鉄道車両
【課題】車輪の転動音を低減するための防音部材を車輪がレールに接する位置に近付けることができ、防音効果を十分に高めることができる台車構造を備えた鉄道車両を提供する。
【解決手段】軸箱15に固着される保持部材21に、柔軟性を有する防音部材22を取り付ける。保持部材は、車輪14bの車体外方側で、下端部があらかじめ設定された位置より上方に位置した状態で軸箱に固着される。防音部材は、車輪がレール17を転動する位置の車体外方側でレールと平行な方向に配置され、防音部材の上部が保持部材に上下位置調整可能な状態で取り付けられるとともに、防音部材の下端部がレール面より上方に位置している。
【解決手段】軸箱15に固着される保持部材21に、柔軟性を有する防音部材22を取り付ける。保持部材は、車輪14bの車体外方側で、下端部があらかじめ設定された位置より上方に位置した状態で軸箱に固着される。防音部材は、車輪がレール17を転動する位置の車体外方側でレールと平行な方向に配置され、防音部材の上部が保持部材に上下位置調整可能な状態で取り付けられるとともに、防音部材の下端部がレール面より上方に位置している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関し、詳しくは、車輪の転動音の拡散を抑制するための遮音構造を有する台車を装着した鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
高速で走行する鉄道車両では、周辺環境への配慮から、騒音源となる床下機器などからの作動音の拡散を抑制するための防音カバーを設けることが行われている。また、車輪の転動音の拡散を抑制するため、車輪がレールに接する近傍で、台車の幅方向に向けて車輪の側面からレールの幅寸法だけ離れた位置に、レールの長手方向に沿う吸音材を軸箱体に固定した鉄道車両用台車が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この鉄道車両用台車では、軸箱体に取り付けた鉄系の金属板からなる取付受のレール側に吸音材を取り付け、走行中の鉄道車両が脱線した場合、車輪と吸音材(取付受)とでレールを挟み込むことによってレールによるガイド機能を得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−272994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された構造では、軸箱体に取り付けた取付受が金属製であるから、取付受の下端の位置が、車両限界や他に設定された限界より高い位置に制限されるため、吸音材の位置が車輪がレールに接する位置よりも高くなり、吸音材下部から転動音が周辺環境に拡散され、十分な吸音効果を得ることができなかった。
【0006】
そこで本発明は、車輪の転動音を吸収あるいは車体内側方向に反射させるための防音部材を車輪がレールに接する高さ位置に近付けることができ、防音効果を十分に高めることができる台車構造を備えた鉄道車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の鉄道車両は、車輪を装着した車軸の両端部をそれぞれ軸箱に回転可能に支持した台車を備えた鉄道車両において、前記軸箱に固着される金属製の保持部材と、該保持部材に取り付けられる柔軟性を有する防音部材とを備え、前記保持部材は、前記車輪の車体外方側で、下端部があらかじめ設定された位置より上方に位置した状態で該保持部材の上部が前記軸箱に固着され、前記防音部材は、前記車輪がレールを転動する位置の車体外方側でレールと平行な方向に配置され、該防音部材の上部が前記保持部材に取り付けられるとともに、該防音部材の下端部がレール面より上方に位置していることを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明の鉄道車両における前記防音部材は、前記保持部材に対して上下位置調整可能に取り付けられていることを特徴としている。また、前記保持部材の上部は、前記軸箱の下面、前記軸箱の下部外面、前記軸箱の車軸保持部の外面、前記軸箱の車軸保持部の内面のいずれかに固着されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の鉄道車両によれば、防音部材が柔軟性を有しているため、車両限界や他に設定された限界より低い位置に防音部材を配置することが可能となり、防音部材の位置を、車輪がレールに接する高さ位置に近付けることができる。これにより、防音部材による防音効果を向上させることができる。さらに、防音部材を保持部材に対して上下位置調整可能に取り付けることにより、車輪削正時の高さ変化にも容易に対応することができる。また、保持部材は、軸箱の構造や軸箱に設けられる他の機器との関係に応じて、軸箱の下面、軸箱の外面、軸箱の車軸保持部の外面、軸箱の車軸保持部の内面のいずれかを選択して固着できるので、各種構造の軸箱に対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の鉄道車両の第1形態例を示す台車の正面図である。
