釣糸ガイド
【課題】重量が軽く、比強度のみならず、撓み性の面において優れる釣糸ガイドを提供する。
【解決手段】竿管2に固定される固定部13と、釣糸が挿通されるガイドリング12が取り付けられたリング保持部13と、固定部とリング保持部との間に介在されてそれらを連結する支脚部15とを具備したフレーム11を有する釣糸ガイド10である。フレームは、強化繊維に樹脂を含浸させた繊維強化樹脂層を3層以上積層して一体に形成されている。
【解決手段】竿管2に固定される固定部13と、釣糸が挿通されるガイドリング12が取り付けられたリング保持部13と、固定部とリング保持部との間に介在されてそれらを連結する支脚部15とを具備したフレーム11を有する釣糸ガイド10である。フレームは、強化繊維に樹脂を含浸させた繊維強化樹脂層を3層以上積層して一体に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は釣糸ガイドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
釣竿には、釣糸を通すための釣糸ガイドが取り付けられたものがある。従来、釣糸ガイドは、ステンレスやチタンなどの金属製の板材料にプレス等の機械加工を施すことにより形成されているのが一般的である。
例えば、下記の特許文献1に記載の釣糸ガイドは、金属製の一枚の板材にプレス加工を施してフレーム形状に打ち抜き、さらにこのフレーム形状に絞り加工並びに曲げ加工を施すことで、ガイドリングを保持するリング保持部と、リング保持部に接続された支脚と、リング保持部を支脚を介して竿管に取り付ける取付足を有する、所定の立体形状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−340661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された釣糸ガイドにあっては、材料が金属であるため重量が重いという問題があった。また、比強度、比剛性の面で、材料として金属を用いている限界があり、釣竿としてのトータル的な性能向上を図る上で大きな障害となっていた。
また、前記釣糸ガイドが金属製フレームのため、硬くて強いフレームにできる反面、撓み性を確保できず、釣糸に加わる張力がガイドリングを介して直接竿管に伝わり、結果的に、竿管に過大な負荷や衝撃が加わることとなって、竿管を傷つけ易く、破損し易いという問題があった。
【0005】
本発明は、このような背景の下になされたもので、重量が軽く、比強度のみならず、撓み性の面において優れる釣糸ガイドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の釣糸ガイドは、竿管に固定される固定部と、釣糸が挿通されるガイドリングが取り付けられたリング保持部と、前記固定部と前記リング保持部との間に介在されてそれらを連結する支脚部とを具備したフレームを有する釣糸ガイドであって、前記フレームは、前記固定部と前記支脚部と前記リング保持部とが、強化繊維によって強化された樹脂により一体に形成されていることを特徴とする。
前記釣糸ガイドによれば、固定部と支脚部とリング保持部を具備するフレームが強化繊維によって強化された樹脂により一体に形成されているから、従来知られているステンレス、チタン等の金属製のフレームを用いる場合に比べて、大幅に軽量化が図れると同時に比強度を高めることができる。また、固定部とリング保持部との間に支脚部を有するフレームを用いていること、および該フレームが強化繊維によって強化された樹脂により一体に形成されていることが相俟って、強化繊維が有する剛性と撓み性を十分生かすことができ、高強度と撓み性の双方が確保できる釣糸ガイドを提供できる。
【0007】
前記フレームは、強化繊維に樹脂を含浸させた繊維強化樹脂層を3層以上積層して一体に形成されていることが好ましい。
この場合、繊維強化樹脂層を単に重ねるという簡便な方法で、FRP構造の釣糸ガイドを製造でき、しかも品質の均一化を図ることができる。また、強化繊維の向きも多方向となるように設定することができ、この点で強度をより高めることが可能である。
【0008】
前記支脚部は、該支脚部が屈曲部や湾曲部を有する場合それらを取り除くように平坦状に延ばされた仮想平坦面において前記固定部の左右幅方向の中心と前記リング保持部の中心とを結ぶ中心線に対して所定角度傾斜する前記強化繊維を有することが好ましい。
この場合、補強繊維をリング保持部の中心と固定部の左右幅方向の中心を結ぶ中心線に沿わせて配置するのに比べ、支脚部に曲げ荷重が加わる際に、支脚部中の強化繊維にはその繊維中心に沿って斜めに荷重が作用する。この結果、撓み性をより確保することができる。
【0009】
前記支脚部の細幅部には、前記強化繊維の方向を前記細幅部の長手方向に沿う方向に配設した層を有することが好ましい。
この場合、比較的強度が不足する細幅部を、細幅部の長手方向に沿う方向に配設した強化繊維によって補強することができ、必要箇所の効率良い補強が行える。
【0010】
前記リング保持部は、3方向以上の多方向に延びるように配設された強化繊維を有することが好ましい。
リング保持部には、ガイドリングを介して多方向の荷重が加わり易い。この場合、3方向以上の多方向に延びる強化繊維を有することにより、ガイドリングを介して加わる多方向の荷重に、リング保持部を十分対抗させることができる。また、多方向の荷重が加わる際にリング保持部の変形を抑えられるので、ガイドリングの保持力が向上する。
【0011】
前記リング保持部は、該リング保持部の円周方向に沿って延びるように配設された強化繊維を有することが好ましい。
この場合、リング保持部の円周方向に沿って延びるように配設された強化繊維により、ガイドリングがセットされる部分の変形を抑えることができる。このため、ガイドリングの保持力が向上する。
【0012】
前記支脚部は屈曲部を有し、該屈曲部の厚さが前記リング保持部の厚さよりも厚く設定されていることが好ましい。
この場合、最も大きな荷重が加わり易い屈曲部を補強することで、効率の良い補強ができる。また、ガイドリングにより補強されるリング保持部との間で良好な剛性バランスが確保され、釣糸ガイドの強度をバランスよく向上させることができる。
【0013】
前記支脚部または支脚部に形成された屈曲部のうち少なくとも一方は、前記固定部と前記リング保持部の双方に直交する基準面に沿った曲げ剛性が、前記リング保持部の前記基準面に沿った曲げ剛性よりも大きく設定されていることが好ましい。
固定部は竿管によって、またリング保持部はガイドリングによってそれぞれ補強される。このため、最も大きな荷重を受けるのは支脚部であり、また支脚部の中でも屈曲部に応力が集中する。このように比較的大きな荷重が加わる支脚部や応力が集中し易い支脚部屈曲部の曲げ剛性を高めているので、支脚部や支脚部の屈曲部が損傷したり破損するのを防止できる。また、厚さを厚くする等曲げ剛性を高めるための手段を、フレーム全体に施すのに比べ、軽量化が図れる。つまり、釣糸ガイド全体の高強度化と軽量化を同時に果たすことができる。
【0014】
前記支脚部は補強部を有していることが好ましい。
この場合、比較的大きな荷重が加わる支脚部を補強することで、前述と同様、釣糸ガイド全体の高強度化と軽量化を同時に果たすことができる。
【0015】
前記支脚部は、繊維強化樹脂層の最外層に強化繊維または強化繊維層の剥離を防止する剥離防止層を有していることが好ましい。
この場合、比較的大きな荷重がかかり損傷し易い支脚部から、強化繊維の剥離または強化繊維層の剥離の進行を防止でき、強度の面でもまた外観の面でも優れる釣糸ガイドを提供できる。
【0016】
前記固定部は、前記固定部と前記リング保持部の双方に直交する基準面に沿った曲げ剛性が、前記支脚部の前記基準面に沿った曲げ剛性よりも小さく設定されていることが好ましい。
固定部は竿管によって補強されるため、高い曲げ剛性は不要である。一方、支脚部は強い曲げ荷重が加わるにも拘わらず、竿管等の他の部材によって補強されていない。このため、固定部に比べて高い曲げ剛性が必要な支脚部を補強することで、釣糸ガイドとしての強度をバランス良く向上させるとともに、軽量化を図ることができる。
【0017】
前記固定部は、平均厚さが前記リング保持部の平均厚さよりも厚く設定されていることが好ましい。
剛性のあるガイドリングによって補強されるリング保持部は、竿管によって補強される固定部により強く補強される。このため、固定部の平均厚さをリング保持部の平均厚さよりも厚くすることで、釣糸ガイドとしての強度をバランス良く向上させるとともに、軽量化が可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、重量が軽く、比強度、撓み性の面において優れる釣糸ガイドを得ることができ、釣竿としてのトータル的な性能向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態の釣糸ガイドを備える釣竿を示す側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の釣糸ガイドを釣竿に取り付けた状態を示す正面図である。
【図3】釣糸ガイドの断面図である。
【図4】釣糸ガイドの正面図である。
【図5】図3の要部の拡大図である。
【図6】釣糸ガイドのフレームの支脚部における強化繊維の配列状態を示す正面図である。
【図7】釣糸ガイドのフレームのプリプレグの積層状態を示すもので、(a)は全体の断面図、(b)〜(g)は強化繊維の配向を示す平面図である。
【図8】釣糸ガイドの製造方法を説明する図であって、金型を用いてプレス成形する状態を示す断面図である。
【図9】釣糸ガイドの製造方法を説明する図であって、金型を用いてプレス成形された板状体からフレームを切り出す状態を示すもので(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図10】本発明の釣糸ガイドの第2実施形態を示す正面図である。
【図11】本発明の釣糸ガイドの第3実施形態を示す側面図である。
【図12】本発明の釣糸ガイドの第4実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
本発明の釣糸ガイドの第1実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。
図1は本発明の第1実施形態の釣糸ガイドを備える釣竿を示す側面図である。図1に示すように、釣竿1は竿管2にその長さ方向所定間隔置きに釣糸ガイド10及びトップガイド10´が固定されている。
【0021】
図2は本発明の第1実施形態の釣糸ガイドが竿管2に取り付けられた状態を示す正面図、図3は釣糸ガイドの断面図、図4は釣糸ガイドの正面図、図5は図3の要部の拡大図である。
