長茎植物の栽培方法及び植物栽培装置
【課題】省エネルギー・低コストで長茎植物の栽培を行うことができる栽培技術を提供する。
【解決手段】トマト,ナス,キュウリ等の長茎植物の栽培方法において、長茎植物の株元の地際から主茎の第1側枝節又は第10節までの主幹部分(株元部分)の全部分又は一部分をヒータにより局所的に直接加温することにより、当該株元部分の加温制御を行う。このように、株元部分のみを局所的に直接加温することで、植物株全体を加温しなくても、植物の草勢が活性化され、結果数が増加する。また、植物株全体を加温しないため、無駄な熱の放散による熱損失が極めて少なく、加温処理におけるエネルギー効率を飛躍的に改善することができる。さらに、株元のみにヒータを設置すればよいため、加温処理設備が簡易であり、低コストの設備で植物栽培を行うことができる。
【解決手段】トマト,ナス,キュウリ等の長茎植物の栽培方法において、長茎植物の株元の地際から主茎の第1側枝節又は第10節までの主幹部分(株元部分)の全部分又は一部分をヒータにより局所的に直接加温することにより、当該株元部分の加温制御を行う。このように、株元部分のみを局所的に直接加温することで、植物株全体を加温しなくても、植物の草勢が活性化され、結果数が増加する。また、植物株全体を加温しないため、無駄な熱の放散による熱損失が極めて少なく、加温処理におけるエネルギー効率を飛躍的に改善することができる。さらに、株元のみにヒータを設置すればよいため、加温処理設備が簡易であり、低コストの設備で植物栽培を行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の加温栽培技術に関し、特に、トマト,ナス,キュウリ等の長茎植物の栽培を可能とする加温栽培技術に関する。
【背景技術】
【0002】
植物栽培において、植物の生育調整のための温度管理は極めて重要である。温度管理の方法として、通常、ハウス,トンネル,マルチング等による保温が行われるが、保温だけでは温度が不足する場合には、温湯や温風等により加温することが行われる。
【0003】
植物の加温には、地上部の加温と地下部(根圏)の加温とがあり、実際の植物栽培には両者が併用して使用される場合もある。地上部を加温する加温方法としては、ハウスやトンネルの内部の空間全体を温風や温湯で加温する空間加温の方法が広く用いられている。また、地下部の加温方法としては、栽培床の内部に温湯パイプを通して温湯を循環させることによって根圏を含む土壌全体を加温する方法が広く使用されている。
【0004】
また、特許文献1には樹木を原産地よりも高緯度地域で栽培するための加温栽培方法として、樹木の地上部は樹幹に面ヒータを巻き付けて加温し、樹木の根圏直下の地中にもヒータを埋設して土壌全体を加温する方法が記載されている。
【0005】
上記各方法は植物体を全体的に加温する栽培方法であるが、一方で、植物体の一部を局所的に加温する栽培方法が知られている。特許文献2に記載の栽培方法は、イチゴなどの短縮茎(クラウン)を形成する種類の植物(以下「短縮茎形成植物」という。)を栽培するための加温栽培方法である。この方法によれば、葉芽や花芽が発生する短縮茎にヒータ線を接触させて局所的に直接加温を行う。これにより、寒冷期においても短縮茎形成植物の休眠打破がされ、葉芽・花芽ともに強勢に生育することが報告されている。
【0006】
また、植物体全体の栽培方法ではないが、特許文献3には、ハウスミカンの栽培において着果予測を行う方法として、ミカンの結果母枝の一部をヒータで加温して、加温部のみを早期に着花させる方法が記載されている。
【0007】
また、非特許文献1〜3には、トマトの花房から約10cmの位置にヒヨコ電球を設置し局所加温を行うことにより、トマトの着果率を向上させる方法が記載されている。
【特許文献1】特開平9−66号公報
【特許文献2】特開2005−237271号公報
【特許文献3】特開平1−231824号公報
【非特許文献1】森山友幸,伏原肇,「花房への局部加温がトマトの花粉発芽に及ぼす影響」,園芸学会雑誌,園芸学会,1997年,66巻,別冊1,pp.382−383
【非特許文献2】森山友幸,姫野修一,井手治,「トマト花房への局部加温が着果率に及ぼす影響」,園芸学会雑誌,園芸学会,1999年,68巻,別冊2,pp.331
【非特許文献3】森山友幸,姫野修一,井手治,「トマトの花房への局所加温による着果率向上」,[online],平成10年度,福岡県農業総合試験場,[平成17年12月8日検索],インターネット、<http://www.pref.fukuoka.lg.jp/nosei/organ/farc/seika/seika05/10seino13.htm>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の植物体を全体的に加温する栽培方法は、植物体の地上部を囲む空間全体又は植物体の根圏を含む土壌全体を加温するため、熱効率が悪く、植物栽培におけるエネルギー効率が悪いという問題がある。また、熱効率の悪さ故に加温に要するコストが高く、経済性も悪い。
【0009】
一方、特許文献2に記載の局所加温による栽培方法においては、加温時の熱効率が高く、省エネルギー・低コストで植物の栽培を行うことができる。この栽培方法は、短縮茎形成植物のような花芽や葉芽が限られた箇所から発生する植物の栽培を行う方法である。かかる短縮茎形成植物においては、頂端分裂組織の分布は、植物体のごく限られた箇所に特定されている。そのため、その箇所を局所的に加温することで、高い熱効率で生産性のよい加温栽培を可能とした点がこの栽培法の最大のポイントである。
【0010】
しかしながら、長茎植物のように、節間が伸長し葉や側枝が茎上に散生してついた主茎、枝、又はシュート(以下「長茎」という。)をつくる植物(以下「長茎植物」という。)においては、葉芽や花芽などの頂端分裂組織は、各節(側枝や葉鞘の付け根部分)及び茎頂や枝条の頂部にあり、1カ所には集中していない。従って、上記特許文献2の栽培方法は、長茎植物に対しては適用することができない。
【0011】
一方、特許文献3及び非特許文献1〜3の方法では、長茎植物の花芽の発生する部分や着果箇所をヒータやヒヨコ電球により局所的に加温するものである。この方法を採れば、原理的には省エネルギーで長茎植物の加温栽培を行うことが可能であると考えられる。
【0012】
しかしながら、長茎植物においては、葉芽や花芽の発生する箇所(以下「葉節」という。)は、植物体の各所に分散しており、また、植物体の伸長成長とともに葉節の着生位置も変化し、新たな葉節も次々に発生する。従って、一般の農業経営において、これらの次々に変化する葉節の発生箇所を局所的に加温するヒータやヒヨコ電球などの加温装置を設置するのは、大変な労力を要する。また、各葉節の発生箇所に対して加温装置を設置するには、1株の植物体に対して多数の加温装置が必要となり、設備が大がかりとなり現実的ではない。
【0013】
そこで、本発明の目的は、省エネルギー・低コストで長茎植物の栽培を行うことができる栽培技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明者は、まず、長径植物の加温栽培において、加温により植物株の生長が特に促進される部分について調査すべく鋭意栽培試験を行った。上述のように、特許文献2に開示された試験結果を参照すれば、長径植物においても、頂端分裂組織付近を加温することにより生長が促進されるであろうことは想像される。
