説明

長尺栽培ベッド回転装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、栽培プラントに適用される長尺栽培ベッド回転装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ロックウール栽培プラントによりハウス内で苺を栽培する一例として、粒状綿ロックウールを長尺ベッドに埋め込み、長尺ベッドを架台に上下二段に固定した栽培棚を設け、この栽培棚を通路を隔てて複数平行に配設し、栽培棚に連続ベッド潅液式を採用し、苺を栽培しているものがある。これにより天候に左右されずに計画通りに栽培でき、摘果など作業性が良く重労働から開放され、また保守管理が容易で給排液の精度も高く、さらに品質的にも問題がなく果肉が堅く日持ちが良いものができ、現在のところ収量は10a当たり、7〜10トンとなっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上下二段の栽培棚としため、下段の苺への日当たりが極めて悪く、下段の栽培ベッドにある苺の収量は、上段の栽培ベッドにある苺の収量の60%以下が実情であり、収量向上には自ずと限界があった。また、多量の栽培ベッドを配置することは物理的に困難であり、施設の有効利用が図れなかった。
【0004】本発明は、日当たりを改善して栽培物の収量を向上させる長尺栽培ベッド回転装置を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】このような目的を達するため、請求項1記載の発明は、栽培プラントに適用される長尺栽培ベッド回転装置であって、上側垂直材と、下側垂直材と、前記上側垂直材の下端部と前記下側垂直材の上端部とを連結する斜材とを有する支柱を備え、該支柱を、二本の長尺栽培ベッドの長さ方向にわたって該二本の長尺栽培ベッドの間を通るように複数立設し、該斜材に回転軸を直交して回転可能に取り付け、アームの中央部を該回転軸に直交して複数固定し前記各アームの両端に前記回転軸から等距離に左右一対の吊具を連結し、該吊具に前記二本の前記長尺栽培ベッドを前記回転軸に平行に吊下げ、該長尺栽培ベッドが時計方向又は反時計方向に回転することにより、上下垂直二段状態と水平横並び状態とを取ることができ、前記上下二段状態では、隣接する前記長尺栽培ベッドの間に通路が形成され、前記斜材の上下に前記二の長尺栽培ベッドが配置され、更に前記アームの凹みに上側の前記長尺栽培ベッドが収容されるように構成したことを特徴とする長尺栽培ベッド回転装置である。また、請求項2記載の発明は、前記上下二段状態では、前記長尺栽培ベッドが前記二本の垂直材の間隔に収まるように構成された請求項1の長尺栽培ベッド回転装置である
【0006】
【作用】栽培ベッドが時計方向又は反時計方向に回転することにより、上下二段状態と水平横並び状態とを取ることができ、しかも、少しの力で長尺栽培ベッドが回転でき、それらの状態の切換が容易であり、長尺栽培ベッドが安定して停止することができる。栽培時には、長尺栽培ベッが水平横並び状態となっており、均等な日当たりが実現でき、収量が飛躍的に向上する。一方、上下二段状態では、隣接する長尺栽培ベッド間に通路が形成され、通路を通って作業等を行うことが出来る。
【0007】
【実施例】以下、図1〜図8に基づいて、本発明の実施例の長尺栽培ベッド回転装置1について説明する。図1〜図4に示すように、長尺栽培ベッド回転装置1は鉄製であって、平行な二本の垂直材3,5と垂直材3,5端部を連結する斜材7とを有する支柱9を所定間隔で複数立設し、斜材7に回転丸軸11を回転可能に直交して取り付け、回転丸軸11に直交してアーム13の中央部15(図6参照)を固定し、合成樹脂製の長尺樋状栽培ベッド17,19端部を回転丸軸11に平行に吊る吊具21,23をアーム13の両端に連結し、アーム13が折れ曲がっているものである。垂直材3の下端がコンクリートブロック2の孔に挿入されて埋設されており、垂直材5の上端部はブレース8に取付具で固定されている。
【0008】図5(a)(b)の支柱9は断面L字状に形成されており、斜材7の中央部上端面にリング環4がその軸方向が斜材7と直交するように固定され、回転丸軸11が軸受としてのリング環4に挿通されて摺接しながら回転できるようになっており、垂直材5と斜材7の連結部からストッパ6が垂下している。回転丸軸11の端部にはハンドル10(図1及び図2参照)が取り付けられており、ハンドル10と回転丸軸11が一体的に回動できるようになっている。
