説明

釣竿

【課題】不用意に抜け難く、継合構造が堅固な釣竿を提供する。
【解決手段】大径の第一の竿杆の管状部内に小径の第二の竿杆を挿入して継ぎ合わせる継合部10を備えた釣竿であって、継合部10は、第一の竿杆の開口部よりも元側において、第一の竿杆の内面と第二の竿杆の外面とが当接して継合される継合領域S1と、継合領域S1よりも開口部側において、第一の竿杆の内面と第二の竿杆のテーパ状の外面とが対向し、第一の竿杆から第二の竿杆が抜けるのを防止するための抜止手段が設けられる抜止領域S2と、を具備して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、へら竿、船竿、ルアー竿などの釣竿では、複数本の竿杆を継合する継合構成が採用されており、隣接する竿杆(大径の竿杆と小径の竿杆)同士を継合する手段として、例えば、特許文献1に開示された継合構造が知られている。この特許文献1には、大径竿杆の先端に円筒状の空洞部を形成しておき、ここに小径竿杆の基端部を圧入することで、両者を継合するようにしている。
一方、合成樹脂またはガラス繊維からなる弾性体で穂先竿を形成したものも知られている。
【特許文献1】特開2000−50769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記した継合構造を備えた釣竿では、大径の竿杆内面と小径の竿杆外面との双方の傾斜面同士を面接させる継合構造であるため、両者の間で充分な固定力が発生せず、不用意に抜けるおそれがある。
特に、径の細い穂先竿では、接触面積が小さくなるため、その他の継部に比べて抜け易い傾向にあった。
そこで、対策案として、接着剤を用いて継合することが考えられる。しかしながら、単に接着剤を用いて固着するだけで、抜けに対する固定力を得ることは難しかった。
【0004】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、不用意に抜け難く、継合構造が堅固な釣竿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決する本発明の釣竿は、大径の第一の竿杆の管状部内に小径の第二の竿杆を挿入して継ぎ合わせる継合部を備えた釣竿であって、前記継合部は、前記第一の竿杆の開口部よりも元側において、前記第一の竿杆の内面と前記第二の竿杆の外面とが当接して継合される継合領域と、前記継合領域よりも前記開口部側において、前記第一の竿杆の内面と前記第二の竿杆のテーパ状の外面とが対向し、前記第一の竿杆から前記第二の竿杆が抜けるのを防止するための抜止手段が設けられる抜止領域と、を具備したことを特徴とする。
【0006】
この釣竿によれば、第一の竿杆の開口部よりも元側の継合領域において、第一の竿杆の内面と第二の竿杆の外面とが当接して継合され、この継合領域よりも開口部側の抜止領域において、抜止手段により第一の竿杆から第二の竿杆が抜けることが防止される。つまり、継合領域と抜止領域とによって、第一の竿杆と第二の竿杆との好適な継合と第一の竿杆の抜け防止とを同時に実現することができる。
【0007】
また、本発明は、前記抜止手段が、前記第一の竿杆の内面と前記第二の竿杆のテーパ状の外面との間に形成される断面略くさび形状の接着剤充填空間に接着剤が充填されてなる構成とするのがよい。
【0008】
この釣竿によれば、第一の竿杆の内面と第二の竿杆のテーパ状の外面との間に形成される断面略くさび形状の接着剤充填空間に対して接着剤が充填されると、接着剤は、第一の竿杆の内面と第二の竿杆のテーパ状の外面とを固着するとともに、断面略くさび形状を呈して硬化することとなるので、第一の竿杆から第二の竿杆が抜けるのを抑えるくさび状の部材としても機能することとなる。
【0009】
例えば、第一の竿杆の抜止領域における内面を、前記第二の竿杆のテーパ状の外面に対して逆テーパ状として、断面略くさび形状の接着剤充填空間とされている構成では、第一の竿杆の逆テーパ状内面を粗面化して、第一の竿杆の逆テーパ状内面と第二の竿杆のテーパ状の外面との間に接着剤を充填して硬化させると、接着剤は、第一の竿杆の逆テーパ状内面に、より強く固着されつつ、第一の竿杆の逆テーパ状内面と第二の竿杆のテーパ状の外面との間に断面略くさび形状を呈して介在することとなる。したがって、仮に、経年変化等によって、第二の竿杆のテーパ状の外面と接着剤との接着力が低減する事態が生じたとしても、第一の竿杆の逆テーパ状内面に対して、より強く固着される接着剤のくさび効果によって、第二の竿杆の移動が抑制され、その結果として、第一の竿杆から第二の竿杆が抜けるのを好適に抑えることができる。