【0015】
しかしながら、試験の結果、意外にも、加温栽培において長径植物の生長を特に促進させる加温部位、すなわち「加温のツボ」部分は、頂端分裂組織付近ではなく植物株の株元付近であることを見出した。その結果、本発明をするに至ったものである。
【0016】
すなわち、本発明に係る長茎植物の栽培方法は、節間が伸長し葉や側枝が茎上に散生してついた主茎、枝、又はシュート(以下「長茎」という。)をつくる植物(以下「長茎植物」という。)の栽培方法であって、長茎植物の株元の地際から主茎の第1側枝節又は第10節までの主幹部分(以下「株元部分」という。)の全部分又は一部分をヒータにより局所的に直接加温することにより、当該株元部分の加温制御を行うことを特徴とする。
【0017】
このように、特に、寒冷期において、植物株の株元部分のみを局所的にその植物の生長適温に直接加温することにより、植物株全体を加温しなくても、植物の草勢が活性化され、結果数が増加する。また、植物株全体を加温しないため、無駄な熱の放散による熱損失が極めて少なく、加温処理におけるエネルギー効率を飛躍的に改善することができる。さらに、株元のみにヒータを設置すればよいため、加温処理設備が簡易であり、低コストの設備で植物栽培を行うことができる。
【0018】
ここで、「長茎」とは、節間が伸長し葉や側枝が茎上に散生してついた主茎、枝、又はシュートをいう。「長茎植物」とは、長茎を形成する植物をいう。従って、ニンジン、ダイコン、ホウレンソウ、イチゴ、パセリなどのロゼット植物のように短縮茎を形成し長径が形成されない植物は除かれる。具体的には、「長茎植物」として、ナス、トマト、キュリ、ピーマン、メロン、ニガウリ等が挙げられる。
【0019】
「株元」とは、植物株の地際(栽培床に接している間際)の部分、すなわち植物株の根元部分をいう。局所的に直接加温する位置は、主茎の第1側枝節又は第10節までの主幹部分の全部分又は一部分とされる。具体的には、ナスやトマトなどの野菜の植物株の場合、地際から30cm程度までの部分又は本葉第3節以下の部分を局所加熱すればよい。
【0020】
「ヒータ」としては、電熱線、面ヒータ、温水管などを使用することができる。
【0021】
「直接加温」とは、主として対流による熱移動を利用した加温ではなく、主として熱伝導や輻射による熱移動を利用した加温をいう。従って、直接加温をするには、ヒータを主茎に接触させるか、若しくは、極めて近傍に置く必要がある。このように、直接加温を行うことで、対流による熱の無駄な分散を最小限に抑え、極めて効率よく加温を行うことができる。
【0022】
本発明に係る植物栽培装置は、節間が伸長し葉や側枝が茎上に散生してついた主茎、枝、又はシュート(以下「長茎」という。)をつくる植物(以下「長茎植物」という。)を栽培するための植物栽培装置であって、長茎植物の株元の地際から主茎の第1側枝節又は第10節までの主幹部分(以下「株元部分」という。)の全部分又は一部分を局所的に加温するヒータと、前記ヒータの温度を設定する温度設定手段と、前記ヒータの温度を前記温度設定手段により設定された温度に制御する温度制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0023】
この構成により、寒冷期において、ヒータにより植物株の株元部分を栽培適温に直接加温することにより、少ない消費エネルギーで植物株を強勢とし、植物株の生長を促進させることができる。
【0024】
また、本発明に係る植物栽培装置において、前記ヒータは、電熱ヒータとすることができる。
【0025】
電熱ヒータを使用すると、温度制御が容易であり、設置も簡単である。また、エネルギー源として商用電源を使用することが可能であり、利便性に優れている。
【0026】
ここで、「電熱ヒータ」としては、電熱線、可撓性を有する面ヒータなどを使用することができる。
【0027】
また、本発明に係る植物栽培装置において、前記ヒータが1乃至複数個接続された複数の電力供給系統を備え、前記温度制御手段は、一定の時間間隔で、前記各電力供給系統に順次電力供給を行い、前記ヒータの温度制御を行うようにすることができる。
【0028】
このように、複数の電力供給系統を1台の温度制御手段で制御することで、設備コストを抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明によれば、植物株の株元部分のみを局所的にその植物の生長適温に直接加温することにより、植物の生長を促すことができるとともに、熱発散による熱効率の低下を抑え、加温栽培におけるエネルギー効率を従来よりも格段に改善させることができる。
【0030】
また、ヒータを植物株全体に設置するのではなく、植物株の株元部分にのみ設置する構成としたことで、設置が容易であり、農作業効率の改善及び労力の低減を図ることができる。また、小型のヒータでよいために、設備コストも低廉となる。
【0031】
その結果、省エネルギー・低コストで長茎植物の栽培を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0033】
図1は、本発明の実施例1に係る植物栽培装置の全体構成を表す図である。図1において、栽培床2には複数列に畝2aが形成されている。各畝2aには、長茎植物の植物株3が定植されている。
【0034】
植物栽培装置1は、複数の送電線4,ヒータ線5,温度センサ6、及び1つの制御盤7から構成されている。
【0035】
送電線4は、それぞれ畝2aに対応して、畝2aに平行に敷設されている。送電線4は、2本の導線の対からなる。ヒータ線5は、各植物株3に対して設けられ、各植物株3の主茎3aの株元部分に捲回されている。各ヒータ線5は、送電線4に接続されており、送電線4からの電力供給を受けて発熱する。
【0036】
温度センサ6は、適度の間隔で選択された植物株3の株元に設けられている。この温度センサ6は、ヒータ線5により加温された植物株3の株元の温度を検出する。
【0037】
各送電線4及び温度センサ6は、制御盤7に接続されている。制御盤7は、温度センサ6により検出された植物株3の株元の温度に基づいて、株元の温度が設定された温度となるように各送電線4の給電制御を行う。
【0038】
図2は、植物株3にヒータ線5を設置した状態を表す図である。図2に示すように、ヒータ線5は、植物株3の株元に捲回して設置される。ヒータ線5を捲回する位置は、ナスの場合、主茎3aの地際3bから約30〜35cm程度上までの範囲、トマトの場合、主茎3aの地際3bから約60〜65cm程度上までの範囲とすることが好ましい。植物株3に温度刺激を与えるための十分な加温範囲を確保するとともに、できる限り熱放散を少なくしてエネルギー効率を向上させるためである。
【0039】
尚、ヒータ線5を捲回する範囲は、植物株3の大きさによって適宜な範囲とされるが、一般的には、主茎3aから第1分枝3cが分岐する第1分枝節3dよりも下側の部分、又は主茎3aの地際3bから第10節までの範囲とすることが好ましい。ナスでは一般に主枝の第9節上に第1果房が着生し、第1分枝3cは主茎3aの第8節を伸長させる。ナスは1株から4本の枝を伸長させるため、効率的に熱を加えるためには第1分枝節3dよりも下側の部分の加温が良い。また、トマトは主枝の第11節上に第1果房が着生するため、加温効果を第1果実に効かせるためには地際3bから第10節までの範囲を加温することがよいと考えられる。
