釣糸ガイド及びその製造方法
【課題】軽量で比強度、比剛性に優れ、さらに撓り性や粘り性に優れた釣糸ガイドを提供する。
【解決手段】本発明に係る釣糸ガイド1は、釣糸を挿通させるリング保持部3と、釣竿に装着される固定部5と、リング保持部3と固定部5を連結し、釣竿表面から釣糸を離間させる支脚部7a,7bと、を具備した繊維強化樹脂製のフレーム2を有する。このフレーム2は、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多い部分と、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ない部分と、を有する。
【解決手段】本発明に係る釣糸ガイド1は、釣糸を挿通させるリング保持部3と、釣竿に装着される固定部5と、リング保持部3と固定部5を連結し、釣竿表面から釣糸を離間させる支脚部7a,7bと、を具備した繊維強化樹脂製のフレーム2を有する。このフレーム2は、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多い部分と、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ない部分と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿に装着されて釣糸を案内する釣糸ガイド、及びそのような釣糸ガイドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記した釣糸ガイドは、釣竿の外周面に装着されるフレームと、フレームに止着され、実際に釣糸が挿通されるガイドリングとを備えた構成となっている。前記フレームは、例えば、特許文献1に記載されているように、ステンレスやチタン等の金属製の板材料をプレス加工することで一体形成するのが一般的となっており、フレームには、釣糸を挿通させるガイドリングを保持するためのリング保持部と、釣竿の外表面に装着するための固定部が一体形成されている。
【0003】
また、最近では、例えば、特許文献2に見られるように、釣糸ガイドの構成素材として繊維強化合成樹脂を用いることも提案されている。この特許文献2には、ガイドリングを保持するリング保持部と、釣竿に取り付けられる取付装着部(固定部)と、リング保持部と取付装着部との間に位置する脚部(支脚部)とを、繊維強化合成樹脂のプリプレグシートで一体形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−340661号
【特許文献2】特開2010−154860号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1に開示されている釣糸ガイドでは、フレームが金属材料で形成されているため、重量が重くなると共に撓み性も悪く、従って、釣竿の性能の向上を図る上でネックとなっている。例えば、より軽量化が要求される釣竿では、上記したような釣糸ガイドを軸長方向に沿って多数装着すると、所望の性能が発揮できなくなってしまう。そこで、上記した特許文献2で提案した釣糸ガイドによれば、釣糸ガイドのフレームが繊維強化合成樹脂(例えば、FRP又はFRTP)によって形成されるため、そのような問題点を解決することが可能となる。
【0006】
しかし、単に、繊維強化合成樹脂でフレームを成形するだけでは、軽量化を図りつつ効果的に強度、及び剛性を向上することはできない。すなわち、釣糸ガイドとしては、釣竿の性能を向上する上において、軽量化が前提となり、更には、負荷が作用したり、釣糸が引っ掛かること等を考慮すると、比強度、比剛性が高く、撓り性や粘り性に優れた構造であることが好ましい。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、軽量で比強度、比剛性に優れ、さらに撓り性や粘り性に優れた釣糸ガイド、及びそのような釣糸ガイドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明は、釣糸を挿通させるリング保持部と、釣竿に装着される固定部と、前記リング保持部と固定部を連結し、釣竿表面から釣糸を離間させる支脚部と、を具備した繊維強化樹脂製のフレームを有する釣糸ガイドであって、前記フレームは、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多い部分と、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ない部分と、を有することを特徴とする。
【0009】
上記した構成の釣糸ガイドによれば、繊維強化合成樹脂で成形されるフレームの、リング保持部、固定部、支脚部のいずれかに、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多い部分が存在すると共に、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ない部分が存在している。ここで、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多ければ、その部分では、比強度及び比剛性が高まった状態となり、逆に、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少なければ、その部分では、撓み易く粘り性に優れた構造となる。すなわち、このような特徴を備えた二つの部分が存在する釣糸ガイドによれば、軽量化を図りながら、効果的に比強度、及び比剛性を高められると共に、撓み易く粘り性の向上が図れるようになる。
【0010】
なお、上記した構成において、「強化繊維が長手方向に指向する」とは、フレームの各部位において、その部分が平面内で延出する方向を意味しており、その部分で「長手方向に指向する量又は割合が多い」とは、長手方向以外の方向、例えば、長手方向に対して交差する方向の強化繊維や、蛇行する方向の強化繊維や、織布状になっている強化繊維、相対的にランダムな状態になっている強化繊維の量、又はそれらの個々の繊維の割合よりも多くなっていることを意味する。また、「繊維比率(Vf)が少ない」とは、少なくする場合は勿論、0%にしたり、0%近くにする構成も含まれる。
【0011】
また、上記した目的を達成するために、本発明は、釣糸を挿通させるリング保持部と、釣竿に装着される固定部と、前記リング保持部と固定部を連結し、釣竿表面から釣糸を離間させる支脚部と、を具備した繊維強化樹脂製のフレームを有する釣糸ガイドの製造方法であって、金型内の所定空間に強化繊維を配置する工程と、前記金型を閉じた状態で前記所定空間内に合成樹脂を注入して、繊維強化合成樹脂製のフレームを成形する工程と、を有することを特徴とする。
さらに、本発明は、釣糸を挿通させるリング保持部と、釣竿に装着される固定部と、前記リング保持部と固定部を連結し、釣竿表面から釣糸を離間させる支脚部と、を具備した繊維強化樹脂製のフレームを有する釣糸ガイドの製造方法であって、金型内の所定空間に、長繊維からなる強化繊維を混入した合成樹脂を注入して、繊維強化合成樹脂製のフレームを成形することを特徴とする。
【0012】
上記したような製造方法によれば、釣糸ガイドのフレームを構成するリング保持部、固定部、支脚部のいずれかを、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多い部分とし、かつ、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ない部分としたフレーム体を容易に形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、軽量で比強度、比剛性に優れ、さらに撓り性や粘り性に優れた釣糸ガイドが得られると共に、そのような釣糸ガイドを容易に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る釣糸ガイドの第1の実施形態を示す縦断面図。
【図2】図1に示す釣糸ガイドの正面図。
【図3】図1に示す釣糸ガイドの製造方法を説明する図であって、金型の構成を示す図。
【図4】図1に示す釣糸ガイドの別の製造方法を説明する図であって、金型の構成を示す図。
【図5】図1に示す釣糸ガイドの正面図。
【図6】図5のA−A線に沿った断面図。
【図7】図5のB−B線に沿った断面図。
【図8】図5のA−A線に沿った断面図であり、断面構造の第1の例を示す図。
【図9】リング保持部領域において、釣糸挿通方向に対して直交する方向の断面図であり、断面構造の第2の例を示す図。
【図10】図5のA−A線に沿った断面図であり、断面構造の第3の例を示す図。
【図11】図5のA−A線に沿った断面図であり、断面構造の第4の例を示す図。
【図12】本発明に係る釣糸ガイドの第2の実施形態を示す側面図。
【図13】図12に示す釣糸ガイドの斜視図。
【図14】本発明に係る釣糸ガイドの第3の実施形態を示す斜視図。
【図15】支脚部と固定部との間の屈曲部の好ましい構成を示した縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る釣糸ガイド、及びその製造方法の実施形態について説明する。
図1及び図2は、本発明に係る釣糸ガイドの第1の実施形態を示す図であり、図1は釣糸ガイドの縦断面図(装着される竿杆の軸心方向に沿った断面図)、図2は図1に示す釣糸ガイドの正面図である。
【0016】
本実施形態に係る釣糸ガイド1は、繊維強化合成樹脂によって成形されたフレーム2を備えており、竿杆に対して固定される、いわゆる固定ガイド(片足ガイド)として構成されている。図1において、釣糸ガイド1が竿杆に対して固定されると、矢印D1方向が竿先側(前方側)となり、矢印D2方向が元竿側(後方側)となる。また、前記フレーム2は、釣糸を挿通させるリング保持部3と、釣竿(竿杆)の外表面に装着される固定部5と、リング保持部3と固定部5との間を連結する支脚部7とを具備している。
【0017】
前記リング保持部3は、釣竿の表面から離間した状態で釣糸を案内させるべく、ガイドリング10を止着させる部位である。リング保持部3には、ガイドリング10を嵌入、固定させるための開口3Aが形成されており、全体として略環状の外形状を備えている。この場合、開口3Aに嵌入されるガイドリング10は、リング状に構成され、その内周面である釣糸案内面10a部分での摺動抵抗が小さい部材、例えば、チタン、アルミ、SUS、セラミックス等によって形成されている。また、ガイドリング10は、フレーム2が繊維強化合成樹脂によって一体形成された後、リング保持部3の開口3Aに対して嵌入、固定されるか、或いは、後述するように、金型を用いてフレームを成形する際、フレーム成形と同時に装着することも可能である。なお、「リング保持部」とは、上記したガイドリング10を装着して釣糸を案内する他、ガイドリングを装着することなく、開口3Aで直接、釣糸を案内する構成も含む。
【0018】
前記固定部5は、フレームの下端において、竿杆の表面に固定される部位(足部とも称される)であり、本実施形態では、支脚部7の下端から元竿側に向けて軸長方向に延び、その裏側の当接面(下面)5aを竿杆の表面に載置した状態で、糸止め、接着等によって固定される板状片として形成されている。
【0019】
