説明

鋼板加飾用紫外線硬化型インクおよび鋼板加飾方法および加飾された化粧鋼板

【課題】 本発明は、低汚染であって耐候性に優れる模様が形成された化粧鋼板を得ることのできる鋼板加飾用紫外線硬化型インクを提供することを目的とする。
【解決手段】 鋼板加飾用紫外線硬化型インクであって、硬化膜の粘着性がJIS K5600−3−6の規定において不粘着であることを特徴とする鋼板加飾用紫外線硬化型インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板加飾用紫外線硬化型インクおよび鋼板加飾方法および加飾された化粧鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から建築板に用いられる鋼板の加飾に関して様々な技術が提案されている。特にインクジェット記録方式を用いた加飾は、多色の繊細な模様を形成することが可能であり、高級な鋼板の加飾方法として着目されている。
特許文献1では、模様となる印刷層の外層に特定のクリヤー塗膜を設けることで長期間曝露した場合にも、塗膜の割れ、剥離等を防止することができ、さらに塗膜の変退色や光沢の低下を防止できる塗装金属板が提案されている。しかしながら、クリヤー塗膜を設けたとしても屋外での使用では塗装金属板が汚染物質で汚れてしまうおそれがある。一般に汚染物質はホコリ等の周りにばい煙などの油成分が付着したものであり、この汚染物質が模様部表面に付着し落ち難くなるといった課題があった。また、印刷層の外層にクリヤー塗膜(トップコート層)を設ける工程が必要となり、コストが増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-149584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、鋼板にトップコート等の特別な処理を行わずして、低汚染であり、耐候性に優れる模様を形成することができる鋼板加飾用紫外線硬化型インク、鋼板加飾方法および化粧鋼板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決したものであり、すなわち下記の特徴を有する。
(1)鋼板加飾用紫外線硬化型インクであって、硬化膜の粘着性がJIS K5600−3−6の規定において不粘着である鋼板加飾用紫外線硬化型インク。
(2)(1)のインクを鋼板に付与した後、紫外線を照射することによりインクを硬化させ模様を形成させる鋼板加飾方法。
(3)紫外線硬化型インクの硬化膜からなる塗膜によって表面が加飾された化粧鋼板であって、該塗膜の粘着性がJIS K5600−3−6の規定において不粘着である加飾された化粧鋼板。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、鋼板にトップコート等の特別な処理を行わずして、低汚染であり、耐候性に優れる模様で加飾された化粧鋼板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ライン型のインクジェット記録装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施するための実施形態について説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に示す構成の一部は、省略し又は他の構成等に置換してもよい。また、他の構成を含むようにしてもよい。
【0009】
本発明の鋼板加飾用紫外線硬化型インクは、硬化膜の粘着性がJIS K5600−3−6の規定において不粘着である。本発明の紫外線硬化型インクを鋼板の加飾に用いた際、鋼板表面に滑らかな、かつ不粘着の樹脂膜が色柄となって付与される。そのため、鋼板表面に好適な模様を付着することができ、模様部の樹脂膜表面に汚れが付着し難く、仮に汚れが付着したとしても雨や水などで汚れを容易に洗い流すことができる。
【0010】
硬化膜の粘着性を最適に調整するにはインクの材料の組み合わせを選択し、各材料を適切な添加量にしなければならない。主に反応性モノマーや反応性オリゴマーの添加量を調整することにより、粘着性を調整できる。
【0011】
本発明の紫外線硬化型インクは、顔料、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマー、光重合開始剤を含み、さらに必要に応じて添加剤等を含む。インク色は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックが用いられる。なお、この他、ライトイエロー、ライトマゼンタ、ライトシアン、ホワイト、グレー、クリア(透明)色等を適宜用いてもよい。ライトイエロー、ライトマゼンタ、ライトシアンの紫外線硬化型インクは、イエロー、マゼンタ、シアンの紫外線硬化型インクに対し淡色、具体的には濃度比が例えば10〜30%のインクである。