釣糸ガイド10は、フレーム11と、フレーム11により支持されて釣糸が挿通されるガイドリング12により構成される。フレーム11は、竿管2に固定される固定部13と、側方から見て固定部13から離間した位置に配設されるとともにガイドリング12を保持するリング保持部14と、固定部13とリング保持部14との間に介在されてそれらを連結する支脚部15とを備える。
なお、固定部13は竿管2に当接されて図5においてXで示す領域に外側から糸材を巻きつけられた後、糸止剤や接着剤を塗布されることで、竿管2に固定されるが、図2においては、糸材並びに接着剤の図示は省略してある。
【0022】
図3に示すように、固定部13とリング保持部14は、適宜間隔離間されて側面視において互いに所定の傾斜角度θaをなすように配設される。支脚部15は、側面視において固定部13に対し所定の傾斜角度θbをなすように連結される第1屈曲部15A、リング保持部14に対し所定の傾斜角度θcをなすように連結される第2屈曲部15B、第1屈曲部15Aと第2屈曲部15Bとの間に介在される平坦部15Cを備える。所定の傾斜角度θa、θb、θcは使用目的や後述するフレーム11内に介在される強化繊維の種類や直径等によってそれぞれ適宜設定される。ただし、第1屈曲部15Aの傾斜角度θbは、第2屈曲部15Bの傾斜角度θcよりも大きな値に設定するのが好ましい。例えば、傾斜角度θaは35°〜100°、傾斜角度θbは30°〜90°、傾斜角度θcは5°〜60°の範囲内で設定される。
また、平坦部15Cは、必ずしも平坦である必要はなく、必要に応じて、第2屈曲部に代えて、または、第1、2屈曲部15A、15Bと区別できる程度の小さな曲率をもって湾曲していてもよい。
【0023】
図6はフレーム11の支脚部15における最外層の繊維強化プリプレグ(成形後は、繊維強化樹脂層、以下「プリプレグ」という)における強化繊維Rの配列状態を示す正面図、図7はフレーム11におけるプリプレグP1〜P4の積層状態を示すもので、(a)は全体の断面図、(b)〜(g)はプリプレグ中の強化繊維の配向を示す図である。これらの図にも示すように、フレーム11は、強化繊維Rに樹脂を含浸させたプリプレグP1〜P4を3層以上(例えば5層〜20層程度)積層して一体に形成されている。
【0024】
この実施形態においてフレーム11は、中央の中立軸に配設される中央のプリプレグP1、中央のプリプレグP1の外方に向かってそれぞれ両側に配設される中間層のプリプレグP2、P3、最も外方に配設される最外層のプリプレグP4を備え、合計7層のプリプレグが積層されて形成されている。
【0025】
プリプレグP1〜P4用のマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が用いられる。具体的には、エポキシ樹脂や、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂等が用いられる。
プリプレグP1〜P4用の強化繊維Rとしては、引張弾性率3.92×1011(N/m2)以下(例えば、1.96×1011〜3.92×1011(N/m2))の高強度繊維を用いることが好ましいが、特に限定するものではなく、任意の強化繊維を使用できる。具体的には、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、金属繊維、合成樹脂繊維等が用いられる。
【0026】
強化繊維Rの方向について支脚部15を例にあげて説明すると、中央のプリプレグP1中には、図4にも示すように、固定部13の左右幅方向の中心とリング保持部14の中心とを結ぶ中心線L(図4、図7(b)〜(e)参照)に対して平行に配設される一方向引揃え層の強化繊維Rが用いられ、中間層のプリプレグP2中には、前記中心線Lに対して右斜めに傾斜する一方向引揃え層の強化繊維Rが用いられ(図7(c))、中間層のプリプレグP3中には、前記中心線Lに対して左斜めに傾斜する一方向引揃え層の強化繊維Rが用いられ(図7(d))、最外層のプリプレグP4中には、前記中心線Lに対してそれぞれ平行と直交する繊布層の強化繊維が用いられる(図7(e))。フレーム11を構成する他の部分である固定部13とリング保持部14についても同様である。
【0027】
中間層のプリプレグP2の右斜め方向の傾斜角度θd並びに中間層のプリプレグP3の左斜め方向の傾斜角度θeはそれぞれ例えば10°〜60°の範囲内で設定される。強化繊維の繊布層の例としては、平織、朱子織、三軸織等が挙げられる。また、織成したものであってもよい。また、織布の網目寸法wは、配置される部分の最小幅、例えば支脚部15の二股に分かれた細幅部15E(後述する)の幅寸法よりも小になるように設定される。
なお、これはあくまで例示であり、強化繊維Rの方向及び種類については、必要に応じて適宜変更可能である。例えば、中央のプリプレグP1中に、固定部13の左右幅方向の中心とリング保持部14の中心とを結ぶ中心線Lに対して右傾斜あるいは左傾斜する一方向引揃え層の強化繊維Rを用いても良い。また、中央のプリプレグP1、中間層のプリプレグP3、最外層のプリプレグP4のいずれにも繊布層の強化繊維を用いても良い。この場合、プリプレグ中の相互の強化繊維の向きを変えるように積層するのが好ましい。
【0028】
また、中央のプリプレグP1および中間層のプリプレグP2、P3の中の強化繊維の弾性率は、最外層のプリプレグP4中の強化繊維Rの弾性率よりも高く設定するのが好ましい。これは、繊維強化プラスチックとして、高強度と柔軟性の双方を確保するためである。
【0029】
プリプレグP1〜P4の樹脂含浸量は、15〜60重量パーセントに設定するのが好ましく、中央のプリプレグP1、中間層のプリプレグP2、P3、最外層のプリプレグP4と、外側に向かうに従い次第に樹脂含浸量を増大させるのが好ましい。この理由は、撓み性が向上する、また外層からの剥離や破損を防止できるためである。
【0030】
固定部13は、全体が板状でかつ先端部に厚さが次第に小になる先細り部13aが形成されている。固定部13の竿管2への当接面13bは、必要に応じて竿管2の外周面に対応するように凹曲状に形成しても良い。
また、固定部13は、平均厚さT1がリング保持部14の平均厚さT2よりも厚く設定されていることが好ましいが、同じ厚さにするなど、任意に設定できる。
【0031】
リング保持部14の中央には、円孔14aが形成され、ここには金属あるいはセラミックスからなるガイドリング12が嵌め込まれる。ガイドリング12のリング保持部14への固定は、圧入や接着の他、円孔14aの内周面に、金属やセラミックスの材料を蒸着やコーティングによって取り付けることでガイドリング12を直接形成してもよい。ガイドリング12は、片側(図3において左側)が外方に拡がるように拡径されている。これは、ガイドリングの抜け止めのため、並びに釣糸を損傷させないよう予めガイドリングの内周部分にアールを付けるためである。
【0032】
リング保持部14は、前述したようにそれぞれ異なる方向に延びる強化繊維Rを有するプリプレグP1〜P4を積層して形成されるため、結局3方向以上の多方向に配設された強化繊維Rを有する。なお、リング保持部14には、必要に応じて、リング保持部14の円周方向に沿って強化繊維を配設してもよい。このような構成にすれば、ガイドリング12に対してより強い保持力を確保できる。
【0033】
支脚部15は、固定部13との連結部である第1屈曲部15Aが一枚の湾曲板状に形成されているが、ここから二股に分かれ外方へ広がりながらそれらの先端がそれぞれリング保持部14に連結されている。つまり、第1屈曲部15Aは、単に厚さ方向に屈曲されているに止まらず、幅方向に沿って外方へも広がって二股に分かれている。また、平坦部15Cの中央には、肉抜きされた開口15Dが形成され、開口15Dの左右両側には細幅部15E、15Eがそれぞれ形成されている。また、第1屈曲部15Aでは、幅と厚さの比(幅/厚さ)が2〜9程度に設定されている。
【0034】
ここで、支脚部の細幅部15E、15Eには、強化繊維の方向を細幅部15E、15Eの長手方向Y、Y´に沿う方向に配設した層を有する。この層は、一層に限られることなく、複数層であってもよい。また、この層の下層側あるいは上層側に、前記した固定部13の左右幅方向の中心とリング保持部14の中心とを結ぶ中心線Lに対して平行に配設される一方向引揃え層の強化繊維Rを有する層や、前記中心線Lに対してそれぞれ平行と直交する繊布層の強化繊維を有する層を備える場合もある。
【0035】
また、ここでいう、長手方向Y、Y´に沿う方向とは、長手方向Y、Y´に対しその方向あるいはそれと平行をなす方向へ真っ直ぐに延びる方向を含むのは勿論であるが、それに限られることなく、長手方向Y、Y´に対して±5度の角度をもって、より広くは±10度の角度をもって延びる方向を含むものとする。また、細幅部15E、15Eにおいて、強化繊維の長さは、細幅部15E、15Eの幅寸法mの2倍以上、より好ましくは3倍以上の長さを有している。なお、この実施形態の支脚部15では、中央の開口15Dの両側にそれぞれ細幅部15E、15Eが形成されているが、開口15Dを有しない場合、細幅部15Eは、支脚部において幅が最も狭小とされる部分をいう。
【0036】
支脚部15は、前述したようにそれぞれ異なる方向に延びる強化繊維Rを有するプリプレグP1〜P4を積層して形成されるため、結局、両端の第1、第2屈曲部15A、15Bを取り除くように平坦状に延ばされた仮想平坦面(実際には、平坦部15Cと同じ面)において固定部13の左右幅方向の中心とリング保持部14の中心とを結ぶ中心線Lに対して所定の角度傾斜する強化繊維Rを有している(図7(c)、(d)参照)。なお、この実施形態では、支脚部15として、両端に屈曲部と中央に平坦部15Cを備える例を挙げているが、屈曲部のほかあるいは屈曲部とともに湾曲部を有する場合には、それら屈曲部や湾曲部を取り除くように平坦状に延ばした面を、ここでは仮想平坦面と呼ぶ。
また、支脚部15の第1、第2屈曲部の厚さT3は、平坦部15Cの厚さT4よりも厚く設定されている。また、平坦部15Cの厚さT4は、固定部13の平均厚さT1よりも厚く設定されている。
【0037】
固定部13、リング保持部14、支脚部15の相互の比重は、固定部13が最も大きく、支脚部15、リング保持部14の順で小さく設定されているのが好ましい。竿管2の軸心から遠ざかるにつれて比重が小さくなるのが理想だからである。また、フレーム11全体としては2.5以下の比重とするのが好ましく、0.7〜1.7の比重とするのがより好ましい。
【0038】
支脚部15または支脚部15に形成された第1、第2屈曲部15A、15Bのうち少なくとも一つは、固定部13とリング保持部14の双方に直交する基準面Z(図3における紙面に平行な面)に沿った方向(図3のF、F´の矢印方向参照)の曲げ剛性が、リング保持部14の前記基準面Zに沿った曲げ剛性よりも大きくなるように設定されている。
また、支脚部15または支脚部15に形成された第1、第2屈曲部15A、15Bのうち少なくとも一つは、前記基準面Zに沿った方向の曲げ剛性が、釣糸ガイド10を固定した位置の竿管2aの曲げ剛性より大きくなるように設定されている。