前記支脚部7は、リング保持部3(ガイドリング10)に挿通する釣竿を、竿杆の表面から離間させる機能を備えており、固定部5とリング保持部3とを連結する部位である。本実施形態の支脚部7は、固定部5の竿先側において、屈曲部11を介して斜め上方に立ち上げって延出する部分となっており、上方(リング保持部)に移行するに従って次第に幅広となって、前記略環状のリング保持部3に一体的に連結される。この場合、図に示すように、支脚部7には、軽量化を図るために開口7Aが形成されており、その両サイドの支脚部(右支脚部7a,左支脚部7b)が、それぞれリング保持部3の側部(右側部3a,左側部3b)につながっている。
【0020】
本実施形態のフレーム2は、繊維強化合成樹脂材料によって形成されている。この繊維強化合成樹脂材料は、マトリックス材料として、熱硬化性樹脂、又は熱可塑性樹脂からなる合成樹脂を用いた構成であり、強化繊維は、少なくとも長繊維を有する構成となっている。ここで、本発明において定義する「長繊維」とは、繊維単体として捉えた場合、3.0mm以上、好ましくは3.0〜15mm、又はそれ以上の長さであるものが該当する。フレーム2を、このような長繊維を有する繊維強化合成樹脂材料で、金型によって成形するのであれば、金型に形成された所定空間(フレーム形状に対応する空間部や溝)に対して、例えば、シート状、テープ状、糸状体に構成された繊維強化樹脂材料を配置して成形する方法、または、金型に形成された所定空間に強化繊維を配設しておき、その後、金型を閉じた状態で前記所定空間に合成樹脂を注入する方法、または、金型に形成された所定空間に、合成樹脂と長繊維(強化繊維)を混入して同時に注入する方法などがある。
【0021】
金型によってフレームを成形するに際して、繊維強化樹脂材料や強化繊維を複数種類(異なる構造のもの)用いたり、或いは、合成樹脂と強化繊維の注入態様や金型条件を変える等によって、成形されるフレームは、その断面が複数の繊維強化合成樹脂層を有する構造となる。このような複数の繊維強化合成樹脂層は、境界が明確に把握できるものであっても良いし、境界部分が明確に把握できなくても、強化繊維の状態が異なっている部分が隣接していたり、更には、強化繊維が存在しない(もしくは少ない)層が隣接するようなものであっても良い。また、このような複数の繊維強化合成樹脂層は、例えば、肉厚方向に沿って積層された状態となっていても良いし、ある特定の層を中心(中心層)として、その周囲を囲繞するような状態(外側層)となっていても良く、更には、ある特定の層(主体層)に対して、これに隣接するように配設される層(補助層)として構成されていても良い。
【0022】
上記したシート状又は糸状体に構成された繊維強化樹脂材料を、金型内に配置してフレームを成形する方法の場合、例えば、各種の強化繊維に合成樹脂を含浸したシート状に構成された部材、テープ状に構成された部材、糸状に構成された部材(繊維束)などを、金型の所定位置(フレーム成形用の空洞部)に配設し、その後、加圧、加熱処理をすることで実施することが可能である。この場合、繊維強化合成樹脂材料を構成する強化繊維は、所定の方向に引き揃えられたもの、織布状に編成されたもの、強化繊維を引き揃えたり組紐状にした繊維束(糸状体)とされたもの等があり、このような状態の強化繊維は長繊維状に構成されている。このため、異なる形態の繊維強化合成樹脂材料を用いることで、フレームの所定位置では、強化繊維の指向方向や配設状態が異なった積層構造(配置構造)を有していたり、更には、合成樹脂シートや合成樹脂の糸状体(強化繊維を多少含んでいても良い)を用いることで、例えば、強化繊維が存在しない層が隣接する積層構造(配置構造)としたり、或いは、繊維比率(Vf)が少ない層が隣接する積層構造(配置構造)とすることが可能となる。
【0023】
また、上記した金型に形成された所定空間に強化繊維を配設しておき、その後、合成樹脂を注入する方法の場合、金型の所定位置(フレーム成形用の溝、空間部)に、強化繊維である長繊維や繊維束(糸状体)を配設しておき、その後、所定の位置に合成樹脂を注入することでフレーム成形することが可能である。ここで、注入される合成樹脂については、常温硬化型の樹脂(例えば、ポリアミド)や、加熱硬化型の樹脂(例えば、エポキシ)などを用いることができ、樹脂単体として注入しても良いし、長繊維及び/又は短繊維を含んでいても良い。また、金型の所定空間に配設される長繊維(強化繊維)は、合成樹脂を含浸していないものや、合成樹脂を含浸しているものの他、予め成形した繊維強化合成樹脂材を用いても良い。
【0024】
このような製造方法では、金型に形成されたフレーム成形用の溝や空間部に対して、例えば、位置に応じて強化繊維の配置状態を変更したり、注入される合成樹脂の量を変更すること等により、フレームの所定位置では、強化繊維の指向方向や配設状態が異なった積層構造(配置構造)を有していたり、更には、強化繊維が存在しない層が隣接する積層構造(配置構造)としたり、或いは、繊維比率(Vf)が少ない層が隣接する積層構造(配置構造)とすることが可能となる。
【0025】
上述した両製造方法において、繊維強化合成樹脂材料を構成している強化繊維としては、例えば、カーボン、ガラス、ボロンなどの高弾性繊維、SUS、チタン合金、NT合金などの金属繊維を用いることができる。また、強化繊維と共に繊維強化合成樹脂材料を構成するマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができる。この場合、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂などを用いることができる。また、熱可塑性樹脂としては、粘着型のゴム系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂又はポリサルファイド樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂等を用いるものと、ホットメルト型のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体又はエチレン−酢酸ビニル共重合体などを用いるものが挙げられる。
【0026】
また、上記した金型に形成された所定空間に合成樹脂と強化繊維を混入して同時に注入する方法の場合、マトリックス樹脂は、熱可塑性樹脂であるポリアミド樹脂を主成分としたもので構成することが可能である。また、それ以外にも、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリフェニレンエーテル;ポリアセタール;ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂を含有していても良い。更には、これらの材料に加えて、流動改質剤、帯電防止剤、離型剤、酸化防止剤などの添加剤を含有していても良い。さらに、前記マトリックス樹脂に混入される強化繊維は、長繊維として構成されたものであれば良く、例えば、PAN系またはピッチ系の炭素繊維や、ガラス繊維等が用いられる。また、いずれかの領域で単位体積を考慮した場合、平均繊維径が4μm〜12μm、平均繊維長さが3mm〜15mmの範囲となる長繊維が用いられる(これらの長繊維は、上記のようなマトリックス樹脂に対して30〜60重量%の範囲で含有されていれば良い)。
【0027】
このような製造方法では、金型に形成されたフレーム成形用の溝や空間部に対して、例えば、注入圧力、流動速度、金型温度、注入位置などを調整することにより、フレームの所定位置では、強化繊維の指向方向や配設状態が異なった積層構造(配置構造)を有していたり、更には、強化繊維が存在しない層が隣接する積層構造(配置構造)としたり、或いは、繊維比率(Vf)が極端に少ない層が隣接する積層構造(配置構造)とすることが可能となる。
【0028】
図3は、図1に示す釣糸ガイドの製造方法の一例を説明する図であって、金型の構成を示す図である。
図1及び図2に示したようなフレーム2は、図3に示す金型30によって形成することが可能である。金型30は、金属材料で作成することができるが、任意の材料を用いて作成することができる(鋳物、セラミックス、合成樹脂のほか、砂・石などの天然材料を用いても良い)。本実施形態の金型30は、上下に型割りされる上型31と下型32によって構成されており、上型31と下型32との間には、フレーム2の形状に相当するように屈曲した所定空間(溝)35が形成されている。この溝35内には、糸状体に構成された繊維強化合成樹脂材20(以下、糸状体20とする)が配置され、加圧、加熱工程を経て、フレーム2の固定部5が形成されると共に支脚部7が形成されるようになっている。なお、糸状体20は、溝35に入れ易いことが好ましく、1本の状態で入れても良いが、多数本の糸状体を別々に溝35に入れても良い。
【0029】
前記下型32には、ガイドリング10を固着したリング保持部3が形成されるように、抜き型32Aが配設されている(抜き型は、図中、下方向に抜く)。この抜き型32Aの上端部分には、円柱状の凸部32Bが形成されると共に、上型31には、リング保持部3を形成する位置に対応させて円形状の凹部31aが形成されている。そして、円柱状の凸部32Bと、上型31の凹部31a、下型32との間、及び溝35との間には、リング保持部3を形成するための環状溝35Aが形成されている。
【0030】
上記した金型構造によってフレームを成形するに際しては、最初、抜き型32Aを下型32にセットした状態で、円柱状の凸部32Bの外周段部にガイドリング10をはめ込むようにして固定する。次に、糸状体20を、溝35内にその延設方向に沿って配置すると共に、環状溝35Aにおいて、固定されたガイドリング10の外周側を巻回するように配置し、上型31を下型32に押し付けて加圧、加熱する。そして、加熱工程が終了した後、抜き型32Aを抜き、上下型31,32を分割すると、リング保持部にガイドリング10が装着されたフレーム2が成形される。この場合、糸状体20は、予め溝35、及び環状溝35Aの形状にしたもの(仮硬化したもの)を嵌入しても良い。なお、図に示す例では、フレームを金型によって成形すると同時にガイドリングを装着する方法の一例を示しているが、ガイドリング10は、フレーム成形後に固着する構成であっても良い(金型でフレームのみを成形しても良い)。
【0031】
前記糸状体20は、単数または複数の強化繊維で連続性を有するように形成されたフレームを構成する骨材であり、例えば、複数の強化繊維を軸長方向に引き揃えたもの、組紐状にした繊維束を含んだもの等が用いられ、フレームの部位に応じて様々な太さのものを使用することができる。更には、部位に応じて、糸状体の構成(繊維含有量など)や配置状態(配置する糸状体の本数など)を変えることで、その部分における積層態様、強化繊維の配置態様、繊維比率(Vf)などを変えることが可能である。
【0032】
図4は、図1に示す釣糸ガイドの製造方法の別の例を説明する図であって、金型の構成を示す図である。
図4に示す金型40は、上記した金型と同様、上下に型割りされる上型41と下型42によって構成されており、上型41と下型42との間には、フレーム2の形状に相当するように屈曲した所定空間(溝)45が形成されている。この溝45内に、強化繊維(或いは合成樹脂を含浸した強化繊維)20Aを配設しておき、上型と下型をクランプした状態にして注入口44部分から合成樹脂を注入し、加熱、硬化させることでフレーム2が成形される。この場合、合成樹脂を注入する注入口の位置や個数については、適宜、変更することができる。なお、図4に示した金型構造では、溝45に強化繊維や繊維強化合成樹脂を配設することなく、注入口44の部分から、長繊維が混入された合成樹脂を注入することで、フレーム2を成形することも可能である。この場合においても、注入口の位置や個数については、適宜、変更することができる。
