説明

釣糸ガイド及び釣糸ガイドを装着した釣竿

【課題】小型、軽量化して釣竿の撓り性の向上が図れると共に、竿杆装着時に緩みや回動を防止して装着位置が安定化する釣糸ガイドを提供する。
【解決手段】本発明に係る釣糸ガイド1は、釣糸を挿通させるリング保持部5と竿杆表面から釣糸を離間させる支脚部7と取付部9とを有するフレーム10と、竿杆R1に対してスライド可能で所定の位置に係止可能であり、取付部9に一体化される固定筒部15と、を有する。そして、リング保持部5、支脚部7、取付部9と固定筒部15を一体化した部位の内、少なくともいずれか一つの部位に、三方向以上の異なる方向に強化繊維を指向させた繊維強化合成樹脂を配設したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿に装着されて釣糸を案内する釣糸ガイド、及びそのような釣糸ガイドを装着する釣竿に関し、特に、遊動ガイドのガイドリングを保持するフレーム部分と釣竿に着脱自在に係止する固定筒部、並びに、固定筒部を固定する竿杆表面に特徴を有する釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記した釣糸ガイドは、釣糸を案内するガイドリングとガイドリングを保持するフレームを有しており、前記フレームを釣竿の外周面に固定している。このような釣糸ガイドには、糸止め等によって釣竿の表面に固定されるタイプ(固定ガイドとも称する)、及び釣竿の表面に対して摺動し、所定の位置で固定できるようにしたタイプ(遊動ガイドとも称する)がある。
【0003】
遊動ガイドの場合、例えば、特許文献1に開示されているように、ガイドリングを固定する支持プレート部と、竿取り付け部を形成した金属製支持体と、竿取り付け部内に通されて嵌められた環状の合成樹脂製の竿保護部材を備えている。また、特許文献2に開示されている遊動ガイドは、竿取り付け部を合成樹脂で形成すると共に、竿杆を挿通させる孔の内面を多角形にして、竿杆を圧入したときに変形を生じさせて、竿杆表面に対する圧着力が十分に得られる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−337105号
【特許文献2】特開2000−14280号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した特許文献1に開示されている釣糸ガイドは、金属製支持体と合成樹脂製フレームが金属材料で形成されているため、重量が重くなり、軽量化及び小型化が困難であると共に、釣竿の撓り性を阻害し、強度の向上及び安定化を図る上で限界がある。また、上記した特許文献2に開示されている釣糸ガイドのように、竿取付け部の竿杆挿通孔の内面を多角形にしたり、或いはローレットを形成すると、竿杆表面との間で竿杆方向に沿った状態で線接触したり点接触する状態になるため、この部分で磨耗が生じ易く固定位置が不安定になると共に、使用中にガイドが緩んだり回動し易いという問題がある。さらに、内面を多角形にする場合、大きい隙間、及びそれに伴って竿取付け部の肉厚が厚くなるため、小型化が難しい、等の問題がある。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、小型、軽量化して釣竿の撓り性の向上が図れると共に、竿杆装着時に緩みや回動を防止して装着位置が安定化する釣糸ガイドを提供することを目的とする。また、本発明は、釣糸ガイドとの間で、釣糸ガイドが緩んだり回動することを防止した竿杆表面構造を有する釣竿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明は、釣糸を挿通させるリング保持部と竿杆表面から釣糸を離間させる支脚部と取付部とを有するフレームと、前記竿杆に対してスライド可能で所定の位置に係止可能であり、前記取付部と一体化される固定筒部と、を有する釣糸ガイドであって、前記リング保持部、支脚部、取付部と固定筒部を一体化した部位の内、少なくともいずれか一つの部位に、三方向以上の異なる方向に強化繊維を指向させた繊維強化合成樹脂を配設したことを特徴とする。
【0008】
上記した構成により、釣糸ガイドの小型化、軽量化、及び強度の向上、安定化が図れるようになる。なお、上記した構成では、全ての部位が繊維強化合成樹脂で形成されることが好ましいが、フレームと固定筒部は、いずれかが金属や合成樹脂で形成されていても良い。また、フレームと固定筒部は、繊維強化合成樹脂で一体的に同時成形することが好ましいが、これらを個別に形成して接着等の固着剤で一体化しても良いし、両部材を圧入して一体化しても良い。また、取付部は、釣竿の竿杆が挿通される部分となる固定筒部と、釣糸を竿杆の表面から離間させるように設けられる支脚部との間に設けられる部分であり、固定筒部に外嵌されていたり、固定筒部と一体化されていても良い。或いは、支脚部と一体化されていても良い。
【0009】
また、上記したような構成では、前記固定筒部は、繊維強化合成樹脂で形成されると共に、固定筒部の径方向肉厚を、前記支脚部における肉厚以下に形成しても良い。或いは、前記リング保持部、支脚部、固定筒部は、それぞれ複数の異なる方向に強化繊維を指向させた繊維強化合成樹脂で形成されていても良い。
【0010】
また、上記した釣糸ガイドの構成において、前記固定筒部は、繊維強化合成樹脂で形成され、その内側面は、強化繊維を露出状、又は突出状に形成されていることが好ましい。
【0011】
前記固定筒部の内側面は、挿入される竿杆の外側面と面接する領域であり、このような内側面では、強化繊維が露出しているか突出していることが好ましい。ここで、「露出又は突出」とは、断面視した際、内側面(内表面)から強化繊維の一部が露出した状態になっていること、或いは、極薄(繊維直径の1/2以下が好ましい)の皮膜に覆われた強化繊維の一部が相対的に突出した状態(例えば、強化繊維の周辺に窪みがあれば、それは突出した状態となる)になっていることであり、釣糸ガイドを竿杆に対して使用状態に係止したときに回動、又は竿杆の軸長方向の動きの抵抗力に影響を与えることを言う。この場合、局部的に強化繊維の表面が露出していたり、局部的に強化繊維の略全周が露出(この場合は、突出状となる)していても良いが、使用時に強化繊維が剥離するほど露出させる必要はない。また、露出するのは、強化繊維の一部分(太さや長さの一部分)でも良く、露出(突出)しているのは、1本の強化繊維としてそのようになっているもの、或いは、合成樹脂を含んだ繊維束の状態で一部が露出(突出)した状態であっても良い。
