説明

金属構造物用化成処理液および表面処理方法

【課題】金属構造物に優れた耐食性、塗料密着性、電着塗装付き廻り性を付与し、かつ、スラッジの発生がない化成処理液および表面処理方法の提供。
【解決手段】(A)Geおよび/またはSnおよび/またはCuの化合物;(B)Tiおよび/またはZrの化合物;(C)硝酸塩;(D)Alおよび/またはMgの化合物;(E)Zn化合物;および(F)F化合物を含む水性化成処理液、ならびに、化成処理液による金属構造物の表面処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属、特に金属構造物の表面に優れた耐食性と塗料密着性を付与するための新規な金属表面処理用の化成処理液および金属構造物の表面処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属の耐食性や塗料密着性付与の向上を目的として化成処理を施すことは古くから知られている。最も一般的な化成処理として、酸性のリン酸水溶液をベースとするリン酸塩処理が挙げられる。金属材料として最も一般的な鋼材を処理した場合、リン酸処理液と鋼材が接すると鋼材表面がエッチング(腐食現象)され、リン酸が消費されて、結果として固液界面のpH上昇が生じる。これにより不溶性のリン酸塩が鋼材表面に析出する。前記処理液に亜鉛やマンガンなどを共存させることにより、リン酸亜鉛やリン酸マンガンなどの結晶性の塩を析出させることができる。これらのリン酸塩皮膜は、塗装下地として好適であり、塗料密着性の向上や塗膜下腐食を抑制し、耐食性を大幅に向上させるなどの優れた効果を発揮する。
【0003】
リン酸塩処理自体は実用化されてから既に100年近く経過しており、その間に数々の改良発明が提案されている。しかしながら、鋼材をエッチングするために、化成反応の副生物として溶出した鉄が生じる。この鉄はリン酸鉄として系内で沈殿させ定期的に系外へ排出している。一般的に沈殿物はスラッジと呼ばれている。現状、このスラッジは産業廃棄物として投棄されるかタイルなどの原料の一部としてリユースされているが、近年の地球環境保全を目的に、産業廃棄物の低減は大きな課題となっており、このために、廃棄物が生じない化成処理液や表面処理方法が強く望まれている。
【0004】
次いで代表的な化成処理として、クロメート化成処理が挙げられる。クロム酸クロメート化成処理の実用化の歴史も深く、現在も航空機材料、建築材料、自動車部品などの表面処理に広く使用されている。このクロメート化成処理液は、6価クロムからなるクロム酸を主成分として含有するので、金属材料表面上に6価クロムを一部含有する化成皮膜を形成する。クロメート化成皮膜は優れた耐食性と塗料密着性を有するものの、有害な6価クロムを含有しているので、環境上の問題から6価クロムを全く含有しない化成処理液、化成皮膜が強く望まれている。
【0005】
一方、自動車に代表される輸送用の金属構造物は、防食性能を付与するために電着塗装を施している。この場合、金属構造物の化成処理後に乾燥することなく電着塗装を行うことが世界的に一般的な塗装方法となっている。電着塗装は、電解処理により塗料を析出させているために、比較的、塗料膜厚が均一になりやすい。このため構造物の塗装に適している。しかしながら、自動車車体や部品のような特に複雑な構造物の場合には、構造上電気が流れにくい箇所が生じる。このため、袋構造物などでは、外面と内面の塗料膜厚に差異が生じる。一般的に、電着塗装付き廻り性と呼ばれており、これの高いものが望まれている。
【0006】
電着塗装付き廻り性の改善に関しては、幾多の発明が考案されている。
例えば、特許文献1には、基体樹脂としてアルキルフェノールおよびポリカプロラクトンで変性したアミン付加エポキシ樹脂(I)、硬化成分としてブロック化ポリイソシアネート硬化剤(II)を含有するカチオン電着塗装組成物を用いて、袋構造を有する被塗物の電着塗装時における、塗膜の単位膜厚当たりの分極抵抗値(a)が125〜150kΩ・cm/μmであり、かつ単位電気量当たりの塗料析出量(b)が28〜50mg/Cの条件にて、付き廻り性における内板/外板の膜厚(c)が、内板膜厚が10μmで外板膜厚が10〜12μmで内板膜厚と外板膜厚の比が10/10〜12である塗膜を得る電着塗膜形成方法と、この方法に使用するカチオン電着塗装組成物および該方法で塗装された塗装物品が示されている。
【0007】
特許文献2には、カチオン電着塗装における付き廻り性を高めるために、カチオン電着塗料を使用して、電着塗装時の塗料特性を以下のパラメーター:
(a)塗料の電気電導度が0.16S/m以上、
(b)塗膜の電気電導度が1.0×10−7S/m以下、
(c)析出無効電気量が320クーロン/m以下、および
(d)電気化学当量が1.0×10−4kg/クーロン以上、
に調整して電着塗装を行う方法が示されている。
【0008】
前記のように自動車車体に代表される複雑構造物では、電着塗装の付き廻り性は重要な課題である。しかしながら、この解決手段として従来は、塗料の改良や電着条件の改善といった塗装側からのアプローチしかなされていないのである。一般的に、リン酸塩は比較的高い電着付き廻り性を有しているが、代替技術を実用化するにあたっては、これと同等以上の電着付き廻り性を付与することが重要な課題であり、より好ましくは下地処理である化成皮膜側から付き廻り性を改善することが望まれる。
【0009】
リン酸塩処理以外で、かつ6価クロムを含有しない化成処理液、表面処理方法として、非常に多くの発明が提案されているが、実際に工業化できている技術は、それほど多くはなく、それらについて以下に記述する。
【0010】
クロムを全く含有しないノンクロメートタイプの化成処理液の代表的な発明としては、特許文献3に開示の処理液が挙げられる。この化成処理液は、ジルコニウムまたはチタンあるいはこれらの混合物と、リン酸およびフッ化物とを含有し、かつpHが約1.5〜4.0の酸性の水性コーティング溶液である。この化成処理液を用いて金属表面を処理すると、金属表面上にジルコニウムまたはチタンの酸化物を主成分とする化成皮膜が形成される。このノンクロメートタイプの化成処理液は、6価クロムを含有しないという利点を有しており、ビールなどの飲料缶に使用されるアルミニウムD&I缶の表面処理等に実際に広く用いられている。これは、一般的にジルコニウム系あるいはチタン系と呼ばれるノンクロム化成処理液の範疇に入る古典的な技術である。
【0011】
特許文献4に開示の処理方法は、アルミニウム、マグネシウムおよびその合金の表面に、チタン塩またはジルコニウム塩の1種または2種以上とイミダゾール誘導体の1種または2種以上と、硝酸、過酸化水素、過マンガン酸カリウム等の酸化剤を含有する水溶液を用いて表面処理するものである。酸化剤は、チタンやジルコニウムの析出を促進するものである。前記、ジルコニウム系あるいはチタン系と呼ばれるノンクロム化成処理液の改良技術の範疇にある。
【0012】
ノンクロメートタイプ処理液としてはさらに以下の提案が挙げられる。
特許文献5には、バナジウム化合物と、チタニウム塩、ジルコニウム塩および亜鉛塩の群から選定された少なくとも1種の化合物を含む水溶液よりなる化成処理液が開示されている。前記のジルコニウムおよびチタン系のノンクロム化成処理液にバナジウムを複合させたものである。
【0013】
特許文献6には、金属アセチルアセトネートと水溶性無機チタン化合物および水溶性無機ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する酸性の金属表面処理液が開示されている。この処理液はバナジルアセテート、ジルコニウムアセテート、亜鉛アセテートなどを用いるものであり、前記、ジルコニウムおよびチタン系のノンクロム化成処理液に金属アセテートを複合させたものである。
【0014】
特許文献7には、0.01〜50g/Lの過マンガン酸またはその塩と、0.01〜20g/Lの水溶性チタン化合物および水溶性ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有し、かつ1.0〜7.0のpHを有する軽金属または軽合金材料用表面処理液が提案されている。マンガン−チタン系またはマンガン−ジルコニウム系と呼ばれるノンクロム化成処理液の範疇にある。
【0015】
特許文献8には、ヘキサシアノ酸イオンと、Ti、V、Mn、Fe、Co、Zr、MoおよびWからなる群から選ばれる1種類以上の金属イオンを含有するアルミニウムおよびアルミニウム合金用の高耐食性クロムフリー化成皮膜処理剤が開示されている。コバルト以外は前記提案で挙げられた元素である。
【0016】
特許文献9には、金属表面への表面処理により生成された皮膜が、複数の金属元素を含み、少なくとも一つの前記金属元素が複数の価数を有するクロムフリー金属表面処理組成物が提案されている。実際には、前記金属元素として、Mg、Al、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Nb、Y、Zr、Mo、In、Sn、TaおよびWのうちの少なくとも2種類以上を用いる金属表面処理組成物である。ジルコニウム系、チタン系、バナジウム系、タングステン系、モリブデン系、マンガン系のノンクロム化成処理液を拡大したものと考えられる。
【0017】
また、特許文献10には、(1)Hf(IV)、Ti(IV)およびZr(IV)から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む化合物A、(2)上記化合物Aに含まれる金属の合計モル濃度の少なくとも5倍モル濃度のフッ素を組成物中に存在させるに十分な量のフッ素含有化合物、(3)アルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属イオンB、(4)Al、Zn、Mg、MnおよびCuから選ばれる少なくとも1種の金属イオンC、(5)硝酸イオン、を含有するアルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウムまたはマグネシウム合金用の表面処理用組成物が提案されている。この処理液も広義に捉えれば、ジルコニウム系、チタン系のノンクロム化成処理液の延長線上にある。
【0018】
さらに、特許文献11には、水溶性ジルコニウム化合物および/または水溶性チタン化合物(1)と有機ホスホン酸化合物(2)とからなるノンクロム金属表面処理剤で被処理物を処理する工程(A)、ならびに、前記工程(A)を行った被処理物をタンニン(3)の水溶液で処理する工程(B)からなるノンクロム金属表面処理方法であって、前記水溶性ジルコニウム化合物および/または前記水溶性チタン化合物(1)の含有量は、ジルコニウムおよび/またはチタンの量として質量基準で40〜1000ppmであり、前記有機ホスホン酸化合物(2)の含有量は、質量基準で20〜500ppmであり、前記ノンクロム金属表面処理剤は、pHが1.6〜4.0であり、前記水溶液中の前記タンニン(3)の含有量は、質量基準で400〜10000ppmであることを特徴とするノンクロム金属表面処理方法が提案されている。この処理液も広義に捉えれば、ジルコニウム系、チタン系のノンクロム化成処理液の延長線上にある。
【0019】
特許文献12には、水溶性ジルコニウム化合物および/または水溶性チタン化合物(1)と有機ホスホン酸化合物(2)とからなるノンクロム金属表面処理剤で被処理物を処理する工程(A)、ならびに、前記工程(A)を行った被処理物をタンニン(3)の水溶液で処理する工程(B)からなるノンクロム金属表面処理方法であって、前記有機ホスホン酸化合物(2)は、ホスホン基を構成するリン原子が炭素原子と結合したものであり、前記水溶性ジルコニウム化合物および/または前記水溶性チタン化合物(1)の含有量は、ジルコニウムおよび/またはチタンの量として質量基準で20〜800ppmであり、前記有機ホスホン酸化合物(2)の含有量は、質量基準で10〜500ppmであり、前記タンニン(3)の水溶液は、タンニン濃度が質量基準で300〜8000ppmであり、前記ノンクロム金属表面処理剤は、pHが1.6〜4.0であり、熱可塑性ポリエステル系樹脂被覆金属板の製造に用いられることを特徴とするノンクロム金属表面処理方法が提案されている。先と同様にジルコニウム系、チタン系のノンクロム化成処理液の延長線上にある。
【0020】
