説明

鉄道車両

【課題】袖仕切り及び握り棒の間に物が挟まることを防止できる鉄道車両を提供すること。
【解決手段】握り棒7の外周面及び袖仕切り6の枠部64の間に中間部材10が介設され、中間部材10は、床面2に近接するほど幅(袖仕切り6及び握り棒7の重なり方向(図3(b)左右方向)における長さ)が狭くなるように形成されているので、握り棒7の外周面及び袖仕切り6の枠部64の間に形成される隙間8の狭い下側部分を閉塞できる形状となっている。よって、中間部材10がボルト9によって握り棒7及び袖仕切り6に固定されることで、中間部材10により隙間8の狭い下側部分が閉塞されるので、握り棒7及び袖仕切り6の間に物が挟まることを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄道車両に関し、特に、袖仕切り及び握り棒の間に物が挟まることを防止できる鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
在来線や地下鉄などを走行する鉄道車両には、車両の長手方向に沿ってロングシートが配置されている。特開2009−202729には、ロングシートが配置される従来の鉄道車両が開示されており、ロングシートには、乗客保護のため、その長手方向における両端に車両の通路(側出入り口)側とロングシートとを仕切る袖仕切りが、その袖仕切りと荷棚との間にこれらを連結する握り棒等が、それぞれ設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−202729号公報(段落0019,図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、鉄道各社は、鉄道車両の内装における意匠性にも着目しており、ロングシート等のシートだけでなく、握り棒や袖仕切り等に独自のデザインを採用したいとの要望が強くなっている。
【0005】
そこで、出願人は、従来矩形状であった袖仕切りの外形を、図6に示すように、シート(図示せず)の前側(図6右側)に円弧状に突出させる弓なり型に形成することでデザイン性を向上させた袖仕切り106や、袖仕切り106に沿って弓なり型に形成される握り棒107を鉄道車両に採用した(但し、当該鉄道車両は未公知である)。なお、図6は従来の鉄道車両の客室内部に配置された袖仕切り106及び握り棒107の側面図である。
【0006】
しかしながら、上述した鉄道車両では、袖仕切り及び握り棒の間に設けられる隙間が、床面に近づくほど狭くなるので、袖仕切り及び握り棒の間に物が挟まると、挟まった物を取り出すのに手間がかかるという問題点があった。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、袖仕切り及び握り棒の間に物が挟まることを防止できる鉄道車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
この目的を達成するために、請求項1記載の鉄道車両によれば、床面に設置されるシートの幅方向における端部に袖仕切りが設けられ、その袖仕切りに握り棒が連結されることで、袖仕切り及び握り棒がシートの前後方向で重なるように配置されている。
【0009】
ここで、握り棒および袖仕切りのうち少なくともいずれか一方が、シートの前方に突出する弓なり型に形成されるので、袖仕切り及び握り棒の間に設けられる隙間は、床面に近接するほど狭くなっている。これに対し、袖仕切り及び握り棒の間に介設される中間部材は、床面に近接するほど幅が狭くなるように形成されるので、当該隙間を閉塞できる形状とされている。
【0010】
よって、締結部材により中間部材が袖仕切り及び握り棒に固定されることで中間部材より当該隙間が閉塞される。従って、握り棒および袖仕切りのうち少なくともいずれか一方が、シートの前方へ突出する弓なり型に形成されることでデザイン性を向上させた結果、袖仕切り及び握り棒の間に設けられる隙間が床面に近接するほど狭くなった場合でも、袖仕切り及び握り棒との間に物が挟まることを防止できるという効果がある。
【0011】
また、中間部材は床面に近接するほど幅が狭くなるように形成されるので、中間部材を握り棒の長手方向に沿って移動させると、中間部材の最も幅広の部分が握り棒の長手方向に移動される。よって、中間部材を本来の固定位置から握り棒の長手方向にずらすことで、中間部材の最も幅広の部分の位置を変えることができるので、握り棒と袖仕切りとの間で発生する袖仕切り及び握り棒の重なり方向における寸法誤差を調整できるという効果がある。
