鋼のスラブ用鋳片の製造方法
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、鋳型内の溶鋼に電磁力を印加して、湯面の波動を抑制する連続鋳造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】通常、連続鋳造においては、溶鋼の酸化防止のために、浸漬ノズルを用いて溶鋼を大気から遮断しつつ鋳型内に注入する。スラブ連続鋳造用の浸漬ノズルは、その下端にて左右に開口する1対の吐出口を有する。これら吐出口から実質的に左右均等に鋳型中央から周辺へ向かって溶鋼が吐出される。
【0003】ところで、連鋳機の生産性を向上させるために、鋳造速度すなわち鋳型内への溶鋼注入速度を増加させることが近年の連続鋳造における課題となっている。しかし、注入速度を1.5m/分を超えて増加させると、鋳型内の溶鋼が激しく擾乱され、湯面上の波長が、浸漬ノズル部をシーソーの支点になるような数mの波長のものから、短い数cmの波長のものまで、種々の波動が発生し、湯面の波動が大きくなる。このような湯面の波動はモールドパウダーの溶鋼中への巻き込みを生じる。また、鋳型内溶鋼の激しい擾乱は、前記の巻き込まれたモールドパウダーや、精錬工程で生じた溶鋼中の非金属介在物が鋳型内で湯面に向かって浮上することを阻害し、結果として鋳型内の溶鋼中からこれらの介在物が取り除かれることを困難にする。このようにして鋳片中に取り込まれた介在物は、最終工程を経た製品の表面や内部の欠陷として顕在化し製品の品位を著しく低下させる。
【0004】上記のような介在物の取り込みを防止するために、鋳型に磁場発生装置を設け、浸漬ノズルから吐出する溶湯流を、鋳型短辺側から浸漬ノズル側へ鋳型幅方向に沿って押し戻す向きに電磁誘導力を印加して溶鋼吐出流の勢いを弱める。これにより、湯面の波動の低減と、鋳型内溶鋼の擾乱の抑制を図る技術が開発されている(例えば、特公昭64−10305)。そして、この湯面変動量を5mm程度以下にすることが、通常操業の目標とされてきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】当技術に係わる磁場発生装置は、前述のようにリニア移動磁場式であるので、その運転に際しては、適当な電流値と、周波数を決めなくてはならない。このうち周波数の決定は従来以下のように行っていた。つまり、溶鋼吐出流の減衰率を高めるには溶鋼吐出流にはたらくローレンツ力を高めなくてはならない。そのためには、溶鋼吐出流と、鋳型の短辺側から浸漬ノズル側に向かって移動する磁束との相対速度を高めなくてはならない。したがって磁束の移動速度、すなわち周波数を高めなくてはならない。しかし、周波数を高めると鋳型枠を構成するステンレス・鋳型銅板および溶鋼の透磁率が低下し、浸漬ノズルからの溶鋼吐出流に有効に作用する磁束密度が低下する。そこで、これら2つの条件を満足する最適な周波数を0.5Hzとした。
【0006】図1は上記の通り、磁場発生装置の電流周波数が0.5Hzの条件で、磁場移動方向を短辺から浸漬ノズルへ向かう向きとして、その電流値を変化させたときの鋳型内湯面の波動の大きさを表したものである。ここで、波動の大きさは、鋳型短辺から40mm、鋳型内長辺から40mmそれぞれ離れた位置で、10分間の湯面波動振幅量の平均値で表した(ここで湯面波動振幅量とは図2に示すように、周期約1〜2秒の短周期波と周期約10秒〜15の長周期波で概ね構成される鋳型短辺近傍湯面変動波形の内、長周期波高が極大・極小を示す時刻にそれぞれ最も近い時刻での短周期波高の極大・極小間の波高差32をいう)。鋳造速度が比較的遅く、鋳型幅の狭い条件(図中の白抜き逆三角および白抜き四角)では磁場発生装置の電流値を増すとともに、湯面波動の抑制効果は大きくなる。しかし鋳造速度が比較的速く、鋳型幅の広い条件(図中の黒三角および黒四角)では、磁場発生装置の電流値を増し過ぎると、湯面波動の抑制効果は小さくなり、却って湯面波動を助長する結果となっている。
【0007】本発明は、上記に代表される問題の解決、つまり「スラブ連続鋳造において浸漬ノズルの下部の二股の溶鋼吐出孔から鋳型内に流入した溶鋼流が鋳型内溶鋼湯面に与える湯面波動を鋳型に設置されたリニア磁界発生装置を用いて電磁制動力により抑制する方法」すなわち、広い鋳造条件で、湯面波動を抑制するための、磁界発生装置の電流周波数の設定と鋳造条件との関係を示す操業方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明に係わる磁場発生装置はリニア移動磁場式であり、磁束は鋳片引き抜き方向と直交する方向に鋳型短片側から浸漬ノズル側へ向かって移動する。あるいは、磁束は浸漬ノズルの下部の二股の溶鋼吐出孔から流入する溶鋼流に向かう角度で、すなわち、鋳片引抜き方向と直交する面から傾いた方向を鋳型短辺側から浸漬ノズル側に向かって移動する。従って、鋳型内のある一点に於ける磁束密度は周期的に変化する。つまり、浸漬ノズルから吐出する溶湯流は、時間的に常に、一定の磁束密度の磁束と交叉するわけではなく、浸漬ノズルから溶湯流のある断片が吐出された時刻の違いによって、リニア移動磁場の印加領域を通過し終わるまでに、その溶湯流の断片が受ける電磁力の大きさの合計量に違いが生じる。
【0009】発明者らは、浸漬ノズルから吐出された溶湯流のある断片がリニア移動磁場の印加領域の通過に要する時間と、浸漬ノズルから吐出された溶湯流のその断片がリニア移動磁場の印加領域を通過中に、磁束がこの溶湯流と交叉する回数は、鋳型幅、鋳型幅と鋳造速度によってきまる時間当たりの溶鋼吐出量、浸漬ノズルからの溶鋼吐出角度、浸漬ノズルの吐出口の浸漬深さ、および磁場発生装置の電流周波数で決まること。そしてこの浸漬ノズルから吐出された溶湯流のその断片がリニア移動磁場の印加領域を通過中に、磁束がこの溶湯流と交叉する回数によって、上記のような「浸漬ノズルから溶湯流のある断片が吐出された時刻の違いによって、リニア移動磁場の印加領域を通過し終わるまでに、その溶湯流の断片が受ける電磁力の大きさの合計量に違いが生じる」現象の程度の大小が決まることを見出した。
【0010】このような現象を小さくするためには、浸漬ノズルから吐出された溶湯流のどの断片も、リニア移動磁場の印加領域を通過中に、移動する磁束とかならず同程度の回数交叉するようにすることである。そのためには2つの方法が考えられる。 第1は、浸漬ノズルから吐出された溶湯流のどの断片も、できるだけ長い時間リニア移動磁場の印加領域内を流れるようにする方法である。そのためには鋳造速度を減じて浸漬ノズルから吐出された溶湯流の流速を減じたり、浸漬ノズルの吐出角度を浅くして、浸漬ノズルから吐出された溶湯流がリニア移動磁場の印加領域の中を磁束の移動方向と平行に流れるようにすることが必要である。しかし、鋳造速度を減じると連鋳機の生産能率が下がるし、浸漬ノズルの吐出角度を浅くすると溶湯流によるモールドパウダーの巻込み等が生じ、鋳片への介在物取り込みをもたらす。したがってこの方法は得策ではない。
【0011】第2は磁場発生装置の電流周波数を増して磁束の移動速度を増すことによって、浸漬ノズルから吐出された溶湯流のどの断片もリニア移動磁場の印加領域を通過中に、なるべく同程度の回数だけ磁束と交叉するようにすることである。この第2の方法によれば、鋳造速度や浸漬ノズルの吐出角度から直接の制約を受けない。但し、磁場発生装置の電流周波数を増すと、透磁率が低下し、浸漬ノズルからの溶鋼吐出流に有効に作用する磁束密度が低下する。したがってこの電流周波数は、浸漬ノズルから吐出された溶湯流のどの断片もリニア移動磁場の印加領域を通過中になるべく同程度の回数だけ磁束と交叉するに必要な最低の周波数であることが望ましい。
【0012】第2の方法は、発明者らが連続鋳造機での実験により発見した方法であるが、磁場発生装置の電流周波数を選択してリニア磁界の移動速度を調整することにより、浸漬ノズルから吐出された溶鋼流のどの断片もリニア磁界の印加領域を通過中に、少なくとも1回、移動磁束(移動磁場)と交差させるに必要な最低の周波数以上の周波数に設定する方法である。すなわち、浸漬ノズルから吐出された溶鋼流のどの断片もリニア磁界の印加領域を通過中に少なくともリニア磁界の1周期以上の磁束密度の制動作用を受けるので、溶鋼流に制動された部分と制動されない部分の偏りができない。選択する周波数が最低の周波数あるいはその整数倍であれば、溶鋼流のどの断片も等しく制動作用を受けるので、鋳型内溶鋼湯面の波動量はさらに減少する。
【0013】この第2の方法によれば、鋳造速度や浸漬ノズルの吐出角度から直接の制約を受けないで湯面波動量を減少させることができる。ただし、磁場発生装置の電流周波数を増すと、透磁率が低下し、鋳型内の磁束密度が低下するので、この電流周波数は以下に述べる方法で求めた必要な最低の周波数あるいはその2倍、3倍などの整数倍の周波数であることが望ましい。この整数倍値は、浸漬ノズルから吐出された溶鋼流の断片に移動磁束が作用する制動力は磁束密度の二乗と周波数との積に比例して大きくなるので、この積の値が最大となる倍数値に選択することが効果的である。発明者らは、この第2の方法に於て必要とされる最低限の電流周波数を、次のようにしてもとめた。
【0014】まず、本発明に係わる磁場発生装置に於て、リニア移動磁場の印加領域を電流周波数F[Hz]で移動する磁束が周期的に通過する時間間隔P[sec ]は、下記(2)式で表せる。
P=1/(N・F) …(2)
ただし、式(2)中の符号Nは、磁場発生装置の極数を意味する。
