説明

鉄道車両

【課題】点検蓋を側構体の外壁面に設ける場合に、ボルトの挿通穴から車体内部へ水が浸入することを抑制できる鉄道車両を提供すること。
【解決手段】収納部材20は、容器体21の一面側の開放端から内方へ向けてフランジ部22が延設されると共に、ランジ部22が側構体5の開口部5dに沿って車体内部側から取り付けられ、そのフランジ部22に点検蓋10の固定部11をボルトBにより締結固定する。これにより、ボルトBの挿通穴11d,5eから水が浸入したとしても、その水を収納部材20の容器体21内に留めて、車体内部に浸入することを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関し、特に、点検蓋を側構体の外壁面に設ける場合に、ボルトの挿通穴から車体内部へ水が浸入することを抑制できる鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
側構体に機器を収納して構成される鉄道車両が知られている。例えば、特許文献1には、側出入口扉を開放するための開放コックが側構体に収納される鉄道車両が開示される。非常時には、開放コックを操作して、側出入口扉を駆動するエアシリンダのエア圧を開放することで、側出入口扉の手動による開閉を可能とする。この開放コックは、壁面に設けた点検蓋を開いて操作される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−001189号公報(段落[0011,0012]及び第2図など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述した特許文献1の点検蓋は、車室内の壁面に設けられるので、その防水性は問題とならない。一方で、点検蓋を側構体の外壁面に設ける場合には、ボルトを挿通する挿通穴から水が車体内部に浸入するという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、点検蓋を側構体の外壁面に設ける場合に、ボルトの挿通穴から車体内部へ水が浸入することを抑制できる鉄道車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
請求項1記載の鉄道車両によれば、収納部材は、容器体の一面側の開放端から内方へ向けてフランジ部が延設されると共に、収納部材のフランジ部が側構体の開口に沿って車体内部側から取り付けられ、その収納部材のフランジ部に点検蓋がボルトにより締結固定されるので、ボルトの挿通穴から水が浸入したとしても、その水を収納部材の容器体内に留めて、車体内部に浸入することを抑制できるという効果がある。
【0007】
請求項2記載の鉄道車両によれば、請求項1記載の鉄道車両の奏する効果に加え、側構体の外面板の裏面側に収納部材のフランジ部が当接されると共に、側構体の外面板の表面側に点検蓋が当接され、それら点検蓋、側構体の外面板および収納部材のフランジ部の重ね合わされた部分がボルトにより締結固定されるので、点検蓋および収納部材を側構体に強固に固定することができるという効果がある。
【0008】
また、このように、点検蓋、側構体の外面板および収納部材のフランジ部を重ね合わせ、その重ね合わされた部分をボルトにより締結固定する構造とすることで、締結固定に必要なボルトの本数を低減できる。即ち、収納部材のフランジ部を側構体に締結固定するためのボルトと、点検蓋を側構体に締結固定するためのボルトとを兼用することができる。その結果、部品点数を削減して、鉄道車両の軽量化と製品コストの削減とを図ることができるという効果がある。
【0009】
請求項3記載の鉄道車両によれば、請求項2記載の鉄道車両の奏する効果に加え、前記収納部材の容器体の外面と側構体の内面板の裏面とを接続する当板部を備えるので、収納部材を側構体に強固に固定することができるという効果がある。
【0010】
即ち、収納部材は、側構体の外面板に締結固定されるフランジ部から容器体が突出し、走行中の振動などに対し、容器体が不安定となる構造であるところ、その容器体の外面を側構体の内面板の裏面に当接部で接続することで、容器体を側構体に強固に固定でき、その結果、容器体を安定して保持することができる。
【0011】
なお、当接部を板状体から構成し、その板状体の一辺側を側構体の内面板の裏面側に溶接固定すると共に、板状体の他辺側を容器体の外面側へ溶接固定する構造としても良い。これにより、当接部の形状およびその組み付け工程を簡素化でき、その分、製品コストの削減を図ることができる。
【0012】
