銅エッチング廃液から酸化第2銅を製造する方法
【課題】 プリントの配線板の製造工程等において排出される、劣化した塩酸及び塩化銅を主成分とするエッチング廃液からメッキ原料としても使用可能な高純度の酸化第2銅を簡単なプロセスで製造する方法の提供。
【解決手段】 その製造方法は2態様あるが、第1の態様は塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液と、酸素を含む気体又は酸化剤と金属銅とを接触させることにより、該エッチング廃液中の第2銅イオンの酸化作用を利用して該金属銅を溶解させた濃厚液を得る第1工程と、前記第1工程で得た濃厚液と酸素を含む気体又は酸化剤を接触させることにより該濃厚液中の塩化第1銅成分を低減し、その後該濃厚液とアルカリ剤とを混合してpH9以上の混合液を形成し、該混合液中に析出する固形分を酸化第2銅とする第2工程とからなることを特徴とするものである。
【解決手段】 その製造方法は2態様あるが、第1の態様は塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液と、酸素を含む気体又は酸化剤と金属銅とを接触させることにより、該エッチング廃液中の第2銅イオンの酸化作用を利用して該金属銅を溶解させた濃厚液を得る第1工程と、前記第1工程で得た濃厚液と酸素を含む気体又は酸化剤を接触させることにより該濃厚液中の塩化第1銅成分を低減し、その後該濃厚液とアルカリ剤とを混合してpH9以上の混合液を形成し、該混合液中に析出する固形分を酸化第2銅とする第2工程とからなることを特徴とするものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩酸及び塩化銅を主成分とするエッチング廃液から酸化第2銅を製造する方法に関する。
より詳しくは、本発明は、プリント配線板の製造工程等において排出される、劣化した塩酸及び塩化銅を主成分とするエッチング廃液からメッキ原料としても使用可能な高純度の酸化第2銅を製造することができ、かつ簡単なプロセスにて酸化第2銅を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板回路の製造においては、銅箔がラミネートされた銅張積層板や予め無電解銅めっきが施された基板を、塩化第二銅及び塩酸を含むエッチング液を用いてエッチングすることが広く行われている。
このエッチング工程では、塩化第二銅が金属銅を溶解し、この銅の溶解に伴いエッチング液のエッチング能力が低下し、それを防ぐためエッチング液の化学的再生と濃度調整が必要で、添加薬剤による増量分がエッチング装置より銅含有エッチング廃液として排出される。
【0003】
このエッチング廃液は、一般的にはエッチング液メーカーや産業廃棄物処理企業により収集され、種々の方式で処理されている。
[先行技術文献]
【特許文献1】特開昭56−17429号公報
【特許文献2】特開2003−253351号公報
【特許文献3】特開平11−335752号公報
【特許文献4】特開2002−327288号公報
【特許文献5】特開2002−211920号公報
【0004】
その処理技術は、廃液量の増加に伴い輸送にかかる費用が増大していることや、処理能力が限界に達していることによる処理コストの高騰が深刻な問題となっている。
特に、その銅エッチング廃液には高濃度の塩素イオンが含まれているため、その中和により得られる沈殿物は、通常、含水Cu7Cl4(OH)、Cu2(OH)3Cl等の多量の除去困難な塩素成分を含む。
そのため、通常は凝集剤とアルカリ剤など複数の多量の薬剤を添加して含有する銅を沈殿させ、発生するスラッジは埋め立て処分されているのが現状であり、かかる際の業者引取り処分には多大な廃棄物処理コストがかかる。
【0005】
そのようなことから、塩化第二銅及び塩酸を含むエッチング廃液を埋め立て処分するのではなく、銅を有価物として回収すべく前記廃液を電解し、銅を金属銅として回収する技術が大分以前から提案されている(特許文献1)。
その技術においては、取り扱いに注意を要する塩素ガスの発生を伴い、かつ生成した銅は粉末となっていて、その粉末表面には塩素化合物が付着し、かつ含水率の高いものなっている。
さらに、その塩素化合物は洗浄によっても簡単には除去し難いものであり、残留した塩素化合物が回収銅を再利用する際に悪影響を与えることになり、銅の回収技術としては不十分なものである(特許文献2)。
【0006】
例えば、この塩素化合物が残留したままの回収銅をプリント配線板電解銅箔製造用の銅イオン供給源として利用する場合には不十分なものである。
すなわち、回収銅粉表面に付着している塩素化合物が、銅めっき液中で塩素イオンとして存在し、電解時に陽極から塩素ガスが発生し、電解銅箔製造装置、例えば、陽極材、陰極材、電解槽等の設備を腐食し、損耗させる。
さらに、発生した塩素ガスが環境を汚染させたりする等健康上も極めて有害であり、しかも銅箔の品質上の面でも銅箔面の変色、腐食を与える要因となる。
【0007】
前記したとおりであるから、電解回収された金属銅については、リサイクル材料として利用する際には塩素を全く含まないか、または銅箔物性に悪影響を及ぼさない程度の微量の塩素しか含まないことが要求される場合に使用することは難しく、そのため回収された粉末金属銅を高温溶融し、急速冷却することにより、高純度銅を製造する方法も既に提案されている(特許文献3)。
この高温溶融を利用する技術も、エネルギー経済性、銅純度、歩留まり等の点で十分なものではなく、本発明者もこれに関する改良技術を提案している(特許文献2)。
【0008】
これらの高温溶融を利用する技術は、いずれも金属銅を製造後に塩素化合物を除去し銅を高純度化するものであるが、これとは異なり、銅回収の電解を行う前に残留する塩素を分離回収し、その後電解により銅を回収する技術も提案されている(特許文献4)。
すなわち、その回収技術は、銅エッチング廃液中の塩素化合物を廃液中から塩化水素として蒸発放出し、その後電解により銅を析出させ、高純度の銅を回収するものであり、その際に放出された塩化水素は塩酸として回収するものである。
【0009】
前記のとおりではあるものの、その回収された塩酸の濃度は最大でも15%程度で高濃度のものを得ることができず、しかもその塩化水素放出の際の蒸発には硫酸を使用することから、蒸発、凝縮装置には耐酸性のものを使用することが必要で、コスト増を招来することになり、この技術も満足できるものではなかった。
以上の技術は、いずれも銅を金属銅として回収するものであるが、銅を酸化銅として回収し、銅資源として再利用する技術も既に提案されている(特許文献5)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この銅を酸化銅として回収する技術は、銅エッチング廃液中に含有される銅イオンをpH11以上のアルカリ水溶液を用いて酸化銅を沈殿させ、この酸化銅を銅資源として回収再利用するもので、簡便な技術であることから、本発明者はこの酸化銅をプリント配線板電解銅箔製造用の銅イオン供給源あるいは電気銅の銅資源として利用すべく検討し、まず塩化銅エッチング廃液を水酸化ナトリウムで中和して酸化銅を作ってみた。その結果、酸化銅が得られるものの、塩化銅エッチング廃液中の塩酸成分が6〜10w%と高濃度なため大量の水酸化ナトリウムを消費し不経済なことがわかった。
【0011】
これは、塩化銅エッチング廃液に十分なエッチング能力、すなわち銅溶解能力があることを意味するから、本発明者は当該廃液に金属銅を溶解して、同じ水酸化ナトリウム消費量に対して得られる酸化銅を増量してから中和し、その後得られた酸化銅を硫酸で溶解することを試みた。
その結果、大半の酸化銅は溶解するものの、一部が溶解することなく白色の残滓が認められ、その残滓中の塩素成分が水洗により除去できないことがわかった。
【0012】
本発明者は、この酸化銅を製造する技術が前記したとおり簡便であることから、その利点を活かす技術を開発すべく、鋭意検討することとし、まず溶解している銅イオンを分析したところ第2銅イオンであることがわかり、続いて未溶解物質も分析したところ大部分が塩化第1銅であることが判った。
そのようなことから、この塩化第1銅が残存しないような状態にして、銅エッチング廃液にアルカリ水溶液を混合すれば、塩化第1銅が析出することなく、酸化第2銅を沈殿させることができるのではないかと推測した。
【0013】
そこで、銅エッチング廃液に酸素ガスを供給して該エッチング廃液中の第1銅成分をすべて第2銅成分に酸化し、その後アルカリ水溶液を添加してアルカリにして沈殿を生成し、それを硫酸で溶解したところ沈殿はほぼ全量溶解することが判明し、この溶解した沈殿は酸化第2銅であることがわかった。
さらに実験、検討を行った結果、アルカリ水溶液と混合する前の銅エッチング廃液に残存する第1銅成分は2g/L以下がよく、好ましくは1g/L以下であることがわかった。
【0014】
また、銅エッチング廃液中の第1銅成分が第2銅成分に酸化される速度は該エッチング廃液中の塩酸濃度が低い(塩基度が高い)ほど早いこと、十分な酸化剤を供給しながら該エッチング廃液中に銅を溶解すると次第に銅濃度は高くなり、更に溶解を継続すると塩酸成分が無くなるまで金属銅を溶解するができ、該エッチング廃液中にCu7Cl4(OH)、Cu2(OH)3Cl等の水酸化銅を含む固形分が析出し、最終的にはこれら固形分と中性の水とに分離することもわかった。
さらに、この固形分を含むスラリーにアルカリ剤を加えて中和することにより、該混合物中の水酸化銅成分を酸化銅に転換することができ、その結果固形分中の塩素成分を除去できることもわかった。
【0015】
本発明は、この新規な知見を利用した酸化第2銅を製造する方法を提供するものであるから、それは銅エッチング廃液から単純かつ簡便で、効率的に、高純度の酸化第2銅を回収する、酸化第2銅の製造方法を提供することを解決すべき課題、すなわち目的とするものである。