【図2】同じく要部の正面図である。
【図3】同じく要部の側面図である。
【図4】本発明の鉄道車両の第2形態例を示す台車の要部の正面図である。
【図5】同じく要部の側面図である。
【図6】本発明の鉄道車両の第3形態例を示す台車の要部の正面図である。
【図7】同じく要部の側面図である。
【図8】本発明の鉄道車両の第4形態例を示す台車の要部の正面図である。
【図9】同じく要部の側面図である。
【図10】図9のX−X断面図である。
【図11】本発明の鉄道車両の第5形態例を示す台車の要部の正面図である。
【図12】同じく要部の一部断面側面図である。
【図13】本発明の鉄道車両の第6形態例を示す台車の要部の正面図である。
【図14】同じく要部の一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、図1乃至図3に示す本発明の第1形態例において、本形態例に示す鉄道車両の台車10は、空気ばね11を介して車体を弾性支持する台車枠12と、台車枠12の前後にそれぞれ軸箱支持装置13を介して保持された前後一対の輪軸14とを備えている。軸箱支持装置13は、いわゆるウイング式であり、輪軸14の車軸14aの両端部をそれぞれ回転可能に保持する軸箱15の前後両方向にウイング部15aがそれぞれ突設され、各ウイング部15aと台車枠12との間に一対のコイルバネからなる軸ばね16がそれぞれ設けられている。さらに、前記軸箱15の下面には、金属製の保持部材21を介して柔軟性を有する防音部材22が設けられている。
【0012】
本形態例における保持部材21は、軸箱15の下面に固着ボルト23によって固着される固着板部21aと、該固着板部21aの下面に枕木方向に設けられた複数の支持椀21bと、該支持椀21bの外端に設けられた取付板部21cとを有している。取付板部21cは、輪軸14の車輪14bの車体外方側で、板面をレール方向かつ鉛直方向に向けて配置された金属材料からなるものであって、該取付板部21cには、鉛直方向に長い長孔からなる防音部材取付用のボルト挿通孔24が複数箇所に設けられている。この保持部材21における最下端部、本形態例では取付板部21cの下縁は、あらかじめ設定された位置、例えば、バネ下部品下部限界値として設定され位置、具体的には、レール面から60〜70mm高い位置より上方に位置するように、保持部材21の形状や大きさが設定されている。
【0013】
防音部材22は、車輪14bがレール17を転動する位置の車体外方側でレールと平行な方向に配置される板状部材であって、柔軟性を有するだけでなく、車輪14bがレール17を転動する転動音を吸収可能で、かつ、走行風に耐えられる強度を有し、耐候性にも優れた材料によって形成されている。材料としては、例えば、ウレタンフォームや半硬質ゴム、自動車タイヤ用に用いられているゴムなどを単独で、あるいは、適宜組み合わせて使用することができる。
【0014】
また、防音部材22は、最下端がレール17の上面より上方に位置するように、例えば、防音部材22の最下端がレール面から10〜30mm上方に位置するように設けられており、分岐器などのレール17が交差する場所や踏切などを鉄道車両が走行する際に、防音部材22がレール17や踏板に接触しないようにしている。
【0015】
さらに、防音部材22の上端部には、保持部材21の前記ボルト挿通孔24に対応した複数の取付用通孔25が設けられており、各ボルト挿通孔24及び各取付用通孔25にそれぞれ挿通した取付ボルト26と取付ナット27とによって防音部材22が保持部材21に取り付けられ、ボルト挿通孔24への取付ボルト26の挿通位置を変えることにより、防音部材22の取り付け高さ、すなわち、防音部材22の最下端の位置を調整できるようにしている。これにより、車輪14bの削正を行って車輪14bの直径が小さくなった場合でも、防音部材22の最下端の位置をあらかじめ設定された位置に容易に調整することができる。
【0016】
