説明

釣竿

【課題】雄側継合部は中実でも中空管でも適用できて耐久性が高く、更には着脱操作が単純な操作となる釣竿を提供する。
【解決手段】前側の竿杆20と後側の竿杆10とを着脱可能に継ぎ合わせる継合部を有する繊維強化樹脂製竿杆使用の釣竿であって、該前後の竿杆の内の雌側となる竿杆10の雌側継合部10Tの端面10Kを含むことを許容して該端面の近傍に位置している環状の挟持部KBの内面を断面非円形に形成すると共に、該断面非円形の内面には、雌側継合部が弾性変形していない状態では前記挟持部よりも奥側の継合部領域の内径D3よりも小さな内径D1を呈する当接部TBを有しており、前記挟持部の肉厚は円周方向において実質一定であり、更には、雄側となる他の竿杆20の雄側継合部20Tを着脱させる際に、前記挟持部との押圧摩擦力に抗する前後方向の相対移動だけで着脱が可能であると共に、前記当接部が雄側継合部の長さ方向所定範囲に亘って摺接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振出式以外の継ぎ合わせ方式、即ち、並継、逆並継、又はインロー継の何れかの方式によって前側の竿杆と後側の竿杆とを分離可能に継ぎ合わせる継合部を有する釣竿に関する。外通し釣竿と中通し釣竿の両方共に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
振出式以外の継ぎ合わせ方式による釣竿は、その使用中において、不用意に継合部の嵌合状態が緩み、後側竿杆に対して前側竿杆が脱落するという不具合が発生することがある。例えば、下記特許文献1の継合構造のように、一方の竿杆の雌側継合部に、他方の竿杆のテーパ状の雄側継合部を差し込むと、雌側継合部の先端のみが雄側継合部に押し付けられて当接する。他の部分は、継ぎ合わせ時の固着を防止するためにクリアランスを設けているため、雌側継合部の先端のみが押し付けられた状態で嵌合するだけである。このため、何らかの原因でその先端部の嵌合が緩めば、前側の竿杆が一度に抜け落ちてしまう。
こうした継合せ状態保持の信頼性の低さを改善すべく特許文献2のように、前後の2か所で当接嵌合させる継合構造もある。また、特許文献3では、管状部の内周部に設けた凸部を、管状部の断面形状の弾性変形を利用しつつ中実部の外周部に設けた溝状の凹部に係合させ、機械的な引っ掛け状態を作り出して継合部の抜け止めとしている。
【特許文献1】特開平11−89483号公報
【特許文献2】特開2004−254546号公報
【特許文献3】特開2000−50769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
然しながら、特許文献3の構造では、機械的な引っ掛け状態を生じさせる凸部の故に凸部高さが高く、操作中の変形ではその元部に大きな応力が作用すると共に、先部が摩耗し易く、耐久性に問題がある。また、一方の竿杆(雄側)の継合部が中実に限られ、更には、抜き去る場合には、所定角度の回転動作を必要とし、単純に前後方向のみの操作では抜き去ることができない。
依って解決しようとする課題は、雄側継合部は中実でも中空管でも適用できて耐久性が高く、更には着脱操作が単純な操作となる釣竿を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題に鑑みて第1の発明は、振出式以外の継ぎ合わせ方式によって前側の竿杆と後側の竿杆とを着脱可能に継ぎ合わせる継合部を有する繊維強化樹脂製竿杆使用の釣竿であって、該前後の竿杆の内の雌側となる竿杆の雌側継合部の端面を含むことを許容して該端面の近傍に位置している環状の挟持部の内面を断面非円形に形成すると共に、該断面非円形の内面には、雌側継合部が弾性変形していない状態では前記挟持部よりも奥側の継合部領域の内径よりも小さな内径を呈する当接部を有しており、前記挟持部の肉厚は円周方向において実質一定であり、更には、雄側となる他の竿杆の雄側継合部を着脱させる際に、前記挟持部との押圧摩擦力に抗する前後方向の相対移動だけで着脱が可能であると共に、前記挟持部がその断面形状を弾性変形させつつ前記当接部が前記雄側継合部の長さ方向所定範囲に亘って摺接することを特徴とする釣竿を提供する。