【0012】
上記したような状態は、固定筒部そのものを繊維強化樹脂で形成すると共に、その内側面側の強化繊維(繊維束)を所定の方向に配設しておき、例えば、多少の樹脂枯れ状態(樹脂が不足した状態)にすることで露出(突出)させることが可能である。或いは、芯金にプリプレグを巻回して固定筒部を形成するような場合、芯金に微小の凹凸を形成しておいたり、芯金に対して剥離用の細いラインを巻回しておき、プリプレグを巻回して管状体を形成した後、前記ラインを取り外したり、更には、成形した管状体の内面側を加工具(ヤスリ、ブローチなど)で加工処理することで形成することが可能である。
【0013】
上記したような内面状態とすることで、強化繊維部分が抵抗となって、釣糸ガイドが回動したり、緩むようなことが効果的に抑制される。
この場合、内側面の強化繊維については、固定筒部の軸心方向に対して傾斜方向、交差方向、軸長方向のいずれかの方向に指向していることが好ましい。すなわち、周方向以外の方向に露出させることで、釣糸ガイドが緩むことを効果的に防止することが可能となる(強化繊維が周方向に向いていると、挿通時に大きな抵抗となってしまう)。
【0014】
なお、固定筒部の内側面については、形成される素材に限定されることはないが、1)螺旋状の凹凸を有する、2)交差状の凹凸を有する、3)網目状の凹凸を有する、4)筋目状の凹凸を有する、5)点状凹部又は点状凸部を有する、の内、少なくとも1つの特徴を備えた微小凹凸を備えていれば良い。このような微小凹凸は、繊維強化樹脂の場合、強化繊維で形成することが可能であり、樹脂や金属の場合、その表面を加工することで形成することが可能である。
さらには、そのような微小凹凸について、凹凸の高さが100μm未満となっていることが好ましい。すなわち、凹凸の高さが100μm以上になると、従来のローレットと同様に、磨耗等が生じ易くなり、使用中にガイドが緩んだり回動し易くなる傾向となってしまうからである。なお、凹凸高さについては、強化繊維(繊維束)の直径方向の全体が露出することの無いように、30〜60μm程度にしておくことが好ましく、その最小値については、1本の強化繊維を考慮した場合(繊維直径は6〜7μm)、剥離等が生じないように、0.3μm以上、好ましくは1μm以上にするこのが良い。なお、内側面全周に形成しても、周方向の一部分に形成しても良い。
【0015】
そして、上述したような釣糸ガイドを装着した釣竿の竿杆については、前記釣糸ガイドを所定の位置に係止可能にする竿杆の外側面に、1)螺旋状の凹凸を有する、2)交差状の凹凸を有する、3)網目状の凹凸を有する、4)筋目状の凹凸を有する、5)点状凹部又は点状凸部を有する、の内、少なくとも1つの特徴を備えた微小凹凸を形成しておくことが好ましい。
【0016】
また、このような竿杆の表面構造では、強化繊維が露出状、又は突出状に形成されていることが好ましく、具体的には、その部分の強化繊維は、竿杆の軸心方向に対して傾斜方向、交差方向、軸長方向のいずれかの方向に指向していることが好ましい。
【0017】
竿杆の表面を上記したように処理しておくことで、上述した釣糸ガイドの固定筒部の内側面と同様な表面状態となり、竿杆に対するスライドをスムーズにすることが可能になると共に、両者の固定力を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、小型、軽量化して釣竿の撓り性の向上が図れると共に、竿杆装着時に緩みや回動を防止して装着位置が安定化する釣糸ガイドが得られ、更には、釣糸ガイドとの間で、釣糸ガイドが緩んだり回動することを防止した竿杆表面構造を有する釣竿が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る釣糸ガイドを装着した釣竿の一部を示す側面図。
【図2】図1に示す釣糸ガイドの断面図。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図。
【図4】釣糸ガイドの第2の実施形態を示す断面図。
【図5】図4を矢印方向から見た図。
【図6】図4に示す釣糸ガイドの組み立て方法を説明する分解図。
【図7】図1及び図4に示す釣糸ガイドの製法の一例を説明する図。
【図8】(a)から(d)は、それぞれ釣糸ガイドの固定筒部の内側面の強化繊維の状態を示す断面図。
【図9】(a)から(e)は、それぞれ釣糸ガイドの固定筒部の内面側の強化繊維の方向を概略的に示す図。
【図10】(a)から(d)は、それぞれ芯金にプリプレグを巻回して固定筒部を形成する製造方法について説明する図。
【図11】管状に成形された固定筒部に対して、内面を加工処理する状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1から図3は、本発明に係る釣糸ガイドの第1の実施形態を示す図であり、図1は釣竿の一部(穂先竿)に釣糸ガイドを装着した状態を示す側面図、図2は図1に示す釣糸ガイドの断面図、図3は図2のA−A線に沿った断面図である。
【0021】
本実施形態の釣糸ガイド1は、遊動ガイドとして構成されており、例えば、図1に示すように、釣竿Rの穂先竿杆R1の先端側に、複数個(図では3個)、竿杆方向に沿って装着することが可能となっている。穂先竿杆R1の先端には、トップガイド2が固定されており、穂先竿杆R1よりも基端側の2番竿杆R2の先端には、固定ガイド3が固着され、それぞれの釣糸ガイド(遊動ガイド)1は、トップガイド2と固定ガイド3との間で、軸方向に摺動し、任意の位置で固定できるようになっている。なお、穂先竿杆(以下、竿杆と称する)R1の外側面は、基端側に移行するに連れて、次第に外径が大きくなるように形成されており、摺動する釣糸ガイドの固定筒部は、所定の位置で係止されるようになっている。また、釣竿Rの竿杆は、繊維強化合成樹脂によって形成されており、竿杆R1は、中空状に形成されていても良いし、中実状に形成されていても良い。
【0022】
図2及び図3に示すように、釣糸ガイド1は、釣糸を挿通させるリング保持部5と竿杆表面から釣糸を離間させる支脚部7と取付部9とを有するフレーム10と、竿杆R1に対してスライド可能で所定の位置に係止可能であり、取付部9に一体化される固定筒部15と、を有する構造となっている。
【0023】