【0012】
さらに、袖仕切り及び握り棒は中間部材を介して連結されているので、袖仕切り及び握り棒の間に隙間が設けられる部分でも、握り棒が中間部材を介して袖仕切りの所望の位置で固定される。よって、握り棒と袖仕切りとの間で握り棒の長手方向における寸法誤差が発生した場合は、その誤差分だけ固定位置をずらせばよい。即ち、発生する中間部材(袖仕切り)に対して締結部材を締結する箇所を変更することで、握り棒と袖仕切りとの間で発生する握り棒の長手方向における寸法誤差を調整できるという効果がある。
【0013】
従って、握り棒と袖仕切りとの間で袖仕切り及び握り棒の重なり方向又は握り棒の長手方向における寸法誤差が発生した場合であっても、握り棒の長さや握り棒の曲げ形状を調整する必要がないので、握り棒の袖仕切りに対する組み付け性を向上できるという効果がある。
【0014】
請求項2記載の鉄道車両によれば、請求項1記載の鉄道車両の奏する効果に加え、中間部材は、床面に近接するほど幅が狭くなるように形成される閉塞部材と、握り棒に当接する凹んだ凹面を有する取付部材とが別部材により形成されているので、閉塞部材および取付部材の間に調整部材を介設できる。よって、調整部材を変更することで袖仕切り及び握り棒の間で発生する袖仕切り及び握り棒の重なり方向における寸法誤差を調整できるという効果がある。
【0015】
また、閉塞部材および取付部材の間に調整部材を介設しても、閉塞部材の調整部材が当接する当接面および取付部材の調整部材が当接する当接面のうち、いずれか一方の当接面における両側から閉塞部材および取付部材のいずれか他方の当接面に向かって一対のフランジが立設されるので、一対のフランジにより調整部材を隠すことができる。よって、調整部材が外部に露出しないので、意匠性を向上できるという効果がある。
【0016】
請求項3記載の鉄道車両によれば、請求項2記載の鉄道車両の奏する効果に加え、第1締結部材が第1締結穴に螺合されることにより閉塞部材が袖仕切りに固定され、第2締結部材が第2締結穴に螺合されることにより握り棒および取付部材が閉塞部材に固定される。
【0017】
ここで、握り棒、取付部材及び閉塞部材を袖仕切りに同一の締結部材で共締めする場合、握り棒および袖仕切りのうち少なくともいずれか一方が、シートの前方へ突出する弓なり型に形成されるので、握り棒および取付部材が閉塞部材に対して垂直に締結されるように締結部材の締結角度を調整すると、閉塞部材を袖仕切りに対して垂直に締結できない。
【0018】
これに対し、第1締結部材が螺合される第1締結穴と、第2締結部材が螺合される第2締結穴とが、閉塞部材に別々に穿設されることで、水平面に対する第1締結穴の傾きと水平面に対する第2締結穴の傾きとを異ならせることができる。
【0019】
よって、第1締結穴及び第2締結穴の水平面に対する傾斜角度を異ならせることで閉塞部材を袖仕切りに対して垂直に締結でき、握り棒および取付部材を閉塞部材に対して垂直に締結できるので、閉塞部材を袖仕切りに強固に固定できると共に握り棒および取付部材を閉塞部材に強固に固定できるという効果がある。
【0020】
また、握り棒、取付部材及び閉塞部材を袖仕切りに同一の締結部材で共締めすると、閉塞部材に幅全体の長さを有する締結穴を穿設する必要がある。
【0021】
これに対し、第1締結部材が螺合される第1締結穴と第2締結部材が螺合される第2締結穴とが閉塞部材に別々に穿設されるので、閉塞部材の当接面に凹設される凹部に連続して第1締結穴を穿設できる。
【0022】
よって、予め閉塞部材の当接面に凹部を凹設しておくことで、閉塞部材に幅全体の長さを有する締結穴を穿設する場合に比べて、凹部の深さ分だけ第1締結穴を短くできる。一方、第2締結部材は、第1締結部材と異なり、閉塞部材に螺合されるので、閉塞部材に幅全体の長さを有する締結穴を穿設する場合に比べて、第2締結穴を短くできる。
【0023】
従って、閉塞部材、取付部材及び握り棒を袖仕切りに同一の締結部材で共締めする場合に比べて、閉塞部材に締結穴(第1締結穴及び第2締結穴)を簡易に穿設できると共に、第1締結穴及び第2締結穴に第1締結部材及び第2締結部材をそれぞれ簡易に螺合できる。これにより、握り棒を袖仕切りに固定する作業の作業性を向上できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態における鉄道車両の客室内部を示す斜視図である。
