説明

鉄筋篭製作方法、及び鉄筋篭製作装置

【課題】 コンクリート構造体の角部に配置するL字状の鉄筋篭を作業効率よく組み上げる。
【解決手段】 L字状の外網筋を角部を上にして配置する。次に、外網筋の下方に、起上り装置4,5に載せた平面状の2枚の内網筋半体92A,92Bを配置する。次に、起上り装置4,5を用いて、2枚の内網筋半体92A,92Bのそれぞれを、外網筋の各辺と平行に傾斜させる。そして、外網筋と内網筋半体92A,92Bを結束して鉄筋篭を組み上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーソン等の大型のコンクリート構造体を構築するための鉄筋篭の製作方法、及びそれに用いる鉄筋篭の製作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーソン等の大型のコンクリート構造体を構築するには、多数本の鉄筋を組み合わせて構築した鉄筋篭が用いられる。鉄筋篭を製作するには、鉄筋を網筋に配筋してから結束し、結束を終えた2枚の網筋を幅止め筋により連結して鉄筋篭に組み立てる。構築途中のコンクリート構造体に一本ずつ鉄筋を組み付けるのでは、鉄筋篭の組み立てに多くの時間と作業員を要してしまう。そこで、前もって鉄筋篭をある程度の大きさに組み上げておき、コンクリート構造体に吊り込んで組み付けることが好ましい。コンクリート構造体の平面壁部分に配置する鉄筋篭の効率的な組み立て方法が、特開平5−270238号公報に記載されている。
【特許文献1】特開平5−270238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
構築するコンクリート構造体が上から見て矩形である場合には、コンクリート構造体の角部に配置する鉄筋篭は、上から見てL字状に構成する必要がある。特許文献1に記載される鉄筋篭の組み立て方法では、コンクリート構造体の平面部分に配置する鉄筋篭を組み上げることができるのみであり、L字状の鉄筋篭を組み上げることはできない。よって、コンクリート構造体の角部に配置するL字状の鉄筋篭は、作業員が鉄筋を一本ずつ配筋して結束することで組み上げられており、鉄筋篭の組み上げの作業効率が悪い。特に、コンクリート構造体の角部の鉄筋篭には、鉄筋篭を補強するハンチ筋や幅止め筋を組み付ける必要があるため、特に作業効率が悪く、多くの作業員と作業時間を要していた。
【0004】
そこで、本発明は、コンクリート構造体の角部に配置するL字状の鉄筋篭を作業効率よく組み上げることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するために、本発明は、コンクリート構造体の角部に配置されるL字状の鉄筋篭を製作する鉄筋篭製作方法であって、L字状の外網筋を角部を上にして配置する外網筋配置工程と、起上り装置に平面状の2枚の内網筋半体をそれぞれ配置し、起上り装置を用いて2枚の内網筋半体のそれぞれを傾斜させL字状に結合して内網筋を形成する内網筋形成工程と、外網筋と内網筋を結束して鉄筋篭を組み上げる鉄筋篭組み上げ工程と、を行うことを特徴とする。この鉄筋篭製作方法によれば、起上り装置を用いて内網筋半体を傾斜させることで、L字状の内網筋を容易に組み上げることができる。さらには、角部を上にして配置されたL字状の外網筋と、組み上げられた内網筋とを結束することで、鉄筋篭を容易に組み上げることができる。よって、コンクリート構造体の角部に配置するL字状の鉄筋篭を作業効率よく組み上げることができる。
【0006】
また、上述した鉄筋篭製作方法の外網筋配置工程では、L字状の外網横筋を角部を上にして配筋し、外網横筋の下方に、起上り装置に載せた直線状の外網縦筋を配筋し、起上り装置を用いて外網縦筋を外網横筋の各辺に当接するように傾斜させ、外網縦筋と外網横筋を結束することが好ましい。これによれば、一度に多数本の外網縦筋と外網横筋を配筋して、外網筋を作業効率よく組み上げることができるため、L字状の鉄筋篭を作業効率よく組み上げることができる。また、鉄筋篭を組み上げるための装置構成を簡易なものとすることができる。