この場合、固定筒部15は、竿杆R1に沿って摺動可能であり、竿杆R1が挿通される貫通孔15aを有する部分が該当する。また、前記取付部9は、固定筒部15と、釣糸を竿杆の表面から離間させるように設けられる支脚部7との間に位置する部分であり、本実施形態では、後述する製造方法によって、前記固定筒部15を囲繞して同一の軸長方向長さを有すると共に、固定筒部15と一体化された構成(「一体化」とは、同時成形等によって一体化するもの、接着や溶着などによって個別の部材を一体化するものを含む)となっている。なお、取付部9については、支脚部7と共に同一の構成素材で一体化されて固定筒部15に取り付けられていても良い。
【0024】
前記リング保持部5は、竿杆表面に接触しないように釣糸が挿通される部分である(釣糸挿通方向を矢印Xで示す)。リング保持部5は、全体として略円形の外形状(環状)に形成されており、釣糸を案内するガイドリング20を嵌入、固定させるための開口5aを備えている。この場合、開口5aに嵌入、固定されるガイドリング20は、リング状に構成され、その内周面である釣糸案内面20a部分での摺動抵抗が小さい素材、例えば、チタン、アルミ、SUS、セラミックスなどによって形成されている。なお、「リング保持部」とは、上記したガイドリング20を装着して釣糸を案内する他、ガイドリングを装着することなく、開口5aで直接、釣糸を案内する構成も含む。
【0025】
前記環状に形成されたリング保持部5と取付部9との間は、支脚部7によって連結されている。ここで、「支脚部」とは、リング保持部5に挿通される釣糸を竿杆の表面から離間させる部位が該当し、本実施形態の構成では、取付部9は竿杆R1に対して対称となるように左右両側に設けられており、それぞれの支脚部7は、リング保持部5の両サイド側から取付部9に向かって延びる傾斜状部7aを備え、取付部9と共に一体形成されている。
【0026】
上記した構成のフレーム10及び固定筒部15は、繊維強化合成樹脂で形成しても良いし、いずれかが金属や合成樹脂で形成されていても良い。フレーム10と固定筒部15は、繊維強化合成樹脂で一体的に同時成形することが好ましいが、個別に形成して、接着等の固着剤で一体化しても良いし、両部材を圧入等によって一体化しても良い。
【0027】
そして、このような構成では、リング保持部5、支脚部7、取付部9と固定筒部15を一体化した部位の内、少なくともいずれか一つの部位に、三方向以上の異なる方向に強化繊維を指向させた繊維強化合成樹脂を配設した状態とされている。ここで、三方向以上の異なる方向とは、例えば、各部位において、繊維強化合成樹脂製のプリプレグを複数枚用いて複数の積層構造とした場合、各層を構成するプリプレグを、強化繊維の指向方向が異なるものを用いることで容易に形成することが可能となる。すなわち、各部位において、肉厚方向を見た際、強化繊維が、少なくとも三方向に指向されていれば良い。
【0028】
釣糸ガイドの構成部材を、上記のような構造にすることで、釣糸ガイドの小型化、軽量化、及び強度の向上、安定化が図れるようになる。
【0029】
また、上記した構成では、少なくとも、固定筒部15を繊維強化合成樹脂で形成しておいても良い。このようにすることで、固定筒部15の強度が向上するため、固定筒部15の径方向の肉厚を、フレームにおける支脚部7の肉厚以下に形成することが可能となり、これにより、軽量化を図ると共に、摺動する部分の強度を向上することが可能となる。
【0030】
或いは、前記リング保持部5、支脚部7、固定筒部15については、繊維強化合成樹脂で形成しておき、それぞれの部位では、複数の異なる方向に強化繊維を指向させておくようにしても良い。通常、これらの部位については、応力が作用し易いと共に、形成工程時において切削加工したり研磨処理を施すと剥離などが生じ易い部分となっている。このように応力が作用し易い部分の強化繊維の指向方向を複数に設定しておくことで、比強度の向上が図れると共に、切削したり研磨しても、バリやケバ立ち部分から剥離等がし難くなり、強度の安定化が図れるようになる。
【0031】
上記したような釣糸ガイドは、例えば、繊維強化樹脂製の管状の部材を切り出すことで形成することが可能である。ここで、図7を参照しながら、上記した釣糸ガイド1の製造方法の一例について説明する。
上記した釣糸ガイド1を構成するフレーム10は、強化繊維に合成樹脂を含浸したプリプレグシート(以下、プリプレグと称する)を巻回した管状の部材から形成することが可能である。この場合、上記した釣糸ガイドのリング保持部5の領域、及び固定筒部15の領域は、図7に示すように、2つの管状部材31,32が一体化されたもの(以下、一体化構造30と称する)から形成される。すなわち、このような一体化構造30は、径が異なる芯金に対して、それぞれ所定の方向に強化繊維を配設したプリプレグを巻回してこれを隣接配置しておき、更に隣接配置された2本の芯金に対して、所定のプリプレグを順次、巻回した後、加熱工程、脱芯工程等を経て形成することが可能である。
【0032】
具体的に、図7に示す構成において、大径の管状部材31は、大径の芯金に対して複数枚のプリプレグ35を巻回することで形成され、この大径の管状部材31は、上述した環状のリング保持部5の内層側を構成する。また、小径の管状部材32は、小径の芯金に対して複数枚のプリプレグ36を巻回することで形成され、この小径の管状部材32は、上述した固定筒部15を構成する。ここで、両芯金に巻回されて複数層を構成するプリプレグ35,36は、強化繊維が一方向に引き揃えられたもの、或いは強化繊維を編成したシート状(織布状)にされたもの、テープ状にしたもの等であり、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)や熱可塑性樹脂(例えば、ナイロン)をマトリックス樹脂として含浸した構成となっている。また、強化繊維については、カーボン繊維、ガラス繊維などの無機繊維、アラミド繊維、ポリエーテルイミドなどの有機繊維、SUS、チタンなどの金属繊維を用いることができる。
【0033】
そして、所定のプリプレグをそれぞれ巻回した芯金は、各プリプレグが接触するように隣接配置され、このように隣接配置された状態の芯金に対し複数枚のプリプレグ37を両方の芯金の外周に順次巻回することで、リング保持部5の外層側、固定筒部15の外層側となる取付部9、及び支脚部7が形成される。
【0034】