請求項4記載の鉄道車両によれば、請求項2又は3に記載の鉄道車両の奏する効果に加え、点検蓋は、固定部が正面視枠状に形成され、その固定部の中央開口が開閉蓋部によって開閉される構造なので、それら開閉蓋部および固定部の間を水密とするためのシール部を連続した形状とすることができる。その結果、防水性能の向上を図ることができるという効果がある。
【0013】
また、点検蓋をユニット化することができる。よって、ユニット外の他の部材との関係で防水性能を確保する必要がなく、ユニットを構成する部材の間の関係のみで防水性能を確保できる。よって、側構体への組み付け時の公差を緩やかとすることができ、その結果、製造コストの削減を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施の形態における鉄道車両の側面図である。
【図2】鉄道車両の部分拡大側面図である。
【図3】図2のIII−III線における鉄道車両の部分拡大断面図である。
【図4】図2のIII−III線における鉄道車両の部分拡大断面図である。
【図5】図2のV−V線における鉄道車両の部分拡大断面図である。
【図6】(a)は、収納部材の正面図であり、(b)は、図6(a)のVIb−VIb線における収納部材の断面図である。
【図7】(a)は、図6(a)のVIIa−VIIa線における収納部材の断面図であり、(b)は、図6(a)の矢印VIIb方向視における収納部材の底面図である。
【図8】第2実施の形態における鉄道車両の部分拡大断面図である。
【図9】(a)は、収納部材の正面図であり、(b)は、図9(a)のIXb−IXb線における収納部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、鉄道車両1の全体構成について説明する。図1は本発明の第1実施の形態における鉄道車両1の側面図である。なお、図1では、鉄道車両1を模式的に図示すると共に、その前後方向を省略して図示する。
【0016】
図1に示すように、鉄道車両1は、レール上を転動する複数の車輪2と、その車輪2を軸支する台車3と、その台車3に支持されると共に乗員および乗客を収容する構体4とを主に備えて構成される。構体4の側構体5には、側出入口扉6、窓7及び点検蓋10などが配設される。
【0017】
なお、側出入口扉6は、エアシリンダの駆動力により開閉される。通常時は、エアシリンダへ供給するエア圧が加圧状態とされ、側出入口扉6の閉状態が維持される。エアシリンダには、開放コックDVが介設されており、非常時には、開放コックDVを操作して、エアシリンダのエア圧を開放することで、側出入口扉6の手動による開閉が可能となる。
【0018】
開放コックDVが収納される側構体5の外壁面には、点検蓋10が開閉可能に設けられる。非常時に開放コックDVの操作が必要となった場合には、点検蓋10を開けることで、開放コックDVを車外から操作できる。ここで、点検蓋10の側構体5への取り付け構造について、図2から図7を参照して説明する。
【0019】
図2は、鉄道車両1の部分拡大側面図であり、図1のII部の部分拡大図に対応する。図3及び図4は、図2のIII−III線における鉄道車両1の部分拡大断面図であり、図5は、図2のV−V線における鉄道車両1の部分拡大断面図である。なお、図3では点検蓋10の開閉蓋部12を閉じた状態が、図4では点検蓋10の開閉蓋部12を開いた状態が、それぞれ図示される。また、図3及び図5では、点検蓋10がボルトBにより締結固定される部分が部分的に拡大して図示される。
【0020】
図2から図5に示すように、側構体5は、外壁面を形成する外面板5aとその外面板5aに対向配置される内面板5bとの間がウェブ5cにより連結されたダブルスキン構造として形成される。側構体5は、正面視矩形形状の開口である開口部5dが形成され、その開口部5dに対面する位置に開放バルブDVが収納される。
【0021】
側構体5は、外面板5aが内面板5bよりも内方へ張り出して形成されており、その張り出した部分の複数箇所(本実施の形態では10箇所)にボルトBが挿通可能な挿通穴5eが形成される。これら各挿通穴5eは、後述する点検蓋10の挿通穴11dに対応する位置に形成される。
【0022】
点検蓋10は、側構体5の開口部5dを塞ぐ正面視矩形形状の部材であり、固定部11と、開閉蓋部12と、シール部13とを備える。固定部11は、正面視枠状に形成される板状体であり(図2参照)、ボルトBにより収納部材20のフランジ部22及び延設板21f(ネジ受け23)に締結固定される。
【0023】