【0040】
図3は、図1の制御盤7の回路構成を表す図である。制御盤7には、ヒータ線5に給電を行うための送電線4が接続されている。
【0041】
以下では、送電線4とそれに接続された複数のヒータ線5とをまとめて「加温ユニット」と呼ぶ。また、植物栽培装置1は、複数の加温ユニットを備えているが、これらの加温ユニットの集合を、いくつかの部分集合に分割する。分割された各部分ユニットの集合を「加温系統」と呼ぶ。図3の制御盤7には、3つの加温系統S1,S2,S3が接続されている。
【0042】
制御盤7は、系統切替スイッチ11、主電源スイッチ12、切替制御部13、通電制御部14、及びタイマ15を備えている。
【0043】
商用電源16から、主電源スイッチ12、系統切替スイッチ11、及び加温系統Si(i=1,2,3),S2,S3を介して商用電源16へ至る電力供給回路が構成されている。それぞれの系統切替スイッチ11及び加温系統Siの組は、並列に接続されている。
【0044】
系統切替スイッチ11は、各加温系統S1,S2,S3に一対一に対応して1つずつ備えられている。これは、各加温系統S1,S2,S3への給電切り替えを行うスイッチである。主電源スイッチ12は、各加温系統S1,S2,S3の電源のオン/オフを行うスイッチである。
【0045】
切替制御部13は、各系統切替スイッチ11の切り替え制御を行う。通電制御部14は、主電源スイッチ12のオン/オフ制御を行う。タイマ15は、系統切替スイッチ11が切り替えを行う時間間隔の計測を行う。
【0046】
以上のような構成の本実施例に係る植物栽培装置1において、加温栽培を行う場合、まず、切替制御部13は、タイマ15により計測される時間を参照して、設定された一定の時間ごとに系統切替スイッチ11をサイクリックに切り替えて、加温系統S1,S2,S3に順々に1系統ずつ通電可能な状態とする。
【0047】
このように、系統を順次切り替えて1つの制御盤7で3系統の時分割温度制御を行えば、設備コストを下げるとともに、電力消費量も低減させることができる。
【0048】
一方、通電制御部14は、通電可能な状態とされた加温系統Si(i=1,2,3)に設置された温度センサ6が検出する温度Tを参照し、温度Tが設定温度T1以下となった場合に主電源スイッチ12をオン状態として、加温系統Siの送電線4及びヒータ線5に通電を行う。一方、温度Tが設定温度T2(>T1)以上となった場合に主電源スイッチ12をオフ状態として、加温系統Siの送電線4及びヒータ線5への通電を遮断する。ここで、設定温度T1,T2は、T1=T0−ΔT,T2=T0+ΔT(T0は目標温度、ΔTは温度余裕幅)とされる。T0は植物株3の栽培適温に設定する。このような、オンオフ制御によって、各植物株3の株元部分は、ほぼ一定の温度に加温される。
【0049】
次に、上記植物栽培装置1を使用した植物栽培の実験例について説明する。
【0050】
〔栽培試験例1〕
長茎植物としてナスを使用し、ナスの局所加温効果を調査する栽培試験を行った。栽培試験を行った場所は福岡県の筑紫平野にある試験圃場である。試供品種としては、「筑陽」を用いた。また、以下の試験区を構成してナスを栽培し、比較試験を行った。
【0051】
(1)ナス株の地面から20cmまでの主茎3aに電熱線を巻き付けた試験区(以下「株元加温区」という。)
(2)ナスの茎すべてに電熱線を巻き付けた試験区(以下「全体加温区」という。)
(3)加温を行わない試験区(以下「無加温区」という。)
【0052】
試験区規模は、1区あたり4m2,3反復とした。土壌条件は、中粗粒灰色低地土の作土を客土とした中粗粒黄色土造成相SLとした。
【0053】
耕種概要は(表1)の通りである。
【0054】
【表1】
【0055】
上記植物栽培装置1による加温処理については、12月31日から加温を開始し、電熱線による加温部を25℃に制御した。加温処理は4月9日まで行った。
【0056】
以上の試験条件によりナス栽培を行い、1〜6月までの果実の収量比較を行った。尚、収穫された果実は、上物,中物,及び下物に選別し、それぞれの等級の収量を調査した。「上物」は、品質が優れた(勿論販売は可能な品質の)果実をいう。「中物」は、少し品質の悪い部分もあるが十分に販売は可能な果実をいう。「下物」は、品質が悪く販売できない果実をいう。
【0057】
(表2)に、促成ナス栽培における株元加温の有無と収量及び品質との関係を示す。(表3)に、促成ナス栽培における株元加温の有無と不良果発生割合との関係を示す。
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
(表2)において、「商品果収量」とは、商品規格(出荷規格)を満たす果実をいい、ここでは、(商品果収量)=(上物数量)+(中物数量)で定義した。
【0061】
また、「上中物比率」とは、総収量に占める上物及び中物の比率をいい、(上中物比率)=(上物収量+中物収量)/総収量×100〔%〕で定義される。
【0062】
(表3)において、「曲がり」は果実が大きく曲がったもの(低温、多肥、多潅水などで花芽の細胞分裂が不均一だったことに起因)、「ぶく」は果実の中に空洞部分が発生したもの(水不足や高温管理により果皮に比べて果肉部分の生長が劣ったことに起因)、「細首」は果実のへた付近が極端に細いもの(低温、水不足、着果数が多すぎる場合に花、果実への養分供給が不足することに起因)、「つやなし」は果実の表面が光沢ないもの(成り疲れや過湿、過乾燥により果実への水分供給不足に起因)、「不整形」は果実の形状が奇形なもの(低温、多肥、多潅水などによる花芽の細胞分裂の異常に起因)を意味する。
【0063】
上記試験結果によれば、1〜6月の収穫果収量は、株元加温区が15.60t/10a、全体加温区が14.12t/10a、無加温区が12.88t/10aである。無加温区に比べ、株元加温区では22%、全体加温区では10%の増収が見られた。
【0064】
また、株元加温区と全体加温区の上中物比率は、88.3%と87.3%であり、無加温区に比べて優れた。
【0065】
従って、寒冷期に株元加温を行うことにより、草勢が活性化され、果実の収量が上がることが分かる。さらに、株元加温区と全体加温区とを比較すると、1〜6月の商品果収量は、株元加温区のほうが全体加温区よりも若干大きい。これは、寒冷期の収量向上効果に加えて、寒冷期に高い草勢が維持されたために多くの収量が得られる春先の温度上昇期に早くから多量の収量がえられたことによるものと思われる。このことから、株元の局部加温を行うことによって、株全体を加温するよりもさらに商品化の収量を上げることが可能となる。
【0066】
一方、不良果発生割合に着目すると、(表3)より、加温区が無加温区に比べてぶく果及び細首果の発生が少ないが、つやなし果の発生割合は高い。これは、株元加温によって根量が増加(後述、図6)したために果実の肥大能力が向上したため、果実肥大が不十分な条件で発生するぶく果及び細首果が減少した。しかし、高い草勢により春先に着果数がやや増加しすぎたため、果実への水分供給不足に起因するつやなし果の発生割合が高くなったものと思われる。しかし、全体的にみて、加温区が無加温区に比べて不良果の発生が多いとはいえず、直接加温が株に及ぼす悪影響は殆どないと考えられる。
【0067】
