説明

長尺材の敷設・回収装置、長尺材の敷設方法及び長尺材の回収方法

【課題】 重量の大きい長尺材を容易に敷設・回収することが可能な長尺材の敷設・回収装置を提供すること。
【解決手段】 消防ホース2の敷設・回収装置1は、リール3が配設され、駆動輪20と駆動輪20を駆動する走行駆動モータ22,23を備えた台車10と、台車10に回転自在に設けられリール3を下方から受け止める駆動ローラ24及び従動ローラ25と、駆動ローラ24を回転駆動するローラ駆動モータ26とを備え、駆動ローラ24及び従動ローラ25によりリール3を鉛直面内で回転させるリール駆動機構11と、走行駆動モータ22,23及びローラ駆動モータ26に駆動力を供給する発電機12と、台車10の走行方向を変更する走行方向変更部と台車10の走行速度を調整する走行速度調整部とリール3の回転速度を調整する回転速度調整部とを有する制御装置13と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防ホースやケーブル等の長尺材を敷設し、あるいは、回収する際に用いられる敷設・回収装置、この敷設・回収装置を用いた長尺材の敷設方法及び長尺材の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、消防ホース等の長尺材を敷設する場合に、リールに巻取られた長尺材を人力により繰り出して敷設作業を行うことも多い。しかし、長尺材を長い距離にわたって敷設する必要がある場合には人力で敷設作業を行うにも限度がある。そこで、消防ホースを長い距離にわたって敷設する場合に特に適した敷設装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この敷設装置は、自走車両上に支持軸を中心に回転自在に枢支されたリールと、このリールにリールを回転駆動する駆動ローラを備えており、自走車両を走行させながら、駆動ローラによりリールを回転させて消防ホースを繰り出し、消防ホースを敷設するように構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−318004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コンビナート等において火災が発生した場合にはその火勢は非常に強く、大量の水を迅速に火災現場に供給する必要があるため、径の大きい消防ホース(例えば、直径200〜400mm)を用いる必要がある。しかし、前述の特許文献1に記載された敷設装置においては、消防ホースが巻かれるリールは支持軸を中心に回転自在に枢支されており、リールの重量の大部分がこの支持軸に作用するため、コンビナート等で用いられるような、径の大きい消防ホースが巻かれた重量の非常に大きなリール(例えば、数トン程度の重量)を支持軸で安定的に支持することは難しく、走行中のリールの安定性にも欠ける。
【0005】
本発明の目的は、重量の大きい長尺材を容易に敷設・回収することが可能な長尺材の敷設・回収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
第1の発明の長尺材の敷設・回収装置は 長尺材が巻かれるリールがその上に配設され、複数の走行輪とこれら走行輪を駆動する走行駆動手段とを備えた台車と、この台車に回転自在に設けられ前記リールを下方から受け止める駆動ローラ及び従動ローラと、前記駆動ローラを回転駆動するローラ駆動手段とを備え、前記駆動ローラ及び前記従動ローラにより前記リールを鉛直面内で回転させるリール駆動手段と、前記走行駆動手段及び前記ローラ駆動手段に駆動力を供給する駆動源と、前記台車の走行方向を変更する走行方向変更手段と、前記走行駆動手段を制御して前記台車の走行速度を調整する走行速度調整手段と、前記ローラ駆動手段を制御して前記リールの回転速度を調整する回転速度調整手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0007】
この長尺材の敷設・回収装置により長尺材を敷設し又は回収する場合には、駆動源から駆動力が供給された走行駆動手段により走行輪を駆動して台車を走行させながら、ローラ駆動手段により駆動ローラを回転させて、駆動ローラと従動ローラに受け止められたリールを回転させる。ここで、走行方向変更手段と走行速度調整手段により走行方向及び走行速度を調整しながら台車を走行させ、回転速度調整手段によりローラ駆動手段を制御して、リールの回転速度(即ち、長尺材の繰り出し速度又は巻取り速度)を調整しながら、長尺材をリールに巻取り、あるいは、リールから繰り出す。
【0008】