固定部11には、複数箇所(本実施の形態では10箇所)に挿通穴11dが穿設される。挿通穴11dに挿通された10本のボルトBの内の一部(7本)のボルトBは、外面板5aの挿通穴5eを介して、フランジ部22のめねじ部22aに螺合され、残り(3本)のボルトBは、外面板5aの挿通穴5e及び延設壁21fの挿通穴21f1を介して、ねじ受け23のめねじ部23aに螺合される。
【0024】
固定部11の中央開口は、正面視矩形形状に形成される。この中央開口の周縁部分には、断面U字状に形成されたシール受け11aが全周にわたって連続して取着される。シール受け11aには、ゴム状弾性体から無端状に形成されるシール部13が収納され、開閉蓋部12が閉じた状態では(図3及び図5参照)、シール部13が開閉蓋部12の裏面周縁部分に全周にわたって連続して当接され、水密状態が形成される。
【0025】
固定部11の裏面(図3及び図4右側の面)には、ヒンジ受け11bが取着される。ヒンジ受け11bには、ヒンジhを介して、図3及び図4に示すように、開閉蓋部12が開閉可能に支持される。なお、ヒンジhには、ねじりコイルばねSが配設され、そのねじりコイルばねSのねじりトルクは、開閉蓋部12を閉じる方向へ付勢する。これにより、シール部13が開閉蓋部12の裏面に押圧される。
【0026】
固定部11の下方(図2下側)には、複数箇所(本実施の形態では2箇所)に水抜き穴11cが形成される。水抜き穴11cは、挿通穴11d等から収納部材20内へ浸入した水を外部に排出するための貫通穴である。よって、収納部材20(容器体21)内に水が長期間にわたって留まることを抑制できる。
【0027】
なお、水抜き穴11cは、図2に示すように、固定部11の下方の縁部を締結固定する複数本(本実施の形態では3本)のボルトBの隣接間に配設される。よって、水抜き穴11cから水が排出される場合に、その水がボルトB上を流下することを抑制できる。その結果、水抜き穴11cよりも下方に位置するボルトBの挿通穴11d等から水が車体内部へ浸入することを抑制できる。
【0028】
開閉蓋部12は、固定部11の中央開口を塞ぐための部材であり、その固定部11の中央開口よりも若干小さな外形の正面視矩形状に形成される(図2参照)。よって、開閉蓋部12が閉じた状態では、開閉蓋部12が固定部11の中央開口内に配置され、固定部11及び開閉蓋部12のそれぞれの外面(図3左側の面)が面一となる(図3及び図5参照)。
【0029】
開閉蓋部12の裏面(図3右側の面)には、アーム部12aが配設される。このアーム部12aは、その一端側が上述したヒンジhに軸支され、これにより、開閉蓋部12がヒンジhの回転軸を支点として、固定部11に開閉可能に支持される。なお、アーム部12aは、開閉時における他部材との干渉を避けるために、ヒンジhの回動軸を中心とする扇形状に湾曲して形成される。但し、アーム部材12aがシール受け11aの裏面に当接されることで、開閉蓋部12の開放が水平姿勢で規制される(図4参照)。
【0030】
側構体5の開口部5aに対応する裏面側(車体内部側、図3及び図4右側)には、収納部材20が配設される。ここで、図6及び図7を参照して、収納部材20について説明する。
【0031】
図6(a)は、収納部材20の正面図であり、図6(b)は、図6(a)のVIb−VIb線における収納部材20の断面図である。図7(a)は、図6(a)のVIIa−VIIa線における収納部材20の断面図であり、図7(b)は、図6(a)の矢印VIIb方向視における収納部材20の底面図である。
【0032】
図6及び図7に示すように、収納部材20は、容器体21と、フランジ部22と、ネジ受け23とを備える。容器体21は、一面側(例えば、図6(b)左側)が開放された容器状に形成され、その容器形状内(点検蓋10との間に形成される内部空間内)に開放バルブDV及び外部から浸入する水を収容する。
【0033】
収納部材20は、正面視略矩形の背面板21aと、その背面板21aの四辺から立ち上がる立設板21b〜21eと、立設板21b〜21eの内の立設板21cの立設先端から外方へ延設される延設板21fとを備える。
【0034】
なお、収納部材20が側構体5に取り付けられた状態では、背面板21aは点検蓋10に対向配置され、立設板21bは天井側に、立設板21cは床側に、立設板21d,21eは車体前後側(図1左側または右側)に、それぞれ配置される(図3から図5参照)。
【0035】
床側に配置される立設板21cは、図6(b)に示すように、背面板21aに対して下降傾斜される。即ち、収納部材20が側構体5に取り付けられた状態では、立設板21cは、背面板21aから点検蓋10へ向かう方向に下降傾斜される(図3及び図4参照)。これにより、収納部材20(容器体21)内に浸入した水を留まらせず、その水を、水抜き穴11cへ向けて流下させ、より速やかに外部へ排出できる。
