関節リウマチの診断のための方法およびキット
本発明は、関節リウマチ(RA)と臨床的関連を有するタンパク質の同定および使用に関する。とりわけ、本発明は、RA関連自己抗体と特異的に反応するマーカータンパク質の同定を提供する。また、RAの診断ならびに治療レジメンの選択および/またはモニタリングにおいてこれらのタンパク質を用いるための方法、アレイ、およびキットも提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2008年5月14日に出願された欧州特許出願EP08305167.2に対する優先権を主張するものである。この欧州特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチ(RA)は、世界人口の約1%が罹患している慢性自己免疫疾患である。これは、軟骨および骨の破壊、関節の変形、ならびに可動性の喪失を最終的にもたらし得る、関節の滑膜表層における炎症および細胞増殖を特徴とする。RAは通常、いくつかの関節において同時に問題を生じさせ、それは対称的であることが多い。初期のRAは、手首、手、足首、および足の関節などの小さめの関節に最初に罹患する傾向がある。疾患が進行するにつれて、肩、肘、膝、腰、顎、および首の関節もまた関与してくる可能性がある。関節内または関節周辺の領域のみに罹患する、他の関節の状態とは異なり、RAは、皮膚、血管、心臓、肺、および筋肉を含む体全体にわたる関節外の組織において炎症を生じさせ得る全身性疾患である。
【0003】
RAは、痛み、変形、生活の質の低下、および障害に関連し、これらは次に、正常かつ生産的な生活を送るための患者の能力に影響する。最近の研究により、この疾患の発病の5年後に、およそ3分の1のRA患者がもはや運動することができず、10年以内に患者の半分がかなりの機能障害を有することが示されている(A.Youngら、Rheumatology、2007、46:350〜357)。結果として、RAは社会に対して多大な経済的負担を強いる。また、かなりのデータが、RAが平均寿命の短縮に関連することを示唆している。
【0004】
RAは広く研究されてきているが、この疾患の原因および発症機序は依然として完全には理解されていない。RAのリスクを増大させ得る因子には、個体の性別(女性は男性よりも2から3倍この疾患を発症する可能性が高い)、年齢(RAはより一般的には40歳から60歳の間に生じるが、子供、十代、および高齢者も罹患し得る)、遺伝的特徴(RAは、遺伝性の組織型主要組織適合遺伝子複合体(MHC)抗原であるHLA−DR4、より具体的にはDRB1*0401およびDRB1*0404に強く関連することが明らかになった)、ならびに喫煙(RAは非喫煙者よりも喫煙者において約4倍多い)が挙げられる。
【0005】
現在、RAの信頼性のある治療法は存在しない。治療は基本的に、痛みを軽減させ、炎症を低減させ、関節の損傷および骨の破壊を停止または減速させることを目的とするものである。現在の治療アプローチは、状態の初期に疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)を処方することであり、それは、このような薬剤で初期に治療されたRA患者が、機能が良好に保持され、運動障害が少なく、かつ早期に死亡するリスクが小さい、良好な転帰を有するためである。RAの病態生理の理解における最近の進歩により、生物学的応答修飾物質と呼ばれる新たなDMARDが開発されている。生物学的DMARDは、RAに関連する異常な免疫反応に関与する、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、インターロイキン−1(IL−1)、T細胞、およびB細胞などの、鍵となる特定の細胞または分子の作用を標的化および遮断するように設計されている。従来のDMARDと比較して、生物学的作用物質は、作用の開始がはるかに速く、かつ、関節の損傷の有効な長期の予防を伴う良好な臨床応答をもたらし得る(J.K.D.de Vries−Bouwstraら、Rheum.Dis.Clin.North Am.、2005、31:745〜762)。
【0006】
回復不能な関節の破壊は、疾患の初期段階での介入により予防することができるため、RAの初期の診断が重要である。しかし、RAの確定診断は困難である可能性がある。RAの診断のために行われ得る免疫学的試験には、特に、リウマチ因子(RF)、抗核抗体(ANA)、および抗環状シトルリン化ペプチド(抗CCP)抗体のレベルの測定が含まれる。RFについての血清学的試験は、感度および特異性が中程度であり、他の慢性的炎症および感染性疾患における陽性率が高いことにより、複雑である(T.Dornerら、Curr.Opin.Rheumatol、2004、16:246〜253)。陽性のANAの結果は、異常に活性のある免疫系を示す。RA患者の約40%がANAについて陽性である。しかし、この疾患の発病の最初の数ヶ月はANAの試験は陰性であり得、一部の患者においては、それらは疾患が進行しても陰性であり続ける。RAの診断においては、抗CCP抗体の試験が特に有用であり、それは、特異性が高く、疾患プロセスの初期において陽性であり、重篤な疾患および回復不能な損傷を有する可能性が高い患者を同定することができる。しかし、抗CCP抗体の試験における陰性の結果はRAを排除するわけではない。
【0007】
したがって、RAおよびRA進行の新たな生物学的マーカーが大いに必要である。とりわけ、疾患の初期段階の信頼性のある診断およびモニタリングを可能にし、痛み、関節の破壊、および長期にわたる障害を潜在的に予防するための初期の介入を可能にするバイオマーカーが非常に望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、関節リウマチ(RA)の診断のための改良された系および戦略に関する。とりわけ、本発明は、RA患者における、臨床的に関連する疾患プロセスを反映するタンパク質の同定を提供する。より具体的には、本発明は、患者から得られるインビトロの生物学的試料においてRAの指標となる自己抗体の存在を検出するために用いることができるバイオマーカーを提供する。特定の実施形態において、本発明のバイオマーカーは、CCP陰性の患者においてRAの診断を可能にする利点を有する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