図4は、株元加温が単位面積当たりの収穫果数に及ぼす影響について調査した結果を表すグラフである。図5は、株元加温が果実の肥大日数に及ぼす影響について調査した結果を表すグラフである。「肥大日数」とは、開花日から収穫日(果実長が約18cmに達した日)までの日数をいう。
【0068】
図4より、単位面積当たりの収穫果数は、1〜4月までは株元加温区が無加温区に比べて約2果多く、5〜6月には、株元加温区が無加温区に比べて5果以上多い結果となった。この結果から、株元を局所的に加温することにより、草勢が活性化され、着果数量が増加することが分かる。さらに、図5に示したように、開花から収穫までに要した肥大日数において、1〜3月に、株元加温区が無加温区に比べて約2〜4日短くなる傾向が見られた。これは、株元加温によって地上部とともに地下部も活性化され、光合成能力や養水分の吸収力が向上して果実肥大能力が高くなったためと推察される。
【0069】
尚、加温を停止した5〜6月にも、株元加温区と無加温区との間に着果数量の有意な差が見られる。これは、着果数量は草勢によって左右されるが、芽条(シュート)が成長してから花芽が発生し着果し果実が収穫されまでにはタイム・ラグがあることに加えて、寒冷期に高い草勢が維持されたために、春先の温度上昇期を極めて良好な草勢の状態で迎え、5〜6月に収穫果数が顕著に増加したことによる。すなわち、寒冷期に株元加温によって強勢となった株は、温暖期に入ってからの花芽の発生量が多く、且つ開花から収穫までの日数が20日を切るくらいに生育スピードが極めて早くなるため、これが5〜6月の収穫果数となって現れていると推察される。
【0070】
各区における株の草勢を調査するため、各区の株について根重の測定を行った。図6は、株元加温が根重に及ぼす影響について調査した結果を表すグラフである。
【0071】
図6では、上記条件により栽培したナスについて、6月の収穫後、7月4日に9株を無作為にサンプル株として抽出し、それらの根重の平均値を求めたものである。根重は乾燥重である。
【0072】
収穫直後の根重は、株元加温区が最も重く、無加温区が最も軽かった。このことから、株元加温区が最も強勢で、無加温区が最も弱勢であることがわかる。
【実施例2】
【0073】
図7は、本発明の実施例2に係る植物栽培装置の全体構成を表す図である。実施例2において、実施例1と同様の構成部分には、同符号を付して説明は省略する。
【0074】
実施例2においては、実施例1のヒータ線5の代わりに、面ヒータ8を用いたことを特徴とする。図7において、面ヒータ8は、枝線9により送電線4に接続されている。面ヒータ8は、送電線4から供給される電気により発熱する。面ヒータ8としては、通常のアルミ箔ヒータ、カーボン面ヒータ等の通常の面ヒータを使用することができる。また、面状PTC(正温度係数:Positive Temperature Coefficient)ヒータのような自己温度制御特性を持つ面ヒータを使用してもよい。
【0075】
図8は、植物株3に面ヒータ8を設置した状態を表す図であり、図9は面ヒータ8の斜視図である。面ヒータ8は、広げた状態で長方形状の可撓性を有する発熱シート10を備えており、発熱シート10の中央部に給電のための枝線9が接続されている。この発熱シート10を、図8のように植物株3の主茎3aの株元部分に捲き付けて、発熱シート10の端をクリップ8aにより留める。
【0076】
このように、ヒータとして面ヒータ8を使用することにより、植物株3へのヒータの取り付けが容易となり、農作業の効率向上及び労力の低減を図ることが可能となる。
【実施例3】
【0077】
図10,図11は、本発明の実施例2に係る植物栽培装置の構成を表す図である。図10において、畝20には、ナス等の長径植物の植物株3が1列に並べて定植されている。植物株3の主茎3aの地際3b部分に沿って、畝20と平行にヒータ21が敷設されている。ヒータ21は、電熱線であってもよいし、温水を通す温水管であってもよい。
【0078】
また、主茎3aの地際3b部分から約10〜20cm程度上までの部分を被覆して、ドーム状の被覆材22が設置されている。被覆材22はビニルのトンネル等の通気性のない部材が用いられる。被覆材22の主茎3aが通る部分には開口が設けられ、その開口を主茎3aが通されているが、開口の大きさは主茎3aの径とほぼ等しく、空気ができるだけ開口から漏れないようにされている。
【0079】
このように、被覆材22で植物株3の主茎3aの下部を被覆して、被覆材22の内側をヒータ21で加温することにより、主茎3aの株元部分を局所的に加温することもできる。この構成では、電熱線による直接加温の場合に比べて放熱面積が増えるものの、ハウス栽培に比べると放熱ロスが小さく、少ないエネルギー消費で加温栽培を行うことができる。また、設置が簡単であり、通常農作業で使用するビニルシートや針金、温水パイプを使用して構成することができるため、一般農家においても容易に導入することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施例1に係る植物栽培装置の全体構成を表す図である。
【図2】植物株3にヒータ線を設置した状態を表す図である。
【図3】図1の制御盤7の回路構成を表す図である。
【図4】株元加温が単位面積当たりの収穫果数に及ぼす影響について調査した結果を表すグラフである。
【図5】株元加温が果実の肥大日数に及ぼす影響について調査した結果を表すグラフである。
【図6】株元加温が根重に及ぼす影響について調査した結果を表すグラフである。
【図7】本発明の実施例2に係る植物栽培装置の全体構成を表す図である。
【図8】植物株3にヒータ線を設置した状態を表す図である。
【図9】面ヒータ8の斜視図である。
【図10】本発明の実施例2に係る植物栽培装置の構成を表す図である。
【図11】本発明の実施例2に係る植物栽培装置の構成を表す図である。
【符号の説明】
【0081】
1 植物栽培装置
2 栽培床
2a 畝
3 植物株
3a 主茎
3b 地際
3c 第1分枝
3d 第1分枝節
4 送電線
5 ヒータ線
6 温度センサ
7 制御盤
8 面ヒータ
8a クリップ
9 枝線
10 発熱シート
11 系統切替スイッチ
12 主電源スイッチ
13 切替制御部
14 通電制御部
15 タイマ
16 商用電源
20 畝
21 ヒータ
22 被覆材
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の加温栽培技術に関し、特に、トマト,ナス,キュウリ等の長茎植物の栽培を可能とする加温栽培技術に関する。
【背景技術】
【0002】
植物栽培において、植物の生育調整のための温度管理は極めて重要である。温度管理の方法として、通常、ハウス,トンネル,マルチング等による保温が行われるが、保温だけでは温度が不足する場合には、温湯や温風等により加温することが行われる。
【0003】
植物の加温には、地上部の加温と地下部(根圏)の加温とがあり、実際の植物栽培には両者が併用して使用される場合もある。地上部を加温する加温方法としては、ハウスやトンネルの内部の空間全体を温風や温湯で加温する空間加温の方法が広く用いられている。また、地下部の加温方法としては、栽培床の内部に温湯パイプを通して温湯を循環させることによって根圏を含む土壌全体を加温する方法が広く使用されている。
【0004】