【0012】
ここで、顔料濃度は、紫外線硬化型インク100重量部中に、0.5重量部以上であることが好ましい。顔料濃度が0.5重量部未満の場合には、鋼板の着色が不十分となり、画像が不明瞭になるおそれがある。
【0013】
顔料は、無機顔料又は有機顔料のいずれとすることもできる。なお、ブラックは、無機顔料が用いられる。無機顔料としては、金属の酸化物類、水酸化物類、硫化物類、フェロシアン化物類、クロム酸塩類、炭酸塩類、ケイ酸塩類、リン酸塩類、炭素類(カーボンブラック)、金属粉等が例示される。具体的に、イエローの無機顔料としては、シー・アイ・ピグメントイエロー42、シー・アイ・ピグメントイエロー184を用いることができる。マゼンタの無機顔料としては、シー・アイ・ピグメントレッド101、シー・アイ・ピグメントレッド102を用いることができる。シアンの無機顔料としては、シー・アイ・ピグメントブルー28、シー・アイ・ピグメントブルー36を用いることができる。ブラックの無機顔料としては、シー・アイ・ピグメントブラック7を用いることができる。
【0014】
有機顔料としては、ニトロソ類、染付レーキ類、アゾ類、フタロシアニン類、アントラキノン類、ペリレン類、キナクリドン類、ジオキサジン類、イソインドリン類、キノフタロン類、アゾメチン類、ピロロピロール類等が例示される。具体的に、イエローの有機顔料としては、シー・アイ・ピグメントイエロー120、シー・アイ・ピグメントイエロー150を用いることができる。マゼンタの有機顔料としては、シー・アイ・ピグメントレッド122、シー・アイ・ピグメントレッド178、シー・アイ・ピグメントレッド179、シー・アイ・ピグメントレッド202、シー・アイ・ピグメントレッド254、シー・アイ・ピグメントバイオレット19を用いることができる。シアンの有機顔料としては、シー・アイ・ピグメントブルー15、シー・アイ・ピグメントブルー15:1、シー・アイ・ピグメントブルー15:2、シー・アイ・ピグメントブルー15:3、シー・アイ・ピグメントブルー15:4、シー・アイ・ピグメントブルー15:6、シー・アイ・ピグメントブルー16を用いることができる。
【0015】
無機顔料それぞれ又は有機顔料それぞれを単独又は複数種類を混合して使用することもできる。なお、長期間の耐候性が求められる際には、無機顔料を用いることが好ましい。
【0016】
反応性オリゴマーおよび反応性モノマーは、耐候性の面から脂肪族化合物であることが好ましい。反応性モノマーとしては、例えばジペンタエリスリトールヘキサアクリレートやそれらの変性体等の6官能アクリレート;ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート等の5官能アクリレート;ペンタジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の4官能アクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、グリセリルトリアクリレート等の3官能アクリレート;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート等の2官能アクリレート;及び、カプロラクトンアクリレート、トリデシルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ネオペンチルフリコールアクリル酸安息香酸エステル、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート、メトキシ−トリエチレングリコールアクリレート、メトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−コハク酸、2−アクリロイロキシエチル−フタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸等の単官能アクリレートが挙げられる。
【0017】
反応性モノマーとしては、さらに上記の反応性モノマーにリン又はフッ素、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの官能基を付与した反応性モノマーが用いられる。また、これらの反応性モノマーを単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