従って、走行方向変更手段と走行速度調整手段により適切な走行方向及び走行速度に調整して台車を走行させながら、回転速度調整手段により長尺材の繰り出し速度又は巻取り速度を適度な速度に調整して、長尺材を敷設したり、あるいは、長尺材をリールに巻取って長尺材を回収することができるため、長い距離にわたって敷設される長尺材の敷設・回収作業を容易に行うことができる。また、リールは、駆動ローラ及び従動ローラにより下方から受け止められた状態で、駆動ローラにより回転駆動されるため、太い長尺材が巻かれた重量が大きいリールを、駆動ローラ及び従動ローラで受け止めて鉛直面内で安定的に回転させることができ、走行中のリールの安定性も向上する。
【0009】
第2の発明の長尺材の敷設・回収装置は、前記第1の発明において、前記長尺材を前記リールから繰り出すとき、あるいは、前記リールにより巻取るときに、前記リールに巻取られていない前記長尺材の部分を、リールに対してその回転軸と平行な方向に相対移動させるトラバース手段を有することを特徴とするものである。従って、このトラバース手段により、繰り出し時又は巻取り時に長尺材が絡まったり、ねじ曲がったりするのを極力防止することができ、敷設・回収作業の効率が向上する。
【0010】
第3の発明の長尺材の敷設・回収装置は、前記第1又は第2の発明において、前記台車の幅方向両側に設けられたストッパーを有することを特徴とするものである。従って、このストッパーにより、リールが幅方向にずれて台車から転落したり、あるいは、リールが倒れてしまうのを防止することができる。
【0011】
第4の発明の長尺材の敷設・回収装置は、前記第1〜第3の何れかの発明において、前記リールと前記台車との間に架け渡されて、リールを前記駆動ローラ及び前記従動ローラに押しつけて台車に固定する線状材を有することを特徴とするものである。従って、この線状材によりリールが台車に固定されるため、リールが台車から転落するのを防止できる。また、この線状材によりリールが駆動ローラ及び従動ローラに押しつけられるため、駆動ローラが回転したときに、この駆動ローラの回転がリールが確実に伝達され、リールを効率的に回転させることができる。さらに、線状材はその長さを容易に変更することができ、異なるサイズ(径)のリールを台車に載せる場合には、線状材の長さを変更するだけでサイズの異なるリールを台車に確実に固定できる。
【0012】
第5の発明の長尺材の敷設・回収装置は、前記第1〜第4の何れかの発明において、前記従動ローラは、前記駆動ローラに対して接近/離隔する方向に移動可能に設けられ、前記駆動ローラと前記従動ローラの間隔を調整可能に構成されていることを特徴とするものである。従って、駆動ローラと従動ローラの間隔を調整することにより、1つの台車に異なるサイズ(径)のリールを配設することが可能になる。
【0013】
第6の発明の長尺材の敷設方法は、前記第1〜第5の何れかの長尺材の敷設・回収装置を用いて長尺材を敷設する方法であって、長尺材が巻かれたリールを前記台車上に配設して、台車を走行させつつ前記リールから長尺材を繰り出して、前記リールに巻取られた長尺材を所定の地点まで敷設し、長尺材が全て繰り出された空のリールを長尺材が巻かれた別のリールと交換し、再び台車を走行させつつこの別のリールから長尺材を繰り出して、前記所定の地点から長尺材を敷設し、複数のリールに夫々巻取られた複数巻の長尺材を順次敷設することを特徴とするものである。
【0014】
この長尺材の敷設方法においては、まず、長尺材が巻かれたリールを台車上に配設して、この台車を走行させながらリールから長尺材を繰り出して、リールに巻かれた長尺材を所定の地点まで敷設する。そして、長尺材が全て敷設されて空になったリールを、長尺材が巻かれた別のリールに交換し、前回の敷設作業が終了した前記所定の地点から、再び台車を走行させながらこの別のリールから長尺材を繰り出して、この所定の地点から長尺材を敷設していく。そして、リールを次々に交換して、複数のリールに巻取られた複数巻の長尺材を順次敷設して長尺材を繋いでいくことにより、長い距離にわたって長尺材を敷設することができる。
【0015】
第7の発明の長尺材の回収方法は、前記第1〜第5の何れかの長尺材の敷設・回収装置を用いて長尺材を回収する方法であって、長尺材が巻かれていない空のリールを前記台車上に配設して、台車を走行させつつ前記リールにより敷設された長尺材を所定の地点まで巻取り、長尺材が巻取られたリールを長尺材が巻かれていない別のリールと交換し、再び台車を走行させつつ前記別のリールにより長尺材を巻取って、前記所定の地点から長尺材を回収し、敷設された長尺材を複数のリールに順次巻取って回収することを特徴とするものである。
【0016】