特許文献13には、水性酸性液状組成物が、(A)Ti、V、Mn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、PdおよびWからなる群から選択される少なくとも一種、(B)有機酸および/または無機酸および/またはこれらの塩からなる群から選択される少なくとも一種、ならびに、(C)任意成分としてフッ素を含有するものであり、前記水性液状組成物が3価クロム、Ti、V、Mn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、W、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Al、Fe、Ni、Co、Si、Sr、In、Ag、Zn、Cu、Sc、有機酸、無機酸、有機酸塩、無機酸塩、アミノ酸、アミノ酸塩、フッ素、アミン類、アルコール類、水溶性ポリマー、界面活性剤、シランカップリング剤、カーボンパウダー、染料、顔料、有機コロイドおよび無機コロイドからなる群から選択される少なくとも一種を含有する処理液が挙げられている。先と同様にジルコニウム系、チタン系のノンクロム化成処理液の延長線上にある。
【0021】
特許文献14には、化成処理液によって被処理物を処理し、化成皮膜を形成する塗装前処理方法であって、前記化成処理液は、ジルコニウム、チタンおよびハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種、フッ素、ならびに、アミノ基含有シランカップリング剤、その加水分解物およびその重合物からなる群より選ばれる少なくとも一種からなる塗装前処理方法が提案されている。先と同様にジルコニウム系、チタン系のノンクロム化成処理液の延長線上にあり、これに既知の技術であるシランカップリング剤を加えたものである。
【0022】
特許文献15には、ジルコニウム、チタンおよびハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種、フッ素、ならびに、密着性および耐食性付与剤からなる化成処理液であって、上記密着性および耐食性付与剤は、亜鉛、マンガン、および、コバルトイオンからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属イオン(A)1〜5000ppm(金属イオン濃度)、アルカリ土類金属イオン(B)1〜5000ppm(金属イオン濃度)、周期律表第三属金属イオン(C)1〜1000ppm(金属イオン濃度)、銅イオン(D)0.5〜100ppm(金属イオン濃度)、および、ケイ素含有化合物(E)1〜5000ppm(ケイ素成分として)からなる群より選ばれる少なくとも一種である化成処理液が提案考案されている。先と同様にジルコニウム系、チタン系のノンクロム化成処理液の延長線上にあるが、密着性付与剤として亜鉛イオン等やアルカリ土類金属イオン、周期律表第3属金属イオン(好ましくはアルミと記載)、銅イオン等、ケイ素含有化合物などを添加している。
【0023】
特許文献16には、ジルコニウム、チタンおよびハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種、フッ素、密着性付与剤、ならびに、化成反応促進剤からなり、上記密着性付与剤は亜鉛などの金属イオン、ケイ素含有化合物、アミノ基を有し、少なくとも構成単位として−(−CH−CHNH−)−または−(−CH−CHCHNH−)−を有する水溶性樹脂、エポキシ化合物、ならびに、シランカップリング剤の群から選ばれる少なくとも一種であり、上記化成反応促進剤は亜硝酸イオン、ニトロ基含有化合物、有機酸等の群から選ばれる少なくとも一種であり、その配合量は1〜5000ppmである化成処理液が提案されている。先と同様にジルコニウム系、チタン系のノンクロム化成処理液の延長線上にあるが、有機物を配合しており、以下に示す樹脂―金属系のノンクロム化成処理液に近い。
【0024】
一方、アルミニウム含有金属材料などに、耐食性および塗料密着性の付与を目的とする化成処理液や化成処理方法において、水溶性樹脂を用いるものが、特許文献17〜特許文献23などに開示されている。これら従来例の化成処理液や化成処理方法は、金属表面を多価フェノール化合物の誘導体を含む溶液で処理するものである。これらは樹脂系または樹脂―金属複合系のノンクロム化成処理液と呼ばれる範疇にある。
【0025】
特許文献24には、ジルコニウム化合物、フッ素イオン、水溶性樹脂およびアルミニウム塩を含み、前記ジルコニウム化合物の濃度がジルコニウムイオン換算で100〜100000ppm、前記フッ素イオン濃度が125〜125000ppm、前記水溶性樹脂の不揮発分濃度が100〜100000ppm、前記アルミニウム塩の濃度がアルミニウムイオン換算で10〜10000ppmであるアルミニウム用ノンクロム防錆処理液が提案されている。これも前述の樹脂系とジルコニウム系を組み合わせたノンクロム化成処理液である。
【0026】
一方、完全なノンクロムではないが、有害な6価クロムを含有しない3価クロムを用いる化成処理液が提案されている。特許文献25には、リンを含有する酸基を有する酸イオン(A)と3価クロムイオン、および3価クロムを有する化合物イオンから選ばれる少なくとも1種のイオン(B)とフッ化物、錯フッ化物から選ばれる少なくとも1種のフッ素化合物(C)を含有するアルミニウムおよびアルミニウム合金用6価クロムフリーの化成表面処理液が提案されている。3価クロム系と呼ばれる範疇に属す。
【0027】
特許文献26には、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材を酸性水溶液を用いて10〜70℃で5秒間〜5分間処理した後に用いる化成処理液であって、前記酸性水溶液は、(a)Fe、Ni、Co、MoおよびCeから選ばれる金属の塩ならびに金属酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を前記酸性水溶液の0.01〜5質量%、ならびに、(b)無機酸を含有するpH2以下の酸性水溶液であり、前記化成処理液は、(c)Zrおよび/またはTiを前記化成処理液の0.001〜1質量%、(d)3価クロムイオンまたはその塩を前記化成処理液の0.1〜1000ppm、ならびに、(e)フッ化物を含有する化成処理液が提案されている。前記特許文献25に近似し、3価クロム系に属す。
【0028】
特許文献27には、(A)3価のクロムイオン、(B)Mo、W、Ti、Zr、Mn、Tc、Fe、Ru、Co、アルカリ土類金属、Ni、Pd、Pt、Sc、Y、V、Nb、Ta、Cu、AgおよびAuからなる群のうち少なくとも1種、(C)塩素、フッ素、硫酸イオン、硝酸イオンからなる群のうちの1種以上、および(D)リンの酸素酸、酸素酸塩、無水物、リン化合物からなる群の1種以上を含有する液体組成物により防錆被膜を形成する金属の着色防錆被膜形成方法が提案されている。この発明も基本的に前記、特許文献25に近似し、3価クロム系に属す。
【0029】
特許文献28には、金属表面を少なくとも1つの3価クロムキレート錯体の溶液で処理して6価クロムを含有しない化成皮膜を生成する方法において、前記溶液中で前記キレート錯体の3価クロムは5ないし100g/lの濃度で存在し、前記3価クロムキレート錯体は、3価クロム−フルオロ錯体におけるフッ化物置換速度に比べて速い配位子置換速度を有する溶液を用いることが提案されている。3価クロム系に属す。
【0030】
また、亜鉛ダイキャストには同様の技術が使われている場合も多い。特許文献29には、亜鉛または亜鉛合金上の、無6価クロムかつ含3価クロムの実質的にコヒーレントな転化層であって、ケイ酸塩、セリウム、アルミニウムおよびホウ酸塩等の、さらなる成分の不存在下で、DIN 50021 SS若しくはASTMB117-73に従う塩スプレーテストにおいて、DIN50961 Chapter 10に従う最初の侵食まで、約100ないし1000時間の腐食保護を提供することと、澄んで、透明でかつ基本的に無色であるとともに、多色の光沢を呈することと、約100ないし1000nmの層厚を有することと、 硬質でかつ接着性が良好であるとともに拭くことに対して耐性を有する転化層という亜鉛上の3価クロムの皮膜に関する提案がされている。3価クロム系に属す。
【0031】
また、同一出願人が係わる特許文献30には、水溶性3価クロム化合物(A)、水溶性Tiおよび/またはジルコニウム化合物(B)、水溶性硝酸化合物(C)、水溶性アルミニウム化合物(D)およびフッ素化合物(E)を含み、pH=2.3〜5.0に調整された水性酸性化成処理液を、金属材料表面に1〜60秒接触させ、水洗・乾燥して、0.02〜1mmol/m2のCrおよび0.02〜1mmol/m2のTiおよび/またはZrを含み、厚さ1〜100nmの化成皮膜を形成することが提案されている。3価クロム系に属す。
【0032】
さらに、特許文献31には、金属の表面に保護皮膜を形成させる方法において、(I)前記表面を水性酸性液状組成物の層で被覆する工程であって、前記組成物が水と、(A)陰イオン成分の各々が、(i)少なくとも4個のフッ素原子と、(ii)チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ケイ素およびホウ素からなる群から選ばれる少なくとも1個の元素と、任意成分として、(iii)1個以上の酸素原子とからなる陰イオン成分と、(B)コバルト、マグネシウム、マンガン、亜鉛、ニッケル、スズ、ジルコニウム、鉄、アルミニウムおよび銅からなる群から選ばれる陽イオン成分と、(C)前記組成物のpHを約0.5ないし約5.0の範囲内に保つに十分な量の遊離酸と、任意成分として、(D)直接乾燥によって有機薄層を形成する組成物を含み、成分(B)の陽イオン数が成分(A)の陰イオン数の1/3以上となる液状組成物である工程と、(II)水性酸性液状組成物層を中間濯ぎを行わないで、そのまま乾燥する工程とからなる金属表面処理方法が開示されている。これは塗布型の表面処理方法であり、素材を溶解させて皮膜を形成させる化成反応型とは技術を異にする。
【0033】
同様に、特許文献32には、亜鉛系またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、(a)エポキシ基含有樹脂(A)と、第1級アミン化合物および/または第2級アミン化合物(B)と、一部または全部が活性水素を有するヒドラジン誘導体からなる活性水素含有化合物(C)とを反応させて得られた変性エポキシ樹脂を水に分散させた水性エポキシ樹脂分散液と、(b)ウレタン樹脂の水分散体と、(c)シランカップリング剤と、(d)リン酸および/またはヘキサフルオロ金属酸とを含有する表面処理組成物を塗布し、乾燥することにより形成された皮膜厚が0.01〜5μmの表面処理皮膜を有する発明が挙げられているが、これも塗布型の表面処理に大別される。
【0034】
前記従来の表面処理に関する提案を総括すると、(1)ジルコニウム系またはチタン系およびこの派生技術、(2)バナジウム、モリブデン、タングステン、コバルト含有系、(3)タンニン酸や水溶性樹脂を含有する有機系、(4)ジルコニウムと樹脂を組み合わせた有機・無機複合系、(5)3価クロム系、(6)塗布型系に大別される。
【0035】
これらのうち(5)3価クロム系は、形成される皮膜中に3価のクロムを有することになる。この皮膜が高温に曝された場合には、3価クロムが人体に有害な6価クロムへ酸化される。このため、環境保全の観点から考えると、不適切な技術と云える。また、(6)塗布型系は、シート材やコイル材など構造が単純な場合には使用できるが、自動車に代表される複雑構造物には、液溜りが生じて、均一な皮膜を形成することができない。
【0036】
(1)ジルコニウム系は、塗装下地用途やアルミニウム素材の表面が均一な冷間圧延材など、また、耐食性の要求が厳しくない用途などでは、充分な性能を発揮し、実際に工業化されている場合もある。例えば、特許文献33の、リン酸、フルオロジルコニウム酸、硝酸を主成分とする処理液は、アルミニウムD&I缶の表面処理用として実用化され、25年以上経過した現在も使用されている。しかしながら、自動車に代表される輸送車両用の金属構造物は、形状が複雑であること、構成素材が冷延鋼板や亜鉛めっき鋼板など複合していること、次いで行われる電着塗装に対して充分な付き廻り性を有していなければならないこと、また、化成処理工程での廃棄物が少ないことなど、その要求は多岐にわたり、ハイレベルであることから、これらを完全にクリアーするには至っていない。
【0037】
(2)バナジウム、モリブデン、タングステン、コバルト含有系は、ジルコニウム系の発展系として実用化されているが、画期的に耐食性が向上するものではなく、また、前記と同様に自動車に代表される輸送用車両の電着塗装付き廻り性は良好ではない。
【0038】
(3)タンニン酸や水溶性樹脂を含有する有機系、(4)ジルコニウムと樹脂を組み合わせた有機・無機複合系を用いても、(1)ジルコニウム系に比較すれば耐食性が向上する場合もあるが、自動車に代表される輸送用の金属構造物として電着塗装の付き廻り性までを考慮すると不完全なものである。
