鋼構造物のライフサイクルコスト評価システム
【課題】 港湾、海洋施設における鋼構造物の耐荷重性状を適切に評価して的確な補修計画を策定することができる鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムを提供すること。
【解決手段】腐食速度推定処理手段53によって鋼構造物における構成部材(鋼管杭や鋼矢板)の腐食状態を推定し、この腐食により構成部材の有効部材断面が減少した状態における応力度比を構造物診断処理手段55によって算出することで、構成部材の耐荷重性状を適切に評価することができ、的確な補修計画を策定することができる。従って、港湾、海洋施設における鋼構造物のライフサイクルコストを高精度に算出することができ、この施設の維持管理に係る手間やコストを大幅に削減することができる。
【解決手段】腐食速度推定処理手段53によって鋼構造物における構成部材(鋼管杭や鋼矢板)の腐食状態を推定し、この腐食により構成部材の有効部材断面が減少した状態における応力度比を構造物診断処理手段55によって算出することで、構成部材の耐荷重性状を適切に評価することができ、的確な補修計画を策定することができる。従って、港湾、海洋施設における鋼構造物のライフサイクルコストを高精度に算出することができ、この施設の維持管理に係る手間やコストを大幅に削減することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾、海洋施設における鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート構造物のライフサイクルコスト評価システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載されたライフサイクルコスト評価システムは、気象環境データや地域別コンクリート配合データ、評価対象構造物データ、地図データを含むデータベースと、これらの各データ、地点および評価対象コンクリート構造物の特性データに基づいてコンクリートの劣化指標およびライフサイクルコストを算出する手段とを備えたものであって、電子化された各データをコンピュータを用いて処理することで、維持管理に係るライフサイクルコストを効率的に算出でき、コンクリート構造物の点検、補修を計画的に行うために考案されたものである。
特許文献1の他にも、港湾施設の1つである桟橋におけるコンクリート構造物の上部工を対象としたライフサイクルコスト評価システムや、水門施設を対象としたライフサイクルコスト評価システムが考案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−161693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のようなコンクリート構造物を対象としたライフサイクルコスト評価システムや、その他の構造物を対象としたライフサイクルコスト評価システムは提案されているものの、鋼構造物、特に、海水による腐食(錆)の影響を著しく受ける港湾、海洋施設における鋼構造物を対象としたライフサイクルコスト評価システムはなく、その開発が望まれていた。
すなわち、港湾、海洋施設における鋼構造物においては、腐食によって徐々に耐力上有効な鋼構造部材の部材断面が小さく(肉厚が薄く)なり、部材断面が減少した状態での耐荷重性状を適正に評価した上で補修計画を策定し、これに基づいてライフサイクルコストを算出することが重要である。しかし、従来のライフサイクルコスト評価システムは、腐食を考慮した構造物の耐荷重性状を評価するものではないため、このシステムを港湾、海洋施設における鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムとして用いたとしても、適切な評価結果が得られず、的確な補修計画を策定することができない。
【0005】
本発明の目的は、港湾、海洋施設における鋼構造物の耐荷重性状を適切に評価して的確な補修計画を策定することができる鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムは、港湾、海洋施設における鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムであって、情報入力用の入力手段と、各種情報を記憶する記憶手段と、情報表示用の表示手段と、情報を処理する処理手段とを備え、前記記憶手段には、当該施設の建設記録や設計条件等を含んだ施設管理情報と、鋼構造物を構成する鋼管杭や鋼矢板等の構成部材の部材リストを含んだ構成部材情報と、前記構成部材に施す防食対策工法を含んだ防食対策工法情報と、が少なくとも記憶され、前記処理手段は、前記構成部材の腐食速度を推定する腐食速度推定処理手段と、前記入力手段から当該施設の管理基準を入力させる管理基準入力処理手段と、前記防食対策工法情報内の防食対策工法を表示手段に表示して前記入力手段から選択させる対策計画選択処理手段と、前記構成部材の診断を行う診断処理手段と、前記入力した管理基準、前記選択した防食対策工法、および診断処理手段の診断結果に基づいて鋼構造物のライフサイクルコストを算出するライフサイクルコスト算出手段とを備え、前記腐食速度推定処理手段は、前記構成部材の部位ごとに少なくとも2種類の腐食速度推定式を選択させ、かつ選択された腐食速度推定式に基づいて当該構成部材の部位ごとに腐食速度を推定し、前記対策計画選択処理手段は、前記構成部材の部位ごとに前記防食対策工法情報から任意の防食対策工法を選択させ、前記診断処理手段は、前記選択した防食対策工法および前記推定された腐食速度によって算出される前記構成部材の部位ごとの有効部材断面と、前記施設管理情報に含まれた設計条件の作用荷重と、に基づいて当該構成部材の部位ごとに生じる応力度比を算出するとともに、前記入力された施設管理基準と前記算出された応力度比とを比較可能に前記表示手段に表示し、前記ライフサイクルコスト算出手段は、前記対策計画選択処理手段にて選択された防食対策工法に伴うコストを前記表示手段に表示することを特徴とする。
【0007】
ここで、本発明の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムは、前記入力手段、記憶手段、表示手段、処理手段の各機能がコンピュータで実現されるシステムであることが望ましく、このコンピュータで実行されるプログラムであってもよい。プログラムである場合には、コンピュータで読み取り可能な記録媒体(内部記録媒体または外部記録媒体)に記録されていることが望ましい。そして、鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムがプログラムである場合には、入力手段がキーボードやテンキー、マウス等の入力装置から構成され、記憶手段がハードディスク、メモリ等の記憶装置から構成され、表示手段がCRTディスプレイや液晶ディスプレイ等の表示装置から構成され、処理手段がCPU等の処理装置(制御装置)から構成されることが望ましい。また、プログラムを記録する記録媒体としては、内部記録媒体としてのメモリ装置やハードディスク装置(HDD)、外部記録媒体としてのCDや、DVD、USBメモリ等が利用可能である。
【0008】
以上の本発明によれば、腐食速度推定処理手段によって鋼構造物における構成部材の腐食状態を推定し、この腐食により構成部材の有効部材断面が減少した状態における応力度比を診断処理手段によって算出することで、構成部材の耐荷重性状を適切に評価することができ、的確な補修計画を策定することができる。従って、港湾施設や海洋施設における鋼構造物のライフサイクルコストを高精度に算出することができ、施設の維持管理に係る手間やコストを大幅に削減することができる。
また、建設記録や設計条件等を含んだ施設管理情報を備えていることで、当該施設の建設当時から現在に至るまでの管理履歴を一括して管理することができ、将来に渡る補修計画の策定における精度を向上させることができる。つまり、従来、施設の建設記録や設計資料(計算書や図面等)は、紙の形で保管されていることが多く、補修計画を策定する上で非常に手間が掛かっていたのであるが、本ライフサイクルコスト評価システムのように、施設管理情報を電子データとして記憶手段に記憶しておくことで、情報の取り扱いが格段に容易になって補修計画の策定の手間を一層低減することができる。
【0009】
さらに、本発明の請求項2に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムは、請求項1に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、前記記憶手段には、鋼構造物において過去に施された防食、補修、補強等の対策記録を含んだ対策履歴情報が記憶されていることを特徴とする。
このような構成によれば、過去に施された対策記録を対策履歴情報として記憶しておくことで、構成部材の診断を行う際の精度をさらに向上させることができ、より的確な補修計画を策定することができる。
【0010】
また、本発明の請求項3に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムは、請求項1または請求項2に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、前記対策計画選択処理手段は、計画時から将来の所定期間における1以上の施工時期と、この施工時期ごとに実施する任意の防食対策工法とを選択させることを特徴とする。
このような構成によれば、施工時期や防食対策工法を任意に選択することで、将来に渡る施設の利用計画等に応じて柔軟な補修計画を策定することができ、ライフサイクルコストの低減を効率よく図ることができる。
【0011】
また、本発明の請求項4に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムは、請求項1から請求項3のいずれかに記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、前記腐食速度推定処理手段は、実測データに基づく腐食速度推定式と、環境因子に基づく腐食速度推定式と、利用者入力による腐食速度推定式と、の3つの推定式のうちのいずれかを選択させ、実測データに基づく腐食速度推定式が選択された場合には、所定の複数施設において実測された腐食データから予め設定された腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定し、環境因子に基づく腐食速度推定式が選択された場合には、環境因子情報の入力欄を前記表示手段に表示し、かつ入力された環境因子情報をパラメータとする腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定し、利用者入力による腐食速度推定式が選択された場合には、腐食速度推定式の入力欄を前記表示手段に表示し、かつ入力された腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定することを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、当該施設の立地条件や周辺環境条件等に応じて、当該システムの利用者が腐食速度推定式を3つの推定式から任意に選択することができ、腐食速度の推定精度を向上させることができる。ここで、腐食速度推定式としては、一般的な数式のみならず、腐食速度を表す数値であってもよい。この際、実測データに基づく腐食速度推定式は、公共機関によって公開された実測データを用いてもよく、利用者が独自に調査した実測データを用いてもよく、さらに、これらの実測データを合わせて設定されるものであってもよい。また、環境因子に基づく腐食速度推定式における環境因子としては、海水の水素イオン濃度(pH、ペー・ハー)、塩化物イオン濃度(Cl- )、アンモニアイオン濃度(NH3+)、導電率、溶存酸素量(DO)、および水温が挙げられる。さらに、利用者が独自に腐食速度を設定可能な場合には、腐食速度推定式を利用者が直接入力すればよい。
また、このような腐食速度推定式が構成部材の部位ごとに設定可能になっていることで、各部位の条件(例えば、海中にあるか、大気中にあるかなど)を反映させて、より詳細に部位ごとの腐食速度を推定することができる。
【0013】
さらに、本発明の請求項5に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムは、請求項1から請求項4のいずれかに記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、前記処理手段は、前記構成部材表面に施された塗膜の劣化を考慮して塗膜の健全性を評価する塗膜健全性評価手段を備え、前記塗膜健全性評価手段は、塗膜表面の錆発生面積率および塗膜の経過年数の入力欄を前記表示手段に表示し、かつ入力された錆発生面積率および経過年数に基づいて塗膜の残存寿命を算出することを特徴とする。
このような構成によれば、構成部材表面に施された塗膜の健全性(塗膜の残存寿命)を、錆発生面積率および経過年数に基づいて算出することで、構成部材の非腐食期間を推定することができ、鋼構造物における腐食の進行状態をより一層正確に把握することができる。
【0014】
また、本発明の請求項6に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムは、請求項1から請求項5のいずれかに記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、前記記憶手段には、前記鋼管杭や鋼矢板等の構成部材の種類に対応した応力算定式を含む応力算定式情報が記憶され、前記診断処理手段は、前記構成部材の種類に応じて前記応力算定式情報から応力算定式を選択し、選択した応力算定式に基づいて構成部材ごとに応力解析を実行して応力度比を算出することを特徴とする。
このような構成によれば、構成部材の種類に対応した応力算定式を内蔵したことで、構成部材の応力解析を迅速かつ正確に実施することができ、構成部材ごとの診断精度および速度を向上させることができる。
【0015】
また、本発明の請求項7に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムは、請求項1から請求項6のいずれかに記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、前記構成部材を評価する部位は、海底面よりも下側の海土中に位置する海土中部と、この海土中部よりも上側で干潮時の海面よりも下側に位置する海中部と、この海中部よりも上側で満潮時の海面よりも下側に位置する干満部と、この干満部よりも上側で海水の飛沫に曝される飛沫部と、この飛沫部よりも上側で大気中に露出した大気部と、から構成されることを特徴とする。
このような構成によれば、海土中部、海中部、干満部、飛沫部、および大気部の各部位ごとに構成部材を分けて評価することで、各部位ごとに異なる腐食速度や部材断面等を適切に評価した診断や対策計画選択が実行でき、ライフサイクルコストの算出精度をさらに向上させることができる。
【0016】
この際、本発明の請求項8に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムは、請求項1から請求項7のいずれかに記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、前記防食対策工法情報には、各防食対策工法ごとに、工法の仕様、耐用年数、適用可能な構造部材、適用可能な構造部材の部位、および単価の各データが入力されていることを特徴とする。
このような構成によれば、防食対策工法ごとに、工法の仕様、耐用年数、適用可能な構造部材、適用可能な構造部材の部位、および単価の各データが入力されていることで、防食対策工法の選択が容易になるとともに、迅速にライフサイクルコストを算出することができる。ここで、防食対策工法情報は、新工法が開発や実用化された際に、随時追加登録可能に構成され、また前記各データのうち、特に単価に関しては、変更された時点で随時修正可能に構成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上のような本発明の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムによれば、港湾、海洋施設における鋼構造物の耐荷重性状を適切に評価して的確な補修計画を策定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る鋼構造物のライフサイクルコスト(LCC)評価システムを示すブロック図である。図2は、LCC評価システムの動作を示すフローチャートである。図3および図4は、それぞれLCC評価システムの評価対象である鋼構造物の構成部材としての鋼管杭P1および鋼矢板P2を示す断面図である。
鋼構造物のLCC評価システムは、港湾施設における鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムであって、コンピュータ1で実現されるものである。なお、以下では港湾施設の鋼構造物に関して説明するが、本発明の施設としては、海洋施設であってもよく、この海洋施設としては、外洋の石油掘削ジャケットなどにおける鋼構造物が例示でき、その構造部材としては、鋼製梁や斜材(形鋼、パイプ)等がある。
【0019】
鋼管杭P1は、図3に示すように、桟橋等のコンクリート構造物を支持するために海底に打ち込まれたもので、それぞれ所定の板厚を有する鋼管からなる上杭、中杭(中杭1、中杭2等)および下杭から構成されている。そして、鋼管杭P1は、その長さ方向に関して下から、海土中部、海中部、干満部、飛沫部、および大気部からなる5つの部位に分けて後述のLCC評価がなされるようになっている。ここで、海土中部とは、鋼管杭P1のうち、海底面よりも下側の海土中に打ち込まれた部分であって、海中部とは、海土中部よりも上側で干潮時の海面(L.W.L)よりも下側に位置する部分であって、干満部とは、海中部よりも上側で満潮時の海面(H.W.L)よりも下側に位置する部分であって、飛沫部とは、干満部よりも上側で海水の飛沫に曝される部分であって、大気部とは、飛沫部よりも上側で大気中に露出した部分である。
一方、鋼矢板P2は、図4に示すように、護岸(岸壁)における土圧を支持するために海底に打ち込まれたもので、所定の板厚を有する波形断面の鋼板や、並列された鋼管で構成されている。そして、鋼矢板P2は、鋼管杭P1と同様に、海土中部、海中部、干満部、飛沫部、および大気部からなる5つの部位に分けてLCC評価されるようになっている。
【0020】
図1および図2において、コンピュータ1は、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ等の表示装置(表示手段)2、キーボードやテンキー、マウス等の入力装置(入力手段)3、プリンタやプロッタ等の印刷装置(印刷手段)4、CPU等の処理装置(処理手段、制御装置)5、ハードディスク、メモリ等の記憶装置(記憶手段)6を備えている。