より具体的には、1つの態様において、本発明は、関節リウマチの診断において使用するための、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーを提供する。とりわけ、本発明は、対象における関節リウマチのインビトロでの診断方法において用いるための、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーを提供する。特定の実施形態において、関節リウマチのインビトロでの診断方法は、対象から得られる生物学的試料を、自己抗原マーカーと、抗原抗体複合体の形成を可能にする時間および条件下で接触させるステップと、形成された任意の抗原抗体複合体を検出するステップとを含み、抗原抗体複合体の存在は、対象における関節リウマチの指標となる。形成された任意の抗原抗体複合体の検出は、任意の適切な方法、例えば免疫アッセイにより行うことができる。
【0010】
特定の実施形態において、インビトロでの診断方法で試験される対象、例えばヒト患者は、関節リウマチを有することが疑われる。特定の実施形態において、対象はCCP陰性である。
【0011】
インビトロでの診断方法において用いられる生物学的試料は、全血、血清、血漿、尿、および滑液からなる群から選択され得る。
【0012】
特定の実施形態において、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーは、固体の担体または支持体上に固定化される。例えば、自己抗原マーカーはアレイ上に固定化される。
【0013】
特定の実施形態において、自己抗原マーカーに含まれるBRAF触媒ドメインは、ヒト由来のものである。例えば、BRAF触媒ドメインは、配列番号2のアミノ酸416からアミノ酸766にわたるアミノ酸配列を有するか、含むか、またはそれにより構成される。
【0014】
特定の実施形態において、BRAF触媒ドメインまたはその抗原結合断片を含む自己抗原マーカーは、対象から得られる生物学的試料において抗PAD4抗体を検出することをさらに含む、関節リウマチのインビトロでの診断方法において使用される。同一のまたは他の実施形態において、自己抗原マーカーは、対象から得られる生物学的試料においてC反応性タンパク質、血清アミロイドA、インターロイキン6、S100タンパク質、オステオポンチン、リウマチ因子、マトリクスメタロプロテアーゼ1、マトリクスメタロプロテアーゼ3、ヒアルロン酸、sCD14、血管新生マーカー、および骨、軟骨、または滑膜の代謝産物からなる群から選択される少なくとも1つのマーカーの濃度を測定することをさらに含む、関節リウマチのインビトロでの診断方法において使用される。
【0015】
関連する態様において、本発明は、関節リウマチの診断において用いるための、アレイの表面に付着した自己抗原マーカーを提供し、自己抗原マーカーは、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む。とりわけ、本発明は、対象における関節リウマチのインビトロでの診断方法において用いるための、アレイの表面に付着した自己抗原マーカーを提供し、自己抗原マーカーは、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む。
【0016】
特定の実施形態において、BRAF自己抗原マーカーが付着しているアレイはさらに、その表面に付着した、PAD4またはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーを含む。同一のまたは他の実施形態において、BRAF自己抗原マーカーが付着しているアレイはさらに、その表面に付着した、RA特異的自己抗体、とりわけ抗核抗体および抗CCP抗体の存在を検出するための少なくとも1つのさらなるマーカーを含む。
【0017】
別の態様において、本発明は、関節リウマチのマーカーとしてのBRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーの使用を提供する。
【0018】
さらに別の態様において、本発明は、対象における関節リウマチのインビトロ診断のための方法を提供し、前記方法は、対象から得られる生物学的試料を、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーと、抗原抗体複合体の形成を可能にする時間および条件下で接触させるステップと、形成された任意の抗原抗体複合体を検出するステップとを含み、抗原抗体複合体の存在は、対象における関節リウマチの指標となる。
【0019】
特定の実施形態において、対象、例えばヒト患者は、関節リウマチを有することが疑われる。特定の実施形態において、対象、例えばヒト患者はCCP陰性である。
【0020】
対象から得られ、かつ本発明の診断方法における使用に適した生物学的試料は、全血、血清、血漿、尿、および滑液からなる群から選択され得る。
【0021】
本明細書において提供される診断方法において、自己抗原マーカーと対象から得られる生物学的試料内に存在する自己抗体との間で形成される任意の抗原抗体複合体の検出は、任意の適切な方法によって行うことができる。特定の実施形態において、検出は免疫アッセイによるものである。
【0022】
特定の実施形態において、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーは、固体の担体または支持体上に固定化される。
【0023】
対象が人間である実施形態において、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片は、好ましくはヒト由来のものである。特定の実施形態において、BRAF触媒ドメインは、本明細書において定義される配列番号2のアミノ酸416からアミノ酸766にわたるアミノ酸配列を有する。
