説明

長尺電力ケーブルの工場ジョイント部の耐電圧試験方法

【課題】一連続で製造可能な長さの単位電力ケーブルを所要本数、工場でジョイントして長尺化してなる長尺電力ケーブルの、工場ジョイント部の耐電圧試験を、容量の小さい試験電圧発生設備で行えるようにする。
【解決手段】試験すべき工場ジョイント部1の補強絶縁体8の外周に、当該工場ジョイント部の両側の単位電力ケーブル2A、2Bの外部半導電層5と電気的に縁切りされたジョイント部外部半導電層9を設け、その外周に仮遮蔽層10を設け、長尺電力ケーブルの導体3を接地した状態で、仮遮蔽層10に試験電圧を印加することにより工場ジョイント部の耐電圧試験を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一連続で製造可能な長さの単位電力ケーブルを所要本数、工場でジョイントして長尺化してなる長尺電力ケーブルの、工場ジョイント部の耐電圧試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海底ケーブル等は長距離を一連続で布設する必要があることから、工場から出荷されるケーブルの長さは例えば数10km以上と極めて長くなる。しかし電力ケーブルの場合、一連続で製造可能なケーブルの長さは数kmから10数km程度であるため、長さ数10km以上というような長尺電力ケーブルは、一連続で製造可能な長さの単位電力ケーブルを所要本数、工場でジョイントして長尺化することにより製造される。
【0003】
このような長尺電力ケーブルの場合も、工場出荷前に健全性確認のため耐電圧試験を行う必要がある。個々の単位電力ケーブルについては、製造した段階で(ジョイント前に)従来の試験電圧発生設備で耐電圧試験を行い、健全性を確認することが可能である。しかし、最も健全性確認が必要なのは、機械的に一連続で製造可能な単位電力ケーブルよりも、工場ジョイント部である。工場ジョイント部の耐電圧試験は、複数本の単位電力ケーブルをジョイントして長尺化した長尺電力ケーブルの状態でしか行うことができない。
【0004】
一般に、中間に複数のジョイント部を含む電力ケーブルの耐電圧試験は、電力ケーブルの導体に試験電圧を印加することにより行われる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−87864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、電力ケーブルの導体に試験電圧を印加して耐電圧試験を行う方法は、電力ケーブルの長さに応じて容量の大きい試験電圧発生設備が必要となるため、全長が数10km以上にもなる長尺電力ケーブルの場合は、この方法で耐電圧試験を行うためには、容量の極めて大きい試験電圧発生設備が必要となる。その上、交流の耐電圧試験においては補償リアクトルも必要となる。このため、長さ数10kmから100km程度の長尺電力ケーブルについて100kV以上の高電圧試験を行うとなると、一般的な試験電圧発生設備では対応できず、新規に試験電圧発生設備を建設する必要も出てくる。その費用は数億円以上にもなり、簡単には耐電圧試験を行うことはできない。
【0007】
本発明の目的は、長尺電力ケーブルの工場ジョイント部の耐電圧試験を容量の小さい試験電圧発生設備で行える方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る耐電圧試験方法は、一連続で製造可能な長さの単位電力ケーブルを所要本数、工場でジョイントして長尺化してなる長尺電力ケーブルの、工場ジョイント部の耐電圧試験方法であって、試験すべき工場ジョイント部の補強絶縁体の外周に、当該工場ジョイント部の両側の少なくも一方の単位電力ケーブルの外部半導電層と電気的に縁切りされたジョイント部外部半導電層を設け、その外周に仮遮蔽層を設け、長尺電力ケーブルの導体を接地した状態で、前記仮遮蔽層に試験電圧を印加することにより工場ジョイント部の耐電圧試験を行うことを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る耐電圧試験方法は、ジョイント部外部半導電層の端部外周から単位電力ケーブルの絶縁体の外周にかけて、半導電部と絶縁部とからなるストレスリリーフコーンを設け、縁切り部の電界を緩和した状態で耐電圧試験を行うこともできる。
【0010】
この場合、ストレスリリーフコーンの半導電部は半導電テープ巻きにより形成し、絶縁部は絶縁テープ巻きにより形成することができる。
【0011】