【図2】(a)はロングシートの正面図であり、(b)は図2(a)のIIb方向から視たロングシートの側面図である。
【図3】(a)は図2(a)のIIIa―IIIa線における袖仕切り、中間部材及び握り棒の断面図であり、(b)は図3(a)のXで示す部分を拡大した袖仕切り、中間部材及び握り棒の部分拡大断面図である。
【図4】(a)は図3(a)のIVa―IVa線における中間部材及び握り棒の断面図であり、(b)は図3(b)のIVb―IVb線における袖仕切り、中間部材及び握り棒の断面図であり、(c)は図3(b)のIVc―IVc線における袖仕切り、中間部材及び握り棒の断面図である。
【図5】袖仕切り、袖仕切り、中間部材及び握り棒の部分拡大断面図である。
【図6】従来の鉄道車両の客室内部に配置された袖仕切り及び握り棒の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態における鉄道車両1の概略構成について説明する。図1は本発明の一実施の形態における鉄道車両1の客室内部を示す斜視図であり、図2は鉄道車両1におけるロングシート3の概略構成を示すものであって、図2(a)はロングシート3の正面図であり、図2(b)は図2(a)のIIb方向から視たロングシート3の側面図である。
【0026】
図1に示すように、鉄道車両1には、従来の鉄道車両と同様に、床面2に鉄道車両1の長手方向に沿ってロングシート3が配置されている。このロングシート3の上方には荷棚4が配設され、ロングシート3の長手方向における両端には、鉄道車両1の通路(側出入り口5)側とロングシート3とを仕切る袖仕切り6や、その袖仕切り6とロングシート3の枕木方向(図1斜め上下方向)に重なるように配置される握り棒7が設けられている。また、握り棒7及び袖仕切り6の間に中間部材10が介設されている。中間部材10については、図2〜図4を参照して後に詳しく説明する。
【0027】
図2及び図3を参照して、袖仕切り6及び握り棒7の構成について説明する。図3(a)は図2(a)のIIIa―IIIa線における袖仕切り6、中間部材10及び握り棒7の断面図であり、図3(b)は図3(a)のXで示す部分を拡大した袖仕切り6、中間部材10及び握り棒7の部分拡大断面図である。
【0028】
袖仕切り6は、ロングシート3の長手方向(図2(a)左右方向)における両端に配置され側出入り口5(図1参照)とロングシート3とを仕切る部材であって、従来はパイプに曲げ加工を施して形成される比較的小型のものであったが、近年では板状部材で形成される大型のものが多く採用されている。袖仕切り6を大型化することにより、鉄道車両1(図1参照)が急停止等した場合であっても袖仕切り6により乗客の身体を確実に支えることができる。
【0029】
図2及び図3に示すように、袖仕切り6は、ロングシート3の前側(図2(b)左側)に凹部62aを有し対向する2枚の化粧板で形成される仕切り板62と、仕切り板62の凹部62aに嵌合され強化ガラス等の透明部材で構成される透過部63と、2枚の仕切り板62の外周面及び透過部63の端面を取り囲むことで袖仕切り6の外形を形成する枠状の枠部64と、仕切り板62の内部で2枚の仕切り板62を一定の間隔で保持する金属製の骨組み65とを備えて構成されている。
【0030】
袖仕切り6の前側部分(枠部64)は、ロングシート3の前方(図3右方向)へ円弧状に突出する弓なり型に形成されることで、従来の矩形状に形成される袖仕切りに対して、新規な形状とされており、意匠性が向上されている。また、枠部64には、後述する第1ボルト9が螺合される締結穴64a(図5参照)が穿設されている。
【0031】
骨組み65は、ロングシート3の前後方向(図3(a)左右方向)に延設される第1骨組み65a〜65cと、ロングシート3の上下方向(図3(b)上下方向)に延設される第2骨組み65dと、仕切り板62の凹部62aに沿って延設される第3骨組み65eとを備えて構成されている。仕切り板62の板厚を薄くすることで袖仕切り6の軽量化を図った場合でも、これら第1〜第3骨組み65a〜65eにより袖仕切り6の剛性を確保できる。
【0032】
図2及び図3に示すように、握り棒7は、揺れる車内で起立する乗客が姿勢を維持するための支持部材であり、ロングシート3の前方(図3(a)右方向)へ円弧状に突出する弓なり型に形成されている。また、握り棒7は上部が荷棚4に連結されると共に下部が袖仕切り6に固定されている。よって、握り棒7(外周面)と袖仕切り6(枠部64)との間には隙間8が設けられる。