上記要件の、挟持部の肉厚は円周方向に実質一定、における実質一定とは、プリプレグシートによって管状の竿杆を製造する場合に、一般に、プリプレグシートの巻回始めと終わりに、シート縁部の段差が生ずる。この段差の有る部位と無い部位との肉厚差を無視することを意味する。
【0005】
第2の発明では、第1の発明の前記当接部を円周方向に互いに180度離隔した2か所の位置に設けており、当該2か所の当接部を釣竿の左右の位置に設け、上下の位置には設けていないよう構成する。
釣竿の左右(上下)は、リール装着装置を有する釣竿は、それで分かり、また、釣糸ガイドの向きでも分かる。こうした部品等が無く、左右、上下が不明の釣竿の場合は、それらの釣竿には本第2発明は適用されない。
【0006】
第3の発明では、第1又は第2の発明の前記雌側継合部に前記雄側継合部を継ぎ合わせる際に、前記挟持部の断面非円形内面の前記当接部以外の部位が前記雄側継合部に当接するように雌側継合部の内径と雄側継合部の外径との差を設定している請求項1又は2記載の釣竿を提供する。
【発明の効果】
【0007】
第1の発明では、内面と外面との押圧摩擦作用で継ぎ合わせできる構造であって、雄側継合部に機械的な引っ掛かり凹部を設けることは必要ないため、雄側継合部は中実でも中空管でもよい。また、当接部が雄側継合部の長さ方向所定範囲に亘って摺接する構造故、継ぎ合わせ完了後の釣竿使用中に、何らかの原因で仮に雄側が僅かに抜け出る方向に移動したとしても、そのまま抜け落ちることはなく、摩擦力が作用して抜け落ちることに抵抗するので、竿杆落下は簡単には生じない。更には、当接部を有する挟持部は雌側継合部の端面を含むことを許容して該端面の近傍に位置している、即ち開放端面に近いため、変形が容易であって着脱時に無理なく変形でき、釣竿が損傷し難い。また、挟持部の肉厚が円周方向に実質一定であるため、変形によって特定部位に応力が集中することが防止され、釣竿の耐久性が向上する。また、機械的引っ掛かり状態ではなく押圧摩擦係合に過ぎないため、前後方向の相対移動だけで着脱が可能となり、着脱がシンプルな操作で容易にできる。
【0008】
第2の発明では、当接部を釣竿の左右の位置に設け、上下位置には設けていない。元々当接部には雄側継合部との間に押圧力が作用しており、釣竿が撓んだ際には竿杆横断面が楕円状に潰れる方向に変形するため、仮に釣竿の上下に設けていれば、その上下位置の当接部には更に大きな押圧力が作用するようになるが、左右位置の当接部にはそうしたことがの影響が小さい。従って、釣竿の損傷を防止でき、耐久性が向上する。
【0009】
第3の発明では、当接部以外に、雄側継合部の外面を押圧挟持する部位が発生増加するため、より安定した継ぎ合わせが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を添付図面を用いて更に詳細に説明する。図1は本発明に係る第1実施形態例の釣竿の側面図であり、図2は図1の矢視線B−Bによる縦断面であり、竿杆を抜き去った状態の縦断面図、図3は継ぎ合わせ時の挿入初期の状態を示す縦断面図、図4は挿入完了後の縦断面図であり、図1の矢視線B−Bによる縦断面図そのもの、図5は図2の矢視線E−Eによる横断面図、図6は図4の矢視線F−Fによる横断面図である。
【0011】
この釣竿は元竿10と先竿20とを並継式に継ぎ合わせた継合部TGを有しており、各竿杆10,20はエポキシ樹脂等のマトリックス樹脂を炭素繊維等の強化繊維で強化した繊維強化樹脂製である。元竿後部にはグリップ部12が形成され、この直前位置にリール装着装置14が装着されており、リールRが装着固定される。また、元竿と先竿には適宜位置に釣糸ガイドGが装着されている。この例のリールRはスピニングリールであり、図1の下側が下である。
【0012】
元竿の先端部は雌側継合部10Tであり、先竿の後端部は雄側継合部20Tである。この例では先竿も管状体であるが、これは中実体でもよい。図2の左側断面図は繊維強化樹脂プリプレグシートを複数回巻回して元竿を形成していることを示し、元竿の元側部から元竿本体部用のプリプレグシートが先端まで連続している。雌側継合部10Tの先部は開口部故、少なくともこの先部にはその補強用のプリプレグテープを、本体部用のプリプレグシートに更に重合させて形成することが一般である。このプリプレグテープの長さ方向の両端部において生じ得る段差は、本第1発明(請求項1の発明)における肉厚の実質一定の判断においては無視する。
【0013】
