説明

開閉軸支装置、および、電気機器

【課題】デザイン性を向上可能な記録再生装置の提供。
【解決手段】フロントパネル部130に対してドア部140を開閉自在に軸支する開閉軸支装置を、パネル上側正面部132Aおよびパネル中間下面部132Bの2面にわたって開口する開口部151と、ドアヒンジ軸部およびドアヒンジ軸受部を有するドアヒンジ部と、ドアギア軸部153Bおよびドアギア軸受部153Cを有するドアギア部153と、オイルギア153Dと、ギア153Aと、で構成している。ドアヒンジ部およびドアギア部153に、ドア部140が開かれた際にパネル上側正面部132Aの面と略同一面上に位置する閉塞面部153A12を設けている。ドアヒンジ軸部とドアヒンジ軸受部、ドアギア軸部153Bとドアギア軸受部153Cを、ドア部140が開かれた状態で、パネル上側正面部132Aの面と平行な下側から着脱可能に設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース体の一面を略閉塞する状態で設けられるパネル部に対してドア部を開閉自在に軸支する開閉軸支装置、および、この開閉軸支装置を備えた電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビデオテープレコーダなどの電気機器のフロントパネル部をドア部で開閉する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載のものは、ドアスイッチユニットのフック部にフロントパネルの支軸が係合することで、ドアスイッチユニットがフロントパネルに対して回動する構成が採られている。また、ドアスイッチユニットをゆっくりと開動作させるために、ドアスイッチユニットをオイルダンパ機構に連動させている。
【0003】
この特許文献1に記載の構成のように、オイルダンパ機構を有するとともに、ドアスイッチユニットが開かれた状態でフック部と支軸とがフロントパネルの面と直交する方向から着脱可能に設けられる構成では、オイルダンパ機構とドアスイッチユニットとの連動部分は、例えば図1および図2に示すように構成することが考えられる。
【0004】
すなわち、ドアスイッチユニットに対応するドア部900をフロントパネル部910に対して開閉自在に軸支する構成として、開口部921と、オイルダンパ機構に対応するドアギア部922と、を設ける。
開口部921は、パネル正面部911の下縁近傍において開口する状態で設けられている。
ドアギア部922は、ドア部900に設けられたドアギア軸受部922Aと、このドアギア軸受部922Aに設けられたギア922Bと、パネル正面部911に設けられ開口部921を介してドアギア軸受部922Aに受けられるドアギア軸部922Cと、パネル正面部911に設けられギア922Bに噛合するオイルギア922Dと、を備えている。
【0005】
ドアギア軸受部922Aは、ドア部900の下部から背面側に向けて略U字板状に延出するとともに、ドア部900の下側に向けて開口する形状に形成されている。つまり、ドアギア部922は、ドア部900が開かれた状態で、ドアギア軸受部922Aとドアギア軸部922Cとがパネル正面部911の面と略直交する正面側から着脱可能な構成を有している。
ギア922Bは、ドアギア軸受部922Aにおける延出方向の先端側の上側から下側にかけて、中心角が90°以上の円弧状に並設された複数のギア歯922B1を備えている。
オイルギア922Dは、円状に並設された複数のオイルギア歯922D1がギア歯922B1と噛合する状態で、パネル正面部911の背面側に固定されている。このオイルギア922Dと、ギア922Bの噛合により、ドア部900は、図2に示す閉じた状態から図1に示す開いた状態に移行する際に、回転抵抗に応じた遅い回動速度で回動するようになっている。
【0006】
【特許文献1】特開平5−217350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したような従来の構成では、ドアギア軸受部922Aとドアギア軸部922Cとを正面側から着脱する際に、円弧状に並設されたギア歯922B1のうちドア部900から最も離れた位置にあるギア歯922B1(以下、離間ギア歯922B1と称す)を開口部921の上縁近傍を通過させる状態で、ドアギア軸受部922Aが開口部921内に挿入されるため、開口部921の上縁の位置を離間ギア歯922B1の先端よりも上側にする必要がある。このため、ドアギア軸受部922Aとドアギア軸部922Cとが係合された際に、開口部921の上縁に対向する位置に、離間ギア歯922B1よりもドア部900に近い位置にあるギア歯922B1が存在することとなり、このギア歯922B1の先端と開口部921の上縁との隙間から離間ギア歯922B1が露出してしまい、デザイン性が低くなるおそれがあるという問題点が一例として挙げられる。
