説明

金属線条体用リール

【課題】太径の金属線条体のリール係止を容易におこなうことができる金属線条体用リールを提供する。
【解決手段】金属線条体を係止する把持部1と、金属線条体用リールのフランジ4に止着される固定部2と、固定部2より立ち上がり、これらを連結する架橋部3とからなる係止具10を、固定部2をもって金属線条体用リールのフランジ4の外端面に固定して備え、把持部1に対抗して覗き孔5をフランジ4の外端面に形成し、把持部1をフランジ4の外端面の外側より内側に向かって弾性的に変形させ、覗き孔5を通過して巻胴側に弾性移動できるようになした金属用線条体用リールである。架橋部3がフランジ4の外端面に接したとき、把持部1が弾性変形して金属線条体を係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチールコード、ワイヤ等の金属線条体用リールに関し、詳しくは、太径の金属線条体のリール係止を容易におこなうことができる金属線条体用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主に、巻胴とフランジとから構成された一般的な金属線条体用リールは、図6のように、巻胴部(図示せず)に巻装が終了した金属線条体Waを係止するため、フランジ104の外周部分に、金属線条体Waの径より若干大きい径をもって穿設させられた金属線条体の覗き孔105と、覗き孔105に近接するフランジ104の外端面でその外周縁に固着されたクリップ状の係止具110を備えたものであった。
【0003】
上述の従来技術のリールは、巻胴部に巻装した金属線条体Waの端末部を覗き孔105より導出して、係止具110にて係止しているので、係止作業に時間がかかり、また、金属線条体Waがフランジ104の外側に存在し、このため、運搬・保管時等において邪魔になるばかりか、解線する場合に金属線条体Waを係止具110より外して、覗き孔105より巻胴部(図示せず)側に移さなければならず、解線作業に手数を要していた。
【0004】
本出願人は、この従来技術に対して全く新規な金属線条体用リールを特許文献1および2等において提案した。図7は特許文献2に記載の金属線条体用リールに係る係止具の断面図であり、係止具120は固定部112と、把持部111と、これをつなぐ架橋部113とからなっており、金属線条体の係止の際には、把持部111を覗き孔115よりフランジ114の内側に突出することになる。把持部111の先端部は、断面形状において半円状のU字形状をしており、金属線条体の端末部の係止に供される。かかる係止具120によれば、リールに巻装された金属線条体の端末部をリールのフランジ114の内側で係止できる構造であって、従来のようなフランジに設けた導出孔に金属線条体を通過させることなく、簡単に係止、解線することができる。これにより金属線条体の係止および解線が極めて容易となり、作業性を大幅に向上させることができ、これらの作業の自動化においても極めて簡易な装置で達成可能な金属線条体用リールを得ることができた。また、上記金属線条体用リールの改良にかかる技術として、特許文献3には、リールの輸送や保管の際、金属線条体が外れないよう、把持部とともに把持安定部を設けた金属線条体用リールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−127842号公報
【特許文献2】特開平6−107377号公報
【特許文献3】特開平7−101640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載の金属線条体用リールにおいても、径の太い金属線条体を係止する場合には改良の余地が残されていた。上述のとおり、金属線条体の係止の際には、把持部111と共に架橋部113を一体に変形させて、把持部111を覗き孔115よりフランジ114の内側に突出することになる。しかるに、金属線条体を把持していない状態の係止具のフランジ114の外端面からの高さhが、フランジ114の外周折り曲げ部114の高さhを超えないことが必要となる。すなわち、係止具のフランジ114の外端面からの高さhが、フランジ114の外周折り曲げ部114の高さhより高いとリールを横置きで段積みして保管する場合や、リールをレール上を転がして搬送する際に、係止具120が引っ掛かり破損するといったおそれがある。
【0007】
また、線条体を巻き取る際には、把持部111がフランジ114の内端面内側に突出しないことが設計上の制約となる。把持部111がフランジ114の内端面内側に突出していると、巻き取り中の金属線条体が引っ掛かり、金属線条体の断線や係止具120が破損することが懸念されるためである。
【0008】
上記制約のため、径が太い金属線条体を係止する金属線条体用リールの設計は困難であった。すなわち、係止具120を架橋部113がフランジ114の外端面に接するように押した際、金属線条体の線径が、把持部111の先端とフランジ114内端面の隙間より大きい場合、金属線条体を把持部111に嵌め込むことができず、金属線条体を係止することができない。一方、把持部111の先端とフランジ114の内端面との隙間を金属線条体の線径より大きくした場合、係止具120のフランジ114の外端面からの高さhがフランジ114の外周折り曲げ部114の高さhより高くなり、運搬・保管に障害が生じてしまう。
