説明

金属板製棚板

【課題】 表裏を逆にすることにより、こぼれ止めのある棚板としても使用でき、またこぼれ止めのない棚板としても使用できる棚板であって、撓みの少ない棚板を提供しようとする。
【解決手段】 直角四辺形の底と、底の周縁に起立する4箇の側壁とからなる金属板製の浅い箱状の棚板を本体とし、本体を補強するために平らな天板とこれから起立する脚部とを持った構造の補強体を複数箇用意し、各補強体の脚部の高さを互いに等しくするとともに、本体側壁の高さよりも低くしておき、このような補強体の脚部を本体の底に向けて本体内に補強体を敷き詰め固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属板製棚板に関するものである。とくに、この発明は、金属板で作った棚、保管庫及びそれらの下部にキャスターを付設して移動可能としたワゴン等に用いられる棚板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属板製棚は、一般にスチール棚と云われているものである。金属板製棚は、金属板を折曲して支柱と棚板とを作り、これを組み立てて棚としたものである。金属板製保管庫は、金属板を折曲して作った扉付きの箱状体内に金属板製棚を着脱自在に、また配置変換可能に付設したものである。また金属板製ワゴンは、棚を構成している支柱の下方にキャスターを付設して、移動可能としたものである。
【0003】
金属板製棚は、例えば工場で製品や工具を保管収納するのに用いられ、金属板製保管庫は書類や工具を保管するのに用いられ、金属製ワゴンは、例えば工場や食堂で製品や食品を運ぶのに用いられている。
【0004】
このうち保管庫は、上述のように、棚板を着脱自在にまた配置変換可能とするものであるから、棚板は軽量であることが必要であり、また重量物を乗せたときに撓むものであってはならない。
【0005】
また、このうちの棚は、例えば特許第3437988号公報が開示しているように、複数枚の棚板とこの棚板を四隅で支える4本の支柱とで構成されるものである。この構造のものは、組み立てると大きな体積を占めるものとなるが、分解すれば小さな体積のものとなるので、貯蔵及び運搬の便宜から組み立て及び分解して使用される。そのため、棚板は軽量であることが必要とされる。また、棚板としては保管庫と同様に製品や工具を乗せたときに撓むものであってはならない。
【0006】
ワゴンについても同様であって、これに使用される棚板は軽量であって撓みの少ないものであることが要求される。
【0007】
その結果、これらに用いられる棚板は、金属板を折曲して直角四辺形の底と底の周縁に起立する4箇の側壁とからなる浅い箱状にされた。
【特許文献1】特許第3437988号公報
【0008】
金属板製の浅い箱状の棚板は、側壁を上に向けて付設すると、四辺にこぼれ止めの付設された棚板となり、逆に側壁を下に向けて付設すると、四辺にこぼれ止めのない全体が平坦な棚板として使用することができる。四辺にこぼれ止めが付設された棚板は小物を載置するのに便利であるが、重量物を乗せたり取り出したりするときには、こぼれ止めが障害となるので却って不便であって、こぼれ止めのない棚板が重量物を載置するのに便利である。従って組立式の金属板製棚では、表裏を顛倒させてこぼれ止めの有るものと無いものとの二様に使用できることが便利であるとされている。ワゴン及び保管庫においても同様である。
【0009】
ところが、上述の単に浅い箱状に成形しただけの従来の棚板は、支点間距離の長いところに用いたり、その上に重量物を乗せたりすると大きく撓むという欠点がある。そこで、この撓みをできるだけ少なくすることが必要とされる。
【0010】
棚板が合成樹脂で作られているときは、棚板の撓みを少なくするのに棚板を中空とし、その内部に補強リブを付設した構造に成形することが知られている。その場合、補強リブは棚板の厚み方向に幅を持った帯状のものとされ、幅の両側で棚板の外殻に連なり、棚板の長手方向に延びるものとされる。このような棚板は、例えば特開平8−80226号公報及び特開平8−294422号公報に記載されている。しかし、棚板が金属で作られているときは、棚板をこのような構造に成形することは容易でない。
【特許文献2】特開平8−80226号公報
【特許文献3】特開平8−294422号公報
【0011】