【0036】
また、立設板21cの下降傾斜により、水抜き穴11cを、水が貯留される空間の最深部に位置させることが可能となる。よって、収納部材20(容器体21)内に浸入した水の外部への排出効率の向上を図ることができる。なお、本実施の形態では、立設板21cの傾斜方向を延長した位置に、水抜き穴11cが位置する(図3及び図4参照)。
【0037】
立設板21dには、配管を挿通させるための配管穴21d1が2箇所に開口される。この配管穴21d1を利用して、収納部材20内に収納される開放バルブDVに配管が連結される(図3から図5参照)。なお、この場合、配管穴21d1は、水抜き穴11cよりも十分に上方に配置されるので(図3及び図4参照)、収納部材20内に浸入した水が配管穴21d1から車体内部へ浸入することはない。
【0038】
延設板21fには、複数箇所(本実施の形態では3箇所)に挿通穴21f1が形成される。また、延設板21fの裏面(図6(b)右側の面)であって、挿通穴21f1に対応する箇所には、ねじ受け23が配設される。ねじ受け23には、挿通穴21f1に連通するめねじ穴23aが形成される。めねじ穴23aには、その内周面にめねじが螺刻されており、延設板21fの挿通穴21f1に挿通されたボルトBが締結(螺合)される(図3及び図4参照)。
【0039】
フランジ部22は、ボルトBが締結固定される板状の部材であり(図3から図5参照)、容器体21の一面側(図6(b)左側)の開放端に配設されると共に、その開放端から内方へ向けて延設される。なお、本実施の形態では、フランジ部22は、図6(a)に示すように、正面視コ字状の板状体からなり、立設板21cを除く他の立設板21b,21d,21eの開放端(立設端)に配設される。
【0040】
なお、フランジ部22は、その正面(図6(b)左側の面)が、図6(b)及び図7(a)に示すように、容器体21の延設板21fの正面(図6(b)左側の面)と面一となる位置に配設される。よって、フランジ部22及び延設板21fを、側構体5の外面板5aの裏面に、全面にわたって均等に密着させることができる(図3及び図4参照)。
【0041】
フランジ部22には、側構体5への取り付け時に、その側構体5の外面板5aに穿設された挿通穴5eに連通するめねじ穴22aが複数箇所(本実施の形態では7箇所)に形成される。めねじ穴22aには、その内周面にめねじが螺刻されており、外面板5aの挿通穴5eに挿通されたボルトBが締結(螺合)される(図3及び図4参照)。
【0042】
図2から図5に戻って説明する。収納部材20の容器体21の外面側には、複数枚(本実施の形態では4枚)の当接部30が配設される。これら各当接部30は、正面視矩形の板状に形成され、容器体21(立設板21b〜21e)の外面と側構体5の内面板5bの裏面(図3及び図4右側の面)とをそれぞれ接続する。
【0043】
ここで、収納部材20は、側構体5の外面板5aにフランジ部22が締結固定され、そのフランジ部22から容器体20が突出される。よって、走行中の振動などに対し、容器体20が不安定となる構造である。これに対し、容器体20の外面を側構体5の内面板5bの裏面に当接部30を利用して接続することで、容器体20を安定して保持することができる。その結果、例えば、ボルトBの緩みを抑制できる。
【0044】
なお、当接部30は、正面視矩形の板状体から形成され、複数枚(本実施の形態では4枚)が容器体21(立設板21b〜21e)の外面と側構体5の内面板5bの裏面とをそれぞれ接続する。この場合、各当接部30は、その板状体の一辺側が側構体5の内面板5bの裏面に溶接固定されると共に、板状体の他辺側が容器体21(立設板21b〜21e)の外面にそれぞれ溶接固定される。
【0045】
この場合には、当接部30の形状を矩形の板状とし、かつ、その板状体を側構体5の内面板5bの裏面に載置しつつその一辺を容器体21の外面に突き当てて溶接固定すれば良く、作業性が良い。即ち、板状体の形状の簡素化および組み付け工程の能率化を達成でき、その分、製品コストの削減を図ることができる。
【0046】
次いで、点検蓋10及び収納部材20を側構体5に組み付ける組み付け方法について説明する。収納部材20は、車体内部側から側構体5の開口部5d内へ挿入配置し、そのフランジ部22及び延設板21fを側構体5の外面板5aの裏面(図3及び図4右側の面)に当接させる。この場合、フランジ部22のめねじ部22a及び延設板21fの挿通穴21f1の穴位置を、側構体5の外面板5aにおける挿通穴5eの穴位置にそれぞれ一致させる。