また、ストレスリリーフコーンは、半導電部と絶縁部が一体に形成されたゴム成型体からなるものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、長尺電力ケーブルの導体を接地した状態で、単位電力ケーブルの外部半導電層と縁切りされた工場ジョイント部の仮遮蔽層に試験電圧を印加するので、長尺電力ケーブルの全長に電圧を印加する方法に比べ、容量の小さい試験電圧発生設備で耐電圧試験を行うことができる。
【0013】
また、縁切り部にストレスリリーフコーンを取り付けることにより、縁切り部の電界を緩和することができるので、試験電圧の高い耐電圧試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る試験方法の一実施例を示す断面図。
【図2】本発明に係る試験方法の他の実施例を示す断面図。
【図3】本発明に係る試験方法のさらに他の実施例を示す断面図。
【図4】本発明に係る試験方法のさらに他の実施例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0015】
図1は本発明の一実施例を示す。図において、1は一連続で製造可能な長さの単位電力ケーブル(CVケーブル)を所要本数、工場でジョイントして長尺化してなる長尺電力ケーブルのうちの一つの工場ジョイント部を示し、2A、2Bはその工場ジョイント部1で接続された単位電力ケーブルを示す。単位電力ケーブル2A、2Bは同じ構造で、導体3、絶縁体4、外部半導電層5、金属遮蔽層6等から構成されている(他の構成部材は図示省略)。工場ジョイント部1は、導体接続部7、補強絶縁体8等から構成されている(他の構成部材は図示省略)。
【0016】
工場ジョイント部1の耐電圧試験を行うため、単位電力ケーブル2A、2Bの端部は金属遮蔽層6、外部半導電層5を段剥ぎして絶縁体4を所要長露出させる。また補強絶縁体8の外周には半導電テープ巻きによりジョイント部外部半導電層9が設けられる。ジョイント部外部半導電層9は、その両端部がケーブル絶縁体4の外周に位置するように設けられるが、ケーブル外部半導電層5とは電気的に縁切りされる。つまり、ジョイント部外部半導電層9の端部とケーブル外部半導電層5の端部との間には試験電圧に耐えられるだけの絶縁間隔が設けられる。また、ジョイント部外部半導電層9の外周には金属箔等により仮遮蔽層10が設けられる。
【0017】
工場ジョイント部1に上記のような処理を施した上で、長尺電力ケーブルの導体3及び金属遮蔽層6を接地し、仮遮蔽層10を試験電圧発生設備11に接続して、仮遮蔽層10に試験電圧を印加することにより工場ジョイント部1の耐電圧試験を行う。
【0018】
このようにすると、仮遮蔽層10だけに試験電圧を印加すればよいので、試験電圧発生設備11は、長尺電力ケーブルの導体全長に試験電圧を印加する場合に比べれば、容量の極めて小さなもので済み、大幅なコストダウンを図ることができる。
【0019】
以上の試験により工場ジョイント部の健全性が確認されたら、仮遮蔽層10及びジョイント部外部半導電層9を除去して、正規のジョイント部外部半導電層及び金属遮蔽層を設けて工場ジョイント部を完成させる。また耐電圧試験の結果、工場ジョイント部が不合格となった場合はその工場ジョイント部を切除して再ジョイントを行う。
【0020】
図2は本発明の他の実施例を示す。図1の実施例では補強絶縁体8の外周のジョイント部外部半導電層9を、その両側の単位電力ケーブル2A、2Bの外部半導電層5と縁切りしたが、この実施例は、ジョイント部外部半導電層9の一端側だけを一方の単位電力ケーブル2Aの外部半導電層5と縁切りし、他端側は他方の単位電力ケーブル2Bの外部半導電層5と縁切りせずに、耐電圧試験を行う場合である。
【0021】
このような構成で耐電圧試験を行えるのは例えば次のような場合である。すなわち、長尺電力ケーブルの全長(数10km)のうち、試験すべき工場ジョイント部から当該長尺電力ケーブルの一端までの長さが他端までの長さよりも格段に短い場合、例えば工場ジョイント部1の片方の単位電力ケーブル2Bが長尺電力ケーブルの最も端に位置する場合などである。この場合は、図2のような構成で耐電圧試験を行っても、試験電圧発生設備の容量は1本の単位電力ケーブル2B(長さ数km)について耐電圧試験を行う場合とほぼ同じで済むので、長尺電力ケーブルの導体全長に試験電圧を印加する場合に比べれば、試験電圧発生設備の容量を格段に小さくできる。
【0022】
図3は本発明のさらに他の実施例を示す。図1の試験方法では、試験電圧が印加されるジョイント部外部半導電層9の端部付近で等電位線の曲率が大きく間隔が狭くなるため、その部分に電界が集中しやすい。試験電圧が100kV程度以下の場合は、縁切り部のケーブル絶縁体4の露出長さを100mm以上にすれば、図1の試験方法でも耐電圧試験は可能である。しかし試験電圧が100kV〜200kVと高くなると、図1の試験方法ではジョイント部外部半導電層9の端部付近の電界が強くなって、工場ジョイント部が健全であったとしても耐電圧試験で破壊したり、放電が発生し、部分放電測定を併用した耐電圧試験を行うことが難しくなる。
