説明

釣竿

【課題】遊動ガイドが緩み難く、滑らかな剛性変化が得られる穂先竿杆を備えた釣竿を提供する。
【解決手段】本発明の釣竿は、中実状の芯材12を具備し、芯材12に釣糸を挿通させる遊動ガイド20を装着した穂先竿杆10を有する。中実状の芯材12は、先端側に形成されるストレート状部12aと、ストレート状部の基端側に形成されるテーパ部12bと、テーパ部の基端側に形成され、テーパ部12bのテーパよりも緩いテーパとなる緩テーパ部12cと、を備えており、遊動ガイド20の固定位置を、緩テーパ部12cとしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿に関し、詳細には、穂先竿杆に特徴を有する釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、釣竿の穂先竿杆として、例えば、特許文献1に開示されているように、中実状の芯材(超弾性合金)を用いることが知られている。このような超弾性合金で構成された穂先竿杆は、折れ難く撓み性に優れるため、細径化することが可能となり、小さい魚信を感知できるという利点がある。
【0003】
また、特許文献1に開示されている穂先竿杆は、先端部から4〜20mmの範囲をストレート部とし、その部分にトップガイドを装着できるようにすると共に、ストレート部に連続して急テーパ部を形成し、その部分に釣糸ガイドを接着固定するようにしている。
【特許文献1】特開2006−6229号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように構成される穂先竿杆は、釣糸ガイドが固定されているため、仕舞い寸法を考慮した振り出し式の釣竿に適用することはできない。また、上記した構成の穂先竿杆では、仮に釣糸ガイドとして遊動ガイドを用いても、以下の問題がある。
【0005】
上記したような穂先竿杆を有する釣竿は、実釣時において、仕掛けを巻き込んで、穂先竿杆が通常の曲がりに比較して大きく曲がることがある。このような状態では、遊動ガイドが急テーパ部に固定されていると、図4に示すように、穂先竿杆50の外面と遊動ガイド60のパイプ61の内面が面接触ではなく、点接触状態もしくは線接触状態となってしまい、遊動ガイド60の固定力が低下して緩んでしまう、という問題が生じる。
【0006】
また、上記した構成では、急テーパ部に釣糸ガイドを装着する構成のため、穂先竿杆の先側において滑らかな剛性変化が得られなくなり、繊細な魚信感度を得ることが難しい、という問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記した問題に基づいてなされたものであり、遊動ガイドが緩み難く、滑らかな剛性変化が得られる穂先竿杆を備えた釣竿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係る釣竿は、中実状の芯材を具備し、前記芯材に釣糸を挿通させる遊動ガイドを装着した穂先竿杆を有しており、前記中実状の芯材は、先端側に形成されるストレート状部と、ストレート状部の基端側に形成されるテーパ部と、テーパ部の基端側に形成され、前記テーパ部のテーパよりも緩いテーパとなる緩テーパ部と、を備えており、前記遊動ガイドの固定位置を、前記緩テーパ部としたことを特徴とする。
【0009】
上記した構成の釣竿によれば、例えば、仕掛けを巻き込んで穂先竿杆が撓んだ際に、最も大きく撓む部分(屈曲ポイント)が、ストレート状部とテーパ部との境界領域となる。前記遊動ガイドは、テーパ部よりも基端側に形成される緩テーパ部上に固定されており、屈曲ポイントから離れているため、穂先竿杆が大きく撓んでも、穂先竿杆の外面と遊動ガイドのパイプの内面との間の面接触状態が大きく損なわれることはない。従って、穂先竿杆が大きく撓んだ際に、遊動ガイドが緩むことが抑制される。また、穂先竿杆のストレート状部とテーパ部には、遊動ガイドが固定されないことから、穂先竿杆の先側が滑らかな剛性変化となり、調子の向上が図れる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、遊動ガイドが緩み難く、滑らかな剛性変化が得られる穂先竿杆を備えた釣竿が得られるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1から図3は、本発明に係る釣竿の一実施形態を示す図であり、図1は全体構成を示す図、図2(a)は穂先竿杆の主要部の構成を示す図、図2(b)は穂先竿杆の主要部の縦断面図、そして、図3(a)は穂先竿杆の通常状態を示す図、図3(b)は仕掛けを巻き込んだ場合等、穂先竿杆が大きく撓んだ状態を示す図である。
【0012】
