説明

鋳造ライン駆動装置の制御方法、その制御システムおよびその記憶媒体

【課題】鋳造ラインにおいて移動により発生した注湯装置の取鍋内の溶湯および鋳型内の溶湯の振動を抑制することが可能な鋳造ライン駆動装置の制御方法を提供する。
【解決手段】予め求められた取鍋内の溶湯の重量および固有振動数の関係式と取鍋内の溶湯の重量から取鍋溶湯の固有振動数を演算するとともに、予め求められた鋳型内溶湯の重量および固有振動数の関係式と測定した鋳型内の溶湯の重量とから鋳型溶湯の固有振動数を演算し、演算された取鍋溶湯の固有振動数および鋳型溶湯の固有振動数をフィルタ手段に入力して、鋳造ラインにおける鋳枠送り動作の速度波形を、2つの固有振動数を含まないように変更し、鋳枠送り動作の速度波形が変更された速度波形になるように電動プッシャーシリンダおよび電動クッションシリンダを作動することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造ライン駆動装置の制御方法、その制御システムおよびその記憶媒体に係り、より詳しくは、鋳型を内蔵した複数の鋳枠を直線状に連ねて搬送する鋳枠搬送ラインの一端に設置されて複数の鋳枠を一鋳枠分ずつ間歇的に押し出す電動プッシャーシリンダと、鋳枠搬送ラインの他端に電動プッシャーシリンダと対向して設置されて押し出された鋳枠群を緩衝的に受け止める電動クッションシリンダと、電気的駆動手段により鋳枠搬送ラインの鋳枠に同期して移動され電気的駆動手段による取鍋の傾動により鋳型に注湯する自動注湯機とを備えた鋳造ラインを、フィルタ手段を有するコントローラを制御プログラムよって作動させることにより、取鍋および鋳枠を一鋳枠分移動した時点で取鍋および鋳型の溶湯に発生する振動を抑制するように鋳造ラインの駆動装置を制御する方法、その制御システムおよびその記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の鋳造ラインの一つとして、鋳型搬送ラインに鋳型の送りを検出する検出手段を設け、さらにこの鋳型搬送ラインには、検出手段からの信号により鋳型の送りに追従同調して適性位置に移動する注湯装置を設けて、その取鍋から鋳型に注湯するようにしたものがある(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3113950号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このように構成された従来の鋳造ラインでは、電動シリンダや油圧シリンダを使用して鋳型内蔵の鋳枠や注湯装置を押し出し搬送しているため、その鋳枠等の搬送動作時の速度波形が一般的な台形波形となる。これに伴って、注湯装置の取鍋内の溶湯および鋳型内の溶湯が振動し、その結果、鋳造された鋳物製品に砂かみやバリが発生して鋳物製品の品質に悪影響を及ぼすという問題が発生している。
【0005】
本発明は上記の問題を解消するためになされたもので、その目的は、鋳造ラインにおいて移動により発生する湯装置の取鍋内の溶湯および鋳型内の溶湯の振動を抑制することが可能な鋳造ライン駆動装置の制御方法、その制御システムおよびその記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明における鋳造ライン駆動装置の制御方法は、鋳型を内蔵した複数の鋳枠を直線状に連ねて搬送する鋳枠搬送ラインの一端に設置されて複数の鋳枠を一鋳枠分ずつ間歇的に押し出す電動プッシャーシリンダと、鋳枠搬送ラインの他端に電動プッシャーシリンダと対向して設置されて押し出された鋳枠群を緩衝的に受け止める電動クッションシリンダと、電気的駆動手段により鋳枠搬送ラインの鋳枠に同期して移動され電気的駆動手段による取鍋の傾動により鋳型に注湯する自動注湯機とを備えた鋳造ラインを、フィルタ手段を有するコントローラを制御プログラムによって作動させることにより、取鍋および鋳枠を一鋳枠分移動した時点で取鍋および鋳型の溶湯に発生する振動を抑制するように鋳造ラインの駆動装置を制御する方法であって、予め求められた取鍋内の溶湯の重量および固有振動数の関係式と取鍋内の溶湯の重量から取鍋溶湯の固有振動数を演算するとともに、予め求められた鋳型内溶湯の重量および固有振動数の関係式と鋳型内の溶湯の重量から鋳型溶湯の固有振動数を演算し、演算された取鍋溶湯の固有振動数および鋳型溶湯の固有振動数をフィルタ手段に入力して、鋳造ラインにおける鋳枠送り動作の速度波形を、2つの固有振動数を含まないように変更し、鋳枠送り動作の速度波形が変更された速度波形になるように電動プッシャーシリンダおよび電動クッションシリンダを作動することを特徴とする。
【0007】
また、請求項3の発明における鋳造ライン駆動装置の制御方法は、鋳型を内蔵した複数の鋳枠を直線状に連ねて搬送する鋳枠搬送ラインの一端に設置されて複数の鋳枠を一鋳枠分ずつ間歇的に押し出す電動プッシャーシリンダと、鋳枠搬送ラインの他端に電動プッシャーシリンダと対向して設置されて押し出された鋳枠群を緩衝的に受け止める電動クッションシリンダと、電気的駆動手段により鋳枠搬送ラインの鋳枠に同期して移動され電気的駆動手段による取鍋の傾動により鋳型に注湯する自動注湯機とを含む鋳造ラインを、フィルタ手段を有するコントローラをフィードフォワード制御プログラムによって作動させることにより、取鍋および鋳枠を一鋳枠分移動した時点で取鍋および鋳型の溶湯に発生する振動を抑制するように鋳造ラインの駆動装置を制御する方法であって、予め求められた取鍋内の溶湯の重量および共振周波数の関係式と取鍋内の溶湯の重量から取鍋溶湯の共振周波数を演算するとともに、予め求められた鋳型内溶湯の重量および共振周波数の関係式と鋳型内の溶湯の重量から鋳型溶湯の共振周波数を演算し、演算された2個の共振周波数と鋳造ラインの駆動装置の性能を超えないように予め別途演算されて記憶された鋳造ライン駆動装置の制御器に関するパラメータとの下に、動作指令発信手段からの鋳造ラインの動作指令における自動注湯機および鋳枠の移動速度、移動加速度および移動加加速度のうち1つ以上のものにおける最大値を制限した動作指令から2個の共振周波数付近の成分を、式1または式2に従いフィルタメータai(f)、bj(f)を少しずつ変化させながら、鋳造ラインの特性を表現するモデルを用いたシミュレーションにより繰返し演算して決め記憶されたフィルタパラメータを用いてフィルタ手段により除去し、フィルタ手段により2個の共振周波数付近の成分が除去された動作指令をフィードフォワード制御プログラムのみに基づいて鋳造ラインの駆動装置に入力して、フィードバック制御を用いずにフィードフォワード制御プログラムのみに基づいて鋳造ラインの駆動装置を作動させて取鍋および鋳枠を一鋳枠分移動した時点で取鍋および鋳型の溶湯に発生する振動を抑制するように鋳造ラインの駆動装置を制御することを特徴とする。
【0008】
【数1】