また、製造された酸化第2銅には前記したとおり塩素化合物が残留しないことから、その残留に伴う弊害を生ずることなく、金属銅又はプリント配線板電解銅箔製造用の銅供給源として利用可能な酸化第2銅を製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者が前記課題を解決するために採用した手段は銅エッチング廃液から酸化第2銅を製造する方法であり、それには2つの態様があり、それらは以下のとおりである。
その第1の態様は、塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液と、酸素を含む気体又は酸化剤と金属銅とを接触させることにより、該エッチング廃液中の第2銅イオンの酸化作用を利用して該金属銅を溶解させた濃厚液を得る第1工程と、
前記第1工程で得た濃厚液と酸素を含む気体又は酸化剤を接触させることにより該濃厚液中の塩化第1銅成分を低減し、その後該濃厚液とアルカリ剤とを混合し、該混合液中に析出する固形分を酸化第2銅とする第2工程とからなることを特徴とするものである。
【0017】
第2の態様は、塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液と、酸素を含む気体又は酸化剤と金属銅とを接触させることにより、該エッチング廃液中の第2銅イオンの酸化作用を利用して該金属銅を溶解し、水酸化銅を含む混合物を析出させて固形分として分離回収する第1工程と、
前記第1工程で分離回収した固形分とアルカリ剤とを混合し、該混合液中の固形分を酸化第2銅とする第2工程とからなることを特徴とするものである。
【0018】
そして、それらのいずれの態様においても、本発明では以下のことが好ましい。
(1)酸化第2銅を分離回収した後の分離液については、pH調製用のアルカリ剤として再使用すること
(2)酸化剤が、過酸化水素、過酸化塩、過硫酸塩又はこれらの混合物であること
(3)酸素を含む気体が空気であること
(4)アルカリ剤が、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム及び水酸化マグネシウムの少なくともいずれか1の水溶液であること
【発明の効果】
【0019】
本発明の製造方法は前記したとおり2態様あるが、それらはいずれも塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液に金属銅を溶解して塩素成分に対する銅成分比を増した混合物を得てから、該混合物とアルカリ剤とを混合し、該混合液中に酸化第2銅を形成すること、金属銅の溶解において該銅エッチング廃液と酸素を含む気体又は酸化剤を接触させることを特徴とするものである。
【0020】
したがって、そのプロセスは単純かつ簡便であり、それにより効率的に、高純度の酸化第2銅を製造することができる。
また、そのプロセスにより得られた酸化第2銅は、純度が高く、硫酸により簡便に溶解することができるので、それを用いてプリント配線板回路の製造あるいは銅張り積層板の製造の際の銅原料として再利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の製造方法は前記したとおり2態様あり、その代表的な第1態様は、塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液と、酸素を含む気体又は酸化剤と金属銅とを接触させることにより、該エッチング廃液中の第2銅イオンの酸化作用を利用して該金属銅を溶解させた濃厚液を得る第1工程と、前記第1工程で得た濃厚液と酸素を含む気体又は酸化剤を接触させることにより、該濃厚液中の塩化第1銅成分を低減し、その後該濃厚液とアルカリ剤とを混合し、該混合液中に析出する固形分を酸化第2銅とする第2工程とからなることを特徴とする。
【0022】
第2の態様は、塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液と、酸素を含む気体又は酸化剤と金属銅とを接触させることにより、該エッチング廃液中の第2銅イオンの酸化作用を利用して該金属銅を溶解し、水酸化銅を含む混合物を析出させて固形分として分離回収する第1工程と、前記第1工程で分離回収した固形分とアルカリ剤とを混合し、該混合液中の固形分を酸化第2銅とする第2工程とからなることを特徴とするものである。
【0023】
それのいずれの態様においても、本発明では以下のことが好ましい。
(1)酸化第2銅を分離回収した後の分離液については、pH調製用のアルカリ剤として再使用すること
(2)酸化剤が、過酸化水素、過酸化塩、過硫酸塩又はこれらの混合物であること
(3)酸素を含む気体が空気であること
(4)アルカリ剤が、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム及び水酸化マグネシウムの少なくともいずれか1の水溶液であること
【0024】
本発明における処理対象の銅エッチング廃液としては、塩酸及び塩化銅を主成分とするものであれば、特に制限されることなく各種のものが使用でき、塩酸及び塩化銅を主成分とする銅エッチング液をプリントの配線板の製造工程において使用し、劣化後排出されるエッチング廃液が代表的なものとして挙げられる。
そのエッチング廃液中に含まれる塩素イオン濃度は通常200〜300g/Lであり、本発明においては、その濃度のものが好ましく使用できる。
その外には、塩化鉄と塩化銅を含むエッチング廃液から冷却晶析法などにより分離して得た塩化銅等を例示することができる。
【0025】
本発明においては、第1工程で沈殿物を析出させる際にはアルカリ剤を混合する必要はないが、その理由は、酸素を含む気体又は酸化剤の存在下においては、金属銅は銅エッチング廃液に次第に溶解して銅の濃厚液が生成するが、その後も溶解を継続すると銅濃度が上昇するにしたがってCu7Cl4(OH)、Cu2(OH)3Clなどの水酸化銅を含む固形分が析出するとともに次第にpHが上昇し、ついには7前後に到達し溶解反応が終了するからである。
【0026】
前記したように、本発明では、酸素を含む気体又は酸化剤の存在下において金属銅は銅エッチング廃液に次第に溶解して銅濃度が高くなり、銅の濃厚液が生成するが、その後も溶解を継続することができ、その結果銅濃度が上昇するにしたがってCu7Cl4(OH)、Cu2(OH)3Clなどの水酸化銅を含む固形分が析出し、それに伴って次第にpHが上昇し、ついには7前後に到達し溶解反応が終了する。
このように溶解反応が終了するまで銅を溶解させた場合には、沈殿を形成しない範囲で溶解を行った場合の3倍程度の銅を溶解させることができる。
【0027】
具体的には、塩素イオン濃度200g/Lで沈澱が生成しない範囲内で銅を溶解した場合には、銅溶解量は最大で180g/Lであるが、沈殿を生成した場合には最大628g/Lまで溶解することができる。
また、塩素イオン濃度が250g/Lの場合には、沈澱が生成しない範囲内で銅を溶解した場合には、銅溶解量は最大で225g/Lであるが、沈殿を生成した場合には最大785g/Lまで溶解することができる。
【0028】
そして、本発明の製造方法においては、いずれの態様の場合であっても、アルカリ剤は、酸化第2銅を形成する際にも使用するが、その際におけるアルカリ剤を混合した後のpHについては高い方がよく、アルカリ剤混合後の温度は高い方が好ましい。
前記のとおりではあるが、エネルギー効率等を配慮すると、実用的には混合後の温度は50℃以上がよく、好ましくは50〜70℃がよく、pHは8以上がよく、好ましくは9以上がよい。
具体的には、酸化を速める、すなわち酸化第2銅の形成を促進するには温度50℃以上でpH8以上が良く、温度30℃以上50℃未満の場合には、pH9以上が良い。
【0029】
前記のようなことから、酸化第2銅を形成する際の好適条件等を更に調査したところ、混合液中に沈殿物が析出するpH範囲(pH=4〜14)において、該混合液が強アルカリ性であるほど沈殿物中の塩素含有量が少くなるとともに、沈殿物が速やかに酸化銅に変化することがわかっている。
さらに、沈殿物が酸化第2銅に変化する速度は温度が高い方が速く、20℃以下の低温で中和し20℃以下に保持して反応させた場合は酸化第2銅化し難いこともわかった。
【0030】
また、水酸化銅が酸化第2銅に転換する過程を調査したところ、水酸化銅が酸化第2銅化するに伴ってpHが低下し、pH7以上に維持できれば反応が完了し、ほぼ全ての銅成分が酸化第2銅化していることがわかった。
さらに、混合液中の水酸化銅が酸化第2銅に転換する際の速度の温度依存性を0〜90℃の範囲で調査したところ、高温になるほど転換速度が速いこともわかった。
なお、混合後の酸化第2銅を生成させる際のpHについては、温度が55℃前後の高温の場合には、pH7前後でも採用可能ではあるが、酸化第2銅形成に長時間を要することになり実用的ではない。
【0031】
そして、これらの場合におけるpH制御は、pH計を用いてpH値を測定しながら、金属銅を溶解させた濃厚液、あるいは分離回収した固形分に徐々にアルカリ剤を添加するか、又はアルカリ剤に徐々に金属銅を溶解させた濃厚液、あるいは分離回収した固形分を添加することにより行うことができる。
【0032】
金属銅を溶解させた濃厚液、あるいは分離回収した固形分と混合させるアルカリ剤としては、混合後pHを8以上とすることができるものであれば各種のものが特に制限されることなく使用可能であるが、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム及び水酸化マグネシウムの少なくともいずれか1を含有する水溶液が好ましい。
【0033】
水酸化銅を含む混合物を析出させて固形分として分離回収する際の装置については、各種固液分離手段が特に制限されることなく使用でき、その固液分離手段として遠心脱水、真空ろ過、加圧ろ過、沈降分離あるいは圧搾等が例示できるが、遠心脱水あるいは真空ろ過が脱水ケーキの含水率を低減できる点で好ましい。
また、この固液分離後の固形分は洗浄するのがよく、その洗浄には井水、市水、脱塩水などが使えるが、イオン交換水、蒸留水あるいは逆浸透処理水等の脱塩水が好ましい。洗浄方法は、前記した水を使用して洗浄と脱水を繰り返す置換洗浄法がよい。