【0039】
また、近年の技術として、特許文献34には、ジルコニウムイオンおよび/またはチタンイオンと、密着性付与剤と、前記カチオン電着塗装時の前記防錆皮膜中の成分の溶出を抑制する安定化剤とを含有する、カチオン電着塗装前処理用の金属表面処理組成物を用いて、複数の曲部を有する金属基材に付きまわり性に優れた防錆皮膜を形成させる金属表面処理方法において、(A)ケイ素含有化合物、(B)密着付与金属イオン、および(C)密着性付与樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含有する密着性付与剤を用いることが提案されている。前記(A)ケイ素含有化合物は、シリカ、ケイフッ化物、水溶性ケイ酸塩化合物、ケイ酸エステル類、アルキルシリケート類、およびシランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも一種であり、前記(B)密着付与金属イオンは、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、銅、鉄、マンガン、ニッケル、コバルト、および銀からなる群から選択される少なくとも一種の金属イオンであり、前記(C)密着性付与樹脂は、ポリアミン化合物、ブロック化イソシアネート化合物、およびメラミン樹脂からなる群から選択される少なくとも一種である。本発明の実施例を追試しても、従来のリン酸塩皮膜に比べると必ずしも充分な結果が得られなかった。
【0040】
特許文献35には、ジルコニウムイオンおよび/またはチタンイオンと、(A)ケイ素含有化合物、(B)密着性付与金属イオン、および(C)密着性付与樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の密着性付与剤を含有する金属表面処理組成物を、金属基材に接触させる表面処理工程と、表面処理工程を経た金属基材を加熱処理する後処理工程とを含み、前記後処理工程が、(1)前記金属基材を、大気圧または加圧条件下で、60℃以上190℃以下の温度で、30秒間以上乾燥処理する工程、および(2)前記金属基材を、大気圧または加圧条件下で、60℃以上120℃以下の温水中で、2秒以上600秒以上加熱処理する工程からなる群から選ばれる少なくとも一種である、カチオン電着塗装の付きまわり性を向上させるための表面処理方法が開示されている。しかしながら、この発明の実施に際しては、温風乾燥炉または温水工程が必要となり、工業的にはコストや工程増となり好ましくなく、実用性に乏しい。
【0041】
特許文献36には、ジルコニウムイオンおよび/またはチタンイオンと、(A)ケイ素含有化合物、(B)密着性付与金属イオン、および(C)密着性付与樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の密着性付与剤とを含有する表面処理用組成物を用いて、金属基材を表面処理して防錆皮膜を形成させる金属基材の表面処理工程と、後処理工程とからなる金属表面処理方法であって、前記後処理工程が、工程(a)、工程(b)、工程(c)、工程(d)、工程(e)、工程(f)、および工程(g)からなる群から選択される少なくとも一種であるカチオン電着塗装の付きまわり性を向上させる金属表面処理方法が開示されている。(a)前記表面処理工程を経た前記金属基材の全部または一部を、pH9以上のアルカリ水溶液に接触処理する工程;(b)前記表面処理工程を経た前記金属基材の全部または一部を、多価アニオン水溶液に接触処理する工程;(c)前記表面処理工程を経た前記金属基材の全部または一部を、多価アニオン水溶液に接触処理した後、さらに水洗処理する工程;(d)前記表面処理工程を経た前記金属基材の全部又は一部を、酸化剤に接触処理する工程;(e)前記表面処理工程を経た前記金属基材の全部または一部を、酸化剤に接触処理した後、さらに水洗処理する工程;(f)前記表面処理工程を経た前記金属基材の全部または一部を、フッ素安定化剤に接触処理する工程;および(g)前記表面処理工程を経た前記金属基材の全部または一部を、フッ素安定化剤に接触処理した後、さらに水洗処理する工程が提案されている。しかしながら、いずれも、化成処理の後に、後処理工程を有することになり、工業的にはコストや工程増となり好ましくなく、実用性に乏しい。
【0042】
【特許文献1】特開2004−083824号公報
【特許文献2】特開2004−269942号公報
【特許文献3】特開昭52−131937号公報
【特許文献4】特開昭57−41376号公報
【特許文献5】特開昭56−136978号公報
【特許文献6】特開2000−199077号公報
【特許文献7】特開平11−36082号公報
【特許文献8】特開2004−232047号公報
【特許文献9】特開2001−247977号公報
【特許文献10】国際公開WO03/074761A1公報
【特許文献11】特開2003−313679号公報
【特許文献12】特開2003−313681号公報
【特許文献13】特開2003−171778号公報
【特許文献14】特開2004−218070号公報
【特許文献15】特開2004−218073号公報
【特許文献16】特開2004−218075号公報
【特許文献17】特開昭61−91369号公報
【特許文献18】特開平1−172406号公報
【特許文献19】特開平1−177379号公報
【特許文献20】特開平1−177380号公報
【特許文献21】特開平2−608号公報
【特許文献22】特開平2−609号公報
【特許文献23】特許第2771110号明細書
【特許文献24】特開2001−303267号公報
【特許文献25】特許第3333611号明細書
【特許文献26】特開2000−332575号公報
【特許文献27】特開2004−010937号公報
【特許文献28】特開2004−3019号公報
【特許文献29】特許3597542号明細書
【特許文献30】特許3784400号明細書
【特許文献31】特開平5−195244号公報
【特許文献32】特開2004−238716号公報
【特許文献33】特開52−131937号公報
【特許文献34】特開2008−88551公報
【特許文献35】特開2008−88552公報
【特許文献36】特開2008−88553公報
【0043】
以上のように、従来のノンクロメートタイプの表面処理液を、自動車に代表される輸送車両用金属構造物に適用して形成される化成皮膜には、耐食性、塗料密着性を初めとする多岐の課題が残っている。特に、自動車金属構造物に対して要求される電着塗装付き廻り性を高いレベルで、安価で簡単な工程で付与する化成処理液、表面処理方法(塗装下地処理)は提案されておらず、電着塗装付き廻り性の改善は重要課題となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0044】
本発明は、従来技術の有する前記問題点を解決するためのものであり、具体的には金属構造物の材料表面に優れた耐食性、塗料密着性を付与し、かつ、高い電着塗装付き廻り性をも付与する化成処理液および表面処理方法を提供するものである。特に自動車車体やこの部品に適用した際に、乾燥することなく、リン酸塩と同等以上の高い電着塗装付き廻り性を付与し、かつ、適切な耐食性および塗料密着性も有し、さらには、工業化し操業した場合にスラッジなどの産業廃棄物を抑制し、簡便に制御でき、経済的にも安価な金属構造物用化成処理液および表面処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0045】
本発明者は、従来技術の抱える前記問題点を解決するための手段について鋭意検討した。その結果、ゲルマニウム化合物、スズ化合物および/または銅化合物を金属構造物の表面に析出付着させると、電着塗装の付き廻り性が大幅に改善されることを見出し、電着塗装の付き廻り性を下地皮膜から制御できる新知見を得るに至った。さらに、ゲルマニウム化合物、スズ化合物および/または銅化合物を、従来のチタン化合物および/またはジルコニウム化合物と同時に金属構造物の表面に析出付着させ複合皮膜を形成させると、より一層高い耐食性、塗料密着性を付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0046】
したがって、本発明は、水溶性ゲルマニウム化合物、水溶性スズ化合物および水溶性銅化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(A)、水溶性チタン化合物および水溶性ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)、少なくとも1種の水溶性硝酸塩化合物(C)、水溶性アルミニウム化合物および水溶性マグネシウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(D)、少なくとも1種の水溶性亜鉛化合物(E)、および、少なくとも1種以上のフッ素化合物(F)を含有する水性金属構造物用化成処理液において、ゲルマニウム、スズおよび銅から選ばれる少なくとも1種の含有量(CA)が0.05mmol/Lから10mmol/L、チタンおよび/またはジルコニウムの含有量(CB)が0.1mmol/Lから10mmol/L、前記水溶性硝酸塩化合物(C)の硝酸根の含有量(CC)が3mmol/Lから300mmol/L、アルミニウムおよび/またはマグネシウムの含有量(CD)が1mmol/Lから200mmol/L、亜鉛の含有量(CE)が0.2mmol/Lから20mmol/L、前記フッ素化合物(F)のフッ素の含有量(CF)が以下の式を満足するものであり、
CF(最小値)=CA×2+CB×4+CD×2
CF(最大値)=CA×4+CB×7+CD×4
かつ、前記化成処理液のpHが2.5から4.4の範囲に制御されていることを特徴とする金属構造物用化成処理液である。
【0047】
本発明の金属構造物用化成処理液は、さらにカチオン性水溶性樹脂(G)を含有することが好ましい。
【0048】
本発明の金属構造物用化成処理液は、さらにカップリング剤(H)を含有することが好ましい。
【0049】
本発明の金属構造物用化成処理液は、さらに金属キレート剤(I)を含有することが好ましい。
【0050】
本発明の金属構造物用化成処理液は、前記化合物(A)が、硝酸ゲルマニウム、硫酸ゲルマニウム、フッ化ゲルマニウム、硝酸スズ、硫酸スズ、フッ化スズ、硝酸銅、硫酸銅およびフッ化銅から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0051】
本発明の金属構造物用化成処理液は、前記化合物(B)が、硫酸チタン、オキシ硫酸チタン、硫酸チタンアンモニウム、硝酸チタン、オキシ硝酸チタン、硝酸チタンアンモニウム、フルオロチタン酸、フルオロチタン錯塩、硫酸ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウムアンモニウム、硝酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムアンモニウム、フルオロジルコニウム酸およびフルオロジルコニウム錯塩から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0052】
本発明の金属構造物用化成処理液は、前記化合物(C)が、硝酸ゲルマニウム、硝酸スズ、硝酸銅、硝酸チタン、硝酸ジルコニウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸アルミニウム、硝酸亜鉛、硝酸ストロンチウムおよび硝酸マンガンから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0053】
本発明の金属構造物用化成処理液は、前記化合物(D)が、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウムおよびフッ化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0054】
本発明の金属構造物用化成処理液は、前記化合物(E)が、硝酸亜鉛および硫酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0055】
本発明の金属構造物用化成処理液は、前記化合物(F)が、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化ゲルマニウム、フッ化スズ、フッ化銅、フルオロチタン酸、フルオロチタン錯塩、フルオロジルコニウム酸、フルオロジルコニウム錯塩、フッ化アルミニウムおよびフッ化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0056】