本実施形態の釣竿1は、元竿3、複数の中竿5、及び穂先竿杆10を備えた構成となっており、各竿は、振り出し式によって継合されている。この場合、中竿5は無い構成であっても良いし、図1に示すように、多数本継合されていても良い。
【0013】
前記元竿3及び中竿5は、繊維強化樹脂製の管状体で構成されており、例えば、強化繊維(主に炭素繊維やガラス繊維等)に、エポキシ樹脂等の合成樹脂を含浸した繊維強化樹脂プリプレグ(プリプレグシート)を芯金に巻回し、加熱工程を経た後、脱芯する等、定法に従って所定の寸法に形成されている。
【0014】
また、釣竿1には、元竿3に装着されるリールRからの釣糸を案内する外ガイドが複数個、装着されており、前記穂先竿杆10には、後述するように、少なくとも1個以上の遊動ガイドが装着される。
【0015】
前記穂先竿杆10は、中実状の芯材12を備えており、この芯材は、超弾性合金素材(例えば、Ni−Ti系合金、Fe−Al合金等)によって形成されている。この場合、穂先竿杆10は、そのような中実状の芯材12のみで構成されていても良いし、芯材12が嵌入される管状の中空体を備えた構成であっても良い。
【0016】
なお、前記芯材12は、超弾性合金素材によって形成しておくことで、後述するような屈曲ポイントを設けて大きく撓む部分を形成しても折れ難くすることが可能となる。もちろん、芯材12は、中実で柱状に構成されたものであれば良く、例えば、ガラス繊維や炭素繊維等にエポキシ樹脂等の合成樹脂を含浸して形成される強化繊維樹脂などの材料によって形成されていても良い。
【0017】
前記芯材12の先端部には、釣糸を導出させるトップガイド15が取着されている。また、芯材12の表面形状については、所定の位置で屈曲ポイント(撓んだときに最も曲率が大きくなる位置)が生じるように、軸長方向に沿って変化するように形成されている。
【0018】
以下、芯材12の構成について具体的に説明する。
【0019】
芯材12は、先端側から所定の位置に屈曲ポイントが形成されるように、軸長方向に沿った表面状態が変化する変化部12Aを備えている。この変化部12Aは、芯材12が撓んだとき、最も曲率半径が小さくなる(最も曲率が大きくなる)部分であり、本実施形態では、芯材12の表面に、軸長方向基端側に移行するに連れて次第に拡径するテーパ部を設けることで変化部12Aを形成するようにしている。
【0020】
具体的には、芯材12の先端側に、ストレート状部12aと、ストレート状部12aの基端側にテーパ部12bを形成しておき、ストレート状部12aとテーパ部12bの境界部分で変化部12Aが形成されるようにしている。
【0021】
この場合、ストレート状部12aは、軸長方向に沿って外径が変化することのない厳密なストレート形状であっても良いし、基端側に移行するに連れて僅かに拡径して行くようなテーパ形状であっても良い。ただし、そのようなテーパ形状であっても、テーパ部12bのテーパよりも緩く形成されている。
【0022】
前記テーパ部12bのテーパについては、特に限定されることはないが、穂先竿の調子等を考慮して、2.50/1000〜7.50/1000の範囲で形成されていれば良く、変化部12Aの外径については、0.40〜0.80mmの範囲で形成されていれば良い。
【0023】
また、前記芯材12には、テーパ部12bの基端側に、連続してテーパ部12bのテーパよりも緩いテーパとなる緩テーパ部12cが形成されている。
【0024】
このような緩テーパ部12cを形成しておくことにより、前記テーパ部12bによって穂先竿杆10の先端領域が太径化することが防止され、軽量化が図れると共に、穂先竿杆10の調子の向上を図ることが可能となる。また、このような緩テーパ部12cは、遊動ガイド20(先端側遊動ガイド)が固定される領域となっている。
【0025】
前記遊動ガイド20は、芯材12に対して挿通されるパイプ21を具備しており、この部分を把持して軸方向に摺動することで、そのパイプ21の内面が緩テーパ部12cの外面と面接触して固定される。このため、緩テーパ部12cのテーパについては、大き過ぎたり小さ過ぎると、パイプ21の内周面との間で接触領域が十分確保されず、緩み易くなってしまうので、そのテーパについては、前記テーパ部12bのテーパよりも小さく、かつ0.00/1000〜0.50/1000の範囲で形成されていることが好ましい。また、前記基端部12B(テーパ部12bと以下の緩テーパ部12cとの境界)の外径については、0.70〜1.20mmの範囲で形成されていることが好ましい。
【0026】
前記ストレート状部12aについては、短過ぎると、変化部12Aが先端から近過ぎて屈曲ポイントとなり難くると共に、穂先調子も低下してしまう。また、前記ストレート状部12aは、長過ぎると、仕掛けの巻き込み時において最大曲率となる位置を遊動ガイド20の固定位置よりも穂先側に移すことはできるものの、穂先の先端部分が柔らか過ぎてしまい、釣竿としてのバランスが低下してしまう。このため、ストレート状部12aの長さについては、先端から20〜50mmの範囲で形成しておくことが好ましい。