反応性オリゴマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、シリコンアクリレート、ポリブタジエンアクリレートが挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。特に、強じん性に優れる点で、ウレタンアクリレートが好ましい。ウレタンアクリレートの中では、難黄変性である点で、炭化水素からなる脂肪族ウレタンアクリレートがさらに好ましい。
【0019】
さらには紫外線硬化型インクに使用する反応性オリゴマーおよび反応性モノマーは2官能以上であることが好ましい。2官能以上の反応性オリゴマーおよび反応性モノマーを使用することで硬化塗膜が三次元架橋をし、より緻密になることで汚染物質が塗膜に侵入し難くなる。さらには屋外では、数年間太陽光や雨、風にさらされても劣化しないような耐候性が求められており、この観点からも2官能以上の反応性オリゴマーおよび反応性モノマーを使用し強固な硬化塗膜とすることが好ましい。
【0020】
紫外線硬化型インクに用いる光重合開始剤としては、ベンゾイン類、ベンジルケタール類、アミノケトン類、チタノセン類、ビスイミダゾール類、ヒドロキシケトン類及びアシルホスフィンオキサイド類が挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。特に、高反応性であり、難黄変性である点で、ヒドロキシケトン類及びアシルホスフィンオキサイド類が好ましい。
【0021】
光重合開始剤の添加量は、紫外線硬化型インク100重量部中に、1重量部〜15重量部であることが好ましく、3重量部〜10重量部であることがより好ましい。1重量部未満では重合が不完全で皮膜が未硬化となるおそれがあり、一方、15重量部を超えて添加しても、それ以上の硬化率及び硬化速度の向上が期待できず、コスト高となる。
【0022】
紫外線硬化型インクには、必要に応じて、顔料を分散させる目的で分散剤を添加してもよい。分散剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性イオン界面活性剤及び高分子分散剤等が挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
さらに必要に応じて、紫外線硬化型インクには、光重合開始剤の開始反応を促進させるための増感剤、熱安定剤、酸化防止剤、防腐剤、消泡剤、浸透剤、樹脂バインダー、樹脂エマルジョン、還元防止剤、レベリング剤、pH調整剤、顔料誘導体、重合禁止剤等の添加剤を加えることもできる。また、紫外線硬化型インクには添加材として、紫外線吸収剤(以下、「UVA」ともいう。)及び光安定剤(以下、「HALS」ともいう。)を加えることもできる。
【0024】
ここで、UVAとしては、代表的なものとしてベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、ヒドロキシフェニルトリアジン類、オギザニリド類及びシアノアクリレート類のものがあり、単独及び2種以上を混合させた混合系のいずれの使用も可能である。また、HALSにおいても様々なものが提案されており、その中より任意に単独及び混合系のいずれの使用も可能である。本実施形態の好ましい添加量は、紫外線硬化型インク100重量部中に、UVAが0.3重量部〜5重量部、HALSも同様に0.3重量部〜5重量部である。
【0025】
本発明のインクを使用する鋼板は、普通鋼板、ガルバリウム鋼板などのめっき鋼板、塗装鋼板、ステンレス鋼板などの鋼板、アルミニウム板および銅板などがあげられる。なかでも紫外線硬化型インクとの密着に優れる点から、塗装鋼板であることが好ましい。塗装鋼板とは、普通鋼板やめっき鋼板に塗料を塗装した鋼板のことである。塗装鋼板に使用する塗料としては、アクリル樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、アルキド樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ビニル樹脂塗料、シリコーン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料などがあげられ特に限定されない。
また鋼板の厚さおよび形状も特に限定されず、用途、使用する場所、形態などに応じて適宜設定することができる。
【0026】
