説明

金属接合用接着剤組成物

特に金属に使用するための二液型構造用接着剤組成物は、1種もしくは2種以上のビニルモノマー、好ましくはアクリレートもしくはメタクリルエステルモノマー、1種もしくは2種以上の可溶性もしくは分散性ポリマー、ならびにアセチレン性ジオール型接着促進剤を含み、好ましくは1種もしくは2種以上重合性の酸性接着促進剤をさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の好適態様は、金属に対する改善された接着性ならびに他の重要な特性を示す、新規かつユニークな接着促進剤を利用した二液型構造用接着剤組成物に関する
【発明の開示】
【0002】
本発明の接着促進剤は、少なくとも下記成分を含有する、アクリレートもしくはメタクリレートモノマーおよびポリマーの混合物である:
A.1種もしくは2種以上のビニルモノマー、好ましくはアクリレートもしくはメタクリレートエステルモノマー、
B.1種もしくは2種以上の可溶性もしくは分散性ポリマー、ならびに
C.アセチレン性ジオール型接着促進剤。
【0003】
好ましくは、1種もしくは2種以上の重合性の酸性接着促進剤も組成物にさらに添加される。
他の添加剤も、組成物の性能を高めるために組成物に添加しうる。
【0004】
従来の酸性接着促進剤の金属基体の接合に対する効果を評価する過程で、アセチレン性ジオールの添加が、従来の金属接合用接着促進剤では所望レベルの接着を付与することができない場合であっても、組成物の多様な金属への接合能力の著しい改善を生ずることを予想外にも見出した。
【0005】
本発明の好適態様におけるアセチレン性ジオール型接着促進剤は、下記一般式に対応する。
【0006】
【化3】

