説明

鉄塔用の営巣防止装置

【課題】鉄塔に鳥が巣を作るのを効果的に防止することができると共に、鉄塔のメンテナンスの際に邪魔になりにくい鉄塔用の営巣防止装置を提供する。
【解決手段】支柱2と横桁3とが連結されている鉄塔内側の隅部Eを上から覆うと共に上面12が平滑である被覆部材11と、被覆部材11の上面12を水平面に対して傾斜させて被覆部材11を平坦部6の隅部Eに取り付ける取り付け部材21とを備えている。取り付け部材21は、被覆部材11の上面12を鉄塔1の中心C側に向かって下へ傾斜させて、被覆部材11を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔に鳥が巣を作るのを防止する営巣防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線を支持する鉄塔に鳥が巣を作ると、その巣を構成する営巣材料による短絡事故が発生するおそれがあり、また、鳥の糞や鳴き声などによって鉄塔の近隣の住民に迷惑をかけることから、様々な型式の営巣防止装置が提案されている。なお、営巣材料には、枝などの木材の他に、ワイヤーなどの金属線が含まれており、金属線からなる営巣材料の場合、特に短絡事故が発生しやすくなる。
【0003】
従来の営巣防止装置として、風を受けると回転する回転体を有する装置や、光を反射する反射板を有する装置などがあるが、これらの場合、設置初期では効果を有するが、時間が経過すると鳥が慣れてしまい、巣を作ってしまうことがある。
また、従来の営巣防止装置として、特許文献1に開示されているように、支柱及びこの支柱を水平方向に繋ぐ横桁とを有する鉄塔のうち、横桁が平面視矩形に組まれて得た平坦部の上に、四角錐を成すように板部材が組み立てられ、これら板部材によって、前記平坦部の全体を覆う装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−22237号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の営巣防止装置によれば、鉄塔の平坦部に鳥が巣を作ろうとしても、営巣材料が滑って落下してしまい、巣を作ることが不可能である。しかし、鉄塔は、すべて同じ大きさではなく、鉄塔それぞれによって平坦部の寸法が異なるため、鉄塔毎に寸法を合わせて装置を製造する必要があり、汎用性がない。
また、特許文献1に記載の営巣防止装置では、鉄塔の平坦部を全面覆ってしまうため、作業者が鉄塔上で作業を行う際に、平坦部を足場として用いることができない。つまり、特許文献1に記載の営巣防止装置が平坦部に取り付けられると、足場を確保することができず、メンテナンスなどの作業の際に営巣防止装置が邪魔になるという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、鉄塔に鳥が巣を作るのを効果的に防止することができると共に、鉄塔のメンテナンスの際に邪魔になりにくい鉄塔用の営巣防止装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の鉄塔用の営巣防止装置は、支柱及びこの支柱を水平方向に繋ぐ横桁とを有する鉄塔の、当該支柱と当該横桁とが連結されている鉄塔内側の隅部を上から覆うと共に上面が平滑である被覆部材と、前記被覆部材の上面を営巣材料が滑落可能に水平面に対して傾斜させて当該被覆部材を前記隅部に取り付ける取り付け部材とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の発明者は、鉄塔の支柱と横桁とが連結されている鉄塔内側の隅部、つまり、横桁が平面視矩形に組まれて得た平坦部のうち支柱が近くに存在している隅部に、鳥は巣を作るという習性に着目し、本発明では、この隅部に、上面が水平面に対して傾斜する被覆部材が設置される。これにより鳥は、隅部に巣を作ることができず、営巣防止の効果が継続して発揮される。