【0009】図6,図7のアーム13は断面L字状に形成されており、左端部が鋭角に折れ曲がっている補強材12と、鈍角と鋭角に二箇所が折れ曲がっている補強材12と、鈍角に折れ曲がっているところ(中央部15)にビス等で固定されている軸保持部としてのリング環16とからなっている。回転丸軸11がリング環16に挿通されて摺接しながら回転できるようになっている。吊具21,23は、ピン21a,23aで回動可能にアーム13の両端部に連結されている。このピン21a,23aの位置を結ぶ直線上の真中にリング環16の中心が位置しており、良好なバランスが保持できるようになっている。ピン21a,23aの代わりにボルト・ナットでも良い。吊具21,23は同じ構成であるので、吊具21のみを説明する。吊具21は断面L字状に形成されており逆Y形状であり、端部が切り欠かれており、栽培ベッド17を掛止するためのワイヤ22が取り付けられている。
【0010】図8(a)(b)の合成樹脂製の栽培ベッド17,19は同じ構成であるので、栽培ベッド17のみを説明する。栽培ベッド17は長さが40mであり樋状に湾曲しており、上端部は外方に湾曲しており、回転丸軸11と同軸状の回転丸軸18に係止できるようになっている。栽培ベッド17の下端には、角形状の排水通路20が軸方向に形成されている。また、図8(b)のように給水パイプ26が栽培ベッド17上端に係止されており、一方、排水通路20端部には排水口27が設けられている。
【0011】本実施例の動作と作用を説明する。図8の栽培ベッド17の底部に図示せぬ紙製防根シートを敷き、その上に網状シートとを敷き、そこに粒状綿ロックウールを埋め込んで充填し、その表面に給水パイプ26から延び出す多孔性ビニールを載置し、そこから養液を粒状綿ロックウールに浸出させ、排水通路20に排液し、排水口27から排出することができる。給水パイプ26には図示せぬ自動給液装置が連結されている。栽培時には図のように水平横並び状態とすることができ(このとき幅が1mとなる)、下段の苺への日当たりが均等となり、下段の苺の収量が40%以上アップし上段の苺の収量と同等となり、上下併せて全体として考えても20%以上の収量向上となる。図の状態からハンドル10を時計方向に回動させると、図の上下二段状態(このとき幅40cmとなる)とすることができる。そのとき、斜材7とアーム13とが栽培ベッド17,19の回転の邪魔にならずに、しかも栽培ベッド17の右半部が図6の凹み28に収納されることから、栽培ベッド17,19が完全に垂直二段に整列することができ、多量の栽培ベッドを配置することができる利点がある。斜材7の存在と、中央部15に対して栽培ベッド17,19が等距離にあることによって、栽培ベッド17と19との重量バランスが任意の位置で良好に保たれることから、少ない力でハンドル10を容易に制御でき操作が楽であり作業性の向上に資することができる。図9のように、通路0を介して支柱9を所定間隔で設置し、かつ、隣接する支柱9を一組として左右対称に配置していることから、重量バランスの点で全体構造としても堅固である。さらに栽培ベッド17,19に冷暖房用パイプを配管すれば、季節に関係無く苺を栽培することが可能である。
【0012】次に図10の変形例について説明する。変形例は二本の回転制御軸30,31をストッパ6の取付板29に取り付けたものであり、長尺栽培ベッドが特に長くなるときに、回転丸軸11とともに栽培ベッド17,19を回動させるものである。回転制御軸30,31にはワイヤロープ32,33が巻回されており、各先端がそれぞれピン21a,23aに取り付けられている。回転制御軸30,31いずれかを回すと、ワイヤロープ32,33の一方が繰りだし、他方は巻き取られるようになっている。以上、本発明の好適な実施例を説明したが、本発明は上述の実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で多くの変更・改変を施しうることは当然である。例えば、アーム13が折れ曲がっている代わりに、湾曲状に形成することもできる他、図2で栽培ベッド17の回動の支障とならないような凹み28が形成されていれば、何ら形状には限定されるものではない。さらにハンドル10に代えて、電動機あるいは油圧駆動装置により、回転丸軸11を一斉にスイッチ一つで自動的に回転できるようにすることもできる。
【0013】