本発明の金属構造物用化成処理液は、前記カチオン性水溶性樹脂(G)が、アミノ基を含有する水溶性オリゴマーおよび水溶性ポリマーから選ばれる少なくとも1種を含み、前記樹脂(G)の含有量が0.001mmol/Lから10mmol/Lであることが好ましい。
【0057】
本発明の金属構造物用化成処理液は、前記カップリング剤(H)が、ケイ素を含有するカップリング剤およびチタンを含有するカップリング剤から選ばれる少なくとも1種を含み、前記カップリング剤(H)の含有量が0.001mmol/Lから10mmol/Lであることが好ましい。
【0058】
本発明の金属構造物用化成処理液は、前記キレート剤(I)が、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、有機フォスフォン酸、ニトリロトリ酢酸(NTA)およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)から選ばれる少なくとも1種を含み、前記キレート剤(I)の含有量が0.001mmol/Lから10mmol/Lであることが好ましい。
【0059】
本発明の金属構造物用化成処理液は、前記金属構造物が、冷延鋼板、アルミニウムおよびアルミニウム合金板、亜鉛および亜鉛合金板、亜鉛めっき鋼板および合金化亜鉛めっき鋼板から選ばれた少なくとも1種の金属材料で構成された輸送用車両およびその部品であり、前記金属構造物から溶出する金属イオンを含有することが好ましい。
【0060】
また、本発明は、前記いずれかの金属構造物用化成処理液を用いて前記金属構造物を表面処理して、前記金属構造物の表面に、付着量がゲルマニウム、スズおよび銅から選ばれた少なくとも1種の合計として0.01mmol/m2から1mmol/m2、および、チタンおよび/またはジルコニウムあるいはその合計として0.02mmol/m2から2mmol/m2、膜厚に換算した場合は2から200nmの化成皮膜を形成し、水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記金属構造物表面の電着塗装に供することを特徴とする金属構造物の表面処理方法である。
【発明の効果】
【0061】
本発明に係る金属構造用化成処理液および表面処理方法により、有害な6価クロムを含有せず、金属表面に高い耐食性と塗料密着性を付与することができ、特に輸送用車両、すなわち自動車に代表される複雑構造物を電着塗装する際に高い電着塗装付き廻り性を併せて付与することができる。かつ、工業化し操業した場合にスラッジなどの産業廃棄物を抑制し、簡便に制御できる化成処理液および表面処理方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
本発明の化成処理液を構成する各成分についてまず説明する。
【0063】
[化合物(A)〜(F)]
水溶性ゲルマニウム化合物、水溶性スズ化合物および水溶性銅化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物(A)は、必須の成分であり、電着塗装の付き廻り性の向上に大きく寄与する。水溶性ゲルマニウム化合物、水溶性スズ化合物および水溶性銅化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物は、硝酸ゲルマニウム、硫酸ゲルマニウム、フッ化ゲルマニウム、硝酸スズ、硫酸スズ(II)、硝酸スズ(IV)、フッ化スズ、硝酸銅、硫酸銅およびフッ化銅から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。より好ましいのはフッ化ゲルマニウム、フッ化スズ、硝酸スズ(II)および硝酸銅である。
化合物(A)の含有量(CA)は、各化合物の金属の合計として、0.05mmol/Lから10mmol/Lの範囲が好ましく、0.1mmol/Lから1mmol/Lの範囲がより好ましい。0.05mmol/L未満では化成処理液中の濃度が薄く、化合物(A)の付着量が充分でない。また、10mmol/Lを超えると化成処理液中の濃度が高くコストがかさみ経済的に好ましくない。
【0064】
水溶性チタン化合物および水溶性ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物(B)も必須の成分であり、これは耐食性の向上に大きく寄与する。化合物(B)は、硫酸チタン、オキシ硫酸チタン、硫酸チタンアンモニウム、硝酸チタン、オキシ硝酸チタン、硝酸チタンアンモニウム、フルオロチタン酸、フルオロチタン錯塩、硫酸ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウムアンモニウム、硝酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムアンモニウム、フルオロジルコニウム酸およびフルオロジルコニウム錯塩から選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。より好ましいのはフルオロチタン酸、硝酸ジルコニウムおよびフルオロジルコニウム酸である。化合物(B)の含有量(CB)はチタンまたはジルコニウムもしくはその合計として、0.1mmol/Lから10mmol/Lの範囲が好ましく、0.5mmol/Lから5mmol/Lの範囲がより好ましい。0.1mmol/L未満では化成処理液中の濃度が薄く、ジルコニウムおよび/またはチタンの付着量が充分でなく、優れた耐食性が発現されない。また、10mmol/Lを超えると化成処理液中の濃度が高くコストがかさみ経済的に好ましくない。
【0065】
水溶性硝酸塩化合物(C)も必須の成分であり、形成される化成皮膜の均一性に影響を与え、最終的な耐食性の向上に大きく寄与する。化合物(C)は化成処理中に化成処理液と金属界面での過度なエッチングを抑制するために化成皮膜が均一になるものと考えられる。化合物(C)は、硝酸ゲルマニウム、硝酸スズ、硝酸銅、硝酸チタン、硝酸ジルコニウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸アルミニウム、硝酸亜鉛、硝酸ストロンチウムおよび硝酸マンガンから選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。より好ましいのは 硝酸スズ、硝酸ジルコニウム、硝酸マグネシウム、硝酸アルミニウムおよび硝酸亜鉛から選ばれる少なくとも一種の化合物である。硝酸塩化合物(C)の含有量(CB)は硝酸塩の硝酸根として、3mmol/Lから300mmol/Lの範囲が好ましく、20mmol/Lから200mmol/Lの範囲がより好ましい。3mmol/L未満では充分な均一性が発揮されず、最終的な耐食性が不充分である。また、300mmol/Lを超えても耐食性の向上に特に問題ないが、続く水洗後の水中の硝酸根濃度が高くなり、最終的な廃水処理の窒素量が増え富栄養化の原因につながる可能性があり好ましくない。
【0066】
水溶性アルミニウムおよび水溶性マグネシウムから選ばれる少なくとも一種の化合物(D)も必須の成分であり、過度のエッチングを抑制し化成皮膜を効率よく、均一に付着させる効果がある。化合物(D)は、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウムおよびフッ化マグネシウムから選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。より好ましいのは硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、硝酸マグネシウムおよび硫酸マグネシウムである。
化合物(D)の含有量(CD)は、アルミニウムまたはマグネシウムもしくはこの合計として、1mmol/Lから200mmol/Lの範囲が好ましく、5mmol/Lから50mmol/Lの範囲がより好ましい。1mmol/L未満では化成皮膜が均一にまた効率的に付着しない。したがって処理時間が長くなってしまうなどの不具合がある。また、200mmol/Lを超えても耐食性に特に問題ないが、化成処理液中の濃度が高くコストがかさみ経済的に好ましくない。
【0067】
水溶性亜鉛化合物(E)も必須の成分であり、形成する化成皮膜の均一性を上げる効果がある。化合物(E)は、硝酸亜鉛または硫酸亜鉛を含むことが好ましい。化合物(E)の含有量(CE)は亜鉛として、0.2mmol/Lから20mmol/Lの範囲であることが好ましく、1mmol/Lから5mmol/Lの範囲であることがより好ましい。0.2mmol/L未満では化成皮膜の均一性が充分でなく、結果として耐食性が充分でない。また、20mmol/Lを超えた場合には、化成皮膜の生成を阻害する傾向があり好ましくない。
【0068】
フッ素化合物(F)は、極めて重要な必須成分である。化合物(F)は、そもそもは金属のエッチングに影響を与えるものであるが、今般、本発明の化成処理液においては、耐食性にも大きな影響を与えることが見出された。また、化合物(F)の含有量を特定範囲に制御することにより、化成処理を連続的に操業した際にスラッジの発生を抑制できることが見出された。従来技術においては、フッ素化合物が金属のエッチングに作用することが力説されており、耐食性の向上や処理液安定性にまで言及したもの極めて少ない。化合物(F)は、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化ゲルマニウム、フッ化スズ、フッ化銅、フルオロチタン酸、フルオロチタン錯塩、フルオロジルコニウム酸、フルオロジルコニウム錯塩、フッ化アルミニウムおよびフッ化マグネシウムから選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。
【0069】
フッ素化合物(F)の含有量は、水溶性ゲルマニウム化合物、水溶性スズ化合物および水溶性銅化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(A)、水溶性チタン化合物および水溶性ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)、水溶性アルミニウムおよび水溶性マグネシウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(D)の含有量に密接に関連しており、実験による下記知見に基づいて、化合物(A)、(B)および(D)の含有量から導き出される下記式で示される範囲にあることが好ましい。
【0070】
化合物(A)は2価から4価、化合物(B)は6価、化合物(D)はアルミニウム化合物であれば3価、マグネシウム化合物であれば2価で安定的なフッ化物を形成する。余剰の場合は、HFとして存在していると考えられる。余剰の方が処理液安定性は向上するが、あまり多いと化成皮膜が形成しなくなる。少なすぎるとエッチング能力が劣り、部分的な表面エッチング(比較的活性な表面部分のみをエッチングするのであろう)を起こし、結果として化成皮膜の均一性が悪くなり耐食性が劣る。また、安定度が下がり、スラッジが出る。以上の知見を総合して、下記式を誘導した。
CF(最小値)=CA×2+CB×4+CD×2
CF(最大値)=CA×4+CB×7+CD×4
【0071】
CF(最小値)が式に示される濃度未満では、エッチング能力が劣り、部分的な表面エッチング(比較的活性な表面部分のみをエッチングするのであろう)を起こし、結果として化成皮膜の均一性が悪くなり、形成される化成皮膜の耐食性が充分でなく、また、化成処理液の安定性が低く、化成処理の連続操業時にスラッジの発生が多くなる。また、CF(最大値)を超えるとエッチング力が強くなり、化成皮膜の析出効率が悪くなり好ましくない。また、さらに好ましいCF(最適最小値)およびCF(最適最大値)は、以下の範囲である。
CF(最適最小値)=CA×2+CB×6+CD×2
CF(最適最大値)=CA×3+CB×6+CD×4
【0072】
[化成処理液のpH]