そして、被覆部材は、取り付け部材によって鉄塔の隅部に取り付けられるため、横桁が平面視矩形に組まれて得た平坦部の隅部以外の領域に作業者の足場を確保することができ、鉄塔のメンテナンス作業の邪魔になりにくい。
また、この営巣防止装置は、平坦部の隅部に設置されることから、平坦部の寸法が異なる様々な鉄塔に適用することができる。
【0009】
また、前記取り付け部材は、前記被覆部材の上面を鉄塔の中心側に向かって下へ傾斜させて、前記被覆部材を取り付けるのが好ましい。
この場合、仮に被覆部材の上に、鳥が営巣材料を運んできても、その営巣材料を落下させ営巣を防ぎ、しかも、営巣材料を鉄塔の中心側に向かって落下させるので、例えば近隣の住宅地側に営巣材料が落下するのを防ぐことができる。
【0010】
また、前記取り付け部材は、鉄塔の構成部材同士を連結している既設のボルトの先端に螺合するナット部を有しているのが好ましい。
この場合、取り付け部材が有しているナット部を、鉄塔の既設のボルトに螺合させることで、被覆部材を鉄塔に取り付けることができ、営巣防止装置の鉄塔への取り付けが容易であり、また取り付け構造が煩雑とならない。
【0011】
また、前記取り付け部材は、前記被覆部材の上面の傾斜角度を変更可能とする角度調整部を有しているのが好ましい。
この場合、被覆部材の上面の傾斜角度を変更することで、鉄塔に応じて、被覆部材の上面を営巣防止に好ましい傾斜角度に調整することができる。
【0012】
また、前記取り付け部材は、前記被覆部材の高さを変更可能とする高さ調整部を有しているのが好ましい。
この場合、被覆部材の高さを変更することで、鉄塔に応じて、被覆部材を営巣防止に好ましい高さに調整することができる。
【0013】
また、前記取り付け部材は、前記被覆部材と一体である固定部材と、前記固定部材に形成されている孔を通過させると共に鉄塔の構成部材の一部を周回して当該固定部材を当該構成部材の一部と共締めする帯部材とを有し、前記孔は、前記構成部材の一部の大きさに応じて、複数形成されているのが好ましい。
この場合、被覆部材と一体である固定部材に形成されている孔に帯部材を通過させ、さらに、この帯部材を鉄塔の支柱の一部を周回させることで、被覆部材を鉄塔に取り付けることができる。さらに、孔は複数形成されていることから、この鉄塔の構成部材の一部の大きさに応じて、帯部材を通過させる孔を変更することができ、様々な鉄塔に営巣防止装置を取り付けることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の鉄塔用の営巣防止装置によれば、鳥は、支柱が近くに存在している鉄塔内側の隅部に巣を作るという習性に着目し、この隅部に被覆部材を設置することができるので、営巣防止の効果を継続して発揮することができる。また、横桁が平面視矩形に組まれて得た平坦部の隅部以外の領域に作業者の足場が確保され、鉄塔のメンテナンス作業の邪魔になりにくい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の営巣防止装置が設置される鉄塔の一例を示す概略図である。
【図2】(A)は、鉄塔の一部(図1のA部)の側面図であり、(B)は、この一部の平面図である。
【図3】(A)は、営巣防止装置10が設置されている鉄塔の一部(図1のA部)の側面図であり、(B)は、この一部の平面図である。
【図4】営巣防止装置(第1実施形態)の側面図である。
【図5】営巣防止装置(第1実施形態)の平面図である。
【図6】営巣防止装置(第2実施形態)の側面図である。
【図7】営巣防止装置(第2実施形態)の平面図である。
【図8】固定部材が取り付けられる支柱側から固定部材を見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の営巣防止装置が設置される鉄塔の一例を示す概略図である。鉄塔1は、構成部材として、高さ方向に長い支柱2と、支柱2を水平方向に繋ぐ複数の横桁3とを有しており、これら支柱2と横桁3とが連結されて組み立てられた骨組み構造である。なお、支柱2及び横桁3は、鋼製の等辺山型鋼などの型鋼からなる。