【0015】一方、図3は磁束の移動方向が鋳片引抜き方向と直交する方向である場合を例示するが、図3に示すように、浸漬ノズルの吐出孔29の下向き角度αが大きいときは、吐出孔29から吐出された溶鋼流の微小断片がリニア移動磁場の印加領域に進入して逸脱するまで、つまり図3のリニア移動磁場の印加領域の下端34に要する時間、すなわち有効制動時間T[sec ]は下記(3)式で表せる。
T=(W−D)/(V・sin θ) …(3)
【0016】他方、浸漬ノズルの吐出孔29の下向き角度αが小さいとき、あるいは浸漬ノズルの吐出孔29から吐出される溶鋼流の方向と磁束の移動方向の相対角度が小さいときは、吐出孔29から吐出される溶湯流がリニア移動磁界の上側、下側に抜け出る以前に鋳型の短辺側の凝固殻に到達する。このような場合は、溶鋼流の断片が浸漬ノズルの吐出孔29を出て、鋳型の短辺側の凝固殻に到達するまでの時間が有効制動時間T[sec ]となり、下記(3)式または(4)式により時間Tをそれぞれ求めることができる。
T=A/(2V・cos θ) …(4)
【0017】ただし、上記(3)式および(4)式において、Vは浸漬ノズルから吐出する溶湯流がリニア移動磁場の印加領域(ここで印加領域とは、鋳型の厚み方向中心で測った磁束密度の時間平均が最大値をしめす位置を中心として、その最大値の1/2の磁束密度を時間平均値として持つ領域をいう。)を通過する際の平均流速[m/sec]、θは浸漬ノズルから吐出する溶湯流がリニア移動磁場の印加領域を通過する際に水平線となす角度[rad ]、Wはリニア移動磁場の印加領域の鋳型高さ方向の幅[m]、Dは浸漬ノズル吐出口上端がリニア移動磁場の印加領域にある場合は、浸漬ノズル吐出口上端からリニア移動磁場の印加領域の上端までの距離[m]、それ以外の場合はD=0[m]、Aは鋳造幅[m]をそれぞれ意味する。
【0018】なお、V,θの値は実際の連続鋳造機で直接測定することは、大変困難である。そこで、発明者らは、1/3スケールの鋳型水モデルで実際の鋳造を再現し、V,θを測定した。但し、V,θは磁場発生装置による吐出流の制動効果が加味されたものではない。
【0019】上記(2),(3),(4)式から、浸漬ノズルから吐出された溶鋼流のどの断片も、磁場の印加領域を通過中に交叉する磁束の合計された量が同一になるために必要な最低の電流周波数Fは、P=Tの関係から下記(5)式または(6)式のように表すことができる。浸漬ノズルから吐出する溶鋼流がリニア移動磁界の下側に抜け出る場合は、下記(5)式を用いる。
F=(V・sin θ)/{N・(W−D)} …(5)
浸漬ノズルから吐出する溶鋼流がリニア移動磁界の上側、下側に抜け出ない場合は、下記(6)式を用いる。
F=(2V・cos θ)/(N・A) …(6)
図3は、上記(5)式中の記号を説明するための模式図で、磁束の移動方向が鋳片引抜き方向と直交する方向である場合を例示する。
【0020】図4は、磁場発生装置の電流周波数を発明者らが連続鋳造機で測定し、測定値から計算して求めた鋳型内での磁束密度の時間平均の最大値との関係である。電流周波数が増すと、鋳型枠を構成するステンレス・鋳型銅板および溶鋼の透磁率が低下し、磁束密度が低下する。それぞれの連続鋳造機の鋳型内の磁束密度値は、実際設備の構造、性能の違いにより、必ずしも図4と同じものとはならない。発明者らの実験によれば、少なくとも1200ガウスの鋳型内の磁束密度値を使用することが浸漬ノズルから吐出された溶鋼流の流速を有効に制動するために必要であるので、図4の例では、2.8Hz以下の電流周波数を選択してリニア磁界の移動速度を調整する。
【0021】この(5)式あるいは(6)式で決まる値を最低値として、また最高値を、透磁率の低下が浸漬ノズルからの溶鋼吐出流に有効に作用する磁束密度の著しい低下をきたさないような値とするような電流周波数の範囲において磁場発生装置を運転することが、鋳造速度が比較的速く鋳型幅の広い条件においても、鋳型内の湯面波動をよく抑制するための、磁場発生装置の電流周波数の設定方法であることを発見者らは見出したわけである。
【0022】さらに、発明者らは、V,θの値が実際の連続鋳造操業で直接測定できないので、必要な最低の周波数あるいはその整数倍の周波数が直ちに求められないことの不便を解決する方法を見出した。
【0023】連続鋳造の鋳造幅をA[m]、鋳造厚みをB[m]、鋳造速度をC[m/秒]、浸漬ノズルの吐出孔の孔径面積をS[m2 ]として、これらの値に基づき下記(6)式または(7)式により算出した有効制動パラメ−タEを用いて、鋳造条件の広い範囲、すなわち、鋳造幅を0.7 〜2.6 m、鋳造厚みを0.1 〜0.3 m、鋳造速度を毎分0.6 〜5.0 m、浸漬ノズルの溶鋼吐出角度αを下向き60°から上向き15°までとし、鋳造能力を最大15トン/min ・ストランドまでの操業に対し、前述の水モデルでの実験と連続鋳造機での鋳造の実験を行った。
【0024】その結果、有効制動パラメ−タEと浸漬ノズルの溶鋼吐出角度αおよび求める必要な最低の周波数、あるいはその整数倍の周波数Fとの関係が、図13および図14に示すように整理されるという知見を得た。有効制動パラメ−タEは、浸漬ノズルの溶鋼吐出角度αに応じて下記(6)式または(7)式により求まる。
−25°≧α≧−60°のときは、 E=A・B・C/{N・(W−D)・S} …(6)
+15°≧α>−25°のときは、 E=4・B・C・(cos α)2 /(N・A・S) …(7)
【0025】ただし、Aは連続鋳造の鋳造幅(m)、Bは鋳造厚み(m)、Cは鋳造速度(m/秒)、Sは浸漬ノズルの吐出孔の孔径面積(m2 )をそれぞれ表わす。なお、孔径面積Sは吐出孔の吐出方向軸に直交する断面の面積に相当し、この断面形状は円、楕円、正方形、矩形、卵形、等をなす。図13において、浸漬ノズルの溶鋼吐出孔の角度αに応じて、図中に示す各直線は下式(8)で表わされる。
F=jE+k …(8)
【0026】ただし、上記(8)式において、−35°≧α≧−60°のときはj=0.30,k=0、−25°≧α>−35°のときはj=0.28,k=0、+15°≧α>−25°のときは、j=0.26,k=0とする。
【0027】
【作用】本発明は、スラブ連続鋳造の鋳造条件の広い範囲において、鋳型内の湯面波動をよく抑制するために、鋳型に設置されたリニア磁界発生装置を使用した電磁制動力を用いる方法、鋳造条件に応じた最適の周波数を明らかにしている。さらに、鋳造条件から有効制動パラメ−タEを計算することにより、浸漬ノズルの溶鋼吐出角度αに応じて、最適の周波数を選択する手法を提供する。
【0028】本発明の開示した手法で選択した電流周波数で運転するリニア磁界発生装置の移動磁束は浸漬ノズルの下部の二股の溶鋼吐出孔から鋳型内に流入した溶鋼流のどの断片にも乱れのない電磁制動力を与えるので、溶鋼流が鋳型内の溶鋼湯面に与える湯面波動を良く抑制する。
【0029】鋳造中に鋳型幅を変更して鋳造を継続する連続鋳造の操業においても、本発明を用いれば、広い鋳造幅から狭い鋳造幅まで希望の鋳造速度を維持していながら、安定した鋳造と安定したスラブの品質を容易に得ることができる。
【0030】
【実施例】以下、添付の図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
【0031】図5は、この発明にかかる連続鋳造方法に使用された湯面制御装置を示す縦断面図である。連続鋳造の鋳型10の上部にタンディッシュ2が設けられ、図示しない取鍋から溶鋼の供給を受けるようになっている。タンディッシュ2は、耐火物3で内張され、外側が鉄皮4で覆われている。スライディングノズル5がタンディッシュ2の底部に設けられている。スライディングノズル5は鉄皮4に固定された固定プレート6及びこれに対して摺動するスライディングプレート7を有しており、スライディングプレート7を摺動させることによりノズル5が開閉するようになっている。
【0032】浸漬ノズル8が、スライディングプレート7の下面に取り付けられている。浸漬ノズル8の下端部は鋳型10内の溶鋼1に浸漬され、その左右1対の吐出口9から溶鋼1が吐出するようになっている。
【0033】湯面センサー14が、鋳型内の湯面に対面配置され、湯面の位置及びその変化が検出されるようになっている。湯面センサー14はスライディングノズル開度制御装置16の監視入力側に接続されている。また湯面センサー14とは別に、鋳型短辺近傍に湯面センサー17が両短辺側に1個ずつ計2個取り付けられている。この湯面センサー17は、スライディングノズル開度制御装置16には接続されておらず、本発明に係わる磁場発生装置の湯面波動抑制効果を観察するためのものである。また、鋳型の両側の長辺面銅板の背後に磁場発生装置18が取付けられている。表1は本発明の実施を試みた鋳造に供した溶鋼の成分である。表2は本発明の実施を試みた鋳造の操業条件である。
【0034】表3は本発明の実施を試みた鋳造に於て使用した、本発明に係わる磁場発生装置の仕様である。ただし記号Bは鋳型の厚み方向中心で測った磁束密度の時間平均が最大値を示す点での時間平均値における磁束密度を示す。記号Wは鋳型の厚み方向中心で測った磁束密度の時間平均が最大値をしめす位置を中心として、その最大値の1/2の磁束密度を時間平均値として持つ領域の鋳型高さ方向の幅を示す。図6は、本発明に係わる磁場発生装置のコイルの配置図である。
(第1実施例)次に上記磁場発生装置を用いて鋳型内の湯面を制御する方法について、表2に掲げた鋳造の操業条件で説明する。