【0027】
前記トップガイド15は、ストレート状部12aの先端部分に嵌入した状態で固定される。また、遊動ガイド20については、調子のバランス、感度等を考慮して、穂先竿杆10の先端位置からパイプ21の端部までの距離が100mm前後となる位置に固定されることが好ましい。
【0028】
なお、穂先竿杆10には、上記した遊動ガイド20の他に、更に、基端側に複数の遊動ガイド(図3において、第2遊動ガイド22を示す)を配設しておいても良い。
【0029】
次に、上記したように構成される穂先竿杆10を備えた釣竿の作用、効果について説明する。
【0030】
上記したように、穂先竿杆10の芯材12は、図3(a)に示すように、先端側から所定位置に屈曲ポイント(ストレート状部12aとテーパ部12bの境界となる変化部12A)を有している。この変化部12Aは、仕掛けを巻き込んでしまうと、図3(b)で示すように、変化部12Aを屈曲ポイント(曲率が最大となる位置)として大きく撓むようになる。
【0031】
ところが、前記緩テーパ部12cは、図3(b)に示すように、大きく撓むことがないため、この緩テーパ部12cに固定されている遊動ガイド20のパイプ21は、穂先竿杆の外面との間で点接触状態になったり、線接触状態になることが抑制され、遊動ガイド20の固定力が低下して緩みが生じることを効果的に抑制することが可能となる。
【0032】
また、遊動ガイド20は、前記ストレート状部12aやテーパ部12bに固定されないため、穂先竿杆10の先端側の剛性変化を滑らかな状態にすることができ、魚信感度の向上を図ることが可能となる。
【0033】
また、撓みの屈曲ポイントとなる変化部12Aを、ストレート状部12aとテーパ部12bとの境界部分に設けており、ストレート状部12aを所定の長さ設けているため、ストレート状部を細径化することが可能となり、小さい魚信に対しても穂先の先端部が反応し易い釣竿が得られるようになる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
【0035】
例えば、穂先竿杆10については、必要に応じて繊維強化樹脂製プリプレグを巻回しても良い。この場合、巻回される繊維強化樹脂製プリプレグは、穂先竿杆が大きく撓んだ際に剥離等が生じないように、前記緩テーパ12c付近から基端側とすることが好ましい。
【0036】
また、遊動ガイド20が固定される位置については、緩テーパ上であれば、その位置については限定されることはないが、長過ぎると、トップガイドとの間の距離が広がりすぎて穂先竿杆の外面と釣糸が接触し易くなってしまうので、前記基端部12Bから5〜30mmの範囲で固定されるようにしておくことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る釣竿の一実施形態を示す図であり、全体構成を示す図。
【図2】(a)は穂先竿杆の主要部の構成を示す図、(b)は穂先竿杆の主要部の縦断面図。
【図3】(a)は穂先竿杆の通常状態を示す図、(b)は仕掛けを巻き込んだ場合等、穂先竿杆が大きく撓んだ状態を示す図。
【図4】従来の遊動ガイドが装着された穂先竿杆が撓んだ状態を示す図。
【符号の説明】
【0038】
1 釣竿
10 穂先竿杆
12 芯材
12a ストレート状部
12b テーパ部
12c 緩テーパ部
12A 変化部
20 遊動ガイド
21 パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中実状の芯材を具備し、前記芯材に釣糸を挿通させる遊動ガイドを装着した穂先竿杆を有する釣竿であって、
前記中実状の芯材は、先端側に形成されるストレート状部と、ストレート状部の基端側に形成されるテーパ部と、テーパ部の基端側に形成され、前記テーパ部のテーパよりも緩いテーパとなる緩テーパ部と、を備えており、
前記遊動ガイドの固定位置を、前記緩テーパ部としたことを特徴とする釣竿。
【請求項2】
前記ストレート状部は、先端から20〜50mmの範囲で形成されることを特徴とする請求項1に記載の釣竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−104264(P2010−104264A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277289(P2008−277289)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】