説明

銅エッチング廃液から酸化第2銅を製造する方法

【課題】 プリントの配線板の製造工程等において排出される、劣化した塩酸及び塩化銅を主成分とするエッチング廃液からメッキ原料としても使用可能な高純度の酸化第2銅を簡単なプロセスで製造する方法の提供。
【解決手段】 その製造方法は塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液にアルカリ剤をpH11.5以上になるまで混合し、その混合中は混合液の温度を30℃以上50℃未満に維持し、混合後も前記pH及び温度を維持して所定時間放置し、放置後混合液中の固形分を分離することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩酸及び塩化銅を主成分とするエッチング廃液から酸化第2銅を製造する方法に関する。
より詳しくは、本発明は、プリント配線板の製造工程等において排出される、劣化した塩酸及び塩化銅を主成分とするエッチング廃液からメッキ原料としても使用可能な高純度の酸化第2銅を製造することができ、かつ簡単なプロセスにて酸化第2銅を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板回路の製造においては、銅箔がラミネートされた銅張積層板や予め無電解銅めっきが施された基板を、塩化第二銅及び塩酸を含むエッチング液を用いてエッチングすることが広く行われている。
このエッチング工程では、塩化第二銅が金属銅を溶解し、この銅の溶解に伴いエッチング液のエッチング能力が低下し、それを防ぐためエッチング液の化学的再生と濃度調整が必要で、添加薬剤による増量分がエッチング装置より銅含有エッチング廃液として排出される。
【0003】
このエッチング廃液は、一般的にはエッチング液メーカーや産業廃棄物処理企業により収集され、種々の方式で処理されている。
その処理技術は、廃液量の増加に伴い輸送にかかる費用が増大していることや、処理能力が限界に達していることによる処理コストの高騰が深刻な問題となっている。
【0004】
特に、その銅エッチング廃液には高濃度の塩素イオンが含まれているため、その中和により得られる沈殿物は、通常、含水Cu7Cl4(OH)、Cu2(OH)3Cl等の多量の除去困難な塩素成分を含む。
そのため、通常は凝集剤とアルカリ剤など複数の多量の薬剤を添加して含有する銅を沈殿させ、発生するスラッジは埋め立て処分されているのが現状であり、そのようなことから、かかる業者引取り処分には多大な廃棄物処理コストがかかる。
【0005】
[先行技術文献]
【特許文献1】特開昭56−17429号公報
【特許文献2】特開2003−253351号公報
【特許文献3】特開平11−335752号公報
【特許文献4】特開2002−327288号公報
【特許文献5】特開2002−211920号公報
【0006】
そのようなことから、塩化第二銅及び塩酸を含むエッチング廃液を埋め立て処分するのではなく、銅を有価物として回収すべく前記廃液を電解し、銅を金属銅として回収する技術が大分以前から提案されている(特許文献1)。
その技術においては、取り扱いに注意を要する塩素ガスの発生を伴い、かつ生成した銅は粉末となっていて、その粉末表面には塩素化合物が付着し、かつ含水率の高いものなっている。
さらに、その塩素化合物は洗浄によっても簡単には除去し難いものであり、残留した塩素化合物が回収銅を再利用する際に悪影響を与えることになり、銅の回収技術としては不十分なものである(特許文献2)。
【0007】
例えば、この塩素化合物が残留したままの回収銅をプリント配線板電解銅箔製造用の銅イオン供給源として利用する場合には不十分なものである。
すなわち、回収銅粉表面に付着している塩素化合物が、銅めっき液中で塩素イオンとして存在し、電解時に陽極から塩素ガスが発生し、電解銅箔製造装置、例えば、陽極材、陰極材、電解槽等の設備を腐食し、損耗させる。
さらに、発生した塩素ガスが環境を汚染させたりする等健康上も極めて有害であり、しかも銅箔の品質上の面でも銅箔面の変色、腐食を与える要因となる。
【0008】
前記したとおりであるから、電解回収された金属銅については、リサイクル材料として利用する際には塩素を全く含まないか、または銅箔物性に悪影響を及ぼさない程度の微量の塩素しか含まないことが要求される場合に使用することは難しく、そのため回収された粉末金属銅を高温溶融し、急速冷却することにより、高純度銅を製造する方法も既に提案されている(特許文献3)。