本発明の鋼板の加飾に使用する紫外線硬化型インクを付与するインクジェット記録装置については特に限定されない。例えば、荷電変調方式、マイクロドット方式、帯電噴射制御方式およびインクミスト方式などの連続方式、ピエゾ方式、パルスジェット方式、バブルジェット(登録商標)方式および静電吸引方式などのオン・デマンド方式などを用いることができる。さらに具体的なインクジェット記録装置としてはライン型、シリアル型などがあげられいずれも使用可能である。
【0027】
ライン型インクジェット記録装置としては、図1に示すようなライン型のインクジェット記録装置100によって実現される。まず、図1を参照して、インクジェット記録装置100について説明する。インクジェット記録装置100は、搬送部110と、記録ヘッド120K,120C,120M,120Yと、紫外線照射部130とを備える。搬送部110は、コンベア等によって構成され、設置面112にセットされた鋼板本体3を、搬送部110の一端側(図1を正面視したとき左端側)から、記録ヘッド120K,120C,120M,120Y及び紫外線照射部130を通過させ、搬送部110の他端側に搬送する(図1を正面視したとき右側に示す2点鎖線の鋼板本体3(化粧鋼板1)参照)。
【0028】
記録ヘッド120K,120C,120M,120Yは、搬送部110による鋼板本体3の搬送方向に隣り合った状態で配列されて設置されている。記録ヘッド120Kは、ブラックの紫外線硬化型インク(紫外線硬化型ブラックインク)を吐出する記録ヘッドである。記録ヘッド120Cは、シアンの紫外線硬化型インク(紫外線硬化型シアンインク)を吐出する記録ヘッドである。記録ヘッド120Mは、マゼンタの紫外線硬化型インク(紫外線硬化型マゼンタインク)を吐出する記録ヘッドである。記録ヘッド120Yは、イエローの紫外線硬化型インク(紫外線硬化型イエローインク)を吐出する記録ヘッドである。なお、搬送方向における記録ヘッド120K,120C,120M,120Yの配列は、図1の構成の他、これとは異なる配列順序としてもよい。各色の配列順序は種々の点を考慮し決定される。
【0029】
記録ヘッド120K,120C,120M,120Yそれぞれには、搬送部110の設置面112に対向するようにノズルが形成されている。ノズルは、搬送方向に直交する方向に複数個配列された状態で、ノズル列を形成する。ノズル列は、記録ヘッド120K,120C,120M,120Yそれぞれに複数列形成されている。記録ヘッド120K,120C,120M,120Yそれぞれに対応する色の紫外線硬化型インクは、記録ヘッド120K,120C,120M,120Yそれぞれに形成されたノズルから吐出される。
【0030】
紫外線照射部130は、記録ヘッド120K,120C,120M,120Yに対して、搬送方向下流側の所定の位置に配置されている。紫外線照射部130は、搬送部110の設置面112に向けて設置された紫外線ランプを備え、設置面112の方向に紫外線を照射する。紫外線照射部130は、紫外線ランプから発せられた紫外線が外部に照射されることを防止可能なシャッタ機構を備え、このシャッタ機構を開閉させることで、紫外線の照射を開始し停止することができる。なお、紫外線の照射の開始及び停止は、紫外線照射部130が備える紫外線ランプの点灯及び消灯によって実現する構成としてもよい。この場合、シャッタ機構を省略することができる。
【0031】
紫外線の照射の開始は、例えば、記録ヘッド120Yに対して搬送方向下流側でかつ紫外線照射部130に対して搬送方向上流側の所定の位置に設置された検知センサ(図1で図示を省略)によって、鋼板本体3が検知されたことを条件として行われる。これによって、記録ヘッド120K,120C,120M,120Yで、画像が記録された後、さらに搬送部110によって搬送される鋼板本体3に、紫外線が照射される。換言すれば、鋼板表面に着弾し、各色の紫外線硬化型インクによるインク滴に、紫外線が照射される。一方、紫外線の照射の停止は、搬送方向下流側の所定の位置に設置された検知センサ(図1で図示を省略)によって、鋼板本体3が紫外線照射部130を通過したことが検知されたことを条件として行われる。紫外線の照射の開始後、所定の時間経過したとき、紫外線の照射を停止する構成とすることもできる。
【0032】
インクジェット記録装置100は、この他、例えば、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの紫外線硬化型インクをそれぞれ貯留したメインタンクを備える。各色のメインタンクに貯留された紫外線硬化型ブラックインク、紫外線硬化型シアンインク、紫外線硬化型マゼンタインク及び紫外線硬化型イエローインクは、各色毎のインク供給ラインを介して記録ヘッド120K,120C,120M,120Yに供給される。また、インクジェット記録装置100は、自装置内で実行される処理を制御する制御部を備える。制御部は、各種の機能手段を構成する。制御部は、次に示す化粧鋼板1の製造方法の各工程を制御する。