【0034】
第1工程で分離回収した固形分とアルカリ剤とを混合して生成した混合液等に酸素を含む気体又は酸化剤を接触させるが、その際の酸素を含む気体としては、純酸素又は空気が例示でき、安価であることから空気が好ましい。
また、酸化剤については、特に制限されることなく各種のものが使用可能であるが、過酸化水素、過酸化塩、過硫酸塩、塩素酸塩、次亜塩素酸塩又はこれらの混合物が好ましく、過酸化塩には、過炭酸ナトリウム、過酸化カルシウム等が例示でき、過硫酸塩には、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が、塩素酸塩は塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸塩は次亜塩素酸カルシウム等が例示できる。
【0035】
生成した酸化第2銅は固液分離を行うことにより回収することになるが、その分離手段については、前記した水酸化銅を含む混合物を析出させて固形分として分離回収する際の場合と同様に各種固液分離手段が特に制限されることなく使用でき、その場合にも例示したものを勿論同様に使用することができる。
前記のとおりではあるものの、この場合には、粉体を搬送する手間が省ける点で、濾過と乾燥の両機能を具備し、かつ乾燥は高温空気を用いて流動状態で乾燥することができる機能を具備する濾過乾燥機が好ましい。
【0036】
この固液分離により得られる分離液は、アルカリ性の液体であり、pH調製用のアルカリ剤として再使用するのが好ましい。
具体的には、いずれの態様においても、第2工程で生成した酸化第2銅を分離回収し、分離液を第1工程に戻して、pH調製用のアルカリ剤として再使用するのが好ましい。
【0037】
次に、図1を用いて、第1の態様の製造方法について具体的に説明する。
この図示された第1の態様の製造方法において使用する装置は、廃液槽14、溶解槽18、反応槽27、濾過乾燥機32を具備する。
銅エッチング廃液11は、まず廃液槽14に供給され、ポンプ15により送液管16を経て金属銅20を収容した溶解槽18に送液される。銅エッチング廃液はスプレー19から噴出して十分な空気とともに金属銅20に接触してこれを溶解する。
【0038】
金属銅と接触した、溶解槽20内の銅エッチング廃液は21フィルタにより固形分の混入を防いでポンプ22により循環配管23を経て廃液槽14に戻る。このように、金属銅20を溶かしながら廃液槽14と溶解槽18を循環する銅エッチング廃液は、空気又は酸化剤12と接触させる。
こうして循環を繰り返して銅エッチング廃液中の、金属銅の溶解に伴って増える塩化第1銅成分が酸化され、所定の銅濃度、塩化第1銅濃度に達した時点で銅エッチング廃液は切替弁17を開いて反応槽27に送られる。
【0039】
なお、前記所定の銅濃度とは、金属銅を溶解させた濃厚液であるが、水酸化銅の固形分を析出させる前で銅の溶解を停止した場合の銅濃度である。
また、所定の塩化第1銅濃度とは、該濃厚液とアルカリ剤とを混合してpH8以上とした際に塩化第1銅が析出することなく酸化第2銅を沈澱させることができる濃度であり、それは、アルカリ水溶液との混合方法、その時の温度変化、溶質の濃度変化等の諸条件によって変わるものの、実用的操作条件における充分安全な数値としては、アルカリ水溶液と混合する前の銅エッチング廃液に残存する第1銅成分が2g/L以下がよく、好ましくは1g/L以下であるのがよい。
【0040】
その銅エッチング廃液中における銅濃度、及び塩化第1銅濃度の管理は、経験則により所定時間循環する方法をとっても良いし、比重、銅濃度等のセンサを使って制御しても良い。銅エッチング廃液の温度は金属銅の溶解速度と装置の耐久性を考慮して50℃くらいに管理するのが好ましい。
他方、反応槽27にはアルカリ水溶液が配管29を介して予め供給され、その供給後、反応槽27にはポンプ15により切替弁17、配管24を介して廃液受槽14より金属銅溶解後の濃厚銅エッチング廃液が供給され、攪拌機28により両者は混合される。
【0041】
その後、攪拌機28により攪拌すると共にpHコントローラ30によりpH値を測定しながら、切替弁17の開閉によって金属銅溶解後の濃厚銅エッチング廃液が更に供給され、pH9以上の所定のpH値になるまで供給が継続される。
所定のpH値に到達した時点で、金属銅溶解後の濃厚銅エッチング廃液の供給を停止し、さらに所定の反応時間を経過した時点で攪拌機28を停止して反応槽27底部の排出弁26を開放し、酸化銅を含有するスラリーが排出され、ポンプ31により濾過乾燥機32に送給される。
【0042】
この濾過乾燥機32においては、濾過によりまず濾液を分離し、その濾液は返戻管35を介して反応槽27に送給され、アルカリ水溶液の一部として再利用される。
他方、分離された固形分は振動を与えて圧密状態にならないように流動させた状態で水配管33から送給された脱塩水により洗浄され、洗浄された固形分は再度ろ過により脱水され、そのろ液は切替弁36を開き排出管37を経て排出される。洗浄は、脱水された固形分中の塩素成分が所定の数値以下になるまで繰り返される。
洗浄を終了して所定の塩素成分含有量になった後脱水された固形分は、濾過乾燥機32内において同様に振動を与えて圧密状態にならないように流動させた状態で、熱風配管を経て供給される高温の空気により乾燥され、取出管38から回収される。
【0043】
次ぎに、図2を用いて、第2の態様の製造方法について具体的に説明する。
この図示された第2の態様において使用する装置は、廃液槽14、溶解槽18、反応槽27、濾過器32、ろ過乾燥機43を具備する。
銅エッチング廃液11は、まず廃液槽14に供給され、ポンプ15により送液管16を経て金属銅20を収容した溶解槽18に送液される。銅エッチング廃液はスプレー19から噴出して十分な空気とともに粉状の金属銅20に接触してこれを溶解する。
【0044】
金属銅と接触した、溶解槽20内の銅エッチング廃液は、フィルタ21によりポンプ22により循環配管23を経て廃液槽14に戻る。このように、金属銅20を溶かしながら廃液槽14と溶解槽18を循環する銅エッチング廃液は、空気又は酸化剤12と接触させる。この空気等の酸化成分により銅エッチング廃液中の、金属銅の溶解に伴って増える塩化第1銅成分が酸化される。
また、この時の銅エッチング廃液中塩酸濃度が0に到達すると廃液槽14内において水酸化銅と塩素化合物を含む固形分が析出し始める。
なお、固形分の析出は、当然溶解槽18内においても生ずるので、フィルタ21は、後記するように金属銅の溶解量が増大するに従って次第に生成する水酸化銅等の微細な固形分は通過可能であるが、金属銅粉は通過できない孔径となっている。
【0045】
以上の循環を繰り返して該銅エッチング廃液中の銅濃度が上がり塩酸濃度が減少して水酸化銅と塩素化合物を含む固形分が析出し、その析出量が所定量になった後に切替弁17を開いてこの固形分を含む銅エッチング廃液をろ過器32に送る。
ろ過器32では固形分を分離して、ろ液は切替弁33を開いて返戻管34を経て廃液槽14に戻す。分離した固形分は取出管35を通して反応槽27に落す。
【0046】
銅エッチング廃液の銅濃度、塩化第1銅濃度については、所定値に管理するが、その管理については、経験則により所定時間循環する方法をとっても良いし比重、銅濃度等のセンサを使って制御しても良い。銅エッチング廃液の温度は金属銅の溶解速度と装置の耐久性を考慮して50℃くらいに管理するのが好ましい。
なお、その際における前記固形分中の銅を含めた、銅エッチング廃液1L当たりの全銅濃度については200〜300g/Lがよい。また塩化第1銅濃度については前記したとおり第1銅成分が2g/L以下がよく、好ましくは1g/L以下であるのがよい。
【0047】
その後、反応槽27には水配管38から固形分を流動化させるための水を供給し、攪拌機28により両者を混合し流動化させる。
その際には攪拌機28により攪拌すると共にpHコントローラ30によりpH値を測定しながら、配管29を介してアルカリ水溶液が反応槽27に供給され、pH8以上の所定のpH値になるまで供給が継続される。
【0048】
なお、反応槽27への給液は、あらかじめ少な目のアルカリ水溶液を供給しておき、該アルカリ水溶液中に固形分を落してから更にアルカリを追加してpH調整しても良い。
所定のpH値に到達した時点で、アルカリ水溶液の供給を停止し、さらに所定の反応時間を経過した時点で攪拌機28を停止して反応槽27底部の排出弁26を開放し、酸化銅を含有するスラリーが排出され、切替弁41を開けてポンプ31により排出管42経由で濾過器32に返送される。
【0049】
この濾過器32においては、濾過によりまず濾液を分離し、その濾液は切替弁36を開き排出管37を介して別の受槽(図示しない)に送られ、アルカリ水溶液の一部として再利用される。
他方、分離された固形分は取出管35から反応槽27に落され、水配管38から送給された脱塩水により洗浄され、洗浄された固形分は再度ろ過により脱水され、そのろ液は切替弁36を開き排出管37を経て排出される。洗浄は、脱水された固形分中の塩素成分が所定の数値以下になるまで繰り返される。
【0050】
洗浄を終了して所定の塩素成分含有量になった後脱水された固形分は、さらに水配管38からの脱塩水により流動化され、スラリーとして、切替弁39を開き排出管40経由で濾過乾燥機43に送られる。
この濾過乾燥機43においては、濾過によりまず濾液を分離し、その濾液は排出管44を介して排出され、残った固形分はろ過乾燥機内において振動を与えて圧密状態にならないように流動させた状態で、熱風配管45を経て供給される高温の空気により乾燥され、取出管46から回収される。
【実施例1】
【0051】
以下において、図1に図示した装置を用いて、本発明の製造方法について実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明は、この実施例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