【0024】
特定の実施形態において、本発明の診断方法はさらに、試験される対象から得られる生物学的試料における抗PAD4抗体を検出することを含む。これらまたは他の実施形態において、本方法はさらに、対象から得られる生物学的試料において抗CPP抗体を検出することを含む。その代わりに、またはそれに加えて、診断方法はさらに、対象から得られる生物学的試料においてC反応性タンパク質、血清アミロイドA、インターロイキン6、S100タンパク質、オステオポンチン、リウマチ因子、マトリクスメタロプロテアーゼ1、マトリクスメタロプロテアーゼ3、ヒアルロン酸、sCD14、血管新生マーカー、および骨、軟骨、または滑膜の代謝産物からなる群から選択される少なくとも1つのマーカーの濃度を測定することを含み得る。
【0025】
さらに別の態様において、本発明は、対象における関節リウマチの診断のためのキットを提供する。より具体的には、キットは、対象から得られる生物学的試料における抗BRAF自己抗体を検出するために提供され、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーと、自己抗原マーカーと生物学的試料内に存在する自己抗体との間で形成される抗原抗体複合体を検出するための試薬であって、自己抗体が、対象における関節リウマチの指標となる抗BRAF自己抗体である試薬とを含む。このキットにおいて、自己抗原マーカーは固体の担体もしくは支持体上に固定化され得るか、または、固体の担体もしくは支持体上に自己抗原マーカーを固定化するために用いられる試薬がキット内に含まれ得る。キットはさらに、本明細書において提供される診断方法のいずれかを実施するための指示を含み得る。
【0026】
特定の実施形態において、キットはさらに、PAD4またはその抗体結合断片を含む第2の自己抗原マーカーと、第2の自己抗原マーカーと生物学的試料内に存在する自己抗体との間で形成される抗原抗体複合体を検出するための第2の試薬であって、自己抗体が、対象におけるRAの指標となる抗PAD4自己抗体である試薬とを含む。
【0027】
さらに別の態様において、本発明は、対象におけるRAの診断のためのアレイを提供する。とりわけ、本発明は、試験される対象から得られる生物学的試料におけるRA特異的自己抗体の存在を検出するためのアレイを提供する。より具体的には、本発明に従ったアレイは、その表面に付着した、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーと、場合によっては、PAD4またはその抗体結合断片を含む第2の自己抗原マーカーとを含む。特定の実施形態において、本発明のアレイはさらに、その表面に付着した、抗核抗体および抗CCP抗体などのRA特異的自己抗体の存在を検出するための少なくとも1つのさらなる自己抗原マーカーを含む。
【0028】
本発明のこれらおよび他の目的、利点、および特徴が、以下の好ましい実施形態の詳細な説明を読んだ当業者には明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1A】19人のRA患者、7人のAS患者、2人のSLE患者、および4人のSSC患者、ならびに10人の健康な対照のそれぞれの血清により認識されるProtoArrayヒトタンパク質マイクロアレイのタンパク質の数を示すグラフである。
【図1B】患者および健康な対照のそれぞれの群により認識されるタンパク質マイクロアレイのタンパク質の平均数を示すグラフである。
【図2】AS患者、SLE患者、SSC患者、健康な対照、および2個、1個、または0個のRA関連HLA−DR対立遺伝子を発現するRA患者により認識されるProtoArrayヒトタンパク質マイクロアレイのタンパク質の平均数を示すグラフである。
【図3】少なくとも1人のRA患者、少なくとも2人のRA患者、少なくとも3人のRA患者などにより認識されるProtoArrayヒトタンパク質マイクロアレイのタンパク質の総数を示すグラフである。また、AS患者の少なくとも20%、SSC患者の少なくとも20%、および健康な個体の少なくとも20%によっても認識される、RA患者により認識されるタンパク質も、このグラフにおいて示される。
【図4】RA患者の血清により最も頻繁に認識されることが明らかになったタンパク質を列挙する表である。これらのタンパク質を認識したRA患者、AS患者、SLE患者、SSC患者、および健康な個体の数がこの表において表される。また、それぞれのタンパク質の対応するヌクレオチド配列のGenBank登録番号も表される。
【図5A】ELISAにより決定された、PAD4について陽性のRA患者、AS患者、および健康な個体のパーセンテージを示すグラフである。
【図5B】ELISAにより決定された、PAD4について陽性の、2個(SE+/SE+)、1個(SE+/SE−)、または0個(SE−/SE−)のRA関連HLA−DR対立遺伝子を発現するRA患者のパーセンテージを示すグラフである。
【図6A】ELISAにより決定された、PIP4K2Cについて陽性のRA患者、AS患者、および健康な個体のパーセンテージを示すグラフである。
【図6B】ELISAにより決定された、PIP4K2Cについて陽性の、2個(SE+/SE+)、1個(SE+/SE−)、または0個(SE−/SE−)のRA関連HLA−DR対立遺伝子を発現するRA患者のパーセンテージを示すグラフである。
【図7A】ウェスタンブロッティングにより決定された、BRAF触媒ドメインについて陽性のRA患者、AS患者、および健康な個体のパーセンテージを示すグラフである。
【図7B】ウェスタンブロッティングにより決定された、BRAF触媒ドメインについて陽性の、2個(SE+/SE+)、1個(SE+/SE−)、または0個(SE−/SE−)のRA関連HLA−DR対立遺伝子を発現するRA患者のパーセンテージを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
定義
本明細書を通して、以下の段落において定義されるいくつかの用語が用いられる。
【0031】