【0010】
また、本発明は、前記第一の竿杆の前記抜止領域における内面は、前記第二の竿杆のテーパ状の外面が拡がる方向に拡がるテーパ状とされている構成とするのがよい。
【0011】
この釣竿によれば、第一の竿杆の抜止領域における内面は、第二の竿杆のテーパ状の外面が拡がる方向に拡がるテーパ状とされているので、仮に、第二の竿杆に対して、第一の竿杆から抜ける方向の力が作用したとしても、第二の竿杆のテーパ状の外面が接着剤を介して第二の竿杆の抜ける方向の動きを抑えるように作用することとなり、第一の竿杆から第二の竿杆が抜けるのを抑えることができる。
【0012】
また、本発明は、前記抜止手段が、前記第一の竿杆の前記抜止領域における内面において軸方向に交叉する方向に形成され、充填された前記接着剤が入り込む溝部を含む構成とするのがよい。
【0013】
この釣竿によれば、第一の竿杆の内面と第二の竿杆のテーパ状の外面との間に接着剤を充填すると、接着剤は、第一の竿杆の抜止領域における内面に形成された、軸方向に交叉する溝部にも入り込み、この溝部内においても固着することとなる。つまり、硬化した接着剤は、第一の竿杆の内面側に、より強く固着されつつ、第一の竿杆の内面と第二の竿杆のテーパ状の外面との間に断面略くさび形状を呈して介在することとなる。したがって、仮に、経年変化等によって、第二の竿杆のテーパ状の外面と接着剤との接着力が低減する事態が生じたとしても、硬化した接着剤のくさび効果によって第一の竿杆から第二の竿杆が抜けるのを好適に抑えることができる。
【0014】
また、本発明は、前記第一の竿杆が、少なくとも前記抜止領域に、軸方向に沿うスリットを有しており、前記スリットを狭める方向に前記第一の竿杆を弾性変形させる被覆部材が、前記第一の竿杆の外周面に装着される構成とするのがよい。
【0015】
この釣竿によれば、被覆部材を第一の竿杆の外周面に装着すると、スリットを狭める方向に第一の竿杆が弾性変形する。これによって、第一の竿杆の内面が第二の竿杆のテーパ状の外面に近づき、あるいは第一の竿杆の内面が第二の竿杆のテーパ状の外面に部分的に当接する状態等となる。これによって、仮に、第二の竿杆に対して、第一の竿杆から抜ける方向の力が作用したとしても、第二の竿杆のテーパ状の外面が接着剤を介して第二の竿杆の抜ける方向の動きを抑えるように作用することとなり、第一の竿杆から第二の竿杆が抜けるのを抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、継合領域および抜止領域の存在によって、第一の竿杆と第二の竿杆との好適な継合、および第一の竿杆の抜け防止を同時に実現することができ、第一の竿杆から第二の竿杆が不用意に抜け難く、継合構造が堅固な釣竿が得られる。
【0017】
また、充填されて硬化した接着剤は、第一の竿杆の内面と第二の竿杆のテーパ状の外面とを固着するとともに、第一の竿杆から第二の竿杆が抜けるのを抑えるくさび状の部材としても機能することとなるので、第一の竿杆から第二の竿杆が不用意に抜け難く、継合構造が堅固な釣竿が得られる。
【0018】
また、例えば、第一の竿杆の逆テーパ状内面を粗面化して、第一の竿杆の逆テーパ状内面と第二の竿杆のテーパ状の外面との間に接着剤を充填して硬化させると、硬化した接着剤が、第一の竿杆の逆テーパ状内面に、より強く固着されつつ、第一の竿杆の逆テーパ状内面と第二の竿杆のテーパ状の外面との間に断面略くさび形状を呈して介在することとなり、接着剤のくさび効果によって、第一の竿杆から第二の竿杆が不用意に抜け難く、継合構造が堅固な釣竿が得られる。
【0019】
また、本発明によれば、第一の竿杆の抜止領域における内面が、第二の竿杆のテーパ状の外面が拡がる方向に拡がるテーパ状とされているので、仮に、第二の竿杆に、第一の竿杆から抜ける方向の力が作用したとしても、第一の竿杆のテーパ状の内面が、接着剤を介して第二の竿杆の抜ける方向の動きを抑えるように作用することとなり、第一の竿杆から第二の竿杆が不用意に抜け難く、継合構造が堅固な釣竿が得られる。
【0020】
