説明

金属蒸気放電ランプ

【課題】電気的不具合による品質低下の生じる恐れのない金属蒸気放電ランプを提供する。
【解決手段】ランプは、放電管を内部に収納する状態で一端部にピンチシール部94を有する内管32が口金部材36に装着されていると共に、内管32を覆う外管の一端が口金部材36に固着されてなる。口金部材36は、内管32の一端部が挿入される凹入部分を有し、内管32は、一端部が口金部材36の凹入部分に挿入された状態で、接着剤120,122により凹入部分内に固着され、接着剤120,122は、内管32の一端から延出する一対のリード線の少なくとも一方から離間している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電管、内管および外管を備える金属蒸気放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
高輝度、高効率、長寿命の金属蒸気放電ランプ、例えばメタルハライドランプ(以下、単に「ランプ」という。)として、放電管、内管、外管を備え、外管の一端側に口金が設けられた、所謂、三重管構造のものが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1では、内管(IT)の一端部が、放電管(LT)を格納した状態で、ピンチシールされている。また、口金(B)は、有底筒状をした口金基体(30)の底部外面にソケット側から受電する受電部(31)を有すると共に、口金基体(30)の底部から突設する一対の起立舌片(32a,32a)からなる内管固定持部(32)を有する。
【0004】
一対の起立舌片(32a,32a)が互いに間隔をおいて設けられており、この間隔は内管(IT)のピンチシール部(12)の厚みに対応している。
内管(IT)と口金(B)との結合は、内管(IT)のピンチシール部(12)が口金(B)の一対の起立舌片(32a,32a)間に金属クリップ(MC)を介在させて挿入されることで、行われている。
【0005】
一方、ピンチシール部と口金との結合に接着剤を用いる技術も提案されている(例えば、特許文献2)。この技術では、口金(8)は中空部(91)を有するセラミックベース(90)により構成され、このセラミックベース(90)の中空部(91)にピンチシール部(2)が挿入された状態で、中空部(91)内に充満された接着剤(10)により固着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−210699号公報
【特許文献2】特開平5−299065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献に記載されたランプでは、電気的不具合が生じ、品質の低下がおこるおそれがある。
つまり、ピンチシール部からは、放電管内の電極に電気的に接続する一対のリード線が延出している。
【0008】
特許文献1に記載のランプでは、口金と内管の結合において、ピンチシール部を金属クリップ(MC)が支持している。すなわち、ピンチシール部表面には金属部材が密着していることになるため、上記のリード線間に始動の際の高電圧パルスが印加された時、ピンチシール部表面を伝う沿面放電が誘発される場合がある。このような沿面放電は周囲環境、特に湿度の影響を受けやすく、持続的に発生することはまれであるが、たとえ微放電であったとしても高電圧パルスが減衰されるなどにより、ランプが始動するまでに長時間を要したり(始動遅延)、ランプが始動しないままになったり(始動不良)などの問題が発生する。
【0009】
特許文献2に記載のランプでは、中空部に充満された接着剤(セメント)が絶縁材料だとしても、当該接着剤を介してリード線同士が接続しやすい構造になっている。接着に用いられる無機系接着剤は水分を吸着しやすい性質があるため、製造時に十分乾燥させていたとしても、使用中、特に消灯しているときに空気中の水分を吸着してしまう。この場合、乾燥時に比べるとリード線間の絶縁性能が著しく低下するため、始動の際の高電圧パルスが減衰されてしまい、ランプが始動するまでに長時間を要したり(始動遅延)、ランプが始動しないままになったり(始動不良)などの問題が発生する。また、周囲環境がさらに高湿である場合、水分を吸収した接着剤を介してリード線間が短絡状態に近い状態になり大電流が流れる、いわゆるトラッキング現象が発生し、口金が破損するおそれがある。
【0010】