雌側継合部10Tの内面側は、開口端面10Kから幾分かの寸法の奥まで、開口端面に向かって拡径するガイド部GBを形成している。このガイド部に隣接した位置から所定寸法の奥部にまで、円周方向の一部に当接部TBを設けている。元竿の長さ方向における当接部の長さ範囲に対応する雌側継合部の端部領域が挟持部KBである。この例と異なり、ガイド部GBを無くして挟持部を開口端面10Kにまで延ばして形成してもよい。この挟持部の幅(竿杆の長さ方向における寸法)は雌側継合部10Tの1/3以下、好ましくは1/4以下がよい。このように挟持部の幅を小さくすることで雌側継合部10Tが弾性変形し易くなり、他方、大き過ぎると弾性変形が困難になる。
【0014】
図5を参照すれば分かるが、当接部TBは円周方向に180度離隔した2か所に形成されており、釣竿においてはその使用中の左右に位置する。挟持部の内周のこの2か所の当接部を除いた残り部分は円弧で形成されており、全体として断面非円形となった内面である。この例の当接部は、該当接部を除いた残りの円弧内面に対して挟持部の中心に向かって膨出する滑らかな曲面状に形成されている。また、この図5に示すように、ハッチングの入った領域、即ち、挟持部KBの肉厚は円周に亘って実質一定である。従って、各当接部TBに対応する外側には窪みが形成されている。更には、雌側継合部10Tのこの挟持部付近を除いた残り領域の内面は、この例では前後方向にストレートであり、その横断面は、前記断面非円形部分の前記円弧の径と実質同じ径の円形であるが、開口端面方向に向かって拡径するテーパ状に形成してもよい。
【0015】
雄側継合部20Tは、先端部のガイド部GB’を除き、この例では端面側のストレート部20Sと、この前側に隣接する先拡がりのテーパ部20Kとを有しているが、雄側継合部全体をテーパ部に形成したり、或いはストレート部に形成してもよい。
【0016】
上記の実施形態例の場合の寸法関係を例示しておく。1対の当接部10T間の距離(内径)をD1とし、その奥側の内径をD3とし、雄側継合部20Tのストレート部20Sの外径をD2とする。
D1 = D3 − 0.1mm
D2 = D3 − 0.01mm
【0017】
外径D2は内径D1よりも大であり、図3に示すように、雄側継合部20Tを挿入する初期から、当接部TBとストレート部20Sの外周とが押圧し合い、2点鎖線で示す通常時の挟持部KBを拡径させる。こうした挿入時や抜き去る際には、雌側継合部10T(の挟持部KBを含む端部側領域)の横断面が左右方向ラインSLの方向に長い楕円状に変形し、雄側継合部20Tが上下方向ラインJLの方向に長い楕円状に変形する。こうした押圧変形状態のまま互いに摺接しつつ挿入されて図4の継ぎ合わせ状態になる。この継ぎ合わせの操作では前後方向の操作のみで可能であり、また、抜き去る際にも前後方向の操作のみで可能である。
【0018】
この例の場合、内径D3と外径D2との差(雄雌の継合部間の片側クリアランスCの大きさの2倍)を適宜に設定しているため、図6に示すように、継ぎ合わせが完了した状態では、1対の当接部TBの部位以外に、これらの位置から夫々概ね90度離隔した1対の部位TB’,TB’も当接し合う。このため、継ぎ合わせ状態がより安定する。また、特に魚が掛かった際、釣竿が大きく撓み、一般に各竿杆に大きな力が作用して潰れが発生することがある。こうした大きな力を特定部分に集中させないことが好ましく、継合部TGにはこうした撓みが生じる前から既に継ぎ合わせのために所定の押圧力が作用している。従って、釣竿が撓んだ際の力をできるだけ前記押圧力に加重させない工夫が求められる。この意味で、この実施形態例では当接部TBを釣竿の左右に位置させており、上下に位置させていない。もし上下に位置していれば、当接部の継ぎ合わせの押圧力に対して、釣竿の撓みの際の押圧力が加重され、釣竿が破損し易くなる。
【0019】
図4の継ぎ合わせ状態は、雄側継合部20Tのテーパ部20Kが、雌側継合部10Tの当接部TBと押圧し合っている。これは、ストレート部20Sが当接部TBと押圧している状態よりも摩擦力が大きく、不用意に抜け難い。しかし、ストレート部20Sが当接部TBと押圧する状態で継ぎ合わせを完了させるように形成してもよい。
【0020】