本明細書において用いられる場合、「対象」という用語は、RAに罹患し得るが疾患を有していてもよく、または有していなくてもよい、ヒトまたは別の哺乳動物(例えば、霊長類、犬、猫、山羊、馬、豚、マウス、ラット、ウサギなど)を言う。本発明の多くの実施形態において、対象は人間である。このような実施形態において、対象はしばしば「個体」と呼ばれる。「個体」という用語は特定の年齢を指すものではなく、したがって、子供、十代、および成人を包含する。
【0032】
「RAを有することが疑われる対象」という用語は、RAの指標となる1つもしくは複数の症状(例えば、関節の痛み、こわばり、もしくは腫れ)を示す対象、または(例えば、検診中に)RAについてスクリーニングされる対象を言う。その代わりに、またはそれに加えて、RAを有することが疑われる対象は、1つまたは複数の危険因子(例えば、年齢、性別、家族歴、喫煙など)を有し得る。この用語は、RAについて試験されていない対象および初期診断を受けた対象も包含する。
【0033】
「生物学的試料」という用語は、本明細書において、その最も広い意味で用いられる。生物学的試料は通常、対象から得られる。試料は、本発明のバイオマーカーと共にアッセイされ得る、任意の生物学的組織または液体のものであり得る。試料は、「臨床試料」、すなわち患者に由来する試料であることが多い。このような試料には、限定はしないが、細胞を含んでいてもよく、または含んでいなくてもよい体液、例えば血液(例えば全血、血清、または血漿)、尿、滑液、唾液、および関節液、骨または軟骨などから得られる組織または細針生検試料、ならびに診断、治療、および/または転帰の履歴が知られている保存された試料が含まれる。生物学的試料にはまた、組織学的な目的で採取された凍結切片などの組織切片が含まれ得る。「生物学的試料」という用語はまた、生物学的試料を処理することにより得られる任意の材料を包含する。得られる材料には、限定はしないが、試料またはその試料から抽出されるタンパク質から単離される細胞(またはその後代)が含まれる。生物学的試料の処理は、ろ過、蒸留、抽出、濃縮、干渉成分の不活性化、試薬の添加などの1つまたは複数を伴い得る。
【0034】
「正常な」および「健康な」という用語は、本明細書においてほぼ同じ意味で用いられる。それらは、いずれのRA症状も示していない対象、およびRAまたは軟骨もしくは骨の傷害と診断されていない対象を言う。好ましくは、正常な対象は、RAに対する投薬治療を受けておらず、いずれの他の疾患とも診断されていない(特に、自己免疫性炎症性疾患)。特定の実施形態において、正常な対象は、試験される生物学的試料を得た対象と比較して同様の性別、年齢、および/または肥満度指数を有する。「正常な」という用語はまた、本明細書において、健康な対象から得られる試料を特定するために用いられる。
【0035】
本発明の関連において、「対照」という用語は、対象を特徴付けるために用いられる場合、健康な対象またはRA以外の特定の疾患と診断された患者を言う。「対照試料」という用語は、健康な対象またはRA以外の疾患と診断された患者から得られた1つまたは2つ以上の試料を言う。
【0036】
「自己抗体」という用語は、本明細書において用いられる場合、その技術分野において理解されている意味を有し、かつ、対象の免疫系により産生され、対象自身のタンパク質の1つまたは複数に対する抗体を言う。自己抗体は、身体自体の細胞、組織、および/または器官を攻撃し得、炎症および損傷を生じさせる。
【0037】
本明細書において用いられる場合、「自己抗原」という用語は、自己免疫反応の場合と同様に対象の身体における自己抗体の産生を刺激する、内因性抗原またはその活性断片を言う。この用語はまた、対象内または対象から得られる生物学的試料内に存在する自己抗体と抗原抗体複合体を形成し得る、任意の物質を包含する。
【0038】
「抗体結合断片」という用語は、抗原と組み合わせて本明細書において用いられる場合、抗体に結合して抗原抗体複合体を形成するという抗原の能力を保持している、本発明の抗原の断片を言う。とりわけ、本発明の抗原の抗体結合断片は、RA特異的自己抗体を結合する能力を保持している。抗原の適切な抗体抗原断片は、RA特異的自己抗体を結合するそれらの能力を確認するための単純な検査によって当業者が同定することができる。
【0039】
「バイオマーカー」および「マーカー」という用語は、本明細書において、ほぼ同じ意味で用いられる。それらは、生物学的プロセス、生物学的事象、および/または病理学的状態の特徴的な指標となる物質を言う。本明細書において用いられる場合、「自己抗原マーカー」という用語は、本明細書において定義される、自己抗体を伴う生物学的プロセス、生物学的事象、および/または病理学的状態の特徴的な指標となる自己抗原を言う。
【0040】
本明細書において用いられる場合、「RAの指標となる」という用語は、プロセスまたは事象に適用される場合、プロセスまたは事象が健康な対象および/またはRA以外の疾患に罹患している対象におけるよりもRAを有する対象において有意に頻繁に見られるような、RAの診断に役立つプロセスまたは事象を言う。
【0041】
「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」という用語は、本明細書においてほぼ同じ意味で用いられ、それらの中性(荷電していない)形態の、または塩としての、およびグリコシル化、側鎖の酸化、またはリン酸化により修飾されていないかまたは修飾されている、様々な長さのアミノ酸配列を言う。特定の実施形態において、アミノ酸配列は、完全長の天然タンパク質である。他の実施形態において、アミノ酸配列は、完全長タンパク質の小断片である。さらに他の実施形態において、アミノ酸配列は、グリコシル単位、脂質、またはリン酸塩などの無機イオンなどの、アミノ酸の側鎖に付着したさらなる置換基により、およびスルフヒドリル基の酸化などの鎖の化学的変換に関する修飾により修飾される。したがって、「タンパク質」という用語(またはその同等の用語)は、その特異的特性を有意には変化させない修飾を受ける完全長の天然タンパク質のアミノ酸配列またはその断片を含むことを意図したものである。とりわけ、「タンパク質」という用語は、タンパク質アイソフォーム、すなわち、同一の遺伝子によりコードされるがpIもしくはMWまたはその両方が異なる変異体を包含する。このようなアイソフォームは、アミノ酸配列が異なり得るか(例えば、選択的スプライシングまたは制限タンパク質分解の結果として)、あるいは、差次的な翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、アシル化、ホスホリル化)から生じ得る。