【0047】
点検蓋10は、車体外側(外壁面側)から側構体5の開口部5dを覆う位置に配置し、その固定板11を側構体5の外面板5aの表面(図3及び図4左側の面)に当接させる。この場合、固定板11の挿通穴11dの穴位置を、側構体5の外面板5aにおける挿通穴5eの穴位置にそれぞれ一致させる。なお、収納部材20と点検蓋10の側構体5への配置は、いずれが先であっても良い。
【0048】
次いで、ボルトBを点検蓋10の固定板11における各挿通穴11dにそれぞれ挿通し、これら各ボルトBを、外面板5aの挿通穴5e又は延設板21fの挿通穴21f1を通過させつつ、フランジ部22のめねじ部22a又はネジ受け23のめねじ部23aに螺合させる。これにより、図2から図5に示すように、点検蓋10及び収納部材20が側構体5に組み付けられる。
【0049】
なお、これらの組み付け後には、開放バルブDVを、配管穴21d1を利用して、配管する。また、当接板30を上述のように溶接固定して、収納部材20の容器体21と側構体5の内面板5bとを接続する。
【0050】
このように、収納部材20は、容器体21のフランジ部22を内方へ向けて延設させると共に、フランジ部22を側構体5の開口部5aに沿って車体内部側から取り付け、そのフランジ部22に点検蓋10(固定部11)をボルトBにより締結固定するので、挿通穴11dや挿通穴5eなどから水が浸入したとしても、その水を収納部材20の容器体21内(即ち、点検蓋10と収納部材20との間に形成される内部空間内)に留めて(貯留して)、車体内部に浸入することを抑制できる。
【0051】
この場合、側構体5の外面板5aの裏面側に収納部材20のフランジ部22及び延設板21fが当接されると共に、側構体5の外面板5aの表面側に点検蓋10の固定板11が当接され、それら点検蓋10の固定板11と、側構体5の外面板5aと、収納部材20のフランジ部22又は延設板21fとの重ね合わされた部分が、ボルトBにより締結固定されるので、点検蓋10及び収納部材20を側構体5に強固に固定できる。
【0052】
また、このように、点検蓋10の固定板11、側構体5の外面板5a及び収納部材20のフランジ部22又は延設板21fを重ね合わせ、その重ね合わせた部分をボルトBにより締結固定する構造とすることで、締結固定に必要なボルトBの本数を低減できる。即ち、例えば、収納部材20のフランジ部22を側構体5に締結固定するためのボルトBと、点検蓋10を側構体5に締結固定するためのボルトBとを兼用することができる。その結果、部品点数を削減して、軽量化と製品コストの削減とを図ることができる。
【0053】
この場合、点検蓋10は、固定部11を正面視枠状に形成し、その固定部11の中央開口を開閉蓋部12によって開閉する構造なので、シール部13を上述したように連続した形状(無端形状)とすることができる。よって、固定部11と開閉蓋部12との間を水密とする性能(防水性能)を確保し易い。
【0054】
また、このような構造とすることで、点検蓋10をユニット化することができる。よって、ユニットを構成しない他の部材とシール部13との関係で防水性能を確保する必要がなく、ユニットを構成する部材間での関係のみで防水性能を確保できる。即ち、シール部13との開閉蓋部12との関係を規定できれば良く、例えば、シール部13をユニット外の部材に当接させて水密性を確保する必要がない。よって、側構体5への組み付け時の公差を緩やかとすることができ(即ち、側構体5に対する点検蓋10の取り付け位置が多少ずれても、水密性能に影響を与えない)、その結果、製造コストの削減を図ることができる。
【0055】
次いで、図8及び図9を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、フランジ部22が正面視コ字状に形成される場合を説明したが、第2実施の形態におけるフランジ部222は、正面視枠状に形成される。なお、上述した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0056】
図8は、第2実施の形態における鉄道車両201の部分拡大断面図であり、図3に対応する。図9(a)は、収納部材220の正面図であり、図9(b)は、図9(a)のIXb−IXb線における収納部材220の断面図である。なお、図8では、点検蓋210がボルトBにより締結固定される部分が部分的に拡大して図示される。
【0057】