【0008】
本発明は、このような点などに鑑み、デザイン性を向上可能な開閉軸支装置、および、この開閉軸支装置を備えた電気機器を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、略箱状のケース体の一面を略閉塞する状態で設けられるパネル部に対してドア部を開閉自在に軸支する開閉軸支装置であって、前記パネル部は、前記ドア部によって覆われる第1面と、この第1面と面方向が交差しかつ連続する状態で設けられた第2面と、を有し、前記パネル部の前記第1面から前記第2面にわたって開口する開口部と、前記パネル部および前記ドア部のうち一方に設けられた軸部、および、他方に設けられ前記開口部を介して前記軸部を受ける軸受部を有する複数の軸支部と、前記パネル部に設けられたオイルギアと、前記ドア部に設けられ前記開口部を介して前記オイルギアに噛合するギアと、を具備し、前記軸支部は、前記ドア部が開かれた際に前記第1面と略同一面上に位置する形状に形成された閉塞面部を有するとともに、前記ドア部が開かれた状態で前記軸部と前記軸受部とが前記第1面に平行な方向から着脱可能に設けられたことを特徴とする開閉軸支装置である。
【0010】
請求項6に記載の発明は、略箱状に形成されたケース体と、このケース体内に収容された電子機器と、第1面およびこの第1面と面方向が交差しかつ連続する状態で設けられた第2面を有するパネル部と、このパネル部の前記第1面を開閉自在に設けられたドア部と、前記パネル部に対して前記ドア部を開閉自在に軸支する請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の開閉軸支装置と、を具備したことを特徴とする電気機器である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る記録再生装置の斜視図である。図4は、ドア部が開いた状態におけるドアヒンジ部を示す断面図である。図5は、ドア部が閉じた状態におけるドアヒンジ部を示す断面図である。図6は、ドア部が開いた状態におけるドアギア部を示す断面図である。図7は、ドア部が閉じた状態におけるドアギア部を示す断面図である。
【0012】
[記録再生装置の構成]
図3において、100は電気機器としての例えば記録再生装置で、この記録再生装置100はTV映像データや撮像データなどの画像データや音声データなどを再生、さらには再生可能に記録するものである。
この記録再生装置100は、正面が開口されたケース体110と、このケース体110内に収納される電子機器120と、ケース体110の正面を略閉塞する状態で設けられるパネル部としてのフロントパネル部130と、このフロントパネル部130を開閉自在に設けられたドア部140と、このドア部140をフロントパネル部130に対して開閉自在に軸支する開閉軸支装置150と、を備えている。
【0013】
フロントパネル部130の左上部および右上部には、ドア固定磁石130Aが設けられている。また、フロントパネル部130には、スイッチや端子、コネクタ、ディスクトレイなどが臨む窓部130Bが設けられている。そして、フロントパネル部130は、図4〜図7に示すように、ケース体110の上面111と略同一面となる状態で設けられるパネル上面部131と、このパネル上面部131に一連に設けられケース体110の正面を略閉塞するパネル正面部132と、このパネル正面部132と一連に設けられケース体110の下面112と略同一面となる状態で設けられるパネル下面部133と、を備えている。これらパネル上面部131、パネル正面部132、パネル下面部133は、例えばABS樹脂で一体的に形成されている。
パネル正面部132は、図4〜図7に示すように、略板状の第1面としての正面であるパネル上側正面部132Aと、このパネル上側正面部132Aの下縁に一連に設けられ背面側(ケース体110の内部側)に向けて延出する第2面としての下面であるパネル中間下面部132Bと、このパネル中間下面部132Bの先端縁に一連に設けられパネル上側正面部132Aと略平行なパネル下側正面部132Cと、を備えている。
【0014】
ドア部140は、例えばアクリル樹脂によりパネル上側正面部132Aを覆うことが可能な長方形板状に形成されている。また、ドア部140の背面側の左上部および右上部には、ドア固定磁石130Aに吸引されるドア固定鉄140Aが設けられている。
【0015】