この長尺材の回収方法においては、まず、長尺材が巻かれていない空のリールを台車上に配設して、この台車を走行させながらリールにより長尺材を巻取って、敷設された長尺材を所定の地点まで回収する。そして、長尺材が巻取られたリールを、長尺材が巻かれていない別のリールに交換し、前回の回収作業が終了した前記所定の地点から、再び台車を走行させながらこの別のリールにより長尺材を巻取って、この所定の地点から長尺材を回収していく。そして、リールを次々に交換して、複数のリールに長尺材を順次巻取って回収していくことにより、長い距離にわたって敷設された長尺材を回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態について説明する。本実施形態は、特に、コンビナート等の広い敷地面積を有する現場において消火活動を行う際に用いられる消防ホースを敷設・回収する敷設・回収装置に本発明を適用した一例である。尚、図1における左方を前方とし、さらに、図1の紙面垂直方向を左右方向と定義して以下説明する。図1〜図3は、それぞれ、本実施形態の敷設・回収装置の左側面図、平面図、背面図である。また、図4〜図6は、それぞれ、敷設・回収装置の内部機構が分かるように部分的に切り欠いた敷設・回収装置の左側面図、平面図及び背面図である。
【0018】
図1〜図6に示すように、消防ホース2の敷設・回収装置1は、消防ホース2が巻かれるリール3がその上に配設され、且つ、2つの駆動輪20及び2つの従動輪21と2つの駆動輪20を夫々駆動する走行駆動モータ22,23(走行駆動手段)を備えた自走可能な台車10と、台車10上のリール3を鉛直面内で回転させるリール駆動機構11(リール駆動手段)と、走行駆動モータ22,23及びリール駆動機構11のローラ駆動モータ26に駆動力を供給する発電機12(駆動源)と、走行駆動モータ22,23やローラ駆動モータ26を含む、敷設・回収装置1の全体の制御を司る制御装置13を備えている。
【0019】
台車10は、水平フレーム10aと、この水平フレーム10aの後端部に設けられた鉛直フレーム10bとを備え、リール3の重量に十分に耐えうる堅固な構造を有する。水平フレーム10aの前端側部分の両側部には、2つの駆動輪20が夫々回転自在に設けられている。図2、図5に示すように、これら2つの駆動輪20には、軸受27により支持された2つの走行駆動モータ22,23の出力軸22a,23aが夫々直結されており、2つの駆動輪20は走行駆動モータ22,23により夫々回転駆動される。ここで、各駆動輪20には独立に走行駆動モータ22,23が連結されているため、後述の制御装置13の走行方向変更部61(図7参照)により、走行駆動モータ22,23を独立に制御することで、2つの駆動輪20の回転速度を互いに異ならせて台車10の走行方向を変更することが可能になっている。一方、水平フレーム10aの後端側部分の下面には、1対の従動輪21が回転自在に設けられている。この1対の従動輪21は、台車10の走行方向の変化に伴って360度自由に向きが変わるように台車10に取り付けられている。この台車10の走行速度及び走行方向は、リモートコントローラ65(図7参照)により任意に設定することが可能である。
【0020】
水平フレーム10aの前端部の上側には発電機12と制御装置13が配設されている。制御装置13には、この制御装置13に対して台車10の走行動作及びリール3の回転動作に関する指令等、種々の入力を行うためのリモートコントローラ65(図7参照)が設けられている。発電機12は、制御装置13からの指令に基づいて必要な量の電力を発電するように構成されている。
【0021】
リール駆動機構11は、台車10の水平フレーム10a上に回転自在に設けられた駆動ローラ24及び従動ローラ25と、駆動ローラ24を回転駆動するローラ駆動モータ26(ローラ駆動手段)とを有する。そして、消防ホース2が巻かれたリール3は、表面の消防ホース2が駆動ローラ24及び従動ローラ25に接触して、これら2つのローラ24,25に下方から受け止められた状態で台車10上に配設される。尚、本実施形態において、1つのリール3に巻かれる消防ホース2は、径が400mm、幅が約60cm、長さが約200mの大径のホースであり、接続部2aにおいて複数巻の消防ホース2を互いに接続することにより長い距離にわたって敷設される。
【0022】
駆動ローラ24の表面には、駆動ローラ24の回転時に駆動ローラ24がリール3に対して滑ってしまうのを防止するとともに、リール3の回転時に台車10に作用する衝撃を吸収する、合成ゴム等からなるクッション材が貼り付けられている。駆動ローラ24は、水平フレーム10aの後端部に固定的に設けられた左右1対の支持材28に枢支されている。また、図4、図6に示すように、ローラ駆動モータ26は駆動ローラ24の下側に配設されており、駆動ローラ24の回転軸29に固定されたスプロケット30とローラ駆動モータ26の出力軸に固定されたスプロケット31とがチェーン32により連結されている。そして、ローラ駆動モータ26の駆動力がこのチェーン32を介して駆動ローラ24に伝達され、駆動ローラ24が回転駆動される。