図8及び図9に示すように、第2実施の形態では、容器体221の一面側の開放端に配設されるフランジ部222が周方向に連続して形成され、側構体5の外面板5aにおける全ての挿通穴5e(即ち、点検蓋10の固定部11における全ての挿通穴11d)に対応する位置に対応する数(即ち、同数)のめねじ穴22aが形成される。
【0058】
このように、フランジ部222が正面視枠状に形成され、そのフランジ部222に点検蓋210が締結固定される場合には、全てのボルトBに対し、その挿通穴11dや挿通穴5eから浸入する水を、収納部材220の容器体21内に留めて、車体内部に浸入することを抑制できる。
【0059】
なお、第2実施の形態では、固定部11に穴211cが、側構体5の外面板5aに穴205fが、フランジ部222に穴222bが、それぞれ2箇所ずつに形成(穿設)され、点検蓋210及び収納部材220が側構体205に組み付けられた状態では、これら各穴211c,205f,222bが連通され、水抜き穴として機能するように構成される。
【0060】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0061】
上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、ボルトBの本数およびそれに伴う挿通穴11d等の個数、或いは、水抜き穴11cの個数などは適宜変更することができる。
【0062】
上記各実施の形態では、側構体5に収納される機器(即ち、点検蓋10,210を開いて操作される機器)の一例として、開放バルブDVを例に説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の機器を採用することは当然可能である。
【0063】
上記第2実施の形態では、各穴211c,205f,222bにより水抜き穴を形成する例を説明したが、必ずしもこれに限られるとものではなく、各穴211c,205f,222bの形成を省略しても良い。
【符号の説明】
【0064】
1,201 鉄道車両
5,205 側構体
5a 外面板
5b 内面板
5c ウェブ
5d 開口部
5e 挿通穴
10,210 点検蓋
11 固定部
11d 挿通穴
12 開閉蓋部
13 シール部
20,220 収納部材
21 容器体
21f1 挿通穴
22,222 フランジ部
22a めねじ部(挿通穴)
23a めねじ部(挿通穴)
30 当板部
B ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側構体の外壁面に開口される開口部と、その開口部を開閉する点検蓋とを備える鉄道車両において、
一面側が開放された容器形状に形成されると共に機器を収納する容器体と、
その容器体の開放端から内方へ向けて延設され前記側構体の開口部に沿って車体内部側から取り付けられるフランジ部と、を有する収納部材を備え、
その収納部材のフランジ部に前記点検蓋がボルトにより締結固定されることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
前記側構体は、外面板とその外面板に対向配置される内面板との間がウェブにより連結されたダブルスキン構造として形成され、
前記側構体の外面板の裏面側に前記収納部材のフランジ部が当接されると共に、前記側構体の外面板の表面側に前記点検蓋が当接され、それら点検蓋、側構体の外面板および収納部材のフランジ部の重ね合わされた部分がボルトにより締結固定されることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両。
【請求項3】
前記収納部材の容器体の外面と前記側構体の内面板の裏面とを接続する当板部を備えることを特徴とする請求項2記載の鉄道車両。
【請求項4】
前記点検蓋は、正面視枠状に形成され前記収納部材のフランジ部にボルトにより締結固定される固定部と、その固定部の中央開口を開閉すると共に前記固定部に取り付けられる開閉蓋部と、それら開閉蓋部および固定部の間に介設されると共に前記固定部の中央開口に沿って連続するシール部とを備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の鉄道車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−82302(P2013−82302A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223012(P2011−223012)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)