また、特許文献1には樹木を原産地よりも高緯度地域で栽培するための加温栽培方法として、樹木の地上部は樹幹に面ヒータを巻き付けて加温し、樹木の根圏直下の地中にもヒータを埋設して土壌全体を加温する方法が記載されている。
【0005】
上記各方法は植物体を全体的に加温する栽培方法であるが、一方で、植物体の一部を局所的に加温する栽培方法が知られている。特許文献2に記載の栽培方法は、イチゴなどの短縮茎(クラウン)を形成する種類の植物(以下「短縮茎形成植物」という。)を栽培するための加温栽培方法である。この方法によれば、葉芽や花芽が発生する短縮茎にヒータ線を接触させて局所的に直接加温を行う。これにより、寒冷期においても短縮茎形成植物の休眠打破がされ、葉芽・花芽ともに強勢に生育することが報告されている。
【0006】
また、植物体全体の栽培方法ではないが、特許文献3には、ハウスミカンの栽培において着果予測を行う方法として、ミカンの結果母枝の一部をヒータで加温して、加温部のみを早期に着花させる方法が記載されている。
【0007】
また、非特許文献1〜3には、トマトの花房から約10cmの位置にヒヨコ電球を設置し局所加温を行うことにより、トマトの着果率を向上させる方法が記載されている。
【特許文献1】特開平9−66号公報
【特許文献2】特開2005−237271号公報
【特許文献3】特開平1−231824号公報
【非特許文献1】森山友幸,伏原肇,「花房への局部加温がトマトの花粉発芽に及ぼす影響」,園芸学会雑誌,園芸学会,1997年,66巻,別冊1,pp.382−383
【非特許文献2】森山友幸,姫野修一,井手治,「トマト花房への局部加温が着果率に及ぼす影響」,園芸学会雑誌,園芸学会,1999年,68巻,別冊2,pp.331
【非特許文献3】森山友幸,姫野修一,井手治,「トマトの花房への局所加温による着果率向上」,[online],平成10年度,福岡県農業総合試験場,[平成17年12月8日検索],インターネット、<http://www.pref.fukuoka.lg.jp/nosei/organ/farc/seika/seika05/10seino13.htm>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の植物体を全体的に加温する栽培方法は、植物体の地上部を囲む空間全体又は植物体の根圏を含む土壌全体を加温するため、熱効率が悪く、植物栽培におけるエネルギー効率が悪いという問題がある。また、熱効率の悪さ故に加温に要するコストが高く、経済性も悪い。
【0009】
一方、特許文献2に記載の局所加温による栽培方法においては、加温時の熱効率が高く、省エネルギー・低コストで植物の栽培を行うことができる。この栽培方法は、短縮茎形成植物のような花芽や葉芽が限られた箇所から発生する植物の栽培を行う方法である。かかる短縮茎形成植物においては、頂端分裂組織の分布は、植物体のごく限られた箇所に特定されている。そのため、その箇所を局所的に加温することで、高い熱効率で生産性のよい加温栽培を可能とした点がこの栽培法の最大のポイントである。
【0010】
しかしながら、長茎植物のように、節間が伸長し葉や側枝が茎上に散生してついた主茎、枝、又はシュート(以下「長茎」という。)をつくる植物(以下「長茎植物」という。)においては、葉芽や花芽などの頂端分裂組織は、各節(側枝や葉鞘の付け根部分)及び茎頂や枝条の頂部にあり、1カ所には集中していない。従って、上記特許文献2の栽培方法は、長茎植物に対しては適用することができない。
【0011】
一方、特許文献3及び非特許文献1〜3の方法では、長茎植物の花芽の発生する部分や着果箇所をヒータやヒヨコ電球により局所的に加温するものである。この方法を採れば、原理的には省エネルギーで長茎植物の加温栽培を行うことが可能であると考えられる。
【0012】
しかしながら、長茎植物においては、葉芽や花芽の発生する箇所(以下「葉節」という。)は、植物体の各所に分散しており、また、植物体の伸長成長とともに葉節の着生位置も変化し、新たな葉節も次々に発生する。従って、一般の農業経営において、これらの次々に変化する葉節の発生箇所を局所的に加温するヒータやヒヨコ電球などの加温装置を設置するのは、大変な労力を要する。また、各葉節の発生箇所に対して加温装置を設置するには、1株の植物体に対して多数の加温装置が必要となり、設備が大がかりとなり現実的ではない。
【0013】
そこで、本発明の目的は、省エネルギー・低コストで長茎植物の栽培を行うことができる栽培技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明者は、まず、長径植物の加温栽培において、加温により植物株の生長が特に促進される部分について調査すべく鋭意栽培試験を行った。上述のように、特許文献2に開示された試験結果を参照すれば、長径植物においても、頂端分裂組織付近を加温することにより生長が促進されるであろうことは想像される。
【0015】
しかしながら、試験の結果、意外にも、加温栽培において長径植物の生長を特に促進させる加温部位、すなわち「加温のツボ」部分は、頂端分裂組織付近ではなく植物株の株元付近であることを見出した。その結果、本発明をするに至ったものである。
【0016】
すなわち、本発明に係る長茎植物の栽培方法は、節間が伸長し葉や側枝が茎上に散生してついた主茎、枝、又はシュート(以下「長茎」という。)をつくる植物(以下「長茎植物」という。)の栽培方法であって、長茎植物の株元の地際から主茎の第1側枝節又は第10節までの主幹部分(以下「株元部分」という。)の全部分又は一部分をヒータにより局所的に直接加温することにより、当該株元部分の加温制御を行うことを特徴とする。
【0017】
このように、特に、寒冷期において、植物株の株元部分のみを局所的にその植物の生長適温に直接加温することにより、植物株全体を加温しなくても、植物の草勢が活性化され、結果数が増加する。また、植物株全体を加温しないため、無駄な熱の放散による熱損失が極めて少なく、加温処理におけるエネルギー効率を飛躍的に改善することができる。さらに、株元のみにヒータを設置すればよいため、加温処理設備が簡易であり、低コストの設備で植物栽培を行うことができる。
【0018】
ここで、「長茎」とは、節間が伸長し葉や側枝が茎上に散生してついた主茎、枝、又はシュートをいう。「長茎植物」とは、長茎を形成する植物をいう。従って、ニンジン、ダイコン、ホウレンソウ、イチゴ、パセリなどのロゼット植物のように短縮茎を形成し長径が形成されない植物は除かれる。具体的には、「長茎植物」として、ナス、トマト、キュリ、ピーマン、メロン、ニガウリ等が挙げられる。
【0019】
「株元」とは、植物株の地際(栽培床に接している間際)の部分、すなわち植物株の根元部分をいう。局所的に直接加温する位置は、主茎の第1側枝節又は第10節までの主幹部分の全部分又は一部分とされる。具体的には、ナスやトマトなどの野菜の植物株の場合、地際から30cm程度までの部分又は本葉第3節以下の部分を局所加熱すればよい。
【0020】
「ヒータ」としては、電熱線、面ヒータ、温水管などを使用することができる。
【0021】
「直接加温」とは、主として対流による熱移動を利用した加温ではなく、主として熱伝導や輻射による熱移動を利用した加温をいう。従って、直接加温をするには、ヒータを主茎に接触させるか、若しくは、極めて近傍に置く必要がある。このように、直接加温を行うことで、対流による熱の無駄な分散を最小限に抑え、極めて効率よく加温を行うことができる。
【0022】