【0007】
また、上述した鉄筋篭製作方法の内網筋半体配置工程では、起上り装置を、鉄筋篭組み上げ位置に敷設されたレールに沿って移動して、外網筋の下方に内網筋半体を配置することが好ましい。これによれば、外網筋と内網筋半体を互いに別の場所で組み上げることができるため、組み上げるための作業領域を十分に確保できる。よって、L字状の鉄筋篭を作業効率よく組み上げることができる。また、起上り装置をレールに沿って移動することで、内網筋を位置精度よく配置することができる。
【0008】
また、上述した鉄筋篭製作方法の内網筋半体配置工程では、外網筋が搭載されたフレームを、鉄筋篭組み上げ位置に敷設されたレールに沿って移動して、外網筋の下方に内網筋半体を配置することが好ましい。これによれば、外網筋と内網筋半体を互いに別の場所で組み上げることができるため、組み上げるための作業領域を十分に確保できる。よって、L字状の鉄筋篭を作業効率よく組み上げることができる。また、起上り装置をレールに沿って移動することで、外網筋を位置精度よく配置することができる。
【0009】
また、上述した鉄筋篭製作方法の内網筋半体配置工程では、起上り装置を、鉄筋篭組み上げ位置に敷設された第一のレールに沿って移動し、外網筋が搭載されたフレームを、第一のレールと直交する第二のレールに沿って移動し、外網筋の下方に内網筋半体を配置することが好ましい。これによれば、第一,第二のレールが交差する位置まで起上り装置及びフレームを移動することで、L字状の鉄筋篭を作業効率よく組み上げることができる。
【0010】
上述した目的を達成するために、本発明は、コンクリート構造体の角部に埋設される鉄筋篭を製作するための鉄筋篭製作装置であって、鉄筋篭の組み上げ位置に対し進退可能とし、L字状の外網筋を角部を上にして支持可能であるL字フレームと、鉄筋篭の組み上げ位置に対し進退可能とし、平面状の内網筋半体を保持可能な保持部を有し、当該保持部の傾斜角が変更自在に構成されている起上り装置と、を備えることを特徴とする。この鉄筋篭製作装置によれば、外網筋の下に内網筋半体を配置して、起上り装置により2枚の内網筋半体のそれぞれを外網筋の各辺と平行に傾斜させて、外網筋と内網筋半体を互いに結束して鉄筋篭を組み上げるため、コンクリート構造体の角部に配置するL字状の鉄筋篭を作業効率よく組み上げることができる。
【0011】
また、上述した鉄筋篭製作装置では、鉄筋篭組み上げ位置に第一のレール及び第二のレールが直交して敷設されており、L字フレームが第一のレールに沿って移動可能とされており、起上り装置が第二のレールに沿って移動可能とされていることが好ましい。これによれば、第一,第二のレールが交差する位置まで起上り装置及びフレームを移動することで、L字状の鉄筋篭を作業効率よく組み上げることができる。
【0012】
また、上述した鉄筋篭製作装置では、外網筋を吊り上げ可能な吊り上げ架台を備えることが好ましい。これによれば、L字フレーム及び起上り装置を用いて外網筋を組み立てた後に外網筋を吊上げることで、さらに、L字フレーム及び起上り装置を鉄筋篭の組み上げに利用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コンクリート構造体の角部に配置するL字状の鉄筋篭を作業効率よく組み上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る鉄筋篭の製作について説明する。本実施形態の鉄筋篭は、大型のコンクリート構造体であるケーソンの角部に配置することを目的としたものである。
【0015】