【0033】
インクジェット記録装置100では、インクジェット記録装置100に通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のような外部装置から、鋼板本体3に形成される画像を示すデータが入力される。そして、入力されたデータに対して、ラスタライズ等の処理が実行され、所定のデータが生成される。また、搬送部110の一端側の設置面112にセットされた鋼板本体3が、搬送部110によって、搬送方向に搬送される。しかし、鋼板本体3のセット方向は、種々の条件の下適宜設定される。鋼板本体3の長手方向が搬送方向に交差する、例えば直交するように鋼板本体3を設置面112にセットしてもよい。
【0034】
そして、鋼板本体3は、図1の中央部に示す2点鎖線(符号3参照)の位置に到達する。つまり、鋼板本体3は、記録ヘッド120K,120C,120M,120Yのノズルが形成された面と、鋼板本体の記録側表面とが対向した位置に搬送される。このとき、インクジェット記録装置100では、ラスタライズによって生成された所定のデータに従って、鋼板本体の記録側表面に対して、記録ヘッド120K,120C,120M,120Yが配置された順に、紫外線硬化型ブラックインク、紫外線硬化型シアンインク、紫外線硬化型マゼンタインク及び紫外線硬化型イエローインクが吐出される。吐出されたこれら紫外線硬化型インクのインク滴は、鋼板表面に着弾し付着する。
【0035】
さらに、インクジェット記録装置100では、画像が形成された鋼板本体3が搬送部110によって、紫外線照射部130側に搬送される。また、上述したタイミングで、紫外線照射部130から設置面112側に向けた紫外線の照射が開始される。そして、鋼板表面に着弾し付着した、各色の紫外線硬化型インクによるインク滴に、紫外線が照射される(紫外線照射工程)。これによって、インク滴が硬化し、硬化した画像が形成される。
【0036】
紫外線照射部130を通過し、化粧鋼板1となった鋼板本体3が、図1を正面視したとき右側に示す2点鎖線(符号3(1)参照)の位置に到達した時点で、鋼板本体3が設置面112から取り除かれる。そして、新たな鋼板本体3がセットされ、上述した各工程が再度実行される。
【0037】
シリアル型インクジェット記録装置とは、キャリッジの駆動により記録ヘッドを主走査方向(キャリッジの移動方向)に走査させるとともに、基材を主走査方向に直交する搬送方向(副走査方向)に間欠搬送させながらインクを吐出させ画像を形成する。記録ヘッドには、例えばブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)などのインクのカートリッジが搭載されており、各色のカートリッジには、複数個のインク吐出ノズルが主走査方向および副走査方向の両方向に沿って設けられている。記録ヘッドに紫外線照射装置を設けてもよい。
【0038】
シリアル型インクジェット記録装置を用いる場合、インク液滴を基材に付与する工程、および、紫外線を照射する工程を、主走査毎に繰り返して行う。ここで、主走査とは、記録ヘッドが同一ライン上を移動することをいい、記録ヘッドが、副走査方向に移動しないで、左から右へ1回移動する態様、左から右へ複数回移動する態様、右から左へ1回移動する態様、右から左へ複数回移動する態様、1往復する態様、複数回往復する態様等が含まれる。主走査毎とは、記録ヘッドが一つのラインから別のラインに移動する毎に(副走査方向の移動が行われる毎に)という意味である。前記このような記録ヘッドの主走査毎に、インク付与工程の終了後に、あるいは、前記インク付与工程と平行して、紫外線照射によるインクの硬化を行う。
【0039】
なお、インクジェット記録装置において紫外線硬化型インクを吐出する場合には、インクジェット記録装置に装着されたヘッドに加熱装置を装備し、インクを加熱することによりインク粘度を低くして吐出してもよい。インクの加熱温度としては25〜150℃が好ましく、30〜70℃がより好ましい。インクの加熱温度は、反応性モノマーおよび/または反応性オリゴマーの熱に対する硬化性を考慮して定められ、熱により硬化が開始する温度よりも低く設定する。
【0040】
