説明

鑑賞用水槽

【課題】水槽本体に収容された流体の減少を効果的に抑制することができ、メンテナンスの頻度を飛躍的に少なくすることのできる鑑賞用水槽を提供することにある。
【解決手段】水槽本体11と、当該水槽本体11の水中に空気を供給する気体供給装置12とを備えて鑑賞用水槽10が構成されている。気体供給装置12のエアポンプ31は、水槽本体11の下部内に設けられたノズル36から空気を噴出させるようになっており、水槽内を上昇して上部空間C内に放出された空気は、気体環流路35を通じてエアポンプ31に戻され、再び、気体供給路33に導入されて循環する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鑑賞用水槽に係り、更に詳しくは、水槽内の流体に気体を付与して流体中を上昇する気泡を外部より鑑賞することのできる鑑賞用水槽に関する。
【背景技術】
【0002】
薄板型又は円柱型の水槽本体に水を収容し、エアポンプまたはエアコンプレッサーにより水槽本体の下部に配置したノズルから一定量の空気を送り、水中を上昇する気泡を鑑賞することのできる鑑賞用水槽が知られている。
【0003】
上記水槽は、古いタイプのものは、据え置き型インテリアなどとして出回っていたが、陳腐で夜の風俗のイメージが付きまとい、当業者間であまりよい印象はなく、そのうち市場に提供されなくなっていた。
【0004】
しかしながら、近年、古いイメージを一新して改良された鑑賞用水槽が売れ筋商品となってきている。その背景として若いインテリアデザイナーや建築士が新鮮な視点で、素材としてそれを建築やインテリアに取り入れるようになったことが原因しているものと推測される。
そして、最近の鑑賞用水槽は、全く新しくナチュラルにインテリアに溶け込んでおり、例えば、ホテルのレストラン、カフェテラス、ショップ、エステティック、デンタルクリニックの商業施設における壁に利用する等の手法によって採用されている。
【0005】
ところで、特許文献1には、水中に気体を供給することによってドーナツ状の気泡を発生させてこれを外部より鑑賞することのできる装飾水槽等も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−39896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した商業施設に採用されている鑑賞用水槽や、特許文献1に開示された水槽は、水が蒸発して減るため、度々水を補充しなければならない、という不都合がある。
そこで、グリコール系の水を水道水で薄めて蒸発し難くすると同時に、耐腐食性、耐凍結性を供給する試みもあるが、グリコールの濃度が薄すぎると水の減りが早く、濃度が濃すぎると吸水性が強い性質があり、湿気を帯びた気体が水槽本体内の液体を通過する際、気体が液体に変わり、水嵩が増えるといった現象が起こる、という不都合がある。特に、夏場において、湿気の強い環境下で溢れて床が水浸しになることもある。
【0008】
このような不都合は、商品たる鑑賞用水槽に対し、最もクレームの対象となり得ることから、グリコールの濃度は半分くらいとして対応することが当業者間で一般的となっている。
【0009】
しかしながら、グリコールのように、高額な液体を使用しても、やはり水の部分がある以上、「水の減り」という問題を解消することはできず、設置するだけのインテリア水槽ではなく、鑑賞用水槽を壁や天井に融合させる設計が頻繁になっている最近の傾向に鑑みると、上記不都合は深刻なものといわざるを得ない。
【0010】
[発明の目的]
ここに、本発明の目的は、水槽本体に収容された水等の流体の減少を効果的に抑制することができ、メンテナンスの頻度を飛躍的に減少させることのできる鑑賞用水槽を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明は、特許請求の範囲記載の構成を採用したものであり、具体的には、内部に一定量の流体を収容した状態で当該流体上面上に空間を有する水槽本体と、前記流体中に気体を供給する気体供給装置とを含み、前記水槽本体の下部から流体中に気体を供給することで流体中を上昇する気泡を外部より鑑賞するように設けられた鑑賞用水槽において、
前記気体供給装置は、気体供給源と、当該気体供給源及び水槽本体の下部間に連通する気体供給路と、水槽本体の上部空間及び気体供給源間に連通するとともに前記空間内の気体を前記気体供給路に戻す気体環流路とを備える、という構成を採っている。