まず、塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液(Cu=120g/L、全Cl=235g/L、温度50℃、500L)を廃液槽14に送給し、溶解槽18には塩化銅エッチング廃液を電解して得た微粉体状の金属銅を100kg投入した。他方、反応槽27には苛性ソーダ溶液(5wt%、2400L)を予め送給した。
【0052】
銅エッチング廃液11は、ポンプ15により送液管16を経て金属銅20を収容した溶解槽18に送液された。銅エッチング廃液はスプレー19から噴出して十分な空気とともに金属銅20に接触してこれを溶解した。金属銅と接触した、溶解槽20内の銅エッチング廃液は21フィルタにより固形分の金属銅粉の混入を防いでポンプ22により循環配管23を経て廃液槽14に戻した。このように、金属銅20を溶かしながら廃液槽14と溶解槽18を循環する銅エッチング廃液は、分散ノズル13から噴出させた圧縮空気12と接触させた。
【0053】
こうして銅エッチング廃液中の金属銅の溶解に伴って増える塩化第1銅成分が酸化された。以上の循環を8時間繰り返して得た銅エッチング廃液の銅濃度は210g/L、塩化第1銅濃度は0.1g/L、温度50℃であった。以上により金属銅を溶解して得た濃厚銅エッチング廃液は切替弁17を開いて反応槽27に送った。
アルカリ水溶液が配管29を介して予め供給された反応槽27に、ポンプ15により切替弁17、配管24を介して廃液受槽14より金属銅溶解後の濃厚銅エッチング廃液を供給し、攪拌機28により両者を混合した。
【0054】
その後、攪拌機28により攪拌すると共にpHコントローラ30によりpH値を測定しながら、切替弁17の開閉によって金属銅溶解後の濃厚銅エッチング廃液を更に供給し、pH10に低下するまで供給を継続し、前記pHに到達した時点で停止した。それまでに反応槽27に供給した濃厚銅エッチング廃液の量は450Lであった。
この時点で金属銅溶解後の濃厚銅エッチング廃液の供給を停止し、さらに40℃で10時間攪拌して反応させた時点で攪拌機28を停止して反応槽27底部の排出弁26を開放し、酸化銅を含有するスラリーを排出し、ポンプ31により濾過乾燥機32に送給した。
この濾過乾燥機32においては、濾過によりまず濾液を分離し、その濾液は返戻管35を介して反応槽27に送給され、アルカリ水溶液の一部として再利用した。
【0055】
他方、分離された固形分は振動を与えて圧密状態にならないように流動させた状態で水配管33から送給された脱塩水(1500L)により洗浄され、洗浄された固形分は再度ろ過により脱水され、そのろ液は切替弁36を開き排出管37を経て排出した。洗浄は、4回繰り返した。
洗浄を終了して脱水した固形分(385kg)は、濾過乾燥機32内において振動を与えて圧密状態にならないように流動させた状態で、熱風配管を経て供給される150℃の空気により乾燥され、取出管38から回収した。回収した酸化銅の重量は125kg、銅含有量は77.2%、塩素含有量は0.012%、水分約4.5%であった。
【実施例2】
【0056】
以下において、図2に図示した装置を用いて、本発明の製造方法について実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明は、この実施例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
まず、塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液(Cu=120g/L、全Cl=235g/L、温度50℃、65L)を廃液槽14に送給し、溶解槽18には塩化銅エッチング廃液を電解して得た、微粉体状の金属銅を100kg投入した。
【0057】
銅エッチング廃液11は、ポンプ15により送液管16を経て金属銅20を収容した溶解槽18に送液された。銅エッチング廃液はスプレー19から噴出して十分な空気とともに金属銅20に接触してこれを溶解した。金属銅と接触した、溶解槽20内の銅エッチング廃液は21フィルタにより金属銅粉の混入を防いでポンプ22により循環配管23を経て廃液槽14に戻した。
【0058】
このように、金属銅20を溶かしながら廃液槽14と溶解槽18を循環する銅エッチング廃液は、分散ノズル13から噴出させた酸化剤(35%過酸化水素水)12と接触させ、金属銅の溶解に伴って増える塩化第1銅成分が酸化された。
以上の循環を継続中、金属銅を溶解して得た濃厚銅エッチング廃液中に固形分が析出し、析出量が所望値(Cuとして50g/L、なおその際における全Cu濃度は230g/Lとなる)に到達した時点で切替弁17を開いてろ過器32に送った。
【0059】
ろ過器32では固形分を分離して、ろ液は切替弁33を開いて返戻管34を経て廃液槽14に戻しさらに金属銅の溶解を続けた。分離した固形分は取出管35を通して反応槽27に落した。その後、反応槽27には水配管38から固形分を流動化させるための脱塩水を供給し、攪拌機28により両者を混合し流動化させた。
廃液槽に戻した後さらに酸化剤(35%過酸化水素水)12と接触させて金属銅20を溶かしながら廃液槽14と溶解槽18を循環する銅エッチング廃液中に再度固形分が析出し、所望値に到達したので切替弁17を開いてろ過器32に送った。
【0060】
ろ過器32では固形分を分離して、ろ液は切替弁33を開いて返戻管34を経て廃液槽14に戻しさらに金属銅の溶解を続けた。分離した固形分は取出管35を通して反応槽27に落した。その後、反応槽27には水配管38から固形分を流動化させるための脱塩水を供給し、攪拌機28により両者を混合し流動化させた。このような固形分の分離と流動化を5回繰り返して得た含水固形分の組成はCu=21%、Cl=7.1%、その量は77.5kgであった。以上の、金属銅の溶解から固形分の分離工程に費やした全時間は約12時間であった。また、この時点の銅エッチング廃液の銅濃度は153g/L、塩化第1銅濃度は0.1g/L、塩素イオン濃度150g/L、温度50℃であった。
【0061】
その後、攪拌機28により攪拌すると共にpHコントローラ30によりpH値を測定しながら、配管29を介して20%水酸化ナトリウム水溶液を反応槽27に供給し、pH10になるまで供給を継続した。
この時点で、20%水酸化ナトリウム水溶液の供給を停止し、その後も攪拌は継続し、8時間経過した後、攪拌機28を停止して反応槽27底部の排出弁26を開放し、酸化銅を含有するスラリーを排出し、切替弁41を開けてポンプ31により排出管42経由で濾過器32に返送した。20%水酸化ナトリウム水溶液の供給量は31.5kgであった。
【0062】
この濾過器32においては、濾過によりまず濾液を分離し、その濾液は切替弁36を開き排出管37を介して別の受槽(図示しない)に送られ、アルカリ水溶液の一部として再利用した。
他方、分離された固形分は取出管35から反応槽27に落し、水配管38から送給された脱塩水300Lにより洗浄した。洗浄された固形分は再度ろ過器により脱水され、そのろ液は切替弁36を開き排出管37を経て排出した。洗浄は4回繰り返した。
【0063】
洗浄を終了して脱水した固形分は、さらに水配管38からの脱塩水により流動化され、スラリーとして、切替弁39を開き排出管40経由で濾過乾燥機43に送った。
この濾過乾燥機43においては、濾過によりまず濾液を分離し、その濾液は排出管44を介して排出され、残った固形分はろ過乾燥機内において振動を与えて圧密状態にならないように流動させた状態で、熱風配管45を経て供給される高温の空気により乾燥した後、取出管46から回収した。回収された酸化銅中の銅含有量は76.2%、塩素成分は0.006%、回収量は21kgであった。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の態様の製造方法を図示する。
【図2】本発明の第2の態様の製造方法を図示する。
【符号の説明】
【0065】
11 銅エッチング廃液
14 廃液槽
15 ポンプ
16 送液管
17 切替弁
18 溶解槽
19 スプレー
20 金属銅
24 配管
27 反応槽
28 攪拌機
29 配管
30 pHコントローラ
32 濾過乾燥機
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩酸及び塩化銅を主成分とするエッチング廃液から酸化第2銅を製造する方法に関する。
より詳しくは、本発明は、プリント配線板の製造工程等において排出される、劣化した塩酸及び塩化銅を主成分とするエッチング廃液からメッキ原料としても使用可能な高純度の酸化第2銅を製造することができ、かつ簡単なプロセスにて酸化第2銅を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板回路の製造においては、銅箔がラミネートされた銅張積層板や予め無電解銅めっきが施された基板を、塩化第二銅及び塩酸を含むエッチング液を用いてエッチングすることが広く行われている。
このエッチング工程では、塩化第二銅が金属銅を溶解し、この銅の溶解に伴いエッチング液のエッチング能力が低下し、それを防ぐためエッチング液の化学的再生と濃度調整が必要で、添加薬剤による増量分がエッチング装置より銅含有エッチング廃液として排出される。
【0003】
このエッチング廃液は、一般的にはエッチング液メーカーや産業廃棄物処理企業により収集され、種々の方式で処理されている。
[先行技術文献]
【特許文献1】特開昭56−17429号公報
【特許文献2】特開2003−253351号公報
【特許文献3】特開平11−335752号公報
【特許文献4】特開2002−327288号公報
【特許文献5】特開2002−211920号公報
【0004】
その処理技術は、廃液量の増加に伴い輸送にかかる費用が増大していることや、処理能力が限界に達していることによる処理コストの高騰が深刻な問題となっている。
特に、その銅エッチング廃液には高濃度の塩素イオンが含まれているため、その中和により得られる沈殿物は、通常、含水Cu7Cl4(OH)、Cu2(OH)3Cl等の多量の除去困難な塩素成分を含む。