【0009】
なお、金属線条体用リールのフランジの改良によって運搬・保管の不具合を防止することも考えられるが、このためには、フランジ114の外周折り曲げ部114の高さhを係止具120のフランジ114外端面からの高さh以上の高さにする必要がある。この場合には、リールの外幅を広くするか、または、リールの内幅を小さくしなければならない。リールの外幅を広くする場合、そのリールを使用する設備の全ての見直しや改造が必要となり、リールの内幅を小さくした場合、金属線条体の巻装量をそれだけ少なくしなければならないこととなり、好ましくない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、従来は困難であった太径の金属線条体のリール係止を容易におこなうことができる金属線条体用リールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、金属線条体用リールを、特に金属線条体の係止具を特定の構造とすることにより、上記課題を解消し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の金属線条体用リールは、金属線条体を係止する把持部と、金属線条体用リールのフランジに止着される固定部と、該固定部より立ち上がり、これらを連結する架橋部とからなる係止具を、前記固定部をもって金属線条体用リールの前記フランジの外端面に固定して備え、前記把持部に対向して覗き孔を前記フランジの外端面に形成し、前記把持部を前記フランジの外端面の外側より内側に向かって弾性的に変形させ、前記覗き孔を通して巻胴側に弾性移動できるようになした金属用線条体用リールにおいて、
前記架橋部が前記フランジの外端面に接したとき、前記把持部が弾性変形して金属線条体を係止し得るものであることを特徴とするものである。これにより、従来は困難であった太径の金属線条体のリール係止を容易におこなうことができる金属線条体用リールを提供することができる。
【0013】
本発明においては、前記把持部と前記架橋部との接続部の断面が曲線で連なることが好ましい。これにより、把持部に加わる応力を緩和し、弾性変形に対する耐久性を向上させることができる。また、前記把持部の先端と前記フランジの内端面との間隔が広がるように湾曲していることが好ましい。これにより、金属線条体の端末部を把持部に嵌め込みやすくするとともに、金属線条体の曲げ剛性による外れを防止することができる。さらに、前記架橋部が前記固定端から前記把持部に向かうに連れて前記フランジの外端面から外側に離れる方向に延在することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、太径の金属線条体のリール係止を容易におこなうことができる金属線条体用リールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の金属線条体用リールの一好適実施形態の部分側面図である。
【図2】本発明に係る係止具の一好適実施形態の断面図である。
【図3】本発明に係る係止具により金属線条体を係止する際の概略断面図である。
【図4】本発明に係る係止具の他の好適実施形態の断面図である。
【図5】本発明に係る係止具の他の好適実施形態の断面図である。
【図6】従来の金属線条体用リールの部分側面図である。
【図7】従来の金属線条体用リールに係る係止具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の金属線条体用リールの一好適実施形態の部分側面図であり、図2は本発明に係る係止具の一好適例の断面図である。本発明の金属線条体用リールは、金属線条体を係止する把持部1と、金属線条体用リールのフランジ4に止着される固定部2と、固定部より立ち上がり、これらを連結する架橋部3とからなる係止具10を、固定部2をもって金属線条体用リールのフランジ4の外端面に固定して備え、把持部1に対向して覗き孔5をフランジ4外端面に形成し、把持部1をフランジ4外端面の外側より内側に向かって弾性的に変形させ、覗き孔5を通過して巻胴側に弾性移動できるようになしたものである。
【0017】
かかる係止具10にあって、架橋部3の好ましくは把持部1側をフランジ4側に軽く押圧(F)することによって、覗き孔5内に把持部1のみが簡単に入り込み、そして、フランジ4の内側にあって、巻胴部6に巻装された金属線条体の端末部をこの把持部1に嵌め込むことにより係止する。
【0018】
図3は、本発明に係る係止具により金属線条体を係止する際の概略断面図であり、本発明においては、架橋部3がフランジ4の外端面に接したとき、把持部1が弾性変形して金属線条体Wbを係止し得るものであることが重要である。従来の係止具は、固定部と架橋部の弾性変形で金属線条体を把持していたものであるが、図7に示す様に、把持部111は、その先端の断面形状がU字形状をしており、かつ、その大きさも3mm程度であるため、作業者が手作業で把持部111を弾性変形させることは不可能であった。本発明においては、把持部1の先端をU字形状とはせず、把持部1をL字形状、またはその先端をフランジ内端面との間隔が広がるように湾曲させた形状とすることにより、フランジ4と把持部1の先端との間に金属線条体Wbの端末部を嵌め込むことを可能としたものである。そのため、金属線条体Wbの端末部を押し込む力により把持部1が弾性変形して係止可能となる。すなわち、固定部2と架橋部3の弾性変形により把持部1がリールの巻胴部6へ移動し、架橋部3がフランジ4の外端面に接したとき、さらに把持部1が弾性変形することにより太径の金属線条体Wbを係止することを可能としたものである。