また、本発明によれば、抜止手段が、第一の竿杆の抜止領域における内面において軸方向に交叉する方向に形成されて接着剤が入り込む溝部を含むので、硬化した接着剤が、第一の竿杆の内面側に、より強く固着されつつ、第一の竿杆の内面と第二の竿杆のテーパ状の外面との間に断面略くさび形状を呈して介在することとなり、第一の竿杆から第二の竿杆が不用意に抜け難く、継合構造が堅固な釣竿が得られる。
【0021】
また、本発明によれば、第一の竿杆が、少なくとも抜止領域に、軸方向に沿うスリットを備え、このスリットを狭める方向に弾性変形させる被覆部材が装着されるので、第二の竿杆のテーパ状外面が接着剤を介して第二の竿杆の抜ける方向の動きを抑えるように作用することとなり、第一の竿杆から第二の竿杆が不用意に抜け難く、継合構造が堅固な釣竿が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る釣竿の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
参照する図面において、図1は本発明の第1実施形態に係る釣竿の全体を示す説明図、図2は継合部の構成を示した図であり、(a)は継合状態を示す説明図、(b)は分解した状態を示す説明図、図3は継合部の寸法関係を模式的に示した説明図である。
なお、以下の各実施形態では、投げ、磯、船、ルアーなど様々な竿種に本発明が適用される例を示すが、本発明の釣竿の形態を限定する趣旨ではない。また、以下の説明において、「前」側は、竿先側(穂先側)を言い、「後」側は、竿尻側を言う。
【0023】
図1に示すように、釣竿は、複数の竿杆1,2を継合する構成となっており、釣り糸をガイドするとともに、この竿杆1,2の外周面に釣り糸が付着するのを防止する複数の釣糸ガイド3を備える。複数の釣糸ガイド3は、釣竿の穂先に向けて所定間隔をおいて竿杆1,2の外周面に設けられている。なお、釣竿は、竿杆1,2を継合させたものに限らず、三本以上の竿杆を継合させたものでもよく、また、一本竿でもよい。
【0024】
竿杆1は、中空体と中実体とからなり、中空状とされた竿杆1’(第一の竿杆)の先端に、継合部10を介して中実状の小径の穂先竿20(第二の竿杆)が継合された構造となっている。
竿杆1’は、カーボン、ガラス、超弾性合金等からなり、その先端に、図2(b)に示すように、空洞状の管状部4が形成されている。
管状部4は、穂先竿20の基端部21が継合される継合部10を構成しており、その内径が、ストレート状に形成された継合領域S1と、この継合領域S1よりも開口端側にあって、その内径が開口端に向けて次第に拡径するように形成された抜止領域S2とを備えている。
【0025】
継合領域S1には、穂先竿20における基端部21が直接的に継合される領域であり、基端部21の円柱状の後端部22の外面22aが継合される内面4aを備えている。
本実施形態では、図3に示すように、管状部4の継合領域S1における内面4aの後側の内径寸法D1と内面4aの前側の内径寸法D2が同じ寸法に設定されており、また、これに継合される穂先竿20の基端部21における後端部22の後側の外径寸法D1’が前記内径寸法D1と同じ寸法に設定され、かつ、後端部22の前側の外径寸法D2’が前記内径寸法D2と同じ寸法に設定されている。つまり、図2(a)に示すように、管状部4に対して穂先竿20が挿入されると、前記したように、管状部4の内面4aの後側の内径寸法D1と内面4aの前側の内径寸法D2が同じ寸法であり、後端部22がこれに対応した寸法D1’,D2’を備えていることから、管状部4の内面4aに基端部21の後端部22の外面22aがきつく面接触することとなる。
これによって、管状部4(竿杆1’)に対して基端部21(穂先竿20)が芯ずれすることなく継合されるようになっている。
【0026】
また、抜止領域S2は、接着剤30が充填される領域であり、管状部4の拡径された内面4bに対向するように、基端部21のテーパ状部23の外面23bが位置するようになっている。つまり、管状部4の拡径された内面4bは、基端部21のテーパ状部23の外面23bに対して逆テーパ状となっており、逆テーパ状の内面4bとテーパ状の外面23bとの間には、穂先側(開口端)ヘ向けて拡がる断面略くさび形状(開口端側から見て円筒状)の接着剤充填空間Kが形成されるようになっている。
【0027】