そのため、通常は凝集剤とアルカリ剤など複数の多量の薬剤を添加して含有する銅を沈殿させ、発生するスラッジは埋め立て処分されているのが現状であり、かかる際の業者引取り処分には多大な廃棄物処理コストがかかる。
【0005】
そのようなことから、塩化第二銅及び塩酸を含むエッチング廃液を埋め立て処分するのではなく、銅を有価物として回収すべく前記廃液を電解し、銅を金属銅として回収する技術が大分以前から提案されている(特許文献1)。
その技術においては、取り扱いに注意を要する塩素ガスの発生を伴い、かつ生成した銅は粉末となっていて、その粉末表面には塩素化合物が付着し、かつ含水率の高いものなっている。
さらに、その塩素化合物は洗浄によっても簡単には除去し難いものであり、残留した塩素化合物が回収銅を再利用する際に悪影響を与えることになり、銅の回収技術としては不十分なものである(特許文献2)。
【0006】
例えば、この塩素化合物が残留したままの回収銅をプリント配線板電解銅箔製造用の銅イオン供給源として利用する場合には不十分なものである。
すなわち、回収銅粉表面に付着している塩素化合物が、銅めっき液中で塩素イオンとして存在し、電解時に陽極から塩素ガスが発生し、電解銅箔製造装置、例えば、陽極材、陰極材、電解槽等の設備を腐食し、損耗させる。
さらに、発生した塩素ガスが環境を汚染させたりする等健康上も極めて有害であり、しかも銅箔の品質上の面でも銅箔面の変色、腐食を与える要因となる。
【0007】
前記したとおりであるから、電解回収された金属銅については、リサイクル材料として利用する際には塩素を全く含まないか、または銅箔物性に悪影響を及ぼさない程度の微量の塩素しか含まないことが要求される場合に使用することは難しく、そのため回収された粉末金属銅を高温溶融し、急速冷却することにより、高純度銅を製造する方法も既に提案されている(特許文献3)。
この高温溶融を利用する技術も、エネルギー経済性、銅純度、歩留まり等の点で十分なものではなく、本発明者もこれに関する改良技術を提案している(特許文献2)。
【0008】
これらの高温溶融を利用する技術は、いずれも金属銅を製造後に塩素化合物を除去し銅を高純度化するものであるが、これとは異なり、銅回収の電解を行う前に残留する塩素を分離回収し、その後電解により銅を回収する技術も提案されている(特許文献4)。
すなわち、その回収技術は、銅エッチング廃液中の塩素化合物を廃液中から塩化水素として蒸発放出し、その後電解により銅を析出させ、高純度の銅を回収するものであり、その際に放出された塩化水素は塩酸として回収するものである。
【0009】
前記のとおりではあるものの、その回収された塩酸の濃度は最大でも15%程度で高濃度のものを得ることができず、しかもその塩化水素放出の際の蒸発には硫酸を使用することから、蒸発、凝縮装置には耐酸性のものを使用することが必要で、コスト増を招来することになり、この技術も満足できるものではなかった。
以上の技術は、いずれも銅を金属銅として回収するものであるが、銅を酸化銅として回収し、銅資源として再利用する技術も既に提案されている(特許文献5)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この銅を酸化銅として回収する技術は、銅エッチング廃液中に含有される銅イオンをpH11以上のアルカリ水溶液を用いて酸化銅を沈殿させ、この酸化銅を銅資源として回収再利用するもので、簡便な技術であることから、本発明者はこの酸化銅をプリント配線板電解銅箔製造用の銅イオン供給源あるいは電気銅の銅資源として利用すべく検討し、まず塩化銅エッチング廃液を水酸化ナトリウムで中和して酸化銅を作ってみた。その結果、酸化銅が得られるものの、塩化銅エッチング廃液中の塩酸成分が6〜10w%と高濃度なため大量の水酸化ナトリウムを消費し不経済なことがわかった。
【0011】
これは、塩化銅エッチング廃液に十分なエッチング能力、すなわち銅溶解能力があることを意味するから、本発明者は当該廃液に金属銅を溶解して、同じ水酸化ナトリウム消費量に対して得られる酸化銅を増量してから中和し、その後得られた酸化銅を硫酸で溶解することを試みた。
その結果、大半の酸化銅は溶解するものの、一部が溶解することなく白色の残滓が認められ、その残滓中の塩素成分が水洗により除去できないことがわかった。
【0012】
本発明者は、この酸化銅を製造する技術が前記したとおり簡便であることから、その利点を活かす技術を開発すべく、鋭意検討することとし、まず溶解している銅イオンを分析したところ第2銅イオンであることがわかり、続いて未溶解物質も分析したところ大部分が塩化第1銅であることが判った。
そのようなことから、この塩化第1銅が残存しないような状態にして、銅エッチング廃液にアルカリ水溶液を混合すれば、塩化第1銅が析出することなく、酸化第2銅を沈殿させることができるのではないかと推測した。
【0013】
そこで、銅エッチング廃液に酸素ガスを供給して該エッチング廃液中の第1銅成分をすべて第2銅成分に酸化し、その後アルカリ水溶液を添加してアルカリにして沈殿を生成し、それを硫酸で溶解したところ沈殿はほぼ全量溶解することが判明し、この溶解した沈殿は酸化第2銅であることがわかった。
さらに実験、検討を行った結果、アルカリ水溶液と混合する前の銅エッチング廃液に残存する第1銅成分は2g/L以下がよく、好ましくは1g/L以下であることがわかった。
【0014】
また、銅エッチング廃液中の第1銅成分が第2銅成分に酸化される速度は該エッチング廃液中の塩酸濃度が低い(塩基度が高い)ほど早いこと、十分な酸化剤を供給しながら該エッチング廃液中に銅を溶解すると次第に銅濃度は高くなり、更に溶解を継続すると塩酸成分が無くなるまで金属銅を溶解するができ、該エッチング廃液中にCu7Cl4(OH)、Cu2(OH)3Cl等の水酸化銅を含む固形分が析出し、最終的にはこれら固形分と中性の水とに分離することもわかった。
さらに、この固形分を含むスラリーにアルカリ剤を加えて中和することにより、該混合物中の水酸化銅成分を酸化銅に転換することができ、その結果固形分中の塩素成分を除去できることもわかった。
【0015】
本発明は、この新規な知見を利用した酸化第2銅を製造する方法を提供するものであるから、それは銅エッチング廃液から単純かつ簡便で、効率的に、高純度の酸化第2銅を回収する、酸化第2銅の製造方法を提供することを解決すべき課題、すなわち目的とするものである。
また、製造された酸化第2銅には前記したとおり塩素化合物が残留しないことから、その残留に伴う弊害を生ずることなく、金属銅又はプリント配線板電解銅箔製造用の銅供給源として利用可能な酸化第2銅を製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者が前記課題を解決するために採用した手段は銅エッチング廃液から酸化第2銅を製造する方法であり、それには2つの態様があり、それらは以下のとおりである。
その第1の態様は、塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液と、酸素を含む気体又は酸化剤と金属銅とを接触させることにより、該エッチング廃液中の第2銅イオンの酸化作用を利用して該金属銅を溶解させた濃厚液を得る第1工程と、
前記第1工程で得た濃厚液と酸素を含む気体又は酸化剤を接触させることにより該濃厚液中の塩化第1銅成分を低減し、その後該濃厚液とアルカリ剤とを混合し、該混合液中に析出する固形分を酸化第2銅とする第2工程とからなることを特徴とするものである。
【0017】
第2の態様は、塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液と、酸素を含む気体又は酸化剤と金属銅とを接触させることにより、該エッチング廃液中の第2銅イオンの酸化作用を利用して該金属銅を溶解し、水酸化銅を含む混合物を析出させて固形分として分離回収する第1工程と、
前記第1工程で分離回収した固形分とアルカリ剤とを混合し、該混合液中の固形分を酸化第2銅とする第2工程とからなることを特徴とするものである。
【0018】
そして、それらのいずれの態様においても、本発明では以下のことが好ましい。
(1)酸化第2銅を分離回収した後の分離液については、pH調製用のアルカリ剤として再使用すること
(2)酸化剤が、過酸化水素、過酸化塩、過硫酸塩又はこれらの混合物であること
(3)酸素を含む気体が空気であること
(4)アルカリ剤が、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム及び水酸化マグネシウムの少なくともいずれか1の水溶液であること
【発明の効果】
【0019】
本発明の製造方法は前記したとおり2態様あるが、それらはいずれも塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液に金属銅を溶解して塩素成分に対する銅成分比を増した混合物を得てから、該混合物とアルカリ剤とを混合し、該混合液中に酸化第2銅を形成すること、金属銅の溶解において該銅エッチング廃液と酸素を含む気体又は酸化剤を接触させることを特徴とするものである。
【0020】
したがって、そのプロセスは単純かつ簡便であり、それにより効率的に、高純度の酸化第2銅を製造することができる。
また、そのプロセスにより得られた酸化第2銅は、純度が高く、硫酸により簡便に溶解することができるので、それを用いてプリント配線板回路の製造あるいは銅張り積層板の製造の際の銅原料として再利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の製造方法は前記したとおり2態様あり、その代表的な第1態様は、塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液と、酸素を含む気体又は酸化剤と金属銅とを接触させることにより、該エッチング廃液中の第2銅イオンの酸化作用を利用して該金属銅を溶解させた濃厚液を得る第1工程と、前記第1工程で得た濃厚液と酸素を含む気体又は酸化剤を接触させることにより、該濃厚液中の塩化第1銅成分を低減し、その後該濃厚液とアルカリ剤とを混合し、該混合液中に析出する固形分を酸化第2銅とする第2工程とからなることを特徴とする。