本発明は、電気的不具合による品質低下の生じる恐れのない金属蒸気放電ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る金属蒸気放電ランプは、放電管を内部に収納する状態で一端部にピンチシール部を有する内管が口金部材に接着剤により固着されていると共に、前記内管の一端から延出する一対のリード線を備え、前記内管を覆う外管の一端が前記口金部材に取着されてなる金属蒸気放電ランプであって、前記口金部材は、前記ピンチシール部を囲むように配置された壁状部を有し、前記接着剤は、前記内管の一端部と前記壁状部との間に配されている共に、前記内管の一端から延出する一対のリード線の少なくとも一方から離間していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る金属蒸気放電ランプは、内管の一端から延出する一対のリード線の少なくとも一方から離間しているため、一対のリード線が接着剤を介して接続するようなことがなくなり、電気的不具合を未然に防ぐことができる。
【0013】
また、外管の管軸の延伸方向から前記壁状部をみたときに、当該壁状部は前記外管の一端部の内面に沿った形状をしていることを特徴とし、あるいは、前記外管の横断面形状は円環状であり、前記壁状部は、前記外管の一端部に内嵌される円筒状をしていることを特徴としている。
【0014】
また、前記接着剤は、前記一対のリード線の双方から離間していることを特徴とし、前記ピンチシール部における前記一対のリード線を結ぶ仮想線の延伸方向において、一方のリード線を含み他方のリード線と離間する領域と、前記他方のリード線を含み前記一方のリード線と離間する領域との少なくともいずれかに接着剤が配されていることを特徴としている。
【0015】
また、前記接着剤は2箇所に配されており、当該接着剤の配置箇所が、前記仮想直線上に位置していることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態に係る照明装置の全体図であり、反射板の内部が分かるように一部を切り欠いている。
【図2】実施の形態に係るランプの一部を切り欠いた正面図である。
【図3】放電管の正面断面図である。
【図4】口金部材の斜視図である。
【図5】内管の口金部材への接合部分の斜視図である。
【図6】図2のX−X線断面を矢印方向から見た図である。
【図7】変形例に係る口金部材の斜視図である。
【図8】変形例1に係る口金部材に内管を結合した状態であってピンチシール部での断面を平面視した図であり、(a)は第1の例のピンチシール部での断面を平面視した図であり、(b)は第2の例のピンチシール部での断面を平面視した図であり、(c)は第3の例のピンチシール部での断面を平面視した図である。
【図9】変形例2に係る口金部材に内管を結合した状態の断面図である。
【図10】変形例3に係る口金部材に内管を結合した状態の断面図である。
【図11】変形例4に係る口金部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る照明装置、当該照明装置の光源として用いられているランプについてそれぞれ図面を参照しながら説明する。
1.照明装置
図1は、本実施の形態に係る照明装置の全体図であり、反射板の内部が分かるように一部を切り欠いている。
【0018】
照明装置10は、図1に示すように、照明器具12と当該照明器具12に装着されるランプ14とで構成される。ここでの当該照明器具12は、スポットライト用であるが、本発明に係るランプおよび照明装置は、他の用途用であってもよい。
【0019】
照明器具12は、内部に配置されたランプ14から発せられた光を前方に反射させる反射板16と、反射板16内に組み込まれ且つランプ14が取り付けられるソケット(図示省略)と、反射板16を壁や天井に取着するための取着具18とを備える。
【0020】
反射板16は、図に示すように、凹状の反射面20を備えている。この反射面20は、例えば、アルミ鏡を利用することで構成される。なお、この反射板16は、その開口(光取り出し口)22がガラス板等によって塞がれていない、所謂、(前面)開放型である。なお、反射板16が開放型である照明装置も、開放型の照明装置という。
【0021】
ソケットは、ランプ14の口金部と電気的に接続され、ランプ14に電力を供給する。なお、ランプ14を点灯させるための安定器(不図示)は、例えば、天井内に埋め込まれる等しており、後述の供給線24を介してランプ14に給電を行う。
【0022】
取着具18は、例えば、「コ」字形状をしており、並行に配された一対のアーム26(,26)と、一対のアーム26(,26)の一端同士を連結する連結部(図示省略)とを有し、一対のアーム26(,26)間に反射板16を挟んだ状態で、反射板16がアーム26(,26)により回動自在に軸支され、連結部が、例えば、壁や天井に取り付けられる。なお、照明装置10から放射される光の向きは、反射板16に対して回動自在な取着具18を回動させることによって調節できる。