本実施形態では、この逆テーパ状の内面4bとテーパ状の外面23bとの間に形成される接着剤充填空間Kに対して接着剤30が充填されることで、管状部4(竿杆1)から穂先竿20が抜けるのを防止するための抜止手段が構成されており、後記するように、接着剤充填空間Kにて硬化された断面略くさび形状の接着剤30によって、穂先竿20の抜けが抑制されるようになっている。
【0028】
一方、穂先竿20は、カーボン、ガラス、超弾性合金等で中実状に形成されており、その基端部21には、前記継合領域S1に位置して竿杆1の管状部4の内面4aに継合される円柱状の後端部22と、前記抜止領域S2に位置して管状部4の拡径された内面4aとの間に前記した接着剤充填空間Kを形成するテーパ状の外面23bを有するテーパ状部23とを有している。
【0029】
本実施形態では、図3に示すように、管状部4の抜止領域S2の開口端における内面4bの内径寸法D3が、前記した内面4aの前側の内径寸法D2よりも大きく設定されているとともに、穂先竿20の基端部21のテーパ状部23における外径寸法D3’が、前記した内径寸法D2よりも小さくなるように設定されている。これによって、逆テーパ状の内面4bとテーパ状の外面23aとの間には、少なくとも穂先側(開口端側)に向けて拡がる、接着剤30の充填される空間を有した接着剤充填空間Kが形成されるようになっている。
【0030】
なお、本実施形態では、管状部4が円筒形状であることを前提にして前記寸法関係を説明したが、これに限られることはなく、管状部4およびこれに継合される穂先竿20の基端部(不図示)が、断面楕円形状、断面長円形状、断面矩形状、断面多角形状、断面扁平形状であってもよい。この場合には、前記した各部における各寸法は、前記した関係をそれぞれ有するように設定される。
【0031】
次に、管状部4への穂先竿20の組み付けについて説明する。
初めに、穂先竿20の基端部21を管状部4に挿入して、基端部21の後端部22を管状部4の継合領域S1に継ぎ合わせる。この場合、後端部22の外面22aや継合領域S1の内面4aに接着剤30を塗布しておいて、継合により基端部21の後端部22が管状部4の内面4aに固着されるようにしてもよい。
基端部21の後端部22を管状部4の継合領域S1に継合すると、抜止領域S2における管状部4の拡径された逆テーパ状の内面4bと、基端部21のテーパ状部23の外面23bとが対向した状態となり、これらの間に、断面略くさび形状の接着剤充填空間Kが形成される(図2(b)参照)。
【0032】
次に、形成された接着剤充填空間Kに、管状部4の開口端から接着剤30を充填する。これにより、断面略くさび形状の接着剤充填空間Kに接着剤30が介在され、これが硬化すると、管状部4の内面4bと、基端部21の外面23bとが接着剤30を介して固着される。
なお、管状部4の内面4bと、基端部21の外面23bとに、予め接着剤30を塗布しておいてから管状部4に穂先竿20の基端部21を挿入し、接着剤30の充填が不足している部分があれば、接着剤30をさらに塗布する。
【0033】
以上説明した本実施形態の釣竿によれば、管状部4の開口部よりも元側に形成された継合領域S1において、管状部4の内面4aと基端部21の後端部22の外面22aとが当接(面接触)して芯ずれを阻止する状態に継合されるようになり、また、この継合領域S1よりも開口部側の抜止領域S2において、断面略くさび形状の接着剤充填空間Kに接着剤30が充填されてなる抜止手段によって、管状部4から穂先竿20(基端部21)が抜けることが防止される。つまり、継合領域S1と抜止領域S2とによって、管状部4に対する穂先竿20(基端部21)の好適な継合と、穂先竿20の抜け防止とを同時に実現することができる。
【0034】
また、抜止手段は、管状部4の内面4bと穂先竿20の基端部21のテーパ状の外面23bとの間に形成される断面略くさび形状の接着剤充填空間Kに接着剤30が充填されてなるので、充填された接着剤30によって管状部4の内面4bと穂先竿20の基端部21のテーパ状の外面23bとが固着され、また、断面略くさび形状を呈して硬化した接着剤30が、管状部4から穂先竿20が抜けるのを抑えるくさび状の部材として機能することとなる。したがって、管状部4から穂先竿20(基端部21)が不用意に抜け難くなり、継合構造が堅固な釣竿が得られる。
【0035】