【0023】
従動ローラ25の表面にも、駆動ローラ24と同様のクッション材が貼り付けられている。図4、図5に示すように、この従動ローラ25は、台車10の左右両端部に設けられた前後方向に延びるガイド軸33を介して、台車10に対して前後方向に相対移動可能に設けられた左右1対の枢支部34により回転自在に枢支されている。また、水平フレーム10aには、1対のガイド軸33に平行な左右1対のネジ軸35が設けられ、これらネジ軸35には、枢支部34の下側に一体的に形成され且つ内部にネジ部を有する脚部34aが外嵌状に螺合している。さらに、1対のネジ軸35は、スプロケット36及びチェーン37を介して台車10に設けられた位置調整用モータ38と夫々連結されている。
【0024】
そして、位置調整用モータ38によりチェーン37を介してネジ軸35を回転させることで、ネジ軸35に螺合連結された1対の枢支部34及び従動ローラ25を前後に移動させて、従動ローラ25を駆動ローラ24に対して接近/離隔する方向(前後方向)に移動させることが可能である。このように、従動ローラ25を前後方向に移動させることにより、駆動ローラ24と従動ローラ25の間隔を調整して、図4に示すように、種々のサイズ(径)のリール3(3A,3B)を駆動ローラ24及び従動ローラ25を介して台車10上に配設することができるようになっている。
【0025】
消防ホース2が巻かれるリール3は、駆動ローラ24と従動ローラ25に接触した状態で台車10上に配設される。そして、ローラ駆動モータ26により駆動ローラ24が回転駆動されると、駆動ローラ24及び従動ローラ25と接触するリール3が鉛直面内で回転駆動される。このように、駆動ローラ24及び従動ローラ25により下方から受け止められた状態で、駆動ローラ24によりリール3が回転駆動されるため、大径で重量の大きい消防ホース2が巻かれた重量の大きなリール3が台車10に配設された場合でも、リール3を鉛直面内で安定的に回転させることができ、走行中のリール3の安定性も向上する。ここで、リール3から消防ホース2を繰り出す場合と、リール3に消防ホース2を巻取る場合では、ローラ駆動モータ26の回転方向は逆になる。尚、このリール3の回転速度は、リモートコントローラ65(図7参照)により設定することが可能である。
【0026】
また、図1、図4に示すように、水平フレーム10aにおいて、台車10の幅方向両側の位置には、左右1対の棒状のストッパー40が立設されており、このストッパー40によりリール3が幅方向に位置決めされており、リール3が幅方向にずれて台車10から転落したり、あるいは、リール3が倒れてしまうのが防止される。尚、図1、図4には左側のストッパー40のみが示されているが、実際にはリール3の右側にもストッパー40が設けられている。
【0027】
さらに、図1、図6に示すように、リール3の中心部には軸部材41が挿通されており、この軸部材41の両端には夫々スプロケット42が固定的に設けられている。一方、水平フレーム10aの駆動輪20の上側の位置にもスプロケット43が設けられている。そして、リール3の左右両側において、スプロケット43の近傍に一端が固定されたチェーン44(線状材)が、台車10に固定されたスプロケット43と、リール3のスプロケット42に架け渡され、さらに、このチェーン44の他端が駆動ローラ24の近傍に固定されている。このように台車10とリール3とに亙って架け渡されたチェーン44により、リール3が駆動ローラ24及び従動ローラ25に押しつけられて台車10に固定されている。
【0028】
そのため、このチェーン44によりリール3が台車10に固定されるため、リール3が台車10から転落するのを防止できる。また、このチェーン44によりリール3が駆動ローラ24及び従動ローラ25に押しつけられるため、駆動ローラ24が回転したときに、この駆動ローラ24の回転がリール3に確実に伝達される。また、このチェーン44の長さは、スプロケット43を回転させることにより容易に変更できるため、異なるサイズ(径)のリール3を台車10に載せる場合に、チェーン44の長さを変更するだけでサイズの異なるリール3を確実に固定できる。
【0029】
図1〜図3に示すように、台車10の鉛直フレーム10bには、消防ホース2のリール3からの繰り出し、及び、リール3による巻取りをスムーズに行うために、リール3に巻取られていない消防ホース2の部分を台車10に対して相対的に左右方向(リールの回転軸に平行な方向)に往復移動させるトラバース機構14(トラバース手段)が設けられている。このトラバース機構14は、鉛直フレーム10bに対して左右方向に移動可能な移動フレーム50と、この移動フレーム50を左右方向に移動させる駆動モータ51(図7参照)と、移動フレーム50に回転自在に枢支された送りローラ52を有する。