2.ランプ
図2は、実施の形態に係るランプ14の正面図である。
【0023】
ランプ14は、内部に一対の電極を有し、放電空間を形成している放電管30と、当該放電管30を収納する気密容器である内管32と、当該内管32に被せられた保護容器である外管34とを備える3重管構造であって、照明器具12のソケットから給電を受けるための口金部材36や外管34が破損するのを防止する保護部材108等をさらに有する。
【0024】
内管32や外管34の口金部材36への接合等については後述する。
図3は、放電管30の正面断面図である。
放電管30は、内部に放電空間38を形成するための本管部40と当該本管部40の管軸方向両側に延出するように形成された細管部42,44と、本管部40と細管部42,44とを結合するための結合部46,48とからなる外囲器50を有している。
【0025】
本管部40および細管部42,44は、図3から分かるように、管状(ここでは、横断面形状が円形状である。)をし、本管部40における管軸と直交する方向の寸法(ここでは、内径および外径である。)が、細管部42,44における寸法(内径・外径)よりも大きく、本管部40と細管部42との隙間を埋めるように結合部46,48の寸法が決められている。
【0026】
本管部40、細管部42,44および結合部46,48は、例えば、透光性セラミックで形成されている。透光性セラミックには、例えば、アルミナセラミックを用いることができる。なお、他のセラミック、例えば、希土類アルミナガーネットセラミックなどでも良く、あるいは、石英ガラス等で構成してもよい。
【0027】
また、図面では、放電管30は、本管部40、細管部42,44および接合部46,48を接合して形成した焼き嵌めタイプであるが、本管部(40)、細管部(42,44)および接合部(46,48)が一体的に成形された一体型でもよい。また、複数の部材を接合して本管部(40)を形成してもよい。
【0028】
本管部40は、放電空間38の内部で、ランプ14の長手方向の中心軸(以下、単に、「ランプ軸」ともいう。)上、あるいはランプ軸と平行な軸上で互いに略対向する一対の電極52,54を備える。
【0029】
放電空間38には、発光物質である金属ハロゲン化物、始動補助ガスである希ガス、および緩衝ガスである水銀がそれぞれ所定量封入されている。金属ハロゲン化物としては、例えば、ヨウ化ナトリウムやヨウ化ジスプロシウム、ヨウ化ホルミウム、ヨウ化ツリウム、ヨウ化タリウム、ヨウ化セリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化インジウム、ヨウ化スカンジウム等が用いられる。
【0030】
電極52,54は、図3に示すように、電極棒56,58と、電極棒56,58の先端側(放電空間38側)の端部に設けられた電極コイル60,62とを備えている。
なお、本実施の形態で利用していないが、電極棒56,58と細管部42,44との隙間には、発光物質の前記隙間への侵入を防ぐためのモリブデンコイルを電極棒に巻装してもよい。
【0031】
電極52,54は、理想的(設計的)には上述した通り、ランプ軸上で互いに対向するように、つまり、電極棒56,58の中心軸がランプ軸上に配置される。しかし、実際には、そのプロセスの精度上、前記中心軸がランプ軸上にない場合もある。
【0032】
細管部42,44の各々には、先端部(放電空間38と反対側の端部である。)に前記各電極52,54が接合された給電体64,66が挿入されている。給電体64,66は、内部給電線68,70と外部給電線72,74とから構成されている。なお、内部給電線68,70と外部給電線72,74とは、例えば、溶接により結合されている。
【0033】
給電体64,66は、それぞれの細管部42,44における、本管部40とは反対側の端部部分に流し込まれたフリットからなるシール材76,78によって封着されている。なお、図2に現れているシール材76,78の部分は、細管部42,44の端部からはみ出た部分である。
【0034】
ランプ14の説明に戻る。
給電体64における電極52がある側と反対側の端部は、図2に示すように、電力供給線80に電気的に接続されており、同じく、給電体66における電極54がある側と反対側の端部が電力供給線82に電気的に接続されている。
【0035】
電力供給線80,82はそれぞれ金属箔84,86に接続され、また、金属箔84,86はそれぞれリード線88,90に接続されている。
電力供給線82において、その口金部材36側に相当する部分、例えば、他方の電力供給線80や当該電力供給線80に接続された給電体64と対向する部分が、例えば、石英ガラスからなるスリーブ92で被覆されている。
【0036】