【0022】
第2の態様は、塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液と、酸素を含む気体又は酸化剤と金属銅とを接触させることにより、該エッチング廃液中の第2銅イオンの酸化作用を利用して該金属銅を溶解し、水酸化銅を含む混合物を析出させて固形分として分離回収する第1工程と、前記第1工程で分離回収した固形分とアルカリ剤とを混合し、該混合液中の固形分を酸化第2銅とする第2工程とからなることを特徴とするものである。
【0023】
それのいずれの態様においても、本発明では以下のことが好ましい。
(1)酸化第2銅を分離回収した後の分離液については、pH調製用のアルカリ剤として再使用すること
(2)酸化剤が、過酸化水素、過酸化塩、過硫酸塩又はこれらの混合物であること
(3)酸素を含む気体が空気であること
(4)アルカリ剤が、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム及び水酸化マグネシウムの少なくともいずれか1の水溶液であること
【0024】
本発明における処理対象の銅エッチング廃液としては、塩酸及び塩化銅を主成分とするものであれば、特に制限されることなく各種のものが使用でき、塩酸及び塩化銅を主成分とする銅エッチング液をプリントの配線板の製造工程において使用し、劣化後排出されるエッチング廃液が代表的なものとして挙げられる。
そのエッチング廃液中に含まれる塩素イオン濃度は通常200〜300g/Lであり、本発明においては、その濃度のものが好ましく使用できる。
その外には、塩化鉄と塩化銅を含むエッチング廃液から冷却晶析法などにより分離して得た塩化銅等を例示することができる。
【0025】
本発明においては、第1工程で沈殿物を析出させる際にはアルカリ剤を混合する必要はないが、その理由は、酸素を含む気体又は酸化剤の存在下においては、金属銅は銅エッチング廃液に次第に溶解して銅の濃厚液が生成するが、その後も溶解を継続すると銅濃度が上昇するにしたがってCu7Cl4(OH)、Cu2(OH)3Clなどの水酸化銅を含む固形分が析出するとともに次第にpHが上昇し、ついには7前後に到達し溶解反応が終了するからである。
【0026】
前記したように、本発明では、酸素を含む気体又は酸化剤の存在下において金属銅は銅エッチング廃液に次第に溶解して銅濃度が高くなり、銅の濃厚液が生成するが、その後も溶解を継続することができ、その結果銅濃度が上昇するにしたがってCu7Cl4(OH)、Cu2(OH)3Clなどの水酸化銅を含む固形分が析出し、それに伴って次第にpHが上昇し、ついには7前後に到達し溶解反応が終了する。
このように溶解反応が終了するまで銅を溶解させた場合には、沈殿を形成しない範囲で溶解を行った場合の3倍程度の銅を溶解させることができる。
【0027】
具体的には、塩素イオン濃度200g/Lで沈澱が生成しない範囲内で銅を溶解した場合には、銅溶解量は最大で180g/Lであるが、沈殿を生成した場合には最大628g/Lまで溶解することができる。
また、塩素イオン濃度が250g/Lの場合には、沈澱が生成しない範囲内で銅を溶解した場合には、銅溶解量は最大で225g/Lであるが、沈殿を生成した場合には最大785g/Lまで溶解することができる。
【0028】
そして、本発明の製造方法においては、いずれの態様の場合であっても、アルカリ剤は、酸化第2銅を形成する際にも使用するが、その際におけるアルカリ剤を混合した後のpHについては高い方がよく、アルカリ剤混合後の温度は高い方が好ましい。
前記のとおりではあるが、エネルギー効率等を配慮すると、実用的には混合後の温度は50℃以上がよく、好ましくは50〜70℃がよく、pHは8以上がよく、好ましくは9以上がよい。
具体的には、酸化を速める、すなわち酸化第2銅の形成を促進するには温度50℃以上でpH8以上が良く、温度30℃以上50℃未満の場合には、pH9以上が良い。
【0029】
前記のようなことから、酸化第2銅を形成する際の好適条件等を更に調査したところ、混合液中に沈殿物が析出するpH範囲(pH=4〜14)において、該混合液が強アルカリ性であるほど沈殿物中の塩素含有量が少くなるとともに、沈殿物が速やかに酸化銅に変化することがわかっている。
さらに、沈殿物が酸化第2銅に変化する速度は温度が高い方が速く、20℃以下の低温で中和し20℃以下に保持して反応させた場合は酸化第2銅化し難いこともわかった。
【0030】
また、水酸化銅が酸化第2銅に転換する過程を調査したところ、水酸化銅が酸化第2銅化するに伴ってpHが低下し、pH7以上に維持できれば反応が完了し、ほぼ全ての銅成分が酸化第2銅化していることがわかった。
さらに、混合液中の水酸化銅が酸化第2銅に転換する際の速度の温度依存性を0〜90℃の範囲で調査したところ、高温になるほど転換速度が速いこともわかった。
なお、混合後の酸化第2銅を生成させる際のpHについては、温度が55℃前後の高温の場合には、pH7前後でも採用可能ではあるが、酸化第2銅形成に長時間を要することになり実用的ではない。
【0031】
そして、これらの場合におけるpH制御は、pH計を用いてpH値を測定しながら、金属銅を溶解させた濃厚液、あるいは分離回収した固形分に徐々にアルカリ剤を添加するか、又はアルカリ剤に徐々に金属銅を溶解させた濃厚液、あるいは分離回収した固形分を添加することにより行うことができる。
【0032】
金属銅を溶解させた濃厚液、あるいは分離回収した固形分と混合させるアルカリ剤としては、混合後pHを8以上とすることができるものであれば各種のものが特に制限されることなく使用可能であるが、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム及び水酸化マグネシウムの少なくともいずれか1を含有する水溶液が好ましい。
【0033】
水酸化銅を含む混合物を析出させて固形分として分離回収する際の装置については、各種固液分離手段が特に制限されることなく使用でき、その固液分離手段として遠心脱水、真空ろ過、加圧ろ過、沈降分離あるいは圧搾等が例示できるが、遠心脱水あるいは真空ろ過が脱水ケーキの含水率を低減できる点で好ましい。
また、この固液分離後の固形分は洗浄するのがよく、その洗浄には井水、市水、脱塩水などが使えるが、イオン交換水、蒸留水あるいは逆浸透処理水等の脱塩水が好ましい。洗浄方法は、前記した水を使用して洗浄と脱水を繰り返す置換洗浄法がよい。
【0034】
第1工程で分離回収した固形分とアルカリ剤とを混合して生成した混合液等に酸素を含む気体又は酸化剤を接触させるが、その際の酸素を含む気体としては、純酸素又は空気が例示でき、安価であることから空気が好ましい。
また、酸化剤については、特に制限されることなく各種のものが使用可能であるが、過酸化水素、過酸化塩、過硫酸塩、塩素酸塩、次亜塩素酸塩又はこれらの混合物が好ましく、過酸化塩には、過炭酸ナトリウム、過酸化カルシウム等が例示でき、過硫酸塩には、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が、塩素酸塩は塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸塩は次亜塩素酸カルシウム等が例示できる。
【0035】
生成した酸化第2銅は固液分離を行うことにより回収することになるが、その分離手段については、前記した水酸化銅を含む混合物を析出させて固形分として分離回収する際の場合と同様に各種固液分離手段が特に制限されることなく使用でき、その場合にも例示したものを勿論同様に使用することができる。
前記のとおりではあるものの、この場合には、粉体を搬送する手間が省ける点で、濾過と乾燥の両機能を具備し、かつ乾燥は高温空気を用いて流動状態で乾燥することができる機能を具備する濾過乾燥機が好ましい。
【0036】
この固液分離により得られる分離液は、アルカリ性の液体であり、pH調製用のアルカリ剤として再使用するのが好ましい。
具体的には、いずれの態様においても、第2工程で生成した酸化第2銅を分離回収し、分離液を第1工程に戻して、pH調製用のアルカリ剤として再使用するのが好ましい。
【0037】
次に、図1を用いて、第1の態様の製造方法について具体的に説明する。
この図示された第1の態様の製造方法において使用する装置は、廃液槽14、溶解槽18、反応槽27、濾過乾燥機32を具備する。
銅エッチング廃液11は、まず廃液槽14に供給され、ポンプ15により送液管16を経て金属銅20を収容した溶解槽18に送液される。銅エッチング廃液はスプレー19から噴出して十分な空気とともに金属銅20に接触してこれを溶解する。
【0038】
金属銅と接触した、溶解槽20内の銅エッチング廃液は21フィルタにより固形分の混入を防いでポンプ22により循環配管23を経て廃液槽14に戻る。このように、金属銅20を溶かしながら廃液槽14と溶解槽18を循環する銅エッチング廃液は、空気又は酸化剤12と接触させる。
こうして循環を繰り返して銅エッチング廃液中の、金属銅の溶解に伴って増える塩化第1銅成分が酸化され、所定の銅濃度、塩化第1銅濃度に達した時点で銅エッチング廃液は切替弁17を開いて反応槽27に送られる。
【0039】
なお、前記所定の銅濃度とは、金属銅を溶解させた濃厚液であるが、水酸化銅の固形分を析出させる前で銅の溶解を停止した場合の銅濃度である。
また、所定の塩化第1銅濃度とは、該濃厚液とアルカリ剤とを混合してpH8以上とした際に塩化第1銅が析出することなく酸化第2銅を沈澱させることができる濃度であり、それは、アルカリ水溶液との混合方法、その時の温度変化、溶質の濃度変化等の諸条件によって変わるものの、実用的操作条件における充分安全な数値としては、アルカリ水溶液と混合する前の銅エッチング廃液に残存する第1銅成分が2g/L以下がよく、好ましくは1g/L以下であるのがよい。