【0007】
式中、R1,R2,R3およびR4はHおよびアルキル基から選ばれ、nは0または0より大である。
【0008】
好ましいアセチレン性ジオール型接着促進剤の1群は、米国特許第4,650,543号および第3,268,593号に開示されており、それぞれの全体をここに参考として援用する。
【0009】
特に好ましいアセチレン性ジオール型接着促進剤は、R1,R2,R3およびR4が全てHで、n=0である2−ブチン−1,4−ジオールである。別の特に好ましいアセチレン性ジオール型接着促進剤は、Air Products and Chemicals, Inc.によりSURFYNOL(登録商標) 104として市販されている、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールであり、これはR1とR3がメチル基、R2とR4がイソブチル基で、n=0の化合物である。これらの好ましいアセチレン性ジオール化合物の1つの重要な側面は、ヒドロキシル基がアセチレン性三重結合に隣接する炭素原子に結合しているという、2−ブチン−1,4−ジオール主鎖構造である。
【0010】
別の特に好ましいアセチレン性ジオール型接着促進剤としては、ヒドロキシル部分がアセチレン性炭素原子から1又は2以上のオキシエチレン基で離間されている、エトキシル化2−ブチン−1,4−ジオール(n=1以上)の化合物であり、例えば、エトキシル化2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールである SURFYNOL 485 などである。
【0011】
従来より、アセチレン性ジオール類は、塗料およびコーティングといった多様な水性または含水用途用の消泡剤および界面活性剤として市販されている。これまで、それらの接着剤における使用は、ポリマーエマルジョンおよび水相溶性添加剤をベースとする含水組成物に限られてきた。それらは、有機溶媒またはモノマーが組成物中の主要な液体種である有機コーティングまたは接着剤に使用することは推奨されていない。アセチレン性アルコールまたはジオールを水系組成物に使用しても、それらによる利益は消泡剤または界面活性剤としてのそれらの機能から派生する効果に一般に限られる。従って、本発明の好ましい態様の組成物の使用により多様な金属表面への接着性が著しく改善されることは予想外である。
【0012】
特定の理論に拘束されることを意図するものではないが、アセチレン性ジオール型接着促進剤の使用により得られた有益な効果に対する可能な説明は、1または2以上の金属接着についての理論的説明から導きだすことができる。これらの理論としては、それらに限られないが、各種電子供与体−受容体、水素結合、または双極子間相互作用現象が挙げられる。この意味で、アセチレン性ジオール型接着促進剤は、アセチレン性部分の電子供与能力またはヒドロキシル部分の水素結合能力のいずれか一方または両方が接着過程に関与しうるという少なくとも2種類の方法で機能する可能性を有する。好ましい2−ブチン−1,4−ジオールのオレフィン性または二重結合型の類似物、即ち、上記構造の三重結合を二重結合で置換した2−ブテン−1,4−ジオールは、本発明の改善を付与しない点で証拠が見出されうる。また、2−ブチン−1,4−ジオールのビス酢酸エステルも、本発明と同じ改善を付与しない。従って、少なくとも1つのヒドロキシル部分と三重結合の存在が所望の改善を付与するのに必要であると考えられる。
【0013】
好ましい本発明の添加剤を単独の接着促進剤として組成物に添加してもよいが、これを別の酸性の接着促進剤と組合わせることが特に有用である。酸性の接着促進剤がアクリレートもしくはメタクリレート系構造用接着剤の金属への接合強度に影響を及ぼすことができることは、本技術分野では公知である。従来の酸性接着促進剤としては、アクリル酸およびメタクリル酸などの不飽和モノカルボン酸、マレイン酸およびフマル酸などの不飽和ジカルボン酸、ならびにモノおよびビスメタクリロイルオキシエチルホスフェートなどの不飽和リン酸エステルが挙げられる。
【0014】
アクリレートまたはメタクリレート系構造用接着剤の金属接合能力に影響する因子は複雑で相互に影響しあう。それらは、金属表面および酸性接着促進剤が接着剤組成物の反応性に及ぼす触媒的もしくは阻害的作用、ならびに特定の金属表面が接合の初期密着性および耐久性に及ぼす作用を包含する。例えば、亜鉛および銅は、接着剤の硬化に対して、その具体的な処方組成に応じて、触媒的または阻害的に作用することがある。鉄およびアルミニウムの表面に存在する酸化鉄および酸化アルミニウムは、初期接合強度および接合の耐久性に対して異なる挙動を示す。
【0015】
アクリル酸およびメタクリル酸は、一般にアクリレートおよびメタクリレート系構造用接着剤の鉄系金属への接合能力を高め、一般にそれらの硬化速度を高める。マレイン酸は一般に亜鉛表面への接着性を高め、不飽和リン酸エステル類は一般に未調整アルミニウムおよびステンレス鋼表面への接合の接着性および耐久性を高める。これらの酸性接着促進剤の組合わせを使用して、金属または非金属材料の特定の用途または組合わせのための接着剤を処方することができる。
【0016】
本発明の好適態様に対する1つの根拠は、従来の金属接着促進剤をある種の接着剤処方組成物中で評価するかまたは組み込んでも、ある特定の処方組成物が、別の望ましい特性を備えていたとしても、1または2以上の金属基体に対しては望ましいレベルの接着性を付与しないことがあることである。このような処方組成物において、本発明の好ましいアセチレン性ジオール型接着促進剤を添加すると、金属接着における所望の改善を付与することができる。具体的な改善としては、それらに限られないが、接合強度の増大、および望ましくない接着破壊モードに対する望ましい凝集破壊モードの割合の増大、ならびに好ましくはその両者が挙げられる。凝集破壊とは、試験中または使用中の接合剥離時に、破壊が接着剤層内で起こり、接合された2枚の基体片の両方に接着剤が残る接合破壊のモードのことである。一方の接着破壊モードでは、接着剤が一方の基体片からきれいに剥がれてしまい、その表面には接着剤の残渣が残らない。
【0017】
この好ましい本発明の組成物が適用されうる接着剤群に関する詳しい情報は、米国特許第3,890,407号、第4,182,604号、第4,223,115号、第4,536,546号、第4,645,810号、第4,714,730号、第4,942,201号、ならびにD. J. DamicoによるEngineered Materials Handbook, 第3巻、119 ASM International, 1990の概説、に見出すことができる。これら全ての文献を参考としてここに援用する。
【0018】
ここでの説明のために、重合性ビニル、アクリレートおよびメタクリレートモノマーとしては、上掲の米国特許第4,182,604号に開示されているものが挙げられ;可溶性もしくは分散性ポリマーとしては上掲の米国特許第4,182,604号および第4,536,546号、に開示されているものが挙げられる。触媒および開始剤種は、上に列挙した文献に記載されているものを含む従来技術において一般に認められているもの全てを包含する。
【0019】
本発明の特に好ましい組成物は下記成分を含む:
A.重合性ビニルモノマー、好ましくはアクリレートもしくはメタクリレートエステルモノマー20〜90%、
B.可溶性もしくは分散性ポリマーまたはポリマー混合物10〜60%、および
C.アセチレン性ジオール0.1〜10%。
【0020】
好ましくは、本組成物は、重合性の酸性接着促進剤またはその混合物0.5〜20%をさらに含有する。
本組成物の性能を高めるための他の添加剤も必要に応じて添加しうる。
【実施例】
【0021】
下記実施例で使用した成分は次の通りである。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
例Aは対照例であり、好ましい本発明例は例B〜Dである。これらの例、特に例BおよびCは本発明のアセチレン性ジオール成分を含んでいない組成物に対する、本発明の好適態様の組成物についての改善された接着性を示している。ただし、これらの例はここに開示した本発明の範囲に制限を加えるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種もしくは2種以上のビニルモノマー、1種もしくは2種以上の可溶性もしくは分散性ポリマー、ならびにアセチレン性ジオール型接着促進剤を含み、好ましくはアセチレン性ジオールが一般式:
【化1】