本発明の化成処理液のpHは極めて重要であり、pHは2.5から4.4の範囲に制御されていなければならない。すなわち、本発明の化成処理液は、化成処理に使用される前ばかりでなく、化成処理を連続的に操業している際にも、そのpHが2.5から4.4に制御されていないと充分な作用効果を発現することができないので、本発明においては、化成処理中のpHをも考慮して前記範囲に特定するものである。pHが2.5未満では、エッチング力が強くなり、化成皮膜の析出効率が悪くなり好ましくない。また、pHが4.4を超えると連続操業時にスラッジの発生が多くなり好ましくない。より好ましいpHの範囲は3.0から4.0である。より具体的には、化合物(B)が水溶性チタン化合物である場合は、やや低めのpH領域であるpH3.0から3.6がより好ましく、化合物(B)が水溶性ジルコニウム化合物である場合は、やや高めのpH領域であるpH3.4から4.0がより好ましい。なお、pHの制御は、特に限定されるものではないが、化合物(C)に結果として属する硝酸や化合物(F)に属すフッ化水素酸酸などの無機酸やシュウ酸などの有機酸、または、炭酸水素アンモニウムやアンモニア水など塩基の添加により行うことができる。
【0073】
[成分(G)〜(I)]
本発明の金属構造用化成処理液には、さらにカチオン性水溶性樹脂(G)を含有させることが好ましい。水溶性樹脂(G)は、必須成分と同時に析出して化成皮膜を形成し塗料密着性を向上させる効果がある。例えば、化成皮膜の上に塗布する電着塗装用塗料が密着性の悪いものの場合などにより有効である。水溶性樹脂(G)は、アミノ基含有の水溶性オリゴマーおよび水溶性ポリマーから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。具体的には、ポリビニル系、ポリビニルフェノール系、フェノールホルマリン縮合物系などのアミノ基含有オリゴマー(分子量2000〜10000)またはアミノ基含有ポリマー(10000〜30000)が好ましい。化成反応を阻害しないためには、分子量が低めのオリゴマータイプの方が好ましい。また、水溶性樹脂(G)の含有量は0.001mmol/Lから10mmol/Lである。この範囲は分子量により異なるため、質量ppmで記載すれば、2ppmから100000ppmの範囲であり、10ppmから400ppmの範囲がより好ましい。含有量が少ないと塗料密着性の改善効果が認められなく添加している意味がない。また、その含有量が多いと経済的に好ましくないのと、化成反応を阻害する場合があり好ましくない。
【0074】
本発明の金属構造用化成処理液には、さらにカップリング剤(H)を含有させることが好ましい。カップリング剤(H)は、必須成分と同時に析出して化成皮膜を形成し塗料密着性を向上させる効果がある。例えば、化成皮膜の上に塗布する電着塗装の塗料が密着性の悪いものの場合などにより有効である。カップリング剤(H)は、シランカップリング剤およびチタンカップリング剤から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。具体的には、アミノ基を含有したアミノシランカップリング剤やエポキシ基を含有したエポキシシランカップリング剤などが好ましい。また、カップリング剤(H)の含有量は0.001mmol/Lから10mmol/Lの範囲がよく、0.1mmol/Lから0.6mmol/Lの範囲が好ましい。含有量が少ないと塗料密着性の改善効果が認められなく添加している意味がない。また、含有量が多いと経済的に好ましくないのと、化成反応を阻害する場合があり好ましくない。
【0075】
本発明の金属構造用化成処理液には、さらに金属キレート剤(I)を含有させることが好ましい。金属キレート剤(I)は、基本的には必須成分と同時に析出して化成皮膜を形成せずに、化成処理液の安定性を高める効果がある。前工程(脱脂)などからの化成処理工程への持ち込みが多い場合(水洗工程や水量が不足がちなラインなど)には、pHが上昇傾向にあり化成処理液の安定性が損なわれる場合がある。このような場合に金属キレート剤(I)は化成処理液の安定性を向上させる効果がある。金属キレート剤(I)は、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、有機フォスフォン酸、NTAおよびEDTAから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。金属キレート剤(I)の含有量は0.001mmol/Lから10mmol/Lの範囲がよく、0.1mmol/Lから0.6mmol/Lの範囲が好ましい。含有量が少ないと化成処理液の安定性の改善効果が認められなく添加している意味がない。また、その含有量が多いと経済的に好ましくないのと、化成反応を阻害する場合があり好ましくない。
【0076】
[化成処理液の調製]
本発明の金属構造用化成処理液は、構成成分である各化合物を溶媒の水に任意の順序で添加し、攪拌混合して調製される。
【0077】
〔金属構造物〕
本発明の化成処理液を接触させ、表面処理する金属構造物は、必ずしも限定されるものではないが、実用されている冷延鋼板、アルミニウム板およびアルミニウム合金板、亜鉛板および亜鉛合金板、亜鉛めっき鋼板および合金化亜鉛めっき鋼板からなる金属材料の少なくとも1種で構成されている輸送用車両およびその部品が好適である。
【0078】
〔表面処理方法〕
本発明の金属構造物の表面処理は、前記の金属構造用化成処理液を金属構造物に接触させて行う。その際に、接触させる金属構造物の表面は清浄でなければならない。油や汚れ、または金属粉(磨耗や成形などにより生じる)などを除去しなければならない。清浄にする方法は特に限定されるものではないが、工業的に一般的なアルカリ洗浄などを用いることができる。次いで水洗しアルカリ成分などをすすいだ金属構造物の表面に本発明の化成処理液を接触させる。化成反応を行う温度は25℃から60℃が好ましい。また、反応時間は金属構造物の材質、化成処理液の濃度、化成処理温度にもよるが、一般的には、2秒から600秒の範囲である。自動車車体に代表される複雑構造物の場合には、袋構造内部の液置換が必要なため、一般的に30秒から120秒間、浸漬接触させる。液置換が可能であればスプレーなどの表面処理方法でも問題ない。
【0079】
本発明の化成処理液が、表面処理の連続操業中に、金属構造物から溶出する金属イオンを含有しても何ら問題とならない。例えば、冷延鋼板からなる金属構造物を表面処理した場合には、化成処理液中に鉄イオンが徐々に増加するが、成分である各化合物の含有量が前記範囲に制御されていれば、スラッジなどの問題は生じない。通常の自動車車体の場合には、自動車車体の移送により化成処理液のナチュラルな持ち出しがあり、これにより自動車車体からの溶出金属イオン濃度は、比較的低い濃度の100質量ppm未満で定常に達するが、積極的にこれら溶出金属イオンを遠心分離装置、各種膜によるフィルタリングなどで系より除去することが好ましい。亜鉛めっき鋼板やアルミニウムからなる金属構造物を表面処理した場合には、溶出する金属イオンが本発明の必須成分に成り得るため、本発明の化成処理液はより有効に活用できる。表面処理された金属構造物は、水洗され、次いで脱イオン水洗され、その後に乾燥させることなく電着塗装に供される。
【0080】
〔化成皮膜〕
本発明の表面処理方法により、金属構造物の表面の化成皮膜の付着量がゲルマニウムまたはスズまたは銅もしくはこれらの合計量として0.01mmol/m2から1mmol/m2、および、チタンまたはジルコニウムもしくはこれらの合計量として0.02mmol/m2から2mmol/m2であり、膜厚に換算した場合は2nmから200nmの皮膜を形成させる。ゲルマニウム、スズあるいは銅もしくはこれらの合計付着量が0.01mmol/m2未満では電着塗装の付き廻り性の改善効果が充分でない。また、1mmol/m2を超えても特に問題ないが、これらは高価であるために経済的に好ましくない。より好ましいのは0.1mmol/m2から0.5mmol/m2の範囲である。また、好ましい範囲は適用する金属構造物の材質により異なる。冷延鋼板は高めの付着量が必要である。次いで、合金化亜鉛めっき鋼板、アルミニウム材料の順に、低めの付着量であっても充分な電着塗装の付き廻り性が得られる。なお、ゲルマニウムおよび/またはスズおよび/または銅は、基本的には、酸化物、水酸化物およびフッ化物で存在しているものと考えられる。金属構造物の材質によって若干性質が異なるが、ゲルマニウム、スズ、銅は、基本的に導体や半導体として金属構造物の表面に存在し、電着塗装時の水素ガス発生を適切に制御し、かつ、皮膜と析出する塗料との密着性がよく、結果として析出する電着塗膜成分の抵抗を高め、付き廻り性を高めているものと考えられる。このため、ゲルマニウム、スズ、銅は皮膜の最表面にあることが好ましい。
【0081】
チタンまたはジルコニウムもしくはこれらの合計量として0.02mmol/m2未満では、付着量が少なく耐食性が充分でない。また、2mmol/m2を超えて付着している場合、耐食性は特に問題ないが、表面処理コストが高くなり、経済的に好ましくない。より好ましい範囲は0.1mmol/m2から1mmol/m2の範囲である。膜厚に換算すると前記皮膜は2nmから200nmの範囲であり、より好ましい範囲は20nmから100nmの範囲である。なお、チタンおよび/またはジルコニウムも、基本的には、酸化物、水酸化物で存在しているものと考えられる。チタンおよび/またはジルコニウムは、基本的にバリアー性が高く、耐酸性や耐アルカリ性に強いため、高い耐食性を発揮する要因と考えられる。膜厚に換算すると前記皮膜は2から200nmの範囲となり、より好ましい範囲に付着させた場合は、20から100nmの範囲となる。なお、この物質も、基本的には、酸化物、水酸化物で存在しているものと考えられる。基本的にバリアー性が高く、耐酸性や耐アルカリ性に強いため、高い耐食性能を発揮するものと考えられる。
【実施例】
【0082】
以下、本発明の金属構造物用化成処理液および表面処理方法に関して実施例および比較例を示し、新規性、進歩性、有用性を説明する。
まず、金属板、金属板の表面処理方法とその前処理方法(清浄化)、および電着塗装方法について説明する。化成処理液の組成と各金属板の各種試験方法(評価方法)を後述する。各種試験方法(評価方法)の結果を表1〜3にまとめて示した。
【0083】
[金属板]
冷延鋼板[70×150×0.8mm;株式会社パルテック製のSPCC(JIS 3141)]、合金化溶融亜鉛めっき鋼板[70×150×0.8mm;株式会社パルテック製のSGCC F06 MO(JIS G3302)]およびアルミニウム合金板[70×150×1.0mm;株式会社パルテック製のA5052P(JIS 4000)]の3種を用いた。以下、冷延鋼板をSPC、合金化溶融亜鉛めっき鋼板をGA、アルミニウム合金板をALと略記する。
【0084】
[清浄化方法]
各金属板の表面を、脱脂剤[日本パーカライジング株式会社製のファインクリーナーE2001(A剤13g/L、B剤7g/L)]を使用し、40℃に加温し、120秒間スプレーすることにより脱脂した。その後30秒間スプレー水洗し、化成処理液を用い表面処理し化成皮膜を形成した。なお、下記ボックスを処理する場合は、前記、脱脂剤を用いたが、浸漬処理とし、時間を180秒とした。水洗も浸漬とし時間を60秒とし、よく揺動させて行った。
【0085】
[表面処理方法]
後記する組成の化成処理液を調製し、pHなどの安定度合いや沈殿などの発生を確認するために所定の温度で1時間攪拌後、放置し、化成処理液の外観を観察した(初期外観と称する)。その後、下記表面処理方法(1)〜(3)のいずれかにより各金属板の表面処理を行った。表面処理後、各金属板を水道水にて流水洗し(常温、30秒)、さらに、脱イオン水洗した(常温、30秒)。
表面処理方法(1)
処理温度: 45℃
処理時間: 90秒
接触方法: 浸漬
表面処理方法(2)
処理温度: 35℃
処理時間: 120秒
接触方法: 浸漬
表面処理方法(3)
処理温度: 50℃
処理時間: 45秒
接触方法: 浸漬
【0086】
[電着塗装方法]
前記の流水洗し、脱イオン水洗した、乾燥をしていない化成皮膜を形成した金属板に、
電着塗料[関西ペイント株式会社製、GT-10HT]を用い、180秒間定電圧陰極電解して、塗膜を析出させた後、水洗し、170℃で20分間加熱焼き付けして電着塗装を行い、塗膜を形成した。電圧の制御により塗膜の膜厚を20μmに調整した。
【0087】
(実施例1)
下記組成の化成処理液1を調製し、表面処理方法(1)にて3種の金属板および後述のボックスの表面処理を行い、化成皮膜を形成した。化成処理液1の調製は水に下記成分(A)〜(F)を全量の八割分の水に対して(F)、(A)、(B)、(D)、(E)の順で添加し、最後に水でメスアップし、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度に加温してpH調整を行った。表面処理後の金属板を水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。
化成処理液1
(A):フッ化スズ: 0.2mmol/L