上記した放電管30等は、図2に示すように、筒状、例えば円筒状をした内管32内に収納されている。内管32は、例えば石英ガラスからなり、前記金属箔84,86の存する側の端部部分は、いわゆるピンチシール法によって封止されている。
【0037】
このため、内管32は、片封止型の気密容器であるといえる。ここで、内管32において前記ピンチシール法で封止されてなる部分をピンチシール部94と称することとする。
ピンチシール部94内には、図2に示すように、電力給電線80,82、金属箔84,86およびリード線88,90が存在し、また、ピンチシール部94の端面(内管の端面)から一対のリード線88,90が延出している。なお、一対のリード線88,90が、本願発明の「一対のリード線」に相当する。
【0038】
なお、一対のリード線88,90は、口金部材36の口金部96のシェル98とアイレット100にリード線102,104を介して接続されている。
内管32の他端部の先端にある凸部106、当該内管32内を真空引きする際に用いた排気管の残部であるチップオフ部である。内管32内を真空にするのは、ランプ点灯時に高温にさらされる給電体64,66、電力供給線80,82等の酸化を防止するためである。酸化防止の観点から考えれば、内管32の内部(であって、放電管30の外部)は、真空にするのではなく、不活性ガスを充満させることも可能である。
【0039】
ここでの内管32の中間部(他端部とピンチシール部94との間である。)32aは、略円筒状であって、内部に放電管30の外囲器50が配置されている。
なお、内管32の中間部32aの形状は略円筒状に限定されず、横断面形状が多角形や楕円の筒状等円筒以外の筒状であってもよい。また、中間部32aの内径および外径は必ずしも内管32の管軸方向に沿って均一である必要はなく、例えば放電管30の本管部40に相当する位置の内径および外径が、放電管30の本管部40以外の他の位置の内径および外径よりも大きくなっているような形状、すなわち一部に膨出部を有する中膨形状であってもよい。これにより、放電管30の温度が過度に上昇することを抑制することができる。
【0040】
内管32には、図2に示すように有底筒状(すなわち、一端が開口され他端が閉塞されてなる筒状)をした外管34が被せられている。
外管34は、放電管30の破損により内管32が損傷して、その破片が管軸方向に飛散した場合であっても、放電管30や内管32の破片等の拡散を防ぐ役割を果たす保護管として機能する。
【0041】
なお、外管34の他端部の内部には、内管32の凸部106が何らかの原因で破損して外管34側へ飛散したときに、その破片が直接外管34に衝突して、外管34が破損するのを防止する保護部材108が設けられている。
【0042】
外管34は、横断面形状が円形状をし、他端部が半球形状(ドーム形状)をしている。
また、外管34は、換言すると、例えば、口金側の端部(一端部でもある。)である開口部(ネック部)34aと、口金36とは反対側の端部(他端部でもある。)である閉塞部34bと、それら開口部34aおよび閉塞部34bの間の中間部34cとで構成される有底筒状である。
【0043】
なお、外管34は、硬質ガラスで形成されたものに限定されず、アルミナセラミック等の透光性セラミックや石英ガラス等で形成されていてもよい。
外管34は、放電管30の破裂によって内管32が破損した場合に、それら破裂や破損で生じた破片が飛散するのを防止する役割を果たす。したがって、図1に示すような開口22がカバーで塞がれていない照明器具12に取り付けて使用しても破片が飛散するようなことはない。なお、外管34の内部は、大気状態とされていてもよいし、減圧状態にされていてもよいし、不活性ガスが充満されていてもよい。
【0044】
閉塞部34bは、略半球状、若しくは平坦形状が好ましい。中間部34cは、ランプ14のコンパクト性および照明器具12への適合性を確保するために、内管32の中間部32aと同じ略円筒状であることが好ましく、最大外径が20[mm]〜27[mm]、開口部34aの径(ネック径(内管32のピンチシール部94付近の径)とも呼ばれる。)が20[mm]〜23[mm]、肉厚が1[mm]〜2[mm]であることが好ましい。
【0045】
また、外管34の中間部34cにおいて、外管34の内周面と内管32の外周面の隙間は、外管34の管軸(ランプ軸と一致している)と直交する方向において略均一であることが好ましい。組立工程において外管34を内管32に被せる際の隙間を確保するためには、前記隙間が平均で1[mm]〜3[mm]になるよう設計されていることが好ましい。
【0046】