【発明の効果】以上説明したように、栽培ベッドが時計方向又は反時計方向に回転することにより、上下二段状態と水平横並び状態に整列することができ、それらの状態の切換が容易であり、少しの力で長尺栽培ベッドが回転でき、長尺栽培ベッドが安定して停止することができる。従って、均等日当たりが実現でき、収量が飛躍的に向上する。また上下二段状態では、隣接する長尺栽培ベッド間に通路が形成され、通路を通って作業等を行うことが出来る。回転丸軸を回動させても、斜材とアー栽培ベッドの回転の邪魔にならずに、しかも栽培ベッドがアーム内に収納されることから、栽培ベッドが完全な垂直状態に整列することができ、多量の栽培ベッドを配置することができるので、施設の有効利用を図ることが出来る。斜材の存在と、中央部に対して栽培ベッドが等距離にあることによって、栽培ベッドとの重量バランスが任意の位置で良好に保たれることから、少ない力で栽培ベッドを容易に制御でき操作が楽であり作業性の向上に資することができる。また通路を介して支柱を所定間隔で設置し、かつ、隣接する支柱を一組として左右対称に配置すれば、重量バランスの点で全体構造としても堅固である。さらに栽培ベッドに冷暖房用パイプを配管すれば、季節に関係無く苺を栽培することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の栽培ベッドが水平状態に整列したときの正面図である。
【図2】本実施例の栽培ベッドが垂直状態に整列したときの正面図である。
【図3】本実施例の栽培ベッドが水平状態に整列したときの右側面図である。
【図4】本実施例の栽培ベッドが垂直状態に整列したときの右側面図である。
【図5】(a)は本実施例の支柱の正面図、(b)は同右側面図である。
【図6】本実施例のアームと吊具の正面図である。
【図7】(a)は図6のX−X断面端面図、(b)は図6R>6のY−Y断面端面図、(c)は図6のZ−Z断面端面図である。
【図8】(a)は本実施例の栽培ベッドの断面正面図、(b)は栽培ベッドの正面図である。
【図9】本実施例が複数整列した状態の正面図である。
【図10】本実施例の変形例の正面図である。
【符号の説明】
1 長尺栽培ベッド回転装置
2 コンクリートブロック
3,5 垂直材
4,16 リング環
6 ストッパ
7 斜材
8 ブレース
9 支柱
10 ハンドル
11,18 回転丸軸
12 補強材
13 アーム
15 中央部
17,19 栽培ベッド
20 排水通路
21,23 吊具
22,24 ワイヤ
26 給水パイプ
27 排水口
28 凹み

【特許請求の範囲】
【請求項1】 栽培プラントに適用される長尺栽培ベッド回転装置であって、上側垂直材と、下側垂直材と、前記上側垂直材の下端部と前記下側垂直材の上端部とを連結する斜材とを有する支柱を備え、該支柱を、二本の長尺栽培ベッドの長さ方向にわたって、該二本の長尺栽培ベッドの間を通るように複数立設し、該斜材に回転軸を直交して回転可能に取り付け、アームの中央部を該回転軸に直交して複数固定し前記各アームの両端に前記回転軸から等距離に左右一対の吊具を連結し、該吊具に前記二本の前記長尺栽培ベッドを前記回転軸に平行に吊下げ、該長尺栽培ベッドが時計方向又は反時計方向に回転することにより、上下垂直二段状態と水平横並び状態とを取ることができ、前記上下二段状態では、隣接する前記長尺栽培ベッドの間に通路が形成され、前記斜材の上下に前記二の長尺栽培ベッドが配置され、更に前記アームの凹みに上側の前記長尺栽培ベッドが収容されるように構成したことを特徴とする長尺栽培ベッド回転装置。
【請求項2】 前記上下二段状態では、前記長尺栽培ベッドが前記二本の垂直材の間隔に収まるように構成された請求項1の長尺栽培ベッド回転装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図9】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【特許番号】特許第3157090号(P3157090)
【登録日】平成13年2月9日(2001.2.9)
【発行日】平成13年4月16日(2001.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−123225
【出願日】平成7年4月24日(1995.4.24)
【公開番号】特開平8−289667
【公開日】平成8年11月5日(1996.11.5)
【審査請求日】平成11年6月21日(1999.6.21)
【出願人】(395008573)
【出願人】(395008562)
【参考文献】
【文献】実開 昭59−31847(JP,U)
【文献】実開 昭61−131746(JP,U)