【0033】
このような構成においても、フレームの部位に応じて様々な強化繊維を使用することができ、更には、部位に応じて、強化繊維の構成や配置態様を変えたり、注入口の位置、注入される合成樹脂の構成などを変えることで、その部分における積層態様、強化繊維の配置態様、繊維比率(Vf)などを変えることが可能となる。
【0034】
次に、図5から図11を参照しながら、上記したような製造方法によって成形されたフレーム2について説明する。
【0035】
図5に示すフレーム2は、上記したように、環状のリング保持部3と、固定部5と、支脚部(右支脚部7a,左支脚部7b)とを備えている。なお、このようなフレーム構造では、フレームの外側を一体的に連結する外枠部2Aと、外枠部2A間に位置する内枠部2Bが存在している。すなわち、図に示すフレーム形状では、固定部5から左右支脚部7a,7bに至る領域、左右支脚部7a,7bと連続するリング保持部3の両側の円弧領域(左右両側部)3a,3b、更に、リング保持部3の上側の円弧領域3cがフレームの外枠部2Aを構成し、リング保持部3の開口3A及び支脚部に形成された開口7Aの間で横架されるリング保持部の下側の円弧領域3dがフレームの内枠部2Bを構成する。
【0036】
上記したフレーム構造において、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多い部分と、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ない部分と、を有するようにフレーム2を成形する。
【0037】
フレームがこのような構造になることで、繊維強化合成樹脂による強度、剛性の向上、及び軽量化を図りつつ、所定部位の粘り性の向上が図れるようになる。すなわち、長手方向に指向する強化繊維の割合、又は量が多ければ、その部位では、フレームに沿った長手方向の剛性を高めることができ、逆に、その割合、又は量を少なくすれば、その部位では、長手方向の剛性が低くなって、撓み易い(粘り性の良い)構造とすることができる。このため、フレームの部位に応じて、そのような状態を複合的に有するように構成することで、効率的に強度、剛性の向上を図りつつ、粘りや撓り性に優れたフレーム構造とすることができる。なお、「強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多い(少ない)」とは、その部分において、長手方向以外の方向、つまり、交差する方向、蛇行する方向、織布状、例えば、厚さ方向に強化繊維が屈曲状になっている状態や、相対的にランダムな方向となっている強化繊維の量又は割合が少ない(多い)、ことが該当する。
【0038】
具体的に、外枠部2Aを構成する支脚部(右支脚部7a)の断面構造(図6参照)と、内枠部2Bを構成するリング保持部3の下側の円弧領域3dの断面構造(図7参照)を比較した場合について説明する。
これらの図に示すように、両部位では、断面が2層構造となっており、中央領域で強化繊維F1がランダムな状態になっている第1層50、及び、第1層を囲繞するように配され、強化繊維F2が長手方向(その位置でフレームが延びる方向)に指向した状態になっている第2層51を備えている。これらの断面構造に示すように、支脚部7a(7b)の領域では、第2層51を厚くして、層として見た場合、長手方向に指向する強化繊維F2の量(又は割合)を多くしており、円弧領域3dの領域では、第2層51を薄くして、層として見た場合、長手方向に指向する強化繊維F2の量(又は割合)を少なくしている。すなわち、フレームは、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多い部分(支脚部領域)と、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ない部分(リング保持部の下側円弧領域)と、を有する構造となっている。
【0039】
フレームの構造をこのように構成することで、より効率的に比強度、比剛性を向上することができる。
【0040】
また、上記した構成では、図に示すように、支脚部(右支脚部7a)の領域では、第1層50及び第2層51を見た場合、長手方向に指向する強化繊維F2の割合又は量が多くなるように構成している(繊維比率(Vf)を多くしても良い)。このような配置態様とすることで、支脚部の比強度、比剛性を、効率的に向上することができる。
逆に、リング保持部の下側円弧領域では、第1層50及び第2層51を見た場合、長手方向に指向する強化繊維F2の割合又は量が少なくなるように構成している(繊維比率(Vf)を少なくしても良い)。このような配置態様とすることで、当該部分の変形を許容し、粘り性の向上が可能となり、リング固定時のリング保持部の破損を防止することができる。なお、繊維比率(Vf)を少なくする場合、それは0%にしても良い。
【0041】
次に、上記したフレームについて、好ましい断面構造について説明する。
リング保持部3、固定部5、及び支脚部7a,7bを有しているフレーム2は、前記各部位の内、少なくとも一つの部分の断面が、本体層と本体層の外側に位置する外側層とを有し、本体層は、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多く、外側層は、前記本体層よりも強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ないように構成する。
【0042】
具体的に、図8に示す実施形態のように(図5のA−A線に沿った断面図を示す)、支脚部7aは、本体層55と、本体層55の外側(本実施形態では、本体層を囲繞して径方向外側)に外側層56とを有し、本体層55は、外側層56と比較すると、長手方向に指向する強化繊維F3の量又は割合を多くしている(繊維比率(Vf)を多くしても良い)。
このような構成は、例えば、本体層55を、長手方向に沿って強化繊維を指向させた複数の糸状体55aで構成すると共に、外側層56を、長手方向以外の方向に指向する強化繊維を多く含ませたり、或いは、合成樹脂層にすることで形成することが可能である。この場合、本体層55と外側層56は、プリプレグシートを1枚ずつ積層することで、層と層の間に境界が明確に現れていても良いし、連続状に形成され、徐々に繊維方向や繊維比率が変化するように形成されていても良い。また、3層以上の多層にして、本体層55と外側層56との間に中間層を設けても良い。
【0043】
また、図9に示す実施形態にように、リング保持部3を、径方向内側の本体層55と、本体層55の外側(本実施形態では、本体層の径方向外側)に位置する外側層56とで構成しても良い。
このような構成は、例えば、本体層55を、周方向に強化繊維F3が指向した繊維強化プリプレグシートを積層し、その外側に樹脂テープや、強化繊維が他方向に指向した量が多い繊維強化プリプレグシートを積層することで形成することが可能である。
【0044】
上記したような構成によれば、フレームの各部位を、効率良く、強度向上、剛性向上することが可能となる。
【0045】
或いは、リング保持部3、固定部5、及び支脚部7a,7bを有しているフレーム2は、前記各部位の内、少なくとも一つの部分の断面が、本体層と本体層の内側に位置する内側層とを有し、本体層は、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多く、内側層は、前記本体層よりも強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ないように構成する。
【0046】
具体的に、図10に示す実施形態のように(図5のA−A線に沿った断面図を示す)、支脚部7aは、本体層58と、本体層58内側(本実施形態では、本体層によって囲繞される径方向外側)に内側層59とを有し、本体層58は、内側層59と比較すると、長手方向に指向する強化繊維の量又は割合を多くしている(繊維比率(Vf)を多くしても良い)。
このような構成は、例えば、本体層58を、長手方向に沿って強化繊維を指向させた複数の糸状体とし、内側層59を、長手方向以外の方向に指向したり、ランダムな状態となる強化繊維を多く含ませたり(図6、図7参照)或いは、合成樹脂層にすることで形成することが可能である。この場合、本体層58と内側層59は、プリプレグシートを1枚ずつ積層することで、層と層の間に境界が明確に現れていても良いし、連続状に形成され、徐々に繊維方向や繊維比率が変化するように形成されていても良い。また、3層以上の多層にして、本体層58と内側層59との間に中間層を設けても良い。なお、このような配置態様では、図9に示すように、本体層の径方向内側に、内側層を配置した構成であっても良い。
【0047】
上記したような構成によれば、比強度、又は比剛性の調整を行うことが可能となる。なお、このような構造では、断面の大きさや肉厚を厚くする部位、更には、内部に中空部や抜き孔を形成する構造部分に適した構成となる。
【0048】
或いは、リング保持部3、固定部5、及び支脚部7a,7bを有しているフレーム2は、前記各部位の内、少なくとも一つの部分の断面が、本体層と補助層とを有しており、本体層は、補助層よりも強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多く形成され、かつ、本体層又は本体層の中央位置は、断面の中心位置に対して偏倚しているように構成する。
【0049】
具体的に、図11に示す実施形態のように(図5のA−A線に沿った断面図を示す)、支脚部7aは、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多くなっている本体層60と、それよりも少なくなっている補助層61とを有しており、更には、そのような本体層60の中心位置C1を、支脚部7aの断面の中心位置Cに対して偏倚させている。
このような構成は、例えば、本体層60を構成する糸状体60aを、金型の所定空間内に配設しておき、その上から(矢印方向となる)合成樹脂を注入することで形成することが可能である。
【0050】
このような構成によれば、繊維強化合成樹脂により高剛性化、軽量化を図ると共に、所定部位の粘り性の向上を図ることができ、更には、補助層61の構成(肉厚、配設方向など)によって、粘りの程度や撓み性の方向を調整したり、高い伸縮性を許容することが可能となり、優れた釣糸ガイド、及び釣竿にすることが可能となる。
【0051】
次に、本発明に係る釣糸ガイドの別の実施形態について説明する。
図12は本発明に係る釣糸ガイドの第2の実施形態を示す側面図であり、図13は図12に示す釣糸ガイドの斜視図である。
【0052】
本実施形態の釣糸ガイドは、両足ガイドタイプとして構成されており、図1に示した構成と同様、リング保持部3の左右両側部3a,3bの外側面から左右支脚部7a,7bが一体的に固定部(第1固定部5Aとする)に向けて延びている。また、リング保持部3の下側円弧領域3dの下端中央から中央支脚部7cが下端に向けて延びており、その端部は、竿先側に屈曲部11aを介して屈曲されて固定部(第2固定部5Bとする)を形成している。