ここでai(f)、bj(f)は前記取鍋および前記鋳型の溶湯から逐次演算される共振周波数fを媒介とするフィルタパラメータ、x(t−j)はj制御周期前に入力された時系列データであり、y(t−i)はi制御周期前に出力された時系列データである。である。
【0009】
【数2】

ここで、式(1)上記の式(2)で示すフィルタの伝達関数に対してZ変換を行うことにより得ることができ、Sはラプラス演算子である。
【0010】
なお、請求項3の発明においてフィルタ手段とは、入出力端子を一組備え、その間の伝達関数が周波数特性を持つ回路(部分)をいう。
またなお、請求項3の本発明においてフィードフォワード制御法とは、制御対象に加える操作量を予め決められた値に調節することにより、出力が目標値になるようにする制御法である。この制御法は、制御対象の入出力関係や外乱の影響などが明確な場合には性能の良い制御を行うことができる。
【0011】
またなお、請求項3の発明における加々速度とは、加速度の時間に関する変化率である。
ところで、請求項3の本発明のように鋳枠の搬送指令における搬送速度、搬送加速度および搬送加々速度のうち1つ以上のものにおける最大値を制限することにより、鋳造ラインの駆動装置について特に自動注湯および鋳枠の加速度を超えないことを明確にすることができる。
【0012】
またなお、請求項3の発明のように鋳枠の搬送指令をフィルタリングして共振周波数の成分を除去することにより、検出した取鍋内の溶湯重量および鋳型内の溶湯重量に誤差が含まれている場合でも鋳造ラインの駆動装置の制御器の制御性能が大きく劣化するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明から明らかなように請求項1の発明は、予め求められた取鍋内の溶湯の重量および固有振動数の関係式と取鍋内の溶湯の重量から取鍋溶湯の固有振動数を演算するとともに、予め求められた鋳型内溶湯の重量および固有振動数の関係式と鋳型内の溶湯の重量から鋳型溶湯の固有振動数を演算し、演算された取鍋溶湯の固有振動数および鋳型溶湯の固有振動数をフィルタ手段に入力して、鋳造ラインにおける鋳枠送り動作の速度波形を、2つの固有振動数を含まないように変更し、鋳枠送り動作の速度波形が変更された速度波形になるように電動プッシャーシリンダおよび電動クッションシリンダを作動するから、取鍋および鋳枠を一鋳枠分移動した時点で取鍋および鋳型の溶湯に発生する振動を適確に抑制することが可能になるなどの優れた実用的効果を奏する。
【0014】
請求項3の発明は、予め求められた取鍋内の溶湯の重量および共振周波数の関係式と取鍋内の溶湯の重量から取鍋溶湯の共振周波数を演算するとともに、予め求められた鋳型内溶湯の重量および共振周波数の関係式と鋳型内の溶湯の重量から鋳型溶湯の共振周波数を演算し、演算された2個の共振周波数と鋳造ラインの駆動装置の性能を超えないように予め別途演算されて記憶された鋳造ライン駆動装置の制御器に関するパラメータとの下に、動作指令発信手段からの鋳造ラインの動作指令における自動注湯機および鋳枠の移動速度、移動加速度および移動加加速度のうち1つ以上のものにおける最大値を制限した動作指令から2個の共振周波数付近の成分を、式1または式2に従いフィルタメータai(f)、bj(f)を少しずつ変化させながら、鋳造ラインの特性を表現するモデルを用いたシミュレーションにより繰返し演算して決め記憶されたフィルタパラメータを用いてフィルタ手段により除去し、フィルタ手段により2個の共振周波数付近の成分が除去された動作指令をフィードフォワード制御プログラムのみに基づいて鋳造ラインの駆動装置に入力して、フィードバック制御を用いずにフィードフォワード制御プログラムのみに基づいて鋳造ラインの駆動装置を作動させるから、取鍋および鋳枠を一鋳枠分移動した時点で取鍋および鋳型の溶湯に発生する振動を適確に抑制することが可能になるなどの優れた実用的効果を奏する。
【0015】
【数1】