さらに、固定部13は、前記基準面Zに沿った方向の曲げ剛性が、支脚部15の前記基準面Zに沿った方向の曲げ剛性よりも小さくなるように設定されている。
【0039】
曲げ剛性を大きくする手段としては、曲げる方向に直交する断面二次モーメントを大きくすればよく、例えば、中立軸に直交する断面積を大きく設定する。あるいは、曲げる方向に対する肉厚を厚くするという手段がある。その他、強化繊維の繊維量を多くしてもよい。さらに、強化繊維の混入比率を高くする等の手段もある。この実施形態では、肉厚を厚くしているが、これに限られることなく、その他の手段の一つを採用しても良く、さらに前述の手段のうち2つ以上を併用してもよい。
【0040】
上述した第1の実施形態の釣糸ガイドの製造方法について説明する。
まず、中央のプリプレグP1、中間層のプリプレグP2、P3、最外層のプリプレグP4となる、それぞれのプリプレグを所定形状、例えば矩形状に切断する。
切断したプリプレグを、それらの内部に配設された強化繊維の延びる方向がそれぞれ所定の方向となるように重ね合わせる(図7(b)〜(e)参照)。
【0041】
重ね合わせる枚数(層数)は、プリプレグの種類や重ねる条件などにより任意に調整する。例えば、一度に全てのプリプレグを重ねてセットすることも可能であるし、また、プリプレグを予めグループ分けして重ね合わせておき、最後にそれら重ね合わせたプリプレグ同士をさらに重ね合わせてセットすることも可能である。積層するプリプレグの枚数が増えると、精度良くセットすることが可能であるため、後者の方が有利である。
【0042】
重ね合わせたプリプレグP1〜P4を、表面に離型材をコーティングした金型の所定位置にセットする。なお、プリプレグP1〜P4を、1枚ずつ金型に直接セットすることも可能である。
図8は金型20A、20BにプリプレグP1〜P4をセットし所定形状となるよう圧力をかけて保持した状態を示す断面図である。この図示例では、上下に型割りした金型20A、20Bを用いているので、重ね合わせたプリプレグを、まず、下型20Bにセットする。なお、型割りの方向は、図8に示したように、必ずしも上下に限られることなく、左右方向や傾斜方向でも良く、任意に変更可能である。
【0043】
このようにプリプレグP1〜P4を下型20Bにセットした後、上型20Aを下降させて型締め固定し、プリプレグP1〜P4を加圧しつつ加熱して成形する。
このとき、第1、第2屈曲部15A、15Bとなる部分を含め、成形後のフレーム11のなす角度を有するよう所定形状となるように保持する。こうすることで、成形後の内部残留応力の発生を防止でき、強度の向上並びに安定性の向上を図ることができる。
【0044】
また、積層したプリプレグを金型で押さえて加熱硬化させるときに、第1、第2屈曲部15A、15Bとなる部分を他の部分(固定部13やリング保持部14となる部分)より強い圧力をかけて成形すれば、それら第1、第2屈曲部15A、15Bとなる部分にボイドが生じるのを防止でき、所要部分の高強度化並びに安定化を図ることができる。加えて、第1、第2屈曲部15A、15Bとなる部分に別のプリプレグを積層して加圧成形することで、屈曲部となる部分の繊維比率を他の部分よりも高くすることができ、同屈曲部となる部分をより強化できる。
なお、第1、第2屈曲部15A、15Bとなる部分の肉厚を、他の部分よりも厚くなるように金型で予め設定しておくのが好ましい。
その後、金型20A、20Bを開き、加熱硬化したプリプレグP1〜P4からなる、所定箇所を屈曲された板状の成形品22を金型から取り出す。
成形品22は、1.2mm〜3.0mm程度の厚さとされているが、より好ましくは、1.2mm〜2.6mmの範囲内とする。
ここでは、成形品22を、所要箇所を屈曲された板状としているが、これに限られることなく、積層厚さを位置によって変化する形状であったり、側面視でT字状あるいは逆Y字状をなすように、板状部分が複数方向に分かれて延びるような形状としてもよい。
【0045】
図9は板状の成形品22からフレーム11を切り出す状態を示す正面図である。この図に示すように、板状の成形品22からフレーム11を切り出す。フレーム11の切り出しには、プレス加工を用いる方法、ウオータージェット等のようにノズルの先端から液体を噴射させる方法、エンドミル等の刃物を用いる方法等がある。
フレーム11の切り出し加工は、フレーム11の外形状の形成、リング保持部の円孔14aの形成、および支脚部の開口15Dの形成の3つの工程がある。これらの工程は同時に加工を行うのが好ましいが、別々に加工を行っても良い。
【0046】
次いで、必要に応じて、細部加工を行う。例えば、固定部13の竿管2への当接面13bを竿管2に載置し易いように曲面状に形成したり、糸巻き、糸止めが行い易いように固定部13の端部の角を研磨してアールを形成したりする。
【0047】
続いて、バレル加工を施し、フレーム11の表面からバリを除去するとともに、表面の光沢が得られる程度に仕上げ研磨する。研磨の程度は、釣糸ガイド10のサイズや形状、材質特性などによって、研磨剤を適宜選択したり研磨時間を変えることで、任意に調整することができる。
このとき、フレーム11の表面に、強化繊維Rが一部露出するとともにマトリックス樹脂が一部残るように研磨することが好ましい。こうすることで、フレーム11の研磨表面の光沢をより一層際立たせることができる。
【0048】
次に、必要に応じて、フレーム11の全体または一部分に被覆を形成するための表面処理を行う。例えば、外観向上やフレーム自体の保護のため塗装やめっきを施しても良く、また、金属やセラミックス等を蒸着してもよい。
次に、リング保持部14にガイドリング12を取り付ける。ガイドリング12の取り付け方法としては、圧入や接着剤を用いたりする方法、カーリングを施す方法等がある。なお、ガイドリング12を取り付けた後に、前記バレル加工や前記表面処理を行っても良い。
以上の工程を経ることによって、図3に示すような釣糸ガイド10を製造することができる。
【0049】
なお、前記実施形態では、図7(b)〜(e)に示すように、固定部13の左右幅方向の中心とリング保持部14の中心とを結ぶ中心線Lに対して平行に配設される一方向引揃え層の強化繊維Rを有するプリプレグP1、中心線Lに対して右斜めに傾斜する一方向引揃え層の強化繊維Rを有するプリプレグP2、中心線Lに対して左斜めに傾斜する一方向引揃え層の強化繊維Rを有するプリプレグP3、中心線Lに対してそれぞれ平行と直交する繊布層の強化繊維を有するプリプレグP4を用いているが、これに限られることなく、図7(f)に示すように、中心線Lに対して右斜めに傾斜する一方向引揃え層の強化繊維Rと左斜めに傾斜する一方向引揃え層の強化繊維Rを重ねて有するプリプレグP5や、図7(g)に示すように、中心線Lに対して所定角度(15度〜75度、より好ましくは30度〜60度)傾斜する繊布層の強化繊維を有するプリプレグP6を用いても良い。
また、前記実施形態では、プリプレグを重ねることで強化繊維を積層させたが、これに限られることなく、フィラメントワインデング法によって、層の一部または全部に強化繊維を積層しても良い。
【0050】
次に、前記構成の釣糸ガイドの作用効果について説明する。
前記釣糸ガイド10は、固定部13と支脚部15とリング保持部14を具備するフレーム11が強化繊維によって強化された樹脂により一体に形成されているから、従来知られているステンレス、チタン等の金属製のフレームを用いたものに比べて、大幅に軽量化が図れると同時に、比強度が向上する。また、固定部13とリング保持部14とが離間され、それらの間に支脚部15が介在されたフレーム11を用いていること、およびフレーム11が強化繊維によって強化された樹脂により一体に形成されていることが相俟って、強化繊維が有する剛性と撓み性を十分生かすことができ、従来の金属製ガイドでは得られなかった強度と撓み性の双方が確保される。
【0051】
また、フレーム11が、強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグP1〜P4を3層以上積層して一体に形成する構成になっており、このような構成であると、単にプリプレグを重ねるという簡便な方法で、FRP構造の釣糸ガイドを製造することができる。また、予めプリプレグの強化繊維相互の間隔や配向を管理するだけで、フレーム11の品質の均一化が図れる。また、強化繊維Rの向きも多方向となるように設定することができ、この点で、より一層強度向上を図ることができる。
【0052】
支脚部15において内部の強化繊維Rは、前記平坦部15Cに沿う仮想平坦面において固定部の左右幅方向の中心とリング保持部の中心とを結ぶ中心線Lに対して所定角度傾斜θd、θe傾斜して配設されているので、例えば、前記中心線Lに沿って延びる強化繊維しか有さないものに比べ、撓み性と高強度を確保し易い。つまり、釣糸に張力が加わりリング保持部14を介して支脚部15に例えば図3においてF、F´方向の曲げ荷重が加わる際に、中心線Lに対して所定の傾斜角度θd、θe傾斜して配設される、支脚部中の強化繊維Rにはその繊維中心線に沿って斜め方向の荷重が作用する。このため、強化繊維Rに強い荷重が加わるのを回避でき、結果的に撓み性を確保することができる。
また、支脚部15の細幅部15Eには、強化繊維Rの方向を細幅部の長手方向Y、Y´に沿う方向に配設した層を有しているから、比較的強度が不足する細幅部15Eを、細幅部の長手方向Y、Y´に沿う方向に配設した強化繊維によって補強することができ、必要箇所の効率良い補強が行える。
【0053】
また、リング保持部14には、取り付けられるガイドリング12を介して多方向の荷重が加わり易い。ところで、リング保持部14では、内部の強化繊維Rが、3方向以上の多方向(この実施形態では4方向)に延びるように配設されており、このため、ガイドリング12を介して加わる多方向の荷重に十分対抗することができる。また、リング保持部14が多方向へ変形するのを抑えられるので、ガイドリング12に対する保持力も向上する。
【0054】
なお、リング保持部内部の強化繊維Rを、3方向以上の多方向に延びるように配設するものとしては、この実施形態に示す例に限られることなく、360度を強化繊維の配向数で等分割に配設しても良く、あるいは支脚部15との連結部に沿った方向の強化繊維の比率を高くするように配設してもよい。
【0055】
また、リング保持部14には、リング保持部14の円周方向に沿って延びるように強化繊維を配設してもよい。この場合、円周方向に沿って延びる強化繊維によって、ガイドリングがセットされる部分である円孔14aの変形を抑えることができ、前記と同様、ガイドリング12に対する保持力を向上させることができる。
【0056】
支脚部15には第1、第2屈曲部15A、15Bが設けられ、これら屈曲部15A、15Bの厚さT3がリング保持部14の厚さT2よりも厚く設定されている。最も大きな荷重が加わる屈曲部15A、15Bの厚さを厚くして補強することで、効率の良い補強が行える。また、ガイドリング12により補強されるリング保持部14との間で良好な剛性バランスが確保され、釣糸ガイド10の強度をバランスよく向上させることができる。