先ず、図1を参照して、鉄筋篭の製作装置1について説明する。鉄筋篭を組み上げる作業場には、2本のレール21a,21bが平行に敷設されており、これらのレール21a,21bに沿ってL字フレーム3が移動可能に配置されている。以下、L字フレーム3が配置された2本のレール21a,21bを第一のレールと呼ぶ。また、第一のレール21a,21bと直交するように、別の2本のレール23a,23bが平行に敷設されており、これらのレール23a,23bに沿って2台の起上り装置4,5が移動可能に配置されている。以下、起上り装置4,5が配置された2本のレール23a,23bを第二のレールと呼ぶ。なお、第一のレール21a,21bと第二のレール23a,23bは直交しており、上から見れば十字状に敷設されている。第一のレール21a,21bと第二のレール23a,23bが交差する位置が、鉄筋篭を組み上げるための組み上げ位置となっている。
【0016】
L字フレーム3は、幅太の鋼材を複数組み合わせて形成された基部31に、複数(本実施形態では4本)の竿部材32,33,34,35を結合して構成されている。L字フレーム3の基部31の上側は、2本のL字状の鋼材31aを角部を上にして平行に配置して形成されている。4本の竿部材32〜35のそれぞれは、直線状の棒状の部材であり、一端をL字状の鋼材31aに固定して、他端をレール交差位置に向けて水平に延出している。4本の竿部材32〜35の一端はL字状の鋼材を固定されているため、4本の竿部材32〜35の上にはL字状の鉄筋を角部を上にして載置可能となっている。一方、L字フレーム3の基部31の下側は、第一のレール21a,21bに対向する位置まで延びた鋼材31bを含んで形成されている。この鋼材31bの下面には、第一のレール21a,21b上を転動するローラ(不図示)が設けられており、L字フレーム3は第一のレール21a,21bに沿って移動可能となっている。
【0017】
2台の起上り装置4,5のそれぞれは、箱型の台車41,51の上面に、レール交差位置に向けて延びる一対のアーム42a,42b,52a,52bの基端を回動可能に連結して構成されている。一対のアーム42a,42b,52a,52bの先端部、中間部、基端部の各位置には、台車4,5の幅方向に延びる棒材44,54が架設されており、2本のアーム42a,42b,52a,52bは互いに固定されている(図15参照)。台車41,51のレール交差位置側の側面には油圧ジャッキ45,55の一端が固定されており、油圧ジャッキ45,55の他端は2本のアーム42a,42b,52a,52bに架設された棒材44,54に固定されている。油圧ジャッキ45,55の油圧を調節することにより、一対のアーム42a,42b,52a,52bの傾斜角度を調節可能となっている。また、台車41,51の下面には、第二のレール23a,23b上を転動するローラ46が設けられており、起上り装置4,5は第二のレール23a,23bに沿って移動可能となっている。
【0018】
図14,図15に示されるように、第一,第二の起上り装置4,5のアーム42,52の上には、棒材61を矩形に結合して構成されたテンプレート6を載置可能となっている。テンプレート6を構成する棒材61はアーム42,52に形成された溝48に嵌合されるため、テンプレート6の位置ずれは防止されている。また、テンプレート6の側部の棒材61にはネジ穴が加工されており、このネジ穴にはオフセット調節部材64が螺合されている。オフセット調節部材64の先端はアーム42,52に当接して、アーム42,52に対するテンプレート6の位置を規定している。オフセット調節部材64を操作することで、オフセット調節部材64の先端の位置を調節して、アーム42,52に対するテンプレート6の位置を調節可能となっている。また、テンプレート6には、アーム42,52の延伸方向にスライド自在に構成された可動枠62が取り付けられている。
【0019】
後述するように、L字フレーム3、起上り装置4,5及びテンプレート6の上には鉄筋が配置される。L字フレーム3、起上り装置4,5及びテンプレート6において、鉄筋と当接する位置には、図14,15の符号47,57,63に示されるようなU字状の止め部材が設けられている。これにより、L字フレーム3、起上り装置4,5及びテンプレート6の上に配置された鉄筋の位置ずれを防止することができる。具体的には、L字フレーム3の竿部材32〜35に設けられた止め部材により、外網横筋の位置ずれが防止される。また、起上り装置4,5の各アーム42a,42b,52a,52bに設けられた止め部材47,57により、外網縦筋及び内網縦筋の位置ずれが防止される。また、テンプレート6に棒材61に設けられた止め部材により、外網横筋の位置ずれが防止される。特に、テンプレート6の可動枠62の先端に設けられた止め部材63により、外網横筋の先端屈曲部が向く方向のずれが防止される。