ここでai(f)、bj(f)は前記取鍋および前記鋳型の溶湯から逐次演算される共振周波数fを媒介とするフィルタパラメータ、x(t−j)はj制御周期前に入力された時系列データであり、y(t−i)はi制御周期前に出力された時系列データである。である。
【0016】
【数2】

ここで、式(1)上記の式(2)で示すフィルタの伝達関数に対してZ変換を行うことにより得ることができ、Sはラプラス演算子である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
【実施例1】
【0018】
以下、本発明を適用した鋳造設備の一実施例について図1に基づき詳細に説明する。 本鋳造設備においては、図示するように、鋳型Yを内蔵した複数の鋳枠を直線状に連ねて搬送する鋳枠搬送ラインAの一端に設置されて複数の鋳枠を一枠分ずつ間歇的に押し出す電動プッシャーシリンダBと、鋳枠搬送ラインAの他端に電動プッシャーシリンダBと対向して設置されて押し出された鋳枠群を緩衝的に受け止める電動クッションシリンダCと、電気的駆動手段により鋳枠搬送ラインAの鋳枠に同期して移動され、電気的駆動手段による取鍋Zの傾動により鋳型に注湯する自動注湯機Dと、フィルタ手段を有するコントローラを制御プログラムによって制御して電動プッシャーシリンダB、電動クッションシリンダCおよび自動注湯機Dから成る鋳造ラインにおける駆動装置を制御する制御装置と、が設けてある。
【0019】
そして、電動プッシャーシリンダBおよび電動クッションシリンダCには、ボールネジ機構を駆動するインダクションモータB1、C1がそれぞれ搭載してあり、インダクションモータB1、C1は、それぞれパルス列入力による位置制御の可能なインバータB2、C2を介して、第1サーボコントローラB3および第2サーボコントローラC3にそれぞれ電気的に接続してある。
【0020】
また、制御装置は、第1サーボコントローラB3と、第2サーボコントローラC3と、自動注湯機Dの電気的駆動手段を制御する自動注湯機制御装置Jと、第1サーボコントローラB3および第2サーボコントローラC3を制御する鋳枠搬送ライン制御装置Kとを含んでいて、取鍋Z内の溶湯の重量を演算する取鍋溶湯重量演算手段と、鋳型Y内の溶湯の重量を演算する鋳型溶湯重量演算手段と、予め求められた取鍋内の溶湯の重量および固有振動数の関係式と取鍋溶湯重量演算手段の演算結果に基づき取鍋Z内の溶湯の固有振動数を演算する取鍋溶湯の固有振動数演算手段と、予め求められた鋳型内溶湯の重量および固有振動数の関係式と鋳型溶湯重量演算手段の演算結果に基づき鋳型Y内の溶湯の固有振動数を演算する鋳型溶湯の固有振動数演算手段と、制御プログラムに基づき電動プッシャーシリンダ、電動クッションシリンダおよび自動注湯機に対する作動指令を発信する作動指令発信手段と、取鍋溶湯の固有振動数演算手段および鋳型溶湯の固有振動数演算手段によって演算された取鍋溶湯の固有振動数および鋳型溶湯の固有振動数を含まないように、鋳造ラインにおける鋳枠送り動作の速度波形を変更して前記鋳造ラインを作動させるフィルタ手段と、しての機能を有している。そして、2個の固有振動数は、予め求められた取鍋Z内の溶湯の重量と固有振動数との関係式、および、同じく予め求められた鋳型Y内の溶湯の重量と固有振動数との関係式からそれぞれ演算される。
【0021】
なお、第1サーボコントローラB3は、中央処理装置(CPU)B3a、パルス出力器B3b、I/OB3c、通信器B3d、サーボI/OB3eおよびカウンタB3fによって構成してある。また、第2サーボコントローラC3は、第1サーボコントローラB3と同様に、中央処理装置(CPU)C3a、パルス出力器C3b、I/OC3c、通信器C3d、サーボI/OC3eおよびカウンタC3fによって構成してある。
またなお、第1サーボコントローラB3および第2サーボコントローラC3は、デジタルデータを送受信する通信器B3d、C3dを介して鋳枠搬送ライン制御装置Kの通信器K2に接続してあって、鋳枠搬送ライン制御装置K内の溶湯重量のデータを取得するようになっている。
またなお、自動注湯機制御装置Jは、鋳枠搬送ライン制御装置Kに電気的に接続してあって、取鍋Z内の溶湯重量および鋳型Y内の溶湯重量がリンク通信器J3、K3を介して鋳枠搬送ライン制御装置Kに送られるようになっている。
【0022】
またなお、第1・第2サーボコントローラB3、C3は、インバータB2、C2にパルス列の位置指令(信号)を送ってインダクションモータB1、C1を動作させるようになっている。
またなお、モータ制御のトルク、速度および位置制御は、インバータB2、C2側にて制御を行なうようになっている。
またなお、自動注湯機Dには取鍋Z内の溶湯の重量を測定するロードセルGが取り付けてあり、ロードセルGはアンプHを介して自動注湯機制御装置Jのアナログ入力ユニットJ1に電気的に接続してある。
またなお、図中の符号Xは、鋳枠送り方向を示している。
【0023】