【0030】
移動フレーム50は、左右2枚の板部材55,56が、リール3に巻かれた消防ホース2の幅よりも広い間隔を空けて連結された構造を有し、この移動フレーム50の板部材55,56には、夫々内側へ突出し且つ内部にネジ部を有する筒部55a,56aが一体形成されている。一方、鉛直フレーム10bの上端部には、左右方向に延びるネジ軸57が回転自在に設けられ、さらに、このネジ軸57の下側にはガイド軸58も設けられている。ネジ軸57には、移動フレーム50の筒部55a,56aが外嵌状に螺合しており、図示しないが、このネジ軸57は駆動モータ51と連結されている。さらに、移動フレーム50の板部材55,56にはガイド軸58が挿通されている。
【0031】
送りローラ52は、移動フレーム50の左右両側の板部材55,56に回転自在に枢支されている。さらに、送りローラ52の両端部には、鉛直方向に延びる2本のガイドローラ59が夫々回転自在に設けられている。そして、リール3から繰り出され、あるいは、リール3に巻取られる消防ホース2は、2本のガイドローラ59の間において送りローラ52で前後方向に送られる。
【0032】
そして、リール3から消防ホース2が繰り出される際、あるいは、リール3に消防ホース2が巻取られる際には、ネジ軸57が駆動モータ51により回転駆動され、そのネジ軸57の回転に伴って移動フレーム50がガイド軸58にガイドされつつ左右に往復移動する。そして、2本のガイドローラ59の間で送りローラ52により送られる消防ホース2の部分が左右に移動しながら、リール3の回転と同期してリール3から繰り出され、あるいは、リール3に巻取られるため、消防ホース2が絡んだり、ねじ曲がってしまうのを防止できる。
尚、消防ホース2の回収時に、消防ホース2がリール3に最後まで巻取られたときに、消防ホース2の接続部から水を排出しやすくするために、移動フレーム50の位置はできるだけ高い位置にあることが好ましい。
【0033】
次に、制御装置13を中心とする敷設・回収装置1の電気的な構成について、図7のブロック図を参照して説明する。
制御装置13は、中央処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、敷設・回収装置1の全体動作を制御する為の各種プログラムやデータ等が格納されたROM(Read Only Memory)と、CPUで処理されるデータ等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等を備えている。
【0034】
制御装置13は、台車10の走行速度を調整する走行速度調整部60と、台車10の走行方向を変更する走行方向変更部61と、リール3の回転速度を調整する回転速度調整部62と、トラバース機構14を制御するトラバース制御部63と、従動ローラ25の位置を調整する従動ローラ位置調整部64を有する。これら走行速度調整部60、走行方向変更部61、回転速度調整部62、トラバース制御部63、及び、従動ローラ位置調整部64は、制御装置13内のCPU、ROM及びRAM等で構成されている。
【0035】
制御装置13には、リモートコントローラ65から、台車10の発進/停止の信号、台車10の走行速度の設定信号、台車10の走行方向の設定信号、リール3の回転開始/停止の信号、リール3の回転速度の設定信号、あるいは、従動ローラ25の位置調整信号等の種々の信号が入力される。また、制御装置13からは、駆動モータ22,23,26,51,38及び発電機12等に対して、起動/停止の信号等の各種制御信号が出力される。
【0036】
走行速度調整部60は、台車10の走行速度がリモートコントローラ65で設定された所定の速度となるように、2つの走行駆動モータ22,23の回転速度を制御する。また、走行方向変更部61は、台車10の走行方向がリモートコントローラ65で設定された所定の走行方向となるように、2つの走行駆動モータ22,23の回転速度(つまり、2つの駆動輪20の回転速度)を異ならせて、その回転速度差により台車10の方向を変更する。具体的には、リモートコントローラ65から台車10の走行方向を右方向に変更させる指示がされた場合には、走行方向変更部61は、右側の走行駆動モータ23の回転速度よりも左側の走行駆動モータ22の回転速度を大きくする。逆に、台車10の走行方向を左方向に変更させる指示がされた場合には、走行方向変更部61は、左側の走行駆動モータ22の回転速度よりも右側の走行駆動モータ23の回転速度を大きくする。ここで、指示された走行方向の変化が急なほど(つまり、台車10の曲がる角度が大きいほど)、2つの走行駆動モータ22,23の回転速度の差は大きくなる。
【0037】