この高温溶融を利用する技術も、エネルギー経済性、銅純度、歩留まり等の点で十分なものではなく、本発明者もこれに関する改良技術を提案している(特許文献2)。
【0009】
これらの高温溶融を利用する技術は、いずれも金属銅を製造後に塩素化合物を除去し銅を高純度化するものであるが、これとは異なり、銅回収の電解を行う前に残留する塩素を分離回収し、その後電解により銅を回収する技術も提案されている(特許文献4)。
すなわち、その回収技術は、銅エッチング廃液中の塩素化合物を廃液中から塩化水素として蒸発放出し、その後電解により銅を析出させ、高純度の銅を回収するものであり、その際に放出された塩化水素は塩酸として回収するものである。
【0010】
前記のとおりではあるものの、その回収された塩酸の濃度は最大でも15%程度で高濃度のものを得ることができず、しかもその塩化水素放出の際の蒸発には硫酸を使用することから、蒸発、凝縮装置には耐酸性のものを使用することが必要で、コスト増を招来することになり、この技術も満足できるものではなかった。
以上の技術は、いずれも銅を金属銅として回収するものであるが、銅を酸化銅として回収し、銅資源として再利用する技術も既に提案されている(特許文献5)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この銅を酸化銅として回収する技術は、銅エッチング廃液中に含有される銅イオンをpH11以上のアルカリ水溶液を混合して、温度50℃以上、pH6〜11の混合液を形成することにより酸化銅を沈殿させ、この酸化銅を固液分離して銅資源として回収再利用するものであり、処理工程が簡便な技術であることから、本発明者は、これに着目し、この酸化銅をプリント配線板電解銅箔製造用の銅イオン供給源あるいは電気銅の銅資源として利用すべく、まず酸化銅を硫酸で溶解することを試みた。
【0012】
その結果、酸化銅は円滑に溶解し、未溶解物もなく、溶解している銅イオンを分析したところ第2銅イオンであることもわかった。
前記のとおりであるから、得られた酸化銅の純度も高く、これを硫酸で溶解することによりプリント配線板電解銅箔製造用の銅イオン供給源あるいは電気銅の銅資源として利用できることがわかった。
【0013】
そこで、本発明者は、銅エッチング廃液を用いて、より簡便で、かつ低コストで酸化銅を製造すべく、可能な限り常温に近い50℃未満の温度でアルカリ水溶液を混合することにより酸化銅を製造することを試みた。
その結果、50℃未満の温度である30℃、40℃で、pH6〜11の条件下で、アルカリ剤を混合して沈殿を形成した場合には、これを硫酸で溶解しようとしても一部は溶解するものの、未溶解物が残留することがわかった。
【0014】
そのようなことから、本発明者は、50℃未満の温度で、硫酸で円滑に溶解することができる酸化銅を形成できる条件を見出すべく鋭意各種検討を行った。
その結果、銅エッチング廃液にアルカリ剤を混合し、50℃未満の温度である40℃、pH12の条件下で、沈殿を形成した結果、生成した沈殿は、酸化銅で全て硫酸で溶解し、未溶解残滓が形成されないことが判明した。
【0015】
したがって、本発明は、この新規な知見を利用した酸化第2銅を製造する方法を提供するものであるから、それは銅エッチング廃液から単純かつ簡便で、効率的に、高純度の酸化第2銅を回収する、酸化第2銅の製造方法を提供することを解決すべき課題、すなわち目的とするものである。
また、製造された酸化第2銅には前記したとおり塩素化合物が残留しないことから、その残留に伴う弊害を生ずることなく、金属銅又はプリント配線板電解銅箔製造用の銅供給源として利用可能な酸化第2銅を製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者が前記課題を解決するために採用した手段は、塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液にアルカリ剤をpH11.5以上になるまで混合し、その混合中は混合液の温度を30℃以上50℃未満に維持し、混合後も前記pH及び温度を維持して所定時間放置し、放置後混合液中の固形分を分離することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の製造方法は前記したとおり塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液にアルカリ剤をpH11.5以上になるまで混合し、その混合中は混合液の温度を30℃以上50℃未満に維持し、混合後も前記pH及び温度を維持して所定時間放置し、放置後混合液中の固形分を分離することを特徴とするものであり、そのプロセスは単純かつ簡便であり、それにより効率的に、高純度の酸化第2銅を製造することができる。