本発明に係る植物栽培装置は、節間が伸長し葉や側枝が茎上に散生してついた主茎、枝、又はシュート(以下「長茎」という。)をつくる植物(以下「長茎植物」という。)を栽培するための植物栽培装置であって、長茎植物の株元の地際から主茎の第1側枝節又は第10節までの主幹部分(以下「株元部分」という。)の全部分又は一部分を局所的に加温するヒータと、前記ヒータの温度を設定する温度設定手段と、前記ヒータの温度を前記温度設定手段により設定された温度に制御する温度制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0023】
この構成により、寒冷期において、ヒータにより植物株の株元部分を栽培適温に直接加温することにより、少ない消費エネルギーで植物株を強勢とし、植物株の生長を促進させることができる。
【0024】
また、本発明に係る植物栽培装置において、前記ヒータは、電熱ヒータとすることができる。
【0025】
電熱ヒータを使用すると、温度制御が容易であり、設置も簡単である。また、エネルギー源として商用電源を使用することが可能であり、利便性に優れている。
【0026】
ここで、「電熱ヒータ」としては、電熱線、可撓性を有する面ヒータなどを使用することができる。
【0027】
また、本発明に係る植物栽培装置において、前記ヒータが1乃至複数個接続された複数の電力供給系統を備え、前記温度制御手段は、一定の時間間隔で、前記各電力供給系統に順次電力供給を行い、前記ヒータの温度制御を行うようにすることができる。
【0028】
このように、複数の電力供給系統を1台の温度制御手段で制御することで、設備コストを抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明によれば、植物株の株元部分のみを局所的にその植物の生長適温に直接加温することにより、植物の生長を促すことができるとともに、熱発散による熱効率の低下を抑え、加温栽培におけるエネルギー効率を従来よりも格段に改善させることができる。
【0030】
また、ヒータを植物株全体に設置するのではなく、植物株の株元部分にのみ設置する構成としたことで、設置が容易であり、農作業効率の改善及び労力の低減を図ることができる。また、小型のヒータでよいために、設備コストも低廉となる。
【0031】
その結果、省エネルギー・低コストで長茎植物の栽培を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0033】
図1は、本発明の実施例1に係る植物栽培装置の全体構成を表す図である。図1において、栽培床2には複数列に畝2aが形成されている。各畝2aには、長茎植物の植物株3が定植されている。
【0034】
植物栽培装置1は、複数の送電線4,ヒータ線5,温度センサ6、及び1つの制御盤7から構成されている。
【0035】
送電線4は、それぞれ畝2aに対応して、畝2aに平行に敷設されている。送電線4は、2本の導線の対からなる。ヒータ線5は、各植物株3に対して設けられ、各植物株3の主茎3aの株元部分に捲回されている。各ヒータ線5は、送電線4に接続されており、送電線4からの電力供給を受けて発熱する。
【0036】
温度センサ6は、適度の間隔で選択された植物株3の株元に設けられている。この温度センサ6は、ヒータ線5により加温された植物株3の株元の温度を検出する。
【0037】
各送電線4及び温度センサ6は、制御盤7に接続されている。制御盤7は、温度センサ6により検出された植物株3の株元の温度に基づいて、株元の温度が設定された温度となるように各送電線4の給電制御を行う。
【0038】
図2は、植物株3にヒータ線5を設置した状態を表す図である。図2に示すように、ヒータ線5は、植物株3の株元に捲回して設置される。ヒータ線5を捲回する位置は、ナスの場合、主茎3aの地際3bから約30〜35cm程度上までの範囲、トマトの場合、主茎3aの地際3bから約60〜65cm程度上までの範囲とすることが好ましい。植物株3に温度刺激を与えるための十分な加温範囲を確保するとともに、できる限り熱放散を少なくしてエネルギー効率を向上させるためである。
【0039】
尚、ヒータ線5を捲回する範囲は、植物株3の大きさによって適宜な範囲とされるが、一般的には、主茎3aから第1分枝3cが分岐する第1分枝節3dよりも下側の部分、又は主茎3aの地際3bから第10節までの範囲とすることが好ましい。ナスでは一般に主枝の第9節上に第1果房が着生し、第1分枝3cは主茎3aの第8節を伸長させる。ナスは1株から4本の枝を伸長させるため、効率的に熱を加えるためには第1分枝節3dよりも下側の部分の加温が良い。また、トマトは主枝の第11節上に第1果房が着生するため、加温効果を第1果実に効かせるためには地際3bから第10節までの範囲を加温することがよいと考えられる。
【0040】
図3は、図1の制御盤7の回路構成を表す図である。制御盤7には、ヒータ線5に給電を行うための送電線4が接続されている。
【0041】
以下では、送電線4とそれに接続された複数のヒータ線5とをまとめて「加温ユニット」と呼ぶ。また、植物栽培装置1は、複数の加温ユニットを備えているが、これらの加温ユニットの集合を、いくつかの部分集合に分割する。分割された各部分ユニットの集合を「加温系統」と呼ぶ。図3の制御盤7には、3つの加温系統S1,S2,S3が接続されている。
【0042】
制御盤7は、系統切替スイッチ11、主電源スイッチ12、切替制御部13、通電制御部14、及びタイマ15を備えている。
【0043】
商用電源16から、主電源スイッチ12、系統切替スイッチ11、及び加温系統Si(i=1,2,3),S2,S3を介して商用電源16へ至る電力供給回路が構成されている。それぞれの系統切替スイッチ11及び加温系統Siの組は、並列に接続されている。
【0044】
系統切替スイッチ11は、各加温系統S1,S2,S3に一対一に対応して1つずつ備えられている。これは、各加温系統S1,S2,S3への給電切り替えを行うスイッチである。主電源スイッチ12は、各加温系統S1,S2,S3の電源のオン/オフを行うスイッチである。
【0045】
切替制御部13は、各系統切替スイッチ11の切り替え制御を行う。通電制御部14は、主電源スイッチ12のオン/オフ制御を行う。タイマ15は、系統切替スイッチ11が切り替えを行う時間間隔の計測を行う。
【0046】
以上のような構成の本実施例に係る植物栽培装置1において、加温栽培を行う場合、まず、切替制御部13は、タイマ15により計測される時間を参照して、設定された一定の時間ごとに系統切替スイッチ11をサイクリックに切り替えて、加温系統S1,S2,S3に順々に1系統ずつ通電可能な状態とする。
【0047】
このように、系統を順次切り替えて1つの制御盤7で3系統の時分割温度制御を行えば、設備コストを下げるとともに、電力消費量も低減させることができる。
【0048】
一方、通電制御部14は、通電可能な状態とされた加温系統Si(i=1,2,3)に設置された温度センサ6が検出する温度Tを参照し、温度Tが設定温度T1以下となった場合に主電源スイッチ12をオン状態として、加温系統Siの送電線4及びヒータ線5に通電を行う。一方、温度Tが設定温度T2(>T1)以上となった場合に主電源スイッチ12をオフ状態として、加温系統Siの送電線4及びヒータ線5への通電を遮断する。ここで、設定温度T1,T2は、T1=T0−ΔT,T2=T0+ΔT(T0は目標温度、ΔTは温度余裕幅)とされる。T0は植物株3の栽培適温に設定する。このような、オンオフ制御によって、各植物株3の株元部分は、ほぼ一定の温度に加温される。