【0020】
また、鉄筋篭を組み上げる作業場には、吊り上げ架台8が設けられている。吊り上げ架台8は、レール脇の地面から上方に立設された脚部82と、レール交差位置の上方に配置され該脚部82に支えられた矩形の枠81と、で構成されている。矩形の枠81には4つの電動チェーンブロック(引き上げ器)83が吊り下げられている。なお、他の実施形態では、吊り上げ架台8の下部に台車を設け、吊り上げ架台8を第一のレール21a,21bに沿って移動可能としてもよい。
【0021】
次に、図1〜図13を参照して、鉄筋篭の製作方法について説明する。
【0022】
先ず、図1〜図7を参照して、外網筋の組み上げ工程について説明する。図1に示されるように、鉄筋を運搬する作業や鉄筋を配筋する作業の作業性を考慮して、L字フレーム3と起上り装置4,5をレール交差位置から離れた位置に配置する。そして、L字フレーム3の4本の竿部材32〜35に、複数のL字状の外網横筋91aを角部を上にして一定間隔ごとに平行に並べて、外網横筋91aを配筋する。また、各起上り装置4,5のアーム42a,42b,52a,52bの上に、複数の直線状の外網縦筋91bを一定間隔ごとに平行に並べて、外網縦筋91bを配筋する。ここで、第一の起上り装置4のアーム42a,42b上に配筋される外網縦筋91bは、後にL字状の外網横筋91aの手前側の一辺に当接するものであり、一方、第二の起上り装置5のアーム52a,52b上に配筋される外網縦筋91bは、後にL字状の外網横筋91aの奥側の一辺に当接するものである。
【0023】
上述したように本実施形態では、L字フレーム3の4本の竿部材32〜35の上にL字状の外網横筋91aを架けることにより、外網横筋91aを規定の位置に配置することができるため、外網横筋91aの配筋作業は効率が良くなっており、作業時間を短縮することができる。また、起上り装置4,5のアーム42a,42b,52a,52bの上に外網縦筋91bを置くだけで、外網縦筋91bを規定の位置に配置することができるため、外網縦筋91bの配筋作業は効率が良くなっており、作業時間を短縮することができる。特に、外網縦筋91bの配筋作業を行うときに、起上り装置4,5のアーム42a,42b,52a,52bは水平にされているので、外網縦筋91bの配筋作業は容易にされている。
【0024】
次に、図2に示されるように、作業員がL字フレーム3を押して、L字フレーム3をレール交差位置方向に移動し、L字フレーム3に架けられた外網横筋91aをレール交差位置の上方に移動する。さらに、図3に示されるように、作業員が第一の起上り装置4を押して、第一の起上り装置4をレール交差位置方向に移動し、第一の起上り装置4のアーム42a,42b上に並べられた外網縦筋91bをレール交差位置の上方に移動する。そして、図4に示されるように、第一の起上り装置4の油圧ジャッキ45の油圧を調節して、一対のアーム42a,42bを上方に回動させる。ここで、一対のアーム42a,42bは、L字状の外網横筋91aの手前側の一辺に平行に傾斜し、外網縦筋91bが外網横筋91aにほぼ当接した状態となるまで回動される。
【0025】
また、図4に示されるように、作業員が第二の起上り装置5を押して、第二の起上り装置5をレール交差位置方向に移動し、第二の起上り装置5のアーム52a,52b上に並べられた外網縦筋91bがレール交差位置の上方に移動する。そして、図5に示されるように、第二の起上り装置5の油圧ジャッキ55の油圧を調節して、一対のアーム52a,52bを上方に回動させる。ここで、一対のアーム52a,52bは、L字状の外網横筋91aの奥側の一辺に平行に傾斜し、外網縦筋91bが外網横筋91aにほぼ当接した状態となるまで回動される。なお、第一,第二の起上り装置4,5のアーム42a,42b,52a,52bを傾斜させても、アーム42a,42b,52a,52b上に配置される外網縦筋91bはアームの止め部材47,57に保持されるため、外網縦筋91bは位置ずれすることがない。