図7と図8は第2実施形態例の釣竿の要部横断面図であり、夫々、図5と図6に対応する図である。第1実施形態例の場合と異なるところを説明すると、雌側継合部10Tの挟持部KBの内面に設けた当接部TBの形状が異なる。図5と図6の場合は、当接部TBが、該当接部を除いた残りの円形内面に対して挟持部の中心に向かって膨出する滑らかな曲面状に形成されているが、図7と図8の場合は平面に形成されている。何れも、竿杆成形時に使用する芯金であるマンドレルの外周所定部位に、当接部TBの形状に合致した窪み又は平面を形成しておき、この上にプリプレグを巻回することで竿杆の成形が可能となる。横断面が円形であるマンドレルの表面に上記の窪み又は平面を形成する際はフライス加工することになるが、曲面よりも図7や図8に示す平面の加工をする方が加工が容易である。
【0021】
以上2つの実施形態例では継ぎ合わせを行った際に、1対の当接部TBの他に、90度離隔した1対の他の部位TB’,TB’も当接状態になるが、雌側継合部と雄側継合部との内外径差次第で、他の部位には当接状態を生じさせない形態もあり得る。また、第1の発明の観点からは、当接部が釣竿の上下に位置する形態、また、当接部を1箇所のみに設けたり、2か所以上設ける形態もあり得る。更に、継合部は並継式以外の逆並継式やインロー継式であってもよい。また、以上の形態例の外通し釣竿ではなく、中通し釣竿にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、前後の竿杆が分離され得る、着脱可能な継合部を有する外通し釣竿と中通し釣竿に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明に係る第1実施形態例の釣竿の側面図である。
【図2】図2は図1の矢視線B−Bによる縦断面であり、竿杆を抜き去った状態の縦断面図である。
【図3】図3は継ぎ合わせの際の挿入初期状態を示す縦断面図である。
【図4】図4は挿入完了後の縦断面図であり、図1の矢視線B−Bによる縦断面図である。
【図5】図5は図2の矢視線E−Eによる横断面図である。
【図6】図6は図4の矢視線F−Fによる横断面図である。
【図7】図7は第2実施形態例の釣竿の要部横断面図であり、図5に対応する図である。
【図8】図8は第2実施形態例の釣竿の要部横断面図であり、図6に対応する図である。
【符号の説明】
【0024】
10K 開口端面
10T 雌側継合部
20K 先拡がりのテーパ部
20S ストレート部
20T 雄側継合部
KB 挟持部
TB 当接部
TG 継合部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
振出式以外の継ぎ合わせ方式によって前側の竿杆と後側の竿杆とを着脱可能に継ぎ合わせる継合部を有する繊維強化樹脂製竿杆使用の釣竿であって、
該前後の竿杆の内の雌側となる竿杆の雌側継合部の端面を含むことを許容して該端面の近傍に位置している環状の挟持部の内面を断面非円形に形成すると共に、該断面非円形の内面には、雌側継合部が弾性変形していない状態では前記挟持部よりも奥側の継合部領域の内径よりも小さな内径を呈する当接部を有しており、
前記挟持部の肉厚は円周方向において実質一定であり、
更には、雄側となる他の竿杆の雄側継合部を着脱させる際に、前記挟持部との押圧摩擦力に抗する前後方向の相対移動だけで着脱が可能であると共に、前記挟持部がその断面形状を弾性変形させつつ前記当接部が前記雄側継合部の長さ方向所定範囲に亘って摺接する
ことを特徴とする釣竿。
【請求項2】
前記当接部を円周方向に互いに180度離隔した2か所の位置に設けており、当該2か所の当接部を釣竿の左右の位置に設け、上下の位置には設けていない請求項1記載の釣竿。
【請求項3】
前記雌側継合部に前記雄側継合部を継ぎ合わせる際に、前記挟持部の断面非円形内面の前記当接部以外の部位が前記雄側継合部に当接するように雌側継合部の内径と雄側継合部の外径との差を設定している請求項1又は2記載の釣竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−50254(P2011−50254A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199263(P2009−199263)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】