開閉軸支装置150は、図3に示すように、フロントパネル部130において左右方向に並設された4個の開口部151と、左から1番目、3番目、4番目の開口部151に対応する位置にそれぞれ設けられた軸支部としての3個のドアヒンジ部152と、左から2番目の開口部151に対応する位置に設けられた軸支部としての1個のドアギア部153と、を備えている。
【0016】
開口部151は、図4〜図7に示すように、パネル上側正面部132Aおよびパネル中間下面部132Bの2面にわたって開口する状態で設けられている。この開口部151におけるパネル上側正面部132A側の開口縁には、パネル中間下面部132Bに向けて延出する延出部151Aが設けられている。この延出部151Aは、延出方向の先端側に向かうにしたがって厚さ寸法が小さくなり、先端が尖った形状に形成されている。
【0017】
ドアヒンジ部152は、図4および図5に示すように、パネル上側正面部132Aに設けられたドアヒンジ軸部152Aと、ドア部140に設けられ開口部151を介してドアヒンジ軸部152Aを受けるドアヒンジ軸受部152Bと、を備えている。
【0018】
ドアヒンジ軸部152Aは、パネル上側正面部132Aの背面側の下部において開口部151から臨む状態で、かつ、軸方向が左右方向と一致する状態で設けられている。このドアヒンジ軸部152Aは、対向する一対の平側面部と、対向する一対の円弧側面部とにより略丸棒状に形成されている。
【0019】
ドアヒンジ軸受部152Bは、略U字板状に形成され、ドア部140の下部に設けられている。このドアヒンジ軸受部152Bは、ドア部140の背面側に向けて開口する状態で設けられている。つまり、ドアヒンジ部152は、図4に示すように、ドア部140が開かれた状態で、ドアヒンジ軸部152Aとドアヒンジ軸受部152Bとがパネル上側正面部132Aの面と平行な下側から着脱可能な構成を有している。
また、ドアヒンジ軸受部152Bにおけるドア部140との接続部分には、延出部151Aに対応して凹む形状に形成された凹部152B1が設けられている。つまり、凹部152B1は、図5に示すように、ドア部140でフロントパネル部130を覆った際に、延出部151Aに入り込む形状に形成されている。
さらに、ドアヒンジ軸受部152Bには、凹部152B1と連続する状態で閉塞面部152B2が設けられている。この閉塞面部152B2は、図4に示すように、ドア部140でフロントパネル部130が開かれた際に、パネル上側正面部132Aの面と略同一面上に位置する形状に形成されている。
【0020】
ドアギア部153は、図6および図7に示すように、ドア部140に設けられたギア153Aと、このギア153Aに設けられたドアギア軸部153Bと、パネル上側正面部132Aに設けられ開口部151を介してドアギア軸部153Bを受けるドアギア軸受部153Cと、パネル上側正面部132Aに設けられギア153Aに噛合するオイルギア153Dと、を備えている。
【0021】
ギア153Aは、ドア部140の下部から背面側に向けて略四角板状に延出するギア基部153A1と、このギア基部153A1における延出方向の先端側からドア部140の下部側の側面側にかけて、中心角が90°以上の円弧状に並設された複数のギア歯153A2と、を備えている。
また、ギア基部153A1におけるドア部140との接続部分には、ドアヒンジ部152の凹部152B1と略等しい形状に形成され、図7に示すように、ドア部140でフロントパネル部130を覆った際に、延出部151Aに入り込む凹部153A11が設けられている。
さらに、ギア基部153A1には、ドアヒンジ部152の閉塞面部152B2と略等しい形状に形成され、図6に示すように、ドア部140でフロントパネル部130が開かれた際に、パネル上側正面部132Aの面と略同一面上に位置する閉塞面部153A12が設けられている。
【0022】
ドアギア軸部153Bは、ギア基部153A1の一面における略中央から突出する状態で設けられている。このドアギア軸部153Bは、対向する一対の平側面部と、対向する一対の円弧側面部とにより略丸棒状に形成されている。
【0023】
ドアギア軸受部153Cは、略U字板状に形成され、パネル上側正面部132Aの背面側の下部に固定されている。また、ドアギア軸受部153Cは、開口部151から臨む状態で、かつ、パネル上側正面部132Aの下側に向けて開口する状態で設けられている。つまり、ドアギア部153は、図6に示すように、ドア部140が開かれた状態で、ドアギア軸部153Bとドアギア軸受部153Cとがパネル上側正面部132Aの面と平行な下側から着脱可能な構成を有している。
【0024】