次に、このように構成した鋳造設備の作用について説明する。取鍋Z内の溶湯重量がロードセルGによって検知されたのち、自動注湯機制御装置Jのアナログ入力ユニットJ1に入力されて取鍋Z内の溶湯重量が測定される。続いて、自動注湯機Dの取鍋Zから鋳型Yに注湯されて測定された取鍋Z内の溶湯重量、および、この測定された溶湯重量から換算された鋳型Y内の溶湯の重量が、鋳枠搬送ライン制御装置Kに送られて取鍋Z内の溶湯および鋳型Y内の溶湯の固有振動数が求められる。
【0024】
ところで、電動クッションシリンダCは、予め設定された待機位置で停止していて、第1・第2サーボコントローラB3、C3が鋳枠搬送ライン制御装置Kのプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)K4からの鋳枠送り信号を検出すると、まず、電動プッシャーシリンダBが低速で伸長作動されて鋳型搬送ラインA上の鋳枠群全体を電動クッションシリンダCとで挟み込み、続いて、同じ速度波形で電動プッシャーシリンダBが伸長作動されるとともに電動クッションシリンダCが収縮作動されて鋳枠群全体を一鋳枠分X方向へ移動させて鋳枠送りの動作を行い、これと同時に、自動注湯機Dは鋳型Yに注湯を行いながら一鋳枠分X方向へ移動される。そして、高速での移動時に制振制御を行い、取鍋Z内および鋳型Y内の溶湯を振動させないようにする。
【0025】
すなわち、演算された取鍋溶湯の固有振動数および鋳型溶湯の固有振動数をフィルタ手段に入力して、鋳造ラインにおける鋳枠送り動作の速度波形を、2つの固有振動数を含まないように変更し、鋳枠送り動作の速度波形が変更された速度波形になるように電動プッシャーシリンダBおよび電動クッションシリンダCを作動する。これにより、取鍋Zおよび鋳枠を一鋳枠分移動した時点で取鍋Zおよび鋳型Yの溶湯に発生する振動を抑制する。
【0026】
なお、自動注湯機制御装置Jは、自動注湯機Dによる注湯中に第2サーボコントローラC3から鋳枠送りの信号を送り、この送られた信号はカウンタJ2に入力されて位置データに変換される。そして、その位置指令に追従するように駆動手段の電動機を駆動して自動注湯機DをX行方向へ移動させ鋳枠送り動作に追従させる。
【0027】
またなお、取鍋Z内の溶湯の固有振動数および鋳型Y内の溶湯の固有振動数の算出については、複雑形状であるものの固有振動数を正確に算出することは難しいため、予め取鍋Z内の重量と次の固有振動数の算出方法によって算出した固有振動数との関係をパラメータとして設定しておく。この固有振動数の算出方法としては、例えば、流体解析ソフトで計算する方法や、実際に周波数を可変させながら振動させて、振幅の大きさから固有振動数を推定する方法がある。流体解析ソフトは、自由表面/流体界面の非線形・大変形挙動を伴う複雑な非定常流動現象を、精度よく計算する3次元熱流体解析ソフトを用いることができる。
【0028】
なお、サーボコントローラのインバータ制御は、パルス列出力による位置制御で行うと上述したが、サーボコントローラ側で、速度および位置制御ループを組んで行なう方式でも制御は可能である。
またなお、インダクションモータ、インバータの代わりにサーボモータ、サーボアンプを使用することもできる。
【実施例2】
【0029】
実施例1における鋳造ラインの駆動装置を制御する制御装置の代わりに、この制御装置を、取鍋内の溶湯の重量を演算する取鍋溶湯重量演算手段と、鋳型内の溶湯の重量を演算する鋳型溶湯重量演算手段と、予め求められた取鍋内の溶湯の重量および共振周波数の関係式と取鍋溶湯重量演算手段の演算結果に基づき取鍋内の溶湯の共振周波数を演算する取鍋溶湯の共振周波数演算手段と、予め求められた鋳型内溶湯の重量および共振周波数の関係式と鋳型溶湯重量演算手段の演算結果に基づき鋳型内の溶湯の共振周波数を演算する鋳型溶湯の共振周波数演算手段と、フィードフォワード制御プログラムによる鋳造ラインの動作に対する動作指令を発信する動作指令発信手段と、鋳造ラインの駆動装置の性能を超えないように鋳造ラインの駆動装置の制御器に関するパラメータを予め演算するパラメータ演算手段と、パラメータ演算手段からパラメータを受信して記憶するパラメータ記憶手段と、パラメータ記憶手段からのパラメータの下に動作指令発信手段からの鋳造ラインの動作指令における自動注湯機および鋳枠の移動速度、移動加速度および移動加加速度のうち1つ以上のものにおける最大値を制限する最大値制限手段と、2個の共振周波数演算手段から2個の共振周波数を受信し、パラメータ記憶手段から得たパラメータの下に、最大値制限手段による最大値が制限された動作指令から2個の共振周波数付近の成分を、式1または式2に従いフィルタメータai(f)、bj(f)を少しずつ変化させながら鋳造ラインの特性を表現するモデルを用いたシミュレーションにより繰返し演算して決め記憶されたフィルタパラメータを用いて除去し、2個の共振周波数付近の成分が除去された動作指令を鋳造ラインの駆動装置に入力して、フィードバック制御を用いずにフィードフォワード制御プログラムのみに基づいて鋳造ラインの駆動装置を作動させるフィルタ手段と、を含むものにする。
そして、制御装置を、コンピュータによって構成してある。
【0030】
【数1】