【0012】
本発明において、前記水槽本体は、内部に位置する複数の仕切部材によって横方向複数に区分され、前記気体供給路の下流側は前記仕切部材を横切って延びるように配置されるとともに、各区分毎に気体を供給するノズルを備える、という構成を採ることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水槽本体の下部から上昇する気泡に含まれる水分が水槽本体の上部空間に放出されることになる。そして、湿気を帯びた気体が気体供給源を通じて気体供給路に戻される構成となるため、水槽本体内の流体の減少要因を抑制でき、例え、流体の補充が必要になる場合であっても、補充するまでの期間を長く保つことができ、メンテナンスフリーに近づけることが可能となる。
【0014】
また、水槽本体が仕切部材で区分されているため、これら仕切部材が水槽本体の強度を保つように作用する。しかも、気体供給路にノズルを設ける構成により、水槽本体が幅広であっても、流体中に分布する気泡を平面的に分散させることができ、気体供給路の共有を通じて部材点数が増加することもない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る鑑賞用水槽の概略正面図。
【図2】前記鑑賞用水槽の概略側面図。
【図3】水槽本体の上部側を示す概略斜視図。
【図4】水槽本体の下部側を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1及び図2において、鑑賞用水槽10は、内部に一定量の流体としての水を収容する水槽本体11と、この水槽本体11内に気体を供給する気体供給装置12と、水槽本体11の下部側に設けられたLED等からなる照明装置13とを備えて構成されている。
【0018】
前記水槽本体11は、例えば、アクリル、ポリカーボネイト等の透明な樹脂板を成形素材として構成されており、平面視長方形状の薄板型として構成されている。これを更に詳述すると、水槽本体11は、図3に示されるように、前板20及びこれに相対する後板21と、これら前板20及び後板21の左右両側に設けられた一対の側板23と、これら側板23間において前板20及び後板21間に配置された複数の仕切部材としての仕切板25と、上下に位置する蓋板26及び底板27とを備えて構成されている。これら各板は相互に接着剤を介して接着される。なお、水槽本体11は完全密閉ではなく、蓋板26は略密閉状態を保つ程度の接着とされる。水槽本体11の平面寸法は特に限定されるものではないが、本実施形態では、幅750mm、高さ2000mmとなっている。前板20、後板21及び側板21、蓋板26及び底板27の板厚は、13mm、仕切板25の板厚は、3mmである。但し、これら板厚は、水槽本体11の大きさに応じて収容される水の容積との関係において決定される。つまり、水を収容したときの内圧に応じた耐久性を維持できるものであればよい。
なお、水槽本体11内に収容される水は、図1中符合Lで示される位置を水面位置とし、当該水面位置Lと蓋板26との間に気泡放出の空間Cが形成されるようになっている。この空間Cは、各仕切板25の上端と蓋板26との間の隙間を通じて相互に連通する状態となっている。
【0019】
前記気体供給装置12は、天井若しくは幕板等からなる上部隠蔽部材30に支持される気体供給源としてのエアポンプ31と、このエアポンプ31と水槽本体11の下部との間に位置する気体供給路33と、水槽本体11の上部すなわち空間Cとエアポンプ31との間に位置する気体環流路35とにより構成されている。気体供給路33は、水槽本体11における一方の側板23に沿って延びる本体管33Aと、当該本体管33Aの下端から略直交する方向に延びるとともに、各仕切板25間の水中に気泡を発生させるためのノズル36(図4参照)が所定間隔毎に配置されたノズル管33Bとを含む。ノズル管33Bは、一方の側板23を貫通して水槽本体11内に延びている。ここで、各仕切板25の下部は、図4に示されるように、ノズル管33Bの通過を許容するための切欠部25Aとして形成されている。
【0020】
前記照明装置13は、水槽本体11の下部を受容する下部ケース40内において、当該水槽本体11の前面側に配置されている。下部ケース40は、水槽本体11の下部前面側を隠蔽する幕板等からなる隠蔽部材50の後面側において、L字ブラケット51等の支持具を用いて支持することができる。