(B):フルオロチタン酸: 3mmol/L
(C):(D)と(E)による硝酸根: 10mmol/L
(D):硝酸アルミニウム: 2mmol/L
(E):硝酸亜鉛: 2mmol/L
(F):フッ化水素酸と(A)(B)で添加した。トータルフッ素: 23mmol/L
pH:3.2 アンモニア水にて調整
CF(最小値)は16.4mmol/L、CF(最大値)は29.8mmol/Lと計算される。
【0088】
[化成処理液の付着量]
表面処理後の金属板の化成処理液の付着量を蛍光X線分析装置(株式会社リガク製、システム3270E)にて定量した。金属板は表面処理後に水洗し、脱イオン水洗し、これを冷風乾燥して付着量測定に供した。
【0089】
[化成皮膜の膜厚]
表面処理後の金属板の化成皮膜の膜厚は表面分析装置(株式会社島津製作所製 ESCA-850M・スパッタリング速度:80nm/分)にて定量した。化成皮膜をアルゴンスパッタリングし、素地のメタルが70原子%となるまでを時間を皮膜と定義した。そのスパッタリング時間より換算して膜厚を得た。なお、金属板は前記の付着量測定に用いたものを用いた。
【0090】
[塗料密着性]
電着塗装した金属塗装板に碁盤目のカットを入れ、沸騰水に1時間浸漬後、水をワイピングし、テープ剥離を行った。剥離後の碁盤目の状態を観察した。升目は100個であり、剥離しなかった数を測定した。したがって、100が最も優れ、0が最も劣ることになる。
【0091】
[電着塗膜の膜厚]
電着塗装後の金属塗装板の塗膜の膜厚は、市販の電磁誘導型膜厚計((株)ケット科学研究所製・LZ−200)により測定した。
【0092】
[耐食性]
電着塗装した金属塗装板にクロスカットを施し、塩水噴霧試験(JIS−Z2371)を実施し、1000時間後のクロスカット部の片側膨れ幅を評価した。一般に、冷延鋼板では、3mm以下が良好、2mm以下が極めて良好なレベルで、合金化亜鉛めっき鋼板では、1.2mm以下が良好なレベルで、アルミニウム合金板では0.5mm以下が良好なレベルとなる。
【0093】
[電着塗装付き廻り性試験方法]
同種の金属板12〜15を4枚用意し、その内の金属板12〜14の3枚に直径8mmの穴10を開けた。穴10の位置は横方向中央、下端から50mmとした。4枚の金属板12〜15を図1に示すようにそれぞれ20mmのクリアランスを取って組み付けた。金属板12〜15の両側面および下面を塩ビ板21〜23にて塞ぎ、塩ビ板21〜23と金属板12〜15を粘着テープによって固定し、4枚ボックス1を組み立てた。この組み立てたボックスを表面処理し、乾燥なしで電着塗装を行った。対極は片面を絶縁テープでシールしたステンレス鋼板(SUS304)70×150×0.55mmを用いた。電着塗料の液面は金属板12〜15と対極が90mm浸漬される位置に制御した。電着塗料の温度を28℃に保持し、スターラーにて撹拌した状態で電着塗装を行った。4枚の金属板12〜15の全てを短絡させた上で、対極を陽極として整流器にて陰極電解法により塗膜を電解析出させた。電解条件は30秒かけて0Vから230Vまで直線的に電圧を陰極方向に印加し、その後150秒間230Vを保持した。電解後それぞれの金属板12〜15を水洗し、170℃で20分間焼き付け、塗膜を形成させた。対極に一番近い金属板12の対極側をA面、対極に一番遠い金属板15の対極側をG面とし、A面とG面の塗膜厚を測定し、A/Gの比率を電着塗装の付き廻り性の指標とした。一般に比率は2.5以下が好ましいレベル、2.0以下は優れたレベルと判断される。
【0094】
[スラッジ発生試験]
表面処理の工業化の操業性を評価する目的でスラッジ発生試験を実施した。先ず、前記の化成処理液の初期外観をチェックした。その後、その化成処理液1Lを用い、前記金属板を10分間、連続表面処理した。化成皮膜および表面処理により液ロス(持ち出し)による各成分は、適宜、初期の値を保つように補給した。そして、表面処理後の化成処理液を40℃にて48時間静置し、その後の化成処理液の状態(濁りなど)と沈降物(スラッジ)を目視にて判定した。スラッジの発生がないことが好ましい。
【0095】
(実施例2)
下記組成の化成処理液2を調製し、表面処理方法(3)にて3種の金属板およびボックスの表面処理を行った。調製は水に下記成分(A)〜(F)を全量の八割分の水に対して(F)、(A)、(B)、(D)、(E)の順で添加し、最後に水でメスアップし、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度に加温してpH調整を行った。表面処理後の金属板を水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。
化成処理液2
(A):フッ化スズ: 1mmol/L
(B):フルオロチタン酸: 5mmol/L
(C):(D)(E)による硝酸根: 40mmol/L
(D):硝酸アルミニウム: 10mmol/L
(E):硝酸亜鉛: 5mmol/L
(F):フッ化水素酸と(A)(B)で添加した。トータルフッ素: 47mmol/L
pH:3.6 アンモニア水にて調整
CF(最小値)は42mmol/L、CF(最大値)は79mmol/Lと計算される。
【0096】
(実施例3)
下記組成の化成処理液3を調製し、表面処理方法(2)にて3種の金属板およびボックスの表面処理を行った。調製は水に下記成分(A)〜(F)を全量の八割分の水に対して(F)、(A)、(B)、(D)、(E)の順で添加し、最後に水でメスアップし、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度に加温してpH調整を行った。表面処理後の金属板を水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。
化成処理液3
(A):フッ化ゲルマニウム: 0.5mmol/L
(B):フルオロチタン酸: 0.1mmol/L、フルオロジルコニウム酸: 0.5mmol/L
(C):(D)と(E)による硝酸根: 8mmol/L
(D):硝酸アルミニウム: 2mmol/L
(E):硝酸亜鉛: 1mmol/L
(F):フッ化水素酸と(B)のトータルフッ素: 10mmol/L
pH:3.7 アンモニア水にて調整
CF(最小値)は7.4mmol/L、CF(最大値)は14.2mmol/Lと計算される。
【0097】
(実施例4)
下記組成の化成処理液4を調製し、表面処理方法(1)にて3種の金属板およびボックスの表面処理を行った。調製は水に下記成分(A)〜(F)を全量の八割分の水に対して(F)、(A)、(B)、(D)、(E)の順で添加し、最後に水でメスアップし、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度に加温してpH調整を行った。表面処理後の金属板を水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。
化成処理液4
(A):硝酸スズ(II): 1mmol/L
(B):フルオロジルコニウム酸: 4mmol/L
(C):(A)と(E)による硝酸根: 4mmol/L
(D):硫酸マグネシウム: 10mmol/L
(E):硝酸亜鉛: 1mmol/L
(F):フッ化アンモニウムと(B)のトータルフッ素: 47mmol/L
pH:4.4 アンモニア水にて調整
CF(最小値)は38mmol/L、CF(最大値)は72mmol/Lと計算される。
【0098】
(実施例5)
下記組成の化成処理液5を調製し、表面処理方法(2)にて3種の金属板およびボックスの表面処理を行った。調製は水に下記成分(A)〜(F)を全量の八割分の水に対して(F)、(A)、(B)、(D)、(E)の順で添加し、最後に水でメスアップし、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度に加温してpH調整を行った。表面処理後の金属板を水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。
化成処理液5
(A):フッ化スズ: 0.2mmol/L、 フッ化ゲルマニウム: 0.2mmol/L
(B):硝酸ジルコニウム: 4mmol/L
(C):(B)と(D)と(E)による硝酸根: 31mmol/L
(D):硝酸アルミニウム: 5mmol/L
(E):硝酸亜鉛: 4mmol/L
(F):フッ化水素酸と(A)のトータルフッ素: 40mmol/L
pH:4.2 アンモニア水にて調整
CF(最小値)は26.8mmol/L、CF(最大値)は49.6mmol/Lと計算される。
【0099】
(実施例6)
下記組成の化成処理液6を調製し、表面処理方法(1)にて3種の金属板およびボックスの表面処理を行った。調製は水に下記成分(A)〜(F)を全量の八割分の水に対して(F)、(A)、(B)、(D)、(E)の順で添加し、最後に水でメスアップし、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度に加温してpH調整を行った。表面処理後の金属板を水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。
化成処理液6
(A):硝酸スズ(II): 0.5mmol/L、 硝酸ゲルマニウム: 1mmol/L
(B):フルオロジルコニウム酸: 5mmol/L
(C):(A)と(D)と(E)による硝酸根: 34mmol/L
(D):硝酸アルミニウム: 10mmol/L
(E):硝酸亜鉛: 0.5mmol/L
(F):フッ化水素酸と(B)のトータルフッ素: 60mmol/L
pH:3.8 アンモニア水にて調整
CF(最小値)は43mmol/L、CF(最大値)は81mmol/Lと計算される。
【0100】
(実施例7)
下記組成の化成処理液7を調製し、表面処理方法(2)にて3種の金属板およびボックスの表面処理を行った。調製は水に下記成分(A)〜(F)を全量の八割分の水に対して(F)、(A)、(B)、(D)、(E)の順で添加し、最後に水でメスアップし、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度に加温してpH調整を行った。表面処理後の金属板を水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。
化成処理液7
(A):フッ化スズ: 1mmol/L、 フッ化ゲルマニウム: 0.1mmol/L
(B):フルオロジルコニウム酸: 2mmol/L
(C):(E)による硝酸根: 1mmol/L
(D):フッ化マグネシウム: 0.6mmol/L
(E):硝酸亜鉛: 0.5mmol/L
(F):フッ化水素酸と(A)、(B)、(D)のトータルフッ素: 17mmol/L
pH:4.0 アンモニア水にて調整
CF(最小値)は11.4mmol/L、CF(最大値)は20.8mmol/Lと計算される。
【0101】
(実施例8)
下記組成の化成処理液8を調製し、表面処理方法(1)にて3種の金属板およびボックスの表面処理を行った。調製は水に下記成分(A)〜(G)を全量の八割分の水に対して(F)、(A)、(B)、(D)、(E)、(G)の順で添加し、最後に水でメスアップし、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度に加温してpH調整を行った。表面処理後の金属板を水洗浄し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。
化成処理液8
(A):フッ化スズ: 1mmol/L, フッ化ゲルマニウム: 0.1mmol/L
(B):フルオロジルコニウム酸: 2mmol/L
(C):(D)と(E)による硝酸根: 11mmol/L
(D):硝酸マグネシウム: 5mmol/L
(E):硝酸亜鉛: 0.5mmol/L
(F):フッ化水素酸と(A)(B)のトータルフッ素: 22mmol/L
(G):ポリビニルフェノールアミノ化物(平均分子量10000): 0.004mmol/L
pH:3.3 アンモニア水にて調整
CF(最小値)は20.2mmol/L、CF(最大値)は38.8mmol/Lと計算される。
【0102】
(実施例9)
下記組成の化成処理液9を調製し、表面処理方法(3)にて3種の金属板およびボックスの表面処理を行った。調製は水に下記成分(A)〜(G)を全量の八割分の水に対して(F)、(A)、(B)、(D)、(E)、(G)の順で添加し、最後に水でメスアップし、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度に加温してpH調整を行った。表面処理後の金属板を水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。