【0033】
隙間8は、床面2に近接するほど狭くなる台形状になっている。よって、この隙間8にパンフレット等の紙類やかばんの紐等の物が落下すると、隙間8は上から下に向かって(図3上から下に向かって)狭くなる形状なので、台形状の隙間8の狭い下側部分(図3下側部分)で、物が握り棒7の外周面及び袖仕切り6の枠部64の間に挟持される。よって、挟持された物を取り除くために上方に強く引っ張らなければならず、手間を要する。
【0034】
これに対して、本発明では、握り棒7の外周面及び袖仕切り6の枠部64の間に中間部材10が介設され、中間部材10は、床面2に近接するほど幅(袖仕切り6及び握り棒7の重なり方向(図3(b)左右方向)における長さ)が狭くなるように形成されているので、隙間8の狭い下側部分を閉塞できる形状となっている。よって、中間部材10がボルト9によって握り棒7及び袖仕切り6に固定されることで、中間部材10により隙間8の狭い下側部分が閉塞される。
【0035】
従って、握り棒7および袖仕切り6がロングシート3の前方(図3(b)右方)へ突出する弓なり型に形成されることでデザイン性を向上させた結果、握り棒7の外周面及び袖仕切り6の枠部64の間に設けられる隙間8が床面2に近接するほど狭くなった場合でも、握り棒7の外周面及び袖仕切り6の枠部64の間に物が挟まることを防止できる。
【0036】
また、中間部材10は床面に近接するほど幅が狭くなるように形成されるので、中間部材10を握り棒7の長手方向に沿って移動させると、中間部材10の最も幅広の部分が握り棒7の長手方向(図3(b)上下方向)に移動される。よって、中間部材10を本来の固定位置から握り棒7の長手方向にずらすことで、中間部材10の最も幅広の部分の位置を変えることができるので、握り棒7の外周面および袖仕切り6の枠部64の間で発生する袖仕切り6及び握り棒7の重なり方向(図3左右方向)における寸法誤差を調整できる。
【0037】
さらに、袖仕切り6の外周面および握り棒7の枠部64は中間部材10を介して連結されているので、握り棒7の外周面および袖仕切り6の枠部64の間に隙間8が設けられる部分でも、握り棒7が中間部材10を介して袖仕切り6に固定される。よって、中間部材10(袖仕切り6)に対してボルト9を締結する箇所を変更することで、握り棒7の外周面および袖仕切り6の枠部64の間で発生する握り棒7の長手方向(図3(b)上下方向)における寸法誤差を調整できる。
【0038】
従って、握り棒7及び袖仕切り6の間で袖仕切り6及び握り棒7の重なり方向(図3(b)左右方向)又は握り棒7の長手方向(図3(b)上下方向)における寸法誤差が発生した場合であっても、握り棒7の長さや握り棒7の曲げ形状を調整する必要がないので、握り棒7の袖仕切り6に対する組み付け性を向上できる。
【0039】
図3及び図4を参照して、ボルト9及び中間部材10の具体的な構成について説明する。図4(a)は図3(a)のIVa―IVa線における中間部材10及び握り棒7の断面図であり、図4(b)は図3(b)のIVb―IVb線における袖仕切り6、中間部材10及び握り棒7の断面図、図4(c)は図3(b)のIVc―IVc線における袖仕切り6、中間部材10及び握り棒7の断面図である。
【0040】
図3及び図4に示すように、ボルト9は、中間部材10を握り棒7及び袖仕切り6に固定する締結部材であり、後述する閉塞部材11を袖仕切り6に固定する第1ボルト9aと、後述する取付部材12及び握り棒7を閉塞部材11に固定する第2ボルト9bとを有して構成されている。第1ボルト9aは長さの異なる4種類のものが各一つずつ使用され、第2ボルト9bは1種類のものが3つ使用される。
【0041】
図3及び図4に示すように、中間部材10は、床面2(図1参照)に近接するほど幅(ロングシート3の前後方向(図3(b)左右方向)における長さ)が狭くなるように床面2側を短辺とした台形状に形成される閉塞部材11と、握り棒7の外周面に当接する凹んだ凹面12aを有し閉塞部材11とは別部材により形成される取付部材12と、その取付部材12および閉塞部材11の間に介設される調整部材13と、取付部材12から立設されるフランジ14とを備えて構成されている。
【0042】