【0021】
以上の構成において、本実施形態に係る鑑賞用水槽10は、例えば、建物の壁面側に配置して壁の一部を構成するように利用したり、室内空間の中央部に設置して前後両面側からの鑑賞用として利用することができる。
エアポンプ31から供給される空気はノズル管33Bを通じてノズル36より水中に放出され、これら多数の気泡となって水中を上昇する。水槽本体11は、仕切板25によって区分されているので、気泡は、各仕切板25間において、同じように上昇して見え、水槽本体11の全領域において、気泡が上昇する状態を鑑賞することができる。
水中を上昇した気泡は、水槽本体11の上部空間Cに放出される。この空間C内の空気は気体環流路35に吸引され、エアポンプ31を介して気体供給路33に流れて循環することとなる。
【0022】
なお、水槽本体11内の水を通過して湿気を帯びた空気を循環した運転を継続した場合、エアポンプに何らかの負荷が掛かることが懸念されるが、湿度環境の違う4箇所に設置実験してきたところ、2年半経ってもエアポンプには影響はないことが実証された。これは1年から1年半というエアポンプのチャンバーブロックの寿命を裕にクリアする実績であり、実用可能と考えられる。
また、水の減りについては、特に、水の減りが早い乾燥環境においては0ではないが、水位減少率は従来タイプに比べて約1/5の結果が得られた。
以上より、乾燥状態の激しい環境で例えば2週間に1度水を補充していたものを2.5ヶ月に1度補充すれば良いことになり、通常の環境であればおよそ2ヶ月に1度水補充を行っているところ、10カ月に1度ほどでよいことになる。
更に、水槽周辺の空気は必ずしも清浄とは言えず、喫煙者の多い商業施設などではエアポンプが吸い込んだ周囲の汚れた空気により、エアを噴出する小さなノズルの穴をヤニがふさぐ等のトラブルが頻繁に起こるが、この点も解消することが可能となる。
【0023】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
【0024】
例えば、水槽本体11の幅寸法が更に大きいタイプとした場合には、気体供給路33を分岐させ、左右両側から、ノズル管33Bを水槽本体11内に導入する構成を採用することもできる。
また、照明装置13は、LEDに限らず、蛍光管その他の光源を利用することもできる。更に、照明装置13の配置は図示構成例に限らず、水槽本体11の前後両側、上部、左右両側に配置する等、種々の設計変更が可能である。
また、エアポンプ31の代わりにオゾン発生装置を使って水槽本体11内の水を常に殺菌し特殊な液体を使用しなくても水を維持し、周辺の空気も浄化する方法なども可能である。更に、エアポンプ31に替えてコンプレッサーを利用することもできる。
【符号の説明】
【0025】
10 鑑賞用水槽
11 水槽本体
12 気体供給装置
25 仕切板(仕切部材)
31 エアポンプ(気体供給源)
33 気体供給路
35 気体環流路
36 ノズル
C 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に一定量の流体を収容した状態で当該流体上面上に空間を有する水槽本体と、前記流体中に気体を供給する気体供給装置とを含み、前記水槽本体の下部から流体中に気体を供給することで流体中を上昇する気泡を外部より鑑賞するように設けられた鑑賞用水槽において、
前記気体供給装置は、気体供給源と、当該気体供給源及び水槽本体の下部間に連通する気体供給路と、水槽本体の上部空間及び気体供給源間に連通するとともに前記空間内の気体を前記気体供給路に戻す気体環流路とを備えていることを特徴とする鑑賞用水槽。
【請求項2】
前記水槽本体は、内部に位置する複数の仕切部材によって横方向複数に区分され、前記気体供給路の下流側は前記仕切部材を横切って延びるように配置されるとともに、各区分毎に気体を供給するノズルを備えていることを特徴とする請求項1記載の鑑賞用水槽。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−66439(P2012−66439A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212035(P2010−212035)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(598136714)株式会社ウォーターパール (2)