そして、このような形式の釣糸ガイドでは、前後方向の一方の支脚部が主支脚部となり、他方の支脚部が副支脚部となる(ここでの主支脚部とは、釣糸ガイドを釣竿に装着した場合、大きい負荷が作用し易い元竿側に位置する部分とされ、副支脚部とは、その反対側の穂先側に位置する部分とされる)。すなわち、この実施形態では、左右支脚部7a,7bが主支脚部であり、中央支脚部7cが副支脚部となる。また、副支脚部となる中央支脚部7cについては、内枠部2Bを構成することとなる。
【0053】
そして、上記したような支脚部構造において、主支脚部7a,7bは、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多くなるように形成し、副支脚部7cについては、主支脚部7a,7bよりも強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少なくなるように形成する。
【0054】
このような構成によれば、強度や剛性の向上を図りたい部分を効率良く向上することが可能となる。
なお、このような釣糸ガイドの構成では、上記したような強化繊維の態様が得られるように、図6から図11に示した断面構造を適宜、用いることが可能である。
【0055】
また、上記した構成とは逆に、主支脚部7a,7bを、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少なくなるように形成し、副支脚部7cを、主支脚部7a,7bよりも強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多くなるように形成しても良い。
【0056】
このような構成によれば、副支脚部の小型化、軽量化が図れる。
【0057】
もちろん、上記したような両足ガイドの構成では、主支脚部と副支脚部については、長手方向に指向する強化繊維の割合又は量、或いは繊維比率(Vf)が等しくなるように形成しても良い。
【0058】
また、上記したような両足ガイドタイプの釣糸ガイドでは、前後方向の一方の固定部が主固定部となり、他方の固定部が副固定部となる(ここでの主固定部とは、上記した主支脚部側と連結する部分とされ、副固定部とは、副支脚部と連結される部分とされる)。すなわち、この実施形態では、第1固定部5Aが主固定部であり、第2固定部5Bが副固定部となる。
【0059】
そして、上記したような固定部構造において、主固定部5Aは、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多くなるように形成し、副固定部5Bについては、主固定部5Aよりも強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少なくなるように形成する。
【0060】
このような構成によれば、固定部に作用する負荷の大きさに合った、バランスのとれた強度や剛性にすることが可能となる。
なお、このような釣糸ガイドの構成では、上記したような強化繊維の態様が得られるように、図6から図11に示した断面構造を適宜、用いることが可能である。
【0061】
また、上記した構成とは逆に、主固定部5Abを、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少なくなるように形成し、副固定部5Bを、主固定部5Aよりも強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多くなるように形成しても良い。
【0062】
このような構成によれば、副固定部の小型化、軽量化が可能となる。
【0063】
もちろん、上記したような両足ガイドの構成においても、主固定部と副固定部については、長手方向に指向する強化繊維の割合又は量、或いは繊維比率(Vf)が等しくなるように形成しても良い。
【0064】
図14は本発明に係る釣糸ガイドの第3の実施形態を示す側面図である。
本実施形態の釣糸ガイドは、図1に示した構成と同様、片足タイプとして構成されており、固定部から支脚部に移行する屈曲部11の内側両サイドに、それぞれ厚さの薄いリブ7e,7fを形成したものである(これらのリブを有する左右支脚部7a,7bは、上述した外枠部2Aを構成する)。また、図示しないが、固定部5や支脚部7a,7bの一部として、肉厚を厚く(断面を大きく)した構成では、固定部や支脚部と同じように樹脂が流れることから、上述した外枠部2Aの一部を構成する。
【0065】
上記したように、釣糸ガイドを構成するフレームについては、その肉厚を変化させたり、リブを形成する等、適宜変形することが可能である。
【0066】
図15は、釣糸ガイドに形成される屈曲部の好ましい例を示した断面図であり、図1に示した固定部と支脚部との間の屈曲部11の構造を示した断面図である。
フレーム2のいずれかに屈曲するような領域(屈曲部11)を形成した場合、リング保持部3は、図の矢印方向に屈曲し易い状態となっている。このため、リング保持部3の肉厚Tよりも屈曲部11の肉厚T1を厚くすると共に、屈曲部11の内側11bについては、屈曲部11の外側11aよりも、繊維比率(Vf)を多くしたり、長手方向に指向する繊維量を多くしたり、或いは、長手方向に指向する繊維量が多い本体層(図11参照)60を、屈曲部11の内側11aに偏倚して設けることが好ましい。
【0067】
屈曲部における断面の構成を上記したような状態にすることで、矢印方向に作用する負荷に対して強度向上が図れると共に、軽量化することが可能となる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した構成に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
本発明は、釣糸ガイドを構成するフレームの、リング保持部、固定部、支脚部における断面の強化繊維の配設状態に特徴があり、繊維強化合成樹脂材の構成、及び積層状態等については、部位に応じて種々変形することが可能である。
【0069】
また、本発明は、上記した実施形態の釣糸ガイドに限定されることはなく、様々な形態の釣糸ガイドに適用することが可能である。すなわち、本発明に係る釣糸ガイドは、竿杆に沿って摺動可能な遊動ガイド、或いは、穂先竿杆の先端に固定されるトップガイド、釣糸導入ガイドとして構成されていても良く、それに応じてフレームの形状についても、適宜変形することが可能である。この場合、装着される竿杆の基本性能、フレームの形態などに応じて、強化繊維の配設状態を変え、粘り易い(撓み易い)領域を形成しておけば良い。
【符号の説明】
【0070】
1 釣糸ガイド
2 フレーム
3 リング保持部
3A 開口
5,5A,5B 固定部
7,7a,7b,7c 支脚部
10 ガイドリング
11,11a 屈曲部
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿に装着されて釣糸を案内する釣糸ガイド、及びそのような釣糸ガイドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記した釣糸ガイドは、釣竿の外周面に装着されるフレームと、フレームに止着され、実際に釣糸が挿通されるガイドリングとを備えた構成となっている。前記フレームは、例えば、特許文献1に記載されているように、ステンレスやチタン等の金属製の板材料をプレス加工することで一体形成するのが一般的となっており、フレームには、釣糸を挿通させるガイドリングを保持するためのリング保持部と、釣竿の外表面に装着するための固定部が一体形成されている。
【0003】
また、最近では、例えば、特許文献2に見られるように、釣糸ガイドの構成素材として繊維強化合成樹脂を用いることも提案されている。この特許文献2には、ガイドリングを保持するリング保持部と、釣竿に取り付けられる取付装着部(固定部)と、リング保持部と取付装着部との間に位置する脚部(支脚部)とを、繊維強化合成樹脂のプリプレグシートで一体形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−340661号
【特許文献2】特開2010−154860号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1に開示されている釣糸ガイドでは、フレームが金属材料で形成されているため、重量が重くなると共に撓み性も悪く、従って、釣竿の性能の向上を図る上でネックとなっている。例えば、より軽量化が要求される釣竿では、上記したような釣糸ガイドを軸長方向に沿って多数装着すると、所望の性能が発揮できなくなってしまう。そこで、上記した特許文献2で提案した釣糸ガイドによれば、釣糸ガイドのフレームが繊維強化合成樹脂(例えば、FRP又はFRTP)によって形成されるため、そのような問題点を解決することが可能となる。
【0006】
しかし、単に、繊維強化合成樹脂でフレームを成形するだけでは、軽量化を図りつつ効果的に強度、及び剛性を向上することはできない。すなわち、釣糸ガイドとしては、釣竿の性能を向上する上において、軽量化が前提となり、更には、負荷が作用したり、釣糸が引っ掛かること等を考慮すると、比強度、比剛性が高く、撓り性や粘り性に優れた構造であることが好ましい。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、軽量で比強度、比剛性に優れ、さらに撓り性や粘り性に優れた釣糸ガイド、及びそのような釣糸ガイドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明は、釣糸を挿通させるリング保持部と、釣竿に装着される固定部と、前記リング保持部と固定部を連結し、釣竿表面から釣糸を離間させる支脚部と、を具備した繊維強化樹脂製のフレームを有する釣糸ガイドであって、前記フレームは、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多い部分と、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ない部分と、を有することを特徴とする。
【0009】
上記した構成の釣糸ガイドによれば、繊維強化合成樹脂で成形されるフレームの、リング保持部、固定部、支脚部のいずれかに、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多い部分が存在すると共に、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ない部分が存在している。ここで、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多ければ、その部分では、比強度及び比剛性が高まった状態となり、逆に、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少なければ、その部分では、撓み易く粘り性に優れた構造となる。すなわち、このような特徴を備えた二つの部分が存在する釣糸ガイドによれば、軽量化を図りながら、効果的に比強度、及び比剛性を高められると共に、撓み易く粘り性の向上が図れるようになる。
【0010】