オイルギア153Dは、円状に並設された複数のオイルギア歯153D1がギア153Aのギア歯153A2と噛合する状態で、パネル上側正面部132Aの背面側の下部に固定されている。このオイルギア153Dは、油の粘性による所定の回転抵抗を有している。このオイルギア153Dと、ギア153Aの噛合により、ドア部140は、図7に示す閉じた状態から図6に示す開いた状態に移行する際に、回転抵抗に応じた遅い回動速度で回動するようになっている。
【0025】
[記録再生装置の作用]
次に、上述した記録再生装置100の作用として、ドアギア軸部153Bをギア153Aに設け、ドアギア軸受部153Cをパネル上側正面部132Aに設けたことによる作用について、図面を参照して説明する。
図8は、ドア部が開いた状態における比較例1のドアギア部を示す断面図である。図9は、ドア部が閉じた状態における比較例1のドアギア部を示す断面図である。図10は、ドア部が開いた状態における比較例2のドアギア部を示す断面図である。図11は、ドア部が閉じた状態における比較例2のドアギア部を示す断面図である。
なお、上記実施形態と同一の構成については、同一符号を付し、説明を適宜省略する。
【0026】
〔比較例1の構成〕
比較例1のドアギア部200は、図8および図9に示すように、ドア部140に設けられたドアギア軸受部200Aと、図示しないパネル上側正面部に設けられドアギア軸受部200Aで受けられる図示しないドアギア軸部と、ドアギア軸受部200Aに設けられたギア200Cと、パネル上側正面部に設けられたオイルギア153Dと、を備えている。
ドアギア軸受部200Aは、ドア部140の背面側に向けて略U字板状に延出するとともに、ドア部140の下側に向けて開口する形状に形成されている。つまり、ドアギア部200は、ドア部140が開かれた状態で、ドアギア軸受部200Aとドアギア軸部とが正面側から着脱可能な構成を有している。また、ギア200Cのギア歯200C1は、ドアギア軸受部200Aの先端側からドア部140の下部側の側面側にかけて、上記実施形態よりも中心角が小さい円弧状に並設され、その数もギア歯153A2よりも少なくなっている。これは、ドアギア軸受部200Aがドア部140の下側に向けて開口しているため、想像線(2点鎖線)で示すようなギア歯200C9を設けられないためである。
【0027】
〔比較例2の構成〕
比較例2のドアギア部210は、図10および図11に示すように、ドアギア軸受部210Aおよびギア210Cのみが比較例1のドアギア部200と異なる構成を有している。
ドアギア軸受部210Aは、ドア部140の背面側に向けて略U字板状に延出するとともに、ドア部140の背面側に向けて開口する形状に形成され、ドアギア部210は、ドア部140が開かれた状態で、ドアギア軸受部210Aとドアギア軸部とが下側から着脱可能な構成を有している。また、ギア210Cのギア歯210C1は、ドアギア軸受部210Aの先端側からドア部140の下部側の側面側にかけて、上記実施形態よりも中心角が小さい円弧状に断続的に並設され、その数もギア歯153A2よりも少なくなっている。これは、ドアギア軸受部210Aがドア部140の背面側に向けて開口しているため、想像線(2点鎖線)で示すようなギア歯210C9を設けられないためである。
【0028】
〔比較例1,2と、記録再生装置との比較〕
比較例1では、上述したようにギア歯200C9を設けることができないので、図9に示すようなドア部140が閉じた状態では、ギア歯200C1がオイルギア歯153D1に十分に噛合するが、図8に示すようなドア部140が開いた状態では、ギア歯200C1がオイルギア歯153D1に十分に噛合しない。また、比較例2では、ギア歯210C9を設けることができないので、図10に示すようなドア部140が開いた状態では、ギア歯210C1がオイルギア歯153D1に十分に噛合するが、図11に示すようなドア部140が閉じた状態では、ギア歯210C1がオイルギア歯153D1に十分に噛合しない。
したがって、比較例1,2の構成では、ギア歯200C1,210C1とオイルギア歯153D1との噛合が十分でない状態のときがあり、ドア部140の滑らかに回動しないおそれがある。
これに対して、上記実施形態では、ギア153Aにドアギア軸部153Bを設けているため、比較例1,2のように、ギア歯153A2の配置制限を受けることがない。したがって、十分な数のギア歯153A2を設けることができ、図6に示すようなドア部140が開いた状態、および、図7に示すようなドア部140が閉じた状態の両方において、ギア歯153A2がオイルギア歯153D1に十分に噛合する。
したがって、上記実施形態の構成では、ドア部140の開閉時のすべての状態において両者の噛合を十分にすることができ、ドア部140を滑らかに回動させることができる。