【0049】
次に、上記植物栽培装置1を使用した植物栽培の実験例について説明する。
【0050】
〔栽培試験例1〕
長茎植物としてナスを使用し、ナスの局所加温効果を調査する栽培試験を行った。栽培試験を行った場所は福岡県の筑紫平野にある試験圃場である。試供品種としては、「筑陽」を用いた。また、以下の試験区を構成してナスを栽培し、比較試験を行った。
【0051】
(1)ナス株の地面から20cmまでの主茎3aに電熱線を巻き付けた試験区(以下「株元加温区」という。)
(2)ナスの茎すべてに電熱線を巻き付けた試験区(以下「全体加温区」という。)
(3)加温を行わない試験区(以下「無加温区」という。)
【0052】
試験区規模は、1区あたり4m2,3反復とした。土壌条件は、中粗粒灰色低地土の作土を客土とした中粗粒黄色土造成相SLとした。
【0053】
耕種概要は(表1)の通りである。
【0054】
【表1】
【0055】
上記植物栽培装置1による加温処理については、12月31日から加温を開始し、電熱線による加温部を25℃に制御した。加温処理は4月9日まで行った。
【0056】
以上の試験条件によりナス栽培を行い、1〜6月までの果実の収量比較を行った。尚、収穫された果実は、上物,中物,及び下物に選別し、それぞれの等級の収量を調査した。「上物」は、品質が優れた(勿論販売は可能な品質の)果実をいう。「中物」は、少し品質の悪い部分もあるが十分に販売は可能な果実をいう。「下物」は、品質が悪く販売できない果実をいう。
【0057】
(表2)に、促成ナス栽培における株元加温の有無と収量及び品質との関係を示す。(表3)に、促成ナス栽培における株元加温の有無と不良果発生割合との関係を示す。
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
(表2)において、「商品果収量」とは、商品規格(出荷規格)を満たす果実をいい、ここでは、(商品果収量)=(上物数量)+(中物数量)で定義した。
【0061】
また、「上中物比率」とは、総収量に占める上物及び中物の比率をいい、(上中物比率)=(上物収量+中物収量)/総収量×100〔%〕で定義される。
【0062】
(表3)において、「曲がり」は果実が大きく曲がったもの(低温、多肥、多潅水などで花芽の細胞分裂が不均一だったことに起因)、「ぶく」は果実の中に空洞部分が発生したもの(水不足や高温管理により果皮に比べて果肉部分の生長が劣ったことに起因)、「細首」は果実のへた付近が極端に細いもの(低温、水不足、着果数が多すぎる場合に花、果実への養分供給が不足することに起因)、「つやなし」は果実の表面が光沢ないもの(成り疲れや過湿、過乾燥により果実への水分供給不足に起因)、「不整形」は果実の形状が奇形なもの(低温、多肥、多潅水などによる花芽の細胞分裂の異常に起因)を意味する。
【0063】
上記試験結果によれば、1〜6月の収穫果収量は、株元加温区が15.60t/10a、全体加温区が14.12t/10a、無加温区が12.88t/10aである。無加温区に比べ、株元加温区では22%、全体加温区では10%の増収が見られた。
【0064】
また、株元加温区と全体加温区の上中物比率は、88.3%と87.3%であり、無加温区に比べて優れた。
【0065】
従って、寒冷期に株元加温を行うことにより、草勢が活性化され、果実の収量が上がることが分かる。さらに、株元加温区と全体加温区とを比較すると、1〜6月の商品果収量は、株元加温区のほうが全体加温区よりも若干大きい。これは、寒冷期の収量向上効果に加えて、寒冷期に高い草勢が維持されたために多くの収量が得られる春先の温度上昇期に早くから多量の収量がえられたことによるものと思われる。このことから、株元の局部加温を行うことによって、株全体を加温するよりもさらに商品化の収量を上げることが可能となる。
【0066】
一方、不良果発生割合に着目すると、(表3)より、加温区が無加温区に比べてぶく果及び細首果の発生が少ないが、つやなし果の発生割合は高い。これは、株元加温によって根量が増加(後述、図6)したために果実の肥大能力が向上したため、果実肥大が不十分な条件で発生するぶく果及び細首果が減少した。しかし、高い草勢により春先に着果数がやや増加しすぎたため、果実への水分供給不足に起因するつやなし果の発生割合が高くなったものと思われる。しかし、全体的にみて、加温区が無加温区に比べて不良果の発生が多いとはいえず、直接加温が株に及ぼす悪影響は殆どないと考えられる。
【0067】
図4は、株元加温が単位面積当たりの収穫果数に及ぼす影響について調査した結果を表すグラフである。図5は、株元加温が果実の肥大日数に及ぼす影響について調査した結果を表すグラフである。「肥大日数」とは、開花日から収穫日(果実長が約18cmに達した日)までの日数をいう。
【0068】
図4より、単位面積当たりの収穫果数は、1〜4月までは株元加温区が無加温区に比べて約2果多く、5〜6月には、株元加温区が無加温区に比べて5果以上多い結果となった。この結果から、株元を局所的に加温することにより、草勢が活性化され、着果数量が増加することが分かる。さらに、図5に示したように、開花から収穫までに要した肥大日数において、1〜3月に、株元加温区が無加温区に比べて約2〜4日短くなる傾向が見られた。これは、株元加温によって地上部とともに地下部も活性化され、光合成能力や養水分の吸収力が向上して果実肥大能力が高くなったためと推察される。
【0069】
尚、加温を停止した5〜6月にも、株元加温区と無加温区との間に着果数量の有意な差が見られる。これは、着果数量は草勢によって左右されるが、芽条(シュート)が成長してから花芽が発生し着果し果実が収穫されまでにはタイム・ラグがあることに加えて、寒冷期に高い草勢が維持されたために、春先の温度上昇期を極めて良好な草勢の状態で迎え、5〜6月に収穫果数が顕著に増加したことによる。すなわち、寒冷期に株元加温によって強勢となった株は、温暖期に入ってからの花芽の発生量が多く、且つ開花から収穫までの日数が20日を切るくらいに生育スピードが極めて早くなるため、これが5〜6月の収穫果数となって現れていると推察される。
【0070】
各区における株の草勢を調査するため、各区の株について根重の測定を行った。図6は、株元加温が根重に及ぼす影響について調査した結果を表すグラフである。
【0071】
図6では、上記条件により栽培したナスについて、6月の収穫後、7月4日に9株を無作為にサンプル株として抽出し、それらの根重の平均値を求めたものである。根重は乾燥重である。
【0072】
収穫直後の根重は、株元加温区が最も重く、無加温区が最も軽かった。このことから、株元加温区が最も強勢で、無加温区が最も弱勢であることがわかる。
【実施例2】
【0073】
図7は、本発明の実施例2に係る植物栽培装置の全体構成を表す図である。実施例2において、実施例1と同様の構成部分には、同符号を付して説明は省略する。
【0074】
実施例2においては、実施例1のヒータ線5の代わりに、面ヒータ8を用いたことを特徴とする。図7において、面ヒータ8は、枝線9により送電線4に接続されている。面ヒータ8は、送電線4から供給される電気により発熱する。面ヒータ8としては、通常のアルミ箔ヒータ、カーボン面ヒータ等の通常の面ヒータを使用することができる。また、面状PTC(正温度係数:Positive Temperature Coefficient)ヒータのような自己温度制御特性を持つ面ヒータを使用してもよい。