【0057】
固定部13は竿管2によって、またリング保持部14はガイドリング12によってそれぞれ補強される。このため、最も大きな荷重が加わるのは支脚部15であり、支脚部15の中でも屈曲部15A、15Bが最も大きな荷重が加わる。このように荷重が加わり易い支脚部15や支脚部の屈曲部15A、15Bの厚さT3、T4を、固定部やリング保持部の厚さT1、T2より厚くすることで、それらについて図3のF、F´方向への曲げ剛性を高めている。これにより、支脚部15や支脚部の屈曲部15A、15Bが損傷したり破損するのを防止できる。また、フレーム11全体の厚さを厚くするのに比べ、軽量化が可能となる。つまり、釣糸ガイド全体の強度アップと軽量化を同時に果たすことができる。
【0058】
なお、支脚部15や支脚部の屈曲部15A、15Bの曲げ剛性を高める手段としては厚さを厚くする他、固定部13の左右幅方向の中心とリング保持部14の中心とを結ぶ中心線Lに直交する、支脚部15や屈曲部15A、15Bの断面積を相対的に広くしたり、強化繊維Rの繊維量を多くしたり、強化繊維Rの混入割合を多くしたり、さらにはアラミド繊維等の比強度の強い強化繊維Rを用いたりすることが考えられる。
【0059】
また、大きな荷重が加わり易い支脚部15について、単に曲げ剛性を高めるのに限られることなく、補強部を用いることによってトータル的に補強してもよい。支脚部15を補強する補強部としては、固定部13やリング保持部14を形成するプリプレグとは別に補強用のプリプレグを用い、この補強用のプリプレグを他のプリプレグとともに積層して一体に形成する。あるいは、チタンやステンレス等の金属材料や樹脂材料からなる補強材料を板状や繊維状に形成し、これらをプリプレグの間に介装させることが考えられる。また、補強部は、支脚部15の全体に渡って配設してもよく、あるいは支脚部15の一部、例えば屈曲部15A、15Bにのみ配設してもよい。
【0060】
また、支脚部15の最外層のプリプレグP4中には、屈曲部や湾曲部を取り除くように平坦状に延ばされた仮想平坦面において固定部13の左右幅方向の中心とリング保持部14の中心とを結ぶ中心線Lに対してそれぞれ平行と直交する方向に延びる繊布層の強化繊維Rが配設されている。この繊布層の強化繊維Rによって、最も荷重が加わり易く損傷が進み易い支脚部15から、強化繊維が剥離したり強化繊維層が剥離したりするのを防止することができ、強度の面並びに外観上にも優れた釣糸ガイドとなる。
なお、この実施形態では、支脚部15に限られることなく、固定部13、リング保持部14を含めフレーム11全体の最外層のプリプレグP4中に、繊布層の強化繊維を有するものを用いているが、これに限られることなく、支脚部15の最外層にのみ繊布層の強化繊維を有するプリプレグを用いても良い。
【0061】
また、リング保持部14は、剛性の高いガイドリング12によって補強されており、竿管2によって補強される固定部13により強く補強されている。ここで、固定部13は、平均厚さT1がリング保持部14の平均厚さT2よりも厚く設定されている。つまり、強度的に弱い固定部13の平均厚さを、リング保持部14の平均厚さよりも厚くすることで、釣糸ガイドとしての強度をバランス良く向上させるとともに、軽量化が可能となる。
【0062】
また、固定部13は、固定部とリング保持部の双方に直交する基準面Zに沿った方向(図3におけるF、F´の矢印方向参照)の曲げ剛性が、支脚部の前記基準面Zに沿った曲げ剛性よりも小さく設定されている。
固定部13は竿管2によって補強されるため、前記基準面Zに沿った方向の高い曲げ剛性は不要である。一方、支脚部15は強い曲げ荷重が加わるにも拘わらず、竿管2等の他の部材によって補強されていない。このため、固定部13の曲げ剛性を必要以上高くするのを抑えつつ、高い曲げ剛性が必要な支脚部15を補強することで、釣糸ガイドとしての強度をバランス良く向上させるとともに、軽量化が可能となる。
【0063】
加えて、前記釣竿1では、支脚部15または支脚部に形成された屈曲部15A、15Bのうち少なくとも一方の、前記基準面Zに沿った方向の曲げ剛性を、釣糸ガイド10を竿管に固定した位置の竿管2aの曲げ剛性より大きく設定している。このように、支脚部15や支脚部の屈曲部15A、15Bの曲げ剛性を竿管2aの曲げ剛性より相対的に大きく設定することで、釣竿全体で見た場合、撓み性と剛性のバランスを向上させることができ、しかも釣糸ガイドが損傷するのを未然に防止できる。
【0064】
<第2実施形態>
図10は本発明の釣糸ガイドの第2実施形態を示す。
なお、説明の便宜上、前記第1実施形態で説明した構成要素と同一の構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。これは、後述する第3、4実施形態においても同様である。
この実施形態の釣糸ガイド30は、固定部31が筒状に形成されていて、竿管2の外周に直接嵌合されしかも接着剤等の適宜接着手段を介して固定されている。この釣糸ガイド30においても、固定部31、リング保持部14、支脚部15からなるフレーム32は、強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを3層以上積層させて一体に形成されている。
したがって、従来の釣糸ガイドに比べて、重量が軽く、比強度、撓み性の面において優れる利点が得られる。
【0065】
<第3実施形態>
図11は本発明の釣糸ガイドの第3実施形態を示す。
この実施形態の釣糸ガイド40において、固定部41が筒状に形成されている点は前記第2実施形態と同様である。この釣糸ガイド40では、固定部41が竿管に固定されるのではなく、竿管の軸方向に移動可能になっていて、テーパがついた竿管の適宜外径部分に嵌合することで、固定されるいわゆる遊動ガイドになっている。
この場合、固定部41としてはある程度の強度であるから、少なくともリング保持部14の厚さよりも厚く設定するのが好ましい。
この釣糸ガイド40においても、固定部41、リング保持部14、支脚部15からなるフレーム42は、強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを3層以上積層させて一体に形成されている。
【0066】
<第4実施形態>
図12は本発明の釣糸ガイドの第4実施形態を示す。
この実施形態の釣糸ガイド50において、固定部51および支脚部52は、リング保持部14を中心としてその前後両側にそれぞれ延びるように設けられている。
この釣糸ガイド50においても、固定部51、リング保持部14、支脚部52からなるフレーム53は、強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを3層以上積層させて一体に形成されている。
【0067】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、本発明は、この実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。
例えば、前記した実施形態では、固定部、リング保持部および支脚部を備えるフレームを複数のプリプレグを積層してFRP構造としたが、これに限られることなく、強化繊維を繊維束の状態で用いて樹脂を補強する構造のものであってもよい。
また、前記した第1実施形態では、適宜箇所を屈曲させた板状のフレームを用いたが、これに限られることなく、適宜箇所を湾曲させた板状のフレームを用いても、あるいは複数の板状を組み合わせたフレームを用いても良い。
【符号の説明】
【0068】
1 釣竿、2 竿管、10 釣糸ガイド、11 フレーム、12 ガイドリング、
13 固定部、T1 固定部の平均厚さ、14 リング保持部、T2 リング保持部の平均厚さ、15 支脚部、15A 第1屈曲部、15B 第2屈曲部、15C 平坦部(仮想平坦面)、15D 開口、15E 細幅部、T3 第1、第2屈曲部の厚さ、T4 平坦部の厚さ、P1〜P4 プリプレグ、Z 固定部とリング保持部の双方に直交する基準面。
【技術分野】
【0001】
本発明は釣糸ガイドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
釣竿には、釣糸を通すための釣糸ガイドが取り付けられたものがある。従来、釣糸ガイドは、ステンレスやチタンなどの金属製の板材料にプレス等の機械加工を施すことにより形成されているのが一般的である。
例えば、下記の特許文献1に記載の釣糸ガイドは、金属製の一枚の板材にプレス加工を施してフレーム形状に打ち抜き、さらにこのフレーム形状に絞り加工並びに曲げ加工を施すことで、ガイドリングを保持するリング保持部と、リング保持部に接続された支脚と、リング保持部を支脚を介して竿管に取り付ける取付足を有する、所定の立体形状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−340661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された釣糸ガイドにあっては、材料が金属であるため重量が重いという問題があった。また、比強度、比剛性の面で、材料として金属を用いている限界があり、釣竿としてのトータル的な性能向上を図る上で大きな障害となっていた。
また、前記釣糸ガイドが金属製フレームのため、硬くて強いフレームにできる反面、撓み性を確保できず、釣糸に加わる張力がガイドリングを介して直接竿管に伝わり、結果的に、竿管に過大な負荷や衝撃が加わることとなって、竿管を傷つけ易く、破損し易いという問題があった。
【0005】
本発明は、このような背景の下になされたもので、重量が軽く、比強度のみならず、撓み性の面において優れる釣糸ガイドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の釣糸ガイドは、竿管に固定される固定部と、釣糸が挿通されるガイドリングが取り付けられたリング保持部と、前記固定部と前記リング保持部との間に介在されてそれらを連結する支脚部とを具備したフレームを有する釣糸ガイドであって、前記フレームは、前記固定部と前記支脚部と前記リング保持部とが、強化繊維によって強化された樹脂により一体に形成されていることを特徴とする。
前記釣糸ガイドによれば、固定部と支脚部とリング保持部を具備するフレームが強化繊維によって強化された樹脂により一体に形成されているから、従来知られているステンレス、チタン等の金属製のフレームを用いる場合に比べて、大幅に軽量化が図れると同時に比強度を高めることができる。また、固定部とリング保持部との間に支脚部を有するフレームを用いていること、および該フレームが強化繊維によって強化された樹脂により一体に形成されていることが相俟って、強化繊維が有する剛性と撓み性を十分生かすことができ、高強度と撓み性の双方が確保できる釣糸ガイドを提供できる。
【0007】