なお、上記した構成において、「強化繊維が長手方向に指向する」とは、フレームの各部位において、その部分が平面内で延出する方向を意味しており、その部分で「長手方向に指向する量又は割合が多い」とは、長手方向以外の方向、例えば、長手方向に対して交差する方向の強化繊維や、蛇行する方向の強化繊維や、織布状になっている強化繊維、相対的にランダムな状態になっている強化繊維の量、又はそれらの個々の繊維の割合よりも多くなっていることを意味する。また、「繊維比率(Vf)が少ない」とは、少なくする場合は勿論、0%にしたり、0%近くにする構成も含まれる。
【0011】
また、上記した目的を達成するために、本発明は、釣糸を挿通させるリング保持部と、釣竿に装着される固定部と、前記リング保持部と固定部を連結し、釣竿表面から釣糸を離間させる支脚部と、を具備した繊維強化樹脂製のフレームを有する釣糸ガイドの製造方法であって、金型内の所定空間に強化繊維を配置する工程と、前記金型を閉じた状態で前記所定空間内に合成樹脂を注入して、繊維強化合成樹脂製のフレームを成形する工程と、を有することを特徴とする。
さらに、本発明は、釣糸を挿通させるリング保持部と、釣竿に装着される固定部と、前記リング保持部と固定部を連結し、釣竿表面から釣糸を離間させる支脚部と、を具備した繊維強化樹脂製のフレームを有する釣糸ガイドの製造方法であって、金型内の所定空間に、長繊維からなる強化繊維を混入した合成樹脂を注入して、繊維強化合成樹脂製のフレームを成形することを特徴とする。
【0012】
上記したような製造方法によれば、釣糸ガイドのフレームを構成するリング保持部、固定部、支脚部のいずれかを、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多い部分とし、かつ、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ない部分としたフレーム体を容易に形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、軽量で比強度、比剛性に優れ、さらに撓り性や粘り性に優れた釣糸ガイドが得られると共に、そのような釣糸ガイドを容易に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る釣糸ガイドの第1の実施形態を示す縦断面図。
【図2】図1に示す釣糸ガイドの正面図。
【図3】図1に示す釣糸ガイドの製造方法を説明する図であって、金型の構成を示す図。
【図4】図1に示す釣糸ガイドの別の製造方法を説明する図であって、金型の構成を示す図。
【図5】図1に示す釣糸ガイドの正面図。
【図6】図5のA−A線に沿った断面図。
【図7】図5のB−B線に沿った断面図。
【図8】図5のA−A線に沿った断面図であり、断面構造の第1の例を示す図。
【図9】リング保持部領域において、釣糸挿通方向に対して直交する方向の断面図であり、断面構造の第2の例を示す図。
【図10】図5のA−A線に沿った断面図であり、断面構造の第3の例を示す図。
【図11】図5のA−A線に沿った断面図であり、断面構造の第4の例を示す図。
【図12】本発明に係る釣糸ガイドの第2の実施形態を示す側面図。
【図13】図12に示す釣糸ガイドの斜視図。
【図14】本発明に係る釣糸ガイドの第3の実施形態を示す斜視図。
【図15】支脚部と固定部との間の屈曲部の好ましい構成を示した縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る釣糸ガイド、及びその製造方法の実施形態について説明する。
図1及び図2は、本発明に係る釣糸ガイドの第1の実施形態を示す図であり、図1は釣糸ガイドの縦断面図(装着される竿杆の軸心方向に沿った断面図)、図2は図1に示す釣糸ガイドの正面図である。
【0016】
本実施形態に係る釣糸ガイド1は、繊維強化合成樹脂によって成形されたフレーム2を備えており、竿杆に対して固定される、いわゆる固定ガイド(片足ガイド)として構成されている。図1において、釣糸ガイド1が竿杆に対して固定されると、矢印D1方向が竿先側(前方側)となり、矢印D2方向が元竿側(後方側)となる。また、前記フレーム2は、釣糸を挿通させるリング保持部3と、釣竿(竿杆)の外表面に装着される固定部5と、リング保持部3と固定部5との間を連結する支脚部7とを具備している。
【0017】
前記リング保持部3は、釣竿の表面から離間した状態で釣糸を案内させるべく、ガイドリング10を止着させる部位である。リング保持部3には、ガイドリング10を嵌入、固定させるための開口3Aが形成されており、全体として略環状の外形状を備えている。この場合、開口3Aに嵌入されるガイドリング10は、リング状に構成され、その内周面である釣糸案内面10a部分での摺動抵抗が小さい部材、例えば、チタン、アルミ、SUS、セラミックス等によって形成されている。また、ガイドリング10は、フレーム2が繊維強化合成樹脂によって一体形成された後、リング保持部3の開口3Aに対して嵌入、固定されるか、或いは、後述するように、金型を用いてフレームを成形する際、フレーム成形と同時に装着することも可能である。なお、「リング保持部」とは、上記したガイドリング10を装着して釣糸を案内する他、ガイドリングを装着することなく、開口3Aで直接、釣糸を案内する構成も含む。
【0018】
前記固定部5は、フレームの下端において、竿杆の表面に固定される部位(足部とも称される)であり、本実施形態では、支脚部7の下端から元竿側に向けて軸長方向に延び、その裏側の当接面(下面)5aを竿杆の表面に載置した状態で、糸止め、接着等によって固定される板状片として形成されている。
【0019】
前記支脚部7は、リング保持部3(ガイドリング10)に挿通する釣竿を、竿杆の表面から離間させる機能を備えており、固定部5とリング保持部3とを連結する部位である。本実施形態の支脚部7は、固定部5の竿先側において、屈曲部11を介して斜め上方に立ち上げって延出する部分となっており、上方(リング保持部)に移行するに従って次第に幅広となって、前記略環状のリング保持部3に一体的に連結される。この場合、図に示すように、支脚部7には、軽量化を図るために開口7Aが形成されており、その両サイドの支脚部(右支脚部7a,左支脚部7b)が、それぞれリング保持部3の側部(右側部3a,左側部3b)につながっている。
【0020】
本実施形態のフレーム2は、繊維強化合成樹脂材料によって形成されている。この繊維強化合成樹脂材料は、マトリックス材料として、熱硬化性樹脂、又は熱可塑性樹脂からなる合成樹脂を用いた構成であり、強化繊維は、少なくとも長繊維を有する構成となっている。ここで、本発明において定義する「長繊維」とは、繊維単体として捉えた場合、3.0mm以上、好ましくは3.0〜15mm、又はそれ以上の長さであるものが該当する。フレーム2を、このような長繊維を有する繊維強化合成樹脂材料で、金型によって成形するのであれば、金型に形成された所定空間(フレーム形状に対応する空間部や溝)に対して、例えば、シート状、テープ状、糸状体に構成された繊維強化樹脂材料を配置して成形する方法、または、金型に形成された所定空間に強化繊維を配設しておき、その後、金型を閉じた状態で前記所定空間に合成樹脂を注入する方法、または、金型に形成された所定空間に、合成樹脂と長繊維(強化繊維)を混入して同時に注入する方法などがある。
【0021】
金型によってフレームを成形するに際して、繊維強化樹脂材料や強化繊維を複数種類(異なる構造のもの)用いたり、或いは、合成樹脂と強化繊維の注入態様や金型条件を変える等によって、成形されるフレームは、その断面が複数の繊維強化合成樹脂層を有する構造となる。このような複数の繊維強化合成樹脂層は、境界が明確に把握できるものであっても良いし、境界部分が明確に把握できなくても、強化繊維の状態が異なっている部分が隣接していたり、更には、強化繊維が存在しない(もしくは少ない)層が隣接するようなものであっても良い。また、このような複数の繊維強化合成樹脂層は、例えば、肉厚方向に沿って積層された状態となっていても良いし、ある特定の層を中心(中心層)として、その周囲を囲繞するような状態(外側層)となっていても良く、更には、ある特定の層(主体層)に対して、これに隣接するように配設される層(補助層)として構成されていても良い。
【0022】
上記したシート状又は糸状体に構成された繊維強化樹脂材料を、金型内に配置してフレームを成形する方法の場合、例えば、各種の強化繊維に合成樹脂を含浸したシート状に構成された部材、テープ状に構成された部材、糸状に構成された部材(繊維束)などを、金型の所定位置(フレーム成形用の空洞部)に配設し、その後、加圧、加熱処理をすることで実施することが可能である。この場合、繊維強化合成樹脂材料を構成する強化繊維は、所定の方向に引き揃えられたもの、織布状に編成されたもの、強化繊維を引き揃えたり組紐状にした繊維束(糸状体)とされたもの等があり、このような状態の強化繊維は長繊維状に構成されている。このため、異なる形態の繊維強化合成樹脂材料を用いることで、フレームの所定位置では、強化繊維の指向方向や配設状態が異なった積層構造(配置構造)を有していたり、更には、合成樹脂シートや合成樹脂の糸状体(強化繊維を多少含んでいても良い)を用いることで、例えば、強化繊維が存在しない層が隣接する積層構造(配置構造)としたり、或いは、繊維比率(Vf)が少ない層が隣接する積層構造(配置構造)とすることが可能となる。
【0023】
また、上記した金型に形成された所定空間に強化繊維を配設しておき、その後、合成樹脂を注入する方法の場合、金型の所定位置(フレーム成形用の溝、空間部)に、強化繊維である長繊維や繊維束(糸状体)を配設しておき、その後、所定の位置に合成樹脂を注入することでフレーム成形することが可能である。ここで、注入される合成樹脂については、常温硬化型の樹脂(例えば、ポリアミド)や、加熱硬化型の樹脂(例えば、エポキシ)などを用いることができ、樹脂単体として注入しても良いし、長繊維及び/又は短繊維を含んでいても良い。また、金型の所定空間に配設される長繊維(強化繊維)は、合成樹脂を含浸していないものや、合成樹脂を含浸しているものの他、予め成形した繊維強化合成樹脂材を用いても良い。
【0024】
このような製造方法では、金型に形成されたフレーム成形用の溝や空間部に対して、例えば、位置に応じて強化繊維の配置状態を変更したり、注入される合成樹脂の量を変更すること等により、フレームの所定位置では、強化繊維の指向方向や配設状態が異なった積層構造(配置構造)を有していたり、更には、強化繊維が存在しない層が隣接する積層構造(配置構造)としたり、或いは、繊維比率(Vf)が少ない層が隣接する積層構造(配置構造)とすることが可能となる。
【0025】
上述した両製造方法において、繊維強化合成樹脂材料を構成している強化繊維としては、例えば、カーボン、ガラス、ボロンなどの高弾性繊維、SUS、チタン合金、NT合金などの金属繊維を用いることができる。また、強化繊維と共に繊維強化合成樹脂材料を構成するマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができる。この場合、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂などを用いることができる。また、熱可塑性樹脂としては、粘着型のゴム系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂又はポリサルファイド樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂等を用いるものと、ホットメルト型のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体又はエチレン−酢酸ビニル共重合体などを用いるものが挙げられる。