【0075】
図8は、植物株3に面ヒータ8を設置した状態を表す図であり、図9は面ヒータ8の斜視図である。面ヒータ8は、広げた状態で長方形状の可撓性を有する発熱シート10を備えており、発熱シート10の中央部に給電のための枝線9が接続されている。この発熱シート10を、図8のように植物株3の主茎3aの株元部分に捲き付けて、発熱シート10の端をクリップ8aにより留める。
【0076】
このように、ヒータとして面ヒータ8を使用することにより、植物株3へのヒータの取り付けが容易となり、農作業の効率向上及び労力の低減を図ることが可能となる。
【実施例3】
【0077】
図10,図11は、本発明の実施例2に係る植物栽培装置の構成を表す図である。図10において、畝20には、ナス等の長径植物の植物株3が1列に並べて定植されている。植物株3の主茎3aの地際3b部分に沿って、畝20と平行にヒータ21が敷設されている。ヒータ21は、電熱線であってもよいし、温水を通す温水管であってもよい。
【0078】
また、主茎3aの地際3b部分から約10〜20cm程度上までの部分を被覆して、ドーム状の被覆材22が設置されている。被覆材22はビニルのトンネル等の通気性のない部材が用いられる。被覆材22の主茎3aが通る部分には開口が設けられ、その開口を主茎3aが通されているが、開口の大きさは主茎3aの径とほぼ等しく、空気ができるだけ開口から漏れないようにされている。
【0079】
このように、被覆材22で植物株3の主茎3aの下部を被覆して、被覆材22の内側をヒータ21で加温することにより、主茎3aの株元部分を局所的に加温することもできる。この構成では、電熱線による直接加温の場合に比べて放熱面積が増えるものの、ハウス栽培に比べると放熱ロスが小さく、少ないエネルギー消費で加温栽培を行うことができる。また、設置が簡単であり、通常農作業で使用するビニルシートや針金、温水パイプを使用して構成することができるため、一般農家においても容易に導入することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施例1に係る植物栽培装置の全体構成を表す図である。
【図2】植物株3にヒータ線を設置した状態を表す図である。
【図3】図1の制御盤7の回路構成を表す図である。
【図4】株元加温が単位面積当たりの収穫果数に及ぼす影響について調査した結果を表すグラフである。
【図5】株元加温が果実の肥大日数に及ぼす影響について調査した結果を表すグラフである。
【図6】株元加温が根重に及ぼす影響について調査した結果を表すグラフである。
【図7】本発明の実施例2に係る植物栽培装置の全体構成を表す図である。
【図8】植物株3にヒータ線を設置した状態を表す図である。
【図9】面ヒータ8の斜視図である。
【図10】本発明の実施例2に係る植物栽培装置の構成を表す図である。
【図11】本発明の実施例2に係る植物栽培装置の構成を表す図である。
【符号の説明】
【0081】
1 植物栽培装置
2 栽培床
2a 畝
3 植物株
3a 主茎
3b 地際
3c 第1分枝
3d 第1分枝節
4 送電線
5 ヒータ線
6 温度センサ
7 制御盤
8 面ヒータ
8a クリップ
9 枝線
10 発熱シート
11 系統切替スイッチ
12 主電源スイッチ
13 切替制御部
14 通電制御部
15 タイマ
16 商用電源
20 畝
21 ヒータ
22 被覆材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
節間が伸長し葉や側枝が茎上に散生してついた主茎、枝、又はシュート(以下「長茎」という。)をつくる植物(以下「長茎植物」という。)の栽培方法であって、
長茎植物の株元の地際から主茎の第1側枝節又は第10節までの主幹部分(以下「株元部分」という。)の全部分又は一部分をヒータにより局所的に直接加温することにより、当該株元部分の加温制御を行うことを特徴とする長茎植物の栽培方法。
【請求項2】
節間が伸長し葉や側枝が茎上に散生してついた主茎、枝、又はシュート(以下「長茎」という。)をつくる植物(以下「長茎植物」という。)を栽培するための植物栽培装置であって、
長茎植物の株元の地際から主茎の第1側枝節又は第10節までの主幹部分(以下「株元部分」という。)の全部分又は一部分を局所的に加温するヒータと、
前記ヒータの温度を設定する温度設定手段と、
前記ヒータの温度を前記温度設定手段により設定された温度に制御する温度制御手段と、
を備えたことを特徴とする植物栽培装置。
【請求項3】
前記ヒータは、電熱ヒータであることを特徴とする請求項2記載の植物栽培装置。
【請求項4】
前記ヒータが1乃至複数個接続された複数の電力供給系統を有し、
前記温度制御手段は、一定の時間間隔で、前記各電力供給系統に順次電力供給を行い、前記ヒータの温度制御を行うことを特徴とする請求項2乃至3の何れか一記載の植物栽培装置。
【請求項1】
節間が伸長し葉や側枝が茎上に散生してついた主茎、枝、又はシュート(以下「長茎」という。)をつくる植物(以下「長茎植物」という。)の栽培方法であって、
長茎植物の株元の地際から主茎の第1側枝節又は第10節までの主幹部分(以下「株元部分」という。)の全部分又は一部分をヒータにより局所的に直接加温することにより、当該株元部分の加温制御を行うことを特徴とする長茎植物の栽培方法。
【請求項2】
節間が伸長し葉や側枝が茎上に散生してついた主茎、枝、又はシュート(以下「長茎」という。)をつくる植物(以下「長茎植物」という。)を栽培するための植物栽培装置であって、
長茎植物の株元の地際から主茎の第1側枝節又は第10節までの主幹部分(以下「株元部分」という。)の全部分又は一部分を局所的に加温するヒータと、
前記ヒータの温度を設定する温度設定手段と、
前記ヒータの温度を前記温度設定手段により設定された温度に制御する温度制御手段と、
を備えたことを特徴とする植物栽培装置。
【請求項3】
前記ヒータは、電熱ヒータであることを特徴とする請求項2記載の植物栽培装置。
【請求項4】
前記ヒータが1乃至複数個接続された複数の電力供給系統を有し、
前記温度制御手段は、一定の時間間隔で、前記各電力供給系統に順次電力供給を行い、前記ヒータの温度制御を行うことを特徴とする請求項2乃至3の何れか一記載の植物栽培装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−259727(P2007−259727A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87142(P2006−87142)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(591065549)福岡県 (121)
【出願人】(506104736)有限会社Zen (1)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(591065549)福岡県 (121)
【出願人】(506104736)有限会社Zen (1)
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