明において、金属微粒子の形状は特には限定されない。例えば、長球状であっても、楕円状であってもよい。
【0023】
本発明において、金属微粒子のサイズは蛍光増強効果が得られれば限定されず、担体の体積やプローブの濃度などに応じて適宜選択することができる。10nm〜1mmであることが好ましく、50nm〜1mm以下であることがより好ましい。10nm以上とするのは、粒子間距離が同じならば、粒子径が大きい方が、金属微粒子が近接した電場における蛍光増強効果が大きくなるためである。1mm以下とするのは、それ以上大きくしても効果の上昇が期待できないからである。
【0024】
本発明において、金属微粒子を有する担体とは、金属微粒子が担体中に存在していれば良く、金属微粒子が担体に固定化されていても固定化されていなくてもどちらでもよい。また、金属微粒子は生体関連物質に固定化されていてもされていなくて固定化されていなくてもどちらでもよい。
【0025】
(3)担体の形状
担体は、検出可能な量の生体関連物質を固定化できる体積を保持している限り、どのような形状であってもよい。
【0026】
ここで、担体の形状としては、球状や半球状が、構造上安定であり、比較的容易に製造できるという観点から好ましい形状である。その一方で、球状の場合は、基盤との接触面積が小さくなり、担体が基板から剥がれやすいと考えられる。また、半球状の場合、体積あたりの表面積が小さくなるため、検体の担体への浸透及びプローブとの反応にかかる時間は、同一体積の他の形状と比較すると長くなる場合が考えられる。また、検出に際しては通常、基板に対して垂直方向から検出することになるが、担体が球状であったり、半球状であったりすると、担体の厚みが一定でないため、検出時にシグナル強度の評価がしにくくなる可能性が考えられる。
【0027】
これらの点を考慮すると、本発明の担体の形状は、基板からより剥がれにくく、検体の当該担体への浸透時間がより短く、かつ検出時のシグナル強度の測定誤差がより小さい立体的形状がより好ましい。
【0028】
このような立体的形状の担体としては、たとえば柱状のものが挙げられる。柱状の担体としては、例えば、円柱状、楕円柱状、多角柱状(三角柱、四角柱、六角柱、八角柱等)のものが挙げられる。柱状の担体は、後述する中空管状体の集束物を用いることにより短時間で簡便かつ安価に製造できる点においても、他の複雑な立体的形状よりも優れている。
【0029】
(4)基板
本発明において、基板とは、担体が配置される板である。担体との接触面が平らな基板であればどのようなものであってもよく、立体的なものであってもよいが、プローブとターゲット分子の接触及び反応の検出を阻害しないものが望ましい。そのような基板としては、平面基板が挙げられる。平面基板は、その表面が実質的に平面からなる板である。基板としては、例えば、スライドガラス、シリコン基板、ゲルからなる基板などが挙げられる。基板は、最終的に担体が接触する面が平面である限り、異なる物質が積層構造となっていても、また、いかなる形態で表面がコーティングされているものであってもよい。
【0030】
(5)生体関連物質固定化アレイ
本発明における生体関連物質固定化アレイとは、生体関連物質(核酸、タンパク質、ペプチド、抗体、レクチン等)が固定された担体が、上述の基板上又は基板中に配置されたものである。このようなアレイの例としては、DNAアレイやプロテインアレイ、抗体アレイ、レクチンアレイなどが挙げられる。
【0031】
このような生体関連物質固定化アレイは、いずれの場合も反応に用いる検体の量を極小化し、検出を高速に行うために、2つ以上の担体を高密度に並べたマイクロアレイであることが好ましい。このようなマイクロアレイとしては、1cm2あたり100個以上の担体が並べられているものが好ましく、1cm2あたり500個から10,000,000個の担体が並べられているものがより好ましい。
【0032】
高密度な生体関連物質固定化アレイを作製する場合、最終的な形態としては、担体の基板表面との接触面積が10μm2以上1,000,000μm2以下であることが好ましく、10μm2以上100,000μm2以下であることがより好ましい。これは担体の、基板表面との接触面積が小さすぎる場合、検体の定量的な検出が困難となり、逆に大きすぎる場合は基板上に搭載できる担体の数が制限されるためである。
【0033】
また、担体の基板表面からの高さの最大は、1μm以上5,000μm以下であることが好ましい、10μm以上500μm以下であることがより好ましい。これは、基板表面からの高さが低すぎると、担体の体積に対する検体との接触面積が相対的に小さくなり、逆に高すぎるとその形状を維持することが困難となるためである。
【0034】
(6)生体関連物質固定化アレイの製造方法
本発明の生体関連物質固定化アレイの製造方法としては、以下の工程を含む2つの態様がある。
【0035】
第一の態様としては、(a)中空管状体を複数本集束する工程、(b)得られた集束物の各管状体の中空部に生体関連物質固定化ゲルを充填する工程、(c)集束物を管状体の長手方向と交叉する方向で切断する工程、及び(d)得られた薄片を金属微粒子溶液に浸漬させる工程、を含む。