このように、車輪14bがレール17を転動する位置の車体外方側でレール17と平行な方向に、柔軟性を有する板状の防音部材22を設けることにより、車輪14bの転動音が周辺環境に拡散することを抑制できる。特に、車輪14bと共に上下動する軸箱15に固着した保持部材21の下方に防音部材22を配置し、金属製の保持部材21の下端部をあらかじめ設定された位置まで低くするとともに、保持部材21の下部に柔軟性を有する防音部材22を吊り下げるようにして設けたことにより、防音部材22を確実に保持できるとともに、防音部材22の位置をレール17の近くまで下げることが可能となり、防音部材22による防音効果を向上させることができる。
【0017】
図4及び図5は、本発明の第2形態例を示している。なお、以下の説明において、前記第1形態例に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0018】
本形態例は、軸箱15の外面下部に板状の保持部材31の上部を固着ボルト32にて固着するとともに、該保持部材31の下部に、前記第1形態例と同様の防音部材22を取り付けた例を示している。本形態例においても、保持部材31の下部には、前記同様に鉛直方向に長い長孔からなる複数のボルト挿通孔24が設けられており、防音部材22は、各ボルト挿通孔24及び各取付用通孔25にそれぞれ挿通した取付ボルト26と取付ナット27とにより、保持部材31に上下位置が調整可能に取り付けられる。
【0019】
図6及び図7は、本発明の第3形態例を示すもので、本形態例では、軸箱15の車軸保持部15bの外面に保持部材41の上部を固着している。車軸保持部15bは、車軸14aの端部を囲繞するように円筒形に形成されており、保持部材41の上部には、車軸保持部15bの円筒形状の端面外周部に対応するリング状の固着部41aが設けられ、保持部材41の下部には、前記各形態例と同様に、板面をレール方向かつ鉛直方向に向けて配置された取付板部41bが設けられるとともに、該取付板部41bの下部には、前記同様に、鉛直方向に長い長孔からなる複数のボルト挿通孔24が設けられている。
【0020】
本形態例においても、保持部材41の固着部41aが複数の固着ボルト42によって車軸保持部15bの外面に固着されるとともに、取付板部41bに設けられた各ボルト挿通孔24と防音部材22の上部に設けられた各取付用通孔25とにそれぞれ挿通した取付ボルト26と取付ナット27とにより、保持部材41の下部に、防音部材22が上下位置の調整が可能な状態で取り付けられる。
【0021】
図8乃至図10は、本発明の第4形態例を示すもので、本形態例では、軸箱15の車軸保持部15bの内面に保持部材51の上部を固着している。保持部材51の上部には、車軸14aを挿通可能な内径の車軸挿通孔51aを有するリング状の固着部51bが設けられており、該固着部51bは、車軸保持部15bに保持される車軸14aを車軸挿通孔51aに挿通した状態で車軸保持部15bの内面に複数の固着ボルト52にて固着される。
【0022】
保持部材51の下部には、前記各形態例と同様に、板面をレール方向かつ鉛直方向に向けて配置された取付板部51cが設けられるとともに、該取付板部51cには、鉛直方向に長い長孔からなる複数のボルト挿通孔24が設けられている。本形態例においても、保持部材51の下部に設けられた各ボルト挿通孔24と、防音部材22の上部に設けられた各取付用通孔25とにそれぞれ挿通した取付ボルト26と取付ナット27とにより、防音部材22が上下位置の調整が可能な状態で保持部材51に取り付けられる。
【0023】
図11及び図12は、本発明の第5形態例を示すもので、本形態例では、ウイング部15aの上面と軸ばね16の下端との間に挿入される調整板の代わりに保持部材61を挿入している。すなわち、保持部材61として、車軸保持部15bに対応するレール方向中間部が切り欠かれた水平方向の一対の固着部61aと、該固着部61aの一側縁から鉛直方向下方に屈曲したレール方向の取付板部61bとを有するL字状の保持部材61を用いるとともに、前記固着部61aをウイング部15aの上面と軸ばね16の下端との間に挿入して固着し、固着部61aの外端側から垂下した取付板部61bに設けた各ボルト挿通孔24と各取付用通孔25とを挿通した取付ボルト26と取付ナット27とにより、保持部材61の下部に、防音部材22を上下位置の調整が可能な状態で取り付けている。
【0024】
図13及び図14は、本発明の第6形態例を示すもので、本形態例では、前記第5形態例に示した保持部材61の挿入方向を逆方向としている。すなわち、第5形態例では、前記取付板部61bが軸箱15の外方に位置するように保持部材61を配置したが、本形態例では、取付板部61bが軸箱15の内方に位置するように保持部材61を配置し、取付板部61bに上下位置調整可能に取り付けた防音部材22と車輪14aとを第5形態例に比べて近接させた状態としている。