【0026】
また、上記した金型に形成された所定空間に合成樹脂と強化繊維を混入して同時に注入する方法の場合、マトリックス樹脂は、熱可塑性樹脂であるポリアミド樹脂を主成分としたもので構成することが可能である。また、それ以外にも、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリフェニレンエーテル;ポリアセタール;ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂を含有していても良い。更には、これらの材料に加えて、流動改質剤、帯電防止剤、離型剤、酸化防止剤などの添加剤を含有していても良い。さらに、前記マトリックス樹脂に混入される強化繊維は、長繊維として構成されたものであれば良く、例えば、PAN系またはピッチ系の炭素繊維や、ガラス繊維等が用いられる。また、いずれかの領域で単位体積を考慮した場合、平均繊維径が4μm〜12μm、平均繊維長さが3mm〜15mmの範囲となる長繊維が用いられる(これらの長繊維は、上記のようなマトリックス樹脂に対して30〜60重量%の範囲で含有されていれば良い)。
【0027】
このような製造方法では、金型に形成されたフレーム成形用の溝や空間部に対して、例えば、注入圧力、流動速度、金型温度、注入位置などを調整することにより、フレームの所定位置では、強化繊維の指向方向や配設状態が異なった積層構造(配置構造)を有していたり、更には、強化繊維が存在しない層が隣接する積層構造(配置構造)としたり、或いは、繊維比率(Vf)が極端に少ない層が隣接する積層構造(配置構造)とすることが可能となる。
【0028】
図3は、図1に示す釣糸ガイドの製造方法の一例を説明する図であって、金型の構成を示す図である。
図1及び図2に示したようなフレーム2は、図3に示す金型30によって形成することが可能である。金型30は、金属材料で作成することができるが、任意の材料を用いて作成することができる(鋳物、セラミックス、合成樹脂のほか、砂・石などの天然材料を用いても良い)。本実施形態の金型30は、上下に型割りされる上型31と下型32によって構成されており、上型31と下型32との間には、フレーム2の形状に相当するように屈曲した所定空間(溝)35が形成されている。この溝35内には、糸状体に構成された繊維強化合成樹脂材20(以下、糸状体20とする)が配置され、加圧、加熱工程を経て、フレーム2の固定部5が形成されると共に支脚部7が形成されるようになっている。なお、糸状体20は、溝35に入れ易いことが好ましく、1本の状態で入れても良いが、多数本の糸状体を別々に溝35に入れても良い。
【0029】
前記下型32には、ガイドリング10を固着したリング保持部3が形成されるように、抜き型32Aが配設されている(抜き型は、図中、下方向に抜く)。この抜き型32Aの上端部分には、円柱状の凸部32Bが形成されると共に、上型31には、リング保持部3を形成する位置に対応させて円形状の凹部31aが形成されている。そして、円柱状の凸部32Bと、上型31の凹部31a、下型32との間、及び溝35との間には、リング保持部3を形成するための環状溝35Aが形成されている。
【0030】
上記した金型構造によってフレームを成形するに際しては、最初、抜き型32Aを下型32にセットした状態で、円柱状の凸部32Bの外周段部にガイドリング10をはめ込むようにして固定する。次に、糸状体20を、溝35内にその延設方向に沿って配置すると共に、環状溝35Aにおいて、固定されたガイドリング10の外周側を巻回するように配置し、上型31を下型32に押し付けて加圧、加熱する。そして、加熱工程が終了した後、抜き型32Aを抜き、上下型31,32を分割すると、リング保持部にガイドリング10が装着されたフレーム2が成形される。この場合、糸状体20は、予め溝35、及び環状溝35Aの形状にしたもの(仮硬化したもの)を嵌入しても良い。なお、図に示す例では、フレームを金型によって成形すると同時にガイドリングを装着する方法の一例を示しているが、ガイドリング10は、フレーム成形後に固着する構成であっても良い(金型でフレームのみを成形しても良い)。
【0031】
前記糸状体20は、単数または複数の強化繊維で連続性を有するように形成されたフレームを構成する骨材であり、例えば、複数の強化繊維を軸長方向に引き揃えたもの、組紐状にした繊維束を含んだもの等が用いられ、フレームの部位に応じて様々な太さのものを使用することができる。更には、部位に応じて、糸状体の構成(繊維含有量など)や配置状態(配置する糸状体の本数など)を変えることで、その部分における積層態様、強化繊維の配置態様、繊維比率(Vf)などを変えることが可能である。
【0032】
図4は、図1に示す釣糸ガイドの製造方法の別の例を説明する図であって、金型の構成を示す図である。
図4に示す金型40は、上記した金型と同様、上下に型割りされる上型41と下型42によって構成されており、上型41と下型42との間には、フレーム2の形状に相当するように屈曲した所定空間(溝)45が形成されている。この溝45内に、強化繊維(或いは合成樹脂を含浸した強化繊維)20Aを配設しておき、上型と下型をクランプした状態にして注入口44部分から合成樹脂を注入し、加熱、硬化させることでフレーム2が成形される。この場合、合成樹脂を注入する注入口の位置や個数については、適宜、変更することができる。なお、図4に示した金型構造では、溝45に強化繊維や繊維強化合成樹脂を配設することなく、注入口44の部分から、長繊維が混入された合成樹脂を注入することで、フレーム2を成形することも可能である。この場合においても、注入口の位置や個数については、適宜、変更することができる。
【0033】
このような構成においても、フレームの部位に応じて様々な強化繊維を使用することができ、更には、部位に応じて、強化繊維の構成や配置態様を変えたり、注入口の位置、注入される合成樹脂の構成などを変えることで、その部分における積層態様、強化繊維の配置態様、繊維比率(Vf)などを変えることが可能となる。
【0034】
次に、図5から図11を参照しながら、上記したような製造方法によって成形されたフレーム2について説明する。
【0035】
図5に示すフレーム2は、上記したように、環状のリング保持部3と、固定部5と、支脚部(右支脚部7a,左支脚部7b)とを備えている。なお、このようなフレーム構造では、フレームの外側を一体的に連結する外枠部2Aと、外枠部2A間に位置する内枠部2Bが存在している。すなわち、図に示すフレーム形状では、固定部5から左右支脚部7a,7bに至る領域、左右支脚部7a,7bと連続するリング保持部3の両側の円弧領域(左右両側部)3a,3b、更に、リング保持部3の上側の円弧領域3cがフレームの外枠部2Aを構成し、リング保持部3の開口3A及び支脚部に形成された開口7Aの間で横架されるリング保持部の下側の円弧領域3dがフレームの内枠部2Bを構成する。
【0036】
上記したフレーム構造において、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多い部分と、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ない部分と、を有するようにフレーム2を成形する。
【0037】
フレームがこのような構造になることで、繊維強化合成樹脂による強度、剛性の向上、及び軽量化を図りつつ、所定部位の粘り性の向上が図れるようになる。すなわち、長手方向に指向する強化繊維の割合、又は量が多ければ、その部位では、フレームに沿った長手方向の剛性を高めることができ、逆に、その割合、又は量を少なくすれば、その部位では、長手方向の剛性が低くなって、撓み易い(粘り性の良い)構造とすることができる。このため、フレームの部位に応じて、そのような状態を複合的に有するように構成することで、効率的に強度、剛性の向上を図りつつ、粘りや撓り性に優れたフレーム構造とすることができる。なお、「強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多い(少ない)」とは、その部分において、長手方向以外の方向、つまり、交差する方向、蛇行する方向、織布状、例えば、厚さ方向に強化繊維が屈曲状になっている状態や、相対的にランダムな方向となっている強化繊維の量又は割合が少ない(多い)、ことが該当する。
【0038】
具体的に、外枠部2Aを構成する支脚部(右支脚部7a)の断面構造(図6参照)と、内枠部2Bを構成するリング保持部3の下側の円弧領域3dの断面構造(図7参照)を比較した場合について説明する。
これらの図に示すように、両部位では、断面が2層構造となっており、中央領域で強化繊維F1がランダムな状態になっている第1層50、及び、第1層を囲繞するように配され、強化繊維F2が長手方向(その位置でフレームが延びる方向)に指向した状態になっている第2層51を備えている。これらの断面構造に示すように、支脚部7a(7b)の領域では、第2層51を厚くして、層として見た場合、長手方向に指向する強化繊維F2の量(又は割合)を多くしており、円弧領域3dの領域では、第2層51を薄くして、層として見た場合、長手方向に指向する強化繊維F2の量(又は割合)を少なくしている。すなわち、フレームは、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多い部分(支脚部領域)と、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ない部分(リング保持部の下側円弧領域)と、を有する構造となっている。
【0039】
フレームの構造をこのように構成することで、より効率的に比強度、比剛性を向上することができる。
【0040】
また、上記した構成では、図に示すように、支脚部(右支脚部7a)の領域では、第1層50及び第2層51を見た場合、長手方向に指向する強化繊維F2の割合又は量が多くなるように構成している(繊維比率(Vf)を多くしても良い)。このような配置態様とすることで、支脚部の比強度、比剛性を、効率的に向上することができる。
逆に、リング保持部の下側円弧領域では、第1層50及び第2層51を見た場合、長手方向に指向する強化繊維F2の割合又は量が少なくなるように構成している(繊維比率(Vf)を少なくしても良い)。このような配置態様とすることで、当該部分の変形を許容し、粘り性の向上が可能となり、リング固定時のリング保持部の破損を防止することができる。なお、繊維比率(Vf)を少なくする場合、それは0%にしても良い。
【0041】
次に、上記したフレームについて、好ましい断面構造について説明する。
リング保持部3、固定部5、及び支脚部7a,7bを有しているフレーム2は、前記各部位の内、少なくとも一つの部分の断面が、本体層と本体層の外側に位置する外側層とを有し、本体層は、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多く、外側層は、前記本体層よりも強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ないように構成する。
【0042】