【0035】最初に、表2に掲げた鋳造の操業条件でのVおよびθを、1/3スケールの鋳型水モデルで測定し、測定値を実機スケールに換算した結果、V=1.15m/sec,θ=0.70rad という値を得た。そこで、浸漬ノズルから吐出された溶湯流の微小断片がリニア移動磁場の印加領域に進入して逸脱するまでに要する有効制動時間T[sec ]は、(3)式を用いた計算により、 T=0.56 (sec ) …(9)
【0036】と算出される。従って、鋳造速度が比較的速く鋳型幅の広い条件においても、鋳型内の湯面波動をよく抑制するためには、本発明の係わる磁場発生装置に於て、リニア移動磁場の印加領域を磁束が周期的に通過する時間間隔P[sec ]を、(9)式で求めたT以下にする必要がある。その時の磁場発生装置の電流周波数Fは(5)式より、 F=0.89 (Hz) …(10)
以上にする必要がある。
【0037】上記の結果を用いて、本発明に係わる磁場発生装置に於て、鋳造速度が比較的速く鋳型幅の広い条件で鋳型内の湯面波動を抑制する連鋳操業を行った結果が図7である。
【0038】図7の横軸は時刻を表している。紙面の右から左に向かって時間が流れている。縦軸は図5の湯面センサー17で測定した鋳型短辺近傍の湯面高さを表している。図7に於ける操業条件は第2表の通りである。図7は本発明に係わる磁場発生装置を運転しない場合の例であり、鋳型短辺近傍の湯面は大きく波動していることがわかる。この湯面の変動を抑制するために、以下のように磁場発生装置を運転した。
【0039】また、図8は、電流周波数0.5Hz、電流値1080Aで磁場発生装置を運転した場合である。この周波数は(10)式で求めた『鋳造速度が比較的速く鋳型幅の広い条件においても、鋳型内の湯面波動をよく抑制するための周波数の下限F』よりも低い。実際、図8R>8に見られるように、鋳型短辺近傍湯面波動の抑制効果はほとんど無く、却って鋳型短辺近傍湯面波動を助長している。
【0040】次に、図9は、電流周波数1.0Hz、電流値1080Aで磁場発生装置を運転した場合である。この周波数は(10)式で求めた『鋳造速度が比較的速く鋳型幅の広い条件においても、鋳型内の湯面波動をよく抑制するための周波数の下限F』よりも高い。実際、図9R>9に見られるように、鋳型短辺近傍湯面波動の抑制効果が大きいことがわかる。
【0041】さらに、図10は、電流周波数2.0Hz、電流値1080Aで磁場発生装置を運転した場合である。この周波数は(10)式で求めた『鋳造速度が比較的速く鋳型幅の広い条件においても、鋳型内の湯面波動をよく抑制するための周波数の下限F』よりも高い。実際、図10に見られるように、鋳型短辺近傍湯面波動の抑制効果が大きいことがわかる。
【0042】図11は、図7乃至図10に示した結果をまとめて、横軸に電流周波数をとり、縦軸に鋳型短辺近傍の湯面波動量をとって表したグラフ図である。上記(10)式で求めた鋳型内の湯面変動を抑制するための周波数下限値(0.89Hz)より大きい周波数で湯面波動が抑制されている。
(第2実施例)
【0043】図12は磁場発生装置の電流値を変化させた時の、鋳型短辺近傍湯面波動の抑制効果の変化を表したものである。図12に示す結果を得るための鋳造条件は、表2に示す通りである。図中にて、黒丸および黒四角は、鋳造速度が比較的遅く鋳型幅の狭い条件での例であり、磁場発生装置の周波数が0.5Hz,1.0Hzの両方において、電流値に見合った鋳型短辺近傍湯面波動の抑制効果が得られている。この鋳造条件では、V=0.67m/sec,θ=0.43rad ,W=0.48mで、(4)式で求められる下限の電流周波数Fは0.43Hz、有効制動パラメ−タEは1.2である。一方、図中にて白丸および白四角は、それぞれ図8、図9と同じデータを示し、鋳造速度が比較的速く鋳型幅の広い鋳造条件で、有効制動パラメ−タEは2.6である。このうち、白丸は下限の電流周波数F=0.89Hzよりも低い電流周波数=0.5Hzの場合であり、電流値を増すと却って鋳型短辺近傍湯面波動を助長する結果となることがわかる。これに対して、白四角は下限の電流周波数F=0.89Hzよりも高い電流周波数=1.0Hzの場合であり、電流値に見合った鋳型短辺近傍湯面波動の抑制効果が得られることがわかる。
【0044】図13は、鋳造幅、鋳造厚み、鋳造速度、浸漬ノズルの種類などの鋳造条件を広く変えて、鋳型内の湯面波動を抑制するための電流周波数の下限値を連続鋳造機において鋳造し、観察して求めた結果を示す。電流周波数は縦軸に、鋳造条件は横軸の有効制動パラメ−タEおよび図中の浸漬ノズルの吐出孔の吐出方向軸が水平面となす角度αで表わされている。
【0045】浸漬ノズルから吐出する溶鋼流がリニア移動磁界の下側に抜け出る場合、すなわち、−25°≧α≧−60°では、有効制動パラメ−タE=A・B・C/{N・(W−D)・S}で表わされる。一方、浸漬ノズルから吐出する溶鋼流がリニア移動磁界の上側、下側に抜け出ない場合、すなわち、+15°≧α>−25°では、有効制動パラメ−タE=4・B・C・(cos α)2 /(N・A・S)で表有効制動パラメ−タEの小さな値1〜2は鋳造幅が比較的狭いかあるいは、鋳造速度が遅い鋳造条件を代表し、湯面波動を抑制するための電流周波数の下限値を示す線は0.8Hz以下にあるが、鋳造幅が広くあるいは、鋳造速度が速くなるに従って、パラメ−タEの値が3〜4に増加するとともに、湯面波動を抑制するための電流周波数の下限値は右上がりの直線で大きくなり、下限の電流周波数Fが高くなることがわかった。ただし、透磁率低下の許容し得る電流周波数の上限は鋳造幅や鋳造速度に関係なく一定である。
【0046】図13に図12に示された鋳造例を併せて記入した。図13中の黒丸、黒四角、白丸、白四角は、図12の黒丸、黒四角、白丸、白四角とそれぞれ同じ意味である。白丸で表わされる鋳造幅1550mm、鋳造速度2.0m/分の例は浸漬ノズルの吐出孔の角度αが45度で示される下限の電流周波数の直線より下側に位置するので、浸漬ノズルから吐出された溶鋼流の断片に電磁制動力を受けた部分と、これを受けない部分の偏りが生じたため、鋳型内の湯面波動量が大きくなる結果であった。黒四角で表わされる鋳造幅950mm、鋳造速度1.6m/分の例は下限の電流周波数値は0.43Hzであるが、2倍の1.0Hzの電流周波数を使用している。
【0047】浸漬ノズルから吐出する溶鋼流が、リニア移動磁界の上側、下側に抜け出ない場合は−25°≧α≧−60°の鋳造例を図13に併せて記入した。図中の二重丸は、鋳造幅2100mm、鋳造厚み250mm 、鋳造速度毎分2mを浸漬ノズルの溶鋼吐出角度αが下向き15°で鋳造した例で、有効制動パラメ−タEは1.1 の値、電流周波数の下限値は0.40Hzである。この基準の電流周波数でも湯面波動の抑制効果はあったが、周波数をさらに増加しても磁束密度の二乗と周波数の積の値の増加が期待できる範囲であるので、3倍の周波数の1.2Hz を用いて鋳造したところ、湯面波動はさらに良く抑制された。同じく図中の白三角は、鋳造幅700mm 、鋳造厚み250mm 、鋳造速度毎分3mと毎分1.5mを浸漬ノズルの溶鋼吐出角度αが下向き5°で鋳造した例で、有効制動パラメ−タEは5.0 と2.5 の値で、電流周波数の下限値は1.30Hzと0.65Hzである。鋳造速度毎分3mでは2倍の周波数2.60Hz、鋳造速度毎分1.5mでは0.65Hzで湯面波動を良く抑制できた。
【0048】図14にはこの関係を取り上げて、下限の電流周波数の直線、その整数倍の電流周波数を表わす直線と共に示した。黒四角の例では1.0Hzの電流周波数を使用しているので、浸漬ノズルから吐出された溶鋼流の断片はリニア移動磁場の印加領域を通過中、どの断片も等しく2回電磁制動力を受けるので、鋳型内の湯面波動量は満足すべき程度に抑制された。このように、周波数の選択は下限の電流周波数に限らず、下限の電流周波数以上の周波数、下限の電流周波数の2倍、3倍の周波数でも、透磁率低下の許容し得る電流周波数の上限以下であれば、鋳型内の湯面波動の抑止の効果を得ることができる。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【発明の効果】以上のように、この発明における電流周波数の範囲内で、磁場発生装置を運転することにより、鋳造速度が比較的速く鋳型幅の広い条件においても、鋳型内の湯面波動をよく抑制することができる。そして、鋳型内の湯面の波動によって生じるモールドパウダーの溶鋼中への巻き込みを防止する。また、鋳型内の湯面の波動と共に生じる鋳型内溶鋼の激しい擾乱を防止するので、巻き込まれたモールドパウダーや、精練工程で生じた溶鋼中の非金属介在物が鋳型内で湯面に向かって浮上することを妨げることが無く、結果として鋳型内の溶鋼中からこれらの介在物が取り除かれることを容易にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁場発生装置の電流周波数が0.5Hzの条件で、その電流値を変化させたときの鋳型内短辺近傍湯面の波動の大きさを表わすグラフ図である。
【図2】湯面波動振幅量の定義を説明するためのグラフ図である。
【図3】(4)式中の記号を説明するために、鋳型の一部を長辺面側から見た模式図である。
【図4】磁場発生装置の電流周波数と計算によって求めた鋳型内での磁束密度の時間平均の最大値との関係を示すグラフ図である。
【図5】この発明にかかる連続鋳造方法に使用された湯面制御装置を示す縦断面図である。
【図6】本発明の実施例に係る磁場発生装置のコイルを鋳型上面側から見て示す配線図である。