(式中、R1,R2,R3およびR4はHおよびアルキル基から選ばれ、nは0以上である)の化合物、2−ブチン−1,4−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、エトキシル化2−ブチン−1,4−ジオールから選ばれ、そして好ましくは重合性の酸性接着促進剤をさらに含む、接着剤組成物、好ましくは有機接着剤組成物。
【請求項2】
酸性接着促進剤が、アクリル酸およびメタクリル酸などの不飽和モノカルボン酸、マレイン酸およびフマル酸などの不飽和ジカルボン酸、モノおよびビスメタクリロイルオキシエチルホスフェートなどの不飽和リン酸エステル、ならびにそれらの混合物よりなる群から選ばれる、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
重合性ビニルモノマー20〜90%、可溶性もしくは分散性ポリマーもしくはポリマー混合物10〜60%、ならびにアセチレン性ジオール0.1〜10%を含有し、アセチレン性ジオールが好ましくは一般式:
【化2】

(式中、R1,R2,R3およびR4はHおよびアルキル基から選ばれ、nは0以上である)の化合物、2−ブチン−1,4−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、およびエトキシル化2−ブチン−1,4−ジオールから選ばれる、有機接着剤組成物。
【請求項4】
重合性の酸性接着促進剤0.5〜20%をさらに含有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
酸性接着促進剤が、アクリル酸およびメタクリル酸などの不飽和モノカルボン酸、マレイン酸およびフマル酸などの不飽和ジカルボン酸、モノおよびビスメタクリロイルオキシエチルホスフェートなどの不飽和リン酸エステル、ならびにそれらの混合物よりなる群から選ばれる、請求項4に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
a)請求項1に記載の接着剤組成物を調製し、そして
b)この接着剤組成物を金属基体に付着させる、
ことを含む、金属基体の接着方法。

【公表番号】特表2009−521582(P2009−521582A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547652(P2008−547652)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/049224
【国際公開番号】WO2007/076108
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(504009491)アイピーエス・コーポレイション (3)
【氏名又は名称原語表記】IPS CORPORATION
【Fターム(参考)】