このコンピュータ1は、港湾施設を管理する管理者が使用するスタンドアロンのコンピュータを利用してもよいし、モデムやターミナルアダプタ、ルータ等の通信機器およびISDN、ADSL、CATV、光ファイバ等の各種電気通信回線を利用してサーバ装置に接続されたコンピュータを利用してもよい。サーバ装置に接続されたコンピュータの場合には、サーバ装置側に設けられたハードディスクやメモリ等を記憶装置(記憶手段)6として利用してもよく、さらにサーバ装置側に設けられたCPU等の処理装置(処理手段)5として利用してもよい。
【0021】
コンピュータ1の記憶装置6には、港湾施設の構造物の情報である構造物情報61と、鋼管杭P1や鋼矢板P2に施す防食対策工法情報テーブル62と、鋼管杭P1や鋼矢板P2の腐食速度を推定するための腐食速度推定式情報63と、鋼管杭P1や鋼矢板P2の規格情報である構成部材規格テーブル64と、鋼管杭P1や鋼矢板P2の応力解析を実行するための応力算定式情報65とが記憶されている。
また、構造物情報61には、港湾施設の建設記録や設計条件等を含んだ施設管理情報テーブル611と、鋼管杭P1や鋼矢板P2の部材リストを含んだ構成部材情報テーブル612と、鋼管杭P1や鋼矢板P2に対して過去に施された防食、補修、補強等の対策記録を含んだ対策履歴情報テーブル613とが記憶されている。
腐食速度推定式情報63には、実測データに基づく腐食速度推定式631と、環境因子に基づく腐食速度推定式632とが記憶されている。
【0022】
処理装置5は、記憶装置6の構造物情報61および防食対策工法情報テーブル62に情報を入力するための構造物入力処理手段51および防食対策工法入力処理手段52を備えている。さらに、処理装置5は、記憶装置6に記憶された各種情報を利用して鋼構造物のライフサイクルコストを評価するための各種処理手段53〜57と、これらの各種処理手段53〜57の補助機能としての塗膜健全性評価手段58と、各種処理手段53〜57の処理結果に基づいて表示装置2に図表を表示するための作図処理手段591、および印刷装置4で印刷するための印刷処理手段592とを備えている。
ライフサイクルコストを評価するための各種処理手段としては、腐食速度推定処理手段53と、対策計画選択処理手段54と、構造物診断処理手段55と、管理基準入力処理手段56と、ライフサイクルコスト算出手段57と、が設けられている。
なお、本実施形態において、各処理手段は、コンピュータ1に組み込まれ、処理装置5で実行されるプログラムで実現されている。
【0023】
また、処理装置5には、本LCC評価システムが起動された際に最初に作動される処理メニュー表示手段(図示略)が設けられており、この処理メニュー表示手段によって、図5に示す処理メニュー100が表示装置2に表示される。
処理メニュー100には、構造物入力処理手段51を作動させて構造物情報61内のデータの新規登録、更新、削除を実行するための構造物メニュー101と、帳票印刷を実行するための帳票印刷メニュー102と、防食対策工法入力処理手段52を作動させて防食対策工法情報テーブル62内のデータの新規登録、更新、削除を実行するための工法一覧メニュー103とが設けられている。
さらに、処理メニュー100には、腐食速度推定処理手段53と、対策計画選択処理手段54と、構造物診断処理手段55と、管理基準入力処理手段56を作動させるための劣化状況・構造物診断メニュー104と、ライフサイクルコスト算出手段57を作動させるためのLCC評価メニュー105,106と、塗膜健全性評価手段58を作動させるための塗膜健全性評価メニュー107とが設けられている。LCC評価メニューは、鋼構造物の構造部材(鋼管杭P1や鋼矢板P2)単位でLCC評価を実施するLCC評価(構造部材)メニュー105と、鋼構造物全体でLCC評価を実施するLCC評価(構造物)メニュー106とに分けられている。
また、処理メニュー100には、LCC評価システムを終了させるための終了メニュー108が設けられている。
【0024】
以上のような本実施形態のLCC評価システムにおける処理手順に関して、図2のフローチャートを参照して説明する。
まず、LCC評価システムを起動すると、処理メニュー100が表示装置2に表示される(ステップ1、以下ステップを「S」と略す)。
処理メニュー100において、構造物メニュー101を選択すると(S2)、構造物入力処理手段51が起動され、その処理が実行される(S3)。
構造物入力処理手段51は、表示装置2に各種の情報画面や入力画面を表示し、港湾施設に関する施設管理情報および鋼構造物の構成部材である鋼管杭P1や鋼矢板P2に関する構成部材情報を入力装置3から利用者に入力させ、入力された情報を記憶装置6の構造物情報61に記憶する。
【0025】
構造物入力処理手段51は、まず、コンピュータ1の表示装置2に、図6に示す構造物一覧メニュー110を表示する。構造物一覧メニュー110には、構造物一覧表111と、新規登録ボタン112と、編集ボタン113と、構造部材一覧ボタン114と、施設管理履歴一覧ボタン115と、処理メニュー100を表示させるためのメニューへ戻るボタン116とが表示される。
構造物一覧表111には、「施設名称(岸壁名称)」、「工場・事業所名」、「都道府県」、「市町村」、「建設年次西暦」、および「建設年次月」のそれぞれの欄に港湾施設に関するデータが表示されている。
【0026】
構造物一覧メニュー110において、構造物一覧表111中の1つの港湾施設を選択(ダブルクリック)する、または編集ボタン113を選択(クリック)すると、図7に示す構造物情報メニュー120が表示される。ここで、新規登録ボタン112を選択(クリック)すると、データが未入力の構造物情報メニュー120が表示されるようになっている。
構造物情報メニュー120には、構造物データ入力欄121と、施設平面図欄122と、施設位置図欄123と、施設断面図欄124と、施設写真欄125と、登録ボタン126と、削除ボタン127と、リセットボタン128と、構造物一覧メニュー110を表示させるための一覧へ戻るボタン129とが表示される。
【0027】
構造物情報メニュー120の構造物データ入力欄121には、港湾施設の「所有者(会社名)」や「工場・事業所名」、「施設名称(岸壁名称)」、「施設構造形式」等の建設記録を含んだデータが表示されるとともに、これらの各データを入力、編集できるようになっている。そして、各データを入力、編集してから登録ボタン126を選択(クリック)すれば、入力、編集した港湾施設が登録され、そのデータが記憶装置6の構造物情報61に記憶されるようになっている。一方、構造物情報メニュー120の削除ボタン127を選択(クリック)すれば、表示中の港湾施設に関するデータが記憶装置6の構造物情報61から消去されるようになっている。さらに、リセットボタン128を選択(クリック)すれば、構造物データ入力欄121に入力、編集したデータが消去され、編集する前のデータが再度表示されるようになっている。また、施設平面図欄122、施設位置図欄123、施設断面図欄124、および施設写真欄125中の「ファイル読み込み」ボタンを選択(クリック)すれば、各種図面や写真の画像データファイルが選択可能になり、選択することで各欄122〜125に画像データを表示させることができる。
【0028】
以上のように、構造物情報メニュー120に港湾施設のデータを入力し、登録してから一覧へ戻るボタン129を選択(クリック)すれば、図6の構造物一覧メニュー110が再度表示され、登録した港湾施設が新た構造物一覧表111中に表示されるようになっている。
構造物情報メニュー120において、構造部材一覧ボタン114を選択(クリック)すると、図8に示す構造部材一覧メニュー130が表示される。この構造部材一覧メニュー130は、港湾施設における鋼構造物の詳細情報を表示するもので、記憶装置6の構成部材情報テーブル612に記憶された情報が表示されるようになっている。構造部材一覧メニュー130には、施設名称選択欄131と、構成部材の種別(鋼管杭または鋼矢板・鋼管矢板)を選択する種別選択ボタン132と、構成部材を一覧表示する構成部材一覧表133と、新規登録ボタン134と、編集ボタン135と、防食対策履歴情報を表示させるための防食対策実績ボタン136と、構造物一覧メニュー110を表示させるための構造物一覧へ戻るボタン137とが表示される。
【0029】
構造部材一覧メニュー130において、施設名称選択欄131で施設名称を選択し、種別選択ボタン132で構成部材の種別を選択した状態で、構成部材一覧表133中の1つの構成部材を選択(ダブルクリック)する、または編集ボタン135を選択(クリック)すると、図9に示す鋼管杭情報メニュー140や図10に示す鋼矢板・鋼管矢板情報メニュー150が表示される。ここで、新規登録ボタン134を選択(クリック)すると、データが未入力の鋼管杭情報メニュー140または鋼矢板・鋼管矢板情報メニュー150が表示されるようになっている。
【0030】
鋼管杭情報メニュー140には、設計条件入力欄141と、鋼管杭P1の詳細情報入力欄142と、登録ボタン143と、削除ボタン144と、リセットボタン145と、構造部材一覧メニュー130を表示させるための一覧へ戻るボタン146とが表示される。設計条件入力欄141には、鋼管杭P1の「設計高さ(作業面高さ)」や「海底レベル」、「干潮時の海面レベル(L.W.L)」、「満潮時の海面レベル(H.W.L)」、「設計地震震度」、「設計水深」、「地盤平均N値」、「地盤反力係数」、「荷役装置」、「使用した設計基準図書」、「荷重条件の入力年次」等の設計条件を含んだデータが表示されるとともに、これらの各データを入力、編集できるようになっている。また、詳細情報入力欄142には、鋼管杭P1の「仕様」や「設計荷重条件」、上杭、中杭、下杭の各々の径や板厚等の「部材断面情報」等のデータが表示されるとともに、これらの各データを入力、編集できるようになっている。そして、設計条件入力欄141および詳細情報入力欄142の各データを入力、編集してから登録ボタン143を選択(クリック)すれば、入力、編集した鋼管杭P1が登録され、そのデータが記憶装置6の構成部材情報テーブル612に記憶されるようになっている。一方、削除ボタン144を選択(クリック)すれば、表示中の鋼管杭P1に関するデータが構成部材情報テーブル612から消去されるようになっている。さらに、リセットボタン145を選択(クリック)すれば、設計条件入力欄141および詳細情報入力欄142に入力、編集したデータが消去され、編集する前のデータが再度表示されるようになっている。
【0031】
鋼矢板・鋼管矢板情報メニュー150には、設計条件入力欄151と、鋼矢板P2(または鋼管矢板)の詳細情報入力欄152と、登録ボタン153と、削除ボタン154と、リセットボタン155と、構造部材一覧メニュー130を表示させるための一覧へ戻るボタン156とが表示される。設計条件入力欄151には、鋼矢板P2の「設計高さ(作業面高さ)」や「海底レベル」、「干潮時の海面レベル(L.W.L)」、「満潮時の海面レベル(H.W.L)」、「設計地震震度」、「残留地下水位レベル」、「上載荷重」、「使用した設計基準図書」、「荷重条件の入力年次」等の設計条件を含んだデータが表示されるとともに、これらの各データを入力、編集できるようになっている。また、詳細情報入力欄152には、鋼矢板P2(または鋼管矢板)の「型式」や「仕様」、「タイロッド仕様」、「荷重条件」等のデータが表示されるとともに、これらの各データを入力、編集できるようになっている。そして、設計条件入力欄151および詳細情報入力欄152の各データを入力、編集してから登録ボタン153を選択(クリック)すれば、入力、編集した鋼矢板P2(または鋼管矢板)が登録され、そのデータが記憶装置6の構成部材情報テーブル612に記憶されるようになっている。一方、削除ボタン154を選択(クリック)すれば、表示中の鋼矢板P2(または鋼管矢板)に関するデータが構成部材情報テーブル612から消去されるようになっている。さらに、リセットボタン155を選択(クリック)すれば、設計条件入力欄151および詳細情報入力欄152に入力、編集したデータが消去され、編集する前のデータが再度表示されるようになっている。
【0032】
そして、鋼管杭情報メニュー140や鋼矢板・鋼管矢板情報メニュー150において、一覧へ戻るボタン146,156を選択(クリック)して構造部材一覧メニュー130を表示させ、防食対策実績ボタン136を選択(クリック)すると、図11に示す防食対策一覧メニュー160が表示される。この防食対策一覧メニュー160は、構造部材一覧メニュー130で選択された状態の構成部材に対して、過去に施された対策履歴情報を表示するもので、記憶装置6の対策履歴情報テーブル613に記憶された情報が表示されるようになっている。
【0033】
防食対策一覧メニュー160には、施設名称選択欄161と、構成部材の種別(鋼管杭または鋼矢板・鋼管矢板)を選択する種別選択ボタン162と、防食対策の対象構成部材を選択する構成部材選択欄163と、構成部材の防食対策対象部位を選択する部位選択欄164と、防食対策対象面積を入力する防食面積入力欄165と、過去に施された防食対策を一覧表示する防食対策一覧表166と、新規登録ボタン167と、編集ボタン168と、構造部材一覧メニュー130を表示させるための構造部材一覧へ戻るボタン169とが表示される。防食対策一覧表166には、防食対策の使用フラグ、実施回数、仕様、耐久年数、施工面積、施工年および施工月が表示されている。
【0034】
防食対策一覧メニュー160において、施設名称選択欄161で施設名称を選択し、種別選択ボタン162で構成部材の種別を選択し、構成部材選択欄163で防食対策の対象構成部材を選択し、部位選択欄164で部位を選択した状態で、防食対策一覧表166中の1つの防食対策を選択(ダブルクリック)する、または編集ボタン168を選択(クリック)すると、図12に示す防食対策情報メニュー170が表示される。ここで、新規登録ボタン167を選択(クリック)すると、データが未入力の防食対策情報メニュー170が表示されるようになっている。
【0035】
防食対策情報メニュー170には、施設名称や構成部材の種別、部位、防食対象面積等の一般情報を表示する防食対策一般情報表示部171と、防食対策工法の仕様を選択する対策工法選択欄172と、選択した工法における耐久年数や施工面積、施工年次、施工月次、工区・工事名称、施工会社、工事費用、使用フラグ等の詳細情報を入力するための防食対策工法詳細情報入力部173と、登録ボタン174と、削除ボタン175と、リセットボタン176と、防食対策一覧メニュー160を表示させるための一覧へ戻るボタン177とが表示される。そして、防食対策工法詳細情報入力部173の各データを入力、編集してから登録ボタン174を選択(クリック)すれば、入力、編集したデータが登録され、そのデータが記憶装置6の対策履歴情報テーブル613に記憶されるようになっている。一方、削除ボタン175を選択(クリック)すれば、表示中の防食対策工法に関するデータが対策履歴情報テーブル613から消去されるようになっている。さらに、リセットボタン176を選択(クリック)すれば、防食対策工法詳細情報入力部173に入力、編集したデータが消去され、編集する前のデータが再度表示されるようになっている。
【0036】
そして、防食対策一覧メニュー160において、構造部材一覧へ戻るボタン169を選択(クリック)して構造部材一覧メニュー130を表示させ、さらに構造物一覧へ戻るボタン137を選択(クリック)して構造物一覧メニュー110に戻り、施設管理履歴一覧ボタン115を選択(クリック)すると、図13に示す設備管理履歴一覧メニュー180が表示される。この設備管理履歴一覧メニュー180は、港湾施設における管理履歴情報を表示するもので、記憶装置6の施設管理情報テーブル611に記憶された情報が表示されるようになっている。
【0037】
設備管理履歴一覧メニュー180には、施設名称選択欄181と、構成部材の種別(鋼管杭または鋼矢板・鋼管矢板)を選択する種別選択ボタン182と、港湾施設において過去に施された防食、補修、補強等の対策記録を一覧表示する対策記録一覧表183と、新規登録ボタン184と、編集ボタン185と、構造物一覧メニュー110を表示させるための構造物一覧へ戻るボタン186とが表示される。対策記録一覧表183には、各対策の「施工年」、「施工月」、「実施内容」、「規模」、「対象部位」、および「金額」が表示されている。
【0038】
設備管理履歴一覧メニュー180において、施設名称選択欄181で施設名称を選択し、種別選択ボタン182で構成部材の種別を選択した状態で、対策記録一覧表183中の1つの対策記録を選択(ダブルクリック)する、または編集ボタン185を選択(クリック)すると、図14に示す設備管理情報メニュー190が表示される。ここで、新規登録ボタン184を選択(クリック)すると、データが未入力の設備管理情報メニュー190が表示されるようになっている。
【0039】
設備管理情報メニュー190には、施設名称や構成部材の種別等の一般情報を表示する管理記録一般情報表示部191と、当該管理記録における施工年、施工月、実施内容、工事規模、工事対象部位、工事金額や、工事図面、計算書、工事記録の有無、施工会社等の詳細情報を入力するための管理記録詳細情報入力部192と、登録ボタン193と、削除ボタン194と、リセットボタン195と、設備管理履歴一覧メニュー180を表示させるための一覧へ戻るボタン196とが表示される。そして、管理記録詳細情報入力部192の各データを入力、編集してから登録ボタン193を選択(クリック)すれば、入力、編集したデータが登録され、そのデータが記憶装置6の施設管理情報テーブル611に記憶されるようになっている。一方、削除ボタン194を選択(クリック)すれば、表示中の防食対策工法に関するデータが施設管理情報テーブル611から消去されるようになっている。さらに、リセットボタン195を選択(クリック)すれば、管理記録詳細情報入力部192に入力、編集したデータが消去され、編集する前のデータが再度表示されるようになっている。
【0040】
以上の構造物入力処理手段51が終了すると、図2のフローチャートに示すように、再び処理メニュー100が表示装置2に表示される(S1)。
この処理メニュー100において、帳票印刷メニュー102を選択(クリック)すると、図15に示す帳票印刷処理メニュー200が表示される。帳票印刷処理メニュー200には、構造物名称選択欄201と、印刷対象を選択する印刷対象選択欄202と、印刷を実行するための帳票印刷ボタン203と、処理メニュー100を表示させるためのメニューへ戻るボタン204とが表示される。印刷対象選択欄202には、帳票印刷の対象である構造物情報、構造部材(鋼管杭)情報、防食対策(鋼管杭)情報、構造部材(鋼矢板・鋼管矢板)情報、および防食対策(鋼矢板・鋼管矢板)情報と、これらの印刷対象を選択するためのチェックボックスが表示されている。そして、チェックボックスをチェックして印刷対象を選択した状態で、帳票印刷ボタン203を選択(クリック)すると、処理装置5の印刷処理手段592が起動され、選択した情報が印刷装置4で印刷される。