ここでai(f)、bj(f)は取鍋および鋳型の溶湯から逐次演算される共振周波数fを媒介とするフィルタパラメータ、x(t−j)はj制御周期前に入力された時系列データであり、y(t−i)はi制御周期前に出力された時系列データである。
【0031】
【数2】

ここで、式(1)は上記の式(2)で示すフィルタの伝達関数に対してZ変換を行うことにより得ることができ、Sはラプラス演算子である。
【0032】
このように構成したものは、取鍋Z内の溶湯の重量が取鍋溶湯の共振周波数演算手段に入力されて取鍋溶湯の共振周波数を演算し、かつ、鋳型内の溶湯の重量が鋳型溶湯の共振周波数演算手段に入力されて鋳型溶湯の共振周波数を演算し、演算された2個の共振周波数はフィルタ手段に入力される。
【0033】
一方、動作指令発信手段から最大値制限手段に鋳造ラインの動作指令を発信する。すると、最大値制限手段は、鋳造ラインの駆動装置の性能を超えないための鋳造ラインの駆動装置の制御器に関するパラメータをパラメータ記憶手段から読み出しながら、動作指令発信手段からの自動注湯機および鋳枠の動作指令における移動速度、移動加速度および移動加加速度のうち少なくとも1つ以上のものの最大値を制限した後その結果をフィルタ手段に入力する。
【0034】
これに伴い、フィルタ手段は、鋳造ラインの駆動装置の性能を超えない鋳造ラインの駆動装置の制御器に関するパラメータをパラメータ記憶手段から読み出しながら、取鍋溶湯の重量および鋳型溶湯の重量から逐次演算される2個の共振周波数の下に、鋳造ラインの駆動装置に与える自動注湯機および鋳枠の移動速度、移動加速度および移動加加速度のうち1つ以上のものにおける最大値を制限した動作指令をフィルタリングして2個の共振周波数付近の成分を除去し、こうして動作指令をフィルタリングした指令を鋳造ラインの駆動装置に入力する。これにより、取鍋Zおよび鋳枠を一鋳枠分移動した時点で取鍋Zおよび鋳型Yの溶湯に発生する振動を抑制することができる。
【0035】
なお、フィルタ部による演算は次に述べる理論にしたがって行われる。すなわち、フィルタ部に入力される時系列データをx(t)、フィルタ部6から出力される時系列データをy(t)とすると、フィルタは式(1)で示すことができる。
式1
【0036】
【数1】

【0037】
ここでai(f)、bj(f)はから逐次演算される取鍋Zおよび鋳型Yの溶湯重量から逐次演算される2個の共振周波数fを媒介とするパラメータである。
【0038】
またなお、x(t−j)はj制御周期前に入力された時系列データであり、y(t−i)はi制御周期前に出力された時系列データである。
【0039】
なお、項目数mおよびnは、フィルタの構成によって任意に決めることができるが、予め決めておく必要がある。例えば一次のローパスフィルタの場合にはm=0、n=1を、二次のローパスフィルタの場合にはm=0、n=2を、またノッチフィルタの場合にはm=2、n=2をそれぞれ予め決め、決めた項目数mおよびnをパラメータ記憶手段およびパラメータ演算手段に入力しておく。
【0040】
またなお、パラメータai(f)、bj(f)は、パラメータ演算手段によって予め演算しておく必要があり、パラメータ演算手段を用いて、その値を少しずつ変化させながら、
鋳造ラインの特性を表現するモデルを用いたシミュレーションにより繰返し演算して決める。
【0041】
このときの制約条件は、鋳造ラインの制御装置に与える動作指令の最大速度が、鋳造ラインの駆動装置(電動プッシャーシリンダB、電動クッションシリンダC)の最大速度を超えないこと、鋳造ラインの駆動装置に与える動作指令におけるそれぞれの最大値が鋳造ラインの駆動装置の最大値制限を超えないこと、上記の二つの条件を満たし、取鍋Zおよび鋳枠の移動時間が最短となるものであることである。
【0042】
なお、式(1)は下式(2)で示すフィルタの伝達関数に対してZ変換を行うことにより得ることができる。
式2
【0043】
【数2】