化成処理液9
(A):フッ化スズ: 0.2mmol/L、 フッ化ゲルマニウム: 0.2mmol/L
(B):硝酸ジルコニウム: 4mmol/L
(C):(B)と(E)による硝酸根: 16mmol/L
(D):硫酸アルミニウム: 2mmol/L 硫酸マグネシウム: 3mmol/L
(E):硝酸亜鉛: 4mmol/L
(F):フッ化水素酸と(A)のトータルフッ素: 40mmol/L
(G):フェノールホルマリンアミノ化物縮合物(平均分子量2000): 0.1mmol/L
pH:3.6 アンモニア水にて調整
CF(最小値)は26.8mmol/L、CF(最大値)は49.6mmol/Lと計算される。
【0103】
(実施例10)
下記組成の化成処理液10を調製し、表面処理方法(1)にて3種の金属板およびボックスの表面処理を行った。調製は水に下記成分(A)〜(F)を全量の八割分の水に対して(F)、(A)、(B)、硝酸、(D)、(E)の順で添加し、最後に水でメスアップし、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度に加温してpH調整を行った。表面処理後の金属板を水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。
化成処理液10
(A):硝酸スズ(IV): 0.2mmol/L
(B):フルオロジルコニウム酸: 2mmol/L
(C):硝酸と(A)と(D)と(E)による硝酸根: 40mmol/L
(D):硝酸マグネシウム: 5mmol/L
(E):硝酸亜鉛: 5mmol/L
(F):フッ化アンモニウムと(B)のトータルフッ素: 30mmol/L
pH:3.8 アンモニア水にて調整
CF(最小値)は18.4mmol/L、CF(最大値)は34.8mmol/Lと計算される。
【0104】
(実施例11)
下記組成の化成処理液11を調製し、表面処理方法(1)にて3種の金属板およびボックスの表面処理を行った。調製は水に下記成分(A)〜(F)を全量の八割分の水に対して(F)、(A)、(B)、(D)、(E)の順で添加し、最後に水でメスアップし、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度に加温してpH調整を行った。表面処理後の金属板を水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。
化成処理液11
(A):フッ化スズ: 0.1mmol/L
(B):フルオロジルコニウム酸: 5mmol/L
(C):(D)による硝酸根: 1.5mmol/L
(D):硝酸アルミニウム: 0.5mmol/L
(E):硫酸亜鉛: 0.4mmol/L
(F):フッ化水素酸と(A)と(B)のトータルフッ素: 32mmol/L
pH:3.8 アンモニア水にて調整
CF(最小値)は21.2mmol/L、CF(最大値)は37.4mmol/Lと計算される。
【0105】
(実施例12)
下記組成の化成処理液12を調製し、表面処理方法(3)にて3種の金属板およびボックスの表面処理を行った。調製は水に下記成分(A)〜(I)を全量の八割分の水に対して(F)、(A)、(B)、(D)、(E)、(H)、(I)の順で添加し、最後に水でメスアップし、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度に加温してpH調整を行った。表面処理後の金属板を水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。
化成処理液12
(A):硝酸スズ(II): 0.5mmol/L、 硝酸ゲルマニウム: 1mmol/L
(B):フルオロジルコニウム酸: 4mmol/L フルオロチタン酸: 1mmol/L
(C):(A)と(D)と(E)による硝酸根: 34mmol/L
(D):硝酸アルミニウム: 10mmol/L
(E):硝酸亜鉛: 0.5mmol/L
(F):フッ化水素酸と(B)のトータルフッ素: 60mmol/L
(H):エポキシシランカップリング剤(東京化成工業製G0261): 0.1mmol/L
(I):エチレンジアミン四酢酸: 0.01mmol/L
pH:3.6 アンモニア水にて調整
CF(最小値)は43mmol/L、CF(最大値)は81mmol/Lと計算される。
【0106】
(実施例13)
下記組成の化成処理液13を調製し、表面処理方法(1)にて3種の金属板およびボックスの表面処理を行った。調製は水に下記成分(A)〜(H)を全量の八割分の水に対して(F)、(A)、(B)、硝酸、(D)、(E)、(H)、(I)の順で添加し、最後に水でメスアップし、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度に加温してpH調整を行った。表面処理後の金属板を水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。
化成処理液13
(A):硝酸スズ(II): 0.5mmol/L、 硝酸ゲルマニウム: 1mmol/L
(B):フルオロジルコニウム酸: 4mmol/L フルオロチタン酸: 1mmol/L
(C):硝酸と(A)と(D)と(E)による硝酸根: 20mmol/L
(D):硝酸アルミニウム: 2mmol/L
(E):硝酸亜鉛: 0.5mmol/L
(F):フッ化水素酸と(B)のトータルフッ素: 40mmol/L
(H):アミノシランカップリング剤(東京化成工業製A0876): 0.1mmol/L
(I):ニトリロトリ酢酸: 0.1mmol/L
pH:4.0 アンモニア水にて調整
CF(最小値)は27mmol/L、CF(最大値)は49mmol/Lと計算される。
【0107】
(実施例14)
下記組成の化成処理液14を調製し、表面処理方法(2)にて3種の金属板およびボックスの表面処理を行った。調製は水に下記成分(A)〜(F)を全量の八割分の水に対して(F)、(A)、(B)、(D)、(E)の順で添加し、最後に水でメスアップし、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度に加温してpH調整を行った。表面処理後の金属板を水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。
化成処理液14
(A):硝酸銅: 1mmol/L
(B):フルオロジルコニウム酸: 4mmol/L
(C):(A)と(E)による硝酸根: 4mmol/L
(D):硫酸マグネシウム: 10mmol/L
(E):硝酸亜鉛: 1mmol/L
(F):フッ化アンモニウムと(B)のトータルフッ素: 47mmol/L
pH:4.4 アンモニア水にて調整
CF(最小値)は38mmol/L、CF(最大値)は72mmol/Lと計算される。
【0108】
(実施例15)
下記組成の化成処理液15を調製し、表面処理方法(2)にて3種の金属板およびボックスの表面処理を行った。調製は水に下記成分(A)〜(H)を全量の八割分の水に対して(F)、(A)、(B)、硝酸、(D)、(E)、(H)、(I)の順で添加し、最後に水でメスアップし、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度に加温してpH調整を行った。表面処理後の金属板を水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。
化成処理液15
(A):硝酸スズ(II): 0.5mmol/L、 硝酸銅: 1mmol/L
(B):フルオロジルコニウム酸: 4mmol/L フルオロチタン酸: 1mmol/L
(C):硝酸と(A)と(D)と(E)による硝酸根: 15mmol/L
(D):硝酸アルミニウム: 2mmol/L
(E):硝酸亜鉛: 0.5mmol/L
(F):フッ化水素酸と(B)のトータルフッ素: 40mmol/L
(H):アミノシランカップリング剤(東京化成工業製A0876): 0.1mmol/L
(I):ニトリロトリ酢酸: 0.1mmol/L
pH:4.0 アンモニア水にて調整
CF(最小値)は27mmol/L、CF(最大値)は49mmol/Lと計算される。
【0109】
(比較例1)
下記組成の化成処理液16を調製し、表面処理方法(1)にて3種の金属板およびボックスの表面処理を行い、化成皮膜を形成した。調製は水に下記成分(B)〜(F)を全量の八割分の水に対して(F)、(B)、(D)、(E)の順で添加し、最後に水でメスアップし、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度に加温してpH調整を行った。表面処理後の金属板を水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。
化成処理液16
(A):なし
(B):フルオロジルコニウム酸: 5mmol/L
(C):(D)による硝酸根: 40.8mmol/L
(D):硝酸マグネシウム: 20mmol/L
(E):硫酸亜鉛: 0.4mmol/L
(F):(B)による(トータルフッ素): 30mmol/L
pH:3.6 アンモニア水にて調整
CF(最小値)は60mmol/L、CF(最大値)は115mmol/Lと計算される。
【0110】
(比較例2)
下記組成の化成処理液16を調製し、表面方法(1)にて3種の金属板およびボックスの表面処理を行い、化成皮膜を形成した。調製は水に下記成分(B)〜(E)を全量の八割分の水に対して(B)、(E)の順で添加し、最後に水でメスアップし、常温で20分間攪拌した。次いで、所定温度に加温してpH調整を行った。表面処理後の金属板を水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。
化成処理液16
(A):なし
(B):フルオロチタン酸: 1mmol/L
(C):(E)による硝酸根: 10mmol/L
(D):なし
(E):硝酸亜鉛: 0.4mmol/L
(F):(B)のフッ素(トータルフッ素): 10mmol/L
pH:2.3 硝酸にて調整
CF(最小値)は4mmol/L、CF(最大値)は7mmol/Lと計算される。
【0111】
(比較例3)
ノンクロメート化成処理液である登録商標アロジン404の2%水溶液(特許文献1に該当)を用い、40℃で30秒間、3種の金属板およびボックスにスプレーして表面処理し、化成皮膜を形成した。次いで、表面処理後の金属板を水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。
【0112】
(比較例4)
ヘキサシアノ酸鉄2g/Lとフルオロチタン酸1g/と硝酸コバルト1g/Lとからなる化成処理液8(特許文献8に該当)を調製し、これに40℃で60秒間3種の金属板を浸漬し、表面処理を行い、化成皮膜を形成した。次いで、表面処理後の金属板を水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。
【0113】
(比較例5)
(1)硫酸チタンを1mmol/L、(2)硫酸チタンの6倍モルに当たるフッ化水素酸、(3)硝酸カルシウムを0.2mmol/L、(4)硝酸アルミニウムを0.2mmol/L、(5)硝酸イオン(前記により添加)を含有する表面処理液(特許文献10に該当)を調製し、pH3.8に調整した後に、40℃で60秒間3種の金属板およびボックスを浸漬し表面処理を行い、化成皮膜を形成した。次いで、表面処理後の金属板を水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。
【0114】
(比較例6)
ジルコニウム1000質量ppm(フルオロジルコニウム酸にて添加)、亜鉛1000質量ppm(硝酸亜鉛にて添加)、マグネシウム500質量ppm(硝酸マグネシウムとして添加)、チタン100質量ppm(フルオロチタン酸として添加)、インジウム3質量ppm(硝酸インジウムにて添加)、ニトログアニジン800質量ppmをこの順序で水に添加して常温で攪拌混合して化成処理液を調製し、pH4.5にアンモニア水にて調整した。これを40℃で60秒間3種の金属板およびボックスを浸漬し、表面処理して化成皮膜を形成した(特許文献15の実施例14相当)。次いで、表面処理後の金属板を水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。
【0115】
(比較例7)