また、管状部4の内面4bは、穂先竿20の基端部21のテーパ状部23の外面23bに対して逆テーパ状とされているので、例えば、内面4bを粗面化して、接着剤充填空間Kに接着剤30を充填し、これが硬化すると、接着剤30は、内面4bに対してより強く固着されつつ、接着剤充填空間Kにおいて断面略くさび形状を呈して介在することとなる。したがって、仮に、経年変化等によって、テーパ状部23の外面23bと接着剤30との固着力が低減する事態が生じたとしても、硬化した接着剤30のくさび効果によって管状部4から穂先竿20(基端部21)が抜けるのを好適に抑えることができる。
【0036】
(第2実施形態)
図4は本発明の第2実施形態に係る釣竿の継合部の構成を示した図であり、(a)は分解した状態を示す説明図、(b)は継合状態を示す説明図、(c)は被覆部材を巻回した状態を示す説明図である。
本実施形態が前記第1実施形態と異なるところは、少なくとも管状部4Aが後記する被覆部材15の装着によって、前記した接着剤充填空間Kを狭める方向に弾性変形するようになっている点である。
【0037】
そのための構成として、管状部4Aの継合部10Aにおける壁部4A’には、管状部4Aの軸方向に沿うスリット5,5’(図7(a)参照)が形成されている。
スリット5,5’は、図4(a)(b)に示すように、その前端部が管状部4Aの開口端に連通しており、これによって、図4(c)に示すように、管状部4に後記する被覆部材15が装着されて管状部4Aが巻き締めされると、管状部4Aは、矢印方向(スリット5,5’の隙間が狭まる方向)に弾性変形し、その結果として、接着剤充填空間Kが狭まるようになっている。
したがって、図7(a)に示すように、抜止領域S2における管状部4Aの内面4bと穂先竿20の基端部21のテーパ状の外面23bとが、接着剤30を介しつつ相互に面接触した状態となる。なお、図7(a)において、被覆部材15は省略している。
(図7(a)参照)。
【0038】
ここで、被覆部材15は、スリット5,5’を覆う状態に管状部4Aに巻回される糸状体である。本実施形態では、綿糸等の糸状体を用いており、その表面に図示しない糸止め剤が塗布されている。
なお、被覆部材15としては、前記した綿糸等の糸状体に限られることはなく、織布、不織布、ナイロン、ポリエステル等のテープ状体や、収縮性のチューブ、金属製の筒状体等、種々のものを採用することができる。
【0039】
本実施形態の釣竿によれば、被覆部材15を管状部4Aの外周面に巻回して装着する(巻き締める)と、スリット5,5’を狭める方向に管状部4Aが弾性変形する。これによって、穂先竿20の基端部21のテーパ状部23の外面23bに、管状部4Aの逆テーパ状の内面4bが近づき、あるいは部分的(または全体的)に当接(面接触)するようになり、これが、穂先竿20の抜ける方向の動きを抑えるように作用する。これによって、仮に、穂先竿20に対して、管状部4Aから抜ける方向の力が作用したとしても、これが好適に抑えられるようになり、穂先竿20の基端部21が管状部4Aから抜けるのを抑えることができる(図7(a)参照)。
【0040】
なお、図5(a)〜(c)に示すように、管状部4B(係合部10B)における抜止領域S2の内面4b’を継合領域S1の内面4aと同径に形成して(内面4aと内面4b’とをストレートに、つまり、図3に示した内径寸法D1、D2、D3を同寸法に形成して)、前記した接着剤充填空間K(図4(b)参照)よりも狭まった接着剤充填空間K’が形成されるようにして、前記と同様に、管状部4Bに巻回される被覆部材15の巻き締めによって(スリット5,5’を窄ませることによって)、管状部4Bが弾性変形するように構成してもよい。
【0041】
また、図6に示すように、穂先竿20’を薄肉扁平状に形成して、この穂先竿20’の基端部21’が挿入されて係合されるスリット状の溝部5Aを竿杆1’の先端部に形成して、断面くさび形状の接着剤充填空間K’’を形成してもよい。
穂先竿20’は、例えば、炭素繊維、ガラス繊維等の強化繊維に合成樹脂を含浸させて全体が薄肉扁平状に形成されており、元側が厚く、元側から穂先側へ向けて厚さが薄くなるように形成されている。そして、その基端部21’が管状部4’のスリット状の溝部5Aに挿入可能となっている。基端部21’は、管状部4’の継合領域S1の内面5aに継合される後端部22’と、管状部4’の抜止領域S2の内面5bに対向配置される外面23b’を備えたテーパ状部23’を有している。
【0042】
管状部4’に形成された溝部5Aは、前記したようにスリット状(断面矩形状)を呈しており、この例では、この溝部5Aが、管状部4’の先端部側を上下に二分するように管状部4’の軸心(不図示)に沿って形成されている。