【0029】
[記録再生装置の作用効果]
上述したように、上記実施形態では、以下のような作用効果を奏することができる。
【0030】
(1)フロントパネル部130に対してドア部140を開閉自在に軸支する開閉軸支装置150を、パネル上側正面部132Aおよびパネル中間下面部132Bの2面にわたって開口する開口部151と、ドアヒンジ軸部152Aおよびドアヒンジ軸受部152Bを有するドアヒンジ部152と、ドアギア軸部153Bおよびドアギア軸受部153Cを有するドアギア部153と、オイルギア153Dと、ギア153Aと、で構成している。また、ドアヒンジ部152およびドアギア部153に、ドア部140が開かれた際にパネル上側正面部132Aの面と略同一面上に位置する閉塞面部152B2,153A12を設けている。そして、ドアヒンジ軸部152Aとドアヒンジ軸受部152B、ドアギア軸部153Bとドアギア軸受部153Cを、ドア部140が開かれた状態で、パネル上側正面部132Aの面と平行な下側から着脱可能に設けている。
このため、円弧状に並設されたギア歯153A2のうちドア部140から最も離れた位置にあるギア歯153A2(以下、離間ギア歯153A2と称す)を開口部151の上縁近傍を通過させない状態で、ギア153Aを開口部151内に挿入することができる。
したがって、開口部151の上縁の位置を離間ギア歯153A2の先端の位置よりも下側にすることにより、開口部151の上縁と、ギア153Aとの隙間を小さくすることができ、この隙間から離間ギア歯153A2が露出するのを防ぐことができる。さらに、ドア部140が開かれた際に、パネル上側正面部132Aと略同一面上に位置する閉塞面部152B2,153A12を設けているので、この部分にギア歯153A2を設ける構成のように、ギア歯153A2が露出することがない。よって、記録再生装置100のデザイン性を向上できる。
【0031】
(2)開口部151をパネル上側正面部132Aおよびパネル中間下面部132Bにわたって設け、ドア部140でパネル上側正面部132Aを開閉する構成としている。
このため、操作時などに利用者の目につきやすいパネル上側正面部132A側から、離間ギア歯153A2が露出するのを防ぐことができる。したがって、離間ギア歯153A2が露出することによる違和感を覚えさせることなく、記録再生装置100の操作をさせることができる。
【0032】
(3)ドアヒンジ軸部152Aをフロントパネル部130に設け、ドアヒンジ軸受部152Bをドア部140に設けている。
ここで、略U字状のドアヒンジ軸受部152Bをフロントパネル部130に設ける場合、形状が複雑になるため一体成形することが困難になり、これらを別部材として成形してねじ止めなどで固定する必要がある。このため、部品点数が増えるとともに、組立の作業性が落ちてしまうおそれがある。
これに対して、上記実施形態では、ドアヒンジ軸受部152Bをドア部140に設けているので、形状が複雑になることがなく一体成形することができる。したがって、部品点数の増加を防ぐことができるとともに、組立の効率を上げることができる。
【0033】
(4)ドアヒンジ軸受部152Bおよびギア153Aに凹部152B1,153A11を設けるとともに、開口部151にこの凹部152B1,153A11に入り込む延出部151Aを設けている。
ここで、凹部152B1を設けずに、ドアヒンジ軸受部152Bにおけるドア部140との接続部分まで閉塞面部152B2を設ける構成の場合、ドア部140が閉じてこの接続部分が開口部151と対向する位置まで移動するため、開口部151の上縁の位置を上記実施形態の位置よりも上側にする必要がある。
これに対して、上記実施形態では、凹部152B1,153A11を設けているので、延出部151Aを設けて開口部151の上縁の位置を低くしても、ドア部140が閉じたときにドアヒンジ軸受部152Bおよびギア153Aと、延出部151Aと、が接触することがない。したがって、延出部151Aを設けることにより、ドア部140が開いたときにおける開口部151と、閉塞面部152B2,153A12との隙間を小さくすることができ、記録再生装置100のデザイン性をさらに向上できる。
【0034】
(5)ドアギア軸部153Bをギア153Aに設けるとともに、ドアギア軸受部153Cをパネル上側正面部132Aに設けている。