ジルコニウム200質量ppm(フルオロジルコニウム酸にて添加)、亜鉛500質量pppm(硝酸亜鉛にて添加)、シリカ200質量ppm(スノーテックスNとして添加)、過硫酸アンモニウム200質量ppmをこの順序で水に添加して常温で攪拌混合して化成処理液を調製し、pH4.0にアンモニア水にて調整した。これを40℃で60秒間3種の金属板およびボックスに浸漬し、表面処理して化成皮膜を形成した(特許文献15の実施例3相当)。次いで、表面処理後の金属板を水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。
【0116】
(比較例8)
ジルコニウム500質量ppm(フルオロジルコニウム酸にて添加)、マグネシウム1000質量ppm(硝酸マグネシウムとして添加)、カルシウム500質量ppm(硝酸カルシウムとして添加)、塩素酸ナトリウム100質量ppmをこの順序で水に添加して常温で攪拌混合して化成処理液を調製し、pH4.5にアンモニア水にて調整した。これを25℃で60秒間3種の金属板およびボックスを浸漬し、表面処理して化成皮膜を形成した(特許文献15の実施例10相当)。次いで、表面処理後の金属板を水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。
【0117】
(比較例9)
リン酸亜鉛系化成剤である登録商標パルボンドL3020の5%水溶液を用い、35℃で120秒間3種の金属板およびボックスを浸漬し、表面処理して化成皮膜を形成した。次いで、表面処理後の金属板を水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。
【0118】
(比較例10)
ジルコニウムとして40%ジルコン酸を金属元素換算で500質量ppm、密着性付与剤として3−アミノプロピルトリエトキシシラン[信越化学工業株式会社製、「KBE903」]を有効成分濃度で200質量ppm、安定化剤としてHIDA(ヒドロキシエチルイミノ二酢酸)を200質量ppmとなるように添加し、水酸化ナトリウムでpH4に調整し、化成処理液を得た。なお、上記KBE903としては、5質量部のKBE903を滴下漏斗から脱イオン水45質量部とエタノール50質量部との混合溶媒中(溶媒温度:25℃)に60分間かけて均一に滴下し、これを窒素雰囲気下、25℃で24時間反応させ、その後、反応溶液を減圧することによりエタノールを蒸発させた、有効成分5%のKBE903の加水分解重縮合物(以下、「KBE903重縮合物A」という。)を用いた。得られた化成処理液のORP(酸化還元電位)は308mV、アミノシランおよび/または前記アミノシランの加水分解重縮合物に含まれるケイ素元素の合計含有量に対する、ジルコニウム元素の含有量の比(Zr/Si比)は20であった。表面処理は、化成処理液に40℃で60秒間3種の金属板およびボックスを浸漬し、表面処理して化成皮膜を形成した。次いで、表面処理後の金属板を水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。(特許文献36に準拠)
【0119】
(比較例12)
密着性付与剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン[信越化学工業株式会社製、「KBM603」]を有効成分濃度で200質量ppm、安定化剤としてアスパラギン酸を100質量ppm用い、ジルコニウムを金属元素換算で250質量ppm用いた点以外は、前記、比較例11に記載の方法に従って、化成処理液の調製を行った。なお、上記KBM603としては、KBE903の代わりにKBM603を使用したこと以外は比較例11と同様の方法で、予め加水分解重縮合させたKBM603の加水分解重縮合物(以下、「KBM603重縮合物」という)を用いた。化成処理液のORPは356mV、Zr/Si比は10であった。表面処理は、比較例11記載の条件と同様の条件で化成皮膜を形成した。次いで、表面処理後の金属板およびボックスを水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記方法と条件で電着塗装を行い、塗膜を形成した。(特許文献36に準拠)
【0120】
(比較例10)
清浄化のみ(脱脂のみ)を行い、表面処理を行わずに電着塗装を行い、塗膜を形成した。
【0121】
実施例1〜11および比較例1〜10の化成皮膜の試験・評価結果を表1から表3に示す。表1が冷延鋼板、表2が合金化亜鉛めっき鋼板、表3がアルミニウム合金板に対する結果である。いずれの金属板においても、従来技術は、リン酸塩を用いた場合を除き、電着塗装の付き廻り性が不充分であることがわかる。また、スラッジ発生試験を実施すると沈降物が発生するものも多く、工業化した場合の操業性(生産性)に問題を有している。これに対して、本発明の化成処理液および表面処理方法では、優れた電着塗装付き廻り性を付与でき、併せて耐食性、塗料密着性にも優れ、かつ、操業性にも優れていることがわかる。
【0122】
【表1】

【0123】
【表2】

【0124】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】電着塗装の付き廻り性試験(4枚ボックス試験)に使用するボックスの見取り図。
【符号の説明】
【0126】
1 ボックス
10 穴
12 試験板(塗装後の金属板)No.1(外側:A面)
13 試験板(塗装後の金属板)No.2
14 試験板(塗装後の金属板)No.3
15 試験板(塗装後の金属板)No.4(内側:G面)
21 側面仕切板
22 側面仕切板
23 底面仕切板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ゲルマニウム化合物、水溶性スズ化合物および水溶性銅化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(A)、水溶性チタン化合物および水溶性ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)、少なくとも1種の水溶性硝酸塩化合物(C)、水溶性アルミニウム化合物および水溶性マグネシウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(D)、少なくとも1種の水溶性亜鉛化合物(E)、および、少なくとも1種以上のフッ素化合物(F)を含有する水性金属構造物用化成処理液において、ゲルマニウム、スズおよび銅から選ばれる少なくとも1種の含有量(CA)が0.05mmol/Lから10mmol/L、チタンおよび/またはジルコニウムの含有量(CB)が0.1mmol/Lから10mmol/L、前記水溶性硝酸塩化合物(C)の硝酸根の含有量(CC)が3mmol/Lから300mmol/L、アルミニウムおよび/またはマグネシウムの含有量(CD)が1mmol/Lから200mmol/L、亜鉛の含有量(CE)が0.2mmol/Lから20mmol/L、前記フッ素化合物(F)のフッ素の含有量(CF)が以下の式を満足するものであり、
CF(最小値)=CA×2+CB×4+CD×2
CF(最大値)=CA×4+CB×7+CD×4
かつ、前記化成処理液のpHが2.5から4.4の範囲に制御されていることを特徴とする金属構造物用化成処理液。
【請求項2】
前記化成処理液が、さらにカチオン性水溶性樹脂(G)を含有する請求項1に記載の金属構造物用化成処理液。
【請求項3】
前記化成処理液が、さらにカップリング剤(H)を含有する請求項1または2に記載の金属構造物用化成処理液。
【請求項4】
前記化成処理液が、さらに金属キレート剤(I)を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属構造物用化成処理液。
【請求項5】
前記化合物(A)が、硝酸ゲルマニウム、硫酸ゲルマニウム、フッ化ゲルマニウム、硝酸スズ、硫酸スズ、フッ化スズ、硝酸銅、硫酸銅およびフッ化銅から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属構造物用化成処理液。
【請求項6】
前記化合物(B)が、硫酸チタン、オキシ硫酸チタン、硫酸チタンアンモニウム、硝酸チタン、オキシ硝酸チタン、硝酸チタンアンモニウム、フルオロチタン酸、フルオロチタン錯塩、硫酸ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウムアンモニウム、硝酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムアンモニウム、フルオロジルコニウム酸およびフルオロジルコニウム錯塩から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属構造物用化成処理液。
【請求項7】
前記化合物(C)が、硝酸ゲルマニウム、硝酸スズ、硝酸銅、硝酸チタン、硝酸ジルコニウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸アルミニウム、硝酸亜鉛、硝酸ストロンチウムおよび硝酸マンガンから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属構造物用化成処理液。
【請求項8】
前記化合物(D)が、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウムおよびフッ化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の金属構造物用化成処理液。
【請求項9】
前記化合物(E)が、硝酸亜鉛および硫酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の金属構造物用化成処理液。
【請求項10】
前記化合物(F)が、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化ゲルマニウム、フッ化スズ、フッ化銅、フルオロチタン酸、フルオロチタン錯塩、フルオロジルコニウム酸、フルオロジルコニウム錯塩、フッ化アルミニウムおよびフッ化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の金属構造物用化成処理液。
【請求項11】
前記カチオン性水溶性樹脂(G)が、アミノ基を含有する水溶性オリゴマーおよび水溶性ポリマーから選ばれる少なくとも1種を含み、前記樹脂(G)の含有量が0.001mmol/Lから10mmol/Lである請求項2〜10のいずれか1項に記載の金属構造物用化成処理液。
【請求項12】
前記カップリング剤(H)が、ケイ素を含有するカップリング剤およびチタンを含有するカップリング剤から選ばれる少なくとも1種を含み、前記カップリング剤(H)の含有量が0.001mmol/Lから10mmol/Lである請求項3〜11のいずれか1項に記載の金属構造物用化成処理液。
【請求項13】
前記キレート剤(I)が、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、有機フォスフォン酸、ニトリロトリ酢酸およびエチレンジアミン四酢酸から選ばれる少なくとも1種を含み、前記キレート剤(I)の含有量が0.001mmol/Lから10mmol/Lである請求項4〜12のいずれか1項に記載の金属構造物用化成処理液。
【請求項14】
前記金属構造物が、冷延鋼板、アルミニウムおよびアルミニウム合金板、亜鉛および亜鉛合金板、亜鉛めっき鋼板および合金化亜鉛めっき鋼板から選ばれた少なくとも1種の金属材料で構成された輸送用車両およびその部品であり、前記金属構造物から溶出する金属イオンを含有する請求項1〜13のいずれか1項に記載の金属構造物用化成処理液。
【請求項15】
請求項1に記載の金属構造物用化成処理液を用いて前記金属構造物を化成処理して、前記金属構造物の表面に、付着量がゲルマニウム、スズおよび銅から選ばれる少なくとも1種の合計として0.01mmol/m2から1mmol/m2、および、チタンおよび/またはジルコニウムあるいはその合計として0.02mmol/m2から2mmol/m2、膜厚に換算した場合は2から200nmの化成皮膜を形成し、水洗し、脱イオン水洗し、乾燥することなく、前記金属構造物表面の電着塗装に供することを特徴とする金属構造物の表面処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−13677(P2010−13677A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172616(P2008−172616)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000229597)日本パーカライジング株式会社 (198)
【Fターム(参考)】