金属板製棚板を補強する試みの1つは、特開平11−266938号公報に記載されている。この公報は、棚板に補強材を固定することを開示しているというよりは、むしろ補強材を棚板に係止させるための特殊な手段を開示している。その係止手段は棚板に裏側へ突出する筒状部を設け、補強材に貫通孔を設け、筒状部を貫通孔内に挿入し筒状部の先を外側へ折曲して係止させるというものである。この公報は補強材としては棚板の幅方向の両端に横断面がZ形の帯状金属板を固定し、幅方向の中央部に横断面が皿形の帯状金属板を付設することとして、その間には何も付設しない空間を設けている。従ってこの棚板は、裏面には幅方向に大きな段差が存在している。そのためこの棚板は裏面を上にして使用することができない。
【特許文献4】特開平11−266938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明は、表裏を逆にすることにより、こぼれ止めのある棚板としても使用でき、またこぼれ止めのない棚板としても使用できる、という棚板の便宜を残したままでこれを補強し、撓みの少ない棚板を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、この発明は直角四辺形の浅い箱状棚板を本体とし、これに補強体を付設して棚板本体の撓みを少なくしようとするものである。この発明は、これを簡単に云えば、箱状棚板の内部に補強体によって箱の上げ底に相当する平面を作り、これによって棚板本体を補強しようとするものである。そのために、この発明は補強体として平らな天板とこれから起立する脚部とを持った構造のものを複数箇用意し、各補強体の脚部の高さを互いに等しくするとともに、浅い箱状棚板の側壁の高さよりも低くしておき、このような補強体を箱状棚板の中に敷き詰め、補強体を箱状棚板に固定して、複数箇の天板の隣接によって箱状棚板の中に上げ底に相当する平行な平面を形成することを骨子とするものである。
【0014】
すなわち、この発明は直角四辺形の底と、底の周縁に起立する4箇の側壁とからなる金属板製の浅い箱状の棚板本体と、その内部に付設される複数箇の金属板製補強体とからなり、各補強体は平らな天板と、天板から起立する脚部とを備えており、脚部はその高さが互いに等しく且つ本体側壁の高さ以下とされ、脚部の先端が本体の底に当接し、天板が全体として本体の底を隙間なく覆って面一の平面を形成している状態にして、補強体を本体に固定したことを特徴とする、金属板製棚板を提供するものである。
【0015】
この発明で用いることができる金属としては、アルミニウム、銅などを用いることもできるが、好ましいのは鉄とステンレススチールである。金属板の厚みとしては、これまでスチール棚を構成するのに用いられてきた範囲内のものを用いることができる。とくに棚板本体としては、これまで用いられてきた浅い箱状の棚板をそのまま用いることができる。
【0016】
補強体は金属板を折曲して作ることが好ましい。とくに補強体の脚部は、天板の延長部を折曲して作ることが好ましい。またこの発明では必要により固定部を設けることとしているが、その固定部も天板の延長部を折曲して作ることが好ましい。
【0017】
補強体を本体に固定するには、樹脂による接着又は金属溶接によることができる。樹脂による接着は熱硬化性樹脂、例えばエポキシ樹脂を脚部の全面又は一部に塗布して本体の側壁に接着することが好ましい。また金属溶接の場合には補強体に固定部を付設して、固定部の一部を本体側壁にスポット溶接することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係る金属板製棚板は、従来用いられてきた棚板、すなわち直角四辺形の底と、底の周縁に起立する4箇の側壁とからなる金属板製の浅い箱状の棚板を棚板本体とし、そのほかに複数箇の金属板製補強体を用い、補強体を本体内に付設して構成される。補強体は平らな天板と、天板から起立する脚部とを備えており、脚部はその高さが互いに等しく且つ本体側壁の高さ以下とされているので、補強体を本体内に敷き詰めると補強体の天板は本体内で本体の底と平行な面一の平面を構成することとなる。この状態で補強体を本体に固定すると得られた棚板は内部に上げ底が形成されたような構造となる。従ってこの棚板は補強体によって補強されて撓みが少ないものとなっている。
【0019】
一般にこぼれ止めのある棚板は、小物を載置するときに便利であるが、重量物を載置するときはこぼれ止めが却って邪魔になるので、こぼれ止めのない棚板が必要となる。このような場合、この発明の棚板は棚板本体の底を上にするときは、こぼれ止めのない棚板として使用でき、これを裏返せばこぼれ止めのある棚板とすることができるので、まさしく上述の必要を満たしたものとなっている。この点でこの発明は実用上大きな利益をもたらすものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明を実施の一例について図面に基づいて説明すると、次のとおりである。