図2(A)は、鉄塔1の一部(図1のA部)の側面図であり、図2(B)は、この一部の平面図である。支柱2と横桁3との一方に、板状の部材(ブラケット)5が溶接固定されており、この板状の部材5に、支柱2と横桁3との内の他方がボルトナット4によって固定されている。
【0017】
そして、この鉄塔1には、複数本の横桁3によって水平状な枠状となっている平坦部6が、高さ方向の複数カ所に構成されている。なお、平坦部6は、鉄塔の構成部材である横桁3によって平面視矩形に構成され上面がほぼ水平となる鉄塔内側の領域である。
図2(B)に示すように、各平坦部6は、四本の横桁3と、対角線を結ぶ二本の横桁3とによって構成されている。そして、支柱2が、平坦部5の四つ角に設けられており、各支柱2の内側(鉄塔1の中心C側)が、平坦部6の隅部Eとなる。この平坦部6の隅部Eにおいて支柱2と横桁3とが板状の部材5を介して連結されている。
そして、図3(A)と(B)とに示しているように、図2に示した鉄塔1の平坦部6の四隅それぞれに、営巣防止装置10が設置されている。
【0018】
図4は、営巣防止装置10(第1実施形態)の側面図である。この営巣防止装置10は、支柱2と横桁3とが連結されている鉄塔内側の隅部Eを上から覆うと共に上面12が平滑である被覆部材11と、この被覆部材11を平坦部6の隅部Eに取り付ける取り付け部材21とを備えている。図5は営巣防止装置10の平面図であり、被覆部材11を二点鎖線で示している。
【0019】
被覆部材11は、矩形の板部材であり、例えば樹脂製の板からなる。本実施形態では、被覆部材11の上面12は、平坦でありかつ平滑な面である。なお、図示しないが、山型でありかつ山の両側が平滑な面であってもよい。
そして、取り付け部材21は、被覆部材11の上面12を水平面に対して傾斜させて、この被覆部材11取り付けている。図4では、水平面に対する上面12の傾斜角度をθで示している。
【0020】
本実施形態の取り付け部材21は、被覆部材11を固定している第1アーム22と、第1アーム22の一端部をボルト23によって固定している第2アーム24と、第2アーム24を固定している軸25と、軸25を平坦部6の隅部Eに固定する固定部材26とを有している。
【0021】
この取り付け部材21は、被覆部材11の上面12の傾斜角度θを変更可能とする角度調整部27を有している。つまり、固定部材26は、軸25を、軸25の長手方向が高さ方向となるように支持し、第2アーム24はこの軸25から水平方向に延びている部材であり、ボルト23を緩めることにより、この第2アーム24に対する第1アーム22の角度を変更することができる。この角度の変更により、第1アーム22に固定の被覆部材11の傾斜角度を変更することができる。本実施形態では、角度調整部27は、第1アーム22、第2アーム24及びボルト23からなる。
【0022】
図3と図4とに示しているように、取り付け部材21は、被覆部材11の上面12を鉄塔1の中心C側に向かって下へ傾斜させて、被覆部材11を取り付けている。鉄塔1の中心Cは、平面視における断面中心である。四隅に設置されている営巣防止装置10それぞれにおいて、被覆部材11の上面12の傾斜方向は、中心C側に向かって下に傾斜した方向である。
【0023】
さらに、取り付け部材21は、被覆部材11の高さを変更可能とする高さ調整部28を有している。つまり、図4に示しているように、軸25にねじが形成されており、第2アーム24の端部には、この軸25を挿通する孔29が形成されており、取り付け部材21は、さらに、第2アーム24の端部を上下挟むと共に軸25のねじに螺合する上下のナット30,31を有している。ナット30,31を回転させることによって、軸25のねじに対するナット30,31の高さを変更することができる。この高さの変更により、第2アーム24の高さが変更され、被覆部材11の高さを調整することができる。本実施形態では、高さ調整部28は、ねじが形成されている軸25及びナット30,31からなる。