鋼板本体3の表面に模様を付与するための紫外線硬化型インク付与量は、1〜100g/m2であることが好ましく。1〜50g/m2であることがより好ましい。1g/m2未満の場合、十分な画像表現をすることが困難となるばかりか耐候性が悪くなるおそれがあり、100g/m2を超えると、インクの硬化不良が発生するおそれがある。
【0041】
さらに、模様部の紫外線硬化型インクの硬化膜の厚さは、1〜150μmであることが好ましい。1μm以上であれば、十分な画像表現を得ることができる。さらに好ましくは、10μm以上であり、より耐候性を向上させることができる。一方、膜の厚さが厚すぎると硬化膜の割れや剥れが発生するおそれがあるため、150μm以下が好ましい。
【0042】
紫外線硬化型インクに含まれる反応性モノマーおよび/または反応性オリゴマーを硬化させるための紫外線照射の条件としては、紫外線ランプの出力が、50〜280W/cmが好ましく、80〜200W/cmがより好ましい。紫外線ランプの出力が50W/cm未満であると、紫外線のピーク強度および積算光量不足によりインクが十分に硬化しない傾向にあり、280W/cmを超えると、インクの硬化皮膜が劣化する傾向にある。なお、紫外線の照射時間は、0.1〜20秒が好ましく、0.5〜10秒がより好ましい。
【実施例】
【0043】
<紫外線硬化型インクの作製>
1.分散液の作製
表1に示した配合にて各色顔料の分散液組成物を混合し、ビーズミルにて分散して分散液を作製した。
【0044】
【表1】

【0045】
表1に記載の各材料の詳細は以下のとおりである。
TSY−1(シー・アイ・ピグメントイエロー42):戸田工業(株)製
160ED(シー・アイ・ピグメントレッド101):戸田工業(株)製
BLUE#9410(シー・アイ・ピグメントブルー28):大日精化工業(株)製
NIPex35(シー・アイ・ピグメントブラック7):エボニックデグサジャパン(株)製
SOLSPERSE32000(高分子分散剤):日本ルーブリゾール(株)製
SOLSPERSE36000(高分子分散剤):日本ルーブリゾール(株)製
SR9003(PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、2官能):サートマージャパン(株)製
【0046】
2.インクの作製
1で作製した分散液を用い表2に示した配合にてインクを作製した。なおインクはイエロー分散液、マゼンタ分散液、シアン分散液およびブラック分散液を使用し、それぞれイエローインク、マゼンタインク、シアンインクおよびブラックインクを作製した。
なお、硬化膜の粘着性の評価は、次のように行った。ポリエステル樹脂が塗装されたガルバリウム鋼板に、作製した各色のインクをインクジェットにて、それぞれ10cm×10cmの正方形形状に膜厚が20μmとなるように塗布した。その後直ちに紫外線を照射(メタルハライドランプ 出力160W/cm×5秒)し、インクを硬化させ試験体を作製した。粘着性の測定は、作製した試験体を用いJIS K5600−3−6に記載のA法に準拠して行った。各インクの粘着性の測定結果を表2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
表2に記載の各材料の詳細は以下のとおりである。
CN963B80(ウレタンアクリレートオリゴマー、2官能):サートマージャパン(株)製
CN981(ウレタンアクリレートオリゴマー、2官能):サートマージャパン(株)製
CN966J75(ウレタンアクリレートオリゴマー、2官能):サートマージャパン(株)製
CN929(ウレタンアクリレートオリゴマー、3官能):サートマージャパン(株)製
SR238F(1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2官能):サートマージャパン(株)製
SR9003(PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、2官能):サートマージャパン(株)製
SR247(ネオペンチルグリコールジアクリレート、2官能):サートマージャパン(株)製
SR344(ポリエチレングリコール400ジアクリレート、2官能):サートマージャパン(株)製
SR489(トリデシルアクリレート、1官能):サートマージャパン(株)製
SR285(テトラヒドロフルフリルアクリレート、1官能):サートマージャパン(株)製
IB−XA(イソボルニルアクリレート、1官能):共栄社化学(株)製
Irgacure184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、ヒドロキシケトン類):BASFジャパン(株)製