【0019】
上述のとおり、フランジ4の外周折り曲げ部4の高さを変えずに係止具10を設置する場合、把持部1の先端とフランジ4の内端面の隙間が金属線条体Wbの径に満たない場合がある。しかし、本発明によれば、把持部1が弾性変形するため、把持部1の先端とフランジ4の内端面の隙間が金属線条体Wbの径に満たなくても、金属線条体Wbを把持部1に押し付ける力により把持部1を弾性変形させることで、この隙間を広げることができる。したがって、フランジ4の外周折り曲げ部4の高さを変えることなく、太径の金属線条体Wbの係止が可能となる。また、把持部1が弾性変形するため、複数の線径の金属線条体Wbに対応可能であるという利点も有している。さらに、係止された金属線条体Wbは把持部1の弾性力により押さえられ、太径の金属線条体Wbの曲げ剛性に起因する把持部1からの外れもなく、係止を確実なものとしている。
【0020】
図4は、本発明の金属線条体用リールの他の実施形態の係止具20の断面図である。係止具20は、架橋部3Aが固定部2Aから把持部1Aに向かうにつれてフランジ4Aの外端面から外側に離れる方向に延在するものである。このような構造としても、本発明の効果を良好に得ることができる。
【0021】
図5は、本発明に係る係止具の他の好適実施形態の断面図である。本発明においては、図5に示すように、把持部1Bと架橋部3Bの接続部の断面が曲線で連なることが好ましい。把持部1Bと架橋部3Bの接続部が曲面で連なることにより、把持部1Bに加わる応力を緩和し、弾性変形に対する耐久性を向上させることができる。また、把持部1Bと架橋部3Bの接続部の形状が鋭利でないことから、作業者の安全性を向上させるという効果も有している。さらに、図5に示すように、把持部1Bの断面形状においては、金属線条体を包み込むようになした曲線形状であることが好ましい。これにより、金属線条体を良好に係止することができる。
【0022】
また、本発明においては、図5に示すように、把持部1Bの先端がフランジ4Bの内端面との間隔が広がるように湾曲していることが好ましい。かかる構造により、金属線条体の端末部を把持部1Bに嵌め込み易くするとともに、金属線条体の曲げ剛性による外れを防止する効果を得ることができる。
【0023】
なお、本発明の金属線条用リールにおいては、係止具の寸法は使用する金属線条体用リールの寸法、把持対象となる金属線条体の線径等にあわせて適宜設計することができる。
【0024】
本発明の金属線条体用リールは、従来のリール内側にて金属線条体端末を係止するリールにおいて、リール外周折り曲げ部の高さを変えることなく、把持部を弾性変形させることにより、太径の金属線条体の係止を可能としたものである。本発明の金属線条体用リールは、保管・運搬時の不都合が解消されるため、特に、従来のリールでは困難であった、太径の金属線条体のリール係止の自動化を可能とする効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0025】
1、111、1A、1B 把持部
2、112、2A、2B 固定部
3、113、3A、3B 架橋部
4、104、114、4A、4B フランジ
、1140、4A、4B 外周折り曲げ部
5、105、115、5A、5B 覗き孔
6、116、6A、6B 巻胴部
Wa,Wb 金属線条体
10、20、30、110、120 係止具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属線条体を係止する把持部と、金属線条体用リールのフランジに止着される固定部と、該固定部より立ち上がり、これらを連結する架橋部とからなる係止具を、前記固定部をもって金属線条体用リールの前記フランジの外端面に固定して備え、前記把持部に対向して覗き孔を前記フランジの外端面に形成し、前記把持部を前記フランジの外端面の外側より内側に向かって弾性的に変形させ、前記覗き孔を通して巻胴側に弾性移動できるようになした金属用線条体用リールにおいて、
前記架橋部が前記フランジの外端面に接したとき、前記把持部が弾性変形して金属線条体を係止し得るものであることを特徴とする金属線条体用リール。
【請求項2】
前記把持部と前記架橋部との接続部の断面が曲線で連なる請求項1記載の金属線線条体用リール。
【請求項3】
前記把持部の先端と前記フランジの内端面との間隔が広がるように湾曲している請求項1または2記載の金属線条体用リール。
【請求項4】
前記架橋部が前記固定端から前記把持部に向かうに連れて前記フランジの外端面から外側に離れる方向に延在する請求項1〜3のうちいずれか一項記載の金属線条体用リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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