【0043】
溝部5Aは、穂先竿20’の基端部21’が挿入されて係合される溝高さを有しており、基端部21’の後端部22’の外面22a’が継合される内面5aを有した継合領域S1と、基端部21’のテーパ状部23の外面23b’に対向する逆テーパ状の内面5bを有した抜止領域S2とを備えている。この例では、基端部21’が溝部5Aに係合された状態で、基端部21’のテーパ状部23’の外面23b’と、管状部4’の抜止領域S2における内面5bとの間には、穂先側へ向けて空間が広がるようにされた断面略くさび形状の接着剤充填空間K’’が形成されるようになっている。
【0044】
このような釣竿においても、断面略くさび形状の接着剤充填空間K’’に接着剤30が充填されてなる抜止手段によって、管状部4’から穂先竿20’(基端部21’)が抜けることが防止される。つまり、図7(b)に示すように、抜止領域S2において、溝部5Aの内面5bと穂先竿20’の基端部21’のテーパ状の外面23b’とが、接着剤30を介しつつ相互に面接触した状態となり、図6に示した継合領域S1における面接触状態と相俟って、管状部4’に対する穂先竿20’の好適な継合と、穂先竿20’の抜け防止とを同時に実現することができる。
【0045】
(第3実施形態)
図8は本発明の第3実施形態に係る釣竿の継合部の構成を示した図であり、(a)は分解した状態を示す説明図、(b)は継合した状態を示す説明図である。
本実施形態が前記第1,第2実施形態と異なるところは、管状部4Cの抜止領域S2における内面6bが、穂先竿20の基端部21のテーパ状部23における外面23bに沿うテーパ状とされている点にある。
【0046】
このような釣竿によれば、内面6bが、基端部21のテーパ状部23における外面23bが拡がる方向に拡がるテーパ状(順テーパ状)とされているので、仮に、穂先竿20に、管状部4Cから抜ける方向の力が作用したとしても、管状部4Cのテーパ状の内面6bが、接着剤30を介して穂先竿20の抜ける方向の動きを抑えるように作用することとなり、管状部4Cから穂先竿20(基端部21)が不用意に抜け難く、継合構造が堅固な釣竿が得られる。
【0047】
(第4実施形態)
図9は本発明の第4実施形態に係る釣竿の継合部の構成を示す説明図である。
本実施形態が前記第1〜第3実施形態と異なるところは、抜止手段が、管状部4Dの内面7bに形成された係止溝7c(溝部)を備えて構成されている点にある。
【0048】
係止溝7cは、管状部4Dの抜止領域S2における内面7bにおいて、管状部4Dの軸方向に交叉する方向に形成されている。このような係止溝7cには、充填された接着剤30が入り込むようになっており、係止溝7c内に入り込んで硬化された接着剤30が、接着剤充填空間Kにおいて硬化した断面略くさび形状の接着剤30のアンカー部として機能するようになっている。
【0049】
このような釣竿によれば、接着剤充填空間Kに接着剤30が充填されると、接着剤30は、接着剤充填空間Kに連通している係止溝7cにも入り込み、硬化することとなる。つまり、接着剤充填空間Kに充填されて硬化された接着剤30は、係止溝7c内に入り込んで硬化された接着剤30とともに管状部4Dの内面7b側に、より強く固着され、管状部4Dの内面7bと穂先竿20のテーパ状部23の外面23bとの間に断面略くさび形状を呈して介在することとなる。したがって、仮に、経年変化等によって、穂先竿20の基端部21に接着されていた接着剤30の固着力が低減する事態が生じて、穂先竿20の基端部21から接着剤30が部分的に剥離等したとしても、係止溝7c内で接着剤30がアンカー部として機能し、接着剤充填空間K内で硬化した接着剤30のくさび効果が効果的に維持される。これによって、管状部4Dから穂先竿20(基端部21)が抜けるのを好適に抑えることができる。
なお、係止溝7cは周方向に連続して形成してもよいし、周方向に所定の間隔を隔てて形成してもよい。
【0050】
前記各実施形態において、管状部4(4A等)の断面形状は、前記した寸法関係を満たす範囲の形状とされていればよく、適宜の形状を採用することができる。
また、管状部4(4A等)の内面4aや内面4b等を粗面化して、接着剤30の固着力が高まるようにしてもよい。