【0025】
このように、防音部材22を保持する保持部材の形状を鉄道車両の台車における軸箱の構造や形状に応じて選定することにより、軸箱支持形式がウイング式の台車のように軸箱下部が比較的大きなものから、軸箱支持形式がモノリンク式や軸梁式のように軸箱が比較的小さなものにも適用可能であり、また、保持部材の取付位置を適宜選定することにより、軸箱の外部に速度検出器やブレーキディスクを配置した台車にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0026】
10…台車、11…空気ばね、12…台車枠、13…軸箱支持装置、14…輪軸、14a…車軸、14b…車輪、15…軸箱、15a…ウイング部、15b…車軸保持部、16…軸ばね、17…レール、21…保持部材、21a…固着板部、21b…支持椀、21c…取付板部、22…防音部材、23…固着ボルト、24…ボルト挿通孔、25…取付用通孔、26…取付ボルト、27…取付ナット、31…保持部材、32…固着ボルト、41…保持部材、41a…固着部、41b…取付板部、42…固着ボルト、51…保持部材、51a…車軸挿通孔、51b…固着部、51c…取付板部、52…固着ボルト、61…保持部材、61a…固着部、61b…取付板部
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関し、詳しくは、車輪の転動音の拡散を抑制するための遮音構造を有する台車を装着した鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
高速で走行する鉄道車両では、周辺環境への配慮から、騒音源となる床下機器などからの作動音の拡散を抑制するための防音カバーを設けることが行われている。また、車輪の転動音の拡散を抑制するため、車輪がレールに接する近傍で、台車の幅方向に向けて車輪の側面からレールの幅寸法だけ離れた位置に、レールの長手方向に沿う吸音材を軸箱体に固定した鉄道車両用台車が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この鉄道車両用台車では、軸箱体に取り付けた鉄系の金属板からなる取付受のレール側に吸音材を取り付け、走行中の鉄道車両が脱線した場合、車輪と吸音材(取付受)とでレールを挟み込むことによってレールによるガイド機能を得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−272994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された構造では、軸箱体に取り付けた取付受が金属製であるから、取付受の下端の位置が、車両限界や他に設定された限界より高い位置に制限されるため、吸音材の位置が車輪がレールに接する位置よりも高くなり、吸音材下部から転動音が周辺環境に拡散され、十分な吸音効果を得ることができなかった。
【0006】
そこで本発明は、車輪の転動音を吸収あるいは車体内側方向に反射させるための防音部材を車輪がレールに接する高さ位置に近付けることができ、防音効果を十分に高めることができる台車構造を備えた鉄道車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の鉄道車両は、車輪を装着した車軸の両端部をそれぞれ軸箱に回転可能に支持した台車を備えた鉄道車両において、前記軸箱に固着される金属製の保持部材と、該保持部材に取り付けられる柔軟性を有する防音部材とを備え、前記保持部材は、前記車輪の車体外方側で、下端部があらかじめ設定された位置より上方に位置した状態で該保持部材の上部が前記軸箱に固着され、前記防音部材は、前記車輪がレールを転動する位置の車体外方側でレールと平行な方向に配置され、該防音部材の上部が前記保持部材に取り付けられるとともに、該防音部材の下端部がレール面より上方に位置していることを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明の鉄道車両における前記防音部材は、前記保持部材に対して上下位置調整可能に取り付けられていることを特徴としている。また、前記保持部材の上部は、前記軸箱の下面、前記軸箱の下部外面、前記軸箱の車軸保持部の外面、前記軸箱の車軸保持部の内面のいずれかに固着されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の鉄道車両によれば、防音部材が柔軟性を有しているため、車両限界や他に設定された限界より低い位置に防音部材を配置することが可能となり、防音部材の位置を、車輪がレールに接する高さ位置に近付けることができる。