【0040】
その銅エッチング廃液中における銅濃度、及び塩化第1銅濃度の管理は、経験則により所定時間循環する方法をとっても良いし、比重、銅濃度等のセンサを使って制御しても良い。銅エッチング廃液の温度は金属銅の溶解速度と装置の耐久性を考慮して50℃くらいに管理するのが好ましい。
他方、反応槽27にはアルカリ水溶液が配管29を介して予め供給され、その供給後、反応槽27にはポンプ15により切替弁17、配管24を介して廃液受槽14より金属銅溶解後の濃厚銅エッチング廃液が供給され、攪拌機28により両者は混合される。
【0041】
その後、攪拌機28により攪拌すると共にpHコントローラ30によりpH値を測定しながら、切替弁17の開閉によって金属銅溶解後の濃厚銅エッチング廃液が更に供給され、pH9以上の所定のpH値になるまで供給が継続される。
所定のpH値に到達した時点で、金属銅溶解後の濃厚銅エッチング廃液の供給を停止し、さらに所定の反応時間を経過した時点で攪拌機28を停止して反応槽27底部の排出弁26を開放し、酸化銅を含有するスラリーが排出され、ポンプ31により濾過乾燥機32に送給される。
【0042】
この濾過乾燥機32においては、濾過によりまず濾液を分離し、その濾液は返戻管35を介して反応槽27に送給され、アルカリ水溶液の一部として再利用される。
他方、分離された固形分は振動を与えて圧密状態にならないように流動させた状態で水配管33から送給された脱塩水により洗浄され、洗浄された固形分は再度ろ過により脱水され、そのろ液は切替弁36を開き排出管37を経て排出される。洗浄は、脱水された固形分中の塩素成分が所定の数値以下になるまで繰り返される。
洗浄を終了して所定の塩素成分含有量になった後脱水された固形分は、濾過乾燥機32内において同様に振動を与えて圧密状態にならないように流動させた状態で、熱風配管を経て供給される高温の空気により乾燥され、取出管38から回収される。
【0043】
次ぎに、図2を用いて、第2の態様の製造方法について具体的に説明する。
この図示された第2の態様において使用する装置は、廃液槽14、溶解槽18、反応槽27、濾過器32、ろ過乾燥機43を具備する。
銅エッチング廃液11は、まず廃液槽14に供給され、ポンプ15により送液管16を経て金属銅20を収容した溶解槽18に送液される。銅エッチング廃液はスプレー19から噴出して十分な空気とともに粉状の金属銅20に接触してこれを溶解する。
【0044】
金属銅と接触した、溶解槽20内の銅エッチング廃液は、フィルタ21によりポンプ22により循環配管23を経て廃液槽14に戻る。このように、金属銅20を溶かしながら廃液槽14と溶解槽18を循環する銅エッチング廃液は、空気又は酸化剤12と接触させる。この空気等の酸化成分により銅エッチング廃液中の、金属銅の溶解に伴って増える塩化第1銅成分が酸化される。
また、この時の銅エッチング廃液中塩酸濃度が0に到達すると廃液槽14内において水酸化銅と塩素化合物を含む固形分が析出し始める。
なお、固形分の析出は、当然溶解槽18内においても生ずるので、フィルタ21は、後記するように金属銅の溶解量が増大するに従って次第に生成する水酸化銅等の微細な固形分は通過可能であるが、金属銅粉は通過できない孔径となっている。
【0045】
以上の循環を繰り返して該銅エッチング廃液中の銅濃度が上がり塩酸濃度が減少して水酸化銅と塩素化合物を含む固形分が析出し、その析出量が所定量になった後に切替弁17を開いてこの固形分を含む銅エッチング廃液をろ過器32に送る。
ろ過器32では固形分を分離して、ろ液は切替弁33を開いて返戻管34を経て廃液槽14に戻す。分離した固形分は取出管35を通して反応槽27に落す。
【0046】
銅エッチング廃液の銅濃度、塩化第1銅濃度については、所定値に管理するが、その管理については、経験則により所定時間循環する方法をとっても良いし比重、銅濃度等のセンサを使って制御しても良い。銅エッチング廃液の温度は金属銅の溶解速度と装置の耐久性を考慮して50℃くらいに管理するのが好ましい。
なお、その際における前記固形分中の銅を含めた、銅エッチング廃液1L当たりの全銅濃度については200〜300g/Lがよい。また塩化第1銅濃度については前記したとおり第1銅成分が2g/L以下がよく、好ましくは1g/L以下であるのがよい。
【0047】
その後、反応槽27には水配管38から固形分を流動化させるための水を供給し、攪拌機28により両者を混合し流動化させる。
その際には攪拌機28により攪拌すると共にpHコントローラ30によりpH値を測定しながら、配管29を介してアルカリ水溶液が反応槽27に供給され、pH8以上の所定のpH値になるまで供給が継続される。
【0048】
なお、反応槽27への給液は、あらかじめ少な目のアルカリ水溶液を供給しておき、該アルカリ水溶液中に固形分を落してから更にアルカリを追加してpH調整しても良い。
所定のpH値に到達した時点で、アルカリ水溶液の供給を停止し、さらに所定の反応時間を経過した時点で攪拌機28を停止して反応槽27底部の排出弁26を開放し、酸化銅を含有するスラリーが排出され、切替弁41を開けてポンプ31により排出管42経由で濾過器32に返送される。
【0049】
この濾過器32においては、濾過によりまず濾液を分離し、その濾液は切替弁36を開き排出管37を介して別の受槽(図示しない)に送られ、アルカリ水溶液の一部として再利用される。
他方、分離された固形分は取出管35から反応槽27に落され、水配管38から送給された脱塩水により洗浄され、洗浄された固形分は再度ろ過により脱水され、そのろ液は切替弁36を開き排出管37を経て排出される。洗浄は、脱水された固形分中の塩素成分が所定の数値以下になるまで繰り返される。
【0050】
洗浄を終了して所定の塩素成分含有量になった後脱水された固形分は、さらに水配管38からの脱塩水により流動化され、スラリーとして、切替弁39を開き排出管40経由で濾過乾燥機43に送られる。
この濾過乾燥機43においては、濾過によりまず濾液を分離し、その濾液は排出管44を介して排出され、残った固形分はろ過乾燥機内において振動を与えて圧密状態にならないように流動させた状態で、熱風配管45を経て供給される高温の空気により乾燥され、取出管46から回収される。
【実施例1】
【0051】
以下において、図1に図示した装置を用いて、本発明の製造方法について実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明は、この実施例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
まず、塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液(Cu=120g/L、全Cl=235g/L、温度50℃、500L)を廃液槽14に送給し、溶解槽18には塩化銅エッチング廃液を電解して得た微粉体状の金属銅を100kg投入した。他方、反応槽27には苛性ソーダ溶液(5wt%、2400L)を予め送給した。
【0052】
銅エッチング廃液11は、ポンプ15により送液管16を経て金属銅20を収容した溶解槽18に送液された。銅エッチング廃液はスプレー19から噴出して十分な空気とともに金属銅20に接触してこれを溶解した。金属銅と接触した、溶解槽20内の銅エッチング廃液は21フィルタにより固形分の金属銅粉の混入を防いでポンプ22により循環配管23を経て廃液槽14に戻した。このように、金属銅20を溶かしながら廃液槽14と溶解槽18を循環する銅エッチング廃液は、分散ノズル13から噴出させた圧縮空気12と接触させた。
【0053】
こうして銅エッチング廃液中の金属銅の溶解に伴って増える塩化第1銅成分が酸化された。以上の循環を8時間繰り返して得た銅エッチング廃液の銅濃度は210g/L、塩化第1銅濃度は0.1g/L、温度50℃であった。以上により金属銅を溶解して得た濃厚銅エッチング廃液は切替弁17を開いて反応槽27に送った。
アルカリ水溶液が配管29を介して予め供給された反応槽27に、ポンプ15により切替弁17、配管24を介して廃液受槽14より金属銅溶解後の濃厚銅エッチング廃液を供給し、攪拌機28により両者を混合した。
【0054】
その後、攪拌機28により攪拌すると共にpHコントローラ30によりpH値を測定しながら、切替弁17の開閉によって金属銅溶解後の濃厚銅エッチング廃液を更に供給し、pH10に低下するまで供給を継続し、前記pHに到達した時点で停止した。それまでに反応槽27に供給した濃厚銅エッチング廃液の量は450Lであった。
この時点で金属銅溶解後の濃厚銅エッチング廃液の供給を停止し、さらに40℃で10時間攪拌して反応させた時点で攪拌機28を停止して反応槽27底部の排出弁26を開放し、酸化銅を含有するスラリーを排出し、ポンプ31により濾過乾燥機32に送給した。
この濾過乾燥機32においては、濾過によりまず濾液を分離し、その濾液は返戻管35を介して反応槽27に送給され、アルカリ水溶液の一部として再利用した。
【0055】
他方、分離された固形分は振動を与えて圧密状態にならないように流動させた状態で水配管33から送給された脱塩水(1500L)により洗浄され、洗浄された固形分は再度ろ過により脱水され、そのろ液は切替弁36を開き排出管37を経て排出した。洗浄は、4回繰り返した。
洗浄を終了して脱水した固形分(385kg)は、濾過乾燥機32内において振動を与えて圧密状態にならないように流動させた状態で、熱風配管を経て供給される150℃の空気により乾燥され、取出管38から回収した。回収した酸化銅の重量は125kg、銅含有量は77.2%、塩素含有量は0.012%、水分約4.5%であった。
【実施例2】
【0056】
以下において、図2に図示した装置を用いて、本発明の製造方法について実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明は、この実施例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