【図7】本発明の実施例に係る磁場発生装置に於て、鋳造速度が比較的速く鋳型幅の広い条件で鋳型内短辺近傍の湯面波動を抑制する連鋳操業を行った結果をそれぞれ示すグラフ図である。
【図8】本発明の実施例に係る磁場発生装置に於て、鋳造速度が比較的速く鋳型幅の広い条件で鋳型内短辺近傍の湯面波動を抑制する連鋳操業を行った結果をそれぞれ示すグラフ図である。
【図9】本発明の実施例に係る磁場発生装置に於て、鋳造速度が比較的速く鋳型幅の広い条件で鋳型内短辺近傍の湯面波動を抑制する連鋳操業を行った結果をそれぞれ示すグラフ図である。
【図10】本発明の実施例に係る磁場発生装置に於て、鋳造速度が比較的速く鋳型幅の広い条件で鋳型内短辺近傍の湯面波動を抑制する連鋳操業を行った結果をそれぞれ示すグラフ図である。
【図11】図6の結果を横軸に電流周波数をとり、縦軸に鋳型短辺近傍の湯面波動量をとって表わすグラフ図である。
【図12】磁場発生装置の電流値を変化させた時の、鋳型短辺近傍湯面波動の抑制効果の変化を表わすグラフ図である。
【図13】鋳型内の湯面波動を抑制するための電流周波数の下限値、鋳造条件から算出した有効制動パラメ−タEおよび浸漬ノズルの吐出孔の角度αの関係を示す実験結果を示すグラフ図。
【図14】鋳型内の湯面波動を抑制するための電流周波数の下限値を示す直線、その整数倍の電流周波数を表わす直線と実験例を示すグラフ図である。
【符号の説明】
2 タンディッシュ
3 耐火物
4 鉄皮
5 スライディングノズル、
6 固定プレート
7 スライディングプレート
8 浸漬ノズル
9 吐出口
10 鋳型
14 湯面センサー
16 制御装置
17 湯面センサー
18 磁場発生装置
20 鋳型上端
21 湯面
22 鋳型下端
23 W:リニア移動磁場の印加領域の鋳型高さ方向の幅
24 磁場発生装置のコイルの高さ方向の幅
25 D:浸漬ノズル吐出口上端がリニア移動磁場の印加領域にある場合の、浸漬ノズル吐出口上端からリニア移動磁場の印加領域の上端までの距離
26 浸漬ノズルの吐出孔の吐出方向軸が水平面となす角度α[度]
27 V:浸漬ノズルから吐出する溶湯流がリニア移動磁場の印加領域(ここで印加領域とは、鋳型の厚み方向中心で測った磁束密度の時間平均が最大値をしめす位置を中心として、その最大値の1/2の磁束密度を時間平均値として持つ領域をいう)を通過する際の平均流速
28 磁場発生装置のコイル
29 浸漬ノズルの吐出口
30 鋳型短辺近傍湯面波動の短周期波
31 鋳型短辺近傍湯面波動の長周期波
32 鋳型短辺近傍湯面波動振幅量
33 リニア移動磁場の印加領域の上端
34 リニア移動磁場の印加領域の下端
35 浸漬ノズルの吐出孔の孔径面積S:、吐出孔の吐出方向軸に垂直な断面の形状、すなわち、円、楕円、正方形、矩形、卵形、などの面積である。
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、鋳型内の溶鋼に電磁力を印加して、湯面の波動を抑制する連続鋳造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】通常、連続鋳造においては、溶鋼の酸化防止のために、浸漬ノズルを用いて溶鋼を大気から遮断しつつ鋳型内に注入する。スラブ連続鋳造用の浸漬ノズルは、その下端にて左右に開口する1対の吐出口を有する。これら吐出口から実質的に左右均等に鋳型中央から周辺へ向かって溶鋼が吐出される。
【0003】ところで、連鋳機の生産性を向上させるために、鋳造速度すなわち鋳型内への溶鋼注入速度を増加させることが近年の連続鋳造における課題となっている。しかし、注入速度を1.5m/分を超えて増加させると、鋳型内の溶鋼が激しく擾乱され、湯面上の波長が、浸漬ノズル部をシーソーの支点になるような数mの波長のものから、短い数cmの波長のものまで、種々の波動が発生し、湯面の波動が大きくなる。このような湯面の波動はモールドパウダーの溶鋼中への巻き込みを生じる。また、鋳型内溶鋼の激しい擾乱は、前記の巻き込まれたモールドパウダーや、精錬工程で生じた溶鋼中の非金属介在物が鋳型内で湯面に向かって浮上することを阻害し、結果として鋳型内の溶鋼中からこれらの介在物が取り除かれることを困難にする。このようにして鋳片中に取り込まれた介在物は、最終工程を経た製品の表面や内部の欠陷として顕在化し製品の品位を著しく低下させる。
【0004】上記のような介在物の取り込みを防止するために、鋳型に磁場発生装置を設け、浸漬ノズルから吐出する溶湯流を、鋳型短辺側から浸漬ノズル側へ鋳型幅方向に沿って押し戻す向きに電磁誘導力を印加して溶鋼吐出流の勢いを弱める。これにより、湯面の波動の低減と、鋳型内溶鋼の擾乱の抑制を図る技術が開発されている(例えば、特公昭64−10305)。そして、この湯面変動量を5mm程度以下にすることが、通常操業の目標とされてきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】当技術に係わる磁場発生装置は、前述のようにリニア移動磁場式であるので、その運転に際しては、適当な電流値と、周波数を決めなくてはならない。このうち周波数の決定は従来以下のように行っていた。つまり、溶鋼吐出流の減衰率を高めるには溶鋼吐出流にはたらくローレンツ力を高めなくてはならない。そのためには、溶鋼吐出流と、鋳型の短辺側から浸漬ノズル側に向かって移動する磁束との相対速度を高めなくてはならない。したがって磁束の移動速度、すなわち周波数を高めなくてはならない。しかし、周波数を高めると鋳型枠を構成するステンレス・鋳型銅板および溶鋼の透磁率が低下し、浸漬ノズルからの溶鋼吐出流に有効に作用する磁束密度が低下する。そこで、これら2つの条件を満足する最適な周波数を0.5Hzとした。
【0006】図1は上記の通り、磁場発生装置の電流周波数が0.5Hzの条件で、磁場移動方向を短辺から浸漬ノズルへ向かう向きとして、その電流値を変化させたときの鋳型内湯面の波動の大きさを表したものである。ここで、波動の大きさは、鋳型短辺から40mm、鋳型内長辺から40mmそれぞれ離れた位置で、10分間の湯面波動振幅量の平均値で表した(ここで湯面波動振幅量とは図2に示すように、周期約1〜2秒の短周期波と周期約10秒〜15の長周期波で概ね構成される鋳型短辺近傍湯面変動波形の内、長周期波高が極大・極小を示す時刻にそれぞれ最も近い時刻での短周期波高の極大・極小間の波高差32をいう)。鋳造速度が比較的遅く、鋳型幅の狭い条件(図中の白抜き逆三角および白抜き四角)では磁場発生装置の電流値を増すとともに、湯面波動の抑制効果は大きくなる。しかし鋳造速度が比較的速く、鋳型幅の広い条件(図中の黒三角および黒四角)では、磁場発生装置の電流値を増し過ぎると、湯面波動の抑制効果は小さくなり、却って湯面波動を助長する結果となっている。
【0007】本発明は、上記に代表される問題の解決、つまり「スラブ連続鋳造において浸漬ノズルの下部の二股の溶鋼吐出孔から鋳型内に流入した溶鋼流が鋳型内溶鋼湯面に与える湯面波動を鋳型に設置されたリニア磁界発生装置を用いて電磁制動力により抑制する方法」すなわち、広い鋳造条件で、湯面波動を抑制するための、磁界発生装置の電流周波数の設定と鋳造条件との関係を示す操業方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明に係わる磁場発生装置はリニア移動磁場式であり、磁束は鋳片引き抜き方向と直交する方向に鋳型短片側から浸漬ノズル側へ向かって移動する。あるいは、磁束は浸漬ノズルの下部の二股の溶鋼吐出孔から流入する溶鋼流に向かう角度で、すなわち、鋳片引抜き方向と直交する面から傾いた方向を鋳型短辺側から浸漬ノズル側に向かって移動する。従って、鋳型内のある一点に於ける磁束密度は周期的に変化する。つまり、浸漬ノズルから吐出する溶湯流は、時間的に常に、一定の磁束密度の磁束と交叉するわけではなく、浸漬ノズルから溶湯流のある断片が吐出された時刻の違いによって、リニア移動磁場の印加領域を通過し終わるまでに、その溶湯流の断片が受ける電磁力の大きさの合計量に違いが生じる。
【0009】発明者らは、浸漬ノズルから吐出された溶湯流のある断片がリニア移動磁場の印加領域の通過に要する時間と、浸漬ノズルから吐出された溶湯流のその断片がリニア移動磁場の印加領域を通過中に、磁束がこの溶湯流と交叉する回数は、鋳型幅、鋳型幅と鋳造速度によってきまる時間当たりの溶鋼吐出量、浸漬ノズルからの溶鋼吐出角度、浸漬ノズルの吐出口の浸漬深さ、および磁場発生装置の電流周波数で決まること。そしてこの浸漬ノズルから吐出された溶湯流のその断片がリニア移動磁場の印加領域を通過中に、磁束がこの溶湯流と交叉する回数によって、上記のような「浸漬ノズルから溶湯流のある断片が吐出された時刻の違いによって、リニア移動磁場の印加領域を通過し終わるまでに、その溶湯流の断片が受ける電磁力の大きさの合計量に違いが生じる」現象の程度の大小が決まることを見出した。
【0010】このような現象を小さくするためには、浸漬ノズルから吐出された溶湯流のどの断片も、リニア移動磁場の印加領域を通過中に、移動する磁束とかならず同程度の回数交叉するようにすることである。そのためには2つの方法が考えられる。 第1は、浸漬ノズルから吐出された溶湯流のどの断片も、できるだけ長い時間リニア移動磁場の印加領域内を流れるようにする方法である。そのためには鋳造速度を減じて浸漬ノズルから吐出された溶湯流の流速を減じたり、浸漬ノズルの吐出角度を浅くして、浸漬ノズルから吐出された溶湯流がリニア移動磁場の印加領域の中を磁束の移動方向と平行に流れるようにすることが必要である。しかし、鋳造速度を減じると連鋳機の生産能率が下がるし、浸漬ノズルの吐出角度を浅くすると溶湯流によるモールドパウダーの巻込み等が生じ、鋳片への介在物取り込みをもたらす。したがってこの方法は得策ではない。