ここで、ドアギア軸部153Bおよびドアギア軸受部153Cを設けない構成の場合、ドア部140を開くためにドアギア部153近傍が操作されたときに、オイルギア153Dからギア153Aを離す方向にドア部140が撓んでしまうおそれがある。このような撓みが生じると、オイルギア153Dとギア153Aとの噛合が解除されて、ドア部140が自重による速い回動速度で回動してしまうおそれがある。また、比較例1,2のように、ドアギア軸部をパネル上側正面部に設け、ドアギア軸受部200A,210Aにギア200Cを設ける構成の場合、円弧方向に十分な数のギア歯200C1,210C1を並設させることができず、ドア部140が滑らかに回動しないおそれがある。
これに対して、上記実施形態では、ドアギア部153にドアギア軸部153Bおよびドアギア軸受部153Cを設けているので、ドアギア部153近傍が操作されたときに、ドアギア軸部153Bとドアギア軸受部153Cとの係合により、ドア部140が撓むことを防止できる。したがって、ドア部140をオイルギア153Dによる遅い回動速度で確実に回動させることができる。また、弾性変形しやすい薄い素材でドア部140を形成しても、ドア部140を確実に遅い回動速度で回動させることができる。さらに、円弧方向に十分な数のギア歯153A2を並設させることができ、ドア部140を滑らかに回動させることができる。
【0035】
[実施形態の変形]
なお、本発明は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示される変形をも含むものである。
【0036】
すなわち、本発明の開閉軸支装置をスイッチや端子などが上面から臨む状態で設けられている電気機器に適用する場合、開口部を第1面としての上面および第2面としての背面の2面にわたって設ける構成としてもよい。このような構成にすれば、操作時などに利用者の目につきやすい上面側からギアが露出するのを防ぐことができる。
【0037】
そして、ドアヒンジ軸受部152Bを1つの部品として成形して、このドアヒンジ軸受部152Bをフロントパネル部130にねじ止めなどで固定するとともに、ドアヒンジ軸部152Aをドア部140に一体成形してもよい。
また、凹部152B1,153A11および延出部151Aを設けない構成とすれば、ドアヒンジ軸受部152Bやギア153Aの形状をシンプルにでき、金型形状もシンプルにすることができるので、コストダウンを容易に図ることができる。
さらに、ドアギア軸部153Bおよびドアギア軸受部153Cを設けない構成とすれば、部品点数を削減でき、構造をシンプルにでき、コストダウンを容易に図ることができる。
【0038】
また、本発明の開閉軸支装置を、電気機器としてのPDP(プラズマディスプレイパネル)や有機ELなどの表示装置、カーナビゲーション装置、パーソナルコンピュータ、携帯電話、家庭用電話などに適用してもよい。
【0039】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【0040】
[実施形態の効果]
上述したように、上記実施形態では、フロントパネル部130に対してドア部140を開閉自在に軸支する開閉軸支装置150を、開口部151と、ドアヒンジ部152と、ドアギア部153と、オイルギア153Dと、ギア153Aと、で構成している。また、ドアヒンジ部152およびドアギア部153に、ドア部140が開かれた際にパネル上側正面部132Aの面と略同一面上に位置する閉塞面部152B2,153A12を設けている。そして、ドアヒンジ部152のドアヒンジ軸部152Aとドアヒンジ軸受部152B、ドアギア部153のドアギア軸部153Bとドアギア軸受部153Cを、ドア部140が開かれた状態で、パネル上側正面部132Aの面と平行な下側から着脱可能に設けている。
このため、円弧状に並設されたギア歯153A2のうちドア部140から最も離れた位置にある離間ギア歯153A2を開口部151の上縁近傍を通過させない状態で、ギア153Aを開口部151内に挿入することができる。
したがって、開口部151の上縁の位置を離間ギア歯153A2の先端の位置よりも下側にすることにより、開口部151の上縁と、ギア153Aとの隙間を小さくすることができ、この隙間から離間ギア歯153A2が露出するのを防ぐことができる。さらに、ドア部140が開かれた際に、パネル上側正面部132Aと略同一面上に位置する閉塞面部152B2,153A12を設けているので、この部分にギア歯153A2を設ける構成のように、ギア歯153A2が露出することがない。よって、記録再生装置100のデザイン性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】従来のドア部が開いた状態におけるドアギア部を示す断面図である。
【図2】前記従来のドア部が閉じた状態におけるドアギア部を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る記録再生装置の斜視図である。