まず、塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液(Cu=120g/L、全Cl=235g/L、温度50℃、65L)を廃液槽14に送給し、溶解槽18には塩化銅エッチング廃液を電解して得た、微粉体状の金属銅を100kg投入した。
【0057】
銅エッチング廃液11は、ポンプ15により送液管16を経て金属銅20を収容した溶解槽18に送液された。銅エッチング廃液はスプレー19から噴出して十分な空気とともに金属銅20に接触してこれを溶解した。金属銅と接触した、溶解槽20内の銅エッチング廃液は21フィルタにより金属銅粉の混入を防いでポンプ22により循環配管23を経て廃液槽14に戻した。
【0058】
このように、金属銅20を溶かしながら廃液槽14と溶解槽18を循環する銅エッチング廃液は、分散ノズル13から噴出させた酸化剤(35%過酸化水素水)12と接触させ、金属銅の溶解に伴って増える塩化第1銅成分が酸化された。
以上の循環を継続中、金属銅を溶解して得た濃厚銅エッチング廃液中に固形分が析出し、析出量が所望値(Cuとして50g/L、なおその際における全Cu濃度は230g/Lとなる)に到達した時点で切替弁17を開いてろ過器32に送った。
【0059】
ろ過器32では固形分を分離して、ろ液は切替弁33を開いて返戻管34を経て廃液槽14に戻しさらに金属銅の溶解を続けた。分離した固形分は取出管35を通して反応槽27に落した。その後、反応槽27には水配管38から固形分を流動化させるための脱塩水を供給し、攪拌機28により両者を混合し流動化させた。
廃液槽に戻した後さらに酸化剤(35%過酸化水素水)12と接触させて金属銅20を溶かしながら廃液槽14と溶解槽18を循環する銅エッチング廃液中に再度固形分が析出し、所望値に到達したので切替弁17を開いてろ過器32に送った。
【0060】
ろ過器32では固形分を分離して、ろ液は切替弁33を開いて返戻管34を経て廃液槽14に戻しさらに金属銅の溶解を続けた。分離した固形分は取出管35を通して反応槽27に落した。その後、反応槽27には水配管38から固形分を流動化させるための脱塩水を供給し、攪拌機28により両者を混合し流動化させた。このような固形分の分離と流動化を5回繰り返して得た含水固形分の組成はCu=21%、Cl=7.1%、その量は77.5kgであった。以上の、金属銅の溶解から固形分の分離工程に費やした全時間は約12時間であった。また、この時点の銅エッチング廃液の銅濃度は153g/L、塩化第1銅濃度は0.1g/L、塩素イオン濃度150g/L、温度50℃であった。
【0061】
その後、攪拌機28により攪拌すると共にpHコントローラ30によりpH値を測定しながら、配管29を介して20%水酸化ナトリウム水溶液を反応槽27に供給し、pH10になるまで供給を継続した。
この時点で、20%水酸化ナトリウム水溶液の供給を停止し、その後も攪拌は継続し、8時間経過した後、攪拌機28を停止して反応槽27底部の排出弁26を開放し、酸化銅を含有するスラリーを排出し、切替弁41を開けてポンプ31により排出管42経由で濾過器32に返送した。20%水酸化ナトリウム水溶液の供給量は31.5kgであった。
【0062】
この濾過器32においては、濾過によりまず濾液を分離し、その濾液は切替弁36を開き排出管37を介して別の受槽(図示しない)に送られ、アルカリ水溶液の一部として再利用した。
他方、分離された固形分は取出管35から反応槽27に落し、水配管38から送給された脱塩水300Lにより洗浄した。洗浄された固形分は再度ろ過器により脱水され、そのろ液は切替弁36を開き排出管37を経て排出した。洗浄は4回繰り返した。
【0063】
洗浄を終了して脱水した固形分は、さらに水配管38からの脱塩水により流動化され、スラリーとして、切替弁39を開き排出管40経由で濾過乾燥機43に送った。
この濾過乾燥機43においては、濾過によりまず濾液を分離し、その濾液は排出管44を介して排出され、残った固形分はろ過乾燥機内において振動を与えて圧密状態にならないように流動させた状態で、熱風配管45を経て供給される高温の空気により乾燥した後、取出管46から回収した。回収された酸化銅中の銅含有量は76.2%、塩素成分は0.006%、回収量は21kgであった。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の態様の製造方法を図示する。
【図2】本発明の第2の態様の製造方法を図示する。
【符号の説明】
【0065】
11 銅エッチング廃液
14 廃液槽
15 ポンプ
16 送液管
17 切替弁
18 溶解槽
19 スプレー
20 金属銅
24 配管
27 反応槽
28 攪拌機
29 配管
30 pHコントローラ
32 濾過乾燥機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液と、酸素を含む気体又は酸化剤と金属銅とを接触させることにより、該エッチング廃液中の第2銅イオンの酸化作用を利用して該金属銅を溶解させた濃厚液を得る第1工程と、
前記第1工程で得た濃厚液と酸素を含む気体又は酸化剤を接触させることにより該濃厚液中の塩化第1銅成分を低減し、その後該濃厚液とアルカリ剤とを混合し、該混合液中に析出する固形分を酸化第2銅とする第2工程とからなることを特徴とする銅エッチング廃液から酸化第2銅を製造する方法。
【請求項2】
前記第2工程で生成した酸化第2銅を分離回収し、分離液を前記第1工程に戻して、アルカリ剤として再使用する第3工程を付設した請求項1に記載の銅エッチング廃液から酸化第2銅を製造する方法。
【請求項3】
塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液と、酸素を含む気体又は酸化剤と金属銅とを接触させることにより、該エッチング廃液中の第2銅イオンの酸化作用を利用して該金属銅を溶解し、水酸化銅を含む混合物を析出させて固形分として分離回収する第1工程と、
前記第1工程で分離回収した固形分とアルカリ剤とを混合して該混合液中の固形分を酸化第2銅とする第2工程とからなることを特徴とする銅エッチング廃液から酸化第2銅を製造する方法。
【請求項4】
前記第2工程で生成した酸化第2銅を分離回収し、分離液を前記第2工程のアルカリ剤として再使用する第3工程を付設した請求項3に記載の銅エッチング廃液から酸化第2銅を製造する方法。
【請求項5】
前記酸化剤が、過酸化水素、過酸化塩、過硫酸塩又はこれらの混合物である前記請求項1ないし4のいずれか1項に記載の銅エッチング廃液から酸化第2銅を製造する方法。
【請求項6】
前記酸素を含む気体が、空気である前記請求項1ないし4のいずれか1項に記載の銅エッチング廃液から酸化第2銅を製造する方法。
【請求項7】
前記アルカリ剤が、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム及び水酸化マグネシウムの少なくともいずれか1の水溶液である前記請求項1ないし4のいずれか1項に記載の銅エッチング廃液から酸化第2銅を製造する方法。
【請求項1】
塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液と、酸素を含む気体又は酸化剤と金属銅とを接触させることにより、該エッチング廃液中の第2銅イオンの酸化作用を利用して該金属銅を溶解させた濃厚液を得る第1工程と、
前記第1工程で得た濃厚液と酸素を含む気体又は酸化剤を接触させることにより該濃厚液中の塩化第1銅成分を低減し、その後該濃厚液とアルカリ剤とを混合し、該混合液中に析出する固形分を酸化第2銅とする第2工程とからなることを特徴とする銅エッチング廃液から酸化第2銅を製造する方法。
【請求項2】
前記第2工程で生成した酸化第2銅を分離回収し、分離液を前記第1工程に戻して、アルカリ剤として再使用する第3工程を付設した請求項1に記載の銅エッチング廃液から酸化第2銅を製造する方法。
【請求項3】
塩化銅及び塩酸を主成分とする銅エッチング廃液と、酸素を含む気体又は酸化剤と金属銅とを接触させることにより、該エッチング廃液中の第2銅イオンの酸化作用を利用して該金属銅を溶解し、水酸化銅を含む混合物を析出させて固形分として分離回収する第1工程と、
前記第1工程で分離回収した固形分とアルカリ剤とを混合して該混合液中の固形分を酸化第2銅とする第2工程とからなることを特徴とする銅エッチング廃液から酸化第2銅を製造する方法。
【請求項4】
前記第2工程で生成した酸化第2銅を分離回収し、分離液を前記第2工程のアルカリ剤として再使用する第3工程を付設した請求項3に記載の銅エッチング廃液から酸化第2銅を製造する方法。
【請求項5】
前記酸化剤が、過酸化水素、過酸化塩、過硫酸塩又はこれらの混合物である前記請求項1ないし4のいずれか1項に記載の銅エッチング廃液から酸化第2銅を製造する方法。
【請求項6】
前記酸素を含む気体が、空気である前記請求項1ないし4のいずれか1項に記載の銅エッチング廃液から酸化第2銅を製造する方法。
【請求項7】
前記アルカリ剤が、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム及び水酸化マグネシウムの少なくともいずれか1の水溶液である前記請求項1ないし4のいずれか1項に記載の銅エッチング廃液から酸化第2銅を製造する方法。
【図1】
【図2】
【図2】
【公開番号】特開2008−162823(P2008−162823A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351866(P2006−351866)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000227250)日鉄鉱業株式会社 (82)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000227250)日鉄鉱業株式会社 (82)
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