また、前記各実施形態では、穂先竿20(20’)と管状部4(4A等)との継合構造として説明したが、これに限られることはなく、竿杆1と竿杆2との継合部分に対しても同様に適用することができる。
また、竿杆2と元管との継合部分に対しても同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態に係る釣竿の全体を示す説明図である。
【図2】継合部の構成を示した図であり、(a)は継合状態を示す説明図、(b)は分解した状態を示す説明図である。
【図3】継合部の寸法関係を模式的に示した説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る釣竿の継合部の構成を示した図であり、(a)は分解した状態を示す説明図、(b)は継合状態を示す説明図、(c)は被覆部材を巻回した状態を示す説明図である。
【図5】(a)〜(c)は第2実施形態に係る釣竿の継合部のその他の構成を示した図であり、(a)は分解した状態を示す説明図、(b)は継合状態を示す説明図、(c)は被覆部材を巻回した状態を示す説明図である。
【図6】穂先竿を薄肉扁平状としたときの継合部の構造を示す説明図である。
【図7】(a)(b)は被覆部材による締め付けを示した模式説明図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る釣竿の継合部の構成を示した図であり、(a)は分解した状態を示す説明図、(b)は継合した状態を示す説明図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係る釣竿の継合部の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0052】
1,2 竿杆
4 管状部
4A〜4D 管状部
4a 内面
4b 内面
5,5’ スリット
5A 溝部
5a、5b、6b、7b 内面
7c 係止溝
10,10A 継合部
15 被覆部材
20、20’ 穂先竿
21、21’ 基端部
22 後端部
22a、23b 外面
23 テーパ状部
30 接着剤
K,K’,K’’ 接着剤充填空間
S1 継合領域
S2 抜止領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
大径の第一の竿杆の管状部内に小径の第二の竿杆を挿入して継ぎ合わせる継合部を備えた釣竿であって、
前記継合部は、
前記第一の竿杆の開口部よりも元側において、前記第一の竿杆の内面と前記第二の竿杆の外面とが当接して継合される継合領域と、
前記継合領域よりも前記開口部側において、前記第一の竿杆の内面と前記第二の竿杆のテーパ状の外面とが対向し、前記第一の竿杆から前記第二の竿杆が抜けるのを防止するための抜止手段が設けられる抜止領域と、を具備したことを特徴とする釣竿。
【請求項2】
前記抜止手段は、前記第一の竿杆の内面と前記第二の竿杆のテーパ状の外面との間に形成される断面略くさび形状の接着剤充填空間に接着剤が充填されてなることを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記第一の竿杆の前記抜止領域における内面は、前記第二の竿杆のテーパ状の外面が拡がる方向に拡がるテーパ状とされていることを特徴とする請求項2に記載の釣竿。
【請求項4】
前記抜止手段は、前記第一の竿杆の前記抜止領域における内面において軸方向に交叉する方向に形成され、充填された前記接着剤が入り込む溝部を含むことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の釣竿。
【請求項5】
前記第一の竿杆は、少なくとも前記抜止領域に、軸方向に沿うスリットを有しており、前記スリットを狭める方向に前記第一の竿杆を弾性変形させる被覆部材が、前記第一の竿杆の外周面に装着されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の釣竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−104342(P2010−104342A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282416(P2008−282416)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】