【0026】
上述したように、L字フレーム3に架けられた外網横筋91aの下方で、外網縦筋91bが架けられた起上り装置4,5のアーム42a,42b,52a,52bを回動することにより、外網横筋91aと外網縦筋91bが格子状に配列され、外網筋91が配筋される。そして、このように格子状に配列された外網横筋91aと外網縦筋91bを結束して一体化することで、L字状の外網筋91が完成する。本実施形態では、上述したように、L字フレーム3に架けられた外網横筋91aの下方で、外網縦筋91bが並べられた起上り装置4,5のアーム42a,42b,52a,52bを回動することで、格子状の外網筋91が配筋されるため、外網筋91の配筋の作業効率を良くして、配筋作業に要する作業員を減らし、作業時間を短縮することができる。
【0027】
次に、図6に示されるように、吊り上げ架台8に設けられた4つの電動チェーンブロック83を用いて、完成した外網筋91を吊り上げて上方に移動させる。これにより、外網筋91の支持がL字フレーム3から吊り上げ架台8に移る。よって、次に行う内網筋の組み上げのために、L字フレーム3を自由にすることができ、また、外網筋91の下方に内網筋を組み上げるための作業領域を確保することができる。なお、吊り上げ架台8で外網筋91を吊り上げても十分な作業領域を確保できない場合には、既述したように吊り上げ架台8を第一のレール21a,21bに沿って移動可能に構成し、外網筋91をレール交差位置から退避させればよい。
【0028】
次に、図7〜図12を参照して、内網筋の組み上げ工程について説明する。なお、図7〜図12では、説明の便宜のため、完成した外網筋91と吊り上げ架台8の脚部82の図示を省略する。先ず、図7に示されるように、作業員がL字フレーム3を押して、L字フレーム3をレール交差位置から退避させる。また、第一,第二の起上り装置4,5のアーム42a,42b,52a,52bを下方に回動させてから、作業員が第一,第二の起上り装置4,5を押して、第一,第二の起上り装置4,5をレール交差位置から退避させる。
【0029】
次に、第一,第二の起上り装置4,5のアーム42a,42b,52a,52b上に、テンプレート6a,6bを載置する。ここで、オフセット調節部材64を操作して、第一の起上り装置4のアーム上に載置されたテンプレート6aの位置に対して、第一の起上り装置4のアーム上に載置されたテンプレート6bの位置を100mmほどずらしておく。また、可動枠62をレール交差位置の方向にスライド移動して、可動枠62を延出させておく。そして、テンプレート6上に、ほぼ直線状であり先端が屈曲した内網横筋92aを平行に並べて、内網横筋92aを配筋する。ここで、テンプレート6に設けられた止め部材(不図示)により、内網横筋92aの位置ずれは防止されている。また、可動枠62に設けられた止め部材63により、内網横筋92aの先端屈曲部は下方に向くように位置決めされている。
【0030】
次に、図8に示されるように、テンプレート6a,6bに並べられた内網横筋92aの上に、複数本の内網縦筋92bを平行に並べて、内網縦筋92bを配筋する。これにより内網横筋92aと内網縦筋92bが格子状に配筋され、内網筋92A,92Bが配筋される。そして、このように格子状に配列された内網横筋92aと内網縦筋92bを結束して一体化する。なお、以下の説明で、第一の起上り装置4に載った内網筋92Aを第一の内網筋半体と呼び、第二の起上り装置5に載った内網筋92Bを第二の内網筋半体と呼ぶ。
【0031】