なお、中間部34cの形状は略円筒状に限定されず、横断面が多角形や楕円の筒状等円筒以外の筒状であってもよい。また、中間部34cの内径および外径は必ずしも外管34の管軸方向に沿って均一である必要はなく、例えば、放電管30の本管部40に相当する位置の内径および外径が、放電管30の本管部40以外の他の位置の内径および外径よりも大きくなっているような形状、すなわち一部に膨出部を有する中膨形状であってもよい。膨出部を設けることにより放電管30からの熱による外管の温度上昇を低減することで、硬質ガラスの歪点からの裕度ができて適合する照明器具12の選択の幅を広げることができる。さらに、放電管30の破損時の安全性も向上する。その場合、前記隙間が最大で5[mm]になるよう設計されていることが好ましい。また、中間部(34c)の肉厚は1[mm]〜2[mm]が好ましい。
【0047】
さらに構成として外管34の落下防止のため、開口部34a付近に内側へ突出する内側凸部を設け、口金36に、例えば、溝形状の被係合部を設けてもよい。その場合、セメント等の接続部材を介して(接合されて)いる場合であってもよい。また、口金36に被係合部を設けていない場合は、外管の内側凸部を接続部材で覆うことで係合されていてもよい。
【0048】
なお、上記外管34は、他端が塞がった筒状をし、硬質ガラスにより構成されているが、例えば、横断面形状が円形状の筒状体と、筒状体の他端を塞ぐキャップ体とから構成してもよい。この際、キャップ体を金属材料等の割れにくい材料で構成すると、上述の保護部材108が不要となる。
【0049】
図4は、口金部材の斜視図である。
口金部材36は、同図に示すように、本体114にシェル98とアイレット100とが装着されてなる。なお、口金部材36は、本体114の他端側に装着されたシェル98とアイレット100とにより構成されている。
【0050】
接合部112は、本体114の一端側に構成されている。つまり、本体114の一端側が筒状をした筒状部分116により構成され、その筒状部分116の中央が凹入する凹入部分118となっている。
【0051】
内管32は、図2に示すように、凹入部分118に内管32のピンチシール部94が挿入された状態で、凹入部分118の内部に存する接着剤120,122によりピンチシール部94と筒状部分116の内面とが結合されることで、口金部材36に装着される。
【0052】
筒状部分116は、ピンチシール部94を囲むように本体114に設けられており、本発明の「壁状部」に相当する。また、内管32(外管34であっても同じである。)の管軸方向から口金部材36の筒状部分116を見たときに、筒状部分116の外周面が外管34の一端側の端部の内周面に沿った形状をしている。
【0053】
外管34は、同図に示すように、接合部112の筒状部分116を套設した状態、つまり、外管34の一端部内に筒状部分116を挿入した状態で、接着剤121により口金部材36に固着されている。
【0054】
外管34は、一端端部の横断面形状が例えば円環状をし、口金部材36の筒状部分116は、その横断面形状が円環状をし、筒状部分116の周壁が全周に亘って外管34の内周面に対向する状態で、筒状部分116が外管34に内嵌している。
【0055】
図5は、内管の口金部材への接合部分の斜視図であり、図6は、図2のX−X線断面を矢印方向から見た図である。
ここで、ピンチシール部94について説明する。
【0056】
ピンチシール部94は、内管32の一端部を加熱させて、ピンチ(ピンチシールするため道具)により圧潰することで形成される(このため、「圧潰封止」とも呼ばれる。)。従って、図6に示すように、ピンチにより押圧時にピンチに接触している部分(の外面)は平坦面94a,94bとなり、ピンチに接触していない部分(の外面)は、ピンチの間から押圧方向と直交する方向に膨出して膨出面94c,94dとなる。
【0057】
凹入部分118内の接着剤120,122は、図2、図5および図6に示すように、ピンチシール部94の膨出面94c,94dと筒状部分116の内面(116a)との間であって別々に離れた状態で配され、両者を固着している。
【0058】
また、接着剤120,122は、凹入部分118から張り出さずに凹入部分118内に存している。このため、ランプ14の外観において凹入部分118内の接着剤120,122が見え難く、外観上の意匠性を損なうようなことを少なくできる。
3.製造方法
ランプ14の製造方法は、内管32内に放電管30を格納する状態で内管32の一端部を封止(ピンチシール法である。)する封止工程、内管32を口金部材36に装着する内管装着工程、内管32に外管34を被覆して外管34の一端部を口金部材36に装着(固着)する外管装着工程を含む。
【0059】
封止工程は、従来の公知技術、つまり、内管32の一端部の加熱後、ピンチシールするという技術を利用しているため、ここでの説明を省略する。