【0041】
次に、処理メニュー100において、工法一覧メニュー103を選択すると(S4)、防食対策工法入力処理手段52が起動され、その処理が実行される(S5)。
防食対策工法入力処理手段52は、表示装置2に各種の情報画面や入力画面を表示し、鋼構造物の構成部材である鋼管杭P1や鋼矢板P2に対して施工可能な防食対策工法情報を入力装置3から利用者に入力させ、入力された情報を記憶装置6の防食対策工法情報テーブル62に記憶する。
【0042】
防食対策工法入力処理手段52は、まず、表示装置2に、図16に示す防食対策工法の工法一覧メニュー210を表示する。工法一覧メニュー210には、工法一覧表211と、新規登録ボタン212と、編集ボタン213と、処理メニュー100を表示させるためのメニューへ戻るボタン214とが表示される。
工法一覧表211には、「工法名」、「表示名」、および「耐用年数」のそれぞれの欄に防食対策工法に関するデータが表示されている。
工法一覧メニュー210において、工法一覧表211中の1つの対策工法を選択(ダブルクリック)する、または編集ボタン213を選択(クリック)すると、図17に示す工法情報メニュー220が表示される。ここで、新規登録ボタン212を選択(クリック)すると、データが未入力の工法情報メニュー220が表示されるようになっている。
【0043】
工法情報メニュー220には、工法名選択欄221と、表示名入力欄222と、仕様入力欄223と、耐用年数入力欄224と、適用可能種別入力欄225と、適用可能部位入力欄226と、単価入力欄227と、登録ボタン228と、リセットボタン229aと、工法一覧メニュー210を表示させるための一覧へ戻るボタン229bとが表示される。適用可能種別入力欄225には、鋼管杭、鋼矢板、および鋼管矢板の各構成部材を選択するためのチェックボックスが表示され、このチェックボックスをチェックした構成部材に対して当該工法が適用可能であることを設定する。また、適用可能部位入力欄225には、鋼管杭P1や鋼矢板P2の部位ごとに当該対策工法が適用可能か否かを入力するためのチェックボックスが表示され、このチェックボックスをチェックした部位に対して当該工法が適用可能であることを設定する。さらに、適用可能部位入力欄225は、新設および補修/更新のいずれかの場合、または両方の場合に当該対策工法が適用可能か否かを入力するためのチェックボックスが表示されている。また、単価入力欄227には、施工場所(工場や陸上、または現地)や、素地調整グレード、新設か更新かに応じて当該対策工法の施工面積当たりの単価が入力可能になっている。
【0044】
そして、工法情報メニュー220において、工法名選択欄221を選択し、表示名入力欄222、仕様入力欄223、耐用年数入力欄224、適用可能種別入力欄225、適用可能部位入力欄226、および単価入力欄227にそれぞれデータを入力、編集してから登録ボタン228を選択(クリック)すれば、入力、編集したデータが登録され、そのデータが記憶装置6の防食対策工法情報テーブル62に記憶されるようになっている。また、リセットボタン229aを選択(クリック)すれば、各部に入力、編集したデータが消去され、編集する前のデータが再度表示されるようになっている。
そして、一覧へ戻るボタン229bを選択(クリック)して工法一覧メニュー210に戻り、工法一覧メニュー210のメニューへ戻るボタン214を選択(クリック)すると、防食対策工法入力処理手段52が終了し、図2のフローチャートに示すように、再び処理メニュー100が表示装置2に表示される(S1)。
【0045】
次に、処理メニュー100において、劣化状況・構造物診断メニュー104を選択すると(S6)、腐食速度推定処理手段53が起動され、その処理が実行される(S61)。 腐食速度推定処理手段53は、表示装置2に各種の情報画面や入力画面を表示し、実測データに基づく腐食速度推定式と、環境因子に基づく腐食速度推定式と、利用者入力による腐食速度推定式と、の3つの推定式うちのいずれかを選択させ、入力された腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定する。
具体的には、実測データに基づく腐食速度推定式が選択された場合には、所定の複数施設において実測された腐食データから予め設定された腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定し、環境因子に基づく腐食速度推定式が選択された場合には、環境因子情報の入力欄に入力された環境因子情報をパラメータとする腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定し、利用者入力による腐食速度推定式が選択された場合には、腐食速度推定式の入力欄に入力された腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定する。
【0046】
腐食速度推定処理手段53は、まず、表示装置2に、図18に示す腐食速度推定メニュー300を表示する。腐食速度推定メニュー300には、構造物選択欄301と、構成部材の種別選択欄302と、構成部材名称選択欄303と、防食対策選択欄304と、構成部材の部位ごとの腐食速度推定式選択欄305a〜305eとが表示される。さらに、腐食速度推定メニュー300には、前記防食対策一覧メニュー160を表示させる防食対策実績ボタン310と、対策計画選択処理手段54を起動させるための防食対策計画ボタン311と、構成部材の劣化状況を表示させる劣化状況グラフ表示ボタン312と、構造物診断処理手段55を起動させるための構造物診断ボタン313と、リセットボタン314と、処理メニュー100を表示させるためのメニューへ戻るボタン315とが表示される。
【0047】
腐食速度推定メニュー300の防食対策選択欄304では、過去に施された防食対策のみを考慮して劣化状況や構造物診断を実行する「実績のみ」と、過去に施された防食対策および将来実施する計画の防食対策を考慮して劣化状況や構造物診断を実行する「実績+計画」とが選択可能である。そして、「実績+計画」を選択した場合には、後述する防食対策計画の種別が選択できるようになっている。
また、構成部材の部位ごとの腐食速度推定式選択欄305a〜305dでは、それぞれ実測データに基づく腐食速度推定式(上段)と、環境因子に基づく腐食速度推定式(中段)と、利用者入力による腐食速度推定式(下段)との3つのうち、いずれかの腐食速度推定式が選択できるようになっている。なお、本実施形態では、海土中の部位に関する腐食速度推定式選択欄305eでは、実測データに基づく腐食速度推定式(上段)と、利用者入力による腐食速度推定式(下段)との2つのうち、いずれかの腐食速度推定式が選択できるようになっている。
【0048】
ここで、腐食速度推定式選択欄305a〜305eにおいて、実測データに基づく腐食速度推定式(上段)が選択された場合には、記憶装置6の腐食速度推定式情報63に格納された実測データに基づく推定式631が読み出され、この推定式631に基づいて腐食速度が算出される。
また、腐食速度推定式選択欄305a〜305dにおいて、環境因子に基づく腐食速度推定式(中段)が選択された場合には、6つの入力欄306a〜306fに入力された環境因子情報をパラメータとして、記憶装置6の腐食速度推定式情報63に格納された環境因子に基づく推定式632が読み出され、この推定式632に基づいて腐食速度が算出される。これらの環境因子情報としては、海水の水素イオン濃度(pH、ペー・ハー)、塩化物イオン濃度(Cl- )、アンモニアイオン濃度(NH3+)、導電率、溶存酸素量(DO)、および水温を入力する。
また、腐食速度推定式選択欄305a〜305eにおいて、利用者入力による腐食速度推定式(下段)が選択された場合には、入力欄307に入力された腐食速度推定式を用いて腐食速度が算出される。
【0049】
腐食速度推定メニュー300において、防食対策計画ボタン311を選択(クリック)すると、対策計画選択処理手段54が起動され、図19に示す防食対策計画一覧メニュー320が表示される。この防食対策計画一覧メニュー320は、前述した防食対策工法入力処理手段52によって記憶装置6の防食対策工法情報テーブル62に記憶された情報が表示されるようになっている。
防食対策計画一覧メニュー320には、施設名称選択欄321と、構成部材の種別(鋼管杭または鋼矢板・鋼管矢板)を選択する種別選択ボタン322と、防食対象構造体選択欄323と、防食対策計画の組み合わせ番号を選択する防食対策計画選択欄324と、構成部材の部位を選択する部位選択欄325と、防食対策を一覧表示する防食対策一覧表326とが表示される。さらに、防食対策計画一覧メニュー320には、計画情報複写ボタン327と、新規登録ボタン328と、編集ボタン329aと、防食対策計画一覧メニュー320を閉じて腐食速度推定メニュー300を表示させるための閉じるボタン137とが表示される。防食対策計画選択欄324で選択可能な防食対策計画の組み合わせとしては、例えば5つの組み合わせまで選択可能になっており、1から5までの番号のいずれかを選択することとなる。
【0050】
防食対策一覧表326には、「使用フラグ」、「施工防食仕様」、「新設/補修」、「耐用年数」、「施工年」、および「施工月」のそれぞれの欄に防食対策に関するデータが表示されている。
そして、防食対策計画一覧メニュー320において、施設名称選択欄321、種別選択ボタン322、防食対象構造体選択欄323、防食対策計画選択欄324、および部位選択欄325の情報を選択してから、防食対策一覧表326中の1つの防食対策を選択(ダブルクリック)する、または編集ボタン329aを選択(クリック)すると、図20に示す防食対策計画情報メニュー330が表示される。ここで、新規登録ボタン328を選択(クリック)すると、データが未入力の防食対策計画情報メニュー330が表示されるようになっている。さらに、計画情報複写ボタン327を選択(クリック)すると、図21に示す防食対策計画情報複写処理メニュー340が表示される。
【0051】
防食対策計画情報メニュー330には、施設名称や構成部材の種別、部位、防食対象構造体名称、防食対策計画等の一般情報を表示する防食対策計画一般情報表示部331と、防食対策計画の対象構造物が新設か補修・更新かを選択する選択欄332と、防食対策計画における防食法や防食仕様、新設区分、素地調整グレード、耐久年数、施工年次、施工月次、使用フラグ等の詳細情報を入力するための防食対策計画詳細情報入力部333と、登録ボタン334と、削除ボタン335と、リセットボタン336と、防食対策計画一覧メニュー320を表示させるための一覧へ戻るボタン337とが表示される。そして、防食対策計画詳細情報入力部333の各データを選択、入力、編集してから登録ボタン334を選択(クリック)すれば、入力、編集したデータが登録される。一方、削除ボタン335を選択(クリック)すれば、表示中の防食対策計画に関するデータが消去されるようになっている。さらに、リセットボタン336を選択(クリック)すれば、防食対策計画詳細情報入力部333に入力、編集したデータが消去され、編集する前のデータが再度表示されるようになっている。
【0052】
防食対策計画情報複写処理メニュー340には、施設名称や構成部材の種別、防食対象構造体名称等の一般情報を表示する防食対策計画一般情報表示部341と、既に設定した防食対策計画の情報を他の防食対策計画に複写するために複写先の防食対策計画を選択する選択欄342と、複写を実行する実行ボタン343と、防食対策計画一覧メニュー320を表示させるための一覧へ戻るボタン344とが表示される。そして、選択欄342で複写先の防食対策計画の番号を選択してから、実行ボタン343を選択(クリック)すれば、既に設定した複写元の防食対策計画の情報が複写先の防食対策計画に複写される。
以上の対策計画選択処理手段54が終了して防食対策計画一覧メニュー320を閉じると、腐食速度推定メニュー300が再度表示される。
【0053】
次に、腐食速度推定メニュー300において、劣化状況グラフ表示ボタン312を選択(クリック)すれば、作図処理手段591が起動され、図22に示す劣化状況結果グラフ350が表示される。劣化状況結果グラフ350では、鋼管杭P1や鋼矢板P2の各部位が前述した腐食速度推定式で算出される腐食速度で腐食した場合の将来に渡る劣化状況が表示される。ここで、劣化状況としては、後述する構造物診断処理手段55で算出される構成部材の各部位ごとの応力度比351と、管理基準である管理上限界性能352とが表示される。
【0054】
次に、腐食速度推定メニュー300において、構造物診断ボタン313を選択(クリック)すると、構造物診断処理手段55が起動され、その処理が実行される(S62)。そして、図23に示す構造物診断メニュー360が表示される。
構造物診断処理手段55は、対策計画選択処理手段54で登録した防食対策工法および腐食速度推定処理手段53で選択した推定式に基づく腐食速度によって算出される鋼管杭P1や鋼矢板P2の各部位ごとの有効部材断面と、構成部材情報テーブル612に記憶された設計条件とに基づき、記憶装置6の応力算定式情報65に格納された鋼管杭の応力算定式や鋼矢板の応力算定式を読み出し、これらの応力算定式に基づいていて鋼管杭P1や鋼矢板P2の部位ごとに生じる応力(曲げモーメントや軸力、せん断力等)および応力度比を算出する。
【0055】
構造物診断メニュー360には、施設名称や構成部材の種別、構造部材名称、防食対策種別等の一般情報を表示する構造物一般情報表示部361と、構成部材情報テーブル612から読み出した鋼管杭P1や鋼矢板P2の構成部材情報(天端や下端のレベル、使用鋼種、外径、肉厚等)を表示する構成部材情報表示部362と、設計条件(干潮時の海面レベル(L.W.L)や満潮時の海面レベル(H.W.L)、荷重条件等)を表示する設計条件表示部363とが表示される。さらに、構造物診断メニュー360には、構造物診断グラフ作成ボタン364と、応力図作成ボタン365と、リセットボタン366と、構造物診断処理手段55を終了して腐食速度推定メニュー300を表示させるための戻るボタン367とが表示される。構造物診断メニュー360の設計条件表示部363には、管理上限界性能入力欄363aが表示されており、この管理上限界性能入力欄363aに管理上限界性能(管理基準)を入力する。すなわち、構造物診断処理手段55の機能の一部として管理基準入力処理手段56が構成され、これにより管理基準入力処理が実行される(S63)。
【0056】
構造物診断メニュー360において、構造物診断グラフ作成ボタン364を選択(クリック)すると、作図処理手段591が起動され、図24に示すような構造物診断グラフ370が表示装置2に表示される(S64)。この構造物診断グラフ370において、構成部材の各部位ごとの応力度比371の経年変化に重ねて管理上限界性能372が表示されるようになっており、構成部材の余裕度(耐荷重性状)が確認できるようになっている。
また、構造物診断メニュー360において、応力図作成ボタン365を選択(クリック)すると、作図処理手段591が起動され、図25に示すような応力図(モーメント図)375が表示装置2に表示される(S64)。この応力図375において、応力度比376に重ねて管理上限界性能377が表示されるようになっており、構成部材の余裕度(耐荷重性状)が確認できるようになっている。
以上の構造物診断処理手段55および作図処理手段591が終了し腐食速度推定メニュー300に戻り、メニューへ戻るボタン315を選択(クリック)すると、図2のフローチャートに示すように、再び処理メニュー100が表示装置2に表示される(S1)。
【0057】
次に、処理メニュー100において、LCC評価(構造部材)メニュー105またはLCC評価(構造物)メニュー106を選択すると(S7)、ライフサイクルコスト算出手段57が起動され、その処理が実行される(S71)。
LCC評価(構造部材)メニュー105が選択された場合には、鋼構造物の構造部材(鋼管杭P1や鋼矢板P2)単位でLCC評価が実施され、図26に示すLCC評価(構造部材)選択メニュー380が表示される。
【0058】
LCC評価(構造部材)選択メニュー380には、構造物を選択する構造物選択欄381と、評価年次を入力する入力欄と、対策計画選択処理手段54で登録した防食対策計画および防食対策計画の種別を選択する対策計画選択欄382と、構成部材の種別を選択する構成部材選択ボタン383と、構成部材の一覧を表示する構成部材一覧表384と、対策計画の評価条件(施工年次や施工面積等)を表示する評価条件表示部385とが表示される。さらに、LCC評価(構造部材)選択メニュー380には、防食対策計画一覧メニュー320を表示させる防食対策計画確認ボタン386と、LCC評価グラフを表示させるLCC評価グラフ表示ボタン387と、リセットボタン389aと、処理メニュー100を表示させるためのメニューへ戻るボタン389bとが表示される。
【0059】
LCC評価(構造部材)選択メニュー380において、構造物選択欄381で構造物を選択し、対策計画選択欄382で対策計画を選択し、構成部材一覧表384で対象構成部材を選択した状態で、LCC評価グラフ表示ボタン387を選択(クリック)すると、作図処理手段591が起動され(S72)、図27に示すLCC評価結果(構造部材1対策計画)390が表示される。このLCC評価結果(構造部材1対策計画)390では、将来に渡る年次を横軸にして対策コストを縦軸にしたグラフが表示されており、選択した鋼管杭P1の各部位ごとの将来に渡って発生するコスト、および各部位を合計したコストが表示されるようになっている。
【0060】
次に、処理メニュー100において、LCC評価(構造物)メニュー106が選択された場合には、鋼構造物全体でLCC評価が実施され、図28に示すLCC評価(構造物)選択メニュー400が表示される。
LCC評価(構造物)選択メニュー400には、構造物を選択する構造物選択欄401と、評価年次を入力する入力欄と、対策計画の出力パターンを選択するパターン選択欄402と、構造物における構成部材ごとに対策計画の出力パターンを設定するパターン設定表403と、対策計画のパターンごとの組み合わせを設定する選択テーブル404と、対策計画の評価条件(施工年次や施工面積等)を表示する評価条件表示部405とが表示される。さらに、LCC評価(構造物)選択メニュー400には、点検費用を入力する点検費用入力欄406と、防食対策計画一覧メニュー320を表示させる防食対策計画確認ボタン407と、LCC評価グラフを表示させるLCC評価グラフ表示ボタン408と、リセットボタン409aと、処理メニュー100を表示させるためのメニューへ戻るボタン409bとが表示される。
【0061】
ここで、対策計画のパターンとしては、前記防食対策計画一覧メニュー320において、防食対策計画選択欄324で設定した5つまでの防食対策計画を、各部位ごとに任意に選択することで最大25種類のパターンが想定されるが、そのうちの5パターンが設定可能である。このように防食対策計画を複数パターン設定しておくことで、後述のLCC評価グラフ410において、それら複数パターンの防食対策計画を比較検討することができるようになっている。