第一,第二の内網筋半体92A,92Bの結束作業が終わると、テンプレート6の可動枠62をアーム42a,42b,52a,52bの基端方向にスライド移動して、テンプレート6の可動枠62を収納する。これにより、次工程における可動枠62同士の干渉が防止される。なお、内網横筋92aから可動枠62を離しても、内網横筋92aと内網縦筋92bは既に結束されているため、内網横筋92aが軸線回りに回動することがなく、内網横筋92aの先端屈曲部の方向がずれることがない。
【0032】
次に、図9に示されるように、作業者が第一の起上り装置4を押して、第一の起上り装置4をレール交差位置方向に移動し、第一の内網筋92Aをレール交差位置の上方に移動する。そして、図10に示されるように、第一の起上り装置4の油圧ジャッキ45の油圧を調節して、一対のアーム42a,42bを上方に回動させる。ここで、一対のアーム42a,42bは、地面に対して45°に傾斜した状態、言い換えれば外網筋91の手前側の一辺と平行な状態となるまで回動される。
【0033】
次に、図11に示されるように、作業者が第二の起上り装置5を押して、第二の起上り装置5をレール交差位置方向に移動し、第二の内網筋半体92Bをレール交差位置の上方に移動する。そして、図12に示されるように、第二の起上り装置4,55の油圧ジャッキ45の油圧を調節して、一対のアーム52a,52bを上方に回動させる。ここで、一対のアーム52a,52bは、地面に対して45°に傾斜した状態、言い換えれば外網筋91の奥側の一辺と平行な状態となるまで回動される。これにより、第一の内網筋半体92Aと第二の内網筋半体92Bは直交する。
【0034】
次に、可動枠62の横に取り付けられたオフセット調節部材64を操作して、テンプレート6を横方向にスライド移動させる。これにより、第一の内網筋半体92Aを構成する内網横筋92aと、第二の内網筋半体92Bを構成する内網横筋92aが当接する。そして、内網横筋92aが互いに当接した部位を結束して、L字状の内網筋92を完成する。次に、図13に示されるように、L字状の内網筋92の角部にハンチ筋93を配筋して、内網筋92とハンチ筋93を結束する。また、内網筋92に幅止め筋94を結束する。そして、電動チェーンブロック83を動作させて、内網筋92の先端屈曲部、ハンチ筋93及び幅止め筋94と当接する位置まで外網筋91を下降させて、各部材を結束する。これにより、コンクリート構造体の角部に配置する鉄筋篭が完成する。
【0035】
上述したように本実施形態では、L字状の外網筋91を角部を上にして配置し、外網筋91の下方に起上り装置4,5に載せた平面状の2枚の内網筋半体92A,92Bを配置し、起上り装置4,5を用いて2枚の内網筋半体92のそれぞれを外網筋91の各辺と平行に傾斜させ、外網筋91と内網筋92を結束して鉄筋篭を組み上げている。従来技術のL字状の鉄筋篭の製作方法では、コンクリート構造体の建設現場において作業員が鉄筋を一本ずつ配筋する必要があり、外網筋91を配筋する作業は多くの作業員を要し、作業効率が悪かった。これに対して、本実施形態の鉄筋篭製作方法によれば、コンクリート構造体の角部に配置するL字状の鉄筋篭を作業効率よく組み上げることができる。これにより、鉄筋篭の組み上げの作業員を減らし、作業時間を短縮することができる。特に、建設工事現場において網筋組立ては工事を遅延させる要因となることから、L字状の鉄筋篭をプレファブ化して、組み上げられた鉄筋篭をケーソン等の建設現場に搬入することで工期短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】鉄筋篭の製作過程における第1工程を示す斜視図である。
【図2】鉄筋篭の製作過程における第2工程を示す斜視図である。
【図3】鉄筋篭の製作過程における第3工程を示す斜視図である。
【図4】鉄筋篭の製作過程における第4工程を示す斜視図である。
【図5】鉄筋篭の製作過程における第5工程を示す斜視図である。
【図6】鉄筋篭の製作過程における第6工程を示す斜視図である。
【図7】鉄筋篭の製作過程における第7工程を示す斜視図である。