【0021】
図1は、この発明に係る金属板製棚板の一部切欠斜視図である。図2は、図1に示した金属板製棚板の一部切欠拡大分解斜視図である。図3は、この発明に係る他の金属板製棚板の一部切欠斜視図である。図4と図5とは、この発明に係るさらに別の金属板製棚板の一部切欠拡大分解斜視図である。図6は、この発明で用いることのできるさらに他の補強体の一部切欠斜視図である。
【0022】
図1において、この発明に係る金属板製棚板Aは、棚板本体1内に補強体2を隙間なく敷き詰めて作られている。棚板本体1は直角四辺形の底11と、底11の周縁に起立する4箇の側壁12、13、14及び15とで構成された浅い箱状体である。その四隅は側壁の端同士が溶接されて隙間のない状態になっていてもよいが、溶接されないで側壁の端同士が近接するだけでその間に隙間が形成されていてもよい。棚板本体1は従来棚板として用いられていたものである。
【0023】
図1において、各補強体2は、平らな天板21と、天板21の延長部を底11がわへ起立させて作られた脚部22と、天板21の延長部を反対がわへ起立させて作られた固定部23とを備えている。各補強体の脚部22の高さは互いに等しいものとされ、また本体1の側壁12〜15の高さより小さくされる。とくに、脚部22の高さは固定部23の先端が側壁12〜15の先端より突出しないようにされる。脚部22は天板21の四辺のうち、対向する少なくとも二辺に沿って付設される。
【0024】
補強体2は、脚部22を本体1の底11に向けて本体1の箱体の中に入れられ、脚部22の先端を底11に当接して付設される。こうして、補強体2を本体1の内部に敷き詰め、天板21が全体として本体1の底11を隙間なく覆った状態にする。すると、天板21は互いに近接して、底11と平行な一様な高さの平面を形成することとなる。この状態で補強体2の固定部23を本体1の側壁13と15とに固定する。こうして、この発明に係る棚板Aが作られる。
【0025】
図2は図1の棚板Aを構成する際に、本体1とその中に入れられる補強体2の構造の詳細を示している。本体1の短辺がわの側壁12が延びる方向では、補強体2は天板21の辺のほぼ全長にわたる脚部22を備えている。脚部22は天板21の対向する一組の辺に沿って付設される。脚部22はその高さが一様で互いに等しいものとされる。補強体2は本体1の長辺がわの側壁13が延びる方向では、実質的に全長にわたって延びる固定部23を備えている。
【0026】
補強体2が本体1内に入れられ、脚部22の先端が底11に当接すると、天板21は底11に平行な平面となる。このとき、固定部23の先端は側壁13等の先端と同じ高さになるか、又は側壁13の先端よりも低い位置にあるものとされる。固定部23は側壁13に密接するようにされる。こうして、固定部23は側壁13に接着又はスポット溶接されて、補強体2は本体1内に固定される。
【0027】
図1の棚板Aは、複数箇の補強体2が本体1の長手方向に並べられている例であるが、図3の棚板Bは複数箇の補強体2が本体1の幅方向に並べられている例である。この発明に係る棚板は、図3に示すように、補強体2が本体1の長手方向に貫通して付設されていてもよい。図3に示した補強体2は、天板21の長手方向の辺に沿って脚部22を備え、幅方向の辺に沿って固定部23を備えている。天板21は全体として底11を隙間なく覆い、底11に平行な面一の平面を構成している。また固定部23は幅方向では側壁12と14との内面を隙間なく覆っている。
【0028】
図4に示した棚板Cは補強体が浅い箱状にされている例である。この発明ではこのような補強体を用いることができる。図4に示した補強体2は、天板21の四辺の延長部が同じ方向に垂直に起立せしめられて何れも脚部22を構成している。脚部22は接着によって本体側壁に固定される。
【0029】
図5は、図4の補強体にさらに固定部23が付設された例を示している。固定部は側壁13に接する脚部22の一部に切目が入れられ、一部が反対側へ垂直に起立せしめられて固定部23となっている。図5には示されていないが、側壁13に対向する本体のもう1つの側壁に接する脚部にも、固定部23と同様な固定部が形成される。こうして作られた固定部23はスポット溶接で側壁に固定されて補強体2が本体1に固定されてもよい。
【0030】