【0062】
LCC評価(構造物)選択メニュー400において、構造物選択欄401で構造物を選択し、パターン選択欄402で出力パターンを選択した状態で、LCC評価グラフ表示ボタン408を選択(クリック)すると、作図処理手段591が起動され(S72)、図29に示すLCC評価結果(構造物)410が表示される。このLCC評価結果(構造物)410では、将来に渡る年次を横軸にして対策コストを縦軸にしたグラフが表示されており、選択した構造物における防食対策計画のパターンごと(図29においては、5パターン)の将来に渡って発生するコストが表示されるようになっている。
以上のライフサイクルコスト算出手段57および作図処理手段591が終了すると、図2のフローチャートに示すように、再び処理メニュー100が表示装置2に表示される(S1)。
【0063】
次に、処理メニュー100において、塗膜健全性評価メニュー107を選択すると(S8)、塗膜健全性評価手段58が起動され、その処理が実行される(S81)。そして、図30に示す塗膜健全性評価算定シート420が表示される。
塗膜健全性評価手段58は、鋼管杭P1や鋼矢板P2の表面に施された塗膜の劣化を考慮した解析を実行して塗膜の健全性を評価する。
塗膜健全性評価算定シート420には、塗膜表面の錆発生面積率を入力するための錆発生面積率入力欄421と、塗膜が施工されてからの経過年数を入力するための経過年数入力欄422と、塗膜の耐用年数を出力するための耐用年数出力欄423と、塗膜の残存寿命を出力するための残存寿命出力欄424と、解析を実行するためのが解析実行ボタン425と表示される。そして、錆発生面積率入力欄421に錆発生面積率を入力し、経過年数入力欄422に経過年数を入力した状態で、解析実行ボタン425を選択(クリック)すると、耐用年数出力欄423に耐用年数が出力され、残存寿命出力欄424に塗膜の残存寿命が出力されるようになっている。
以上の塗膜健全性評価手段58が終了すると、図2のフローチャートに示すように、再び処理メニュー100が表示装置2に表示される(S1)。そして、処理メニュー100の終了ボタン108を選択(クリック)することで(S9)、LCC評価システムが終了する。
【0064】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)すなわち、腐食速度推定処理手段53によって鋼構造物における鋼管杭P1や鋼矢板P2の腐食状態を推定し、この腐食により鋼管杭P1や鋼矢板P2の有効部材断面が減少した状態における応力度比を構造物診断処理手段55によって算出することで、鋼管杭P1や鋼矢板P2の耐荷重性状を適切に評価することができ、的確な補修計画を策定することができる。従って、港湾(海洋)施設における鋼構造物のライフサイクルコストを高精度に算出することができ、港湾(海洋)施設の維持管理に係る手間やコストを大幅に削減することができる。
【0065】
(2)そして、建設記録等を含んだ施設管理情報テーブル611や鋼管杭P1や鋼矢板P2の設計条件等を含んだ構成部材情報テーブル612を備えていることで、当該施設の建設当時から現在に至るまでの管理履歴を一括して管理することができ、将来に渡る補修計画の策定における精度を向上させることができる。従って、建設記録や設計資料等を紙の形で保管していた従来の方法と比較して、施設管理情報等を電子データとして記憶装置6に記憶しておくことで、情報の取り扱いが格段に容易になって補修計画の策定の手間を一層低減することができる。
【0066】
(3)さらに、過去に施された対策記録を対策履歴情報テーブル613として記憶しておくことで、鋼管杭P1や鋼矢板P2の診断を行う際の精度をさらに向上させることができ、より的確な補修計画を策定することができる。
【0067】
(4)また、腐食速度推定処理手段53において、実測データに基づく腐食速度推定式と、環境因子に基づく腐食速度推定式と、利用者入力による腐食速度推定式と、の3つの推定式のうちのいずれかを選択することで、施設の立地条件や周辺環境条件等に応じて、当該システムの利用者が腐食速度推定式を任意に選択することができ、腐食速度の推定精度を向上させることができる。
【0068】
(5)さらに、ライフサイクルコスト算出手段57において、施工時期や防食対策工法を任意に選択した防食対策計画の複数のパターンを比較することで、将来に渡る施設の利用計画等に応じて柔軟な補修計画を策定することができ、ライフサイクルコストの低減を効率よく図ることができる。
【0069】
(6)また、塗膜健全性評価手段58を備えたことで、構成部材表面に施された塗膜の健全性(塗膜の残存寿命)を、錆発生面積率および経過年数に基づいて算出でき、鋼管杭P1や鋼矢板P2の非腐食期間を推定することができ、鋼構造物における腐食の進行状態をより一層正確に把握することができる。
【0070】
(7)さらに、鋼管杭P1や鋼矢板P2の種類に対応した応力算定式情報65を記憶装置6に記憶していることで、鋼管杭P1や鋼矢板P2の応力解析を迅速かつ正確に実施することができ、構成部材ごとの診断精度および速度を向上させることができる。
【0071】
(8)また、海土中部、海中部、干満部、飛沫部、および大気部の各部位ごとに鋼管杭P1や鋼矢板P2を分けて評価することで、各部位ごとに異なる腐食速度や部材断面等を適切に評価した診断や対策計画選択が実行でき、ライフサイクルコストの算出精度をさらに向上させることができる。
【0072】
(9)また、防食対策工法情報テーブル62において、防食対策工法ごとに、工法の仕様、耐用年数、適用可能な構造部材、適用可能な構造部材の部位、および単価の各データが入力されていることで、防食対策工法の選択が容易になるとともに、迅速にライフサイクルコストを算出することができる。
【0073】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態においては、表示装置2に各種のメニュー画面を表示させ、これらの画面上の入力欄にデータを入力したり、選択欄からデータを選択したりする会話形式で各種処理を実行するものとしたが、このような形式に限らず、一括のバッチ処理で各処理手段53〜58を実行するような構成であってもよい。
【0074】
また、前記実施形態のLCC評価システムは、ライフサイクルコスト算出手段57によって将来に渡って発生する補修コストを表示し、この出力を利用者が検討するような構成であったが、これに限らず、例えば、施設の耐用年数を入力するようにし、この耐用年数と施設管理基準とに基づいて、耐用年数中において施設管理基準を超えないような防食対策計画を自動的に策定する構成であってもよい。すなわち、図2のフローチャートにおいて管理基準入力処理(S63)の後に、応力度比と施設管理基準とを比較するステップを設け、この比較結果に応じて防食対策工法の施工間隔等を再設定し、再度構造物診断処理(S62)を実行させるような構成とすることで、最適な防食対策計画を策定することができるようになる。
さらに、耐用年数中に応力度比が施設管理基準を超えてしまうような場合には、設計条件(荷重条件)を変更する、すなわち施設の使用条件を見直した上で、再度LCC評価を実施するような機能を付加してもよい。
また、前記実施形態では、港湾施設における鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムについて説明したが、施設としては、外洋の石油掘削ジャケットなどの海洋施設であってもよい。その場合には、鋼構造物であるジャケット等の耐荷重性状を適切に評価するために、トラス構造の応力解析や疲労解析等を実行するシステムを、本発明のLCC評価システムに内蔵してもよく、またLCC評価システムと連動可能に別途備えていてもよい。
【0075】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施形態に係る鋼構造物のライフサイクルコスト(LCC)評価システムの構成を示すブロック図である。
【図2】前記LCC評価システムの動作を示すフローチャートである。
【図3】前記LCC評価システムの評価対象である鋼構造物の構成部材としての鋼管杭を示す断面図である。
【図4】前記LCC評価システムの評価対象である鋼構造物の構成部材としての鋼矢板を示す断面図である。
【図5】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される処理メニューを示す図である。
【図6】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される構造物一覧メニューを示す図である。
【図7】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される構造物情報メニューを示す図である。
【図8】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される構造部材一覧メニューを示す図である。
【図9】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される鋼管杭情報メニューを示す図である。
【図10】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される鋼矢板・鋼管矢板情報メニューを示す図である。
【図11】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される防食対策一覧メニューを示す図である。
【図12】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される防食対策情報メニューを示す図である。
【図13】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される設備管理履歴一覧メニューを示す図である。
【図14】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される設備管理情報メニューを示す図である。
【図15】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される帳票印刷処理メニューを示す図である。
【図16】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される防食対策工法の工法一覧メニューを示す図である。
【図17】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される工法情報メニューを示す図である。
【図18】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される腐食速度推定メニューを示す図である。
【図19】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される防食対策計画一覧メニューを示す図である。
【図20】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される防食対策計画情報メニューを示す図である。
【図21】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される防食対策計画情報複写処理メニューを示す図である。
【図22】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される劣化状況結果グラフを示す図である。
【図23】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される構造物診断メニューを示す図である。
【図24】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される構造物診断結果を示す図である。
【図25】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される応力図を示す図である。
【図26】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示されるLCC評価選択メニューを示す図である。
【図27】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示されるLCC評価結果を示す図である。
【図28】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示されるLCC評価選択メニューを示す図である。
【図29】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示されるLCC評価結果を示す図である。
【図30】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される塗膜健全性評価算定シートを示す図である。
【符号の説明】
【0077】
2…表示装置(表示手段)、3…入力装置(入力手段)、5…処理装置(処理手段)、6…記憶装置(記憶手段)、53…腐食速度推定処理手段、54…対策計画選択処理手段、55…構造物診断処理手段、56…管理基準入力処理手段、57…ライフサイクルコスト算出手段、58…塗膜健全性評価手段、62…防食対策工法情報テーブル、63…腐食速度推定式情報、65…応力算定式情報、611…施設管理情報テーブル、612…構成部材情報テーブル、613…対策履歴情報テーブル、P1…鋼管杭(構成部材)、P2…鋼矢板(構成部材)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾、海洋施設における鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート構造物のライフサイクルコスト評価システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載されたライフサイクルコスト評価システムは、気象環境データや地域別コンクリート配合データ、評価対象構造物データ、地図データを含むデータベースと、これらの各データ、地点および評価対象コンクリート構造物の特性データに基づいてコンクリートの劣化指標およびライフサイクルコストを算出する手段とを備えたものであって、電子化された各データをコンピュータを用いて処理することで、維持管理に係るライフサイクルコストを効率的に算出でき、コンクリート構造物の点検、補修を計画的に行うために考案されたものである。
特許文献1の他にも、港湾施設の1つである桟橋におけるコンクリート構造物の上部工を対象としたライフサイクルコスト評価システムや、水門施設を対象としたライフサイクルコスト評価システムが考案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−161693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のようなコンクリート構造物を対象としたライフサイクルコスト評価システムや、その他の構造物を対象としたライフサイクルコスト評価システムは提案されているものの、鋼構造物、特に、海水による腐食(錆)の影響を著しく受ける港湾、海洋施設における鋼構造物を対象としたライフサイクルコスト評価システムはなく、その開発が望まれていた。
すなわち、港湾、海洋施設における鋼構造物においては、腐食によって徐々に耐力上有効な鋼構造部材の部材断面が小さく(肉厚が薄く)なり、部材断面が減少した状態での耐荷重性状を適正に評価した上で補修計画を策定し、これに基づいてライフサイクルコストを算出することが重要である。しかし、従来のライフサイクルコスト評価システムは、腐食を考慮した構造物の耐荷重性状を評価するものではないため、このシステムを港湾、海洋施設における鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムとして用いたとしても、適切な評価結果が得られず、的確な補修計画を策定することができない。
【0005】
本発明の目的は、港湾、海洋施設における鋼構造物の耐荷重性状を適切に評価して的確な補修計画を策定することができる鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムは、港湾、海洋施設における鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムであって、情報入力用の入力手段と、各種情報を記憶する記憶手段と、情報表示用の表示手段と、情報を処理する処理手段とを備え、前記記憶手段には、当該施設の建設記録や設計条件等を含んだ施設管理情報と、鋼構造物を構成する鋼管杭や鋼矢板等の構成部材の部材リストを含んだ構成部材情報と、前記構成部材に施す防食対策工法を含んだ防食対策工法情報と、が少なくとも記憶され、前記処理手段は、前記構成部材の腐食速度を推定する腐食速度推定処理手段と、前記入力手段から当該施設の管理基準を入力させる管理基準入力処理手段と、前記防食対策工法情報内の防食対策工法を表示手段に表示して前記入力手段から選択させる対策計画選択処理手段と、前記構成部材の診断を行う診断処理手段と、前記入力した管理基準、前記選択した防食対策工法、および診断処理手段の診断結果に基づいて鋼構造物のライフサイクルコストを算出するライフサイクルコスト算出手段とを備え、前記腐食速度推定処理手段は、前記構成部材の部位ごとに少なくとも2種類の腐食速度推定式を選択させ、かつ選択された腐食速度推定式に基づいて当該構成部材の部位ごとに腐食速度を推定し、前記対策計画選択処理手段は、前記構成部材の部位ごとに前記防食対策工法情報から任意の防食対策工法を選択させ、前記診断処理手段は、前記選択した防食対策工法および前記推定された腐食速度によって算出される前記構成部材の部位ごとの有効部材断面と、前記施設管理情報に含まれた設計条件の作用荷重と、に基づいて当該構成部材の部位ごとに生じる応力度比を算出するとともに、前記入力された施設管理基準と前記算出された応力度比とを比較可能に前記表示手段に表示し、前記ライフサイクルコスト算出手段は、前記対策計画選択処理手段にて選択された防食対策工法に伴うコストを前記表示手段に表示することを特徴とする。
【0007】
ここで、本発明の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムは、前記入力手段、記憶手段、表示手段、処理手段の各機能がコンピュータで実現されるシステムであることが望ましく、このコンピュータで実行されるプログラムであってもよい。プログラムである場合には、コンピュータで読み取り可能な記録媒体(内部記録媒体または外部記録媒体)に記録されていることが望ましい。そして、鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムがプログラムである場合には、入力手段がキーボードやテンキー、マウス等の入力装置から構成され、記憶手段がハードディスク、メモリ等の記憶装置から構成され、表示手段がCRTディスプレイや液晶ディスプレイ等の表示装置から構成され、処理手段がCPU等の処理装置(制御装置)から構成されることが望ましい。また、プログラムを記録する記録媒体としては、内部記録媒体としてのメモリ装置やハードディスク装置(HDD)、外部記録媒体としてのCDや、DVD、USBメモリ等が利用可能である。