【0042】
「タンパク質類似体」という用語は、本明細書において用いられる場合、タンパク質と同様のまたは同一の機能を有するが、そのタンパク質のアミノ酸配列と同様もしくは同一であるアミノ酸配列またはそのタンパク質の構造と同様もしくは同一の構造を含んでいる必要はないポリペプチドを言う。好ましくは、本発明の関連において、タンパク質類似体は、タンパク質のアミノ酸配列に少なくとも30%、より好ましくは少なくとも約35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一なアミノ酸配列を有する。
【0043】
「タンパク質断片」という用語は、本明細書において用いられる場合、タンパク質のアミノ酸配列の少なくとも5個のアミノ酸残基(好ましくは、少なくとも約10個、15個、20個、25個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、125個、150個、175個、200個、または250個のアミノ酸残基)からなるアミノ酸配列を含むポリペプチドを言う。タンパク質の断片は、タンパク質の機能的活性を有していてもよく、または有していなくてもよい。
【0044】
「相同」(または「相同性」)という用語は、本明細書において用いられる場合、「同一性」という用語と同義であり、2つのポリペプチド分子の間または2つの核酸分子の間の配列類似性を言う。比較される配列の両方における1つの位置に同一の塩基または同一のアミノ酸残基が存在する場合、それぞれの分子はその位置で相同である。2つの配列の間の相同性のパーセンテージは、2つの配列が共有する、一致するかまたは相同な位置の数を、比較される位置の数で割り、100をかけたものに対応する。通常、比較は、2つの配列をアラインして最大の相同性を得る場合に行われる。相同なアミノ酸配列は、同一のまたは類似のアミノ酸配列を共有する。類似の残基は、参照配列における対応するアミノ酸残基に対する保存的置換、または前記残基の「許容される点突然変異」である。参照配列における残基の「保存的置換」は、対応する参照残基に物理的または機能的に類似の置換、例えば、類似のサイズ、形状、電荷、共有結合または水素結合を形成する能力を含む化学的特性などを有する置換である。特に好ましい保存的置換は、Dayhoffらによる「認められた点突然変異」について規定された基準を満たす保存的置換である(「Atlas of Protein Sequence and Structure」、1978、Nat.Biomed.Res.Foundation、Washington,DC、Suppl.3、22:354〜352)。
【0045】
「タンパク質アレイ」および「タンパク質チップ」という用語は、本明細書においてほぼ同じ意味で用いられる。それらは、基質上の個別のスポットに異なるタンパク質が規則的な様式で固定化されている基質表面を言う。タンパク質アレイは、タンパク質/タンパク質相互作用(例えば、抗原/抗体相互作用)を同定するため、酵素の基質を同定するため、または生物学的に活性な小分子の標的を同定するために用いることができる。「マイクロアレイ」という用語は、より具体的には、小型化され、視覚的評価のための顕微鏡的試験が必要となるアレイを言う。
【0046】
「標識された」、「検出可能な作用物質で標識された」、および「検出可能な部分構造で標識された」という用語は、本明細書においてほぼ同じ意味で用いられる。これらの用語は、実体(例えば抗原)が例えば別の実体(例えば抗体)に結合した後に可視化され得ることを特定するために用いられる。好ましくは、検出可能な作用物質または部分構造はシグナルを生じさせるように選択され、前記シグナルは、測定可能であり、その強度が、結合した実体の量に関連するものである。アレイに基づいた方法において、検出可能な作用物質または部分構造はまた、好ましくは、局所的なシグナルを生じさせ、それによりアレイ上の各スポットからのシグナルの空間分解能を可能にするように選択される。タンパク質およびポリペプチドを標識するための方法は、当技術分野において周知である。標識ポリペプチドは、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、もしくは化学的手段、または任意の他の適切な手段により直接的または間接的に検出可能な、標識の組み込みまたは標識への結合により調製することができる。適切な検出可能な作用物質には、限定はしないが、様々なリガンド、放射性核種、蛍光染料、化学発光作用物質、微小粒子、酵素、比色標識、磁気標識、およびハプテンが含まれる。
【0047】
「治療」という用語は、(1)疾患もしくは状態の発病を遅らせるかもしくは予防すること、または(2)症状の状態の進行、重篤化、もしくは悪化を減速もしくは停止させること、または(3)症状の状態の改善をもたらすこと、または(4)状態を治癒させることを目的とする方法を特徴付けるために、本明細書において用いられる。治療は、予防的または防止的作用のために、疾患の発病の前に投与され得る。治療はまた、治療作用のために疾患の開始後にも投与され得る。
【0048】
特定の好ましい実施形態の詳細な説明
上述したように、本発明は、患者から得られる生物学的試料におけるRA特異的自己抗体の存在を検出するために用いることができる自己抗原マーカーを提供するものである。また、RAの診断のためにこれらの自己抗原マーカーを用いるための方法も提供される。
【0049】
I− RAの自己抗原マーカー