【0011】第2は磁場発生装置の電流周波数を増して磁束の移動速度を増すことによって、浸漬ノズルから吐出された溶湯流のどの断片もリニア移動磁場の印加領域を通過中に、なるべく同程度の回数だけ磁束と交叉するようにすることである。この第2の方法によれば、鋳造速度や浸漬ノズルの吐出角度から直接の制約を受けない。但し、磁場発生装置の電流周波数を増すと、透磁率が低下し、浸漬ノズルからの溶鋼吐出流に有効に作用する磁束密度が低下する。したがってこの電流周波数は、浸漬ノズルから吐出された溶湯流のどの断片もリニア移動磁場の印加領域を通過中になるべく同程度の回数だけ磁束と交叉するに必要な最低の周波数であることが望ましい。
【0012】第2の方法は、発明者らが連続鋳造機での実験により発見した方法であるが、磁場発生装置の電流周波数を選択してリニア磁界の移動速度を調整することにより、浸漬ノズルから吐出された溶鋼流のどの断片もリニア磁界の印加領域を通過中に、少なくとも1回、移動磁束(移動磁場)と交差させるに必要な最低の周波数以上の周波数に設定する方法である。すなわち、浸漬ノズルから吐出された溶鋼流のどの断片もリニア磁界の印加領域を通過中に少なくともリニア磁界の1周期以上の磁束密度の制動作用を受けるので、溶鋼流に制動された部分と制動されない部分の偏りができない。選択する周波数が最低の周波数あるいはその整数倍であれば、溶鋼流のどの断片も等しく制動作用を受けるので、鋳型内溶鋼湯面の波動量はさらに減少する。
【0013】この第2の方法によれば、鋳造速度や浸漬ノズルの吐出角度から直接の制約を受けないで湯面波動量を減少させることができる。ただし、磁場発生装置の電流周波数を増すと、透磁率が低下し、鋳型内の磁束密度が低下するので、この電流周波数は以下に述べる方法で求めた必要な最低の周波数あるいはその2倍、3倍などの整数倍の周波数であることが望ましい。この整数倍値は、浸漬ノズルから吐出された溶鋼流の断片に移動磁束が作用する制動力は磁束密度の二乗と周波数との積に比例して大きくなるので、この積の値が最大となる倍数値に選択することが効果的である。発明者らは、この第2の方法に於て必要とされる最低限の電流周波数を、次のようにしてもとめた。
【0014】まず、本発明に係わる磁場発生装置に於て、リニア移動磁場の印加領域を電流周波数F[Hz]で移動する磁束が周期的に通過する時間間隔P[sec ]は、下記(2)式で表せる。
P=1/(N・F) …(2)
ただし、式(2)中の符号Nは、磁場発生装置の極数を意味する。
【0015】一方、図3は磁束の移動方向が鋳片引抜き方向と直交する方向である場合を例示するが、図3に示すように、浸漬ノズルの吐出孔29の下向き角度αが大きいときは、吐出孔29から吐出された溶鋼流の微小断片がリニア移動磁場の印加領域に進入して逸脱するまで、つまり図3のリニア移動磁場の印加領域の下端34に要する時間、すなわち有効制動時間T[sec ]は下記(3)式で表せる。
T=(W−D)/(V・sin θ) …(3)
【0016】他方、浸漬ノズルの吐出孔29の下向き角度αが小さいとき、あるいは浸漬ノズルの吐出孔29から吐出される溶鋼流の方向と磁束の移動方向の相対角度が小さいときは、吐出孔29から吐出される溶湯流がリニア移動磁界の上側、下側に抜け出る以前に鋳型の短辺側の凝固殻に到達する。このような場合は、溶鋼流の断片が浸漬ノズルの吐出孔29を出て、鋳型の短辺側の凝固殻に到達するまでの時間が有効制動時間T[sec ]となり、下記(3)式または(4)式により時間Tをそれぞれ求めることができる。
T=A/(2V・cos θ) …(4)
【0017】ただし、上記(3)式および(4)式において、Vは浸漬ノズルから吐出する溶湯流がリニア移動磁場の印加領域(ここで印加領域とは、鋳型の厚み方向中心で測った磁束密度の時間平均が最大値をしめす位置を中心として、その最大値の1/2の磁束密度を時間平均値として持つ領域をいう。)を通過する際の平均流速[m/sec]、θは浸漬ノズルから吐出する溶湯流がリニア移動磁場の印加領域を通過する際に水平線となす角度[rad ]、Wはリニア移動磁場の印加領域の鋳型高さ方向の幅[m]、Dは浸漬ノズル吐出口上端がリニア移動磁場の印加領域にある場合は、浸漬ノズル吐出口上端からリニア移動磁場の印加領域の上端までの距離[m]、それ以外の場合はD=0[m]、Aは鋳造幅[m]をそれぞれ意味する。
【0018】なお、V,θの値は実際の連続鋳造機で直接測定することは、大変困難である。そこで、発明者らは、1/3スケールの鋳型水モデルで実際の鋳造を再現し、V,θを測定した。但し、V,θは磁場発生装置による吐出流の制動効果が加味されたものではない。
【0019】上記(2),(3),(4)式から、浸漬ノズルから吐出された溶鋼流のどの断片も、磁場の印加領域を通過中に交叉する磁束の合計された量が同一になるために必要な最低の電流周波数Fは、P=Tの関係から下記(5)式または(6)式のように表すことができる。浸漬ノズルから吐出する溶鋼流がリニア移動磁界の下側に抜け出る場合は、下記(5)式を用いる。
F=(V・sin θ)/{N・(W−D)} …(5)
浸漬ノズルから吐出する溶鋼流がリニア移動磁界の上側、下側に抜け出ない場合は、下記(6)式を用いる。
F=(2V・cos θ)/(N・A) …(6)
図3は、上記(5)式中の記号を説明するための模式図で、磁束の移動方向が鋳片引抜き方向と直交する方向である場合を例示する。
【0020】図4は、磁場発生装置の電流周波数を発明者らが連続鋳造機で測定し、測定値から計算して求めた鋳型内での磁束密度の時間平均の最大値との関係である。電流周波数が増すと、鋳型枠を構成するステンレス・鋳型銅板および溶鋼の透磁率が低下し、磁束密度が低下する。それぞれの連続鋳造機の鋳型内の磁束密度値は、実際設備の構造、性能の違いにより、必ずしも図4と同じものとはならない。発明者らの実験によれば、少なくとも1200ガウスの鋳型内の磁束密度値を使用することが浸漬ノズルから吐出された溶鋼流の流速を有効に制動するために必要であるので、図4の例では、2.8Hz以下の電流周波数を選択してリニア磁界の移動速度を調整する。
【0021】この(5)式あるいは(6)式で決まる値を最低値として、また最高値を、透磁率の低下が浸漬ノズルからの溶鋼吐出流に有効に作用する磁束密度の著しい低下をきたさないような値とするような電流周波数の範囲において磁場発生装置を運転することが、鋳造速度が比較的速く鋳型幅の広い条件においても、鋳型内の湯面波動をよく抑制するための、磁場発生装置の電流周波数の設定方法であることを発見者らは見出したわけである。
【0022】さらに、発明者らは、V,θの値が実際の連続鋳造操業で直接測定できないので、必要な最低の周波数あるいはその整数倍の周波数が直ちに求められないことの不便を解決する方法を見出した。
【0023】連続鋳造の鋳造幅をA[m]、鋳造厚みをB[m]、鋳造速度をC[m/秒]、浸漬ノズルの吐出孔の孔径面積をS[m2 ]として、これらの値に基づき下記(6)式または(7)式により算出した有効制動パラメ−タEを用いて、鋳造条件の広い範囲、すなわち、鋳造幅を0.7 〜2.6 m、鋳造厚みを0.1 〜0.3 m、鋳造速度を毎分0.6 〜5.0 m、浸漬ノズルの溶鋼吐出角度αを下向き60°から上向き15°までとし、鋳造能力を最大15トン/min ・ストランドまでの操業に対し、前述の水モデルでの実験と連続鋳造機での鋳造の実験を行った。
【0024】その結果、有効制動パラメ−タEと浸漬ノズルの溶鋼吐出角度αおよび求める必要な最低の周波数、あるいはその整数倍の周波数Fとの関係が、図13および図14に示すように整理されるという知見を得た。有効制動パラメ−タEは、浸漬ノズルの溶鋼吐出角度αに応じて下記(6)式または(7)式により求まる。
−25°≧α≧−60°のときは、 E=A・B・C/{N・(W−D)・S} …(6)
+15°≧α>−25°のときは、 E=4・B・C・(cos α)2 /(N・A・S) …(7)
【0025】ただし、Aは連続鋳造の鋳造幅(m)、Bは鋳造厚み(m)、Cは鋳造速度(m/秒)、Sは浸漬ノズルの吐出孔の孔径面積(m2 )をそれぞれ表わす。なお、孔径面積Sは吐出孔の吐出方向軸に直交する断面の面積に相当し、この断面形状は円、楕円、正方形、矩形、卵形、等をなす。図13において、浸漬ノズルの溶鋼吐出孔の角度αに応じて、図中に示す各直線は下式(8)で表わされる。
F=jE+k …(8)
【0026】ただし、上記(8)式において、−35°≧α≧−60°のときはj=0.30,k=0、−25°≧α>−35°のときはj=0.28,k=0、+15°≧α>−25°のときは、j=0.26,k=0とする。
【0027】
【作用】本発明は、スラブ連続鋳造の鋳造条件の広い範囲において、鋳型内の湯面波動をよく抑制するために、鋳型に設置されたリニア磁界発生装置を使用した電磁制動力を用いる方法、鋳造条件に応じた最適の周波数を明らかにしている。さらに、鋳造条件から有効制動パラメ−タEを計算することにより、浸漬ノズルの溶鋼吐出角度αに応じて、最適の周波数を選択する手法を提供する。
【0028】本発明の開示した手法で選択した電流周波数で運転するリニア磁界発生装置の移動磁束は浸漬ノズルの下部の二股の溶鋼吐出孔から鋳型内に流入した溶鋼流のどの断片にも乱れのない電磁制動力を与えるので、溶鋼流が鋳型内の溶鋼湯面に与える湯面波動を良く抑制する。