【0008】
以上の本発明によれば、腐食速度推定処理手段によって鋼構造物における構成部材の腐食状態を推定し、この腐食により構成部材の有効部材断面が減少した状態における応力度比を診断処理手段によって算出することで、構成部材の耐荷重性状を適切に評価することができ、的確な補修計画を策定することができる。従って、港湾施設や海洋施設における鋼構造物のライフサイクルコストを高精度に算出することができ、施設の維持管理に係る手間やコストを大幅に削減することができる。
また、建設記録や設計条件等を含んだ施設管理情報を備えていることで、当該施設の建設当時から現在に至るまでの管理履歴を一括して管理することができ、将来に渡る補修計画の策定における精度を向上させることができる。つまり、従来、施設の建設記録や設計資料(計算書や図面等)は、紙の形で保管されていることが多く、補修計画を策定する上で非常に手間が掛かっていたのであるが、本ライフサイクルコスト評価システムのように、施設管理情報を電子データとして記憶手段に記憶しておくことで、情報の取り扱いが格段に容易になって補修計画の策定の手間を一層低減することができる。
【0009】
さらに、本発明の請求項2に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムは、請求項1に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、前記記憶手段には、鋼構造物において過去に施された防食、補修、補強等の対策記録を含んだ対策履歴情報が記憶されていることを特徴とする。
このような構成によれば、過去に施された対策記録を対策履歴情報として記憶しておくことで、構成部材の診断を行う際の精度をさらに向上させることができ、より的確な補修計画を策定することができる。
【0010】
また、本発明の請求項3に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムは、請求項1または請求項2に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、前記対策計画選択処理手段は、計画時から将来の所定期間における1以上の施工時期と、この施工時期ごとに実施する任意の防食対策工法とを選択させることを特徴とする。
このような構成によれば、施工時期や防食対策工法を任意に選択することで、将来に渡る施設の利用計画等に応じて柔軟な補修計画を策定することができ、ライフサイクルコストの低減を効率よく図ることができる。
【0011】
また、本発明の請求項4に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムは、請求項1から請求項3のいずれかに記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、前記腐食速度推定処理手段は、実測データに基づく腐食速度推定式と、環境因子に基づく腐食速度推定式と、利用者入力による腐食速度推定式と、の3つの推定式のうちのいずれかを選択させ、実測データに基づく腐食速度推定式が選択された場合には、所定の複数施設において実測された腐食データから予め設定された腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定し、環境因子に基づく腐食速度推定式が選択された場合には、環境因子情報の入力欄を前記表示手段に表示し、かつ入力された環境因子情報をパラメータとする腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定し、利用者入力による腐食速度推定式が選択された場合には、腐食速度推定式の入力欄を前記表示手段に表示し、かつ入力された腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定することを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、当該施設の立地条件や周辺環境条件等に応じて、当該システムの利用者が腐食速度推定式を3つの推定式から任意に選択することができ、腐食速度の推定精度を向上させることができる。ここで、腐食速度推定式としては、一般的な数式のみならず、腐食速度を表す数値であってもよい。この際、実測データに基づく腐食速度推定式は、公共機関によって公開された実測データを用いてもよく、利用者が独自に調査した実測データを用いてもよく、さらに、これらの実測データを合わせて設定されるものであってもよい。また、環境因子に基づく腐食速度推定式における環境因子としては、海水の水素イオン濃度(pH、ペー・ハー)、塩化物イオン濃度(Cl- )、アンモニアイオン濃度(NH3+)、導電率、溶存酸素量(DO)、および水温が挙げられる。さらに、利用者が独自に腐食速度を設定可能な場合には、腐食速度推定式を利用者が直接入力すればよい。
また、このような腐食速度推定式が構成部材の部位ごとに設定可能になっていることで、各部位の条件(例えば、海中にあるか、大気中にあるかなど)を反映させて、より詳細に部位ごとの腐食速度を推定することができる。
【0013】
さらに、本発明の請求項5に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムは、請求項1から請求項4のいずれかに記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、前記処理手段は、前記構成部材表面に施された塗膜の劣化を考慮して塗膜の健全性を評価する塗膜健全性評価手段を備え、前記塗膜健全性評価手段は、塗膜表面の錆発生面積率および塗膜の経過年数の入力欄を前記表示手段に表示し、かつ入力された錆発生面積率および経過年数に基づいて塗膜の残存寿命を算出することを特徴とする。
このような構成によれば、構成部材表面に施された塗膜の健全性(塗膜の残存寿命)を、錆発生面積率および経過年数に基づいて算出することで、構成部材の非腐食期間を推定することができ、鋼構造物における腐食の進行状態をより一層正確に把握することができる。
【0014】
また、本発明の請求項6に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムは、請求項1から請求項5のいずれかに記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、前記記憶手段には、前記鋼管杭や鋼矢板等の構成部材の種類に対応した応力算定式を含む応力算定式情報が記憶され、前記診断処理手段は、前記構成部材の種類に応じて前記応力算定式情報から応力算定式を選択し、選択した応力算定式に基づいて構成部材ごとに応力解析を実行して応力度比を算出することを特徴とする。
このような構成によれば、構成部材の種類に対応した応力算定式を内蔵したことで、構成部材の応力解析を迅速かつ正確に実施することができ、構成部材ごとの診断精度および速度を向上させることができる。
【0015】
また、本発明の請求項7に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムは、請求項1から請求項6のいずれかに記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、前記構成部材を評価する部位は、海底面よりも下側の海土中に位置する海土中部と、この海土中部よりも上側で干潮時の海面よりも下側に位置する海中部と、この海中部よりも上側で満潮時の海面よりも下側に位置する干満部と、この干満部よりも上側で海水の飛沫に曝される飛沫部と、この飛沫部よりも上側で大気中に露出した大気部と、から構成されることを特徴とする。
このような構成によれば、海土中部、海中部、干満部、飛沫部、および大気部の各部位ごとに構成部材を分けて評価することで、各部位ごとに異なる腐食速度や部材断面等を適切に評価した診断や対策計画選択が実行でき、ライフサイクルコストの算出精度をさらに向上させることができる。
【0016】
この際、本発明の請求項8に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムは、請求項1から請求項7のいずれかに記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、前記防食対策工法情報には、各防食対策工法ごとに、工法の仕様、耐用年数、適用可能な構造部材、適用可能な構造部材の部位、および単価の各データが入力されていることを特徴とする。
このような構成によれば、防食対策工法ごとに、工法の仕様、耐用年数、適用可能な構造部材、適用可能な構造部材の部位、および単価の各データが入力されていることで、防食対策工法の選択が容易になるとともに、迅速にライフサイクルコストを算出することができる。ここで、防食対策工法情報は、新工法が開発や実用化された際に、随時追加登録可能に構成され、また前記各データのうち、特に単価に関しては、変更された時点で随時修正可能に構成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上のような本発明の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムによれば、港湾、海洋施設における鋼構造物の耐荷重性状を適切に評価して的確な補修計画を策定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る鋼構造物のライフサイクルコスト(LCC)評価システムを示すブロック図である。図2は、LCC評価システムの動作を示すフローチャートである。図3および図4は、それぞれLCC評価システムの評価対象である鋼構造物の構成部材としての鋼管杭P1および鋼矢板P2を示す断面図である。
鋼構造物のLCC評価システムは、港湾施設における鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムであって、コンピュータ1で実現されるものである。なお、以下では港湾施設の鋼構造物に関して説明するが、本発明の施設としては、海洋施設であってもよく、この海洋施設としては、外洋の石油掘削ジャケットなどにおける鋼構造物が例示でき、その構造部材としては、鋼製梁や斜材(形鋼、パイプ)等がある。
【0019】
鋼管杭P1は、図3に示すように、桟橋等のコンクリート構造物を支持するために海底に打ち込まれたもので、それぞれ所定の板厚を有する鋼管からなる上杭、中杭(中杭1、中杭2等)および下杭から構成されている。そして、鋼管杭P1は、その長さ方向に関して下から、海土中部、海中部、干満部、飛沫部、および大気部からなる5つの部位に分けて後述のLCC評価がなされるようになっている。ここで、海土中部とは、鋼管杭P1のうち、海底面よりも下側の海土中に打ち込まれた部分であって、海中部とは、海土中部よりも上側で干潮時の海面(L.W.L)よりも下側に位置する部分であって、干満部とは、海中部よりも上側で満潮時の海面(H.W.L)よりも下側に位置する部分であって、飛沫部とは、干満部よりも上側で海水の飛沫に曝される部分であって、大気部とは、飛沫部よりも上側で大気中に露出した部分である。
一方、鋼矢板P2は、図4に示すように、護岸(岸壁)における土圧を支持するために海底に打ち込まれたもので、所定の板厚を有する波形断面の鋼板や、並列された鋼管で構成されている。そして、鋼矢板P2は、鋼管杭P1と同様に、海土中部、海中部、干満部、飛沫部、および大気部からなる5つの部位に分けてLCC評価されるようになっている。
【0020】
図1および図2において、コンピュータ1は、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ等の表示装置(表示手段)2、キーボードやテンキー、マウス等の入力装置(入力手段)3、プリンタやプロッタ等の印刷装置(印刷手段)4、CPU等の処理装置(処理手段、制御装置)5、ハードディスク、メモリ等の記憶装置(記憶手段)6を備えている。
このコンピュータ1は、港湾施設を管理する管理者が使用するスタンドアロンのコンピュータを利用してもよいし、モデムやターミナルアダプタ、ルータ等の通信機器およびISDN、ADSL、CATV、光ファイバ等の各種電気通信回線を利用してサーバ装置に接続されたコンピュータを利用してもよい。サーバ装置に接続されたコンピュータの場合には、サーバ装置側に設けられたハードディスクやメモリ等を記憶装置(記憶手段)6として利用してもよく、さらにサーバ装置側に設けられたCPU等の処理装置(処理手段)5として利用してもよい。
【0021】
コンピュータ1の記憶装置6には、港湾施設の構造物の情報である構造物情報61と、鋼管杭P1や鋼矢板P2に施す防食対策工法情報テーブル62と、鋼管杭P1や鋼矢板P2の腐食速度を推定するための腐食速度推定式情報63と、鋼管杭P1や鋼矢板P2の規格情報である構成部材規格テーブル64と、鋼管杭P1や鋼矢板P2の応力解析を実行するための応力算定式情報65とが記憶されている。
また、構造物情報61には、港湾施設の建設記録や設計条件等を含んだ施設管理情報テーブル611と、鋼管杭P1や鋼矢板P2の部材リストを含んだ構成部材情報テーブル612と、鋼管杭P1や鋼矢板P2に対して過去に施された防食、補修、補強等の対策記録を含んだ対策履歴情報テーブル613とが記憶されている。
腐食速度推定式情報63には、実測データに基づく腐食速度推定式631と、環境因子に基づく腐食速度推定式632とが記憶されている。
【0022】
処理装置5は、記憶装置6の構造物情報61および防食対策工法情報テーブル62に情報を入力するための構造物入力処理手段51および防食対策工法入力処理手段52を備えている。さらに、処理装置5は、記憶装置6に記憶された各種情報を利用して鋼構造物のライフサイクルコストを評価するための各種処理手段53〜57と、これらの各種処理手段53〜57の補助機能としての塗膜健全性評価手段58と、各種処理手段53〜57の処理結果に基づいて表示装置2に図表を表示するための作図処理手段591、および印刷装置4で印刷するための印刷処理手段592とを備えている。
ライフサイクルコストを評価するための各種処理手段としては、腐食速度推定処理手段53と、対策計画選択処理手段54と、構造物診断処理手段55と、管理基準入力処理手段56と、ライフサイクルコスト算出手段57と、が設けられている。
なお、本実施形態において、各処理手段は、コンピュータ1に組み込まれ、処理装置5で実行されるプログラムで実現されている。
【0023】
また、処理装置5には、本LCC評価システムが起動された際に最初に作動される処理メニュー表示手段(図示略)が設けられており、この処理メニュー表示手段によって、図5に示す処理メニュー100が表示装置2に表示される。
処理メニュー100には、構造物入力処理手段51を作動させて構造物情報61内のデータの新規登録、更新、削除を実行するための構造物メニュー101と、帳票印刷を実行するための帳票印刷メニュー102と、防食対策工法入力処理手段52を作動させて防食対策工法情報テーブル62内のデータの新規登録、更新、削除を実行するための工法一覧メニュー103とが設けられている。
さらに、処理メニュー100には、腐食速度推定処理手段53と、対策計画選択処理手段54と、構造物診断処理手段55と、管理基準入力処理手段56を作動させるための劣化状況・構造物診断メニュー104と、ライフサイクルコスト算出手段57を作動させるためのLCC評価メニュー105,106と、塗膜健全性評価手段58を作動させるための塗膜健全性評価メニュー107とが設けられている。LCC評価メニューは、鋼構造物の構造部材(鋼管杭P1や鋼矢板P2)単位でLCC評価を実施するLCC評価(構造部材)メニュー105と、鋼構造物全体でLCC評価を実施するLCC評価(構造物)メニュー106とに分けられている。
また、処理メニュー100には、LCC評価システムを終了させるための終了メニュー108が設けられている。
【0024】
以上のような本実施形態のLCC評価システムにおける処理手順に関して、図2のフローチャートを参照して説明する。
まず、LCC評価システムを起動すると、処理メニュー100が表示装置2に表示される(ステップ1、以下ステップを「S」と略す)。
処理メニュー100において、構造物メニュー101を選択すると(S2)、構造物入力処理手段51が起動され、その処理が実行される(S3)。
構造物入力処理手段51は、表示装置2に各種の情報画面や入力画面を表示し、港湾施設に関する施設管理情報および鋼構造物の構成部材である鋼管杭P1や鋼矢板P2に関する構成部材情報を入力装置3から利用者に入力させ、入力された情報を記憶装置6の構造物情報61に記憶する。
【0025】
構造物入力処理手段51は、まず、コンピュータ1の表示装置2に、図6に示す構造物一覧メニュー110を表示する。構造物一覧メニュー110には、構造物一覧表111と、新規登録ボタン112と、編集ボタン113と、構造部材一覧ボタン114と、施設管理履歴一覧ボタン115と、処理メニュー100を表示させるためのメニューへ戻るボタン116とが表示される。
構造物一覧表111には、「施設名称(岸壁名称)」、「工場・事業所名」、「都道府県」、「市町村」、「建設年次西暦」、および「建設年次月」のそれぞれの欄に港湾施設に関するデータが表示されている。
【0026】
構造物一覧メニュー110において、構造物一覧表111中の1つの港湾施設を選択(ダブルクリック)する、または編集ボタン113を選択(クリック)すると、図7に示す構造物情報メニュー120が表示される。ここで、新規登録ボタン112を選択(クリック)すると、データが未入力の構造物情報メニュー120が表示されるようになっている。
構造物情報メニュー120には、構造物データ入力欄121と、施設平面図欄122と、施設位置図欄123と、施設断面図欄124と、施設写真欄125と、登録ボタン126と、削除ボタン127と、リセットボタン128と、構造物一覧メニュー110を表示させるための一覧へ戻るボタン129とが表示される。
【0027】
構造物情報メニュー120の構造物データ入力欄121には、港湾施設の「所有者(会社名)」や「工場・事業所名」、「施設名称(岸壁名称)」、「施設構造形式」等の建設記録を含んだデータが表示されるとともに、これらの各データを入力、編集できるようになっている。そして、各データを入力、編集してから登録ボタン126を選択(クリック)すれば、入力、編集した港湾施設が登録され、そのデータが記憶装置6の構造物情報61に記憶されるようになっている。一方、構造物情報メニュー120の削除ボタン127を選択(クリック)すれば、表示中の港湾施設に関するデータが記憶装置6の構造物情報61から消去されるようになっている。さらに、リセットボタン128を選択(クリック)すれば、構造物データ入力欄121に入力、編集したデータが消去され、編集する前のデータが再度表示されるようになっている。また、施設平面図欄122、施設位置図欄123、施設断面図欄124、および施設写真欄125中の「ファイル読み込み」ボタンを選択(クリック)すれば、各種図面や写真の画像データファイルが選択可能になり、選択することで各欄122〜125に画像データを表示させることができる。