【0036】
また、第二の態様としては、(a)中空管状体を複数本集束する工程、(e)得られた集束物の各管状体の中空部に、金属微粒子を含む生体関連物質固定化ゲルを充填する工程、及び(c)集束物を管状体の長手方向と交叉する方向で切断する、工程を含む。
【0037】
(6−1)工程(a)
上記工程(a)は、複数の中空管状体を、各管状体軸が同一方向となるように三次元に配列及び固定して中空管状体を集束する工程である。本発明においては、中空管状体及び固定剤部分(例えば、ウレタン樹脂等のマトリックス部分)の両者を含めて中空管状体の集束物とする。
【0038】
工程(a)における中空管状体を集束する方法は、例えば、図1に示す配列固定器具を利用して行うことができる。具体的には、まず、二枚の多孔板を孔が一致するように重ね合わせ、その孔に中空管状体を挿入し、挿入後多孔板の間隔を広げ、多孔板間の空間の周囲3面を板状物で囲うことにより容器を作製する。次に、前記容器に樹脂原料を流し、樹脂を硬化させ、多孔板と板状物を取り除く。これにより、複数の中空管状体が三次元に配列及び固定された中空管状体の集束物を製造することができる。
【0039】
なお、中空管状体を固定する際、工程(b)においてゲル前駆体重合性溶液の充填を容易にするため、中空管状体の全長を固定するのではなく、片端を固定しないで自由端とすることが好ましい。
【0040】
中空管状体は、ガラス管、ステンレス管、中空繊維等が例示できるが、加工性、取り扱いの容易さを考慮すると中空繊維を使用することが好ましい。中空繊維の材質としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ポリアミド等のポリアミド系中空繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカーボネート等のポリエステル系中空繊維、ポリアクリロニトリル等のアクリル系中空繊維、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系中空繊維、ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリレート系中空繊維、ポリビニルアルコール系中空繊維、ポリ塩化ビニリデン系中空繊維、ポリ塩化ビニル系中空繊維、ポリウレタン系中空繊維、フェノール系中空繊維、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン等からなるフッ素系中空繊維、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系中空繊維等が挙げられる。
【0041】
(6−2)工程(b),(e)
工程(b)は、中空管状体の中空部に、生体関連物質を含有するゲル前駆体重合性溶液を充填し、該溶液をゲル化する工程である。
【0042】
ゲル前駆体重合性溶液の充填は、例えば以下の方法により行うことができる。まず、低温で保存しておいたゲル前駆体重合性溶液と中空管状体の集束物をデシゲーター内に設置する。ゲル前駆体重合性溶液は予め十分脱気しておく。ここで、窒素、ヘリウム等の不活性ガスを導入し、デシゲーター内を前記ガスで置換しておく。不活性ガスへの置換は、10〜20時間で実施される。次にデシゲーター内を減圧状体とし、中空管状体の集束物の、管状体が固定されてない自由端を、重合性溶液中に浸す。
【0043】
次にデシゲーター内に不活性ガスを吹き込むことにより加圧状態にし、各管状体の中空部に溶液を充填する。その後、中空管状体の集束物を加温し、重合反応を行うことにより、生体関連物質を含有するゲル前駆体重合性溶液が生体関連物質固定化ゲルとなる。重合温度は使用する単量体等により適宜選択される。この方法により、生体関連物質固定化ゲルが中空管状体の中空部に充填される。
【0044】
また、工程(e)では、工程(b)で使用するゲル前駆体重合性溶液中に金属微粒子を添加する。そうすることにより、集束物の各管状体の中空部に、金属微粒子を含む生体関連物質固定化ゲルを充填することができる。金属微粒子の濃度等については下記工程(d)の項目で述べる。
【0045】
(6−3)工程(c)
工程(c)は、前記ゲルを保持した集束物を、管状体の長手方向と交叉する方向に切断して薄片を製造する工程である。薄片の製造においては、ミクロトーム、レーザー等を使用することができる。薄片の厚さは、1μm以上5,000μm以下であることが好ましく、10μm以上500μm以下であることがより好ましい。
【0046】
(6−4)工程(d)
工程(d)は、前記薄片を、金属微粒子溶液に浸漬させる工程である。
【0047】
本発明において、金属微粒子溶液の微粒子含有率は、0.001wt%以上0.1wt%以下であることが好ましく、0.003wt%以上0.1wt%以下であることがより好ましい。0.001wt%以上とすることにより、十分な蛍光増強効果が得られる。0.1wt%以下とするのは、それ以上の濃度の金属微粒子を使用しても効果の飛躍的な上昇が得られないからである。