前記フレームは、強化繊維に樹脂を含浸させた繊維強化樹脂層を3層以上積層して一体に形成されていることが好ましい。
この場合、繊維強化樹脂層を単に重ねるという簡便な方法で、FRP構造の釣糸ガイドを製造でき、しかも品質の均一化を図ることができる。また、強化繊維の向きも多方向となるように設定することができ、この点で強度をより高めることが可能である。
【0008】
前記支脚部は、該支脚部が屈曲部や湾曲部を有する場合それらを取り除くように平坦状に延ばされた仮想平坦面において前記固定部の左右幅方向の中心と前記リング保持部の中心とを結ぶ中心線に対して所定角度傾斜する前記強化繊維を有することが好ましい。
この場合、補強繊維をリング保持部の中心と固定部の左右幅方向の中心を結ぶ中心線に沿わせて配置するのに比べ、支脚部に曲げ荷重が加わる際に、支脚部中の強化繊維にはその繊維中心に沿って斜めに荷重が作用する。この結果、撓み性をより確保することができる。
【0009】
前記支脚部の細幅部には、前記強化繊維の方向を前記細幅部の長手方向に沿う方向に配設した層を有することが好ましい。
この場合、比較的強度が不足する細幅部を、細幅部の長手方向に沿う方向に配設した強化繊維によって補強することができ、必要箇所の効率良い補強が行える。
【0010】
前記リング保持部は、3方向以上の多方向に延びるように配設された強化繊維を有することが好ましい。
リング保持部には、ガイドリングを介して多方向の荷重が加わり易い。この場合、3方向以上の多方向に延びる強化繊維を有することにより、ガイドリングを介して加わる多方向の荷重に、リング保持部を十分対抗させることができる。また、多方向の荷重が加わる際にリング保持部の変形を抑えられるので、ガイドリングの保持力が向上する。
【0011】
前記リング保持部は、該リング保持部の円周方向に沿って延びるように配設された強化繊維を有することが好ましい。
この場合、リング保持部の円周方向に沿って延びるように配設された強化繊維により、ガイドリングがセットされる部分の変形を抑えることができる。このため、ガイドリングの保持力が向上する。
【0012】
前記支脚部は屈曲部を有し、該屈曲部の厚さが前記リング保持部の厚さよりも厚く設定されていることが好ましい。
この場合、最も大きな荷重が加わり易い屈曲部を補強することで、効率の良い補強ができる。また、ガイドリングにより補強されるリング保持部との間で良好な剛性バランスが確保され、釣糸ガイドの強度をバランスよく向上させることができる。
【0013】
前記支脚部または支脚部に形成された屈曲部のうち少なくとも一方は、前記固定部と前記リング保持部の双方に直交する基準面に沿った曲げ剛性が、前記リング保持部の前記基準面に沿った曲げ剛性よりも大きく設定されていることが好ましい。
固定部は竿管によって、またリング保持部はガイドリングによってそれぞれ補強される。このため、最も大きな荷重を受けるのは支脚部であり、また支脚部の中でも屈曲部に応力が集中する。このように比較的大きな荷重が加わる支脚部や応力が集中し易い支脚部屈曲部の曲げ剛性を高めているので、支脚部や支脚部の屈曲部が損傷したり破損するのを防止できる。また、厚さを厚くする等曲げ剛性を高めるための手段を、フレーム全体に施すのに比べ、軽量化が図れる。つまり、釣糸ガイド全体の高強度化と軽量化を同時に果たすことができる。
【0014】
前記支脚部は補強部を有していることが好ましい。
この場合、比較的大きな荷重が加わる支脚部を補強することで、前述と同様、釣糸ガイド全体の高強度化と軽量化を同時に果たすことができる。
【0015】
前記支脚部は、繊維強化樹脂層の最外層に強化繊維または強化繊維層の剥離を防止する剥離防止層を有していることが好ましい。
この場合、比較的大きな荷重がかかり損傷し易い支脚部から、強化繊維の剥離または強化繊維層の剥離の進行を防止でき、強度の面でもまた外観の面でも優れる釣糸ガイドを提供できる。
【0016】
前記固定部は、前記固定部と前記リング保持部の双方に直交する基準面に沿った曲げ剛性が、前記支脚部の前記基準面に沿った曲げ剛性よりも小さく設定されていることが好ましい。
固定部は竿管によって補強されるため、高い曲げ剛性は不要である。一方、支脚部は強い曲げ荷重が加わるにも拘わらず、竿管等の他の部材によって補強されていない。このため、固定部に比べて高い曲げ剛性が必要な支脚部を補強することで、釣糸ガイドとしての強度をバランス良く向上させるとともに、軽量化を図ることができる。
【0017】
前記固定部は、平均厚さが前記リング保持部の平均厚さよりも厚く設定されていることが好ましい。
剛性のあるガイドリングによって補強されるリング保持部は、竿管によって補強される固定部により強く補強される。このため、固定部の平均厚さをリング保持部の平均厚さよりも厚くすることで、釣糸ガイドとしての強度をバランス良く向上させるとともに、軽量化が可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、重量が軽く、比強度、撓み性の面において優れる釣糸ガイドを得ることができ、釣竿としてのトータル的な性能向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態の釣糸ガイドを備える釣竿を示す側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の釣糸ガイドを釣竿に取り付けた状態を示す正面図である。
【図3】釣糸ガイドの断面図である。
【図4】釣糸ガイドの正面図である。
【図5】図3の要部の拡大図である。
【図6】釣糸ガイドのフレームの支脚部における強化繊維の配列状態を示す正面図である。
【図7】釣糸ガイドのフレームのプリプレグの積層状態を示すもので、(a)は全体の断面図、(b)〜(g)は強化繊維の配向を示す平面図である。
【図8】釣糸ガイドの製造方法を説明する図であって、金型を用いてプレス成形する状態を示す断面図である。
【図9】釣糸ガイドの製造方法を説明する図であって、金型を用いてプレス成形された板状体からフレームを切り出す状態を示すもので(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図10】本発明の釣糸ガイドの第2実施形態を示す正面図である。
【図11】本発明の釣糸ガイドの第3実施形態を示す側面図である。
【図12】本発明の釣糸ガイドの第4実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
本発明の釣糸ガイドの第1実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。
図1は本発明の第1実施形態の釣糸ガイドを備える釣竿を示す側面図である。図1に示すように、釣竿1は竿管2にその長さ方向所定間隔置きに釣糸ガイド10及びトップガイド10´が固定されている。
【0021】
図2は本発明の第1実施形態の釣糸ガイドが竿管2に取り付けられた状態を示す正面図、図3は釣糸ガイドの断面図、図4は釣糸ガイドの正面図、図5は図3の要部の拡大図である。
釣糸ガイド10は、フレーム11と、フレーム11により支持されて釣糸が挿通されるガイドリング12により構成される。フレーム11は、竿管2に固定される固定部13と、側方から見て固定部13から離間した位置に配設されるとともにガイドリング12を保持するリング保持部14と、固定部13とリング保持部14との間に介在されてそれらを連結する支脚部15とを備える。
なお、固定部13は竿管2に当接されて図5においてXで示す領域に外側から糸材を巻きつけられた後、糸止剤や接着剤を塗布されることで、竿管2に固定されるが、図2においては、糸材並びに接着剤の図示は省略してある。
【0022】
図3に示すように、固定部13とリング保持部14は、適宜間隔離間されて側面視において互いに所定の傾斜角度θaをなすように配設される。支脚部15は、側面視において固定部13に対し所定の傾斜角度θbをなすように連結される第1屈曲部15A、リング保持部14に対し所定の傾斜角度θcをなすように連結される第2屈曲部15B、第1屈曲部15Aと第2屈曲部15Bとの間に介在される平坦部15Cを備える。所定の傾斜角度θa、θb、θcは使用目的や後述するフレーム11内に介在される強化繊維の種類や直径等によってそれぞれ適宜設定される。ただし、第1屈曲部15Aの傾斜角度θbは、第2屈曲部15Bの傾斜角度θcよりも大きな値に設定するのが好ましい。例えば、傾斜角度θaは35°〜100°、傾斜角度θbは30°〜90°、傾斜角度θcは5°〜60°の範囲内で設定される。
また、平坦部15Cは、必ずしも平坦である必要はなく、必要に応じて、第2屈曲部に代えて、または、第1、2屈曲部15A、15Bと区別できる程度の小さな曲率をもって湾曲していてもよい。
【0023】
図6はフレーム11の支脚部15における最外層の繊維強化プリプレグ(成形後は、繊維強化樹脂層、以下「プリプレグ」という)における強化繊維Rの配列状態を示す正面図、図7はフレーム11におけるプリプレグP1〜P4の積層状態を示すもので、(a)は全体の断面図、(b)〜(g)はプリプレグ中の強化繊維の配向を示す図である。これらの図にも示すように、フレーム11は、強化繊維Rに樹脂を含浸させたプリプレグP1〜P4を3層以上(例えば5層〜20層程度)積層して一体に形成されている。
【0024】
この実施形態においてフレーム11は、中央の中立軸に配設される中央のプリプレグP1、中央のプリプレグP1の外方に向かってそれぞれ両側に配設される中間層のプリプレグP2、P3、最も外方に配設される最外層のプリプレグP4を備え、合計7層のプリプレグが積層されて形成されている。
【0025】
プリプレグP1〜P4用のマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が用いられる。具体的には、エポキシ樹脂や、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂等が用いられる。
プリプレグP1〜P4用の強化繊維Rとしては、引張弾性率3.92×1011(N/m2)以下(例えば、1.96×1011〜3.92×1011(N/m2))の高強度繊維を用いることが好ましいが、特に限定するものではなく、任意の強化繊維を使用できる。具体的には、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、金属繊維、合成樹脂繊維等が用いられる。
【0026】
強化繊維Rの方向について支脚部15を例にあげて説明すると、中央のプリプレグP1中には、図4にも示すように、固定部13の左右幅方向の中心とリング保持部14の中心とを結ぶ中心線L(図4、図7(b)〜(e)参照)に対して平行に配設される一方向引揃え層の強化繊維Rが用いられ、中間層のプリプレグP2中には、前記中心線Lに対して右斜めに傾斜する一方向引揃え層の強化繊維Rが用いられ(図7(c))、中間層のプリプレグP3中には、前記中心線Lに対して左斜めに傾斜する一方向引揃え層の強化繊維Rが用いられ(図7(d))、最外層のプリプレグP4中には、前記中心線Lに対してそれぞれ平行と直交する繊布層の強化繊維が用いられる(図7(e))。フレーム11を構成する他の部分である固定部13とリング保持部14についても同様である。