【0028】
以上のように、構造物情報メニュー120に港湾施設のデータを入力し、登録してから一覧へ戻るボタン129を選択(クリック)すれば、図6の構造物一覧メニュー110が再度表示され、登録した港湾施設が新た構造物一覧表111中に表示されるようになっている。
構造物情報メニュー120において、構造部材一覧ボタン114を選択(クリック)すると、図8に示す構造部材一覧メニュー130が表示される。この構造部材一覧メニュー130は、港湾施設における鋼構造物の詳細情報を表示するもので、記憶装置6の構成部材情報テーブル612に記憶された情報が表示されるようになっている。構造部材一覧メニュー130には、施設名称選択欄131と、構成部材の種別(鋼管杭または鋼矢板・鋼管矢板)を選択する種別選択ボタン132と、構成部材を一覧表示する構成部材一覧表133と、新規登録ボタン134と、編集ボタン135と、防食対策履歴情報を表示させるための防食対策実績ボタン136と、構造物一覧メニュー110を表示させるための構造物一覧へ戻るボタン137とが表示される。
【0029】
構造部材一覧メニュー130において、施設名称選択欄131で施設名称を選択し、種別選択ボタン132で構成部材の種別を選択した状態で、構成部材一覧表133中の1つの構成部材を選択(ダブルクリック)する、または編集ボタン135を選択(クリック)すると、図9に示す鋼管杭情報メニュー140や図10に示す鋼矢板・鋼管矢板情報メニュー150が表示される。ここで、新規登録ボタン134を選択(クリック)すると、データが未入力の鋼管杭情報メニュー140または鋼矢板・鋼管矢板情報メニュー150が表示されるようになっている。
【0030】
鋼管杭情報メニュー140には、設計条件入力欄141と、鋼管杭P1の詳細情報入力欄142と、登録ボタン143と、削除ボタン144と、リセットボタン145と、構造部材一覧メニュー130を表示させるための一覧へ戻るボタン146とが表示される。設計条件入力欄141には、鋼管杭P1の「設計高さ(作業面高さ)」や「海底レベル」、「干潮時の海面レベル(L.W.L)」、「満潮時の海面レベル(H.W.L)」、「設計地震震度」、「設計水深」、「地盤平均N値」、「地盤反力係数」、「荷役装置」、「使用した設計基準図書」、「荷重条件の入力年次」等の設計条件を含んだデータが表示されるとともに、これらの各データを入力、編集できるようになっている。また、詳細情報入力欄142には、鋼管杭P1の「仕様」や「設計荷重条件」、上杭、中杭、下杭の各々の径や板厚等の「部材断面情報」等のデータが表示されるとともに、これらの各データを入力、編集できるようになっている。そして、設計条件入力欄141および詳細情報入力欄142の各データを入力、編集してから登録ボタン143を選択(クリック)すれば、入力、編集した鋼管杭P1が登録され、そのデータが記憶装置6の構成部材情報テーブル612に記憶されるようになっている。一方、削除ボタン144を選択(クリック)すれば、表示中の鋼管杭P1に関するデータが構成部材情報テーブル612から消去されるようになっている。さらに、リセットボタン145を選択(クリック)すれば、設計条件入力欄141および詳細情報入力欄142に入力、編集したデータが消去され、編集する前のデータが再度表示されるようになっている。
【0031】
鋼矢板・鋼管矢板情報メニュー150には、設計条件入力欄151と、鋼矢板P2(または鋼管矢板)の詳細情報入力欄152と、登録ボタン153と、削除ボタン154と、リセットボタン155と、構造部材一覧メニュー130を表示させるための一覧へ戻るボタン156とが表示される。設計条件入力欄151には、鋼矢板P2の「設計高さ(作業面高さ)」や「海底レベル」、「干潮時の海面レベル(L.W.L)」、「満潮時の海面レベル(H.W.L)」、「設計地震震度」、「残留地下水位レベル」、「上載荷重」、「使用した設計基準図書」、「荷重条件の入力年次」等の設計条件を含んだデータが表示されるとともに、これらの各データを入力、編集できるようになっている。また、詳細情報入力欄152には、鋼矢板P2(または鋼管矢板)の「型式」や「仕様」、「タイロッド仕様」、「荷重条件」等のデータが表示されるとともに、これらの各データを入力、編集できるようになっている。そして、設計条件入力欄151および詳細情報入力欄152の各データを入力、編集してから登録ボタン153を選択(クリック)すれば、入力、編集した鋼矢板P2(または鋼管矢板)が登録され、そのデータが記憶装置6の構成部材情報テーブル612に記憶されるようになっている。一方、削除ボタン154を選択(クリック)すれば、表示中の鋼矢板P2(または鋼管矢板)に関するデータが構成部材情報テーブル612から消去されるようになっている。さらに、リセットボタン155を選択(クリック)すれば、設計条件入力欄151および詳細情報入力欄152に入力、編集したデータが消去され、編集する前のデータが再度表示されるようになっている。
【0032】
そして、鋼管杭情報メニュー140や鋼矢板・鋼管矢板情報メニュー150において、一覧へ戻るボタン146,156を選択(クリック)して構造部材一覧メニュー130を表示させ、防食対策実績ボタン136を選択(クリック)すると、図11に示す防食対策一覧メニュー160が表示される。この防食対策一覧メニュー160は、構造部材一覧メニュー130で選択された状態の構成部材に対して、過去に施された対策履歴情報を表示するもので、記憶装置6の対策履歴情報テーブル613に記憶された情報が表示されるようになっている。
【0033】
防食対策一覧メニュー160には、施設名称選択欄161と、構成部材の種別(鋼管杭または鋼矢板・鋼管矢板)を選択する種別選択ボタン162と、防食対策の対象構成部材を選択する構成部材選択欄163と、構成部材の防食対策対象部位を選択する部位選択欄164と、防食対策対象面積を入力する防食面積入力欄165と、過去に施された防食対策を一覧表示する防食対策一覧表166と、新規登録ボタン167と、編集ボタン168と、構造部材一覧メニュー130を表示させるための構造部材一覧へ戻るボタン169とが表示される。防食対策一覧表166には、防食対策の使用フラグ、実施回数、仕様、耐久年数、施工面積、施工年および施工月が表示されている。
【0034】
防食対策一覧メニュー160において、施設名称選択欄161で施設名称を選択し、種別選択ボタン162で構成部材の種別を選択し、構成部材選択欄163で防食対策の対象構成部材を選択し、部位選択欄164で部位を選択した状態で、防食対策一覧表166中の1つの防食対策を選択(ダブルクリック)する、または編集ボタン168を選択(クリック)すると、図12に示す防食対策情報メニュー170が表示される。ここで、新規登録ボタン167を選択(クリック)すると、データが未入力の防食対策情報メニュー170が表示されるようになっている。
【0035】
防食対策情報メニュー170には、施設名称や構成部材の種別、部位、防食対象面積等の一般情報を表示する防食対策一般情報表示部171と、防食対策工法の仕様を選択する対策工法選択欄172と、選択した工法における耐久年数や施工面積、施工年次、施工月次、工区・工事名称、施工会社、工事費用、使用フラグ等の詳細情報を入力するための防食対策工法詳細情報入力部173と、登録ボタン174と、削除ボタン175と、リセットボタン176と、防食対策一覧メニュー160を表示させるための一覧へ戻るボタン177とが表示される。そして、防食対策工法詳細情報入力部173の各データを入力、編集してから登録ボタン174を選択(クリック)すれば、入力、編集したデータが登録され、そのデータが記憶装置6の対策履歴情報テーブル613に記憶されるようになっている。一方、削除ボタン175を選択(クリック)すれば、表示中の防食対策工法に関するデータが対策履歴情報テーブル613から消去されるようになっている。さらに、リセットボタン176を選択(クリック)すれば、防食対策工法詳細情報入力部173に入力、編集したデータが消去され、編集する前のデータが再度表示されるようになっている。
【0036】
そして、防食対策一覧メニュー160において、構造部材一覧へ戻るボタン169を選択(クリック)して構造部材一覧メニュー130を表示させ、さらに構造物一覧へ戻るボタン137を選択(クリック)して構造物一覧メニュー110に戻り、施設管理履歴一覧ボタン115を選択(クリック)すると、図13に示す設備管理履歴一覧メニュー180が表示される。この設備管理履歴一覧メニュー180は、港湾施設における管理履歴情報を表示するもので、記憶装置6の施設管理情報テーブル611に記憶された情報が表示されるようになっている。
【0037】
設備管理履歴一覧メニュー180には、施設名称選択欄181と、構成部材の種別(鋼管杭または鋼矢板・鋼管矢板)を選択する種別選択ボタン182と、港湾施設において過去に施された防食、補修、補強等の対策記録を一覧表示する対策記録一覧表183と、新規登録ボタン184と、編集ボタン185と、構造物一覧メニュー110を表示させるための構造物一覧へ戻るボタン186とが表示される。対策記録一覧表183には、各対策の「施工年」、「施工月」、「実施内容」、「規模」、「対象部位」、および「金額」が表示されている。
【0038】
設備管理履歴一覧メニュー180において、施設名称選択欄181で施設名称を選択し、種別選択ボタン182で構成部材の種別を選択した状態で、対策記録一覧表183中の1つの対策記録を選択(ダブルクリック)する、または編集ボタン185を選択(クリック)すると、図14に示す設備管理情報メニュー190が表示される。ここで、新規登録ボタン184を選択(クリック)すると、データが未入力の設備管理情報メニュー190が表示されるようになっている。
【0039】
設備管理情報メニュー190には、施設名称や構成部材の種別等の一般情報を表示する管理記録一般情報表示部191と、当該管理記録における施工年、施工月、実施内容、工事規模、工事対象部位、工事金額や、工事図面、計算書、工事記録の有無、施工会社等の詳細情報を入力するための管理記録詳細情報入力部192と、登録ボタン193と、削除ボタン194と、リセットボタン195と、設備管理履歴一覧メニュー180を表示させるための一覧へ戻るボタン196とが表示される。そして、管理記録詳細情報入力部192の各データを入力、編集してから登録ボタン193を選択(クリック)すれば、入力、編集したデータが登録され、そのデータが記憶装置6の施設管理情報テーブル611に記憶されるようになっている。一方、削除ボタン194を選択(クリック)すれば、表示中の防食対策工法に関するデータが施設管理情報テーブル611から消去されるようになっている。さらに、リセットボタン195を選択(クリック)すれば、管理記録詳細情報入力部192に入力、編集したデータが消去され、編集する前のデータが再度表示されるようになっている。
【0040】
以上の構造物入力処理手段51が終了すると、図2のフローチャートに示すように、再び処理メニュー100が表示装置2に表示される(S1)。
この処理メニュー100において、帳票印刷メニュー102を選択(クリック)すると、図15に示す帳票印刷処理メニュー200が表示される。帳票印刷処理メニュー200には、構造物名称選択欄201と、印刷対象を選択する印刷対象選択欄202と、印刷を実行するための帳票印刷ボタン203と、処理メニュー100を表示させるためのメニューへ戻るボタン204とが表示される。印刷対象選択欄202には、帳票印刷の対象である構造物情報、構造部材(鋼管杭)情報、防食対策(鋼管杭)情報、構造部材(鋼矢板・鋼管矢板)情報、および防食対策(鋼矢板・鋼管矢板)情報と、これらの印刷対象を選択するためのチェックボックスが表示されている。そして、チェックボックスをチェックして印刷対象を選択した状態で、帳票印刷ボタン203を選択(クリック)すると、処理装置5の印刷処理手段592が起動され、選択した情報が印刷装置4で印刷される。
【0041】
次に、処理メニュー100において、工法一覧メニュー103を選択すると(S4)、防食対策工法入力処理手段52が起動され、その処理が実行される(S5)。
防食対策工法入力処理手段52は、表示装置2に各種の情報画面や入力画面を表示し、鋼構造物の構成部材である鋼管杭P1や鋼矢板P2に対して施工可能な防食対策工法情報を入力装置3から利用者に入力させ、入力された情報を記憶装置6の防食対策工法情報テーブル62に記憶する。
【0042】
防食対策工法入力処理手段52は、まず、表示装置2に、図16に示す防食対策工法の工法一覧メニュー210を表示する。工法一覧メニュー210には、工法一覧表211と、新規登録ボタン212と、編集ボタン213と、処理メニュー100を表示させるためのメニューへ戻るボタン214とが表示される。
工法一覧表211には、「工法名」、「表示名」、および「耐用年数」のそれぞれの欄に防食対策工法に関するデータが表示されている。
工法一覧メニュー210において、工法一覧表211中の1つの対策工法を選択(ダブルクリック)する、または編集ボタン213を選択(クリック)すると、図17に示す工法情報メニュー220が表示される。ここで、新規登録ボタン212を選択(クリック)すると、データが未入力の工法情報メニュー220が表示されるようになっている。
【0043】
工法情報メニュー220には、工法名選択欄221と、表示名入力欄222と、仕様入力欄223と、耐用年数入力欄224と、適用可能種別入力欄225と、適用可能部位入力欄226と、単価入力欄227と、登録ボタン228と、リセットボタン229aと、工法一覧メニュー210を表示させるための一覧へ戻るボタン229bとが表示される。適用可能種別入力欄225には、鋼管杭、鋼矢板、および鋼管矢板の各構成部材を選択するためのチェックボックスが表示され、このチェックボックスをチェックした構成部材に対して当該工法が適用可能であることを設定する。また、適用可能部位入力欄225には、鋼管杭P1や鋼矢板P2の部位ごとに当該対策工法が適用可能か否かを入力するためのチェックボックスが表示され、このチェックボックスをチェックした部位に対して当該工法が適用可能であることを設定する。さらに、適用可能部位入力欄225は、新設および補修/更新のいずれかの場合、または両方の場合に当該対策工法が適用可能か否かを入力するためのチェックボックスが表示されている。また、単価入力欄227には、施工場所(工場や陸上、または現地)や、素地調整グレード、新設か更新かに応じて当該対策工法の施工面積当たりの単価が入力可能になっている。
【0044】
そして、工法情報メニュー220において、工法名選択欄221を選択し、表示名入力欄222、仕様入力欄223、耐用年数入力欄224、適用可能種別入力欄225、適用可能部位入力欄226、および単価入力欄227にそれぞれデータを入力、編集してから登録ボタン228を選択(クリック)すれば、入力、編集したデータが登録され、そのデータが記憶装置6の防食対策工法情報テーブル62に記憶されるようになっている。また、リセットボタン229aを選択(クリック)すれば、各部に入力、編集したデータが消去され、編集する前のデータが再度表示されるようになっている。
そして、一覧へ戻るボタン229bを選択(クリック)して工法一覧メニュー210に戻り、工法一覧メニュー210のメニューへ戻るボタン214を選択(クリック)すると、防食対策工法入力処理手段52が終了し、図2のフローチャートに示すように、再び処理メニュー100が表示装置2に表示される(S1)。
【0045】
次に、処理メニュー100において、劣化状況・構造物診断メニュー104を選択すると(S6)、腐食速度推定処理手段53が起動され、その処理が実行される(S61)。 腐食速度推定処理手段53は、表示装置2に各種の情報画面や入力画面を表示し、実測データに基づく腐食速度推定式と、環境因子に基づく腐食速度推定式と、利用者入力による腐食速度推定式と、の3つの推定式うちのいずれかを選択させ、入力された腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定する。
具体的には、実測データに基づく腐食速度推定式が選択された場合には、所定の複数施設において実測された腐食データから予め設定された腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定し、環境因子に基づく腐食速度推定式が選択された場合には、環境因子情報の入力欄に入力された環境因子情報をパラメータとする腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定し、利用者入力による腐食速度推定式が選択された場合には、腐食速度推定式の入力欄に入力された腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定する。
【0046】
腐食速度推定処理手段53は、まず、表示装置2に、図18に示す腐食速度推定メニュー300を表示する。腐食速度推定メニュー300には、構造物選択欄301と、構成部材の種別選択欄302と、構成部材名称選択欄303と、防食対策選択欄304と、構成部材の部位ごとの腐食速度推定式選択欄305a〜305eとが表示される。さらに、腐食速度推定メニュー300には、前記防食対策一覧メニュー160を表示させる防食対策実績ボタン310と、対策計画選択処理手段54を起動させるための防食対策計画ボタン311と、構成部材の劣化状況を表示させる劣化状況グラフ表示ボタン312と、構造物診断処理手段55を起動させるための構造物診断ボタン313と、リセットボタン314と、処理メニュー100を表示させるためのメニューへ戻るボタン315とが表示される。
【0047】
腐食速度推定メニュー300の防食対策選択欄304では、過去に施された防食対策のみを考慮して劣化状況や構造物診断を実行する「実績のみ」と、過去に施された防食対策および将来実施する計画の防食対策を考慮して劣化状況や構造物診断を実行する「実績+計画」とが選択可能である。そして、「実績+計画」を選択した場合には、後述する防食対策計画の種別が選択できるようになっている。
また、構成部材の部位ごとの腐食速度推定式選択欄305a〜305dでは、それぞれ実測データに基づく腐食速度推定式(上段)と、環境因子に基づく腐食速度推定式(中段)と、利用者入力による腐食速度推定式(下段)との3つのうち、いずれかの腐食速度推定式が選択できるようになっている。なお、本実施形態では、海土中の部位に関する腐食速度推定式選択欄305eでは、実測データに基づく腐食速度推定式(上段)と、利用者入力による腐食速度推定式(下段)との2つのうち、いずれかの腐食速度推定式が選択できるようになっている。
【0048】
ここで、腐食速度推定式選択欄305a〜305eにおいて、実測データに基づく腐食速度推定式(上段)が選択された場合には、記憶装置6の腐食速度推定式情報63に格納された実測データに基づく推定式631が読み出され、この推定式631に基づいて腐食速度が算出される。