【図4】前記一実施形態におけるドア部が開いた状態におけるドアヒンジ部を示す断面図である。
【図5】前記一実施形態におけるドア部が閉じた状態におけるドアヒンジ部を示す断面図である。
【図6】前記一実施形態におけるドア部が開いた状態におけるドアギア部を示す断面図である。
【図7】前記一実施形態におけるドア部が閉じた状態におけるドアギア部を示す断面図である。
【図8】ドア部が開いた状態における比較例1のドアギア部を示す断面図である。
【図9】ドア部が閉じた状態における比較例1のドアギア部を示す断面図である。
【図10】ドア部が開いた状態における比較例2のドアギア部を示す断面図である。
【図11】ドア部が閉じた状態における比較例2のドアギア部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
100…電気機器としての記録再生装置
110…ケース体
120…電子機器
130…パネル部としてのフロントパネル部
140…ドア部
150…開閉軸支装置
132A…第1面としての正面であるパネル上側正面部
132B…第2面としての下面であるパネル中間下面部
151…開口部
151A…延出部
152…軸支部としてのドアヒンジ部
152A…ドアヒンジ軸部
152B…ドアヒンジ軸受部
152B1,153A11…凹部
152B2,153A12…閉塞面部
153…軸支部としてのドアギア部
153A…ギア
153B…ドアギア軸部
153C…ドアギア軸受部
153D…オイルギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略箱状のケース体の一面を略閉塞する状態で設けられるパネル部に対してドア部を開閉自在に軸支する開閉軸支装置であって、
前記パネル部は、前記ドア部によって覆われる第1面と、この第1面と面方向が交差しかつ連続する状態で設けられた第2面と、を有し、
前記パネル部の前記第1面から前記第2面にわたって開口する開口部と、
前記パネル部および前記ドア部のうち一方に設けられた軸部、および、他方に設けられ前記開口部を介して前記軸部を受ける軸受部を有する複数の軸支部と、
前記パネル部に設けられたオイルギアと、
前記ドア部に設けられ前記開口部を介して前記オイルギアに噛合するギアと、を具備し、
前記軸支部は、前記ドア部が開かれた際に前記第1面と略同一面上に位置する形状に形成された閉塞面部を有するとともに、前記ドア部が開かれた状態で前記軸部と前記軸受部とが前記第1面に平行な方向から着脱可能に設けられた
ことを特徴とする開閉軸支装置。
【請求項2】
請求項1に記載の開閉軸支装置において、
前記パネル部の前記第1面および前記第2面は、それぞれ正面および下面、または、上面および背面である
ことを特徴とする開閉軸支装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の開閉軸支装置において、
前記軸部は、前記パネル部に設けられ、
前記軸受部は、前記ドア部に設けられた
ことを特徴とする開閉軸支装置。
【請求項4】
請求項3に記載の開閉軸支装置において、
前記軸受部は、前記ドア部が閉じられた際に前記開口部の開口縁に対向する位置において凹む状態で設けられた凹部を備え、
前記開口部は、その開口縁において前記凹部に入り込む状態で延出する延出部を備えた
ことを特徴とする開閉軸支装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の開閉軸支装置において、
前記複数の軸支部のうち1個の軸支部の前記軸部は、前記ギアに設けられ、前記軸受部は、前記パネル部に設けられた
ことを特徴とする開閉軸支装置。
【請求項6】
略箱状に形成されたケース体と、
このケース体内に収容された電子機器と、
第1面およびこの第1面と面方向が交差しかつ連続する状態で設けられた第2面を有するパネル部と、
このパネル部の前記第1面を開閉自在に設けられたドア部と、
前記パネル部に対して前記ドア部を開閉自在に軸支する請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の開閉軸支装置と、
を具備したことを特徴とする電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−93703(P2009−93703A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260845(P2007−260845)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)