【0029】鋳造中に鋳型幅を変更して鋳造を継続する連続鋳造の操業においても、本発明を用いれば、広い鋳造幅から狭い鋳造幅まで希望の鋳造速度を維持していながら、安定した鋳造と安定したスラブの品質を容易に得ることができる。
【0030】
【実施例】以下、添付の図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
【0031】図5は、この発明にかかる連続鋳造方法に使用された湯面制御装置を示す縦断面図である。連続鋳造の鋳型10の上部にタンディッシュ2が設けられ、図示しない取鍋から溶鋼の供給を受けるようになっている。タンディッシュ2は、耐火物3で内張され、外側が鉄皮4で覆われている。スライディングノズル5がタンディッシュ2の底部に設けられている。スライディングノズル5は鉄皮4に固定された固定プレート6及びこれに対して摺動するスライディングプレート7を有しており、スライディングプレート7を摺動させることによりノズル5が開閉するようになっている。
【0032】浸漬ノズル8が、スライディングプレート7の下面に取り付けられている。浸漬ノズル8の下端部は鋳型10内の溶鋼1に浸漬され、その左右1対の吐出口9から溶鋼1が吐出するようになっている。
【0033】湯面センサー14が、鋳型内の湯面に対面配置され、湯面の位置及びその変化が検出されるようになっている。湯面センサー14はスライディングノズル開度制御装置16の監視入力側に接続されている。また湯面センサー14とは別に、鋳型短辺近傍に湯面センサー17が両短辺側に1個ずつ計2個取り付けられている。この湯面センサー17は、スライディングノズル開度制御装置16には接続されておらず、本発明に係わる磁場発生装置の湯面波動抑制効果を観察するためのものである。また、鋳型の両側の長辺面銅板の背後に磁場発生装置18が取付けられている。表1は本発明の実施を試みた鋳造に供した溶鋼の成分である。表2は本発明の実施を試みた鋳造の操業条件である。
【0034】表3は本発明の実施を試みた鋳造に於て使用した、本発明に係わる磁場発生装置の仕様である。ただし記号Bは鋳型の厚み方向中心で測った磁束密度の時間平均が最大値を示す点での時間平均値における磁束密度を示す。記号Wは鋳型の厚み方向中心で測った磁束密度の時間平均が最大値をしめす位置を中心として、その最大値の1/2の磁束密度を時間平均値として持つ領域の鋳型高さ方向の幅を示す。図6は、本発明に係わる磁場発生装置のコイルの配置図である。
(第1実施例)次に上記磁場発生装置を用いて鋳型内の湯面を制御する方法について、表2に掲げた鋳造の操業条件で説明する。
【0035】最初に、表2に掲げた鋳造の操業条件でのVおよびθを、1/3スケールの鋳型水モデルで測定し、測定値を実機スケールに換算した結果、V=1.15m/sec,θ=0.70rad という値を得た。そこで、浸漬ノズルから吐出された溶湯流の微小断片がリニア移動磁場の印加領域に進入して逸脱するまでに要する有効制動時間T[sec ]は、(3)式を用いた計算により、 T=0.56 (sec ) …(9)
【0036】と算出される。従って、鋳造速度が比較的速く鋳型幅の広い条件においても、鋳型内の湯面波動をよく抑制するためには、本発明の係わる磁場発生装置に於て、リニア移動磁場の印加領域を磁束が周期的に通過する時間間隔P[sec ]を、(9)式で求めたT以下にする必要がある。その時の磁場発生装置の電流周波数Fは(5)式より、 F=0.89 (Hz) …(10)
以上にする必要がある。
【0037】上記の結果を用いて、本発明に係わる磁場発生装置に於て、鋳造速度が比較的速く鋳型幅の広い条件で鋳型内の湯面波動を抑制する連鋳操業を行った結果が図7である。
【0038】図7の横軸は時刻を表している。紙面の右から左に向かって時間が流れている。縦軸は図5の湯面センサー17で測定した鋳型短辺近傍の湯面高さを表している。図7に於ける操業条件は第2表の通りである。図7は本発明に係わる磁場発生装置を運転しない場合の例であり、鋳型短辺近傍の湯面は大きく波動していることがわかる。この湯面の変動を抑制するために、以下のように磁場発生装置を運転した。
【0039】また、図8は、電流周波数0.5Hz、電流値1080Aで磁場発生装置を運転した場合である。この周波数は(10)式で求めた『鋳造速度が比較的速く鋳型幅の広い条件においても、鋳型内の湯面波動をよく抑制するための周波数の下限F』よりも低い。実際、図8R>8に見られるように、鋳型短辺近傍湯面波動の抑制効果はほとんど無く、却って鋳型短辺近傍湯面波動を助長している。
【0040】次に、図9は、電流周波数1.0Hz、電流値1080Aで磁場発生装置を運転した場合である。この周波数は(10)式で求めた『鋳造速度が比較的速く鋳型幅の広い条件においても、鋳型内の湯面波動をよく抑制するための周波数の下限F』よりも高い。実際、図9R>9に見られるように、鋳型短辺近傍湯面波動の抑制効果が大きいことがわかる。
【0041】さらに、図10は、電流周波数2.0Hz、電流値1080Aで磁場発生装置を運転した場合である。この周波数は(10)式で求めた『鋳造速度が比較的速く鋳型幅の広い条件においても、鋳型内の湯面波動をよく抑制するための周波数の下限F』よりも高い。実際、図10に見られるように、鋳型短辺近傍湯面波動の抑制効果が大きいことがわかる。
【0042】図11は、図7乃至図10に示した結果をまとめて、横軸に電流周波数をとり、縦軸に鋳型短辺近傍の湯面波動量をとって表したグラフ図である。上記(10)式で求めた鋳型内の湯面変動を抑制するための周波数下限値(0.89Hz)より大きい周波数で湯面波動が抑制されている。
(第2実施例)
【0043】図12は磁場発生装置の電流値を変化させた時の、鋳型短辺近傍湯面波動の抑制効果の変化を表したものである。図12に示す結果を得るための鋳造条件は、表2に示す通りである。図中にて、黒丸および黒四角は、鋳造速度が比較的遅く鋳型幅の狭い条件での例であり、磁場発生装置の周波数が0.5Hz,1.0Hzの両方において、電流値に見合った鋳型短辺近傍湯面波動の抑制効果が得られている。この鋳造条件では、V=0.67m/sec,θ=0.43rad ,W=0.48mで、(4)式で求められる下限の電流周波数Fは0.43Hz、有効制動パラメ−タEは1.2である。一方、図中にて白丸および白四角は、それぞれ図8、図9と同じデータを示し、鋳造速度が比較的速く鋳型幅の広い鋳造条件で、有効制動パラメ−タEは2.6である。このうち、白丸は下限の電流周波数F=0.89Hzよりも低い電流周波数=0.5Hzの場合であり、電流値を増すと却って鋳型短辺近傍湯面波動を助長する結果となることがわかる。これに対して、白四角は下限の電流周波数F=0.89Hzよりも高い電流周波数=1.0Hzの場合であり、電流値に見合った鋳型短辺近傍湯面波動の抑制効果が得られることがわかる。
【0044】図13は、鋳造幅、鋳造厚み、鋳造速度、浸漬ノズルの種類などの鋳造条件を広く変えて、鋳型内の湯面波動を抑制するための電流周波数の下限値を連続鋳造機において鋳造し、観察して求めた結果を示す。電流周波数は縦軸に、鋳造条件は横軸の有効制動パラメ−タEおよび図中の浸漬ノズルの吐出孔の吐出方向軸が水平面となす角度αで表わされている。
【0045】浸漬ノズルから吐出する溶鋼流がリニア移動磁界の下側に抜け出る場合、すなわち、−25°≧α≧−60°では、有効制動パラメ−タE=A・B・C/{N・(W−D)・S}で表わされる。一方、浸漬ノズルから吐出する溶鋼流がリニア移動磁界の上側、下側に抜け出ない場合、すなわち、+15°≧α>−25°では、有効制動パラメ−タE=4・B・C・(cos α)2 /(N・A・S)で表有効制動パラメ−タEの小さな値1〜2は鋳造幅が比較的狭いかあるいは、鋳造速度が遅い鋳造条件を代表し、湯面波動を抑制するための電流周波数の下限値を示す線は0.8Hz以下にあるが、鋳造幅が広くあるいは、鋳造速度が速くなるに従って、パラメ−タEの値が3〜4に増加するとともに、湯面波動を抑制するための電流周波数の下限値は右上がりの直線で大きくなり、下限の電流周波数Fが高くなることがわかった。ただし、透磁率低下の許容し得る電流周波数の上限は鋳造幅や鋳造速度に関係なく一定である。
【0046】図13に図12に示された鋳造例を併せて記入した。図13中の黒丸、黒四角、白丸、白四角は、図12の黒丸、黒四角、白丸、白四角とそれぞれ同じ意味である。白丸で表わされる鋳造幅1550mm、鋳造速度2.0m/分の例は浸漬ノズルの吐出孔の角度αが45度で示される下限の電流周波数の直線より下側に位置するので、浸漬ノズルから吐出された溶鋼流の断片に電磁制動力を受けた部分と、これを受けない部分の偏りが生じたため、鋳型内の湯面波動量が大きくなる結果であった。黒四角で表わされる鋳造幅950mm、鋳造速度1.6m/分の例は下限の電流周波数値は0.43Hzであるが、2倍の1.0Hzの電流周波数を使用している。