また、腐食速度推定式選択欄305a〜305dにおいて、環境因子に基づく腐食速度推定式(中段)が選択された場合には、6つの入力欄306a〜306fに入力された環境因子情報をパラメータとして、記憶装置6の腐食速度推定式情報63に格納された環境因子に基づく推定式632が読み出され、この推定式632に基づいて腐食速度が算出される。これらの環境因子情報としては、海水の水素イオン濃度(pH、ペー・ハー)、塩化物イオン濃度(Cl- )、アンモニアイオン濃度(NH3+)、導電率、溶存酸素量(DO)、および水温を入力する。
また、腐食速度推定式選択欄305a〜305eにおいて、利用者入力による腐食速度推定式(下段)が選択された場合には、入力欄307に入力された腐食速度推定式を用いて腐食速度が算出される。
【0049】
腐食速度推定メニュー300において、防食対策計画ボタン311を選択(クリック)すると、対策計画選択処理手段54が起動され、図19に示す防食対策計画一覧メニュー320が表示される。この防食対策計画一覧メニュー320は、前述した防食対策工法入力処理手段52によって記憶装置6の防食対策工法情報テーブル62に記憶された情報が表示されるようになっている。
防食対策計画一覧メニュー320には、施設名称選択欄321と、構成部材の種別(鋼管杭または鋼矢板・鋼管矢板)を選択する種別選択ボタン322と、防食対象構造体選択欄323と、防食対策計画の組み合わせ番号を選択する防食対策計画選択欄324と、構成部材の部位を選択する部位選択欄325と、防食対策を一覧表示する防食対策一覧表326とが表示される。さらに、防食対策計画一覧メニュー320には、計画情報複写ボタン327と、新規登録ボタン328と、編集ボタン329aと、防食対策計画一覧メニュー320を閉じて腐食速度推定メニュー300を表示させるための閉じるボタン137とが表示される。防食対策計画選択欄324で選択可能な防食対策計画の組み合わせとしては、例えば5つの組み合わせまで選択可能になっており、1から5までの番号のいずれかを選択することとなる。
【0050】
防食対策一覧表326には、「使用フラグ」、「施工防食仕様」、「新設/補修」、「耐用年数」、「施工年」、および「施工月」のそれぞれの欄に防食対策に関するデータが表示されている。
そして、防食対策計画一覧メニュー320において、施設名称選択欄321、種別選択ボタン322、防食対象構造体選択欄323、防食対策計画選択欄324、および部位選択欄325の情報を選択してから、防食対策一覧表326中の1つの防食対策を選択(ダブルクリック)する、または編集ボタン329aを選択(クリック)すると、図20に示す防食対策計画情報メニュー330が表示される。ここで、新規登録ボタン328を選択(クリック)すると、データが未入力の防食対策計画情報メニュー330が表示されるようになっている。さらに、計画情報複写ボタン327を選択(クリック)すると、図21に示す防食対策計画情報複写処理メニュー340が表示される。
【0051】
防食対策計画情報メニュー330には、施設名称や構成部材の種別、部位、防食対象構造体名称、防食対策計画等の一般情報を表示する防食対策計画一般情報表示部331と、防食対策計画の対象構造物が新設か補修・更新かを選択する選択欄332と、防食対策計画における防食法や防食仕様、新設区分、素地調整グレード、耐久年数、施工年次、施工月次、使用フラグ等の詳細情報を入力するための防食対策計画詳細情報入力部333と、登録ボタン334と、削除ボタン335と、リセットボタン336と、防食対策計画一覧メニュー320を表示させるための一覧へ戻るボタン337とが表示される。そして、防食対策計画詳細情報入力部333の各データを選択、入力、編集してから登録ボタン334を選択(クリック)すれば、入力、編集したデータが登録される。一方、削除ボタン335を選択(クリック)すれば、表示中の防食対策計画に関するデータが消去されるようになっている。さらに、リセットボタン336を選択(クリック)すれば、防食対策計画詳細情報入力部333に入力、編集したデータが消去され、編集する前のデータが再度表示されるようになっている。
【0052】
防食対策計画情報複写処理メニュー340には、施設名称や構成部材の種別、防食対象構造体名称等の一般情報を表示する防食対策計画一般情報表示部341と、既に設定した防食対策計画の情報を他の防食対策計画に複写するために複写先の防食対策計画を選択する選択欄342と、複写を実行する実行ボタン343と、防食対策計画一覧メニュー320を表示させるための一覧へ戻るボタン344とが表示される。そして、選択欄342で複写先の防食対策計画の番号を選択してから、実行ボタン343を選択(クリック)すれば、既に設定した複写元の防食対策計画の情報が複写先の防食対策計画に複写される。
以上の対策計画選択処理手段54が終了して防食対策計画一覧メニュー320を閉じると、腐食速度推定メニュー300が再度表示される。
【0053】
次に、腐食速度推定メニュー300において、劣化状況グラフ表示ボタン312を選択(クリック)すれば、作図処理手段591が起動され、図22に示す劣化状況結果グラフ350が表示される。劣化状況結果グラフ350では、鋼管杭P1や鋼矢板P2の各部位が前述した腐食速度推定式で算出される腐食速度で腐食した場合の将来に渡る劣化状況が表示される。ここで、劣化状況としては、後述する構造物診断処理手段55で算出される構成部材の各部位ごとの応力度比351と、管理基準である管理上限界性能352とが表示される。
【0054】
次に、腐食速度推定メニュー300において、構造物診断ボタン313を選択(クリック)すると、構造物診断処理手段55が起動され、その処理が実行される(S62)。そして、図23に示す構造物診断メニュー360が表示される。
構造物診断処理手段55は、対策計画選択処理手段54で登録した防食対策工法および腐食速度推定処理手段53で選択した推定式に基づく腐食速度によって算出される鋼管杭P1や鋼矢板P2の各部位ごとの有効部材断面と、構成部材情報テーブル612に記憶された設計条件とに基づき、記憶装置6の応力算定式情報65に格納された鋼管杭の応力算定式や鋼矢板の応力算定式を読み出し、これらの応力算定式に基づいていて鋼管杭P1や鋼矢板P2の部位ごとに生じる応力(曲げモーメントや軸力、せん断力等)および応力度比を算出する。
【0055】
構造物診断メニュー360には、施設名称や構成部材の種別、構造部材名称、防食対策種別等の一般情報を表示する構造物一般情報表示部361と、構成部材情報テーブル612から読み出した鋼管杭P1や鋼矢板P2の構成部材情報(天端や下端のレベル、使用鋼種、外径、肉厚等)を表示する構成部材情報表示部362と、設計条件(干潮時の海面レベル(L.W.L)や満潮時の海面レベル(H.W.L)、荷重条件等)を表示する設計条件表示部363とが表示される。さらに、構造物診断メニュー360には、構造物診断グラフ作成ボタン364と、応力図作成ボタン365と、リセットボタン366と、構造物診断処理手段55を終了して腐食速度推定メニュー300を表示させるための戻るボタン367とが表示される。構造物診断メニュー360の設計条件表示部363には、管理上限界性能入力欄363aが表示されており、この管理上限界性能入力欄363aに管理上限界性能(管理基準)を入力する。すなわち、構造物診断処理手段55の機能の一部として管理基準入力処理手段56が構成され、これにより管理基準入力処理が実行される(S63)。
【0056】
構造物診断メニュー360において、構造物診断グラフ作成ボタン364を選択(クリック)すると、作図処理手段591が起動され、図24に示すような構造物診断グラフ370が表示装置2に表示される(S64)。この構造物診断グラフ370において、構成部材の各部位ごとの応力度比371の経年変化に重ねて管理上限界性能372が表示されるようになっており、構成部材の余裕度(耐荷重性状)が確認できるようになっている。
また、構造物診断メニュー360において、応力図作成ボタン365を選択(クリック)すると、作図処理手段591が起動され、図25に示すような応力図(モーメント図)375が表示装置2に表示される(S64)。この応力図375において、応力度比376に重ねて管理上限界性能377が表示されるようになっており、構成部材の余裕度(耐荷重性状)が確認できるようになっている。
以上の構造物診断処理手段55および作図処理手段591が終了し腐食速度推定メニュー300に戻り、メニューへ戻るボタン315を選択(クリック)すると、図2のフローチャートに示すように、再び処理メニュー100が表示装置2に表示される(S1)。
【0057】
次に、処理メニュー100において、LCC評価(構造部材)メニュー105またはLCC評価(構造物)メニュー106を選択すると(S7)、ライフサイクルコスト算出手段57が起動され、その処理が実行される(S71)。
LCC評価(構造部材)メニュー105が選択された場合には、鋼構造物の構造部材(鋼管杭P1や鋼矢板P2)単位でLCC評価が実施され、図26に示すLCC評価(構造部材)選択メニュー380が表示される。
【0058】
LCC評価(構造部材)選択メニュー380には、構造物を選択する構造物選択欄381と、評価年次を入力する入力欄と、対策計画選択処理手段54で登録した防食対策計画および防食対策計画の種別を選択する対策計画選択欄382と、構成部材の種別を選択する構成部材選択ボタン383と、構成部材の一覧を表示する構成部材一覧表384と、対策計画の評価条件(施工年次や施工面積等)を表示する評価条件表示部385とが表示される。さらに、LCC評価(構造部材)選択メニュー380には、防食対策計画一覧メニュー320を表示させる防食対策計画確認ボタン386と、LCC評価グラフを表示させるLCC評価グラフ表示ボタン387と、リセットボタン389aと、処理メニュー100を表示させるためのメニューへ戻るボタン389bとが表示される。
【0059】
LCC評価(構造部材)選択メニュー380において、構造物選択欄381で構造物を選択し、対策計画選択欄382で対策計画を選択し、構成部材一覧表384で対象構成部材を選択した状態で、LCC評価グラフ表示ボタン387を選択(クリック)すると、作図処理手段591が起動され(S72)、図27に示すLCC評価結果(構造部材1対策計画)390が表示される。このLCC評価結果(構造部材1対策計画)390では、将来に渡る年次を横軸にして対策コストを縦軸にしたグラフが表示されており、選択した鋼管杭P1の各部位ごとの将来に渡って発生するコスト、および各部位を合計したコストが表示されるようになっている。
【0060】
次に、処理メニュー100において、LCC評価(構造物)メニュー106が選択された場合には、鋼構造物全体でLCC評価が実施され、図28に示すLCC評価(構造物)選択メニュー400が表示される。
LCC評価(構造物)選択メニュー400には、構造物を選択する構造物選択欄401と、評価年次を入力する入力欄と、対策計画の出力パターンを選択するパターン選択欄402と、構造物における構成部材ごとに対策計画の出力パターンを設定するパターン設定表403と、対策計画のパターンごとの組み合わせを設定する選択テーブル404と、対策計画の評価条件(施工年次や施工面積等)を表示する評価条件表示部405とが表示される。さらに、LCC評価(構造物)選択メニュー400には、点検費用を入力する点検費用入力欄406と、防食対策計画一覧メニュー320を表示させる防食対策計画確認ボタン407と、LCC評価グラフを表示させるLCC評価グラフ表示ボタン408と、リセットボタン409aと、処理メニュー100を表示させるためのメニューへ戻るボタン409bとが表示される。
【0061】
ここで、対策計画のパターンとしては、前記防食対策計画一覧メニュー320において、防食対策計画選択欄324で設定した5つまでの防食対策計画を、各部位ごとに任意に選択することで最大25種類のパターンが想定されるが、そのうちの5パターンが設定可能である。このように防食対策計画を複数パターン設定しておくことで、後述のLCC評価グラフ410において、それら複数パターンの防食対策計画を比較検討することができるようになっている。
【0062】
LCC評価(構造物)選択メニュー400において、構造物選択欄401で構造物を選択し、パターン選択欄402で出力パターンを選択した状態で、LCC評価グラフ表示ボタン408を選択(クリック)すると、作図処理手段591が起動され(S72)、図29に示すLCC評価結果(構造物)410が表示される。このLCC評価結果(構造物)410では、将来に渡る年次を横軸にして対策コストを縦軸にしたグラフが表示されており、選択した構造物における防食対策計画のパターンごと(図29においては、5パターン)の将来に渡って発生するコストが表示されるようになっている。
以上のライフサイクルコスト算出手段57および作図処理手段591が終了すると、図2のフローチャートに示すように、再び処理メニュー100が表示装置2に表示される(S1)。
【0063】
次に、処理メニュー100において、塗膜健全性評価メニュー107を選択すると(S8)、塗膜健全性評価手段58が起動され、その処理が実行される(S81)。そして、図30に示す塗膜健全性評価算定シート420が表示される。
塗膜健全性評価手段58は、鋼管杭P1や鋼矢板P2の表面に施された塗膜の劣化を考慮した解析を実行して塗膜の健全性を評価する。
塗膜健全性評価算定シート420には、塗膜表面の錆発生面積率を入力するための錆発生面積率入力欄421と、塗膜が施工されてからの経過年数を入力するための経過年数入力欄422と、塗膜の耐用年数を出力するための耐用年数出力欄423と、塗膜の残存寿命を出力するための残存寿命出力欄424と、解析を実行するためのが解析実行ボタン425と表示される。そして、錆発生面積率入力欄421に錆発生面積率を入力し、経過年数入力欄422に経過年数を入力した状態で、解析実行ボタン425を選択(クリック)すると、耐用年数出力欄423に耐用年数が出力され、残存寿命出力欄424に塗膜の残存寿命が出力されるようになっている。
以上の塗膜健全性評価手段58が終了すると、図2のフローチャートに示すように、再び処理メニュー100が表示装置2に表示される(S1)。そして、処理メニュー100の終了ボタン108を選択(クリック)することで(S9)、LCC評価システムが終了する。
【0064】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)すなわち、腐食速度推定処理手段53によって鋼構造物における鋼管杭P1や鋼矢板P2の腐食状態を推定し、この腐食により鋼管杭P1や鋼矢板P2の有効部材断面が減少した状態における応力度比を構造物診断処理手段55によって算出することで、鋼管杭P1や鋼矢板P2の耐荷重性状を適切に評価することができ、的確な補修計画を策定することができる。従って、港湾(海洋)施設における鋼構造物のライフサイクルコストを高精度に算出することができ、港湾(海洋)施設の維持管理に係る手間やコストを大幅に削減することができる。
【0065】
(2)そして、建設記録等を含んだ施設管理情報テーブル611や鋼管杭P1や鋼矢板P2の設計条件等を含んだ構成部材情報テーブル612を備えていることで、当該施設の建設当時から現在に至るまでの管理履歴を一括して管理することができ、将来に渡る補修計画の策定における精度を向上させることができる。従って、建設記録や設計資料等を紙の形で保管していた従来の方法と比較して、施設管理情報等を電子データとして記憶装置6に記憶しておくことで、情報の取り扱いが格段に容易になって補修計画の策定の手間を一層低減することができる。
【0066】
(3)さらに、過去に施された対策記録を対策履歴情報テーブル613として記憶しておくことで、鋼管杭P1や鋼矢板P2の診断を行う際の精度をさらに向上させることができ、より的確な補修計画を策定することができる。
【0067】
(4)また、腐食速度推定処理手段53において、実測データに基づく腐食速度推定式と、環境因子に基づく腐食速度推定式と、利用者入力による腐食速度推定式と、の3つの推定式のうちのいずれかを選択することで、施設の立地条件や周辺環境条件等に応じて、当該システムの利用者が腐食速度推定式を任意に選択することができ、腐食速度の推定精度を向上させることができる。
【0068】
(5)さらに、ライフサイクルコスト算出手段57において、施工時期や防食対策工法を任意に選択した防食対策計画の複数のパターンを比較することで、将来に渡る施設の利用計画等に応じて柔軟な補修計画を策定することができ、ライフサイクルコストの低減を効率よく図ることができる。
【0069】
(6)また、塗膜健全性評価手段58を備えたことで、構成部材表面に施された塗膜の健全性(塗膜の残存寿命)を、錆発生面積率および経過年数に基づいて算出でき、鋼管杭P1や鋼矢板P2の非腐食期間を推定することができ、鋼構造物における腐食の進行状態をより一層正確に把握することができる。
【0070】
(7)さらに、鋼管杭P1や鋼矢板P2の種類に対応した応力算定式情報65を記憶装置6に記憶していることで、鋼管杭P1や鋼矢板P2の応力解析を迅速かつ正確に実施することができ、構成部材ごとの診断精度および速度を向上させることができる。
【0071】
(8)また、海土中部、海中部、干満部、飛沫部、および大気部の各部位ごとに鋼管杭P1や鋼矢板P2を分けて評価することで、各部位ごとに異なる腐食速度や部材断面等を適切に評価した診断や対策計画選択が実行でき、ライフサイクルコストの算出精度をさらに向上させることができる。
【0072】
(9)また、防食対策工法情報テーブル62において、防食対策工法ごとに、工法の仕様、耐用年数、適用可能な構造部材、適用可能な構造部材の部位、および単価の各データが入力されていることで、防食対策工法の選択が容易になるとともに、迅速にライフサイクルコストを算出することができる。
【0073】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態においては、表示装置2に各種のメニュー画面を表示させ、これらの画面上の入力欄にデータを入力したり、選択欄からデータを選択したりする会話形式で各種処理を実行するものとしたが、このような形式に限らず、一括のバッチ処理で各処理手段53〜58を実行するような構成であってもよい。
【0074】
また、前記実施形態のLCC評価システムは、ライフサイクルコスト算出手段57によって将来に渡って発生する補修コストを表示し、この出力を利用者が検討するような構成であったが、これに限らず、例えば、施設の耐用年数を入力するようにし、この耐用年数と施設管理基準とに基づいて、耐用年数中において施設管理基準を超えないような防食対策計画を自動的に策定する構成であってもよい。すなわち、図2のフローチャートにおいて管理基準入力処理(S63)の後に、応力度比と施設管理基準とを比較するステップを設け、この比較結果に応じて防食対策工法の施工間隔等を再設定し、再度構造物診断処理(S62)を実行させるような構成とすることで、最適な防食対策計画を策定することができるようになる。