なお、隣接配置した芯金に対して巻回されるプリプレグ37に、例えば、最も内側の層となるプリプレグに周方向に強化繊維を引き揃えたもの、その上の層のプリプレグに傾斜方向に強化繊維を引き揃えたもの、その上の層のプリプレグにその下のプリプレグと交差する傾斜方向に強化繊維を引き揃えたもの、そして、最外層となるプリプレグに強化繊維を織布状にしたものを用いることで、リング保持部5、支脚部7、取付部9と固定筒部15を一体化した部位のいずれも、三方向以上の異なる方向に強化繊維を指向させた状態にすることが可能となる。また、リング保持部5を構成する複数のプリプレグ35、及び固定筒部15を構成するプリプレグ36に、それぞれ強化繊維を異なる方向に指向させたものを用いることによって、前記リング保持部5、支脚部7、及び固定筒部15は、それぞれ複数の異なる方向に強化繊維が指向するようになる。なお、プリプレグ35については、ガイドリング20と当接する最内層は、強化繊維を織布状にしたものを用いることが好ましい。
【0035】
また、上記したように、隣接配置された状態の芯金に対し、プリプレグ37を巻回する前に、両芯金の間に存在する窪み領域に、長手方向に沿って充填部材38を配置しておくことが好ましい。この充填部材38は、合成樹脂を含浸した繊維束(繊維強化樹脂)、合成樹脂、軽量な材料(比重が2.0以下)等によって構成されており、このような充填部材38を配設することで、図3に示すように、固定筒部15とリング保持部5との間の隙間が埋まり、固定部における強度を向上することが可能となる。
【0036】
そして、上記したように、プリプレグ35,36が巻回された径の異なる芯金を隣接して配置し、両者の窪みに対して充填部材38を充填し、その後、プリプレグ37を巻回した芯金は、テープ等によって保形され、加熱工程及び脱芯工程を経て、2本の管状部材が一体化された状態のもの(一体化構造30)が成形される。
【0037】
その後、成形された一体化構造30に対し、図7の点線で示すように所定の位置を切り出すことにより、釣糸ガイド1のフレーム10が形成される(実際には、一体化構造30は、軸方向に長いため、複数のフレームを形成することが可能である)。この場合、径の小さい芯金は、脱芯した後で最終的に竿杆R1が嵌入される固定筒部の貫通孔15aとなることから、竿杆R1の外径と略一致する外径を有するものが用いられる。また、径の大きい芯金は、脱芯した後で最終的にガイドリング20が取り付けられる開口5aとなることから、装着されるガイドリング20の外径と略一致する外径を有するものが用いられる。
【0038】
以下、一体化構造30からフレーム10を切り出す方法について具体的に説明する。
まず、一体化構造に対し、軸長方向を横切る方向(交差する方向)に切り出しを行う。したがって、上記したように積層されたプリプレグによる繊維強化樹脂層は、そのまま径方向に積層された状態となる。同様に、小径の管状部材32の部分において、一体化された固定筒部15及びこれを囲繞する取付部9が形成される位置で軸長方向を横切る方向に切り出しを行うと共に、小径の管状部材32の上端位置から、支脚部7の傾斜状部7aが形成されるように、大径の管状部材31の管状表面に沿って斜めに切り出しを行う。
【0039】
このように、切り出し処理を行うことで、図3に示すように、上記したプリプレグ36によって固定筒部15が形成され、上記したプリプレグ35によってリング保持部5の内層側が形成され、さらに、上記したプリプレグ37によって、リング保持部5の外層側、支脚部7、及び取付部9が形成される。また、リング保持部5、固定筒部15、及び支脚部7で囲まれる領域(取付部の一部の領域)は、図3で示すように、充填部材38が配置された状態となっている。
【0040】
以上のように、図2に示すようなフレーム形状は、一体化構造30に対して、所定の位置を切り出すことで一体形成される。この場合、形成されるフレーム10の部位に応じて、巻回するプリプレグの構成を変えたり、軸長方向に沿うように部分的に補強プリプレグを積層する等して、肉厚を変えることが可能である。例えば、取付部9の領域に沿って軸長方向に沿うように補強プリプレグを積層して肉盛りすることで、取付部9や固定筒部15における強度を向上することも可能となる。或いは、支脚部7についても、プリプレグ37の肉厚、巻回数、切り出し方向等によって、形状を変えることができ、更に、開口を形成することで、フレームの軽量化を図ることも可能である。
【0041】
なお、一体化構造30からフレームを切り出すに際しては、刃具による切り出しの他、プレス加工による切り出し、液体(ウォータージェット等)による切り出し等、任意の方法を採用することで、複数のフレーム10を切り出すことが可能となり、これにより、軽量で高強度の釣糸ガイド(フレーム)を効率良く製造することが可能となる。
【0042】
この場合、リング保持部5については、長手方向軸を横切る方向に切り出すことで形成されるため、径方向の内側から外側方向に向けて繊維強化樹脂層が積層された状態となっており、これにより、効率的にリング保持部の強度向上及び安定化と、小型化、軽量化が可能となる。また、リング保持部5の内層側を、織布状のプリプレグによって構成することで、断面を見た場合、表層部分は強化繊維が蛇行した状態で露出(突出)する状態となり、これにより、そこに装着されるガイドリング20の外周面に対して強化繊維の一部が当接してガイドリング20を確実に安定的に保持することが可能となる。
【0043】
次に、切り出されたフレーム10に対して表面処理を施す。例えば、バレル加工を施すことで、表面のバリを除去すると共に、表面の光沢が得られる程度に仕上げ研磨を施す。この研磨の程度については、釣糸ガイド1のサイズや形状、材質特性などによって研磨剤や研磨時間などを任意に調整することが可能である。このようなバレル加工等を施すことにより、強化繊維を切断することなく、フレーム10を研磨することが可能となり、強度の安定化が図れると共に、外観の優れた釣糸ガイドとすることが可能となる。
【0044】
なお、上記の研磨工程を施すに際しては、フレーム10の表面に強化繊維が一部露出しマトリックス樹脂が一部残るように研磨することが好ましい。こうすることで、研磨表面の光沢をより一層向上することが可能となる。
【0045】
次に、必要に応じて、フレーム10の全体又は一部分に被膜を形成する。例えば、外観向上やフレーム本体の保護のために塗装を行なうことや、金属やセラミックスを蒸着等することも可能である。
【0046】
そして、上記したように形成されたフレーム10のリング保持部5の開口5aにガイドリング20を取り付ける。ガイドリング20の取り付け方法は、圧入や接着、カーリング、その他、任意の固定方法を採用することが可能である。
【0047】