これにより、防音部材による防音効果を向上させることができる。さらに、防音部材を保持部材に対して上下位置調整可能に取り付けることにより、車輪削正時の高さ変化にも容易に対応することができる。また、保持部材は、軸箱の構造や軸箱に設けられる他の機器との関係に応じて、軸箱の下面、軸箱の外面、軸箱の車軸保持部の外面、軸箱の車軸保持部の内面のいずれかを選択して固着できるので、各種構造の軸箱に対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の鉄道車両の第1形態例を示す台車の正面図である。
【図2】同じく要部の正面図である。
【図3】同じく要部の側面図である。
【図4】本発明の鉄道車両の第2形態例を示す台車の要部の正面図である。
【図5】同じく要部の側面図である。
【図6】本発明の鉄道車両の第3形態例を示す台車の要部の正面図である。
【図7】同じく要部の側面図である。
【図8】本発明の鉄道車両の第4形態例を示す台車の要部の正面図である。
【図9】同じく要部の側面図である。
【図10】図9のX−X断面図である。
【図11】本発明の鉄道車両の第5形態例を示す台車の要部の正面図である。
【図12】同じく要部の一部断面側面図である。
【図13】本発明の鉄道車両の第6形態例を示す台車の要部の正面図である。
【図14】同じく要部の一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、図1乃至図3に示す本発明の第1形態例において、本形態例に示す鉄道車両の台車10は、空気ばね11を介して車体を弾性支持する台車枠12と、台車枠12の前後にそれぞれ軸箱支持装置13を介して保持された前後一対の輪軸14とを備えている。軸箱支持装置13は、いわゆるウイング式であり、輪軸14の車軸14aの両端部をそれぞれ回転可能に保持する軸箱15の前後両方向にウイング部15aがそれぞれ突設され、各ウイング部15aと台車枠12との間に一対のコイルバネからなる軸ばね16がそれぞれ設けられている。さらに、前記軸箱15の下面には、金属製の保持部材21を介して柔軟性を有する防音部材22が設けられている。
【0012】
本形態例における保持部材21は、軸箱15の下面に固着ボルト23によって固着される固着板部21aと、該固着板部21aの下面に枕木方向に設けられた複数の支持椀21bと、該支持椀21bの外端に設けられた取付板部21cとを有している。取付板部21cは、輪軸14の車輪14bの車体外方側で、板面をレール方向かつ鉛直方向に向けて配置された金属材料からなるものであって、該取付板部21cには、鉛直方向に長い長孔からなる防音部材取付用のボルト挿通孔24が複数箇所に設けられている。この保持部材21における最下端部、本形態例では取付板部21cの下縁は、あらかじめ設定された位置、例えば、バネ下部品下部限界値として設定され位置、具体的には、レール面から60〜70mm高い位置より上方に位置するように、保持部材21の形状や大きさが設定されている。
【0013】
防音部材22は、車輪14bがレール17を転動する位置の車体外方側でレールと平行な方向に配置される板状部材であって、柔軟性を有するだけでなく、車輪14bがレール17を転動する転動音を吸収可能で、かつ、走行風に耐えられる強度を有し、耐候性にも優れた材料によって形成されている。材料としては、例えば、ウレタンフォームや半硬質ゴム、自動車タイヤ用に用いられているゴムなどを単独で、あるいは、適宜組み合わせて使用することができる。
【0014】
また、防音部材22は、最下端がレール17の上面より上方に位置するように、例えば、防音部材22の最下端がレール面から10〜30mm上方に位置するように設けられており、分岐器などのレール17が交差する場所や踏切などを鉄道車両が走行する際に、防音部材22がレール17や踏板に接触しないようにしている。
【0015】
さらに、防音部材22の上端部には、保持部材21の前記ボルト挿通孔24に対応した複数の取付用通孔25が設けられており、各ボルト挿通孔24及び各取付用通孔25にそれぞれ挿通した取付ボルト26と取付ナット27とによって防音部材22が保持部材21に取り付けられ、ボルト挿通孔24への取付ボルト26の挿通位置を変えることにより、防音部材22の取り付け高さ、すなわち、防音部材22の最下端の位置を調整できるようにしている。これにより、車輪14bの削正を行って車輪14bの直径が小さくなった場合でも、防音部材22の最下端の位置をあらかじめ設定された位置に容易に調整することができる。
【0016】