【0044】
ここで、Sはラプラス演算子である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明を適用した鋳造設備の一実施例の模式図である。
【符号の説明】
【0046】
A 鋳枠搬送ライン
B 電動プッシャーシリンダ
C 電動クッションシリンダ
D 自動注湯機
J 自動注湯機制御装置
K 鋳枠搬送ライン制御装置
Y 鋳型
Z 取鍋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型を内蔵した複数の鋳枠を直線状に連ねて搬送する鋳枠搬送ラインの一端に設置されて複数の鋳枠を一鋳枠分ずつ間歇的に押し出す電動プッシャーシリンダと、前記鋳枠搬送ラインの他端に前記電動プッシャーシリンダと対向して設置されて押し出された鋳枠群を緩衝的に受け止める電動クッションシリンダと、電気的駆動手段により前記鋳枠搬送ラインの鋳枠に同期して移動され電気的駆動手段による取鍋の傾動により前記鋳型に注湯する自動注湯機とを備えた鋳造ラインを、フィルタ手段を有するコントローラを制御プログラムよって作動させることにより、前記取鍋および前記鋳枠を一鋳枠分移動した時点で前記取鍋および前記鋳型の溶湯に発生する振動を抑制するように前記鋳造ラインの駆動装置を制御する方法であって、
予め求められた取鍋内の溶湯の重量および固有振動数の関係式と前記取鍋内の溶湯の重量から取鍋溶湯の固有振動数を演算するとともに、予め求められた鋳型内溶湯の重量および固有振動数の関係式と測定した鋳型内の溶湯の重量とから鋳型溶湯の固有振動数を演算し、
演算された取鍋溶湯の固有振動数および鋳型溶湯の固有振動数を前記フィルタ手段に入力して、前記鋳造ラインにおける鋳枠送り動作の速度波形を、2つの前記固有振動数を含まないように変更し、
鋳枠送り動作の速度波形が変更された速度波形になるように前記電動プッシャーシリンダおよび前記電動クッションシリンダを作動することを特徴とする鋳造ライン駆動装置の制御方法。
【請求項2】
鋳型を内蔵した複数の鋳枠を直線状に連ねて搬送する鋳枠搬送ラインの一端に設置されて複数の鋳枠を一鋳枠分ずつ間歇的に押し出す電動プッシャーシリンダと、前記鋳枠搬送ラインの他端に前記電動プッシャーシリンダと対向して設置されて押し出された鋳枠群を緩衝的に受け止める電動クッションシリンダと、電気的駆動手段により前記鋳枠搬送ラインの鋳枠に同期して移動され電気的駆動手段による取鍋の傾動により前記鋳型に注湯する自動注湯機とを備えた鋳造ラインを、フィルタ手段を有するコントローラを制御プログラムよって作動させることにより、前記取鍋および前記鋳枠を一鋳枠分移動した時点で前記取鍋および前記鋳型の溶湯に発生する振動を抑制するように前記鋳造ラインの駆動装置を制御するシステムであって、
前記取鍋内の溶湯の重量を演算する取鍋溶湯重量演算手段と、
前記鋳型内の溶湯の重量を演算する鋳型溶湯重量演算手段と、
予め求められた取鍋内の溶湯の重量および固有振動数の関係式と前記取鍋溶湯重量演算手段の演算結果に基づき前記取鍋内の溶湯の固有振動数を演算する取鍋溶湯の固有振動数演算手段と、
予め求められた鋳型内溶湯の重量および固有振動数の関係式と前記鋳型溶湯重量演算手段の演算結果に基づき前記鋳型内の溶湯の固有振動数を演算する鋳型溶湯の固有振動数演算手段と、
前記制御プログラムに基づき前記電動プッシャーシリンダ、前記電動クッションシリンダおよび前記自動注湯機に対する作動指令を発信する作動指令発信手段と、
前記取鍋溶湯の固有振動数演算手段および前記鋳型溶湯の固有振動数演算手段によって演算された前記取鍋溶湯の固有振動数および前記鋳型溶湯の固有振動数を含まないように、前記鋳造ラインにおける鋳枠送り動作の速度波形を変更して前記鋳造ラインを作動させるフィルタ手段と、
を含むことを特徴とする鋳造ライン駆動装置の制御システム。
【請求項3】
鋳型を内蔵した複数の鋳枠を直線状に連ねて搬送する鋳枠搬送ラインの一端に設置されて複数の鋳枠を一鋳枠分ずつ間歇的に押し出す電動プッシャーシリンダと、前記鋳枠搬送ラインの他端に前記電動プッシャーシリンダと対向して設置されて押し出された鋳枠群を緩衝的に受け止める電動クッションシリンダと、電気的駆動手段により前記鋳枠搬送ラインの鋳枠に同期して移動され電気的駆動手段による取鍋の傾動により前記鋳型に注湯する自動注湯機とを含む鋳造ラインを、フィルタ手段を有するコントローラをフィードフォワード制御プログラムによって作動させることにより、前記取鍋および前記鋳枠を一鋳枠分移動した時点で前記取鍋および前記鋳型の溶湯に発生する振動を抑制するように前記鋳造ラインの駆動装置を制御する方法であって、
予め求められた取鍋内の溶湯の重量および固有振動数の関係式と前記取鍋内の溶湯の重量から取鍋溶湯の共振周波数を演算するとともに、前記鋳型内の溶湯の重量から鋳型溶湯の共振周波数を演算し、
演算された2個の共振周波数と前記鋳造ラインの駆動装置の性能を超えないように予め別
途演算されて記憶された鋳造ラインの駆動装置の制御器に関するパラメータとの下に、動
作指令発信手段からの前記鋳造ラインの動作指令における前記自動注湯機および前記鋳
枠の移動速度、移動加速度および移動加加速度のうち1つ以上のものにおける最大値を制
限した動作指令から2個の前記共振周波数付近の成分を、式1または式2に従いフィルタ
メータai(f)、bj(f)を少しずつ変化させながら前記鋳造ラインの特性を表現
するモデルを用いたシミュレーションにより繰返し演算して決め記憶されたフィルタパラ
メータを用いて前記フィルタ手段により除去し、
前記フィルタ手段により2個の前記共振周波数付近の成分が除去された動作指令を前記
フィードフォワード制御プログラムのみに基づいて前記鋳造ラインの駆動装置に入力して、
フィードバック制御を用いずに前記フィードフォワード制御プログラムのみに基づいて前記鋳造ラインの駆動装置を作動させることを特徴とする鋳造ライン駆動装置の制御方法。
【数1】