さらに、耐用年数中に応力度比が施設管理基準を超えてしまうような場合には、設計条件(荷重条件)を変更する、すなわち施設の使用条件を見直した上で、再度LCC評価を実施するような機能を付加してもよい。
また、前記実施形態では、港湾施設における鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムについて説明したが、施設としては、外洋の石油掘削ジャケットなどの海洋施設であってもよい。その場合には、鋼構造物であるジャケット等の耐荷重性状を適切に評価するために、トラス構造の応力解析や疲労解析等を実行するシステムを、本発明のLCC評価システムに内蔵してもよく、またLCC評価システムと連動可能に別途備えていてもよい。
【0075】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施形態に係る鋼構造物のライフサイクルコスト(LCC)評価システムの構成を示すブロック図である。
【図2】前記LCC評価システムの動作を示すフローチャートである。
【図3】前記LCC評価システムの評価対象である鋼構造物の構成部材としての鋼管杭を示す断面図である。
【図4】前記LCC評価システムの評価対象である鋼構造物の構成部材としての鋼矢板を示す断面図である。
【図5】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される処理メニューを示す図である。
【図6】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される構造物一覧メニューを示す図である。
【図7】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される構造物情報メニューを示す図である。
【図8】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される構造部材一覧メニューを示す図である。
【図9】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される鋼管杭情報メニューを示す図である。
【図10】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される鋼矢板・鋼管矢板情報メニューを示す図である。
【図11】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される防食対策一覧メニューを示す図である。
【図12】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される防食対策情報メニューを示す図である。
【図13】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される設備管理履歴一覧メニューを示す図である。
【図14】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される設備管理情報メニューを示す図である。
【図15】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される帳票印刷処理メニューを示す図である。
【図16】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される防食対策工法の工法一覧メニューを示す図である。
【図17】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される工法情報メニューを示す図である。
【図18】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される腐食速度推定メニューを示す図である。
【図19】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される防食対策計画一覧メニューを示す図である。
【図20】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される防食対策計画情報メニューを示す図である。
【図21】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される防食対策計画情報複写処理メニューを示す図である。
【図22】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される劣化状況結果グラフを示す図である。
【図23】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される構造物診断メニューを示す図である。
【図24】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される構造物診断結果を示す図である。
【図25】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される応力図を示す図である。
【図26】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示されるLCC評価選択メニューを示す図である。
【図27】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示されるLCC評価結果を示す図である。
【図28】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示されるLCC評価選択メニューを示す図である。
【図29】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示されるLCC評価結果を示す図である。
【図30】前記LCC評価システムにおいて表示手段に表示される塗膜健全性評価算定シートを示す図である。
【符号の説明】
【0077】
2…表示装置(表示手段)、3…入力装置(入力手段)、5…処理装置(処理手段)、6…記憶装置(記憶手段)、53…腐食速度推定処理手段、54…対策計画選択処理手段、55…構造物診断処理手段、56…管理基準入力処理手段、57…ライフサイクルコスト算出手段、58…塗膜健全性評価手段、62…防食対策工法情報テーブル、63…腐食速度推定式情報、65…応力算定式情報、611…施設管理情報テーブル、612…構成部材情報テーブル、613…対策履歴情報テーブル、P1…鋼管杭(構成部材)、P2…鋼矢板(構成部材)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
港湾、海洋施設における鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムであって、
情報入力用の入力手段と、各種情報を記憶する記憶手段と、情報表示用の表示手段と、情報を処理する処理手段とを備え、
前記記憶手段には、当該施設の建設記録や設計条件等を含んだ施設管理情報と、鋼構造物を構成する鋼管杭や鋼矢板等の構成部材の部材リストを含んだ構成部材情報と、前記構成部材に施す防食対策工法を含んだ防食対策工法情報と、が少なくとも記憶され、
前記処理手段は、前記構成部材の腐食速度を推定する腐食速度推定処理手段と、前記入力手段から当該施設の管理基準を入力させる管理基準入力処理手段と、前記防食対策工法情報内の防食対策工法を表示手段に表示して前記入力手段から選択させる対策計画選択処理手段と、前記構成部材の診断を行う診断処理手段と、前記入力した管理基準、前記選択した防食対策工法、および診断処理手段の診断結果に基づいて鋼構造物のライフサイクルコストを算出するライフサイクルコスト算出手段とを備え、
前記腐食速度推定処理手段は、前記構成部材の部位ごとに少なくとも2種類の腐食速度推定式を選択させ、かつ選択された腐食速度推定式に基づいて当該構成部材の部位ごとに腐食速度を推定し、
前記対策計画選択処理手段は、前記構成部材の部位ごとに前記防食対策工法情報から任意の防食対策工法を選択させ、
前記診断処理手段は、前記選択した防食対策工法および前記推定された腐食速度によって算出される前記構成部材の部位ごとの有効部材断面と、前記施設管理情報に含まれた設計条件の作用荷重と、に基づいて当該構成部材の部位ごとに生じる応力度比を算出するとともに、前記入力された施設管理基準と前記算出された応力度比とを比較可能に前記表示手段に表示し、
前記ライフサイクルコスト算出手段は、前記対策計画選択処理手段にて選択された防食対策工法に伴うコストを前記表示手段に表示することを特徴とする鋼構造物のライフサイクルコスト評価システム。
【請求項2】
請求項1に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、
前記記憶手段には、鋼構造物において過去に施された防食、補修、補強等の対策記録を含んだ対策履歴情報が記憶されていることを特徴とする鋼構造物のライフサイクルコスト評価システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、
前記対策計画選択処理手段は、計画時から将来の所定期間における1以上の施工時期と、この施工時期ごとに実施する任意の防食対策工法とを選択させることを特徴とする鋼構造物のライフサイクルコスト評価システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、
前記腐食速度推定処理手段は、実測データに基づく腐食速度推定式と、環境因子に基づく腐食速度推定式と、利用者入力による腐食速度推定式と、の3つの推定式のうちのいずれかを選択させ、
実測データに基づく腐食速度推定式が選択された場合には、所定の複数施設において実測された腐食データから予め設定された腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定し、
環境因子に基づく腐食速度推定式が選択された場合には、環境因子情報の入力欄を前記表示手段に表示し、かつ入力された環境因子情報をパラメータとする腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定し、
利用者入力による腐食速度推定式が選択された場合には、腐食速度推定式の入力欄を前記表示手段に表示し、かつ入力された腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定することを特徴とする鋼構造物のライフサイクルコスト評価システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、
前記処理手段は、前記構成部材表面に施された塗膜の劣化を考慮して塗膜の健全性を評価する塗膜健全性評価手段を備え、
前記塗膜健全性評価手段は、塗膜表面の錆発生面積率および塗膜の経過年数の入力欄を前記表示手段に表示し、かつ入力された錆発生面積率および経過年数に基づいて塗膜の残存寿命を算出することを特徴とする鋼構造物のライフサイクルコスト評価システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、
前記記憶手段には、前記鋼管杭や鋼矢板等の構成部材の種類に対応した応力算定式を含む応力算定式情報が記憶され、
前記診断処理手段は、前記構成部材の種類に応じて前記応力算定式情報から応力算定式を選択し、選択した応力算定式に基づいて構成部材ごとに応力解析を実行して応力度比を算出することを特徴とする鋼構造物のライフサイクルコスト評価システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、
前記構成部材を評価する部位は、海底面よりも下側の海土中に位置する海土中部と、この海土中部よりも上側で干潮時の海面よりも下側に位置する海中部と、この海中部よりも上側で満潮時の海面よりも下側に位置する干満部と、この干満部よりも上側で海水の飛沫に曝される飛沫部と、この飛沫部よりも上側で大気中に露出した大気部と、から構成されることを特徴とする鋼構造物のライフサイクルコスト評価システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、
前記防食対策工法情報には、各防食対策工法ごとに、工法の仕様、耐用年数、適用可能な構造部材、適用可能な構造部材の部位、および単価の各データが入力されていることを特徴とする鋼構造物のライフサイクルコスト評価システム。
【請求項1】
港湾、海洋施設における鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムであって、
情報入力用の入力手段と、各種情報を記憶する記憶手段と、情報表示用の表示手段と、情報を処理する処理手段とを備え、
前記記憶手段には、当該施設の建設記録や設計条件等を含んだ施設管理情報と、鋼構造物を構成する鋼管杭や鋼矢板等の構成部材の部材リストを含んだ構成部材情報と、前記構成部材に施す防食対策工法を含んだ防食対策工法情報と、が少なくとも記憶され、
前記処理手段は、前記構成部材の腐食速度を推定する腐食速度推定処理手段と、前記入力手段から当該施設の管理基準を入力させる管理基準入力処理手段と、前記防食対策工法情報内の防食対策工法を表示手段に表示して前記入力手段から選択させる対策計画選択処理手段と、前記構成部材の診断を行う診断処理手段と、前記入力した管理基準、前記選択した防食対策工法、および診断処理手段の診断結果に基づいて鋼構造物のライフサイクルコストを算出するライフサイクルコスト算出手段とを備え、
前記腐食速度推定処理手段は、前記構成部材の部位ごとに少なくとも2種類の腐食速度推定式を選択させ、かつ選択された腐食速度推定式に基づいて当該構成部材の部位ごとに腐食速度を推定し、
前記対策計画選択処理手段は、前記構成部材の部位ごとに前記防食対策工法情報から任意の防食対策工法を選択させ、
前記診断処理手段は、前記選択した防食対策工法および前記推定された腐食速度によって算出される前記構成部材の部位ごとの有効部材断面と、前記施設管理情報に含まれた設計条件の作用荷重と、に基づいて当該構成部材の部位ごとに生じる応力度比を算出するとともに、前記入力された施設管理基準と前記算出された応力度比とを比較可能に前記表示手段に表示し、
前記ライフサイクルコスト算出手段は、前記対策計画選択処理手段にて選択された防食対策工法に伴うコストを前記表示手段に表示することを特徴とする鋼構造物のライフサイクルコスト評価システム。
【請求項2】
請求項1に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、
前記記憶手段には、鋼構造物において過去に施された防食、補修、補強等の対策記録を含んだ対策履歴情報が記憶されていることを特徴とする鋼構造物のライフサイクルコスト評価システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、
前記対策計画選択処理手段は、計画時から将来の所定期間における1以上の施工時期と、この施工時期ごとに実施する任意の防食対策工法とを選択させることを特徴とする鋼構造物のライフサイクルコスト評価システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、
前記腐食速度推定処理手段は、実測データに基づく腐食速度推定式と、環境因子に基づく腐食速度推定式と、利用者入力による腐食速度推定式と、の3つの推定式のうちのいずれかを選択させ、
実測データに基づく腐食速度推定式が選択された場合には、所定の複数施設において実測された腐食データから予め設定された腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定し、
環境因子に基づく腐食速度推定式が選択された場合には、環境因子情報の入力欄を前記表示手段に表示し、かつ入力された環境因子情報をパラメータとする腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定し、
利用者入力による腐食速度推定式が選択された場合には、腐食速度推定式の入力欄を前記表示手段に表示し、かつ入力された腐食速度推定式に基づいて腐食速度を推定することを特徴とする鋼構造物のライフサイクルコスト評価システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、
前記処理手段は、前記構成部材表面に施された塗膜の劣化を考慮して塗膜の健全性を評価する塗膜健全性評価手段を備え、
前記塗膜健全性評価手段は、塗膜表面の錆発生面積率および塗膜の経過年数の入力欄を前記表示手段に表示し、かつ入力された錆発生面積率および経過年数に基づいて塗膜の残存寿命を算出することを特徴とする鋼構造物のライフサイクルコスト評価システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、
前記記憶手段には、前記鋼管杭や鋼矢板等の構成部材の種類に対応した応力算定式を含む応力算定式情報が記憶され、
前記診断処理手段は、前記構成部材の種類に応じて前記応力算定式情報から応力算定式を選択し、選択した応力算定式に基づいて構成部材ごとに応力解析を実行して応力度比を算出することを特徴とする鋼構造物のライフサイクルコスト評価システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、
前記構成部材を評価する部位は、海底面よりも下側の海土中に位置する海土中部と、この海土中部よりも上側で干潮時の海面よりも下側に位置する海中部と、この海中部よりも上側で満潮時の海面よりも下側に位置する干満部と、この干満部よりも上側で海水の飛沫に曝される飛沫部と、この飛沫部よりも上側で大気中に露出した大気部と、から構成されることを特徴とする鋼構造物のライフサイクルコスト評価システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の鋼構造物のライフサイクルコスト評価システムにおいて、
前記防食対策工法情報には、各防食対策工法ごとに、工法の仕様、耐用年数、適用可能な構造部材、適用可能な構造部材の部位、および単価の各データが入力されていることを特徴とする鋼構造物のライフサイクルコスト評価システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
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【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2007−33085(P2007−33085A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213320(P2005−213320)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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