【0047】浸漬ノズルから吐出する溶鋼流が、リニア移動磁界の上側、下側に抜け出ない場合は−25°≧α≧−60°の鋳造例を図13に併せて記入した。図中の二重丸は、鋳造幅2100mm、鋳造厚み250mm 、鋳造速度毎分2mを浸漬ノズルの溶鋼吐出角度αが下向き15°で鋳造した例で、有効制動パラメ−タEは1.1 の値、電流周波数の下限値は0.40Hzである。この基準の電流周波数でも湯面波動の抑制効果はあったが、周波数をさらに増加しても磁束密度の二乗と周波数の積の値の増加が期待できる範囲であるので、3倍の周波数の1.2Hz を用いて鋳造したところ、湯面波動はさらに良く抑制された。同じく図中の白三角は、鋳造幅700mm 、鋳造厚み250mm 、鋳造速度毎分3mと毎分1.5mを浸漬ノズルの溶鋼吐出角度αが下向き5°で鋳造した例で、有効制動パラメ−タEは5.0 と2.5 の値で、電流周波数の下限値は1.30Hzと0.65Hzである。鋳造速度毎分3mでは2倍の周波数2.60Hz、鋳造速度毎分1.5mでは0.65Hzで湯面波動を良く抑制できた。
【0048】図14にはこの関係を取り上げて、下限の電流周波数の直線、その整数倍の電流周波数を表わす直線と共に示した。黒四角の例では1.0Hzの電流周波数を使用しているので、浸漬ノズルから吐出された溶鋼流の断片はリニア移動磁場の印加領域を通過中、どの断片も等しく2回電磁制動力を受けるので、鋳型内の湯面波動量は満足すべき程度に抑制された。このように、周波数の選択は下限の電流周波数に限らず、下限の電流周波数以上の周波数、下限の電流周波数の2倍、3倍の周波数でも、透磁率低下の許容し得る電流周波数の上限以下であれば、鋳型内の湯面波動の抑止の効果を得ることができる。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【発明の効果】以上のように、この発明における電流周波数の範囲内で、磁場発生装置を運転することにより、鋳造速度が比較的速く鋳型幅の広い条件においても、鋳型内の湯面波動をよく抑制することができる。そして、鋳型内の湯面の波動によって生じるモールドパウダーの溶鋼中への巻き込みを防止する。また、鋳型内の湯面の波動と共に生じる鋳型内溶鋼の激しい擾乱を防止するので、巻き込まれたモールドパウダーや、精練工程で生じた溶鋼中の非金属介在物が鋳型内で湯面に向かって浮上することを妨げることが無く、結果として鋳型内の溶鋼中からこれらの介在物が取り除かれることを容易にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁場発生装置の電流周波数が0.5Hzの条件で、その電流値を変化させたときの鋳型内短辺近傍湯面の波動の大きさを表わすグラフ図である。
【図2】湯面波動振幅量の定義を説明するためのグラフ図である。
【図3】(4)式中の記号を説明するために、鋳型の一部を長辺面側から見た模式図である。
【図4】磁場発生装置の電流周波数と計算によって求めた鋳型内での磁束密度の時間平均の最大値との関係を示すグラフ図である。
【図5】この発明にかかる連続鋳造方法に使用された湯面制御装置を示す縦断面図である。
【図6】本発明の実施例に係る磁場発生装置のコイルを鋳型上面側から見て示す配線図である。
【図7】本発明の実施例に係る磁場発生装置に於て、鋳造速度が比較的速く鋳型幅の広い条件で鋳型内短辺近傍の湯面波動を抑制する連鋳操業を行った結果をそれぞれ示すグラフ図である。
【図8】本発明の実施例に係る磁場発生装置に於て、鋳造速度が比較的速く鋳型幅の広い条件で鋳型内短辺近傍の湯面波動を抑制する連鋳操業を行った結果をそれぞれ示すグラフ図である。
【図9】本発明の実施例に係る磁場発生装置に於て、鋳造速度が比較的速く鋳型幅の広い条件で鋳型内短辺近傍の湯面波動を抑制する連鋳操業を行った結果をそれぞれ示すグラフ図である。
【図10】本発明の実施例に係る磁場発生装置に於て、鋳造速度が比較的速く鋳型幅の広い条件で鋳型内短辺近傍の湯面波動を抑制する連鋳操業を行った結果をそれぞれ示すグラフ図である。
【図11】図6の結果を横軸に電流周波数をとり、縦軸に鋳型短辺近傍の湯面波動量をとって表わすグラフ図である。
【図12】磁場発生装置の電流値を変化させた時の、鋳型短辺近傍湯面波動の抑制効果の変化を表わすグラフ図である。
【図13】鋳型内の湯面波動を抑制するための電流周波数の下限値、鋳造条件から算出した有効制動パラメ−タEおよび浸漬ノズルの吐出孔の角度αの関係を示す実験結果を示すグラフ図。
【図14】鋳型内の湯面波動を抑制するための電流周波数の下限値を示す直線、その整数倍の電流周波数を表わす直線と実験例を示すグラフ図である。
【符号の説明】
2 タンディッシュ
3 耐火物
4 鉄皮
5 スライディングノズル、
6 固定プレート
7 スライディングプレート
8 浸漬ノズル
9 吐出口
10 鋳型
14 湯面センサー
16 制御装置
17 湯面センサー
18 磁場発生装置
20 鋳型上端
21 湯面
22 鋳型下端
23 W:リニア移動磁場の印加領域の鋳型高さ方向の幅
24 磁場発生装置のコイルの高さ方向の幅
25 D:浸漬ノズル吐出口上端がリニア移動磁場の印加領域にある場合の、浸漬ノズル吐出口上端からリニア移動磁場の印加領域の上端までの距離
26 浸漬ノズルの吐出孔の吐出方向軸が水平面となす角度α[度]
27 V:浸漬ノズルから吐出する溶湯流がリニア移動磁場の印加領域(ここで印加領域とは、鋳型の厚み方向中心で測った磁束密度の時間平均が最大値をしめす位置を中心として、その最大値の1/2の磁束密度を時間平均値として持つ領域をいう)を通過する際の平均流速
28 磁場発生装置のコイル
29 浸漬ノズルの吐出口
30 鋳型短辺近傍湯面波動の短周期波
31 鋳型短辺近傍湯面波動の長周期波
32 鋳型短辺近傍湯面波動振幅量
33 リニア移動磁場の印加領域の上端
34 リニア移動磁場の印加領域の下端
35 浸漬ノズルの吐出孔の孔径面積S:、吐出孔の吐出方向軸に垂直な断面の形状、すなわち、円、楕円、正方形、矩形、卵形、などの面積である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 鋳型内の溶鋼流を減速調整するリニア移動磁場型磁場発生装置を用い、磁束の分布がモールドの中心の浸漬ノズル吐出孔に対称で、磁場の移動方向が、鋳型の2つの短辺からモールド中心の浸漬ノズルに向かう方向で、リニア移動磁場の印加領域を電流周波数Fで移動する磁場が周期的に通過する時間間隔Pの上限を、リニア移動磁場型磁場発生装置の発生する移動磁場が、浸漬ノズルから吐出された溶鋼流のどの断片もリニア磁界の印加領域を通過中に、少なくとも1回、移動磁場と交差させるに必要な最低の電流周波数となる、リニア移動磁場の印加領域を磁場が周期的に通過する時間間隔以下とし、リニア移動磁場の印加領域を電流周波数Fで移動する磁場が周期的に通過する時間間隔Pの下限を、リニア移動磁場型磁場発生装置の発生する移動磁場が、その装置を構成するモールド水冷凾部材とモールド銅板と溶鋼とによる減衰後の作用域において、溶鋼に1200ガウスの磁束密度の磁場が付与される電流周波数となる、リニア移動磁場の印加領域を磁場が周期的に通過する時間間隔以上とする、ことを特徴とする鋼のスラブ用鋳片の製造方法。
【請求項2】 リニア移動磁場の印加領域を電流周波数Fで移動する磁場が周期的に通過する時間間隔Pの上限の決定法において、リニア移動磁場の電流周波数Fを下記(イ)式または(ロ)式で求められる値以上とし、かつ、電流値を所定の範囲でそれぞれ調節することにより鋳型内で浸漬ノズルの溶鋼の吐出流に前記電磁制動力を生じさせることを特徴とする請求項1記載の鋼のスラブ用鋳片の製造方法。浸漬ノズルから吐出される溶鋼流がリニア移動磁界の下側に抜け出る場合は、下記(イ)式により電流周波数Fを求める、 F=(V・sin θ)/{N・(W−D)} …(イ)
浸漬ノズルから吐出される溶鋼流がリニア移動磁界の上側または下側に抜け出ない場合は、下記(ロ)式により電流周波数Fを求める、 F=(2V・cos θ)/(N・A) …(ロ)
ここで、上記(イ)式および(ロ)式において、Fは、リニア移動磁場を発生させる電流周波数[Hz]、Vは、浸漬ノズルから吐出する溶湯流がリニア移動磁場の印加領域を通過する際の平均流速[m/秒]、θは、浸漬ノズルから吐出する溶湯流がリニア移動磁場の印加領域を通過する際に、水平線となす角度[rad ]、Wは、リニア移動磁場の印加領域の鋳型高さ方向の幅[m]、Dは、浸漬ノズル吐出口上端がリニア移動磁場の印加領域にある場合は、浸漬ノズル吐出口上端からリニア移動磁場の印加領域の上端までの距離[m]に相当し、それ以外はD=0[m]、Nは、磁場発生装置の極数、Aは鋳造幅、をそれぞれ表わす。
【請求項3】 リニア移動磁場の印加領域を電流周波数Fで移動する磁場が周期的に通過する時間間隔Pの電流周波数の下限を、下記(ハ)式または(ニ)式で求められる有効制動パラメータEと、浸漬ノズルの吐出孔の吐出方向軸が水平面となす角度αと、リニア移動磁場の電流周波数Fと、が下記(ホ)式の関係にあり、この(ホ)式の関係から求められる電流周波数Fの値以上の値とし、かつ、電流値を所定の範囲でそれぞれ調節することにより鋳型内で浸漬ノズルの溶鋼の吐出流に前記電磁制動力を生じさせることを特徴とする請求項1記載の鋼のスラブ用鋳片の製造方法。−25°≧α≧−60°のときは、下記(ハ)式により有効制動パラメータEを求める、 E=A・B・C/{N・(W−D)・S} …(ハ)
+15°≧α>−25°のときは、下記(ニ)式により有効制動パラメータEを求める、 E=4・A・B・C・(cos α)2 /(N・A・S)…(ニ)
ここで、上記(ハ)式および(ニ)式において、Aは連続鋳造の鋳造幅(m)、Bは鋳造厚み(m)、Cは鋳造速度(m/秒)、Sは浸漬ノズルの吐出孔の孔径面積(m2 )をそれぞれ表わす、なお、孔径面積Sは吐出孔の吐出方向軸に直交する断面の面積に相当し、この断面形状は円、楕円、正方形、矩形、卵形、等をなす、電流周波数Fは下記(ホ)式により求める、 F=jE+k …(ホ)