実施例の節において記載されるように、本出願人らは、Invitrogenから市販されているProtoArrayヒトタンパク質マイクロアレイを用いてRA患者の血清をスクリーニングすることにより、RAのバイオマーカーを同定した。このマイクロアレイは、プロテアーゼ/ペプチダーゼ、分泌タンパク質、転写因子、細胞死タンパク質、プロテインキナーゼ、核タンパク質、膜タンパク質、および代謝タンパク質を含む、8000個を超えるヒトタンパク質を含む。より具体的には、本出願人らは、RA患者、ならびに脊椎関節症(AS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、および全身性硬化(SSC)に罹患している患者と健康な個体とを含む様々な対照から得られる血清試料をスクリーニングし、試験した様々な群について結合パターンを比較した。本出願人らは、RA患者の血清により認識されるタンパク質の大部分が対照の血清によっても認識されることを見出した(図3を参照されたい)。
【0050】
RA患者の多くにより認識されたタンパク質を、図4に示される表に列挙する。これらのタンパク質には、PAD4、BRAF触媒ドメイン、腫瘍抑制副伝達性候補4、プロテインキナーゼCベータ1、ヌクレオシド二リン酸結合部分Xモチーフ21型、ヌクレオシド二リン酸結合部分Xモチーフ21型、EPH受容体B1、微小管関連RP EBファミリーのメンバー、PIP4K2C、プロテインキナーゼCシータ、V ERB B2、カルシウムカルモジュリン依存性プロテインキナーゼIIアルファ、プロテインキナーゼCアルファ、プロテインキナーゼCベータ1、およびDEPドメイン6が含まれる。
【0051】
これらのタンパク質の3つのみが、RA患者の血清により特異的に認識されることが明らかになり(図4を参照されたい)、それらをRAの潜在的な候補バイオマーカーとした。これらのタンパク質は、PAD4(ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4)、PKCベータ1(プロテインキナーゼCベータ1)、およびPIP4K2C(ホスファチルイノシトール4リン酸5キナーゼII型ガンマ)である。試験したRA患者のうち47%がPAD4について陽性であり、31%がPKCベータ1について陽性であり、26%がPIP4K2Cについて陽性であったが、対照群の個体はこれらのタンパク質のそれぞれについて全て陰性であった。これらの3つの候補バイオマーカーに加え、本出願人らは、BRAF触媒ドメイン(v rafマウス肉腫ウイルス癌遺伝子類似体B1触媒ドメイン)を選び出したが、それは、このタンパク質が興味深い選択性を示すことが明らかになったためである(図4を参照されたい)。実際、スクリーニング実験において、AS患者の0%、SLE患者の0%、SSC患者の0%、および健康な個体の10%がBRAF候補ドメインについて陽性であったのに対し、試験したRA患者の47%がBRAF候補ドメインについて陽性であることが明らかになった。
【0052】
実施例の節において記載されるように、本出願人らは次に、ウェスタンブロッティングおよび/またはELISAを用いて、スクリーニング実験において同定されたRAの潜在的な候補バイオマーカー(すなわち、PAD4、PKCベータ1、PIP4K2C、およびBRAF触媒ドメイン)の有効性を実証した。このさらなる試験により、4個の候補の2個のみがRAの自己抗原マーカーとして有効性を実証された。有効性を実証されたタンパク質は、BRAF触媒ドメインおよびPAD4である。実際、タンパク質アレイのスクリーニングおよびウェスタンブロッティング分析により、AS患者の0%、SLE患者の0%、SSC患者の0%、および健康な個体の4%のみがBRAF候補ドメインについて陽性であったのに対し、RA患者の47%がBRAF候補ドメインについて陽性であることが明らかになった。タンパク質アレイのスクリーニングおよびELISA分析により、AS患者の0%、SSC患者の0%、および健康な個体の3%がPAD4について陽性であったのに対し、RA患者の32%がPAD4について陽性であることが明らかになった。
【0053】
したがって、特定の実施形態において、本発明は、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片もしくは変異体を含む自己抗原マーカーを提供する。他の実施形態において、本発明は、PAD4またはその抗体結合断片もしくは変異体を含む自己抗原マーカーを提供する。
【0054】
BRAF触媒ドメイン
BRAF(B−rafとも呼ばれる)は、RAFタンパク質ファミリーのセリン−スレオニンキナーゼタンパク質である。これは、細胞の成長を調節する保存された経路であるマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナル伝達経路に関与する。この経路を介したシグナル伝達は、ヒトの癌のおよそ30%において上昇している。この経路はまた、関節の炎症および破壊をもたらす炎症性サイトカインの産生に関与することが知られている(C.M.CrewsおよびR.L.Erikson、Cell、1993、74:215〜217;T.Thalhamerら、Rheumatology、2008、47:409〜414)。
【0055】
RAFタンパク質は、N末端の調節領域およびC末端の触媒ドメインを含む。それらは、3つの保存領域、すなわちCR1、CR2、およびCR3からなる。CR1は2つのRas結合ドメイン(Raf様Ras結合ドメインであるRBD、およびシステインに富んだドメインであるCRD)を有し、CR2はセリン/スレオニンに富んだドメインであり、CR3は触媒キナーゼドメインである。ヒトにおいて、BRAF遺伝子は、766個のアミノ酸残基からなるBRAFタンパク質(GenBank登録番号:NP_004324.1)をコードし、その配列は配列番号1において定義される。
【0056】
【表1】
【0057】
このタンパク質において、RBDはアミノ酸156から227にわたり、プロテインキナーゼC保存領域1ドメインはアミノ酸235から280にわたり、セリン−スレオニンキナーゼ触媒ドメインはアミノ酸456から712にわたる。
【0058】