【0023】
そこで図3の実施例では、ジョイント部外部半導電層9の端部外周から単位電力ケーブル2A、2Bの絶縁体4の外周にかけて、半導電部12aと絶縁部12bとからなるストレスリリーフコーン12を設けた上で、耐電圧試験を行うようにしたものである。半導電部12aは半導電テープ巻きにより形成し、絶縁部12bは絶縁テープ巻きにより形成する。半導電部12aはその一部がジョイント部外部半導電層9の端部外周に位置するように形成され、半導電部12aと絶縁部12bの界面はジョイント部外部半導電層9の端部から離れるに従い内径が徐々に大きくなるテーパー状(ラッパ状)に形成される。このようにすると、縁切り部を通る等電位線は曲がりが緩やかになり、縁切り部の電界が緩和されるので、試験電圧が100kV〜200kVの場合でも絶縁破壊を発生させることなく耐電圧試験を行うことができる。
【0024】
図4は本発明のさらに他の実施例を示す。図3の実施例のようにストレスリリーフコーン12をテープ巻きにより形成すると、試験電圧がさらに高くなった場合、テープ巻きにより生じる三角ボイド部から部分放電が発生しやすくなり、部分放電測定を併用した耐電圧試験を正常に行うことが難しくなる。
【0025】
そこで図4の実施例では、ストレスリリーフコーン12を半導電部12aと絶縁部12bが一体に形成されたゴム成型体で構成したものである。ゴムの材料としてはシリコーンゴムやエチレンプロピレンゴムを使用するとよい。このストレスリリーフコーン12は一体物であるため、単位電力ケーブル2A、2Bをジョイントする前に、ゴム弾性に逆らって拡径した状態でケーブル上に外装しておき、工場ジョイント部1を形成した後、図示の位置に引き戻して、ゴム弾性により縮径させることで、所定の位置に装着する。このようなストレスリリーフコーン12を用いれば、200kV以上の試験電圧でも耐電圧試験を行うことができる。
【0026】
なお、試験電圧がさらに高くなり、図4のような一体物のストレスリリーフコーン12を用いても縁切り部で閃絡が発生するおそれのある場合は、ケーブル外部半導電層5側にも同様のストレスリリーフコーンを設けるとよい。
【符号の説明】
【0027】
1:工場ジョイント部
2A、2B:単位電力ケーブル
3:ケーブル導体
4:ケーブル絶縁体
5:ケーブル外部半導電層
6:金属遮蔽層
7:導体接続部
8:補強絶縁体
9:ジョイント部外部半導電層
10:仮遮蔽層
11:試験電圧発生設備
12:ストレスリリーフコーン
12a:半導電部
12b:絶縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一連続で製造可能な長さの単位電力ケーブルを所要本数、工場でジョイントして長尺化してなる長尺電力ケーブルの、工場ジョイント部の耐電圧試験方法であって、試験すべき工場ジョイント部の補強絶縁体の外周に、当該工場ジョイント部の両側の少なくも一方の単位電力ケーブルの外部半導電層と電気的に縁切りされたジョイント部外部半導電層を設け、その外周に仮遮蔽層を設け、長尺電力ケーブルの導体を接地した状態で、前記仮遮蔽層に試験電圧を印加することにより工場ジョイント部の耐電圧試験を行うことを特徴とする長尺電力ケーブルの工場ジョイント部の耐電圧試験方法。
【請求項2】
ジョイント部外部半導電層の端部外周から単位電力ケーブルの絶縁体の外周にかけて、半導電部と絶縁部とからなるストレスリリーフコーンを設け、縁切り部の電界を緩和した状態で耐電圧試験を行うことを特徴とする請求項1記載の長尺電力ケーブルの工場ジョイント部の耐電圧試験方法。
【請求項3】
ストレスリリーフコーンの半導電部は半導電テープ巻きにより形成され、絶縁部は絶縁テープ巻きにより形成されることを特徴とする請求項2記載の長尺電力ケーブルの工場ジョイント部の耐電圧試験方法。
【請求項4】
ストレスリリーフコーンは、半導電部と絶縁部が一体に形成されたゴム成型体からなることを特徴とする請求項2記載の長尺電力ケーブルの工場ジョイント部の耐電圧試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−220215(P2012−220215A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83072(P2011−83072)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【Fターム(参考)】