具体的に、図8に示す実施形態のように(図5のA−A線に沿った断面図を示す)、支脚部7aは、本体層55と、本体層55の外側(本実施形態では、本体層を囲繞して径方向外側)に外側層56とを有し、本体層55は、外側層56と比較すると、長手方向に指向する強化繊維F3の量又は割合を多くしている(繊維比率(Vf)を多くしても良い)。
このような構成は、例えば、本体層55を、長手方向に沿って強化繊維を指向させた複数の糸状体55aで構成すると共に、外側層56を、長手方向以外の方向に指向する強化繊維を多く含ませたり、或いは、合成樹脂層にすることで形成することが可能である。この場合、本体層55と外側層56は、プリプレグシートを1枚ずつ積層することで、層と層の間に境界が明確に現れていても良いし、連続状に形成され、徐々に繊維方向や繊維比率が変化するように形成されていても良い。また、3層以上の多層にして、本体層55と外側層56との間に中間層を設けても良い。
【0043】
また、図9に示す実施形態にように、リング保持部3を、径方向内側の本体層55と、本体層55の外側(本実施形態では、本体層の径方向外側)に位置する外側層56とで構成しても良い。
このような構成は、例えば、本体層55を、周方向に強化繊維F3が指向した繊維強化プリプレグシートを積層し、その外側に樹脂テープや、強化繊維が他方向に指向した量が多い繊維強化プリプレグシートを積層することで形成することが可能である。
【0044】
上記したような構成によれば、フレームの各部位を、効率良く、強度向上、剛性向上することが可能となる。
【0045】
或いは、リング保持部3、固定部5、及び支脚部7a,7bを有しているフレーム2は、前記各部位の内、少なくとも一つの部分の断面が、本体層と本体層の内側に位置する内側層とを有し、本体層は、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多く、内側層は、前記本体層よりも強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ないように構成する。
【0046】
具体的に、図10に示す実施形態のように(図5のA−A線に沿った断面図を示す)、支脚部7aは、本体層58と、本体層58内側(本実施形態では、本体層によって囲繞される径方向外側)に内側層59とを有し、本体層58は、内側層59と比較すると、長手方向に指向する強化繊維の量又は割合を多くしている(繊維比率(Vf)を多くしても良い)。
このような構成は、例えば、本体層58を、長手方向に沿って強化繊維を指向させた複数の糸状体とし、内側層59を、長手方向以外の方向に指向したり、ランダムな状態となる強化繊維を多く含ませたり(図6、図7参照)或いは、合成樹脂層にすることで形成することが可能である。この場合、本体層58と内側層59は、プリプレグシートを1枚ずつ積層することで、層と層の間に境界が明確に現れていても良いし、連続状に形成され、徐々に繊維方向や繊維比率が変化するように形成されていても良い。また、3層以上の多層にして、本体層58と内側層59との間に中間層を設けても良い。なお、このような配置態様では、図9に示すように、本体層の径方向内側に、内側層を配置した構成であっても良い。
【0047】
上記したような構成によれば、比強度、又は比剛性の調整を行うことが可能となる。なお、このような構造では、断面の大きさや肉厚を厚くする部位、更には、内部に中空部や抜き孔を形成する構造部分に適した構成となる。
【0048】
或いは、リング保持部3、固定部5、及び支脚部7a,7bを有しているフレーム2は、前記各部位の内、少なくとも一つの部分の断面が、本体層と補助層とを有しており、本体層は、補助層よりも強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多く形成され、かつ、本体層又は本体層の中央位置は、断面の中心位置に対して偏倚しているように構成する。
【0049】
具体的に、図11に示す実施形態のように(図5のA−A線に沿った断面図を示す)、支脚部7aは、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多くなっている本体層60と、それよりも少なくなっている補助層61とを有しており、更には、そのような本体層60の中心位置C1を、支脚部7aの断面の中心位置Cに対して偏倚させている。
このような構成は、例えば、本体層60を構成する糸状体60aを、金型の所定空間内に配設しておき、その上から(矢印方向となる)合成樹脂を注入することで形成することが可能である。
【0050】
このような構成によれば、繊維強化合成樹脂により高剛性化、軽量化を図ると共に、所定部位の粘り性の向上を図ることができ、更には、補助層61の構成(肉厚、配設方向など)によって、粘りの程度や撓み性の方向を調整したり、高い伸縮性を許容することが可能となり、優れた釣糸ガイド、及び釣竿にすることが可能となる。
【0051】
次に、本発明に係る釣糸ガイドの別の実施形態について説明する。
図12は本発明に係る釣糸ガイドの第2の実施形態を示す側面図であり、図13は図12に示す釣糸ガイドの斜視図である。
【0052】
本実施形態の釣糸ガイドは、両足ガイドタイプとして構成されており、図1に示した構成と同様、リング保持部3の左右両側部3a,3bの外側面から左右支脚部7a,7bが一体的に固定部(第1固定部5Aとする)に向けて延びている。また、リング保持部3の下側円弧領域3dの下端中央から中央支脚部7cが下端に向けて延びており、その端部は、竿先側に屈曲部11aを介して屈曲されて固定部(第2固定部5Bとする)を形成している。
そして、このような形式の釣糸ガイドでは、前後方向の一方の支脚部が主支脚部となり、他方の支脚部が副支脚部となる(ここでの主支脚部とは、釣糸ガイドを釣竿に装着した場合、大きい負荷が作用し易い元竿側に位置する部分とされ、副支脚部とは、その反対側の穂先側に位置する部分とされる)。すなわち、この実施形態では、左右支脚部7a,7bが主支脚部であり、中央支脚部7cが副支脚部となる。また、副支脚部となる中央支脚部7cについては、内枠部2Bを構成することとなる。
【0053】
そして、上記したような支脚部構造において、主支脚部7a,7bは、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多くなるように形成し、副支脚部7cについては、主支脚部7a,7bよりも強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少なくなるように形成する。
【0054】
このような構成によれば、強度や剛性の向上を図りたい部分を効率良く向上することが可能となる。
なお、このような釣糸ガイドの構成では、上記したような強化繊維の態様が得られるように、図6から図11に示した断面構造を適宜、用いることが可能である。
【0055】
また、上記した構成とは逆に、主支脚部7a,7bを、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少なくなるように形成し、副支脚部7cを、主支脚部7a,7bよりも強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多くなるように形成しても良い。
【0056】
このような構成によれば、副支脚部の小型化、軽量化が図れる。
【0057】
もちろん、上記したような両足ガイドの構成では、主支脚部と副支脚部については、長手方向に指向する強化繊維の割合又は量、或いは繊維比率(Vf)が等しくなるように形成しても良い。
【0058】
また、上記したような両足ガイドタイプの釣糸ガイドでは、前後方向の一方の固定部が主固定部となり、他方の固定部が副固定部となる(ここでの主固定部とは、上記した主支脚部側と連結する部分とされ、副固定部とは、副支脚部と連結される部分とされる)。すなわち、この実施形態では、第1固定部5Aが主固定部であり、第2固定部5Bが副固定部となる。
【0059】
そして、上記したような固定部構造において、主固定部5Aは、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多くなるように形成し、副固定部5Bについては、主固定部5Aよりも強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少なくなるように形成する。
【0060】
このような構成によれば、固定部に作用する負荷の大きさに合った、バランスのとれた強度や剛性にすることが可能となる。
なお、このような釣糸ガイドの構成では、上記したような強化繊維の態様が得られるように、図6から図11に示した断面構造を適宜、用いることが可能である。
【0061】
また、上記した構成とは逆に、主固定部5Abを、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少なくなるように形成し、副固定部5Bを、主固定部5Aよりも強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多くなるように形成しても良い。
【0062】
このような構成によれば、副固定部の小型化、軽量化が可能となる。
【0063】
もちろん、上記したような両足ガイドの構成においても、主固定部と副固定部については、長手方向に指向する強化繊維の割合又は量、或いは繊維比率(Vf)が等しくなるように形成しても良い。
【0064】
図14は本発明に係る釣糸ガイドの第3の実施形態を示す側面図である。
本実施形態の釣糸ガイドは、図1に示した構成と同様、片足タイプとして構成されており、固定部から支脚部に移行する屈曲部11の内側両サイドに、それぞれ厚さの薄いリブ7e,7fを形成したものである(これらのリブを有する左右支脚部7a,7bは、上述した外枠部2Aを構成する)。また、図示しないが、固定部5や支脚部7a,7bの一部として、肉厚を厚く(断面を大きく)した構成では、固定部や支脚部と同じように樹脂が流れることから、上述した外枠部2Aの一部を構成する。
【0065】
上記したように、釣糸ガイドを構成するフレームについては、その肉厚を変化させたり、リブを形成する等、適宜変形することが可能である。
【0066】
図15は、釣糸ガイドに形成される屈曲部の好ましい例を示した断面図であり、図1に示した固定部と支脚部との間の屈曲部11の構造を示した断面図である。
フレーム2のいずれかに屈曲するような領域(屈曲部11)を形成した場合、リング保持部3は、図の矢印方向に屈曲し易い状態となっている。このため、リング保持部3の肉厚Tよりも屈曲部11の肉厚T1を厚くすると共に、屈曲部11の内側11bについては、屈曲部11の外側11aよりも、繊維比率(Vf)を多くしたり、長手方向に指向する繊維量を多くしたり、或いは、長手方向に指向する繊維量が多い本体層(図11参照)60を、屈曲部11の内側11aに偏倚して設けることが好ましい。
【0067】
屈曲部における断面の構成を上記したような状態にすることで、矢印方向に作用する負荷に対して強度向上が図れると共に、軽量化することが可能となる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した構成に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
本発明は、釣糸ガイドを構成するフレームの、リング保持部、固定部、支脚部における断面の強化繊維の配設状態に特徴があり、繊維強化合成樹脂材の構成、及び積層状態等については、部位に応じて種々変形することが可能である。