このように、車輪14bがレール17を転動する位置の車体外方側でレール17と平行な方向に、柔軟性を有する板状の防音部材22を設けることにより、車輪14bの転動音が周辺環境に拡散することを抑制できる。特に、車輪14bと共に上下動する軸箱15に固着した保持部材21の下方に防音部材22を配置し、金属製の保持部材21の下端部をあらかじめ設定された位置まで低くするとともに、保持部材21の下部に柔軟性を有する防音部材22を吊り下げるようにして設けたことにより、防音部材22を確実に保持できるとともに、防音部材22の位置をレール17の近くまで下げることが可能となり、防音部材22による防音効果を向上させることができる。
【0017】
図4及び図5は、本発明の第2形態例を示している。なお、以下の説明において、前記第1形態例に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0018】
本形態例は、軸箱15の外面下部に板状の保持部材31の上部を固着ボルト32にて固着するとともに、該保持部材31の下部に、前記第1形態例と同様の防音部材22を取り付けた例を示している。本形態例においても、保持部材31の下部には、前記同様に鉛直方向に長い長孔からなる複数のボルト挿通孔24が設けられており、防音部材22は、各ボルト挿通孔24及び各取付用通孔25にそれぞれ挿通した取付ボルト26と取付ナット27とにより、保持部材31に上下位置が調整可能に取り付けられる。
【0019】
図6及び図7は、本発明の第3形態例を示すもので、本形態例では、軸箱15の車軸保持部15bの外面に保持部材41の上部を固着している。車軸保持部15bは、車軸14aの端部を囲繞するように円筒形に形成されており、保持部材41の上部には、車軸保持部15bの円筒形状の端面外周部に対応するリング状の固着部41aが設けられ、保持部材41の下部には、前記各形態例と同様に、板面をレール方向かつ鉛直方向に向けて配置された取付板部41bが設けられるとともに、該取付板部41bの下部には、前記同様に、鉛直方向に長い長孔からなる複数のボルト挿通孔24が設けられている。
【0020】
本形態例においても、保持部材41の固着部41aが複数の固着ボルト42によって車軸保持部15bの外面に固着されるとともに、取付板部41bに設けられた各ボルト挿通孔24と防音部材22の上部に設けられた各取付用通孔25とにそれぞれ挿通した取付ボルト26と取付ナット27とにより、保持部材41の下部に、防音部材22が上下位置の調整が可能な状態で取り付けられる。
【0021】
図8乃至図10は、本発明の第4形態例を示すもので、本形態例では、軸箱15の車軸保持部15bの内面に保持部材51の上部を固着している。保持部材51の上部には、車軸14aを挿通可能な内径の車軸挿通孔51aを有するリング状の固着部51bが設けられており、該固着部51bは、車軸保持部15bに保持される車軸14aを車軸挿通孔51aに挿通した状態で車軸保持部15bの内面に複数の固着ボルト52にて固着される。
【0022】
保持部材51の下部には、前記各形態例と同様に、板面をレール方向かつ鉛直方向に向けて配置された取付板部51cが設けられるとともに、該取付板部51cには、鉛直方向に長い長孔からなる複数のボルト挿通孔24が設けられている。本形態例においても、保持部材51の下部に設けられた各ボルト挿通孔24と、防音部材22の上部に設けられた各取付用通孔25とにそれぞれ挿通した取付ボルト26と取付ナット27とにより、防音部材22が上下位置の調整が可能な状態で保持部材51に取り付けられる。
【0023】
図11及び図12は、本発明の第5形態例を示すもので、本形態例では、ウイング部15aの上面と軸ばね16の下端との間に挿入される調整板の代わりに保持部材61を挿入している。すなわち、保持部材61として、車軸保持部15bに対応するレール方向中間部が切り欠かれた水平方向の一対の固着部61aと、該固着部61aの一側縁から鉛直方向下方に屈曲したレール方向の取付板部61bとを有するL字状の保持部材61を用いるとともに、前記固着部61aをウイング部15aの上面と軸ばね16の下端との間に挿入して固着し、固着部61aの外端側から垂下した取付板部61bに設けた各ボルト挿通孔24と各取付用通孔25とを挿通した取付ボルト26と取付ナット27とにより、保持部材61の下部に、防音部材22を上下位置の調整が可能な状態で取り付けている。
【0024】
図13及び図14は、本発明の第6形態例を示すもので、本形態例では、前記第5形態例に示した保持部材61の挿入方向を逆方向としている。すなわち、第5形態例では、前記取付板部61bが軸箱15の外方に位置するように保持部材61を配置したが、本形態例では、取付板部61bが軸箱15の内方に位置するように保持部材61を配置し、取付板部61bに上下位置調整可能に取り付けた防音部材22と車輪14aとを第5形態例に比べて近接させた状態としている。