また、そのプロセスにより得られた酸化第2銅は、純度が高く、硫酸により簡便に溶解することができるので、それをプリント配線板回路の製造あるいは銅張り積層板の製造の際の銅原料として再利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の製造方法は、前記したとおり塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液にアルカリ剤をpH11.5以上になるまで混合し、その混合中は混合液の温度を30℃以上50℃未満に維持し、混合後も前記pH及び温度を維持して所定時間放置し、放置後混合液中の固形分を分離することを特徴とするものである。
さらに、本発明では以下のことが好ましい。
(1)酸化第2銅を分離回収した後の分離液は、アルカリ剤として再使用すること
(2)アルカリ剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、及び水酸化マグネシウムの少なくともいずれか1の水溶液であること
【0019】
次に、本発明製造方法の実施の形態に関し図1を用いて具体的に説明する。
本発明の製造方法に使用する図1の装置は、廃液受槽12、pHコントローラー20及び攪拌機18を備える反応槽17、並びに濾過機22等を具備する。
銅エッチング廃液は、まず廃液受槽12に供給され、他方反応槽17にはアルカリ剤の苛性ソーダ水溶液が配管19より予め供給される。
その供給後反応槽17にはポンプ13により配液管14を介して廃液受槽12より銅エッチング廃液が供給され、モーター15にて駆動される攪拌機18により両者は混合される。
【0020】
その銅エッチング廃液の反応槽への供給時には、前記したとおり攪拌機18により攪拌すると共にpHコントローラ20によりpH値を測定しながら、pH11.5以上の所定の値になるようにように供給量を制御する。
さらに、その供給時には温度も30℃以上50℃未満に制御する。
その後、温度及びpHを前記したところに維持したままで酸化銅が十分に生成するように所定時間放置し、放置後排出弁16を開放し反応液をポンプ21により濾過器22に搬送する。
その混合時及び放置時には攪拌を行うのがよく、また放置時間は3〜20時間がよく、好ましくは8〜16時間がよい。
【0021】
反応液は、該濾過器で固液分離され、アルカリ剤を含有する濾液は排管24により取り出され、必要によりアルカリ剤として再利用され、濾液を分離した後の固体の酸化銅は供給管23から供給された脱塩水により洗浄され、洗浄廃液は排管24より排出される。
洗浄された酸化銅は取出管25より取り出され、必要により乾燥され、製品となる。
本発明においては、このように銅エッチング廃液とアルカリ剤との反応をpH11.5以上、温度30℃以上50℃未満の条件下で行うものであり、その際には両者の混合時、混合後も所定時間前記条件を維持することが肝要である。
【0022】
本発明における処理対象の銅エッチング廃液としては、塩酸及び塩化銅を主成分とするものであれば、特に制限されることなく各種のものが使用でき、塩酸及び塩化銅を主成分とする銅エッチング液をプリントの配線板の製造工程において使用し、劣化後排出されるエッチング廃液が代表的なものとして挙げられる。
その外には、塩化鉄と塩化銅を含むエッチング廃液から冷却晶析法等により塩化鉄を分離して得た塩化銅液等を例示することができる。
【0023】
本発明の製造方法においては、アルカリ剤は銅エッチング廃液に混合して使用するが、その際におけるアルカリ剤の混合後のpHは11.5以上とすることがことが必要であり、好ましくは12以上がよい。
その理由は、塩素化合物を共沈させないpH領域で銅化合物の沈降分離を行うためである。
なお、これらの場合におけるpH制御は、pH計を用いてpH値を測定しながら、徐々に銅エッチング廃液又はアルカリ剤を添加することにより行うことができる。
【0024】
銅エッチング廃液と混合させるアルカリ剤としては、混合後pHを11.5以上とすることができるものであれば各種のものが特に制限されることなく使用可能であるが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、及び水酸化マグネシウムの少なくともいずれか1を含有する水溶液が好ましい。