上記したように構成される釣糸ガイド1によれば、フレーム10、及び固定筒部15が繊維強化合成樹脂で形成されるため、軽量化が図れると共に、このような構造の釣糸ガイドを装着した釣竿は本来の特性を発揮し易くなる。特に、穂先竿のような部分では、より軽量化が図れるため、繊細な当たりを感知し易くなり、より釣竿の性能の向上を図ることが可能となる。また、傾斜状部7aを有する支脚部7を設けたことで、釣糸が絡み難く、竿先方向に抜け易いと共に、釣糸が絡まる等によって負荷が作用しても、複数方向に指向する強化繊維が配設されていることから、比強度及び比剛性に優れた構成となる。特に、プリプレグ37の内、強化繊維を傾斜方向に指向させたものを用いることで、傾斜状部7aに沿うように強化繊維を配設することが可能となり、その部分における撓み性が良くなって、比強度、比剛性の向上が図れるようになる。なお、本実施形態では、傾斜状部7aは、竿杆の左右両側に形成されているため、フレームとしての強度の向上が図れるようになる。
【0048】
次に、上記したようにして形成される固定筒部15、詳細には、貫通孔15aの好ましい内側面構造について、図8を参照して説明する。
上記したように、固定筒部15は、繊維強化合成樹脂(プリプレグを巻回した管状部材)で形成されており、その内側面は、挿入される竿杆R1の外周面と面接する領域となっている。この場合、固定筒部15の内側面は、強化繊維が露出状、又は突出状に形成されていることが好ましい。
【0049】
具体的には、強化繊維が、傾斜方向に指向するような構成では、図8(a)に示すように断面視した際、内側面(内表面)15bから強化繊維F1の一部が露出した状態になっていれば良い。ここで、露出(突出)するのは、強化繊維F1の一部分(太さや長さの一部分)でも良く、露出(突出)しているのは、1本の強化繊維としてそのようになっているもの、或いは、図8(c)で示すように、合成樹脂を含んだ繊維束F3,F4の状態で一部が露出した状態であっても良い(図8(c)の構成については後述する)。なお、露出とは、強化繊維の一部が内表面に現れている状態(図8(a)に近い状態)であり、露出する強化繊維の周辺に窪みが存在すれば、それは突出した状態となっている。すなわち、内表面15bに対して強化繊維の外輪の輪郭が突出していれば、それは強化繊維が突出している状態となる。
【0050】
また、各強化繊維が、図8(b)に示すように、極薄の皮膜50で覆われたものである場合(ここでの皮膜50は、繊維強化合成樹脂を構成する合成樹脂が該当し、加熱工程時の条件や部位によってその厚さは様々であるが、成形後において繊維直径の1/2以下となるような樹脂含浸量のものを用いることが好ましい)、皮膜50に覆われた強化繊維F2の一部が相対的に突出した状態となっていれば良い。
【0051】
なお、上記した「露出、又は突出」とは、換言すると、釣糸ガイドの固定筒部を竿杆に対して使用状態に係止したときに、回動方向、又は竿杆の軸長方向の動きの抵抗力に影響を与える状態になっていることを言う。このため、上記したように、局部的に強化繊維の表面が露出していたり、局部的に強化繊維の略全周が露出(この場合は突出状となる)していても良いが、使用時に強化繊維が剥離するほど露出させる必要はない。
【0052】
また、図8(c)に示すように、プリプレグに用いられている強化繊維が、繊維束のように所定の本数を束ねた構成とした場合(方向性を持って指向していても良いし、図に示すように編成されていても良い)、合成樹脂を含んだ繊維束F3,F4として、露出、又は突出した状態となっていても良い。或いは、図8(d)に示すように、個々の強化繊維F5が、内表面15bから、中心に向けてランダムに突出した状態となっていても良い。
【0053】
固定筒部15の貫通孔15aの内側面を、上記したような状態とすることで、露出する(又は突出する)強化繊維部分が抵抗となって、所定位置に係止した釣糸ガイドが回動したり、緩むようなことが効果的に抑制される。
【0054】
具体的に、図8(a)から(d)で示したような強化繊維の状態が、固定筒部15の貫通孔における内側面に亘って形成されている場合、図9(a)から(d)に模式的に示すような表面状態(微小凹凸構造)となっていることが好ましい。この場合、突出(露出)する強化繊維の指向方向については、周方向以外の方向にすることで、釣糸ガイドが緩むことを効果的に防止することが可能となる。すなわち、強化繊維が周方向に指向していると、竿杆に対してスライド(挿通時)させる際に、大きな抵抗となってしまうことから、周方向以外に指向させておくことが好ましい。
【0055】
図9(a)に示す表面構造は凹凸が螺旋状に配設されており、突出(露出)する凸部60が螺旋状になるように形成されたものである。図9(b)に示す表面構造は凹凸が交差状に配設されており、螺旋状になった凸部60a,60bが交差するように形成されたものである。図9(c)に示す表面構造は凹凸が網目状に配設されており、例えば、織布状に編成された凸部60cによって形成されたものである。図9(d)に示す表面構造は凹凸が筋目状に配設されており、軸長方向に延出する凸部60dが周方向に所定間隔をおいて形成されたものである。図9(e)に示す表面構造は凹凸が点状凹部60e又は点状凸部60fを有するように形成されたものである。なお、上記したような凹凸構造では、上述したように、突出(露出)する凸部は、単一の強化繊維であっても良いし、繊維束であっても良い。或いは、単なる合成樹脂や金属である場合、その表面部分に上記したような凹凸が形成されていれば良い。
【0056】
上記したように形成される凹凸(微小凹凸)は、凹凸の高さ(内側面15bから凸部の頂部までの高さ;図8(a)において符号Hで示す)が100μm未満となっていることが好ましい。すなわち、凹凸の高さHが100μm以上になると、従来のローレットと同様に、磨耗が生じ易くなり、使用中にガイドが緩んだり回動し易くなる傾向となってしまうからである。なお、凹凸高さについては、強化繊維(繊維束)の直径方向の全体が露出することの無いように、30〜60μm程度にしておくことが好ましく、その最小値については、1本の強化繊維を考慮した場合(繊維直径は6〜7μm)、剥離等が生じないように、1μm以上にすることが好ましい。
【0057】