【0048】
本発明において、金属微粒子溶液とは、金属微粒子が分散している溶液である。金属微粒子を分散させる溶媒は、生体関連物質の反応に影響を与えない性質であれば特に限定されない。例えば、リン酸塩緩衝液、生理食塩水等を挙げることができる。
【0049】
また、金属微粒子の凝集を防ぐために、溶媒中に安定剤を添加することもできる。安定剤の種類も、生体関連物質の反応に影響を与えなければ限定されない。例えば、牛血清アルブミン、γ−グロブリン等の天然由来の高分子、Tween20等の界面活性剤を使用することができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
<実施例1>
(イ)生体関連物質固定化アレイの作製
(I)プローブの合成
アレイに固定化したプローブとして、以下のN末端側をビオチンで標識し、C末端側をビニル化したアミノ酸配列からなるペプチドを用いた。
Biotin−Aminocaproic Acid−YRWSVK−C6 Linker−Metahacrylic Acid
上記ペプチドは株式会社ベックスにて受託合成した。
【0052】
(II)中空繊維束の製造
図1に示す配列固定器具を利用して、中空繊維束を製造した。なお、図1中のx、y、zは直交の3次元軸であり、x軸は繊維の長手方向と一致する。図1を参照して、直径0.32mmの孔11が、孔の中心間距離を0.42mmとして、縦12列横各19列で合計228個設けられた厚さ0.1mmの多孔板21、2枚を準備した。
【0053】
これらの多孔板を重ね合わせて、そのすべての孔に、ポリカーボネート中空繊維(三菱エンジニアリングプラスチック社製 カーボンブラック1質量%添加)を1本ずつ、通過させた。x軸方向に各繊維に0.1Nの張力をかけた状態で2枚の多孔板の位置を移動させて、中空繊維の一方の端部から20mmの位置と100mmの位置の2ヶ所に固定した。即ち、2枚の多孔板の間隔を80mmとした。次いで、多孔板間の空間の周囲3面を、板状物41で囲った。このようにして上部のみが開口状態にある容器を得た。
【0054】
次に、この容器の上部から容器内に樹脂原料を流し込んだ。樹脂としては、ポリウレタン樹脂接着剤(日本ポリウレタン工業(株)ニッポラン4276、コロネート4403)の総重量に対し、2.5質量%のカーボンブラックを添加したものを使用した。25℃で1週間静置して樹脂を硬化させた。次いで多孔板と板状物を取り除き、中空繊維束を得た。
【0055】
ゲル前駆体重合性溶液として、表1に示す質量比で混合した溶液を調製した。
【0056】
【表1】
次に、プローブを含むゲル前駆体重合性溶液をデシケーター内に設置した。デシケーター内を減圧状態にしたのち、中空繊維束の繊維束が固定されていない一方の端部をこの溶液中に浸漬した。デシケーター内に窒素ガスを封入し、中空繊維の中空部にプローブを含むゲル前駆体重合性溶液を導入した。次いで、容器内を70℃とし、3時間かけて重合反応を行った。このようにしてプローブがゲル状物を介して中空繊維の中空部に保持された中空繊維束を得た。
【0057】
次に、得られた中空繊維束を、ミクロトームを用いて繊維の長手方向と直交する方向でスライスし、厚さ0.25mmの薄片シートを得た。
【0058】
(ロ)生体関連物質固定化アレイの検出
上記で作製した生体関連物質固定化アレイを検出するために、Cy5 Streptavidin(GEヘルスケア社製)を用いて染色を行った。すなわち、ストレプトアビジン−Cy5 1mgを1mLの滅菌水に溶解し、そのうちの10μLを0.12M TNT溶液(0.12M Tris−HCl、0.12M NaCl、0.5%Tween20溶液)5mLに混合し、染色液を作製した。作製した染色液に対し、生体関連物質固定化アレイを室温で30分間浸漬した。浸漬した生体関連物質固定化アレイは、TNT溶液6mLを用いて4回、各5分間ずつ室温で洗浄した。
【0059】
洗浄した生体関連物質固定化アレイを、粒径100nmのAuコロイド溶液(田中貴金属社製)を0.0035wt%含む0.12M TN溶液(0.12M Tris−HCl、0.12M NaCl溶液)に浸漬させた。
【0060】
検出操作は、CCDカメラ方式の自動検出装置を用いて、波長633nmの励起光を0.05〜0.1秒露光させ、蛍光シグナルを検出した結果、シグナル強度は475358であった。
【0061】
<比較例1>
Auコロイド溶液を含まないTN溶液に浸漬させた以外は、実施例1と同様の方法で実験を行った結果、シグナル強度は451372であった。
【0062】
得られた結果から、金微粒子が存在しない状態(比較例1)に較べて、金微粒子が存在する状態で検出した系(実施例1)ではシグナル強度が増加していた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明に関する検出方法は、検体中の微量な生体関連物質を定量的に検出することに適している。
【符号の説明】
【0064】
11 孔
21 多孔板
31 中空繊維
41 板状物