図3及び図4に示すように、閉塞部材11は、隙間8を塞ぐ部材であって、アルミの押出型材で構成されている。閉塞部材11は、後述する調整部材13が当接する当接面11−1に凹部11aが凹設されており、当該凹部11aに連続して第1締結穴11bが穿設され、当接面11−1に第2締結穴11cが穿設される。
【0043】
凹部11aは閉塞部材11の当接面11−1に4箇所凹設されており、上側の凹部11a1,11a2は、下側の凹部11a3,11a4に比べて、凹設範囲(深さ)が長くなっており、凹部11a1〜11a4は水平面に対する傾斜角度(以下「傾斜角度」と称す)がそれぞれ異なるように設定されている。
【0044】
第1締結穴11bは、第1ボルト9a1〜9a4が螺合する螺合穴であり、閉塞部材11の凹部11aの底面に4つ(11b1〜11b4、図5参照)穿設され、凹部11a1〜11a4と同じ(対応する)傾斜角度に設定される。
【0045】
よって、袖仕切り6の前側部分(枠部64)が弓なり型に湾曲形成される場合であっても、第1締結穴11b1〜11b4に第1ボルト9a1〜9a4を螺合することで4つの第1ボルト9a1〜9a4(図5参照)を袖仕切り6の枠部64に対して垂直に締結でき、これにより閉塞部材11を袖仕切り6に強固に固定できる。
【0046】
第2締結穴11cは、第2ボルト9bが螺合する螺合穴であり、閉塞部材11の当接面11−1に第1締結穴11bと重ならない位置に3箇所穿設される。具体的には、第2締結穴11c1〜11c3(図5参照)は、隣設する第1締結穴11b1〜11b4(図5参照)の間に配置されている。
【0047】
よって、閉塞部材11の幅が床面2に近接するほど狭くなるように床面2側を短辺とした台形状に形成される場合であっても、閉塞部材11の当接面11−1に対して、3つの第2ボルト9b1〜9b3を垂直に螺合でき、これにより閉塞部材11を袖仕切り6に強固に固定できる。
【0048】
図3及び図4に示すように、取付部材12は、握り棒7を中間部材10の閉塞部材11に固定するためのブラケットであって、アルミの押出型材により構成される。また、取付部材12は、握り棒7の外周面と一致した円弧状に凹む凹面12aと、閉塞部材11側に形成され後述する調整部材13が当接する端面である当接面12b、凹面12a及び当接面12bの間の板厚を貫通する挿通穴12cと、取付部材12の上面に設けられる蓋部材12dとを備えて構成されている。
【0049】
凹面12aは、握り棒7の外周面と一致した円弧状に凹むので、握り棒7の外周面を取付部材12の凹面12aに当接させることで握り棒7は取付部材12との間にぐらつくことなく位置決めされる。よって、握り棒7の外周面に貫通形成された挿通穴及び取付部材12の挿通穴12cに第2ボルト9bを挿通する際に握り棒7が取付部材12にぐらつくことなく位置決めされているので、閉塞部材11に握り棒7(取付部材12)を固定する固定作業を簡易に行うことができる。
【0050】
また、当接面12bは、平坦状に形成されており、その両側から一対のフランジ14が取付部材12の長手方向(図3(a)上下方向)にわたって立設されている。一対のフランジ14は上面において蓋部材12dにより連結されている。
【0051】
図3及び図4に示すように、一対のフランジ14は、調整部材13を外部から隠すための部材であり、一方のフランジ14と他方のフランジ14とは同一形状に形成され互いに対向配置されている。また、一対のフランジ14は、取付部材12の当接面12bにおける両側から閉塞部材11の台形状の側面と重なる位置まで立設されており、一対のフランジ14における対向距離(図4(b)上下方向における長さ)は、閉塞部材11の板厚より若干長く設定されている。
【0052】
よって、一対のフランジ14は、閉塞部材11の側面に沿って摺動可能に構成されているので、取付部材12を閉塞部材11に固定する際のガイドとして一対のフランジ14を利用できる。即ち、取付部材12を閉塞部材11に固定する場合に、一対のフランジ14を閉塞部材11の側面に沿って袖仕切り6側に摺動させることで、取付部材12は閉塞部材11に対して幅方向(図4(b)上下方向)で位置決めされる。
【0053】
従って、閉塞部材11に取付部材12を固定する場合に、閉塞部材11に対して取付部材12を幅方向(図4(b)上下方向)で簡単に位置決めできるので、閉塞部材11に取付部材12(握り棒7)を固定する固定作業を簡易に行うことができる。
【0054】
取付部材12及び一対のフランジ14は、長手方向に直交する断面視で、全体として閉塞部材11側(図3左側)に開放するコ字型に形成されており、取付部材12及び一対のフランジ14により収容空間16が形成されている。