【0025】
このように、防音部材22を保持する保持部材の形状を鉄道車両の台車における軸箱の構造や形状に応じて選定することにより、軸箱支持形式がウイング式の台車のように軸箱下部が比較的大きなものから、軸箱支持形式がモノリンク式や軸梁式のように軸箱が比較的小さなものにも適用可能であり、また、保持部材の取付位置を適宜選定することにより、軸箱の外部に速度検出器やブレーキディスクを配置した台車にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0026】
10…台車、11…空気ばね、12…台車枠、13…軸箱支持装置、14…輪軸、14a…車軸、14b…車輪、15…軸箱、15a…ウイング部、15b…車軸保持部、16…軸ばね、17…レール、21…保持部材、21a…固着板部、21b…支持椀、21c…取付板部、22…防音部材、23…固着ボルト、24…ボルト挿通孔、25…取付用通孔、26…取付ボルト、27…取付ナット、31…保持部材、32…固着ボルト、41…保持部材、41a…固着部、41b…取付板部、42…固着ボルト、51…保持部材、51a…車軸挿通孔、51b…固着部、51c…取付板部、52…固着ボルト、61…保持部材、61a…固着部、61b…取付板部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を装着した車軸の両端部をそれぞれ軸箱に回転可能に支持した台車を備えた鉄道車両において、前記軸箱に固着される金属製の保持部材と、該保持部材に取り付けられる柔軟性を有する防音部材とを備え、前記保持部材は、前記車輪の車体外方側で、下端部があらかじめ設定された位置より上方に位置した状態で該保持部材の上部が前記軸箱に固着され、前記防音部材は、前記車輪がレールを転動する位置の車体外方側でレールと平行な方向に配置され、該防音部材の上部が前記保持部材に取り付けられるとともに、該防音部材の下端部がレール面より上方に位置している鉄道車両。
【請求項2】
前記防音部材は、前記保持部材に対して上下位置調整可能に取り付けられている請求項1記載の鉄道車両。
【請求項3】
前記保持部材の上部は、前記軸箱の下面に固着されている請求項1又は2記載の鉄道車両。
【請求項4】
前記保持部材の上部は、前記軸箱の下部外面に固着されている請求項1又は2記載の鉄道車両。
【請求項5】
前記保持部材の上部は、前記軸箱の車軸保持部の外面に固着されている請求項1又は2記載の鉄道車両。
【請求項6】
前記保持部材の上部は、前記軸箱の車軸保持部の内面に固着されている請求項1又は2記載の鉄道車両。
【請求項1】
車輪を装着した車軸の両端部をそれぞれ軸箱に回転可能に支持した台車を備えた鉄道車両において、前記軸箱に固着される金属製の保持部材と、該保持部材に取り付けられる柔軟性を有する防音部材とを備え、前記保持部材は、前記車輪の車体外方側で、下端部があらかじめ設定された位置より上方に位置した状態で該保持部材の上部が前記軸箱に固着され、前記防音部材は、前記車輪がレールを転動する位置の車体外方側でレールと平行な方向に配置され、該防音部材の上部が前記保持部材に取り付けられるとともに、該防音部材の下端部がレール面より上方に位置している鉄道車両。
【請求項2】
前記防音部材は、前記保持部材に対して上下位置調整可能に取り付けられている請求項1記載の鉄道車両。
【請求項3】
前記保持部材の上部は、前記軸箱の下面に固着されている請求項1又は2記載の鉄道車両。
【請求項4】
前記保持部材の上部は、前記軸箱の下部外面に固着されている請求項1又は2記載の鉄道車両。
【請求項5】
前記保持部材の上部は、前記軸箱の車軸保持部の外面に固着されている請求項1又は2記載の鉄道車両。
【請求項6】
前記保持部材の上部は、前記軸箱の車軸保持部の内面に固着されている請求項1又は2記載の鉄道車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−224223(P2012−224223A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93896(P2011−93896)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
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