回転速度調整部62は、リール3の回転速度がリモートコントローラ65で設定された所定の速度となるように、ローラ駆動モータ26の回転速度(つまり、消防ホース2の繰り出し速度、又は、消防ホース2の巻取り速度)を制御する。トラバース制御部63は、回転速度調整部62で調整されるリール3の回転に同期してトラバース機構14の移動フレーム50が左右に往復移動するように、トラバース駆動モータ51を制御する。従動ローラ位置調整部64は、リモートコントローラ65から従動ローラ25の位置を調整する信号が入力された場合に、位置調整用モータ38を制御して従動ローラ25を駆動ローラ24に対して接近又は離隔させる。
【0038】
次に、この消防ホース2の敷設・回収装置1の消防ホース2の敷設及び回収時の動作について説明する。
消防ホース2を敷設する場合に、従動ローラ25の位置が、台車10に配設されるリール3に適した位置にない場合には、リモートコントローラ65から従動ローラ25の位置を調整する指令がされ、その指令に基づいて、制御装置13の従動ローラ位置調整部64により位置調整用モータ38が制御されて、従動ローラ25がリール3に適した所定の位置に調整される。
【0039】
次に、消防ホース2が巻かれたリール3が駆動ローラ24及び従動ローラ25を介して台車10上に配設された後に、リモートコントローラ65から台車10の走行速度が設定され、台車10の発進の指示がされると、2つの走行駆動モータ22,23が起動して台車10が走行し始めるとともに、制御装置13の走行速度調整部60により2つの走行駆動モータ22,23が制御されて、設定された走行速度で台車10が走行する。ここで、作業員が、走行する台車10の傍を歩きながらリモートコントローラ65を操作することができるように、台車10の走行速度は作業員が歩く速度と略等しい速度に設定される。
【0040】
リモートコントローラ65から台車10の走行方向を変更する指示がなされた場合には、制御装置13の走行方向変更部61により2つの走行駆動モータ22,23がそれらの回転速度が互いに異なるように制御され、2つの駆動輪20の回転速度差が生じて台車10がリモートコントローラ65で設定された方向に曲がり、走行方向が変更される。
【0041】
そして、リモートコントローラ65からリール3の回転速度が設定され、リール3の回転開始の指示がされると、ローラ駆動モータ26が起動してリール3が回転し始めるとともに、制御装置13の回転速度調整部62によりローラ駆動モータ26が制御されて、設定された回転速度でリール3が回転する。そして、リール3から消防ホース2が繰り出される。このとき、制御装置13のトラバース制御部63によりトラバース駆動モータ51が制御されて、リール3の回転に同期してトラバース機構14の移動フレーム50が左右に往復移動する。そのため、消防ホース2が後方に略真っ直ぐに送られる位置に送りローラ52及び2本のガイドローラ59が位置することになり、これら送りローラ52及びガイドローラ59を介してリール3から消防ホース2がスムーズに繰り出される。
【0042】
次に、敷設された消防ホース2を回収する場合には、リモートコントローラ65から台車10の走行速度、台車10の走行方向、及び、リール3の回転速度が設定される。そして、走行速度調整部60及び走行方向変更部61により2つの走行駆動モータ22,23を制御して台車10を走行させながら、回転速度調整部62によりローラ駆動モータ26を制御して、前述の敷設時とは逆の方向に設定された回転速度でリール3を回転させて、消防ホース2を所定の地点まで巻取る。
【0043】
ところで、この敷設・回収装置1を用いれば、以下のように、コンビナート等の広い敷地面積を有する火災現場において長い距離にわたって消防ホース2を容易に敷設することができる。
まず、予め、消防ホース2が巻かれた複数のリール3を倉庫等の保管場所に保管しておく。そして、火災が発生した場合には、台車10を走行させて敷設・回収装置1を保管場所に移動させ、保管場所においてクレーンやフォークリフト等の荷役装置によりリール3を台車10上に配設する。
【0044】
次に、リール3が配設された台車10をポンプ等を備えた水供給源付近の地点まで移動させた後、その地点から台車10を走行させつつ、リール3を回転させて消防ホース2を繰り出していく。そして、リール3に巻かれた消防ホース2が最後まで繰り出される地点まで消防ホース2を敷設していく。
【0045】
次に、消防ホース2が最後まで繰り出された空のリール3を載せた台車10を保管場所まで移動させ、保管場所において、この空のリール3を消防ホース2が巻かれた別のリール3と交換する。そして、前回、消防ホース2の敷設を終了した地点まで台車10を移動させて、その地点から再び台車10を走行させつつリール3から消防ホース2を繰り出して、消防ホース2を敷設していく。
【0046】