ここでai(f)、bj(f)は前記取鍋および前記鋳型の溶湯から逐次演算される共振周波数fを媒介とするフィルタパラメータ、x(t−j)はj制御周期前に入力された時系列データであり、y(t−i)はi制御周期前に出力された時系列データである。である。
【数2】

ここで、式(1)上記の式(2)で示すフィルタの伝達関数に対してZ変換を行うことにより得ることができ、Sはラプラス演算子である。
【請求項4】
鋳型を内蔵した複数の鋳枠を直線状に連ねて搬送する鋳枠搬送ラインの一端に設置されて複数の鋳枠を一鋳枠分ずつ間歇的に押し出す電動プッシャーシリンダと、前記鋳枠搬送ラインの他端に前記電動プッシャーシリンダと対向して設置されて押し出された鋳枠群を緩衝的に受け止める電動クッションシリンダと、電気的駆動手段により前記鋳枠搬送ラインの鋳枠に同期して移動され電気的駆動手段による取鍋の傾動により前記鋳型に注湯する自動注湯機とを備えた鋳造ラインを、フィルタ手段を有するコントローラをフィードフォワード制御プログラムによって作動させることにより、前記取鍋および前記鋳枠を一鋳枠分移動した時点で前記取鍋および前記鋳型の溶湯に発生する振動を抑制するように前記鋳造ラインの駆動装置を制御するシステムであって、
前記取鍋内の溶湯の重量を演算する取鍋溶湯重量演算手段と、
前記鋳型内の溶湯の重量を演算する鋳型溶湯重量演算手段と、
予め求められた取鍋内の溶湯の重量および固有振動数の関係式と前記取鍋溶湯重量演算手段の演算結果に基づき前記取鍋内の溶湯の共振周波数を演算する取鍋溶湯の共振周波数演算手段と、
予め求められた鋳型内溶湯の重量および共振周波数の関係式と前記鋳型溶湯重量演算手段の演算結果に基づき前記鋳型内の溶湯の共振周波数を演算する鋳型溶湯の共振周波数演算手段と、
前記フィードフォワード制御プログラムによる前記鋳造ラインの動作に対する動作指令を発信する動作指令発信手段と、
前記鋳造ラインの駆動装置の性能を超えないように鋳造ラインの駆動装置の制御器に関するパラメータを予め演算するパラメータ演算手段と、
このパラメータ演算手段から前記パラメータを受信して記憶するパラメータ記憶手段と、
このパラメータ記憶手段からの前記パラメータの下に前記動作指令発信手段からの前記鋳
造ラインの動作指令における前記自動注湯機および前記鋳枠の移動速度、移動加速度およ
び移動加加速度のうち1つ以上のものにおける最大値を制限する最大値制限手段と、
2個の前記共振周波数演算手段から2個の共振周波数を受信し、前記パラメータ記憶手段から得た前記パラメータの下に、前記最大値制限手段による前記最大値が制限された前記動作指令から2個の前記共振周波数付近の成分を、式1または式2に従いフィルタメータai(f)、bj(f)を少しずつ変化させながら鋳造ラインの特性を表現するモデルを用いたシミュレーションにより繰返し演算して決め記憶されたフィルタパラメータを用いて除去し、2個の前記共振周波数付近の成分が除去された動作指令を前記鋳造ラインの駆動装置に入力して、フィードバック制御を用いずに前記フィードフォワード制御プログラムのみに基づいて前記鋳造ラインの駆動装置を作動させるフィルタ手段と、
を含むことを特徴とする鋳造ライン駆動装置の制御システム。
【数1】