なお、アルカリ剤として苛性ソーダ等の水酸化物を用いる場合には、反応槽に先に供給するのは、銅エッチング廃液及びアルカリ剤のいずれでもよいが、塩素化合物が共沈しないpH領域でより多くの酸化第2銅の沈澱が得られる点で図1に図示した態様のようにアルカリ剤がよい。
【0025】
また、本発明においては、アルカリ剤として炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩も使用可能ではあるが、その場合には銅エッチング廃液の全量を反応槽に先に供給し、その後アルカリ剤を少量ずつ添加するのがよい。
このようにアルカリ剤を少量ずつ添加するのは、一度にアルカリ剤を添加し、急激にアルカリ性にした場合には、銅の塩基性炭酸塩が生成し、それが生成した場合には酸化銅に転化し難く、酸化第2銅の回収量に対するアルカリ剤の使用量が多くなり不経済なためである。
【0026】
図1に図示した好ましい態様では、生成した酸化銅を含有する反応液は濾過器22に搬送され、そこにおいて固液分離される。
その分離された濾液は排管24より取り出され、アルカリ性であることから、必要により銅エッチング廃液と混合させるアルカリ剤等として再利用することもできる。
図1においては、生成した酸化銅は、濾過後供給管23から供給された脱塩水により洗浄され、洗浄廃液は排管24より排出されるが、反応槽17において、固体を沈降させ、反応液を上部から取り出し、その後反応槽内に脱塩水を供給し洗浄を行ってもよい。
【0027】
その酸化銅を固形分として分離回収する際の装置については、各種固液分離手段が特に制限されることなく使用でき、その固液分離手段として遠心脱水、真空濾過、加圧濾過、沈降分離あるいは圧搾等が例示できるが遠心脱水あるいは真空濾過がケーキ含水率を低下できる点で好ましい。
また、この固液分離後は固形分を洗浄するのがよく、その洗浄にはイオン交換水又は逆浸透処理水等の脱塩水を用いて脱水・洗浄を繰り返す置換洗浄を行うのが好ましい。
【0028】
また、洗浄を図1に図示した態様のように濾過器22にて行わず、別に洗浄槽を設け、そこで行ってもよい。
さらに、乾燥機にて乾燥前に洗浄を行うことができるタイプの乾燥機もあり、それを本発明でも用いることができ、その場合には図1に図示した態様のように濾過器22にて洗浄を行わず、乾燥機にて洗浄と乾燥の両者を行うこともできる。
【0029】
濾過、洗浄後に得られた酸化銅の乾燥は高温空気を用いて流動状態で乾燥することができる機能を具備する濾過乾燥機が好ましい。
より具体的には、乾燥機内において振動を与えて圧密状態にならないように流動させた状態で加熱された空気により乾燥するのが好ましい。
【実施例1】
【0030】
以下において、図1に図示した装置を用いて、本発明の製造方法について実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明は、この実施例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
まず、塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液11(Cu=119g/L、全Cl=235g/L、温度45℃)を廃液受槽12に送給し、他方、反応槽17には苛性ソーダ溶液(5wt%、600L、温度30℃)を予め送給した。
【0031】
その送給後ポンプ13を駆動して前記銅エッチング廃液11をpH計20でpH値を制御しながら反応槽17内に送給し、その送給開始後攪拌機18を駆動し、pHが12になるまで送給を継続した。
その結果、該銅エッチング廃液の送給量は120L、反応槽内の液温は40℃となり、この温度を電気ヒーター等により加熱維持しながら更に攪拌を15時間を継続した。
なお、銅エッチング廃液と苛性ソーダ溶液との混合及びその後の放置は大気中で行うのがよい。
【0032】
その後、反応槽17内のスラリー全量を底部の排出弁16を開放し、ポンプ21により濾過機22に送給し、送給後濾過し、ろ液を配管24にて排出する。
濾過後分離した固形分は、供給管23より送給された脱塩水(1000L)により逆洗し、苛性ソーダ分及び生成した塩化ナトリウムが除去された固形分を得、更にこれを流動化しながら乾燥空気により乾燥して水分を除去した固形分を得た。
なお、その際の逆洗は4回に分けて行った。
【0033】