このようにして、消防ホース2を敷設し終えた後の空のリール3を別のリール3に交換して前回敷設が終了した地点まで台車10を移動させ、その地点から再び敷設作業を開始する工程を繰り返し行うことで、複数のリール3に夫々巻取られた複数巻の消防ホース2を順次敷設していくことができ、長い距離にわたって大径の消防ホース2を容易に敷設することができる。
【0047】
逆に、敷設・回収装置1を用いて消防ホース2を回収する場合には、まず、消防ホース2が巻かれていない空のリール3を台車10上に配設してから、台車10を走行させつつリール3により敷設された消防ホース2を所定の地点まで巻取る。次に、消防ホース2が巻取られたリール3を、消防ホース2が巻かれていない別のリール3と交換する。そして、再び台車10を走行させつつ、この別のリール3により消防ホース2を巻取って、前回、消防ホース2の回収を終了した地点から消防ホース2を回収する。このように、消防ホース2を回収し終えた後のリール3を消防ホース2が巻かれていない空のリール3に交換して前回回収が終了した地点まで台車10を移動させ、その地点から再び回収作業を開始する工程を繰り返し行うことで、敷設された消防ホース2を複数のリール3に順次巻取って回収することができ、長い距離にわたって敷設された消防ホース2を回収することができる。
【0048】
尚、前述の消防ホース2の敷設方法においては、リール3の保管場所において空のリール3を消防ホース2が巻かれた別のリール3と交換しているが、予め、あるいは、火災が発生したときに、消防ホース2が敷設される経路に所定距離を空けて複数のリール3を配置しておき、その敷設経路の途中で空のリール3を別のリール3に交換するようにしてもよい。この場合には、リール3を交換する度に台車10を保管場所と敷設経路との間で往復させる必要がない。
【0049】
以上説明した敷設・回収装置1によれば、適切に設定された走行速度及び走行方向で台車10を走行させながら、設定された回転速度でリール3を回転させて、消防ホース2をリール3から繰り出して敷設し、あるいは、消防ホース2を巻取って回収することができるため、特に、大径で重量の大きな消防ホース2を長い距離にわたって敷設する必要がある場合でも、その敷設・回収作業を容易に行うことができる。また、リール3は、駆動ローラ24及び従動ローラ25により下方から受け止められた状態で、駆動ローラ24により回転駆動されるため、大径で重量の大きい消防ホース2が巻かれた重量の大きなリール3が台車10に配設される場合でも、リール3を鉛直面内で安定的に回転させることができ、走行中のリール3の安定性も向上する。
【0050】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同じ構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
1]前記実施形態では、リモートコントローラ65から制御装置13に対して種々の信号が入力されるようになっているが、制御装置13に作業者により操作パネル等が設けられてこの操作パネル等から直接入力されるように構成されていてもよい。
【0051】
2]リール3に巻取られていない消防ホース2の部分を左右に移動させるトラバース機構14を省略してもよい。この場合には、リール3からの消防ホース2を繰り出す際、あるいは、リール3により消防ホース2を巻取る際に、作業員により消防ホース2を左右に移動させるようにすれば、消防ホース2が絡んだり、あるいは、ねじ曲がってしまうのを防止できる。このとき、リール3から消防ホース2を繰り出す際にはリール3の回転速度をやや速くし、逆に、リール3で消防ホース2を巻取る際にはリール3の回転速度をやや遅くするようにして、消防ホース2が少し弛むようにすれば、消防ホース2を左右に移動させることがより容易になる。
【0052】
3]走行駆動モータ22,23やローラ駆動モータ26等の駆動力を発生させる駆動源としては、前記実施形態の発電機12の他、バッテリであってもよい。
4]駆動ローラ24及び従動ローラ25の数は1つずつである必要は必ずしもなく、複数であってもよい。
【0053】
5]リール3を駆動ローラ24及び従動ローラ25に押しつけて台車10に固定する手段としては、前記実施形態のチェーン44の他、ベルトやワイヤ等の線状材を用いることもできる。また、リール3の幅方向の位置ずれを防止するストッパーとしては、前記実施形態のように台車10から立設された棒状の部材に限らず、板状の部材や、前後方向に延びる棒状の部材など、種々の形状のものを用いることができる。
【0054】