内管装着工程は、口金部材36の筒状部分116の開口が上方を向くように、口金部材36を配置する。次に、筒状部分116内に内管32のピンチシール部94を挿入させる。このとき、筒状部分116の底部分に設けられた一対の貫通孔(図2参照)に、内管32の一端部から延出している一対のリード線88,90を通す。
【0060】
そして、内管(放電管)32の姿勢、口金部材36に対する内管32(および放電管30)の位置決めを行った後、ピンチシール部94の膨出面94b,94bと、筒状部分116の内周面116aであって膨出面94b,94bと対向する面(116a)との間に接着剤120,122を独立した島状態で注入し、内管32と口金部材36とを固着する。
【0061】
この際、接着剤120,122は、平面視において、一対のリード線88,90を結ぶ直線上に独立して位置しているので、各接着剤120,122がフローしても、一対のリード線88,90を結合接触することはなく、電気的な不具合をなくすることができる。また、好ましくは、接着剤120,122はそれぞれリード線88,90の間にフローされないようにすることで、異極間の絶縁距離を適正に保つことができる。
【0062】
内管32と口金部材36とが固着されると、外管34の一端部の内周面および口金部材36の筒状部分116の外周面に接着剤121(あるいは、外管34の一端部の内周面および口金部材36の筒状部分116の外周面の何れか一方の面でもよい)を塗布し、外管34の一端部を口金部材36の筒状部分116に被覆して、両者を固着する。
【0063】
上記説明したランプの構成では、外管34が口金部材36に固着されているため、ランプ14の照明器具12に装着する際に、使用者は、ランプ14の外管34を持って、照明器具12のソケットにねじ込むため、内管32には装着時の負荷が作用することはない。このため、内管32と口金部材36との結合力は、内管32と口金部材36との位置関係が保持できる程度であれば良く、内管32と口金部材36とを固着する接着剤120,122の使用量を少なくできる。
【0064】
<変形例>
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明の内容が、上記実施の形態に示された具体例に限定されないことは勿論であり、例えば、以下のような変形例を実施することができる。
1.内管と口金部材との結合について
(1)口金部材の形状
実施の形態での口金部材36の接合部における凹入部分118は平面視において円形状をしていたが、凹入部分の平面形状は他の形状であってもよい。以下、平面視形状が円形状以外の凹入部分の一例を変形例として説明する。
【0065】
図7は、変形例に係る口金部材の斜視図である。
なお、同図では、口金部材の口金部の図示は省略している。
口金部材201の接合部203は、筒状部分205により構成され、筒状部分205の内周面207の一部が、同図に示すように、筒状部分205の中心軸側に張り出している。つまり、筒状部分205がその中心軸側に張り出す張り出し領域209,211を有している。
【0066】
張り出し領域209,211は、内管32のピンチシール部94が挿入された際に、ピンチシール部94の平坦面94a,94aに当接する。なお、ピンチシール部94の厚み(一対のリード線88,90を結ぶ仮想線と直交する方向の厚みである。)は、封止時の一対のピンチ間の距離を管理することにより略一定とすることができ、この距離にあわせて、張り出し領域209,211の張り出し量を決定できる。
(2)接着剤
図8は、変形例1に係る口金部材に内管を結合した状態であってピンチシール部での断面を平面視した図である。
【0067】
図8には、いずれもピンチシール部94において管軸に垂直な平面におけるリード線88,90を結ぶ仮想線の延伸する方向(以下、「仮想線方向」ともいう。)であってピンチシール部94の外側の2つの領域の少なくともいずれかに接着剤が配されていることが示されている。
【0068】
つまり、リード線88,90を結ぶ仮想線方向であってピンチシール部94と口金部材201の筒状部分205との間に形成される2つのスペースのうち、少なくともいずれかのスペースに接着剤が配されている。
【0069】
同図の(a)では、口金部材201と内管32とを固着する接着剤221,223は、実施の形態と同様に、ピンチシール部94の膨出面94b,94bと、筒状部分205の内周面207であって膨出面94b,94bと対向する面(207)との間に配されている。
【0070】
なお、本例の場合も、接着剤221,223は、平面視において、一対のリード線88,90を結ぶ仮想直線上に位置している。