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象となる検体を高感度に検出するための生体関連物質固定化アレイ、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病気の診断、原因の解明のために、DNAマイクロアレイやプロテインアレイ等と呼ばれる遺伝子やタンパク質等の生体関連物質を検出するバイオチップが開発されている。バイオチップを使用する際、検体中の微量な生体関連物質を検出するために、抽出したDNAを増幅させる工程が必要となる。この増幅工程におけるバラツキが、検出結果の定量的解釈に影響を及ぼすため、DNAの増幅工程を省くために検出感度を向上させる必要がある。
【0003】
一方、生体関連物質を検出する方法において、高感度な測定方法として金属微粒子を利用した蛍光法が検討されている。例えば、プローブ分子を含む検出スポットに金属微粒子を近接させて基板に規則的に配列する方法(特許文献1参照。)、プローブ分子であるDNAを修飾した銀ナノ粒子を基板に固定し、蛍光標識された検体中の分子と反応させる方法(非特許文献1参照。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−85607号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Biochem.Biophys.Res.Comm.,2003年,第306号,p.213
【発明の概要】
【発明が解決しようとする手段】
【0006】
しかしながら、上記提案された方法は、煩雑な工程を必要とし、コストも高くなる等の問題がある。
【0007】
従って、本発明の主な目的は、簡便な方法で検体中の微量な生体関連物質を高感度に検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、アレイの担体中に金属微粒子を含ませることにより上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、生体関連物質が固定され、且つ金属微粒子を有する担体が、基板に配置された、生体関連物質固定化アレイ、及びその製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡便な方法により検体中の微量な物質を高感度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例において、中空繊維束を製造する際に使用した配列固定器具を示す模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
(1)生体関連物質が固定化された担体
(1−1)生体関連物質
本発明において、生体関連物質は、プローブ又はターゲット分子として本発明に用いることができるものであれば限定されるものではなく、例えば、核酸(DNA、RNA等)、タンパク質、ペプチド、抗体、糖鎖及びレクチン等が挙げられる。
【0014】
本発明において、プローブとは、検体中に含まれるターゲット分子を特異的に捕捉するための生体関連物質であり、個々のターゲット分子に応じた構造を持った分子を指す。プローブは所定のターゲット分子を特異的に認識できる生体関連物質であれば、どのような種類の分子種であっても良く、天然物であっても人工的に合成されたものであってもよい。このような生体関連物質プローブとしては、例えば、核酸プローブ、タンパク質プローブ、ペプチドプローブ、抗体プローブ、レクチンプローブ等が挙げられる。また、ターゲット分子とは、解析の対象となる任意の生体関連物質を指す。
【0015】
本発明において、ある種のDNAやRNAなどの核酸がターゲット分子である場合、ターゲット分子の塩基配列に相補的な配列を有し、これらの塩基配列を特異的に認識して捕捉することができる核酸をプローブとして使用することができる。また、タンパク質やペプチドなどがターゲット分子である場合、それらを抗原として特異的に認識するような抗体をプローブとして使用することができる。また逆に、抗体をターゲット分子とし、それらの抗原となるようなタンパク質やペプチドなどをプローブ分子として使用することもできる。
【0016】
さらに、糖鎖をターゲット分子とする場合は、レクチンなどをプローブとして使用することができる。すなわち、ある特定の分子(A)がある特定の分子(B)に特異的に結合する性質がある場合、Aがターゲット分子として検出対象となるのであれば、Bがプローブとなり、逆にBがターゲット分子となるのであれば、Bがプローブとなり、逆にBがターゲット分子となるのであれば、Aがプローブとなる。
【0017】
(1−2)担体
本発明において、担体とは、生体関連物質を担持させるための支持体を指す。生体関連物質は、担体に固定化することで、個々の生体関連物質を他の生体関連物質と混じりあわない状態で独立に存在させることが可能である。
【0018】