また、上記したように内側面15bに露出(突出)する強化繊維については、固定筒部の軸心方向に対して傾斜方向(図9(a)〜(c)参照)、交差方向(図9(b),(c)参照)、軸長方向(図9(d)参照)のいずれかの方向に指向していることが好ましい。すなわち、周方向以外の方向に露出させることで、釣糸ガイドが緩むことを効果的に防止することが可能となる(強化繊維が周方向に向いていると、挿通時に大きな抵抗となってしまう)。なお、竿杆の外側面に傾斜状の凹凸が形成されている場合などは、ガイドの固定筒の内側面に配設した強化繊維を周方向に配設することもできる。また、固定筒部の最内層を除く中間層や外層などのいずれかの層に、強化繊維を周方向に配設しておくことで、固定筒部の割れや裂けの防止、及び、軽量化が可能になる。
【0058】
さらに、上記した構成においては、内側面の強化繊維を固定筒部の軸心方向に対して傾斜方向に指向させ、かつ強化繊維を引き揃え状に配設しておくことが好ましい。
このように、強化繊維を傾斜状で、かつ引き揃え状に配設することで、多数本の強化繊維による集積効果が得られるため、竿杆に対して釣糸ガイドを少し回動するだけで効率良く固定でき、確実な緩み防止効果が得られる。この場合、傾斜角度は任意に設定できるが、軸心方向に対して15度〜75度の範囲とする。具体的には、通常は、45度±20度の範囲とするのが良いが、回動時の竿杆の長手方向に対する移動量を少なくする必要がある場合(緩いテーパの竿杆の場合)、傾斜角度を急角度にする。また、竿杆のテーパが急な場合は小さい傾斜角度にする。
【0059】
そして、上記したように構成される釣糸ガイドを所定の位置に係止可能にする竿杆の外側面についても、固定筒部の内側面と同様な表面処理を施しておくことが好ましい。すなわち、図1に示す竿杆R1の外側面を、そこに挿通される釣糸ガイドの固定筒部の内側面状態に合わせて、螺旋状の凹凸を有するように形成したり、交差状の凹凸を有するように形成したり、網目状の凹凸を有するように形成したり、筋目状の凹凸を有するように形成したり、点状凹部又は点状凸部を有するように形成することが好ましい。
【0060】
上記したように、竿杆の外側面についても、固定筒部の内側面と同様な微小凹凸形状を形成しておくことで、固定筒部を摺動させて所定の位置に係止する際、固定筒部の内側面との間で固定力の向上が図れ、釣糸ガイドが軸方向に沿って緩んだり、回動することが防止される。
【0061】
上記のように竿杆の表面に微小凹凸を形成する場合、凹凸の高さ(外側面から凸部の頂部までの高さ)が100μm未満となっていることが好ましい。すなわち、凹凸の高さが100μm以上になると、固定筒部の内側面との間で磨耗が生じ易くなって、使用中にガイドが緩んだり回動し易くなる傾向となってしまうからである。実際には、凹凸高さについては、60μm以下にしておくことが好ましく、そこに挿通されるガイドの緩み、回動が生じなければ、凹凸高さは更に低くしても良いが、その最小値については、固定筒部に形成される凹凸との間で効果的な係止効果が得られるように1μm以上にすることが好ましい。また、竿杆表面については、釣糸ガイドを係止しない位置については必ずしも上記したような微小凹凸を形成する必要はなく、任意の表面構造にしても良い。なお、釣糸ガイドの固定筒部の内側面の微小凹凸と竿杆外周面の微小凹凸は、共に同じ凹凸を竿杆の軸長方向に沿って形成しても良いし、異なる凹凸、異なる方向(例えば逆方向や交差する方向)に形成しても良い。
【0062】
また、上記した竿杆を繊維強化合成樹脂で形成した場合、釣糸ガイドを係止する竿杆の外側面については、強化繊維を露出状、又は突出状に形成しておくことが好ましい。すなわち、竿杆外側面を、図8(a)〜(d)に示すように、強化繊維を露出状、又は突出状にしておくことで、固定筒部の内側面が同様に形成されている釣糸ガイドとの間で、固定力の向上が図れ、釣糸ガイドが軸方向に沿って緩んだり、回動することが防止される。
【0063】
特に、露出(突出)する強化繊維については、竿杆の軸心方向に対して傾斜方向、交差方向、軸長方向のいずれかの方向に指向させておくことが好ましい。例えば、竿杆の外側面に突出する強化繊維を傾斜方向に突出させておき、かつ、釣糸ガイドの固定筒部の内側面についても、同様な方向となるように強化繊維を傾斜方向に突出させておくことで、釣糸ガイドを竿杆に対して係止する際、両者を相対的に捩じ込むようにして係止することが可能となり、固定力がより向上すると共に、軸方向に緩みが生じ難くなる。もちろん、釣糸ガイドの固定筒部の内側面における強化繊維の方向と、竿杆の外側面における強化繊維の方向は、上記のように同じ方向に形成しても良いし、異なる方向(例えば逆方向や交差する方向)に形成しても良い。
【0064】
上記したような固定筒部における強化繊維の露出(突出)状態や微小凹凸は、図7で示したように固定筒部そのものを繊維強化合成樹脂で形成する場合、例えば、図10に示すような方法を用いて形成することが可能である。ここでは、図7に示した一体化構造30の内、小径の管状部材32の部分を形成する方法について説明する。
【0065】
図10(a)は、芯金Mの外周面に対して、強化繊維(或いは繊維束)70を螺旋状に巻き付けておき、その上からプリプレグ36を巻回し、その後、加熱工程、脱芯工程等する手法を示している。これにより、図9(a)及び(b)に示すような、固定筒部の内側面に強化繊維(繊維束)が螺旋状に突出するような凸部を形成することが可能となる。
図10(b)は、芯金Mの外周面又は外周面に配置した部材に微小凹凸71を形成しておき、その上からプリプレグ36を巻回し、その後、加熱工程、脱芯工程等する手法を示している。これにより、図9(e)に示すような、表面に点状となった凹凸を形成することが可能となる。
【0066】
図10(c)は、芯金Mに対して、強化繊維が軸長方向に引き揃えられたプリプレグ36a、強化繊維が傾斜方向に引き揃えられたプリプレグ36b、強化繊維が織布状に編成されたプリプレグ36c、強化繊維が織布状で芯金の軸長方向に対して傾斜する方向に編成されたプリプレグ36dを巻回し、その後、加熱工程、脱芯工程等する手法を示している。このような手法では、脱芯した後、最内層におけるプリプレグの強化繊維が露出したり、突出することから、図9(a)〜(d)に示すような凹凸を形成することが可能となる。
【0067】
なお、芯金に対して、上記したような固定筒部の内側面側の強化繊維(繊維束)を所定の方向に配設したプリプレグを巻回する構成の場合、例えば、多少の樹脂枯れ状態となるように加熱処理することで強化繊維を露出(突出)させることが可能である。この場合、成形された状態で合成樹脂の含浸量が少ないと、空隙が多くなって強化繊維が折れる等の問題が生じ、逆に合成樹脂の含浸量が多過ぎると、効果的に強化繊維が露出状態(突出状態)にならないため、樹脂含浸量については、10〜35wt%とすることが好ましい。