ここで、上記(ホ)式において、−35°≧α≧−60°のときは、j=0.30,k=0−25°≧α>−35°のときは、j=0.28,k=0+15°≧α>−25°のときは、j=0.26,k=0とする。
【請求項4】 リニア移動磁場の印加領域を電流周波数Fで移動する磁場が周期的に通過する時間間隔Pの電流周波数の下限を、下記(ハ)式または(ニ)式で求められる有効制動パラメータEと、浸漬ノズルの吐出孔の吐出方向軸が水平面となす角度αと、リニア移動磁場の電流周波数Fと、が下記(ホ)式の関係にあり、この(ホ)式の関係から求められる最低の電流周波数Fの値またはその整数倍の値とし、かつ、電流値を所定の範囲でそれぞれ調節することにより鋳型内で浸漬ノズルの溶鋼の吐出流に前記電磁制動力を生じさせることを特徴とする請求項1記載の鋼のスラブ用鋳片の製造方法。−25°≧α≧−60°のときは、下記(ハ)式により有効制動パラメータEを求める、 E=A・B・C/{N・(W−D)・S} …(ハ)
+15°≧α>−25°のときは、下記(ニ)式により有効制動パラメータEを求める、 E=4・A・B・C・(cos α)2 /(N・A・S)…(ニ)
ここで、上記(ハ)式および(ニ)式において、Aは連続鋳造の鋳造幅(m)、Bは鋳造厚み(m)、Cは鋳造速度(m/秒)、Sは浸漬ノズルの吐出孔の孔径面積(m2 )をそれぞれ表わす、なお、孔径面積Sは吐出孔の吐出方向軸に直交する断面の面積に相当し、この断面形状は円、楕円、正方形、矩形、卵形、等をなす、電流周波数Fは下記(ホ)式により求める、 F=jE+k …(ホ)
ここで、上記(ホ)式において、−35°≧α≧−60°のときは、j=0.30,k=0−25°≧α>−35°のときは、j=0.28,k=0+15°≧α>−25°のときは、j=0.26,k=0とする。
【請求項1】 鋳型内の溶鋼流を減速調整するリニア移動磁場型磁場発生装置を用い、磁束の分布がモールドの中心の浸漬ノズル吐出孔に対称で、磁場の移動方向が、鋳型の2つの短辺からモールド中心の浸漬ノズルに向かう方向で、リニア移動磁場の印加領域を電流周波数Fで移動する磁場が周期的に通過する時間間隔Pの上限を、リニア移動磁場型磁場発生装置の発生する移動磁場が、浸漬ノズルから吐出された溶鋼流のどの断片もリニア磁界の印加領域を通過中に、少なくとも1回、移動磁場と交差させるに必要な最低の電流周波数となる、リニア移動磁場の印加領域を磁場が周期的に通過する時間間隔以下とし、リニア移動磁場の印加領域を電流周波数Fで移動する磁場が周期的に通過する時間間隔Pの下限を、リニア移動磁場型磁場発生装置の発生する移動磁場が、その装置を構成するモールド水冷凾部材とモールド銅板と溶鋼とによる減衰後の作用域において、溶鋼に1200ガウスの磁束密度の磁場が付与される電流周波数となる、リニア移動磁場の印加領域を磁場が周期的に通過する時間間隔以上とする、ことを特徴とする鋼のスラブ用鋳片の製造方法。
【請求項2】 リニア移動磁場の印加領域を電流周波数Fで移動する磁場が周期的に通過する時間間隔Pの上限の決定法において、リニア移動磁場の電流周波数Fを下記(イ)式または(ロ)式で求められる値以上とし、かつ、電流値を所定の範囲でそれぞれ調節することにより鋳型内で浸漬ノズルの溶鋼の吐出流に前記電磁制動力を生じさせることを特徴とする請求項1記載の鋼のスラブ用鋳片の製造方法。浸漬ノズルから吐出される溶鋼流がリニア移動磁界の下側に抜け出る場合は、下記(イ)式により電流周波数Fを求める、 F=(V・sin θ)/{N・(W−D)} …(イ)
浸漬ノズルから吐出される溶鋼流がリニア移動磁界の上側または下側に抜け出ない場合は、下記(ロ)式により電流周波数Fを求める、 F=(2V・cos θ)/(N・A) …(ロ)
ここで、上記(イ)式および(ロ)式において、Fは、リニア移動磁場を発生させる電流周波数[Hz]、Vは、浸漬ノズルから吐出する溶湯流がリニア移動磁場の印加領域を通過する際の平均流速[m/秒]、θは、浸漬ノズルから吐出する溶湯流がリニア移動磁場の印加領域を通過する際に、水平線となす角度[rad ]、Wは、リニア移動磁場の印加領域の鋳型高さ方向の幅[m]、Dは、浸漬ノズル吐出口上端がリニア移動磁場の印加領域にある場合は、浸漬ノズル吐出口上端からリニア移動磁場の印加領域の上端までの距離[m]に相当し、それ以外はD=0[m]、Nは、磁場発生装置の極数、Aは鋳造幅、をそれぞれ表わす。
【請求項3】 リニア移動磁場の印加領域を電流周波数Fで移動する磁場が周期的に通過する時間間隔Pの電流周波数の下限を、下記(ハ)式または(ニ)式で求められる有効制動パラメータEと、浸漬ノズルの吐出孔の吐出方向軸が水平面となす角度αと、リニア移動磁場の電流周波数Fと、が下記(ホ)式の関係にあり、この(ホ)式の関係から求められる電流周波数Fの値以上の値とし、かつ、電流値を所定の範囲でそれぞれ調節することにより鋳型内で浸漬ノズルの溶鋼の吐出流に前記電磁制動力を生じさせることを特徴とする請求項1記載の鋼のスラブ用鋳片の製造方法。−25°≧α≧−60°のときは、下記(ハ)式により有効制動パラメータEを求める、 E=A・B・C/{N・(W−D)・S} …(ハ)
+15°≧α>−25°のときは、下記(ニ)式により有効制動パラメータEを求める、 E=4・A・B・C・(cos α)2 /(N・A・S)…(ニ)
ここで、上記(ハ)式および(ニ)式において、Aは連続鋳造の鋳造幅(m)、Bは鋳造厚み(m)、Cは鋳造速度(m/秒)、Sは浸漬ノズルの吐出孔の孔径面積(m2 )をそれぞれ表わす、なお、孔径面積Sは吐出孔の吐出方向軸に直交する断面の面積に相当し、この断面形状は円、楕円、正方形、矩形、卵形、等をなす、電流周波数Fは下記(ホ)式により求める、 F=jE+k …(ホ)
ここで、上記(ホ)式において、−35°≧α≧−60°のときは、j=0.30,k=0−25°≧α>−35°のときは、j=0.28,k=0+15°≧α>−25°のときは、j=0.26,k=0とする。
【請求項4】 リニア移動磁場の印加領域を電流周波数Fで移動する磁場が周期的に通過する時間間隔Pの電流周波数の下限を、下記(ハ)式または(ニ)式で求められる有効制動パラメータEと、浸漬ノズルの吐出孔の吐出方向軸が水平面となす角度αと、リニア移動磁場の電流周波数Fと、が下記(ホ)式の関係にあり、この(ホ)式の関係から求められる最低の電流周波数Fの値またはその整数倍の値とし、かつ、電流値を所定の範囲でそれぞれ調節することにより鋳型内で浸漬ノズルの溶鋼の吐出流に前記電磁制動力を生じさせることを特徴とする請求項1記載の鋼のスラブ用鋳片の製造方法。−25°≧α≧−60°のときは、下記(ハ)式により有効制動パラメータEを求める、 E=A・B・C/{N・(W−D)・S} …(ハ)
+15°≧α>−25°のときは、下記(ニ)式により有効制動パラメータEを求める、 E=4・A・B・C・(cos α)2 /(N・A・S)…(ニ)
ここで、上記(ハ)式および(ニ)式において、Aは連続鋳造の鋳造幅(m)、Bは鋳造厚み(m)、Cは鋳造速度(m/秒)、Sは浸漬ノズルの吐出孔の孔径面積(m2 )をそれぞれ表わす、なお、孔径面積Sは吐出孔の吐出方向軸に直交する断面の面積に相当し、この断面形状は円、楕円、正方形、矩形、卵形、等をなす、電流周波数Fは下記(ホ)式により求める、 F=jE+k …(ホ)
ここで、上記(ホ)式において、−35°≧α≧−60°のときは、j=0.30,k=0−25°≧α>−35°のときは、j=0.28,k=0+15°≧α>−25°のときは、j=0.26,k=0とする。
【図3】
【図5】
【図1】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図4】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図5】
【図1】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図4】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【特許番号】第2611594号
【登録日】平成9年(1997)2月27日
【発行日】平成9年(1997)5月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−345395
【出願日】平成3年(1991)12月26日
【公開番号】特開平5−23804
【公開日】平成5年(1993)2月2日
【出願人】(000004123)日本鋼管株式会社 (1,044)
【参考文献】
【文献】特開 平3−57542(JP,A)
【文献】特開 平2−89544(JP,A)
【文献】特開 昭57−199549(JP,A)
【文献】特開 昭59−104258(JP,A)
【登録日】平成9年(1997)2月27日
【発行日】平成9年(1997)5月21日
【国際特許分類】
【出願日】平成3年(1991)12月26日
【公開番号】特開平5−23804
【公開日】平成5年(1993)2月2日
【出願人】(000004123)日本鋼管株式会社 (1,044)
【参考文献】
【文献】特開 平3−57542(JP,A)
【文献】特開 平2−89544(JP,A)
【文献】特開 昭57−199549(JP,A)
【文献】特開 昭59−104258(JP,A)
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