その結果得られた固形分は19kgであり、これを分析したところ、Cu=75wt%、Na=0.007wt%、Cl=0.006wt%、水分3wt%で、成分をX線解析で同定したところ、CuOであることを確認した。
次に、得られた酸化第2銅の粉末5gを銅濃度50.7g/L、硫酸濃度91.2g/Lからなる電気メッキ液200mL、温度25℃に投入して60秒間攪拌したところ全て溶解し、不溶解分は認められなかった。
なお、未洗浄の固形分についても成分同定したところCuOであることを確認した。
【0034】
[比較例1]
実施例1と同一の銅エッチング廃液及び苛性ソーダ溶液を用い、銅エッチング廃液の反応槽17内への送給をpHが8になるまで送給した点を除き、実施例1と同様の処理を行った。
なお、本比較例では、pHが実施例1とは異なり、前記のとおりとなったことから、この比較例1では銅エッチング廃液の反応槽内への送給量は132Lとなった。
【0035】
そして、得られた固形分を分析したところ、Cu=68wt%、Na=0.005wt%、Cl=1.06wt%、水分3wt%で、成分をX線解析で同定したところ、CuO及びCu2(OH)3Clであることを確認した。
なお、未洗浄の固形分についても成分同定したところCuO及びCu2(OH)3Clであった。
【0036】
[比較例2]
この比較例2における実施例1及び比較例1との特徴的な違いは、比較例2で採用する反応時及び反応後の長時間放置時における反応液温度が、それら両例で採用する本発明の範囲内にある40℃より大分低い20℃未満である点であり、その他の点に関しては特段差異はない。
前記のとおりではあるが、本比較例2についても以下において具体的に説明する。
【0037】
実施例1と同一組成の銅エッチング廃液及び苛性ソーダ溶液を用い、苛性ソーダ溶液が予め送給されている反応槽に、実施例1の場合と同様に銅エッチング廃液がpH12になるまで送給した。
なお、その際には、本比較例2では銅エッチング廃液の温度、苛性ソーダ溶液の温度及びそれを混合した後に15時間維持した際の温度は、実施例1及び比較例1とは異なり、それぞれ20℃、15℃及び18℃であった。
【0038】
その結果、得られた反応液は、鮮やかな深青色でコロイド状物質を含有するものであり、これを実施例1と同様に濾過したところ、濾過性が悪く、濾過に長時間を要した。
濾過後得られた固形物をX線解析で同定したところ、実施例1で得られる酸化銅とは異なり、Cu(OH)2であった。
この比較例2から、銅エッチング廃液と苛性ソーダ溶液との反応時の温度が本発明で採用した温度範囲である30℃以上50℃未満より低い場合には、本発明の製造目的物質である酸化銅が製造できないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の製造方法に用いる装置を示す。
【符号の説明】
【0040】
11 銅エッチング廃液
12 廃液受槽
14 配液管
17 反応槽
18 攪拌機
19 配管
20 pHコントローラー
22 濾過器
23 供給管
24 排管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液にアルカリ剤をpH11.5以上になるまで混合し、その混合中は混合液の温度を30℃以上50℃未満に維持し、混合後も前記pH及び温度を維持して所定時間放置し、放置後混合液中の固形分を分離することを特徴とする銅エッチング廃液から酸化第2銅を製造する方法。
【請求項2】
固形分を分離回収した後の分離液をアルカリ剤として再使用する請求項1に記載の銅エッチング廃液から酸化第2銅を製造する方法。
【請求項3】
前記アルカリ剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、及び水酸化マグネシウムの少なくともいずれか1の水溶液である請求項1又は2に記載の銅エッチング廃液から酸化第2銅を製造する方法。
【請求項4】
混合時及び放置時に攪拌を行う請求項1ないし3のいずれか1項に記載の銅エッチング廃液から酸化第2銅を製造する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−127266(P2008−127266A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316931(P2006−316931)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000227250)日鉄鉱業株式会社 (82)