ここでai(f)、bj(f)は前記取鍋および前記鋳型の溶湯から逐次演算される共振周波数fを媒介とするフィルタパラメータ、x(t−j)はj制御周期前に入力された時系列データであり、y(t−i)はi制御周期前に出力された時系列データである。である。
【数2】

ここで、式(1)上記の式(2)で示すフィルタの伝達関数に対してZ変換を行うことにより得ることができ、Sはラプラス演算子である。
【請求項5】
鋳型を内蔵した複数の鋳枠を直線状に連ねて搬送する鋳枠搬送ラインの一端に設置されて複数の鋳枠を一鋳枠分ずつ間歇的に押し出す電動プッシャーシリンダと、前記鋳枠搬送ラインの他端に前記電動プッシャーシリンダと対向して設置されて押し出された鋳枠群を緩衝的に受け止める電動クッションシリンダと、電気的駆動手段により前記鋳枠搬送ラインの鋳枠に同期して移動され電気的駆動手段による取鍋の傾動により前記鋳型に注湯する自動注湯機とを備えた鋳造ラインを、フィルタ手段を有するコントローラを制御プログラムよって作動させることにより、前記取鍋および前記鋳枠を一鋳枠分移動した時点で前記取鍋および前記鋳型の溶湯に発生する振動を抑制するために前記鋳造ラインの駆動装置を制御する制御プログラムを記憶した記憶媒体であって、
前記制御プログラムは、予め求められた取鍋内の溶湯の重量および固有振動数の関係式と前記取鍋内の溶湯の重量から取鍋溶湯の固有振動数を演算するとともに、予め求められた鋳型内溶湯の重量および固有振動数の関係式と前記鋳型内の溶湯の重量から鋳型溶湯の固有振動数を演算し、演算された取鍋溶湯の固有振動数および鋳型溶湯の固有振動数を前記フィルタ手段に入力して、前記鋳造ラインにおける鋳枠送り動作の速度波形を、前記2つの固有振動数を含まないように変更し、鋳枠送り動作の速度波形が変更された速度波形になるように前記電動プッシャーシリンダおよび前記電動クッションシリンダを作動させるようにプログラムされていることを特徴とする鋳造ライン駆動装置の記憶媒体。
【請求項6】
鋳型を内蔵した複数の鋳枠を直線状に連ねて搬送する鋳枠搬送ラインの一端に設置されて複数の鋳枠を一鋳枠分ずつ間歇的に押し出す電動プッシャーシリンダと、前記鋳枠搬送ラインの他端に前記電動プッシャーシリンダと対向して設置されて押し出された鋳枠群を緩衝的に受け止める電動クッションシリンダと、電気的駆動手段により前記鋳枠搬送ラインの鋳枠に同期して移動され電気的駆動手段による取鍋の傾動により前記鋳型に注湯する自動注湯機とを含む鋳造ラインを、フィルタ手段を有するコントローラをフィードフォワード制御プログラムによって作動させることにより、前記取鍋および前記鋳枠を一鋳枠分移動した時点で前記取鍋および前記鋳型の溶湯に発生する振動を抑制するために前記鋳造ラインの駆動装置を制御する制御プログラムを記憶した記憶媒体であって、
予め求められた取鍋内の溶湯の重量および共振周波数の関係式と前記取鍋内の溶湯の重量から取鍋溶湯の共振周波数を演算するとともに、予め求められた鋳型内溶湯の重量および共振周波数の関係式と前記鋳型内の溶湯の重量から鋳型溶湯の共振周波数を演算し、演算された2個の共振周波数と前記鋳造ラインの駆動装置の性能を超えないように予め別途演算されて記憶された鋳造ラインの駆動装置の制御器に関するパラメータとの下に、動作指令発信手段からの前記鋳造ラインの動作指令における前記自動注湯機および前記鋳枠の移動速度、移動加速度および移動加加速度のうち1つ以上のものにおける最大値を制限した動作指令から2個の前記共振周波数付近の成分を、式1または式2に従いフィルタメータai(f)、bj(f)を少しずつ変化させながら、鋳造ラインの特性を表現するモデルを用いたシミュレーションにより繰返し演算して決め記憶されたフィルタパラメータを用いて前記フィルタ手段により除去し、前記フィルタ手段により2個の前記共振周波数付近の成分が除去された動作指令を前記フィードフォワード制御プログラムのみに基づいて前記鋳造ラインの駆動装置に入力して、前記フィードフォワード制御プログラムのみに基づいて前記鋳造ラインの駆動装置を作動させるようにプログラムされていることを特徴とする鋳造ライン駆動装置の記憶媒体。
【数1】

ここでai(f)、bj(f)は前記取鍋および前記鋳型の溶湯から逐次演算される共振周波数fを媒介とするフィルタパラメータ、x(t−j)はj制御周期前に入力された時系列データであり、y(t−i)はi制御周期前に出力された時系列データである。である。
【数2】

ここで、式(1)上記の式(2)で示すフィルタの伝達関数に対してZ変換を行うことにより得ることができ、Sはラプラス演算子である。

【図1】
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【公開番号】特開2009−297783(P2009−297783A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289028(P2008−289028)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)