【0068】
図10(d)は、芯金Mの外周面に対して、内面形状成形用テープ72を螺旋状に巻き付けておき、その上からプリプレグ36を巻回し、その後、加熱工程、脱芯工程等する手法を示している。テープ72は、脱芯した後、取り除かれることから、テープを、多少の隙間を空けながら巻回したり、所定ピッチで巻回することで、図9(a)に示すような、固定筒部の内側面に強化繊維(繊維束)が螺旋状に突出するような凸部を形成することが可能となる。また、テープ72の表面に多数の凹凸を形成しておくことで、図9(e)に示すような、表面に点状となった凹凸を形成することも可能となる。
【0069】
或いは、上記した管状部材32を形成する時以外にも、図11に示すように、管状部材32を形成した後、開口部32aから加工具(ヤスリ、ブローチなど)75を挿脱して、管状部材32の内面に凹凸を形成しても良い。
以上のように、固定筒部の内側面に、強化繊維を露出(突出)させたり、微小凹凸を形成する手法については、特に限定されることはない。また、竿杆の外側面に、強化繊維を露出(突出)させたり、微小凹凸を形成する手法についても、様々な手法を用いて形成することが可能である。
【0070】
上述した釣糸ガイドは、繊維強化合成樹脂を管状体に形成し、ここから切り出し処理をすることで形成されていたが、本発明に係る釣糸ガイドは、上記した製法以外の方法を用いて形成することが可能である。
図4から図6は、本発明に係る釣糸ガイドの第2の実施形態を示す図であり、図4は断面図、図5は図4を矢印方向から見た図、図6は図4に示す釣糸ガイドの組み立て方法を説明する分解図である。
【0071】
本実施形態の釣糸ガイド101は、上記した実施形態と同様、釣糸を挿通させるリング保持部105と竿杆表面から釣糸を離間させる支脚部107と取付部109とを有し、全体が略板状に形成されたフレーム110と、竿杆に対してスライド可能で所定の位置に係止可能であり、取付部109に対して一体化される(取付部109に嵌入される)固定筒部115と、を有する構造となっている。
【0072】
この場合、固定筒部115は、フレーム110とは別体で形成され、例えば、図9及び図10で示したような管状部材から形成することが可能である。すなわち、固定筒部115は、プリプレグによって形成された管状部材32を軸長方向と直交する方向に切断し、さらに、その表面を切削加工して、一端部側に当付け用の鍔部115aと回り止め用の突起115bを設けることで形成することが可能である。なお、このような固定筒部115は、単なる合成樹脂で形成しても良い。
【0073】
また、上記したフレーム110は、例えば、フレーム110の外形状に相当する空間を有する金型内において、プリプレグを板状にして複数枚、積層し、その後、加圧、加熱することで形成することが可能である。この場合、リング保持部105、支脚部107、及び取付部109は、一体成形することが可能であり、本実施形態では、取付部109からリング保持部105の頂部105bに移行するに連れて次第に肉厚が薄肉化すると共に、リング保持部側が竿先側に所定角度、傾斜するように形成されている。
【0074】
このようなフレーム形状については、金型に設けられる凹凸形状を調整することで、リング保持部側が傾斜するような形状にすることができ、また、次第に薄肉化する肉厚については、例えば、複数枚積層されるプリプレグについて、中間層部分におけるプリプレグの長さを、リング保持部の頂部側が短くなるように裁断しておくことで調整することが可能である。
【0075】
このような製法によれば、強化繊維の指向方向が異なる複数枚のプリプレグを積層することで、リング保持部105、支脚部107、取付部109について、三方向以上の異なる方向に強化繊維を指向させることが容易に行えるようになり、釣糸ガイドを軽量化して強度を効率的に向上することが可能となる。また、固定筒部115を、繊維強化合成樹脂で形成することで、全体として強度を低下させることなく、固定筒部115の径方向肉厚を支脚部107における肉厚(最小肉厚T1)以下に形成することが可能となる。
【0076】
上記したフレーム110は、予め、所定の外形状を金型で成形しておき、その後、開口などを形成することが好ましい。すなわち、フレーム110を構成する複数枚のプリプレグを所定形状に裁断し、これを複数層となるように重ね合わせて、所定の形状(フレームの傾斜形状、肉厚変化など)にセットする。この場合、取付部109の下端面109aについては、図4及び図6に示すように、竿先側に向けて釣糸が抜け易いように傾斜させておくことが好ましい。また、金型内において、重ね合わせるプリプレグの枚数(層数)や、個々のプリプレグの構成については特に限定されることはないが、フレーム110に屈曲したり湾曲する部分が存在する場合、そのような部分には補強層を配置しておくことが好ましい。
【0077】
複数枚積層されるプリプレグの少なくとも一部には、強化繊維がフレームの延出方向(矢印で示す上下方向)に指向しているものを用いるのが好ましく、このようなプリプレグが積層されて金型の所定位置にセットされる。なお、積層されるプリプレグは、一度に全体を重ね合わせた状態で金型内にセットしても良いし、1枚ずつセットする等、複数回に分けて積層しても良い。このように複数回に分けることにより、強化繊維の動きを少なくして、精度良く所定の位置にセットすることができる。また、金型の型割りの方向については、上下方向(フレームの厚み方向)、左右方向(フレームの幅方向)にする等、任意の形態にすることが可能である。さらに、リング保持部105には、予めガイドリング120を位置合わせしておき、ガイドリング120が装着されたフレーム110を同時成形するようにしても良い。
【0078】
そして、上記のように、複数枚のプリプレグを金型内にセットした後、型締めし、加圧、加熱してマトリックス樹脂を硬化した後、成形品を金型から取り出す。
次に、成形品から所定の形状となるようにフレームを切り出す。上記したように、プリプレグは、加熱硬化処理後に、所定の形状となった板状体となっているため、プレス加工による切り出し、液体(ウォータージェット等)による切り出し、或いは刃具(エンドミル等)による切り出し等、任意の方法を採用することで、1枚の成形品から複数のフレーム110を切り出すことが可能となり、軽量で高強度の釣糸ガイドを効率良く製造することが可能となる。
【0079】