本発明の関連において、「BRAF触媒ドメイン」という用語は、BRAFタンパク質のセリン−スレオニンキナーゼ触媒ドメインの配列を含むアミノ酸配列を言う。したがって、例えば、BRAF触媒ドメインのアミノ酸配列は、BRAFのセリン−スレオニンキナーゼ触媒ドメインの配列を包含するBRAFタンパク質のアミノ酸配列であり得る。あるいは、BRAF触媒ドメインのアミノ酸配列は、BRAFタンパク質のセリン−スレオニンキナーゼ触媒ドメインの配列であり得る。
【0059】
本発明の実施において、BRAFタンパク質は任意の適切な哺乳動物(例えば、BRAFタンパク質の配列が決定されているかまたは予想されているラット、犬、牛、霊長類)由来のものであり得る。しかし、ヒト対象の生物学的試料が試験される実施形態において、BRAFタンパク質は好ましくはヒト由来のものである。「ヒト由来のもの」という用語は、タンパク質(またはその領域もしくは断片)を特徴付けるために本明細書において用いられる場合、ヒトタンパク質(すなわち、ヒトの身体において天然に生じる野生型タンパク質)に相同なタンパク質またはポリペプチドを言う。
【0060】
したがって、BRAFタンパク質がヒト由来のものである実施形態において、「BRAF触媒ドメイン」という用語は、配列番号1のアミノ酸456からアミノ酸712にわたる配列を含むアミノ酸配列を言う。したがって、特定の実施形態において、本発明は、配列番号1のアミノ酸456から712にわたる配列またはその抗原結合断片を含む自己抗原マーカーを提供する。BRAF触媒ドメインの抗原結合断片は、RA特異的自己抗体を結合する抗原の能力を保持している、BRAF触媒ドメインの任意の断片である。
【0061】
本出願人らが用いたInvitrogenヒトタンパク質マイクロアレイにおいて、BRAF触媒ドメインは、配列番号1のアミノ酸416から766にわたるアミノ酸配列(すなわち、セリン−スレオニンキナーゼ触媒ドメインを包含するBRAFタンパク質のアミノ酸配列)を含み、この配列は、配列番号2において示されているように、599位のバリン残基(V)がグルタミン酸残基(E)により置換されている。ヒトの癌においてしばしば見られるBRAFのV599E突然変異は、野生型BRAFと比較したキナーゼ活性の上昇に関連することが実証されている(H.Daviesら、Nature、2002、417:949〜954;M.H.Andersenら、Cancer Res.、2004、64:5456〜5460)。
【0062】
【表2】
【0063】
したがって、特定の実施形態において、本発明は、配列番号2のアミノ酸416から766にわたる配列またはその抗原結合断片を含む自己抗原マーカーを提供する。
【0064】
本発明はまた、BRAF触媒ドメインの変異体またはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーを包含する。適切な変異体には置換変異体が含まれ、この置換変異体は、天然の状態で保存的であり、かつ、イソロイシンもしくはバリン残基によるロイシン残基の置換、グルタミン酸残基によるアスパラギン酸残基の置換、またはセリン残基によるスレオニン残基の置換などの、天然に生じるポリペプチドで類似の構造的および/または化学的特性を有する別のアミノ酸による、1つまたは2つ以上のアミノ酸の置換により生じるものである。他の適切な変異体には、1つまたは2つ以上のアミノ酸の挿入または欠失により生じる、挿入変異体または欠失変異体が含まれる。適切な変異体は、天然に生じるポリペプチドの抗原結合活性を保持しているものである。それらは、単純な抗体結合アッセイにより容易に同定され得る。
【0065】
PAD4
PAD4(ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4)は、アルギニン残基をシトルリンに変換するCA2+依存性酵素である。PAD4遺伝子におけるRA関連の突然変異は様々な個体群において同定されており(A.Suzukiら、Nat.Genet.、2003、34:395〜402;T.Iwamotoら、Rheumatology、2006、45:804〜807;およびY.H.Leeら、Rheumatol.Int.、2007、27:827〜233)、また、RA患者はシトルリン含有タンパク質を認識する自己抗体を産生するため、PAD4は、RA疾患の発病および進行の原因となると広く考えられている。PAD4が一部のRA患者において立体構造依存性の自己抗原であることが既に示されている(Y.Takizawaら、Scand.J.Rheumatol.、2005、3:212〜215)。
【0066】
ヒトにおいて、PAD4タンパク質は、663個のアミノ酸残基(GenBank登録番号:NP_036519.1)を含み、配列番号3において定義される配列を有する。
【0067】
【表3】
【0068】
既に上述したように、本発明は、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーと組み合わせてRAの診断に用いることができる、PAD4またはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーを提供する。本発明の関連において、「PAD4」という用語は、天然に生じるPAD4タンパク質に相同なアミノ酸配列を言う。PAD4タンパク質は、任意の適切な哺乳動物由来のものであり得る。しかし、ヒト患者から得られる生物学的試料が試験される実施形態において、PAD4タンパク質は好ましくはヒト由来のものである。したがって、特定の実施形態において、本発明は、配列番号3により定義されるアミノ酸配列、その抗体結合断片、またはその変異体を含む、自己抗原マーカーを提供する。
【0069】
自己抗原マーカーの調製
本発明の自己抗原マーカーは、化学的合成および組換え方法を含む任意の適切な方法によって調製することができる。
【0070】