【0024】
本実施形態の取り付け部材21が有している前記固定部材26は、ボルト孔32が形成されているナット部33を有しており、このナット部33は、鉄塔1の構成部材同士を連結している既設の前記ボルトナット4のボルト4aの先端に螺合する。つまり、ナット部33は、ボルト4aの出代部分に螺合する。なお、鉄塔1の構成部材には、支柱2、横桁3及び板状の部材5が含まれている。本実施形態では、ナット部33を螺合させるボルト4aは、ボルト先端が上に向いており構成部材(本実施形態では板状の部材5)から上に突出しているボルトである。
【0025】
このように、ナット部33を、鉄塔1の既設のボルト4aに螺合させることで、このナット部33(固定部材26)を有している取り付け部材21によって、被覆部材11を鉄塔1に取り付けることができる。つまり、このナット部33によれば、営巣防止装置10の鉄塔1への取り付けが容易であり、また取り付け構造が煩雑とならない。
【0026】
以上の本実施形態に係る営巣防止装置10によれば、鉄塔1の平坦部6のうち、高さ方向に延びる支柱2が近くに存在している隅部Eに、上面12が傾斜している被覆部材11を設置することができ、この被覆部材11によって、営巣材料を滑落させることができ、鳥はこの隅部Eに巣を作ることができない。そして、この営巣防止装置10により、鉄塔1における営巣防止の効果を継続して発揮することができる。
なお、本発明は、鉄塔1の平坦部6のうち、支柱2が近くに存在している隅部Eに、鳥は巣を作るという習性に着目したことによる。支柱2が近くに存在している隅部Eに鳥が巣を作る理由は、図2(B)に示すように、隅部Eでは、板状の部材5によって水平面が広く確保されておりかつ営巣材料が引っ掛かる構成部材が集中した箇所であって営巣を行うには好都合であり、また、支柱2によって風の影響を受けるのを防ぐこができるためであると推測される。
【0027】
そして、取り付け部材21によって、被覆部材11の上面12が鉄塔1の中心C側に向かって下へ傾斜するように、被覆部材11は取り付けられているので、仮に被覆部材11の上に鳥が営巣材料を運んできても、その営巣材料を鉄塔1の中心C側に向かって落下させるので、例えば鉄塔1の近隣の住宅地側に営巣材料が落下するのを防ぐことができる。
【0028】
また、本実施形態では、角度調整部27によって、被覆部材11の上面12の傾斜角度θを変更することができるので、鉄塔1(平坦部6)に応じて、被覆部材11の上面12を営巣防止に好ましい傾斜角度に調整することができる。
また、本実施形態では、高さ調整部28によって、被覆部材11の高さを変更することができるので、鉄塔1に応じて、被覆部材11を営巣防止に好ましい高さに調整することができる。
【0029】
そして、被覆部材11は、取り付け部材21によって鉄塔1の平坦部6の隅部Eに取り付けられるため、鉄塔1のメンテナンスの際に、この営巣防止装置10を取り外さなくても、平坦部6の隅部E以外の大部分の領域に作業者の足場を確保することができ、メンテナンス作業の邪魔になりにくい。
また、取り付け部材21を、平坦部6の隅部Eに既設のボルト4aに取り付ければよく、つまり、営巣防止装置10を平坦部6の四隅にのみ設置すればよいため、平坦部6の寸法が異なる様々な鉄塔に、本発明の営巣防止装置10を適用することができる。
【0030】
図6は、営巣防止装置50(第2実施形態)の側面図である。図7は営巣防止装置50の平面図である。この営巣防止装置50も、図4に示した装置10と同様に、鉄塔1の平坦部6の四隅に設置されるものである。
【0031】
この営巣防止装置50は、鉄塔1の平坦部6の隅部Eを上から覆うと共に上面52が平滑である被覆部材51と、この被覆部材51を平坦部6の隅部Eに取り付ける取り付け部材61とを備えている。
このような被覆部材51及び取り付け部材61を備えている点、及び、被覆部材51が矩形の板状である点は、本実施形態の営巣防止装置50と、前記実施形態(図4)の営巣防止装置10と同じである。しかし、被覆部材51の上面52を水平面に対して傾斜させて被覆部材51を平坦部6の隅部Eに取り付ける取り付け部材61の具体的な構成は異なる。