本発明において、生体関連物質の担体は、所望の生体関連物質を固定化できるゲルであれば限定されるものではなく、例えばアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルアミノエトキシエタノール、N−アクリロイルアミノプロパノール、N−メチロールアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸、アリルデキストリン等から選ばれた少なくとも一種類以上の単量体と、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能性単量体を、水性媒体中で共重合したゲルが挙げられる。他の方法として、例えば、アガロース、アルギン酸、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等のゲル又はこれらを架橋したゲルを用いることができる。
【0019】
(1−3)固定化
本発明において、生体関連物質の固定とは、生体関連物質を担体から遊離させないための処理である。本発明では、プローブ等の生体関連物質をそのままゲルに固定化してもよく、また生体関連物質に化学修飾を施した誘導体や、必要に応じて変性させた生体関連物質を固定化してもよい。
【0020】
生体関連物質のゲルへの固定化には、生体関連物質をゲルに物理的に包括する方法を利用してもよく、ゲル構成成分への直接的な結合を利用してもよい。また、生体関連物質を一旦高分子体や無機粒子などに共有結合又は非共有結合により結合させ、それらをゲルに包括固定化してもよい。例えば、生体関連物質として核酸を利用する場合には、核酸の末端基にビニル基を導入し(WO98/39351)、アクリルアミド等のゲル構成成分と共重合させることができる。共重合においては、単量体、多官能性単量体及び重合開始剤と共に共重合する方法、単量体及び重合開始剤と共に共重合したのち、架橋剤でゲル化する方法などがある。また、アガロースを臭化シアン法でイミドカルボネート化しておき、末端アミノ化した核酸のアミノ基と結合させてからゲル化することもできる。この際、ゲルは、核酸を固定化したアガロースと他のゲル(例えばアクリルアミドゲル等)との混合ゲルにしてもよい。
【0021】
(2)金属微粒子を有する担体
本発明において、金属微粒子の材料は、金、銀、アルミニウム、銅及び白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属である。また、これら金属の合金であってもよい。あるいは、これらの金属種で作られた微粒子の表面に他の金属種がコーティングされたもの、例えば、銀微粒子の表面に金がコーティングされた金属微粒子を使用してもよい。これらの金属種は、酸化に対して安定であり、かつ局在プラズモン共鳴による蛍光増強効果が大きくなることから好ましい。
【0022】
本発明において、金属微粒子の形状は特には限定されない。例えば、長球状であっても、楕円状であってもよい。
【0023】
本発明において、金属微粒子のサイズは蛍光増強効果が得られれば限定されず、担体の体積やプローブの濃度などに応じて適宜選択することができる。10nm〜1mmであることが好ましく、50nm〜1mm以下であることがより好ましい。10nm以上とするのは、粒子間距離が同じならば、粒子径が大きい方が、金属微粒子が近接した電場における蛍光増強効果が大きくなるためである。1mm以下とするのは、それ以上大きくしても効果の上昇が期待できないからである。
【0024】
本発明において、金属微粒子を有する担体とは、金属微粒子が担体中に存在していれば良く、金属微粒子が担体に固定化されていても固定化されていなくてもどちらでもよい。また、金属微粒子は生体関連物質に固定化されていてもされていなくて固定化されていなくてもどちらでもよい。
【0025】
(3)担体の形状
担体は、検出可能な量の生体関連物質を固定化できる体積を保持している限り、どのような形状であってもよい。
【0026】
ここで、担体の形状としては、球状や半球状が、構造上安定であり、比較的容易に製造できるという観点から好ましい形状である。その一方で、球状の場合は、基盤との接触面積が小さくなり、担体が基板から剥がれやすいと考えられる。また、半球状の場合、体積あたりの表面積が小さくなるため、検体の担体への浸透及びプローブとの反応にかかる時間は、同一体積の他の形状と比較すると長くなる場合が考えられる。また、検出に際しては通常、基板に対して垂直方向から検出することになるが、担体が球状であったり、半球状であったりすると、担体の厚みが一定でないため、検出時にシグナル強度の評価がしにくくなる可能性が考えられる。
【0027】
これらの点を考慮すると、本発明の担体の形状は、基板からより剥がれにくく、検体の当該担体への浸透時間がより短く、かつ検出時のシグナル強度の測定誤差がより小さい立体的形状がより好ましい。
【0028】
このような立体的形状の担体としては、たとえば柱状のものが挙げられる。柱状の担体としては、例えば、円柱状、楕円柱状、多角柱状(三角柱、四角柱、六角柱、八角柱等)のものが挙げられる。柱状の担体は、後述する中空管状体の集束物を用いることにより短時間で簡便かつ安価に製造できる点においても、他の複雑な立体的形状よりも優れている。
【0029】
(4)基板