【0055】
収容空間16は、後述する調整部材13を収容する空間であり、収容空間16を上方から塞ぐ蓋部材12dが取付部材12の上面に設けられている。調整部材13が収容空間16に収容されると、調整部材13は一対のフランジ14及び蓋部材12dにより隠され外部に露出しないようになっている。
【0056】
図3及び図4に示すように、調整部材13は、閉塞部材11の当接面11−1と取付部材12の当接面12bとの間に介設されるワッシャであり、調整部材13の種類を変更することで、袖仕切り6及び握り棒7との間で発生する袖仕切り6及び握り棒7の重なり方向(図3(b)左右方向)における寸法誤差を調整できる。よって、袖仕切り6を握り棒7に簡易に固定できる。また、閉塞部材11および取付部材12の間に調整部材13を介設しても、一対のフランジ14により調整部材13を隠すことができる。よって、調整部材13が外部に露出しないので、意匠性を向上できる。
【0057】
図5を参照して、中間部材10がボルト9によって握り棒7及び袖仕切り6に固定される組み立て工程について説明する。図5は袖仕切り6、中間部材10及び握り棒7の部分拡大断面図であり、袖仕切り6、中間部材10及び握り棒7の組み立て工程を示している。なお、袖仕切り6及び握り棒7の図示が一部省略されている。
【0058】
図5に示すように、袖仕切り6、中間部材10及び握り棒7の組立ては、中間部材10の閉塞部材11を袖仕切り6に固定した後、予め部組みされた調整部材13、中間部材10の取付部材12及び握り棒7が閉塞部材11に固定される。以下において具体的に説明する。
【0059】
まず、袖仕切り6の枠部64に対して閉塞部材11を位置決めする。閉塞部材11の凹部11aは型により予め加工されており、凹部11aの凹設方向が袖仕切り6の枠部64に対して垂直になるように、袖仕切り6の枠部64に対して閉塞部材11を位置決めする。
【0060】
閉塞部材11が袖仕切り6の枠部64に対して位置決めされた後、閉塞部材11の第1締結穴11b及び枠部64の締結穴64aが上側(図5上側)から順に穿設され、これらの第1締結穴11b及び締結穴64aに第1ボルト9a1が上側から順に螺合されることで、閉塞部材11が袖仕切り6(枠部64)に強固に固定される。
【0061】
閉塞部材11が袖仕切り6(枠部64)に固定された後、第2ボルト9bにより部組みされた取付部材12及び握り棒7と袖仕切り6の枠部64との間における袖仕切り6及び握り棒7の重なり方向(図5左右方向)の寸法誤差を計測する。計測された寸法誤差により、予め準備される厚みが異なる複数の調整部材13の中から最適なものを選択し、調整部材13の挿通穴に第2ボルト9bを挿通し、調整部材13が取付部材12の当接面12bに当接するまで調整部材13を握り棒7側(図5右側)に押し込む。
【0062】
第2ボルト9bにより取付部材12、握り棒7及び調整部材13を部組みした状態で、第2ボルト9bが螺合される第2締結穴11cを閉塞部材11の当接面11−1に穿設する。この場合に、部組みされた取付部材12、握り棒7及び調整部材13と閉塞部材11の当接面11−1との間における握り棒7の長手方向(図5上下方向)の寸法誤差を考慮して上下方向の位置が規定され、第2ボルト9bが閉塞部材11の当接面11−1に対して垂直に締結されるように傾斜角度が規定された後、閉塞部材11の当接面11−1に第2締結穴11cが穿設され、第2締結穴11cに第2ボルト9bが螺合される。
【0063】
第2ボルト9bが第2締結穴11cに螺合されることで、調整部材13が取付部材12の当接面12bと閉塞部材11の当接面11−1との間に介設された状態で、取付部材12及び握り棒7が閉塞部材11の当接面11−1に強固に固定される。
【0064】
ここで、閉塞部材11及び取付部材12を一部材により形成すると、一部材で形成された閉塞部材11及び取付部材12は、握り棒7と当接する当接面が握り棒7の外周面と一致する(対応する)円弧状に形成されるので、握り棒7との間に板状の調整部材13を介設できない。よって、袖仕切り6との間に調整部材13を介設させ、調整部材13と一部材で形成された閉塞部材11及び取付部材12とを同一のボルト9で袖仕切り6に共締めする必要がある。
【0065】