【0027】
中間層のプリプレグP2の右斜め方向の傾斜角度θd並びに中間層のプリプレグP3の左斜め方向の傾斜角度θeはそれぞれ例えば10°〜60°の範囲内で設定される。強化繊維の繊布層の例としては、平織、朱子織、三軸織等が挙げられる。また、織成したものであってもよい。また、織布の網目寸法wは、配置される部分の最小幅、例えば支脚部15の二股に分かれた細幅部15E(後述する)の幅寸法よりも小になるように設定される。
なお、これはあくまで例示であり、強化繊維Rの方向及び種類については、必要に応じて適宜変更可能である。例えば、中央のプリプレグP1中に、固定部13の左右幅方向の中心とリング保持部14の中心とを結ぶ中心線Lに対して右傾斜あるいは左傾斜する一方向引揃え層の強化繊維Rを用いても良い。また、中央のプリプレグP1、中間層のプリプレグP3、最外層のプリプレグP4のいずれにも繊布層の強化繊維を用いても良い。この場合、プリプレグ中の相互の強化繊維の向きを変えるように積層するのが好ましい。
【0028】
また、中央のプリプレグP1および中間層のプリプレグP2、P3の中の強化繊維の弾性率は、最外層のプリプレグP4中の強化繊維Rの弾性率よりも高く設定するのが好ましい。これは、繊維強化プラスチックとして、高強度と柔軟性の双方を確保するためである。
【0029】
プリプレグP1〜P4の樹脂含浸量は、15〜60重量パーセントに設定するのが好ましく、中央のプリプレグP1、中間層のプリプレグP2、P3、最外層のプリプレグP4と、外側に向かうに従い次第に樹脂含浸量を増大させるのが好ましい。この理由は、撓み性が向上する、また外層からの剥離や破損を防止できるためである。
【0030】
固定部13は、全体が板状でかつ先端部に厚さが次第に小になる先細り部13aが形成されている。固定部13の竿管2への当接面13bは、必要に応じて竿管2の外周面に対応するように凹曲状に形成しても良い。
また、固定部13は、平均厚さT1がリング保持部14の平均厚さT2よりも厚く設定されていることが好ましいが、同じ厚さにするなど、任意に設定できる。
【0031】
リング保持部14の中央には、円孔14aが形成され、ここには金属あるいはセラミックスからなるガイドリング12が嵌め込まれる。ガイドリング12のリング保持部14への固定は、圧入や接着の他、円孔14aの内周面に、金属やセラミックスの材料を蒸着やコーティングによって取り付けることでガイドリング12を直接形成してもよい。ガイドリング12は、片側(図3において左側)が外方に拡がるように拡径されている。これは、ガイドリングの抜け止めのため、並びに釣糸を損傷させないよう予めガイドリングの内周部分にアールを付けるためである。
【0032】
リング保持部14は、前述したようにそれぞれ異なる方向に延びる強化繊維Rを有するプリプレグP1〜P4を積層して形成されるため、結局3方向以上の多方向に配設された強化繊維Rを有する。なお、リング保持部14には、必要に応じて、リング保持部14の円周方向に沿って強化繊維を配設してもよい。このような構成にすれば、ガイドリング12に対してより強い保持力を確保できる。
【0033】
支脚部15は、固定部13との連結部である第1屈曲部15Aが一枚の湾曲板状に形成されているが、ここから二股に分かれ外方へ広がりながらそれらの先端がそれぞれリング保持部14に連結されている。つまり、第1屈曲部15Aは、単に厚さ方向に屈曲されているに止まらず、幅方向に沿って外方へも広がって二股に分かれている。また、平坦部15Cの中央には、肉抜きされた開口15Dが形成され、開口15Dの左右両側には細幅部15E、15Eがそれぞれ形成されている。また、第1屈曲部15Aでは、幅と厚さの比(幅/厚さ)が2〜9程度に設定されている。
【0034】
ここで、支脚部の細幅部15E、15Eには、強化繊維の方向を細幅部15E、15Eの長手方向Y、Y´に沿う方向に配設した層を有する。この層は、一層に限られることなく、複数層であってもよい。また、この層の下層側あるいは上層側に、前記した固定部13の左右幅方向の中心とリング保持部14の中心とを結ぶ中心線Lに対して平行に配設される一方向引揃え層の強化繊維Rを有する層や、前記中心線Lに対してそれぞれ平行と直交する繊布層の強化繊維を有する層を備える場合もある。
【0035】
また、ここでいう、長手方向Y、Y´に沿う方向とは、長手方向Y、Y´に対しその方向あるいはそれと平行をなす方向へ真っ直ぐに延びる方向を含むのは勿論であるが、それに限られることなく、長手方向Y、Y´に対して±5度の角度をもって、より広くは±10度の角度をもって延びる方向を含むものとする。また、細幅部15E、15Eにおいて、強化繊維の長さは、細幅部15E、15Eの幅寸法mの2倍以上、より好ましくは3倍以上の長さを有している。なお、この実施形態の支脚部15では、中央の開口15Dの両側にそれぞれ細幅部15E、15Eが形成されているが、開口15Dを有しない場合、細幅部15Eは、支脚部において幅が最も狭小とされる部分をいう。
【0036】
支脚部15は、前述したようにそれぞれ異なる方向に延びる強化繊維Rを有するプリプレグP1〜P4を積層して形成されるため、結局、両端の第1、第2屈曲部15A、15Bを取り除くように平坦状に延ばされた仮想平坦面(実際には、平坦部15Cと同じ面)において固定部13の左右幅方向の中心とリング保持部14の中心とを結ぶ中心線Lに対して所定の角度傾斜する強化繊維Rを有している(図7(c)、(d)参照)。なお、この実施形態では、支脚部15として、両端に屈曲部と中央に平坦部15Cを備える例を挙げているが、屈曲部のほかあるいは屈曲部とともに湾曲部を有する場合には、それら屈曲部や湾曲部を取り除くように平坦状に延ばした面を、ここでは仮想平坦面と呼ぶ。
また、支脚部15の第1、第2屈曲部の厚さT3は、平坦部15Cの厚さT4よりも厚く設定されている。また、平坦部15Cの厚さT4は、固定部13の平均厚さT1よりも厚く設定されている。
【0037】
固定部13、リング保持部14、支脚部15の相互の比重は、固定部13が最も大きく、支脚部15、リング保持部14の順で小さく設定されているのが好ましい。竿管2の軸心から遠ざかるにつれて比重が小さくなるのが理想だからである。また、フレーム11全体としては2.5以下の比重とするのが好ましく、0.7〜1.7の比重とするのがより好ましい。
【0038】
支脚部15または支脚部15に形成された第1、第2屈曲部15A、15Bのうち少なくとも一つは、固定部13とリング保持部14の双方に直交する基準面Z(図3における紙面に平行な面)に沿った方向(図3のF、F´の矢印方向参照)の曲げ剛性が、リング保持部14の前記基準面Zに沿った曲げ剛性よりも大きくなるように設定されている。
また、支脚部15または支脚部15に形成された第1、第2屈曲部15A、15Bのうち少なくとも一つは、前記基準面Zに沿った方向の曲げ剛性が、釣糸ガイド10を固定した位置の竿管2aの曲げ剛性より大きくなるように設定されている。
さらに、固定部13は、前記基準面Zに沿った方向の曲げ剛性が、支脚部15の前記基準面Zに沿った方向の曲げ剛性よりも小さくなるように設定されている。
【0039】
曲げ剛性を大きくする手段としては、曲げる方向に直交する断面二次モーメントを大きくすればよく、例えば、中立軸に直交する断面積を大きく設定する。あるいは、曲げる方向に対する肉厚を厚くするという手段がある。その他、強化繊維の繊維量を多くしてもよい。さらに、強化繊維の混入比率を高くする等の手段もある。この実施形態では、肉厚を厚くしているが、これに限られることなく、その他の手段の一つを採用しても良く、さらに前述の手段のうち2つ以上を併用してもよい。
【0040】
上述した第1の実施形態の釣糸ガイドの製造方法について説明する。
まず、中央のプリプレグP1、中間層のプリプレグP2、P3、最外層のプリプレグP4となる、それぞれのプリプレグを所定形状、例えば矩形状に切断する。
切断したプリプレグを、それらの内部に配設された強化繊維の延びる方向がそれぞれ所定の方向となるように重ね合わせる(図7(b)〜(e)参照)。
【0041】
重ね合わせる枚数(層数)は、プリプレグの種類や重ねる条件などにより任意に調整する。例えば、一度に全てのプリプレグを重ねてセットすることも可能であるし、また、プリプレグを予めグループ分けして重ね合わせておき、最後にそれら重ね合わせたプリプレグ同士をさらに重ね合わせてセットすることも可能である。積層するプリプレグの枚数が増えると、精度良くセットすることが可能であるため、後者の方が有利である。
【0042】
重ね合わせたプリプレグP1〜P4を、表面に離型材をコーティングした金型の所定位置にセットする。なお、プリプレグP1〜P4を、1枚ずつ金型に直接セットすることも可能である。
図8は金型20A、20BにプリプレグP1〜P4をセットし所定形状となるよう圧力をかけて保持した状態を示す断面図である。この図示例では、上下に型割りした金型20A、20Bを用いているので、重ね合わせたプリプレグを、まず、下型20Bにセットする。なお、型割りの方向は、図8に示したように、必ずしも上下に限られることなく、左右方向や傾斜方向でも良く、任意に変更可能である。
【0043】
このようにプリプレグP1〜P4を下型20Bにセットした後、上型20Aを下降させて型締め固定し、プリプレグP1〜P4を加圧しつつ加熱して成形する。
このとき、第1、第2屈曲部15A、15Bとなる部分を含め、成形後のフレーム11のなす角度を有するよう所定形状となるように保持する。こうすることで、成形後の内部残留応力の発生を防止でき、強度の向上並びに安定性の向上を図ることができる。
【0044】
また、積層したプリプレグを金型で押さえて加熱硬化させるときに、第1、第2屈曲部15A、15Bとなる部分を他の部分(固定部13やリング保持部14となる部分)より強い圧力をかけて成形すれば、それら第1、第2屈曲部15A、15Bとなる部分にボイドが生じるのを防止でき、所要部分の高強度化並びに安定化を図ることができる。加えて、第1、第2屈曲部15A、15Bとなる部分に別のプリプレグを積層して加圧成形することで、屈曲部となる部分の繊維比率を他の部分よりも高くすることができ、同屈曲部となる部分をより強化できる。
なお、第1、第2屈曲部15A、15Bとなる部分の肉厚を、他の部分よりも厚くなるように金型で予め設定しておくのが好ましい。
その後、金型20A、20Bを開き、加熱硬化したプリプレグP1〜P4からなる、所定箇所を屈曲された板状の成形品22を金型から取り出す。
成形品22は、1.2mm〜3.0mm程度の厚さとされているが、より好ましくは、1.2mm〜2.6mmの範囲内とする。