Irgacure819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、アシルホスフィンオキサイド類):BASFジャパン(株)製
TINUVIN479(2−(2ヒドロキシ−4−{1−オクチロキシカルボニルエトキシ}フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、ヒドロキシフェニルトリアジン類):BASFジャパン(株)製
TINUVIN123(デカン二酸,ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチロキシ)−4−ピペリジニル)エステルと1,1−ジメチルエチルヒドロパーオキサイドとオクタンとの反応生成物、HALS):BASFジャパン(株)製
【0049】
<インクジェット記録方法>
作製したイエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクを図1のライン型インクジェット記録装置に搭載し、ポリエステル樹脂が塗装されたガルバリウム鋼板に下記条件にて木目模様を加飾した。
また、模様部のインクの付与量は15g/m2とし、この時のインクの硬化膜の膜厚は14μmであった。
(模様付与条件)
1)ノズル径 :70μm
2)印加電圧 :50V
3)パルス幅 :20μs
4)駆動周波数 :3kHz
5)解像度 :180dpi×180dpi
6)インク加熱温度 :55℃
(紫外線照射条件)
1)ランプ種類 :メタルハライドランプ
2)出力 :160W/cm
3)照射時間 :3秒間
4)照射距離 :10cm
【0050】
<評価方法>
A.汚染性
模様を加飾した化粧鋼板を30℃と50℃の恒温層にそれぞれ1時間置いた。30℃および50℃の恒温層から取り出した化粧鋼板を地面に対して水平に加飾面を上にして置き、汚染物質(JIS試験用粉体8種(JIS Z8901)を50重量部とJIS試験用粉体12種(JIS Z8901)を50重量部混合したもの)を鋼板表面が隠れる程度に全面に降りかけた。その後鋼板を地面に対して垂直に立て、霧吹きにて水を吹きかけ汚れの落ち具合を目視で評価した。評価結果を表3に示した。
1‥汚れが80〜100%程度落ちた
2‥汚れが60〜80%程度落ちた
3‥汚れが40〜60%程度落ちた
4‥汚れが20〜40%程度落ちた
5‥汚れが0〜20%程度落ちた
B.耐候試験
模様を加飾した化粧鋼板を促進耐候試験機スーパーUVテスターにて試験した。試験条件は以下のとおりである。試験後のインク塗膜の剥離や割れの有無を目視にて評価した。さらに試験後のインク塗膜の変退色を変退色用グレースケール(JIS L 0804)にて評価した。数字が大きい方が変退色が小さいことを意味している。評価結果を表3に示した。
(耐候試験条件)
1)光源: 水冷式メタルハライドランプ
2)照度: 100mW/cm
3)波長: 295〜450nm
4)温度: 60℃(照射)、30℃(結露)
5)湿度: 50%(照射)、90%(結露)
6)サイクル: 照射5時間、結露5時間
7)シャワー: 結露前後10秒
8)試験時間: 500時間
【0051】
実施例によって加飾された化粧鋼板は、耐候性に優れ、低汚染の結果が得られた。
【0052】
【表3】

【符号の説明】
【0053】
3 鋼板本体
100 インクジェット記録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板加飾用紫外線硬化型インクであって、硬化膜の粘着性がJIS K5600−3−6の規定において不粘着であることを特徴とする鋼板加飾用紫外線硬化型インク。
【請求項2】
請求項1のインクを鋼板に付与した後、紫外線を照射することによりインクを硬化させ模様を形成させることを特徴とする鋼板加飾方法。
【請求項3】
紫外線硬化型インクの硬化膜からなる塗膜によって表面が加飾された化粧鋼板であって、該塗膜の粘着性がJIS K5600−3−6の規定において不粘着であることを特徴とする加飾された化粧鋼板。

【図1】
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【公開番号】特開2012−197385(P2012−197385A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63443(P2011−63443)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】