【0069】
また、本発明は、上記した実施形態の釣糸ガイドに限定されることはなく、様々な形態の釣糸ガイドに適用することが可能である。すなわち、本発明に係る釣糸ガイドは、竿杆に沿って摺動可能な遊動ガイド、或いは、穂先竿杆の先端に固定されるトップガイド、釣糸導入ガイドとして構成されていても良く、それに応じてフレームの形状についても、適宜変形することが可能である。この場合、装着される竿杆の基本性能、フレームの形態などに応じて、強化繊維の配設状態を変え、粘り易い(撓み易い)領域を形成しておけば良い。
【符号の説明】
【0070】
1 釣糸ガイド
2 フレーム
3 リング保持部
3A 開口
5,5A,5B 固定部
7,7a,7b,7c 支脚部
10 ガイドリング
11,11a 屈曲部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣糸を挿通させるリング保持部と、釣竿に装着される固定部と、前記リング保持部と固定部を連結し、釣竿表面から釣糸を離間させる支脚部と、を具備した繊維強化樹脂製のフレームを有する釣糸ガイドであって、
前記フレームは、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多い部分と、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ない部分と、を有することを特徴とする釣糸ガイド。
【請求項2】
前記フレームは、外枠部と内枠部とを有し、
前記外枠部は、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多い部分を有し、前記内枠部は、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ない部分を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の釣糸ガイド。
【請求項3】
前記フレームは、前記リング保持部の前後方向それぞれに、支脚部と固定部を有し、
前記前後方向の一方の支脚部を主支脚部、他方の支脚部を副支脚部にすると共に、
前記主支脚部は、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多く形成され、
前記副支脚部は、前記主支脚部よりも強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ないように形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の釣糸ガイド。
【請求項4】
前記フレームは、前記リング保持部の前後方向それぞれに、支脚部と固定部を有し、
前記前後方向の一方の固定部を主固定部、他方の固定部を副固定部にすると共に、
前記主固定部は、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多く形成され、
前記副固定部は、前記主固定部よりも強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ない部分を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項5】
前記フレームのリング保持部、支脚部、固定部の内、少なくとも一つの部分の断面は、本体層と本体層の外側に位置する外側層とを有し、
前記本体層は、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多く、前記外側層は、前記本体層よりも強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ないことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項6】
前記フレームのリング保持部、支脚部、固定部の内、少なくとも一つの部分の断面は、本体層と本体層の内側に位置する内側層とを有し、
前記本体層は、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多く、前記内側層は、前記本体層よりも強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ないことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項7】
前記フレームのリング保持部、支脚部、固定部の内、少なくとも一つの部分は、この部分の断面の構成が本体層と補助層とを有しており、
前記本体層は、前記補助層よりも強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多く形成され、
かつ、前記本体層又は本体層の中央位置は、前記断面の中心位置に対して偏倚していることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項8】
釣糸を挿通させるリング保持部と、釣竿に装着される固定部と、前記リング保持部と固定部を連結し、釣竿表面から釣糸を離間させる支脚部と、を具備した繊維強化樹脂製のフレームを有する釣糸ガイドの製造方法であって、
金型内の所定空間に強化繊維を配置する工程と、
前記金型を閉じた状態で前記所定空間内に合成樹脂を注入して、繊維強化合成樹脂製のフレームを成形する工程と、
を有することを特徴とする釣糸ガイドの製造方法。
【請求項9】
釣糸を挿通させるリング保持部と、釣竿に装着される固定部と、前記リング保持部と固定部を連結し、釣竿表面から釣糸を離間させる支脚部と、を具備した繊維強化樹脂製のフレームを有する釣糸ガイドの製造方法であって、
金型内の所定空間に、長繊維からなる強化繊維を混入した合成樹脂を注入して、繊維強化合成樹脂製のフレームを成形することを特徴とする釣糸ガイドの製造方法。
【請求項1】
釣糸を挿通させるリング保持部と、釣竿に装着される固定部と、前記リング保持部と固定部を連結し、釣竿表面から釣糸を離間させる支脚部と、を具備した繊維強化樹脂製のフレームを有する釣糸ガイドであって、
前記フレームは、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多い部分と、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ない部分と、を有することを特徴とする釣糸ガイド。
【請求項2】
前記フレームは、外枠部と内枠部とを有し、
前記外枠部は、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多い部分を有し、前記内枠部は、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ない部分を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の釣糸ガイド。
【請求項3】
前記フレームは、前記リング保持部の前後方向それぞれに、支脚部と固定部を有し、
前記前後方向の一方の支脚部を主支脚部、他方の支脚部を副支脚部にすると共に、
前記主支脚部は、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多く形成され、
前記副支脚部は、前記主支脚部よりも強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ないように形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の釣糸ガイド。
【請求項4】
前記フレームは、前記リング保持部の前後方向それぞれに、支脚部と固定部を有し、
前記前後方向の一方の固定部を主固定部、他方の固定部を副固定部にすると共に、
前記主固定部は、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多く形成され、
前記副固定部は、前記主固定部よりも強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ない部分を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項5】
前記フレームのリング保持部、支脚部、固定部の内、少なくとも一つの部分の断面は、本体層と本体層の外側に位置する外側層とを有し、
前記本体層は、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多く、前記外側層は、前記本体層よりも強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ないことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項6】
前記フレームのリング保持部、支脚部、固定部の内、少なくとも一つの部分の断面は、本体層と本体層の内側に位置する内側層とを有し、
前記本体層は、強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多く、前記内側層は、前記本体層よりも強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が少ないか繊維比率(Vf)が少ないことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項7】
前記フレームのリング保持部、支脚部、固定部の内、少なくとも一つの部分は、この部分の断面の構成が本体層と補助層とを有しており、
前記本体層は、前記補助層よりも強化繊維が長手方向に指向する量又は割合が多いか繊維比率(Vf)が多く形成され、
かつ、前記本体層又は本体層の中央位置は、前記断面の中心位置に対して偏倚していることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項8】
釣糸を挿通させるリング保持部と、釣竿に装着される固定部と、前記リング保持部と固定部を連結し、釣竿表面から釣糸を離間させる支脚部と、を具備した繊維強化樹脂製のフレームを有する釣糸ガイドの製造方法であって、
金型内の所定空間に強化繊維を配置する工程と、
前記金型を閉じた状態で前記所定空間内に合成樹脂を注入して、繊維強化合成樹脂製のフレームを成形する工程と、
を有することを特徴とする釣糸ガイドの製造方法。
【請求項9】
釣糸を挿通させるリング保持部と、釣竿に装着される固定部と、前記リング保持部と固定部を連結し、釣竿表面から釣糸を離間させる支脚部と、を具備した繊維強化樹脂製のフレームを有する釣糸ガイドの製造方法であって、
金型内の所定空間に、長繊維からなる強化繊維を混入した合成樹脂を注入して、繊維強化合成樹脂製のフレームを成形することを特徴とする釣糸ガイドの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−75332(P2012−75332A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220523(P2010−220523)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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