ここでは、成形品22を、所要箇所を屈曲された板状としているが、これに限られることなく、積層厚さを位置によって変化する形状であったり、側面視でT字状あるいは逆Y字状をなすように、板状部分が複数方向に分かれて延びるような形状としてもよい。
【0045】
図9は板状の成形品22からフレーム11を切り出す状態を示す正面図である。この図に示すように、板状の成形品22からフレーム11を切り出す。フレーム11の切り出しには、プレス加工を用いる方法、ウオータージェット等のようにノズルの先端から液体を噴射させる方法、エンドミル等の刃物を用いる方法等がある。
フレーム11の切り出し加工は、フレーム11の外形状の形成、リング保持部の円孔14aの形成、および支脚部の開口15Dの形成の3つの工程がある。これらの工程は同時に加工を行うのが好ましいが、別々に加工を行っても良い。
【0046】
次いで、必要に応じて、細部加工を行う。例えば、固定部13の竿管2への当接面13bを竿管2に載置し易いように曲面状に形成したり、糸巻き、糸止めが行い易いように固定部13の端部の角を研磨してアールを形成したりする。
【0047】
続いて、バレル加工を施し、フレーム11の表面からバリを除去するとともに、表面の光沢が得られる程度に仕上げ研磨する。研磨の程度は、釣糸ガイド10のサイズや形状、材質特性などによって、研磨剤を適宜選択したり研磨時間を変えることで、任意に調整することができる。
このとき、フレーム11の表面に、強化繊維Rが一部露出するとともにマトリックス樹脂が一部残るように研磨することが好ましい。こうすることで、フレーム11の研磨表面の光沢をより一層際立たせることができる。
【0048】
次に、必要に応じて、フレーム11の全体または一部分に被覆を形成するための表面処理を行う。例えば、外観向上やフレーム自体の保護のため塗装やめっきを施しても良く、また、金属やセラミックス等を蒸着してもよい。
次に、リング保持部14にガイドリング12を取り付ける。ガイドリング12の取り付け方法としては、圧入や接着剤を用いたりする方法、カーリングを施す方法等がある。なお、ガイドリング12を取り付けた後に、前記バレル加工や前記表面処理を行っても良い。
以上の工程を経ることによって、図3に示すような釣糸ガイド10を製造することができる。
【0049】
なお、前記実施形態では、図7(b)〜(e)に示すように、固定部13の左右幅方向の中心とリング保持部14の中心とを結ぶ中心線Lに対して平行に配設される一方向引揃え層の強化繊維Rを有するプリプレグP1、中心線Lに対して右斜めに傾斜する一方向引揃え層の強化繊維Rを有するプリプレグP2、中心線Lに対して左斜めに傾斜する一方向引揃え層の強化繊維Rを有するプリプレグP3、中心線Lに対してそれぞれ平行と直交する繊布層の強化繊維を有するプリプレグP4を用いているが、これに限られることなく、図7(f)に示すように、中心線Lに対して右斜めに傾斜する一方向引揃え層の強化繊維Rと左斜めに傾斜する一方向引揃え層の強化繊維Rを重ねて有するプリプレグP5や、図7(g)に示すように、中心線Lに対して所定角度(15度〜75度、より好ましくは30度〜60度)傾斜する繊布層の強化繊維を有するプリプレグP6を用いても良い。
また、前記実施形態では、プリプレグを重ねることで強化繊維を積層させたが、これに限られることなく、フィラメントワインデング法によって、層の一部または全部に強化繊維を積層しても良い。
【0050】
次に、前記構成の釣糸ガイドの作用効果について説明する。
前記釣糸ガイド10は、固定部13と支脚部15とリング保持部14を具備するフレーム11が強化繊維によって強化された樹脂により一体に形成されているから、従来知られているステンレス、チタン等の金属製のフレームを用いたものに比べて、大幅に軽量化が図れると同時に、比強度が向上する。また、固定部13とリング保持部14とが離間され、それらの間に支脚部15が介在されたフレーム11を用いていること、およびフレーム11が強化繊維によって強化された樹脂により一体に形成されていることが相俟って、強化繊維が有する剛性と撓み性を十分生かすことができ、従来の金属製ガイドでは得られなかった強度と撓み性の双方が確保される。
【0051】
また、フレーム11が、強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグP1〜P4を3層以上積層して一体に形成する構成になっており、このような構成であると、単にプリプレグを重ねるという簡便な方法で、FRP構造の釣糸ガイドを製造することができる。また、予めプリプレグの強化繊維相互の間隔や配向を管理するだけで、フレーム11の品質の均一化が図れる。また、強化繊維Rの向きも多方向となるように設定することができ、この点で、より一層強度向上を図ることができる。
【0052】
支脚部15において内部の強化繊維Rは、前記平坦部15Cに沿う仮想平坦面において固定部の左右幅方向の中心とリング保持部の中心とを結ぶ中心線Lに対して所定角度傾斜θd、θe傾斜して配設されているので、例えば、前記中心線Lに沿って延びる強化繊維しか有さないものに比べ、撓み性と高強度を確保し易い。つまり、釣糸に張力が加わりリング保持部14を介して支脚部15に例えば図3においてF、F´方向の曲げ荷重が加わる際に、中心線Lに対して所定の傾斜角度θd、θe傾斜して配設される、支脚部中の強化繊維Rにはその繊維中心線に沿って斜め方向の荷重が作用する。このため、強化繊維Rに強い荷重が加わるのを回避でき、結果的に撓み性を確保することができる。
また、支脚部15の細幅部15Eには、強化繊維Rの方向を細幅部の長手方向Y、Y´に沿う方向に配設した層を有しているから、比較的強度が不足する細幅部15Eを、細幅部の長手方向Y、Y´に沿う方向に配設した強化繊維によって補強することができ、必要箇所の効率良い補強が行える。
【0053】
また、リング保持部14には、取り付けられるガイドリング12を介して多方向の荷重が加わり易い。ところで、リング保持部14では、内部の強化繊維Rが、3方向以上の多方向(この実施形態では4方向)に延びるように配設されており、このため、ガイドリング12を介して加わる多方向の荷重に十分対抗することができる。また、リング保持部14が多方向へ変形するのを抑えられるので、ガイドリング12に対する保持力も向上する。
【0054】
なお、リング保持部内部の強化繊維Rを、3方向以上の多方向に延びるように配設するものとしては、この実施形態に示す例に限られることなく、360度を強化繊維の配向数で等分割に配設しても良く、あるいは支脚部15との連結部に沿った方向の強化繊維の比率を高くするように配設してもよい。
【0055】
また、リング保持部14には、リング保持部14の円周方向に沿って延びるように強化繊維を配設してもよい。この場合、円周方向に沿って延びる強化繊維によって、ガイドリングがセットされる部分である円孔14aの変形を抑えることができ、前記と同様、ガイドリング12に対する保持力を向上させることができる。
【0056】
支脚部15には第1、第2屈曲部15A、15Bが設けられ、これら屈曲部15A、15Bの厚さT3がリング保持部14の厚さT2よりも厚く設定されている。最も大きな荷重が加わる屈曲部15A、15Bの厚さを厚くして補強することで、効率の良い補強が行える。また、ガイドリング12により補強されるリング保持部14との間で良好な剛性バランスが確保され、釣糸ガイド10の強度をバランスよく向上させることができる。
【0057】
固定部13は竿管2によって、またリング保持部14はガイドリング12によってそれぞれ補強される。このため、最も大きな荷重が加わるのは支脚部15であり、支脚部15の中でも屈曲部15A、15Bが最も大きな荷重が加わる。このように荷重が加わり易い支脚部15や支脚部の屈曲部15A、15Bの厚さT3、T4を、固定部やリング保持部の厚さT1、T2より厚くすることで、それらについて図3のF、F´方向への曲げ剛性を高めている。これにより、支脚部15や支脚部の屈曲部15A、15Bが損傷したり破損するのを防止できる。また、フレーム11全体の厚さを厚くするのに比べ、軽量化が可能となる。つまり、釣糸ガイド全体の強度アップと軽量化を同時に果たすことができる。
【0058】
なお、支脚部15や支脚部の屈曲部15A、15Bの曲げ剛性を高める手段としては厚さを厚くする他、固定部13の左右幅方向の中心とリング保持部14の中心とを結ぶ中心線Lに直交する、支脚部15や屈曲部15A、15Bの断面積を相対的に広くしたり、強化繊維Rの繊維量を多くしたり、強化繊維Rの混入割合を多くしたり、さらにはアラミド繊維等の比強度の強い強化繊維Rを用いたりすることが考えられる。
【0059】
また、大きな荷重が加わり易い支脚部15について、単に曲げ剛性を高めるのに限られることなく、補強部を用いることによってトータル的に補強してもよい。支脚部15を補強する補強部としては、固定部13やリング保持部14を形成するプリプレグとは別に補強用のプリプレグを用い、この補強用のプリプレグを他のプリプレグとともに積層して一体に形成する。あるいは、チタンやステンレス等の金属材料や樹脂材料からなる補強材料を板状や繊維状に形成し、これらをプリプレグの間に介装させることが考えられる。また、補強部は、支脚部15の全体に渡って配設してもよく、あるいは支脚部15の一部、例えば屈曲部15A、15Bにのみ配設してもよい。
【0060】
また、支脚部15の最外層のプリプレグP4中には、屈曲部や湾曲部を取り除くように平坦状に延ばされた仮想平坦面において固定部13の左右幅方向の中心とリング保持部14の中心とを結ぶ中心線Lに対してそれぞれ平行と直交する方向に延びる繊布層の強化繊維Rが配設されている。この繊布層の強化繊維Rによって、最も荷重が加わり易く損傷が進み易い支脚部15から、強化繊維が剥離したり強化繊維層が剥離したりするのを防止することができ、強度の面並びに外観上にも優れた釣糸ガイドとなる。
なお、この実施形態では、支脚部15に限られることなく、固定部13、リング保持部14を含めフレーム11全体の最外層のプリプレグP4中に、繊布層の強化繊維を有するものを用いているが、これに限られることなく、支脚部15の最外層にのみ繊布層の強化繊維を有するプリプレグを用いても良い。
【0061】
また、リング保持部14は、剛性の高いガイドリング12によって補強されており、竿管2によって補強される固定部13により強く補強されている。ここで、固定部13は、平均厚さT1がリング保持部14の平均厚さT2よりも厚く設定されている。つまり、強度的に弱い固定部13の平均厚さを、リング保持部14の平均厚さよりも厚くすることで、釣糸ガイドとしての強度をバランス良く向上させるとともに、軽量化が可能となる。
【0062】
また、固定部13は、固定部とリング保持部の双方に直交する基準面Zに沿った方向(図3におけるF、F´の矢印方向参照)の曲げ剛性が、支脚部の前記基準面Zに沿った曲げ剛性よりも小さく設定されている。