本発明において、基板とは、担体が配置される板である。担体との接触面が平らな基板であればどのようなものであってもよく、立体的なものであってもよいが、プローブとターゲット分子の接触及び反応の検出を阻害しないものが望ましい。そのような基板としては、平面基板が挙げられる。平面基板は、その表面が実質的に平面からなる板である。基板としては、例えば、スライドガラス、シリコン基板、ゲルからなる基板などが挙げられる。基板は、最終的に担体が接触する面が平面である限り、異なる物質が積層構造となっていても、また、いかなる形態で表面がコーティングされているものであってもよい。
【0030】
(5)生体関連物質固定化アレイ
本発明における生体関連物質固定化アレイとは、生体関連物質(核酸、タンパク質、ペプチド、抗体、レクチン等)が固定された担体が、上述の基板上又は基板中に配置されたものである。このようなアレイの例としては、DNAアレイやプロテインアレイ、抗体アレイ、レクチンアレイなどが挙げられる。
【0031】
このような生体関連物質固定化アレイは、いずれの場合も反応に用いる検体の量を極小化し、検出を高速に行うために、2つ以上の担体を高密度に並べたマイクロアレイであることが好ましい。このようなマイクロアレイとしては、1cm2あたり100個以上の担体が並べられているものが好ましく、1cm2あたり500個から10,000,000個の担体が並べられているものがより好ましい。
【0032】
高密度な生体関連物質固定化アレイを作製する場合、最終的な形態としては、担体の基板表面との接触面積が10μm2以上1,000,000μm2以下であることが好ましく、10μm2以上100,000μm2以下であることがより好ましい。これは担体の、基板表面との接触面積が小さすぎる場合、検体の定量的な検出が困難となり、逆に大きすぎる場合は基板上に搭載できる担体の数が制限されるためである。
【0033】
また、担体の基板表面からの高さの最大は、1μm以上5,000μm以下であることが好ましい、10μm以上500μm以下であることがより好ましい。これは、基板表面からの高さが低すぎると、担体の体積に対する検体との接触面積が相対的に小さくなり、逆に高すぎるとその形状を維持することが困難となるためである。
【0034】
(6)生体関連物質固定化アレイの製造方法
本発明の生体関連物質固定化アレイの製造方法としては、以下の工程を含む2つの態様がある。
【0035】
第一の態様としては、(a)中空管状体を複数本集束する工程、(b)得られた集束物の各管状体の中空部に生体関連物質固定化ゲルを充填する工程、(c)集束物を管状体の長手方向と交叉する方向で切断する工程、及び(d)得られた薄片を金属微粒子溶液に浸漬させる工程、を含む。
【0036】
また、第二の態様としては、(a)中空管状体を複数本集束する工程、(e)得られた集束物の各管状体の中空部に、金属微粒子を含む生体関連物質固定化ゲルを充填する工程、及び(c)集束物を管状体の長手方向と交叉する方向で切断する、工程を含む。
【0037】
(6−1)工程(a)
上記工程(a)は、複数の中空管状体を、各管状体軸が同一方向となるように三次元に配列及び固定して中空管状体を集束する工程である。本発明においては、中空管状体及び固定剤部分(例えば、ウレタン樹脂等のマトリックス部分)の両者を含めて中空管状体の集束物とする。
【0038】
工程(a)における中空管状体を集束する方法は、例えば、図1に示す配列固定器具を利用して行うことができる。具体的には、まず、二枚の多孔板を孔が一致するように重ね合わせ、その孔に中空管状体を挿入し、挿入後多孔板の間隔を広げ、多孔板間の空間の周囲3面を板状物で囲うことにより容器を作製する。次に、前記容器に樹脂原料を流し、樹脂を硬化させ、多孔板と板状物を取り除く。これにより、複数の中空管状体が三次元に配列及び固定された中空管状体の集束物を製造することができる。
【0039】
なお、中空管状体を固定する際、工程(b)においてゲル前駆体重合性溶液の充填を容易にするため、中空管状体の全長を固定するのではなく、片端を固定しないで自由端とすることが好ましい。
【0040】
中空管状体は、ガラス管、ステンレス管、中空繊維等が例示できるが、加工性、取り扱いの容易さを考慮すると中空繊維を使用することが好ましい。中空繊維の材質としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ポリアミド等のポリアミド系中空繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカーボネート等のポリエステル系中空繊維、ポリアクリロニトリル等のアクリル系中空繊維、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系中空繊維、ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリレート系中空繊維、ポリビニルアルコール系中空繊維、ポリ塩化ビニリデン系中空繊維、ポリ塩化ビニル系中空繊維、ポリウレタン系中空繊維、フェノール系中空繊維、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン等からなるフッ素系中空繊維、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系中空繊維等が挙げられる。