よって、調整部材13と一部材で形成された閉塞部材11及び取付部材12とが袖仕切り6に固定された後に、握り棒7との間で袖仕切り6及び握り棒7の重なり方向(図3左右方向)における寸法誤差が発生した場合は、袖仕切り6に固定された調整部材13等を取り外した後に調整部材13を変更する必要がある。
【0066】
これに対して、閉塞部材11と取付部材12とが別部材により形成されているので、閉塞部材11および取付部材12の間に調整部材13を介設できる。よって、閉塞部材11を袖仕切り6に固定した後に、握り棒7との間で袖仕切り6及び握り棒7の重なり方向(図3左右方向)における寸法誤差を計測し、その寸法誤差に対応した調整部材13を選択できる。従って、握り棒7を固定する際に袖仕切り6及び握り棒7の重なり方向(図3左右方向)で発生する寸法誤差を簡易に調整できる。
【0067】
また、閉塞部材11、取付部材12及び握り棒7を袖仕切り6に同一のボルトで共締めする場合、握り棒7および袖仕切り6が、ロングシート3の前方(図5右方)へ突出する弓なり型に形成されるので、握り棒7が閉塞部材11に対して垂直に締結されるようにボルトの締結角度(傾斜角度)を調整すると、閉塞部材11を袖仕切り6に対して垂直に締結できない。
【0068】
これに対し、第1ボルト9aが螺合される第1締結穴11bと、第2ボルト9bが螺合される第2締結穴11cとが、閉塞部材11に別々に穿設されることで、第1締結穴11bの傾斜角度と第2締結穴11cの傾斜角度とを異ならせることができる。
【0069】
よって、閉塞部材11を袖仕切り6に対して垂直に締結でき、握り棒7を閉塞部材11に対して垂直に締結できるので、閉塞部材11を袖仕切り6に強固に固定できると共に握り棒7および取付部材12を閉塞部材11に強固に固定できる。
【0070】
また、閉塞部材11、取付部材12及び握り棒7を袖仕切り6に同一のボルトで共締めすると、閉塞部材11に幅全体の長さを有する締結穴を穿設する必要がある。
【0071】
これに対し、第1ボルト9aが螺合される第1締結穴11bと、第2ボルト9bが螺合される第2締結穴11cとが閉塞部材11に別々に穿設されるので、閉塞部材11の当接面11−1に凹設される凹部11aに連続して第1締結穴11bを穿設できる。
【0072】
よって、予め閉塞部材11の当接面11−1に凹部11aを凹設しておくことで、閉塞部材11に幅全体の長さを有する締結穴を穿設する場合に比べて、凹部11aの深さ分だけ第1締結穴11bを短くできる。一方、第2ボルト9bは、第1ボルト9aと異なり、閉塞部材11の当接面11−1に螺合されるので、閉塞部材11に幅全体の長さを有する締結穴を穿設する場合に比べて、第2締結穴11cを短くできる。
【0073】
従って、閉塞部材11、取付部材12及び握り棒7とを袖仕切り6に同一のボルトで共締めする場合に比べて、閉塞部材11に締結穴(第1締結穴11b及び第2締結穴11c)を簡易に穿設できると共に、第1ボルト9a及び第2ボルト9bを第1締結穴11b及び第2締結穴11cにそれぞれ簡易に螺合できる。これにより、握り棒7の袖仕切り6に固定する組み付け性を向上できる。
【0074】
以上、一実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記一実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0075】
例えば、上記一実施の形態では、ロングシート3の端部に袖仕切り6、握り棒7及びこれらの間に介設される中間部材10を設けたが、必ずしもこれに限られるものではなくショートシートに袖仕切り6、握り棒7及びこれらの間に介設される中間部材10を設けてもよい。このようなショートシートは優先座席に設置されることが多いので、優先座席に着座する老人や子供を袖仕切り6及び握り棒7により保護できる。
【0076】
また、中間部材10は、閉塞部材11及び取付部材12が別部材で形成されていたが、必ずしもこれに限られるものではなく、袖仕切り6及び握り棒7の重なり方向への寸法誤差が小さく、中間部材10を長手方向に移動させることで調整できる場合は、閉塞部材11及び取付部材12が一体的(一部材)に形成されていてもよい。この場合は、中間部材10の構成を簡略化できる。
【0077】
閉塞部材11及び取付部材12を一体的(一部材)に形成した場合は、その一体的に形成した閉塞部材11及び取付部材12を袖仕切り6及び握り棒7と同一のボルトで共締めしてもよく、また、一体的に形成した閉塞部材11及び取付部材12を袖仕切り6に固定した後に、握り棒7を固定してもよい。後者の場合は、袖仕切り6及び握り棒7に対して第1ボルト9a及び第2ボルト9bを垂直に締結できる。