固定部13は竿管2によって補強されるため、前記基準面Zに沿った方向の高い曲げ剛性は不要である。一方、支脚部15は強い曲げ荷重が加わるにも拘わらず、竿管2等の他の部材によって補強されていない。このため、固定部13の曲げ剛性を必要以上高くするのを抑えつつ、高い曲げ剛性が必要な支脚部15を補強することで、釣糸ガイドとしての強度をバランス良く向上させるとともに、軽量化が可能となる。
【0063】
加えて、前記釣竿1では、支脚部15または支脚部に形成された屈曲部15A、15Bのうち少なくとも一方の、前記基準面Zに沿った方向の曲げ剛性を、釣糸ガイド10を竿管に固定した位置の竿管2aの曲げ剛性より大きく設定している。このように、支脚部15や支脚部の屈曲部15A、15Bの曲げ剛性を竿管2aの曲げ剛性より相対的に大きく設定することで、釣竿全体で見た場合、撓み性と剛性のバランスを向上させることができ、しかも釣糸ガイドが損傷するのを未然に防止できる。
【0064】
<第2実施形態>
図10は本発明の釣糸ガイドの第2実施形態を示す。
なお、説明の便宜上、前記第1実施形態で説明した構成要素と同一の構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。これは、後述する第3、4実施形態においても同様である。
この実施形態の釣糸ガイド30は、固定部31が筒状に形成されていて、竿管2の外周に直接嵌合されしかも接着剤等の適宜接着手段を介して固定されている。この釣糸ガイド30においても、固定部31、リング保持部14、支脚部15からなるフレーム32は、強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを3層以上積層させて一体に形成されている。
したがって、従来の釣糸ガイドに比べて、重量が軽く、比強度、撓み性の面において優れる利点が得られる。
【0065】
<第3実施形態>
図11は本発明の釣糸ガイドの第3実施形態を示す。
この実施形態の釣糸ガイド40において、固定部41が筒状に形成されている点は前記第2実施形態と同様である。この釣糸ガイド40では、固定部41が竿管に固定されるのではなく、竿管の軸方向に移動可能になっていて、テーパがついた竿管の適宜外径部分に嵌合することで、固定されるいわゆる遊動ガイドになっている。
この場合、固定部41としてはある程度の強度であるから、少なくともリング保持部14の厚さよりも厚く設定するのが好ましい。
この釣糸ガイド40においても、固定部41、リング保持部14、支脚部15からなるフレーム42は、強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを3層以上積層させて一体に形成されている。
【0066】
<第4実施形態>
図12は本発明の釣糸ガイドの第4実施形態を示す。
この実施形態の釣糸ガイド50において、固定部51および支脚部52は、リング保持部14を中心としてその前後両側にそれぞれ延びるように設けられている。
この釣糸ガイド50においても、固定部51、リング保持部14、支脚部52からなるフレーム53は、強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを3層以上積層させて一体に形成されている。
【0067】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、本発明は、この実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。
例えば、前記した実施形態では、固定部、リング保持部および支脚部を備えるフレームを複数のプリプレグを積層してFRP構造としたが、これに限られることなく、強化繊維を繊維束の状態で用いて樹脂を補強する構造のものであってもよい。
また、前記した第1実施形態では、適宜箇所を屈曲させた板状のフレームを用いたが、これに限られることなく、適宜箇所を湾曲させた板状のフレームを用いても、あるいは複数の板状を組み合わせたフレームを用いても良い。
【符号の説明】
【0068】
1 釣竿、2 竿管、10 釣糸ガイド、11 フレーム、12 ガイドリング、
13 固定部、T1 固定部の平均厚さ、14 リング保持部、T2 リング保持部の平均厚さ、15 支脚部、15A 第1屈曲部、15B 第2屈曲部、15C 平坦部(仮想平坦面)、15D 開口、15E 細幅部、T3 第1、第2屈曲部の厚さ、T4 平坦部の厚さ、P1〜P4 プリプレグ、Z 固定部とリング保持部の双方に直交する基準面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
竿管に固定される固定部と、釣糸が挿通されるガイドリングが取り付けられたリング保持部と、前記固定部と前記リング保持部との間に介在されてそれらを連結する支脚部とを具備したフレームを有する釣糸ガイドであって、
前記フレームは、前記固定部と前記支脚部と前記リング保持部とが、強化繊維によって強化された樹脂により一体に形成されていることを特徴とする釣糸ガイド。
【請求項2】
前記フレームは、強化繊維に樹脂を含浸させた繊維強化樹脂層を3層以上積層して一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の釣糸ガイド。
【請求項3】
前記支脚部は、該支脚部が屈曲部や湾曲部を有する場合それらを取り除くように平坦状に延ばされた仮想平坦面において前記固定部の左右幅方向の中心と前記リング保持部の中心とを結ぶ中心線に対して所定角度傾斜する前記強化繊維を有することを特徴とする請求項1または2に記載の釣糸ガイド。
【請求項4】
前記支脚部の細幅部には、前記強化繊維の方向を前記細幅部の長手方向に沿う方向に配設した層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項5】
前記リング保持部は、3方向以上の多方向に延びるように配設された強化繊維を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項6】
前記リング保持部は、該リング保持部の円周方向に配設された強化繊維を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項7】
前記支脚部は屈曲部を有し、
該屈曲部の厚さが前記リング保持部の厚さよりも厚く設定されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項8】
前記支脚部または支脚部に形成された屈曲部のうち少なくとも一方は、前記固定部と前記リング保持部の双方に直交する基準面に沿った曲げ剛性が、前記リング保持部の前記基準面に沿った曲げ剛性よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項9】
前記支脚部は補強部を有していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項10】
前記支脚部は、繊維強化樹脂層の最外層に強化繊維または強化繊維層の剥離を防止する剥離防止層を有していることを特徴とする請求項2に記載の釣糸ガイド。
【請求項11】
前記固定部は、前記固定部と前記リング保持部の双方に直交する基準面に沿った曲げ剛性が、前記支脚部の前記基準面に沿った曲げ剛性よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項12】
前記固定部は、平均厚さが前記リング保持部の平均厚さよりも厚く設定されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項1】
竿管に固定される固定部と、釣糸が挿通されるガイドリングが取り付けられたリング保持部と、前記固定部と前記リング保持部との間に介在されてそれらを連結する支脚部とを具備したフレームを有する釣糸ガイドであって、
前記フレームは、前記固定部と前記支脚部と前記リング保持部とが、強化繊維によって強化された樹脂により一体に形成されていることを特徴とする釣糸ガイド。
【請求項2】
前記フレームは、強化繊維に樹脂を含浸させた繊維強化樹脂層を3層以上積層して一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の釣糸ガイド。
【請求項3】
前記支脚部は、該支脚部が屈曲部や湾曲部を有する場合それらを取り除くように平坦状に延ばされた仮想平坦面において前記固定部の左右幅方向の中心と前記リング保持部の中心とを結ぶ中心線に対して所定角度傾斜する前記強化繊維を有することを特徴とする請求項1または2に記載の釣糸ガイド。
【請求項4】
前記支脚部の細幅部には、前記強化繊維の方向を前記細幅部の長手方向に沿う方向に配設した層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項5】
前記リング保持部は、3方向以上の多方向に延びるように配設された強化繊維を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項6】
前記リング保持部は、該リング保持部の円周方向に配設された強化繊維を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項7】
前記支脚部は屈曲部を有し、
該屈曲部の厚さが前記リング保持部の厚さよりも厚く設定されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項8】
前記支脚部または支脚部に形成された屈曲部のうち少なくとも一方は、前記固定部と前記リング保持部の双方に直交する基準面に沿った曲げ剛性が、前記リング保持部の前記基準面に沿った曲げ剛性よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項9】
前記支脚部は補強部を有していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項10】
前記支脚部は、繊維強化樹脂層の最外層に強化繊維または強化繊維層の剥離を防止する剥離防止層を有していることを特徴とする請求項2に記載の釣糸ガイド。
【請求項11】
前記固定部は、前記固定部と前記リング保持部の双方に直交する基準面に沿った曲げ剛性が、前記支脚部の前記基準面に沿った曲げ剛性よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項12】
前記固定部は、平均厚さが前記リング保持部の平均厚さよりも厚く設定されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−4651(P2011−4651A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151013(P2009−151013)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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