【0032】
本実施形態の取り付け部材61は、被覆部材51と一体である固定部材62と、この固定部材62と鉄塔1の構成部材(支柱2)の一部2aとを共締めする帯部材63とを有している。
帯部材63は可撓性を有しており、例えば、薄い樹脂製又は金属製のベルトである。図8は、固定部材62が取り付けられる支柱2側から固定部材62を見た図である。
【0033】
被覆部材51と同様に固定部材62も矩形の板状であり、固定部材62の一辺(上辺)が、被覆部材51の一辺(上辺)と一致して、両部材51,61が連結されている。被覆部材51及び固定部材62は、例えば樹脂製である。固定部材62はその面方向が高さ方向に向く部材であり、被覆部材51は水平面に対して傾斜している部材である。
【0034】
図8に示しているように、固定部材62には、複数の孔64,65が形成されている。さらに説明すると、固定部材62の左右方向の中心部に支柱2が沿うように、固定部材62は設置され、この支柱2を挟んだ左右それぞれの領域に複数の孔64,65が形成されている。
そして、支柱2を挟んだ左右それぞれ一つの孔64,65を一組とし、この一組の孔64,65それぞれに帯部材63を挿通させている。本実施形態では、最も中心部側の孔64,65に、帯部材63が通っている。
そして、帯部材63の端部同士が、図示しない固定具によって固定されており、帯部材63は、固定部材62及び支柱2の一部を周回しており、また、固定部材62及び支柱2の一部に密着した状態で締め付けられている。
【0035】
以上のように、帯部材63が、固定部材62に形成されている一対で一組の孔64,65を通過すると共に、鉄塔1の支柱2の一部2aを周回して、固定部材62を支柱2の一部2aと共締めし、固定部材62と一体である被覆部材51を平坦部6の隅部Eに固定している。
この帯部材63によって、固定部材62を支柱2に締め付け固定することで、被覆部材51の上面52を鉄塔1の中心C側に向かって下へ傾斜させて、被覆部材51を平坦部6に取り付けることができる。
そして、支柱2の一部2aの大きさ(形鋼のサイズ)に応じて、帯部材63を通過させる前記一組の孔64,65を変更するために、複数組みの孔64,65が固定部材62に形成されている。
【0036】
また、図7に示すように、被覆部材51と等辺山型鋼からなる支柱2の内側面との間に三角形の隙間が生じてしまう。そこで、本実施形態では、この隙間を塞ぐ、三角形の舌片53を更に、備えている。この舌片53は、板状である被覆部材51の延長上に設けられており、当該被覆部材51と一体である。この舌片53も、鉄塔1の中心C側に向かって下へ傾斜しており、舌片53は被覆部材51と同じ傾斜角度で傾斜している。これにより、被覆部材51と等辺山型鋼からなる支柱2の内側面との間に、鳥が止まることでできず、また、営巣材料を滑落させることができ、巣を作るのを阻害する。
【0037】
以上、本実施形態に係る営巣防止装置50によれば、帯部材63を、固定部材62に形成されている一組の孔64,65を通過させ、さらに、鉄塔1の支柱2の一部2aを周回させることで、固定部材62と一体である被覆部材51を鉄塔1に取り付けることができる。さらに、この鉄塔1の支柱2の一部2aの大きさに応じて、帯部材63を通過させる一組の孔64,65を変更することができることから、様々な鉄塔1にこの営巣防止装置50を取り付けることができる。
【0038】
そして、鉄塔1の平坦部6のうち、高さ方向に延びる支柱2が近くに存在している隅部Eに、上面52が傾斜している被覆部材51を設置することができ、この被覆部材51によって、営巣材料を滑落させることができ、鳥はこの隅部Eに巣を作ることができない。そして、この営巣防止装置50により、鉄塔1における営巣防止の効果を継続して発揮することができる。