6]前記実施形態は、大径の消防ホースを敷設・回収する場合に本発明を適用した一例であるが、比較的小径の消防ホースを敷設・回収する場合にも本発明を適用できる。さらに、通信用のケーブルや電線等、リールにより巻取り、繰り出しが可能な他の長尺材を敷設・回収する場合にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態に係る消防ホースの敷設・回収装置の左側面図である。
【図2】敷設・回収装置の平面図である。
【図3】敷設・回収装置の背面図である。
【図4】敷設・回収装置の一部切欠側面図である。
【図5】敷設・回収装置の一部切欠平面図である。
【図6】敷設・回収装置の一部切欠背面図である。
【図7】敷設・回収装置の電気的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0056】
1 敷設・回収装置
2 消防ホース
3 リール
10 台車
11 リール駆動機構
12 発電機
13 制御装置
14 トラバース機構
20 駆動輪
21 従動輪
22,23 走行駆動モータ
24 駆動ローラ
25 従動ローラ
26 ローラ駆動モータ
38 位置調整用モータ
40 ストッパー
44 チェーン
60 走行速度調整部
61 走行方向変更部
62 回転速度調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺材が巻かれるリールがその上に配設され、複数の走行輪とこれら走行輪を駆動する走行駆動手段とを備えた台車と、
この台車に回転自在に設けられ前記リールを下方から受け止める駆動ローラ及び従動ローラと、前記駆動ローラを回転駆動するローラ駆動手段とを備え、前記駆動ローラ及び前記従動ローラにより前記リールを鉛直面内で回転させるリール駆動手段と、
前記走行駆動手段及び前記ローラ駆動手段に駆動力を供給する駆動源と、
前記台車の走行方向を変更する走行方向変更手段と、
前記走行駆動手段を制御して前記台車の走行速度を調整する走行速度調整手段と、
前記ローラ駆動手段を制御して前記リールの回転速度を調整する回転速度調整手段と、
を備えたことを特徴とする長尺材の敷設・回収装置。
【請求項2】
前記長尺材を前記リールから繰り出すとき、あるいは、前記リールにより巻取るときに、前記リールに巻取られていない前記長尺材の部分を、リールに対してその回転軸と平行な方向に相対移動させるトラバース手段を有することを特徴とする請求項1に記載の長尺材の敷設・回収装置。
【請求項3】
前記台車の幅方向両側に設けられたストッパーを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の長尺材の敷設・回収装置。
【請求項4】
前記リールと前記台車との間に架け渡されて、リールを前記駆動ローラ及び前記従動ローラに押しつけて台車に固定する線状材を有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の長尺材の敷設・回収装置。
【請求項5】
前記従動ローラは、前記駆動ローラに対して接近/離隔する方向に移動可能に設けられ、前記駆動ローラと前記従動ローラの間隔を調整可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の長尺材の敷設・回収装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかの長尺材の敷設・回収装置を用いて長尺材を敷設する方法であって、
長尺材が巻かれたリールを前記台車上に配設して、台車を走行させつつ前記リールから長尺材を繰り出して、前記リールに巻取られた長尺材を所定の地点まで敷設し、
長尺材が全て繰り出された空のリールを長尺材が巻かれた別のリールと交換し、再び台車を走行させつつ前記別のリールから長尺材を繰り出して、前記所定の地点から長尺材を敷設し、
複数のリールに夫々巻取られた複数巻の長尺材を順次敷設することを特徴とする長尺材の敷設方法。
【請求項7】
請求項1〜5の何れかの長尺材の敷設・回収装置を用いて長尺材を回収する方法であって、
長尺材が巻かれていない空のリールを前記台車上に配設して、台車を走行させつつ前記リールにより敷設された長尺材を所定の地点まで巻取り、
長尺材が巻取られたリールを長尺材が巻かれていない別のリールと交換し、再び台車を走行させつつ前記別のリールにより長尺材を巻取って、前記所定の地点から長尺材を回収し、
敷設された長尺材を複数のリールに順次巻取って回収することを特徴とする長尺材の回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−289(P2006−289A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178359(P2004−178359)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】