図1〜図5に示した補強体2では、脚部22の先端が天板21から起立したままの状態となっている。しかし、脚部22は図6に示したように、先端がさらに内側へ折曲されて、折曲された先端部24が天板21と平行な平面を形成していてもよい。先端部24の外面は補強体2が本体1内に設置されたとき、底11に密接することとなる。図6に示した補強体2は矢印X方向の撓みが、図2に示した補強体2よりも少なくなっている。
【0031】
図2及び図6に示したように、天板21に対して固定部23が脚部22と反対がわへ起立されている補強体では、固定部23は天板21の一辺の端から端までに延びていることが好ましい。なぜならば、このような固定部23は本体の側壁上で隙間なく並んで、見栄えがよく、また強固に固定できて補強の効果も大きいからである。脚部22も天板21の他辺上で端から端まで延びていてもよいが、また図2に示したように端に至るまでに切断されて消失していてもよい。
【0032】
この発明に係る棚板では、本体と補強体とが一体に固定され、本体の底と補強体の天板とが互いに平行に延びてその間に隙間が形成されているので、重量の割には撓みの少ないものとなっており、従って軽量で撓みの少ないものとなっている。また各補強体の天板が面一となって本体の内部にあり、しかも本体の底と平行に延びているので、天板を上にするとこぼれ止めのある棚板として使用でき、逆に天板を下にするとこぼれ止めのない棚板として使用できるので便利である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明に係る金属板製棚板の一部切欠斜視図である。
【図2】図1に示した金属板製棚板の一部切欠拡大分解斜視図である。
【図3】この発明に係る他の金属板製棚板の一部切欠斜視図である。
【図4】この発明に係るさらに別の金属板製棚板の一部切欠拡大分解斜視図である。
【図5】この発明に係るさらに他の金属板製棚板の一部切欠拡大分解斜視図である。
【図6】この発明で用いることのできるさらに他の補強体の一部切欠斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
A、B、C 金属板製棚板
1 棚板本体
2 補強体
11 底
12、13、14、15 側壁
21 天板
22 脚部
23 固定部
24 先端部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直角四辺形の底と、底の周縁に起立する4箇の側壁とからなる金属板製の浅い箱状の棚板本体と、その内部に付設される複数箇の金属板製補強体とからなり、各補強体は平らな天板と、天板から起立する脚部とを備えており、脚部はその高さが互いに等しく且つ本体側壁の高さ以下とされ、脚部の先端が本体の底に当接し、天板が全体として本体の底を隙間なく覆って面一の平面を形成している状態にして、補強体を本体に固定したことを特徴とする金属板製棚板。
【請求項2】
各補強体の天板が、本体の底を形成している直角四辺形を一辺に平行に切断しただけの正方形又は矩形にされていることを特徴とする、請求項1に記載の金属板製棚板。
【請求項3】
補強体の脚部が、天板の延長部分を天板に垂直に折曲することによって形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の金属板製棚板。
【請求項4】
補強体の脚部が、正方形又は矩形の天板の少なくとも一組の対向する周縁に形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の金属板製棚板。
【請求項5】
補強体にはこれを本体に固定するための固定部が付設され、固定部は本体側壁に接する天板周縁に付設された天板延長部を脚部と反対がわに折曲して形成されていることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1つの項に記載の金属板製棚板。
【請求項6】
脚部の先がL字状に内側へ折り曲げられて天板と平行な平面を形成していることを特徴とする、請求項1〜5の何れか1つの項に記載の金属板製棚板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−130102(P2006−130102A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323100(P2004−323100)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(593087248)株式会社アサヒ (13)