そして、被覆部材51は、取り付け部材61によって鉄塔1の平坦部6の隅部Eに取り付けられるため、鉄塔1のメンテナンスの際に、この営巣防止装置50を取り外さなくても、平坦部6の隅部E以外の大部分の領域に作業者の足場を確保することができ、メンテナンス作業の邪魔になりにくい。
【0039】
そして、被覆部材51の上面52を鉄塔1の中心C側に向かって下へ傾斜させて、被覆部材51は取り付け部材61によって取り付けられるので、被覆部材51の上に、鳥が営巣材料を運んできても、その営巣材料を鉄塔1の中心C側に向かって落下させるので、例えば鉄塔1の近隣の住宅地側に営巣材料が落下するのを防ぐことができる。
【0040】
また、前記各実施形態に係る営巣防止装置によれば、平坦部6の隅部Eであれば、任意の場所に被覆部材51を設置可能であるため、鉄塔1の構成部材との干渉を防止することができる。
特に図4の実施形態の場合、第2アーム24を軸25回りに回転させることができ、また、上記の角度調整部27及び高さ調整部28によれば、被覆部材11の位置を任意に変更することができる。このため、鉄塔1の構成部材との干渉を防止して、隅部Eに被覆部材11を位置させることが可能となる。
図7の実施形態の場合、被覆部材51及び固定部材62は共に板状であり、本実施形態では樹脂製であることから、これらの一方又は双方が鉄塔1の構成部材と干渉するおそれがある場合は、その一部を切断することが可能とである。例えば、図7の二点鎖線を切断線として示しているように、被覆部材51の両側を切断することができる。
【0041】
本発明の営巣防止装置は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。例えば、上記の実施形態では、被覆部材の材質を樹脂製として説明したが、金属製であってもよい。被覆部材は、材質を問わず、その上面を平滑な面とすることにより、営巣材料を落下させることができる。
【符号の説明】
【0042】
1:鉄塔 2:支柱(構成部材) 3:横桁 4a:ボルト 10:営巣防止装置 11:被覆部材 12:上面 21:取り付け部材 27:角度調整部 28:高さ調整部 33:ナット部 50:営巣防止装置 51:被覆部材 52:上面 61:取り付け部材 62:固定部材 63:帯部材 64,65:孔 C:中心 E:隅部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱及びこの支柱を水平方向に繋ぐ横桁とを有する鉄塔の、当該支柱と当該横桁とが連結されている鉄塔内側の隅部を上から覆うと共に上面が平滑である被覆部材と、
前記被覆部材の上面を営巣材料が滑落可能に水平面に対して傾斜させて当該被覆部材を前記隅部に取り付ける取り付け部材と、
を備えたことを特徴とする鉄塔用の営巣防止装置。
【請求項2】
前記取り付け部材は、前記被覆部材の上面を鉄塔の中心側に向かって下へ傾斜させて、前記被覆部材を取り付ける請求項1に記載の鉄塔用の営巣防止装置。
【請求項3】
前記取り付け部材は、鉄塔の構成部材同士を連結している既設のボルトの先端に螺合するナット部を有している請求項1又は2に記載の鉄塔用の営巣防止装置。
【請求項4】
前記取り付け部材は、前記被覆部材の上面の傾斜角度を変更可能とする角度調整部を有している請求項1〜3のいずれか一項に記載の鉄塔用の営巣防止装置。
【請求項5】
前記取り付け部材は、前記被覆部材の高さを変更可能とする高さ調整部を有している請求項1〜4のいずれか一項に記載の鉄塔用の営巣防止装置。
【請求項6】
前記取り付け部材は、前記被覆部材と一体である固定部材と、前記固定部材に形成されている孔を通過させると共に鉄塔の構成部材の一部を周回して当該固定部材を当該構成部材の一部と共締めする帯部材とを有し、
前記孔は、前記構成部材の一部の大きさに応じて、複数形成されている請求項1又は2に記載の鉄塔用の営巣防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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