同図の(a)では、接着剤221,223は、互いに独立した状態で2箇所に配されていたが、同図の(b)では、接着剤が一箇所に設けられている。
【0071】
つまり、接着剤231は、ピンチシール部94の膨出面94b,94bと、筒状部分205の内周面207であって膨出面94b,94bと対向する面(207)との間の一方だけ配されている。なお、本例の場合も、接着剤231は、一対のリード線88,90を結ぶ仮想線上に位置しているが、接着剤(231)は、仮想線上に位置していなくてもよい。
【0072】
同図の(a)では、筒状部分205の凹入部分に空間を残して接着剤221,223が配されていたが、同図の(c)では、凹入部分とピンチシール部94との間の隙間がすべて埋まるように接着剤251,253が充填されている。この場合でも、接着剤251はリード線90と離れ、接着剤253はリード線88と離れている。
【0073】
このため、接着剤251,253はフローしても、一対のリード線88,90の両方に接触するようなことは生じ難い。
このように、仮想線方向において、リード線88を含みリード線90と離間するピンチシール部94の一方の側部(ピンチシール部94の外周部の一部である。)と、リード線90を含みリード線88と離間するピンチシール部94の他方の側部(ピンチシール部94の外周部の前記一部と異なる他部である。)の少なくともいずれかに接着剤が配されることにより、接着剤間の距離を大きくできるため、安全性を高めることができる。
【0074】
なお、実施の形態および本例の説明では、接着剤はピンチシール部94の一対のリード線88,90を結ぶ仮想線方向に配設されていたが、仮想線方向において、リード線88を含みリード線90と離間するピンチシール部94の一方の平坦面(例えば、図6の「94a」である。)と、リード線90を含みリード線88と離間するピンチシール部94の他方の平坦面(例えば、図6の「94b」である。)の少なくともいずれかを含むスぺ−スに接着剤を配してもよい。
(3)口金部材の構造
実施の形態および変形例1では、口金部材36,201は、接合部112,203を有する本体(114)にシェル(98)とアイレット(100)が装着されていたが、例えば、口金部を有する部材と、シェルとアイレットが装着される部材とが別体であってもよい。この場合を、変形例2として説明する。
【0075】
図9は、変形例2に係る口金部材に内管を結合した状態の断面図である。
なお、図9は、内管32が装着された状態であって、口金部材301だけを切り欠いた図である。
【0076】
変形例2に係る口金部材301は、筒体303と蓋体305とを備える。筒体303は、内部の開口(凹入部分)に挿入された内管32(ピンチシール部94)と接合する接合部307を構成する。
【0077】
筒体303は、同図に示すように、開口側端部に内側に張り出す張出部分311を有している。また、ピンチシール部94と筒体303との隙間の2箇所には接着剤313,314が配されている。これにより、筒体303と内管32とが固着される。
【0078】
なお、変形例2では、内管32は口金部材301に接着剤313,314で固着されていたが、内管32と口金部材301とが互いの動きを規制することができる部材、例えば、内管32と口金部材301との間の隙間を充填する充填部材であってもよい。
【0079】
この充填部材は、実施の形態等と同様に、一対のリード線88,90を結ぶ仮想線上に配されてもよいし、他の箇所に配されてもよい。但し、この充填部材は、内管32と口金部材301との間の隙間から外れないようにする必要があり、例えば、上記張出部分311を設け、当該張出部分311と充填部材とを当接させるようにしてもよい。
【0080】
口金部315は、蓋体305と、蓋体305に装着されたシェルおよびアイレット(図示省略)により構成されている。なお、蓋体305と筒体303との接合は、例えば、接着剤により行われている。
【0081】
図10は、変形例3に係る口金部材に内管を結合した状態の断面図である。
なお、図10は、図9と同様に、内管32が装着された状態であって、口金部材401だけを切り欠いた図である。
【0082】
変形例3に係る口金部材401は、接合部403と口金部405とを備える。なお、口金部405は、実施の形態等と同じであり、ここでの説明は省略する。
接合部403は、筒状部分407を有し、本体部408の底、つまり、筒状部分407の内側の凹入部分の底の中央が筒状部分407の開口側へと隆起する隆起領域409を有する。なお、内管32の一端から延出するリード線88,90用の貫通孔が設けられている。
【0083】
内管32の接合部403への接合は、内管32の一端が凹入部分の隆起領域409の当接する状態で、ピンチシール部と筒状部分407の内面とが接着剤411,413により固着されている。