【0041】
(6−2)工程(b),(e)
工程(b)は、中空管状体の中空部に、生体関連物質を含有するゲル前駆体重合性溶液を充填し、該溶液をゲル化する工程である。
【0042】
ゲル前駆体重合性溶液の充填は、例えば以下の方法により行うことができる。まず、低温で保存しておいたゲル前駆体重合性溶液と中空管状体の集束物をデシゲーター内に設置する。ゲル前駆体重合性溶液は予め十分脱気しておく。ここで、窒素、ヘリウム等の不活性ガスを導入し、デシゲーター内を前記ガスで置換しておく。不活性ガスへの置換は、10〜20時間で実施される。次にデシゲーター内を減圧状体とし、中空管状体の集束物の、管状体が固定されてない自由端を、重合性溶液中に浸す。
【0043】
次にデシゲーター内に不活性ガスを吹き込むことにより加圧状態にし、各管状体の中空部に溶液を充填する。その後、中空管状体の集束物を加温し、重合反応を行うことにより、生体関連物質を含有するゲル前駆体重合性溶液が生体関連物質固定化ゲルとなる。重合温度は使用する単量体等により適宜選択される。この方法により、生体関連物質固定化ゲルが中空管状体の中空部に充填される。
【0044】
また、工程(e)では、工程(b)で使用するゲル前駆体重合性溶液中に金属微粒子を添加する。そうすることにより、集束物の各管状体の中空部に、金属微粒子を含む生体関連物質固定化ゲルを充填することができる。金属微粒子の濃度等については下記工程(d)の項目で述べる。
【0045】
(6−3)工程(c)
工程(c)は、前記ゲルを保持した集束物を、管状体の長手方向と交叉する方向に切断して薄片を製造する工程である。薄片の製造においては、ミクロトーム、レーザー等を使用することができる。薄片の厚さは、1μm以上5,000μm以下であることが好ましく、10μm以上500μm以下であることがより好ましい。
【0046】
(6−4)工程(d)
工程(d)は、前記薄片を、金属微粒子溶液に浸漬させる工程である。
【0047】
本発明において、金属微粒子溶液の微粒子含有率は、0.001wt%以上0.1wt%以下であることが好ましく、0.003wt%以上0.1wt%以下であることがより好ましい。0.001wt%以上とすることにより、十分な蛍光増強効果が得られる。0.1wt%以下とするのは、それ以上の濃度の金属微粒子を使用しても効果の飛躍的な上昇が得られないからである。
【0048】
本発明において、金属微粒子溶液とは、金属微粒子が分散している溶液である。金属微粒子を分散させる溶媒は、生体関連物質の反応に影響を与えない性質であれば特に限定されない。例えば、リン酸塩緩衝液、生理食塩水等を挙げることができる。
【0049】
また、金属微粒子の凝集を防ぐために、溶媒中に安定剤を添加することもできる。安定剤の種類も、生体関連物質の反応に影響を与えなければ限定されない。例えば、牛血清アルブミン、γ−グロブリン等の天然由来の高分子、Tween20等の界面活性剤を使用することができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
<実施例1>
(イ)生体関連物質固定化アレイの作製
(I)プローブの合成
アレイに固定化したプローブとして、以下のN末端側をビオチンで標識し、C末端側をビニル化したアミノ酸配列からなるペプチドを用いた。
Biotin−Aminocaproic Acid−YRWSVK−C6 Linker−Metahacrylic Acid
上記ペプチドは株式会社ベックスにて受託合成した。
【0052】
(II)中空繊維束の製造
図1に示す配列固定器具を利用して、中空繊維束を製造した。なお、図1中のx、y、zは直交の3次元軸であり、x軸は繊維の長手方向と一致する。図1を参照して、直径0.32mmの孔11が、孔の中心間距離を0.42mmとして、縦12列横各19列で合計228個設けられた厚さ0.1mmの多孔板21、2枚を準備した。
【0053】
これらの多孔板を重ね合わせて、そのすべての孔に、ポリカーボネート中空繊維(三菱エンジニアリングプラスチック社製 カーボンブラック1質量%添加)を1本ずつ、通過させた。x軸方向に各繊維に0.1Nの張力をかけた状態で2枚の多孔板の位置を移動させて、中空繊維の一方の端部から20mmの位置と100mmの位置の2ヶ所に固定した。即ち、2枚の多孔板の間隔を80mmとした。次いで、多孔板間の空間の周囲3面を、板状物41で囲った。このようにして上部のみが開口状態にある容器を得た。
【0054】
次に、この容器の上部から容器内に樹脂原料を流し込んだ。樹脂としては、ポリウレタン樹脂接着剤(日本ポリウレタン工業(株)ニッポラン4276、コロネート4403)の総重量に対し、2.5質量%のカーボンブラックを添加したものを使用した。25℃で1週間静置して樹脂を硬化させた。次いで多孔板と板状物を取り除き、中空繊維束を得た。