【0078】
さらに、上記一実施の形態では、一対のフランジ14は、取付部材12の当接面12bにおける両側から立設されるが、必ずしもこれに限られるものではなく、閉塞部材11の当接面11−1の両側から立設されていてもよい。この場合は、閉塞部材11の板厚が取付部材12の幅より長く形成される。これにより、一対のフランジ14と閉塞部材11の当接面11−1とで形成される空間に取付部材12全体を収容できるので、取付部材12が外部に露出しない。よって、袖仕切り6及び握り棒7の間に閉塞部材11のみが視認可能となるので、中間部材10のデザインを簡素化できる。
【0079】
また、上記一実施の形態では、隙間8及び隙間8を閉塞する中間部材10が床面2に近接するほど狭くなる台形状に形成したが、必ずしもこれに限られるものではなく、床面2側を頂点とした三角形状に形成してもよい。隙間8が床面2側を頂点とした三角形状に形成されると台形状の場合に比べて隙間8に物が挟まりやすいので、これを効果的に防止できる。
【0080】
さらに、上記一実施の形態では、調整部材13は複数のワッシャにより構成されるが、必ずしもこれに限られるものではなく、板状の調整板であってもよく、弾性を有する部材により構成されてもよい。これにより、袖仕切り6及び握り棒7の重なり方向の寸法誤差を簡易に調整できる。
【符号の説明】
【0081】
1 鉄道車両
3 ロングシート(シート)
4 荷棚
6 袖仕切り
7 握り棒
8 隙間
9 ボルト(締結部材)
9a 第1ボルト(締結部材の一部、第1締結部材)
9b 第2ボルト(締結部材の一部、第2締結部材)
10 中間部材
11 閉塞部材(中間部材の一部)
11−1当接面
11a 凹部
11b 第1締結穴
11c 第2締結穴
12 取付部材(中間部材の一部)
12b 当接面
13 調整部材
14 フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に設置されるシートと、そのシートの幅方向における端部に設けられる袖仕切りと、その袖仕切りに連結される握り棒とを備え、前記袖仕切りと前記握り棒とが前記シートの前後方向で重なるように配置される鉄道車両において、
前記握り棒と前記袖仕切りとの間に設けられ、前記握り棒および前記袖仕切りのうち少なくともいずれか一方が、前記シートの前方へ突出する弓なり型に形成されることで前記床面に近接するほど狭くなる隙間と
前記握り棒及び前記袖仕切りの間に介設されると共に、前記床面に近接するほど幅が狭くなるように形成される中間部材と、
前記中間部材を前記握り棒及び前記袖仕切りに固定する締結部材と、を備えることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
前記中間部材は、
前記床面に近接するほど幅が狭くなるように形成される閉塞部材と、
前記握り棒に当接する凹んだ凹面を有し前記閉塞部材とは別部材により形成される取付部材と、
その取付部材および前記閉塞部材の間に介設される調整部材と、
前記閉塞部材の前記調整部材が当接する当接面および前記取付部材の前記調整部材が当接する当接面のうち、いずれか一方の当接面における両側から前記閉塞部材および前記取付部材のいずれか他方の当接面に向かって立設され前記調整部材を覆う一対のフランジと、を有することを特徴とする請求項1記載の鉄道車両。
【請求項3】
前記締結部材は、
前記閉塞部材を前記袖仕切りに固定する第1締結部材と、
前記握り棒および前記取付部材を前記閉塞部材に固定する第2締結部材とを有し、
前記閉塞部材は、
前記調整部材が当接する当接面に凹設される凹部と、
その凹部に連続して穿設され前記第1締結部材が螺合される第1締結穴と、
前記調整部材が当接する当接面に穿設され前記第2締結部材が螺合される第2締結穴と、を有することを特徴とする請求項2記載の鉄道車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−82290(P2013−82290A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222776(P2011−222776)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)