【0084】
このように凹入部分の底に隆起領域409を有しているため、凹入部分内の接着剤411,413がフローし難くなり、接着剤411,413とリード線88,90とが接触するようなことをなくすことができる。
【0085】
図11は、変形例4に係る口金部材の斜視図である。
変形例4に係る口金部材501は、接合部503と口金部を備える。なお、口金部は、第1の実施の形態と同様であり、図示およびその説明を省略する。
【0086】
接合部503は、同図に示すように、ピンチシール部(94)を囲むように配された一対の壁状部分(本発明の「壁状部」に相当する。)505,507を備える。壁状部分505,507は、第1の実施の形態に係る筒状部分(116)の2箇所に切り欠き部509,511を設けた残部513,515により構成されている。
【0087】
このように、第1の実施の形態に係る筒状部分116において、ピンチシール部(94)と接合する箇所以外に切り欠き部(509,511)があったとしても、内管32と口金部材501との接合方法としては第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0088】
さらに、切り欠き部509,511を有することにより、壁状部分505,507とピンチシール部(94)との接合に使用する接着剤を挿入する際、隙間の横方向から(切り欠き部509,511から)接着剤を挿入するためのノズルを差し込めるため、簡易な設備であっても壁状部分505,507の上側に接着剤がはみ出すことなく、接着剤を所定位置に挿入することができる。
【0089】
なお、口金は、エジソンタイプに限定されず、例えばスワンタイプであってもよい。
2.規制部材
本発明において、外管34と内管32の隙間に規制部材を設けてもよい。規制部材は、内管32(チップオフ部106を含む)を支持し、かつ複数のツメにより外管34の内面に当接する形態であってもよい。この構成では、例えば、外管34の内面に規制部材のツメを当接させることにより、放電管30の破裂時に外管からの摩擦力および応力を内管32の先端部に伝え、内管32の先端部が吹き飛んで外管34の閉塞部34bに衝突する速度を減衰させることができる。
3.まとめ
実施の形態、各種変形例は、互いに組合せても良く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、電気的不具合による品質低下の抑制に利用できる。
【符号の説明】
【0091】
14 ランプ
30 放電管
32 内管
34 外管
36 口金部材
120,122 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電管を内部に収納する状態で一端部にピンチシール部を有する内管が口金部材に接着剤により固着されていると共に、前記内管の一端から延出する一対のリード線を備え、前記内管を覆う外管の一端が前記口金部材に取着されてなる金属蒸気放電ランプであって、
前記口金部材は、前記ピンチシール部を囲むように配置された壁状部を有し、
前記接着剤は、前記内管の一端部と前記壁状部との間に配されている共に、前記内管の一端から延出する一対のリード線の少なくとも一方から離間している
ことを特徴とする金属蒸気放電ランプ。
【請求項2】
外管の管軸の延伸方向から前記壁状部をみたときに、当該壁状部は前記外管の一端部の内面に沿った形状をしている
ことを特徴する請求項1に記載の金属蒸気放電ランプ。
【請求項3】
前記外管の横断面形状は円環状であり、前記壁状部は、前記外管の一端部に内嵌される円筒状をしている
ことを特徴とする請求項2に記載の金属蒸気放電ランプ。
【請求項4】
前記接着剤は、前記一対のリード線の双方から離間している
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の金属蒸気放電ランプ。
【請求項5】
前記ピンチシール部における前記一対のリード線を結ぶ仮想線の延伸方向において、一方のリード線を含み他方のリード線と離間する領域と、前記他方のリード線を含み前記一方のリード線と離間する領域との少なくともいずれかに接着剤が配されている
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の金属蒸気放電ランプ。
【請求項6】
前記接着剤は2箇所に配されており、
当該接着剤の配置箇所が、前記仮想直線上に位置している
ことを特徴とする請求項5に記載の金属蒸気放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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