次に、必要に応じて細部加工を施す。この細部加工は、例えば、フレーム110のバリ除去、リング保持部105に対する長孔105aの形成、取付部109に対する孔109b及び回り止め凹部109cの形成等が該当する。なお、前記支脚部107は、図5に示すように板状となっているが、開口を形成しても良い。
【0080】
次に、フレーム110の表面処理を施す。例えば、表面研磨(バレル研磨等)や必要に応じて表面の光沢が得られる程度に表面処理を施す。この研磨の程度については、釣糸ガイドのサイズや形状、材質特性などによって研磨剤や研磨時間などを任意に調整することが可能である。このような表面処理を施すことにより、強化繊維を切断することなく、フレームを研磨することが可能となり、強度の安定化が図れると共に、外観の優れた釣糸ガイドとすることが可能となる。なお、このような研磨工程を施すに際しては、フレーム110の表面に強化繊維が一部露出しマトリックス樹脂が一部残るように研磨することが好ましい。こうすることで、研磨表面の光沢をより一層向上することが可能となる。また、必要に応じて、フレームの全体又は一部分に被膜を形成しても良い。例えば、外観向上やフレーム本体の保護のために塗装を行なうことや、金属やセラミックスを蒸着等しても良い。
【0081】
そして、上記したように形成されたフレーム110に対しては、図6に示すように、リング保持部105に形成された開口105aにガイドリング120を取り付けると共に、取付部109に形成された孔109bに固定筒部115を嵌入することで、釣糸ガイドが形成される。
【0082】
以上のように、形成される釣糸ガイドの形状に応じて、その製造方法については適宜、変更することが可能であり、特定の製造方法に限定されることはない。また、上述した製造方法以外にも、例えば、金型でフレームを成形する場合、金型に対して長繊維と合成樹脂を同時に注入したり、先に金型に強化繊維を配置しておき、後から合成樹脂を注入するような方法であっても良い。また、合成樹脂を含浸した強化繊維束(繊維束を糸条体にしたり、網物・組紐状にしたもの)を用い、これを金型に形成された溝部分に設置して形成するような構成であっても良い。
【0083】
また、繊維強化合成樹脂材における強化繊維の種類や弾性率、樹脂含浸量、肉厚、繊維径(繊維束の径)などの構成、及び積層状態等については、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 釣糸ガイド
5,105 リング保持部
7,107 支脚部
9,109 取付部
10,110 フレーム
15,115 固定筒部
R1 竿杆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣糸を挿通させるリング保持部と竿杆表面から釣糸を離間させる支脚部と取付部とを有するフレームと、前記竿杆に対してスライド可能で所定の位置に係止可能であり、前記取付部と一体化される固定筒部と、を有する釣糸ガイドであって、
前記リング保持部、支脚部、取付部と固定筒部を一体化した部位の内、少なくともいずれか一つの部位に、三方向以上の異なる方向に強化繊維を指向させた繊維強化合成樹脂を配設したことを特徴とする釣糸ガイド。
【請求項2】
釣糸を挿通させるリング保持部と竿杆表面から釣糸を離間させる支脚部と取付部とを有するフレームと、前記竿杆に対してスライド可能で所定の位置に係止可能であり、前記取付部と一体化される固定筒部と、を有する釣糸ガイドであって、
前記固定筒部は、繊維強化合成樹脂で形成されると共に、固定筒部の径方向肉厚を、前記支脚部における肉厚以下に形成したことを特徴とする釣糸ガイド。
【請求項3】
釣糸を挿通させるリング保持部と竿杆表面から釣糸を離間させる支脚部と取付部とを有するフレームと、前記竿杆に対してスライド可能で所定の位置に係止可能であり、前記取付部と一体化される固定筒部と、を有する釣糸ガイドであって、
前記リング保持部、支脚部、固定筒部は、それぞれ複数の異なる方向に強化繊維を指向させた繊維強化合成樹脂で形成されていることを特徴とする釣糸ガイド。
【請求項4】
前記固定筒部は、繊維強化合成樹脂で形成され、その内側面は、強化繊維を露出状、又は突出状に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項5】
前記固定筒部は、繊維強化合成樹脂で形成されると共に、その内側面の強化繊維は、前記固定筒部の軸心方向に対して傾斜方向、交差方向、軸長方向のいずれかの方向に指向していることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項6】
前記内側面の強化繊維は、前記固定筒部の軸心方向に対して傾斜方向に指向すると共に、強化繊維を引き揃え状に配設していることを特徴とする請求項5に記載の釣糸ガイド。
【請求項7】
前記固定筒部の内側面に、1)螺旋状の凹凸を有する、2)交差状の凹凸を有する、3)網目状の凹凸を有する、4)筋目状の凹凸を有する、5)点状凹部又は点状凸部を有する、の内、少なくとも1つの特徴を備えた微小凹凸を形成したことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項8】
前記微小凹凸は、凹凸の高さが100μm未満であることを特徴とする請求項7に記載の釣糸ガイド。
【請求項9】
前記請求項1から8のいずれか1項に記載の釣糸ガイドを装着した釣竿であって、前記釣糸ガイドを所定の位置に係止可能にする竿杆の外側面に、1)螺旋状の凹凸を有する、2)交差状の凹凸を有する、3)網目状の凹凸を有する、4)筋目状の凹凸を有する、5)点状凹部又は点状凸部を有する、の内、少なくとも1つの特徴を備えた微小凹凸を形成したことを特徴とする釣竿。
【請求項10】
前記釣糸ガイドを係止する竿杆の外側面は、強化繊維を露出状、又は突出状に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の釣竿。
【請求項11】
前記釣糸ガイドを係止する竿杆の外側面の強化繊維は、竿杆の軸心方向に対して傾斜方向、交差方向、軸長方向のいずれかの方向に指向していることを特徴とする請求項9又は10に記載の釣竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−70698(P2012−70698A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219179(P2010−219179)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】