【図8】鉄筋篭の製作過程における第8工程を示す斜視図である。
【図9】鉄筋篭の製作過程における第9工程を示す斜視図である。
【図10】鉄筋篭の製作過程における第10工程を示す斜視図である。
【図11】鉄筋篭の製作過程における第11工程を示す斜視図である。
【図12】鉄筋篭の製作過程における第12工程を示す斜視図である。
【図13】鉄筋篭の製作過程における第13工程を示す斜視図である。
【図14】起上り装置を示す側面図である。
【図15】起上り装置を示す正面図である。
【符号の説明】
【0037】
1…鉄筋篭製作装置
3…L字フレーム
4…第一の起上り装置
5…第二の起上り装置
6…テンプレート
8…吊り上げ架台
21a,21b…第一のレール
23a,23b…第二のレール
91…外網筋
91a…外網横筋
91b…外網縦筋
92…内網筋
92a…内網横筋
92b…内網縦筋
93…ハンチ筋
94…幅止め筋


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造体の角部に配置されるL字状の鉄筋篭を製作する鉄筋篭製作方法であって、
L字状の外網筋を角部を上にして配置する外網筋配置工程と、
起上り装置に平面状の2枚の内網筋半体をそれぞれ配置し、前記起上り装置を用いて前記2枚の内網筋半体のそれぞれを傾斜させL字状に結合して内網筋を形成する内網筋形成工程と、
前記外網筋と前記内網筋を結束して鉄筋篭を組み上げる鉄筋篭組み上げ工程と、
を行うことを特徴とする鉄筋篭製作方法。
【請求項2】
前記外網筋配置工程では、L字状の外網横筋を角部を上にして配筋し、前記外網横筋の下方に、起上り装置に載せた直線状の外網縦筋を配筋し、前記起上り装置を用いて前記外網縦筋を前記外網横筋の各辺に当接するように傾斜させ、前記外網縦筋と前記外網横筋を結束することを特徴とする請求項1に記載の鉄筋篭製作方法。
【請求項3】
前記内網筋半体配置工程では、前記起上り装置を、鉄筋篭組み上げ位置に敷設されたレールに沿って移動して、前記外網筋の下方に前記内網筋半体を配置することを特徴とする請求項1に記載の鉄筋篭製作方法。
【請求項4】
前記内網筋半体配置工程では、前記外網筋が搭載されたフレームを、鉄筋篭組み上げ位置に敷設されたレールに沿って移動して、前記外網筋の下方に前記内網筋半体を配置することを特徴とする請求項1に記載の鉄筋篭製作方法。
【請求項5】
前記内網筋半体配置工程では、前記起上り装置を、鉄筋篭組み上げ位置に敷設された第一のレールに沿って移動し、前記外網筋が搭載されたフレームを、前記第一のレールと直交する第二のレールに沿って移動し、前記外網筋の下方に前記内網筋半体を配置することを特徴とする請求項1に記載の鉄筋篭製作方法。
【請求項6】
コンクリート構造体の角部に埋設される鉄筋篭を製作するための鉄筋篭製作装置であって、
鉄筋篭の組み上げ位置に対し進退可能とし、L字状の外網筋を角部を上にして支持可能であるL字フレームと、
鉄筋篭の組み上げ位置に対し進退可能とし、平面状の内網筋半体を保持可能な保持部を有し、当該保持部の傾斜角が変更自在に構成されている起上り装置と、
を備えることを特徴とする鉄筋篭製作装置。
【請求項7】
第一のレール及び第二のレールが直交して十字状に敷設されており、
前記L字フレームが搭載された台車が第一のレールに沿って移動可能とされており、
前記起上り装置が搭載された台車が第二のレールに沿って移動可能とされている
ことを特徴とする請求項6に記載の鉄筋篭製作装置。
【請求項8】
前記外網筋を吊り上げ可能な吊り上げ架台を備えることを特徴とする請求項6に記載の鉄筋篭製作装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−249743(P2006−249743A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−66124(P2005−66124)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)