【0055】
ゲル前駆体重合性溶液として、表1に示す質量比で混合した溶液を調製した。
【0056】
【表1】
次に、プローブを含むゲル前駆体重合性溶液をデシケーター内に設置した。デシケーター内を減圧状態にしたのち、中空繊維束の繊維束が固定されていない一方の端部をこの溶液中に浸漬した。デシケーター内に窒素ガスを封入し、中空繊維の中空部にプローブを含むゲル前駆体重合性溶液を導入した。次いで、容器内を70℃とし、3時間かけて重合反応を行った。このようにしてプローブがゲル状物を介して中空繊維の中空部に保持された中空繊維束を得た。
【0057】
次に、得られた中空繊維束を、ミクロトームを用いて繊維の長手方向と直交する方向でスライスし、厚さ0.25mmの薄片シートを得た。
【0058】
(ロ)生体関連物質固定化アレイの検出
上記で作製した生体関連物質固定化アレイを検出するために、Cy5 Streptavidin(GEヘルスケア社製)を用いて染色を行った。すなわち、ストレプトアビジン−Cy5 1mgを1mLの滅菌水に溶解し、そのうちの10μLを0.12M TNT溶液(0.12M Tris−HCl、0.12M NaCl、0.5%Tween20溶液)5mLに混合し、染色液を作製した。作製した染色液に対し、生体関連物質固定化アレイを室温で30分間浸漬した。浸漬した生体関連物質固定化アレイは、TNT溶液6mLを用いて4回、各5分間ずつ室温で洗浄した。
【0059】
洗浄した生体関連物質固定化アレイを、粒径100nmのAuコロイド溶液(田中貴金属社製)を0.0035wt%含む0.12M TN溶液(0.12M Tris−HCl、0.12M NaCl溶液)に浸漬させた。
【0060】
検出操作は、CCDカメラ方式の自動検出装置を用いて、波長633nmの励起光を0.05〜0.1秒露光させ、蛍光シグナルを検出した結果、シグナル強度は475358であった。
【0061】
<比較例1>
Auコロイド溶液を含まないTN溶液に浸漬させた以外は、実施例1と同様の方法で実験を行った結果、シグナル強度は451372であった。
【0062】
得られた結果から、金微粒子が存在しない状態(比較例1)に較べて、金微粒子が存在する状態で検出した系(実施例1)ではシグナル強度が増加していた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明に関する検出方法は、検体中の微量な生体関連物質を定量的に検出することに適している。
【符号の説明】
【0064】
11 孔
21 多孔板
31 中空繊維
41 板状物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体関連物質が固定され、且つ金属微粒子を有する担体が、基板に配置された、生体関連物質固定化アレイ。
【請求項2】
前記担体が基板中の中空管状体の中空部に充填されたものである、請求項1記載の生体関連物質固定化アレイ。
【請求項3】
以下の工程を含む、請求項1又は2に記載の生体関連物質固定化アレイの製造方法。
(a)中空管状体を複数本集束する工程、
(b)得られた集束物の各管状体の中空部に生体関連物質固定化ゲルを充填する工程、
(c)集束物を管状体の長手方向と交叉する方向で切断する工程、
(d)得られた薄片を金属微粒子溶液に浸漬させる工程
【請求項4】
以下の工程を含む、請求項1又は2に記載の生体関連物質固定化アレイの製造方法。
(a)中空管状体を複数本集束する工程、
(e)得られた集束物の各管状体の中空部に、金属微粒子を含む生体関連物質固定化ゲルを充填する工程、
(c)集束物を管状体の長手方向と交叉する方向で切断する工程
【請求項1】
生体関連物質が固定され、且つ金属微粒子を有する担体が、基板に配置された、生体関連物質固定化アレイ。
【請求項2】
前記担体が基板中の中空管状体の中空部に充填されたものである、請求項1記載の生体関連物質固定化アレイ。
【請求項3】
以下の工程を含む、請求項1又は2に記載の生体関連物質固定化アレイの製造方法。
(a)中空管状体を複数本集束する工程、
(b)得られた集束物の各管状体の中空部に生体関連物質固定化ゲルを充填する工程、
(c)集束物を管状体の長手方向と交叉する方向で切断する工程、
(d)得られた薄片を金属微粒子溶液に浸漬させる工程
【請求項4】
以下の工程を含む、請求項1又は2に記載の生体関連物質固定化アレイの製造方法。
(a)中空管状体を複数本集束する工程、
(e)得られた集束物の各管状体の中空部に、金属微粒子を含む生体関連物質固定化ゲルを充填する工程、
(c)集束物を管状体の長手方向と交叉する方向で切断する工程
【図1】
【公開番号】特開2012−154770(P2012−154770A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13765(P2011−13765)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
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