本発明のバイオマーカーは通常、十分に短いため、標準的な方法を用いる化学的合成が実行可能である。R.B.Merrifield(J.Am.Chem.Soc.1963、85:2149〜2154)により最初に記載された固相ペプチド合成は、既知の配列のペプチドおよび小ペプチド分子を合成するための迅速で容易なアプローチである。このような固相技術の資料は、例えば、「Solid Phase Peptide Synthesis」(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Methods in Enzymology、G.B.Fields(編)、1997、Academic Press:San Diego、CA)において見ることができる。これらの合成手順のほとんどは、成長中のペプチド鎖への、1つまたは複数のアミノ酸残基または適切に保護されたアミノ酸残基の連続的な付加を伴う。例えば、第1のアミノ酸のカルボキシル基は、不安定な結合を介して固相に付着しており、事前に化学的に保護されて自己縮合を避けるようになっているアミノ基を有する第2のアミノ酸と反応する。結合した後、アミノ基は脱保護され、次のアミノ酸とプロセスが反復される。所望のペプチドが組み立てられると、それは固相から切断され、沈殿され、得られた遊離ペプチドは所望により分析および/または精製され得る。例えば「The Proteins」(Vol.II、第3版、H.Neurathら(編)、1976、Academic Press:New York、NY、105〜237ページ)に記載されているような溶解方法もまた、本発明のバイオマーカーを合成するために用いることができる。
【0071】
あるいは、本明細書において提供される自己抗原マーカーは、組換えDNA法によって産生することができる。これらの方法は通常、所望のタンパク質をコードする遺伝子の単離、適切なベクターへの遺伝子の組み込み、および細胞培養系における大量発現を含む。本発明のポリペプチドの配列をコードするDNAは十分に短いため、当技術分野において知られている方法を用いて容易に合成的に調製される(例えば、M.P.Edgeら、Nature、1981、292:756〜762を参照されたい)。
【0072】
合成した後、所望のペプチドをコードするDNAは、プラスミド、ファージ、ウイルス粒子、または、ベクターを含む他の核酸分子もしくは媒体を含む核酸分子であり得る、組換え発現ベクター内に挿入され、前記核酸分子は、適切な宿主細胞内に導入されると、目的のコード配列の発現を指示するための必要な遺伝的要素を含むものである。当技術分野において周知の標準的な技術を用いて、発現ベクター内に核酸分子を挿入することができる。挿入により、コード配列が、必要な調節配列に作動可能に連結される。
【0073】
タンパク質の産生において用いるための宿主細胞は周知であり、容易に入手可能である。宿主細胞の例には、Escherichia coli、Bacillus subtilis、Salmonella typhimuriumの弱毒株などの細菌細胞、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces株、Candida、または異種タンパク質を発現し得る任意の酵母株などの酵母細胞、Spodoptera frugiperdaなどの昆虫細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、サルCOS細胞、およびマウス3T3細胞などのヒト以外の哺乳動物組織培養細胞、ならびにHeLa細胞、HL−60細胞、腎293細胞、および表皮S431細胞などのヒト組織培養細胞が含まれる。
【0074】
周知の発現系においてポリペプチドを産生するためのいくつかの発現ベクターが市販されている。例えば、プラスミドpSE420(Invitrogen、San Diego、CAから入手可能)およびpBR322(New England Biolabs、Beverly、MAから入手可能)を、E.coliにおける本発明のペプチドの産生に用いることができる。同様に、プラスミドpYES2(Invitrogen)を、酵母のS.cerevisiae株におけるペプチドの産生に用いることができる。バキュロウイルス発現系のための市販されているMacBacR(商標)キット(Invitrogen)またはPharMingen(San Diego、CA)から入手可能なBaculoGold(商標)トランスフェクションキットを、昆虫細胞における産生に用いることができ、一方、Invitrogenから市販されているプラスミドpcDNA I、pcDNA3、およびpRc/RSVを、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物細胞における本発明のペプチドの産生に用いることができる。
【0075】
他の発現ベクターおよび発現系を、当業者に周知の方法を用いて得るかまたは生成することができる。プロモーターおよびポリアデニル化シグナルなどの必須の制御配列、好ましくはエンハンサーを含有する発現系は、様々な宿主に対して容易に利用可能である(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、1989、Cold Spring Harbor Press:Cold Spring、NY;およびR.Kaufman、Methods in Enzymology、1990、185:537〜566を参照されたい)。
【0076】
所望のタンパク質をコードするDNAを含む発現ベクターを用いて、適合性のある宿主細胞を形質転換する。宿主細胞はその後、所望のタンパク質の発現を促進する条件下で培養および維持される。そのようにして産生されたタンパク質は、培地から直接的に、または細胞の溶解により、回収および単離される。次にそれを、核磁気共鳴(NMR)およびX線結晶構造解析などの様々な方法により特徴付けることができる。
【0077】
当業者に理解されているように、本発明の自己抗原マーカーは融合タンパク質(すなわち、抗体結合部分、例えばBRAF触媒ドメインがポリペプチド体に結合している分子)として産生され得る。このようなポリペプチド体は、得られる融合タンパク質に、多くの有利な特性のいずれかを付与するために選択され得る。例えば、ポリペプチド体は、組換え融合タンパク質の発現を増大させるために選択され得る。その代わりに、またはそれに加えて、ポリペプチド体は、例えばアフィニティー精製におけるリガンドとして作用することにより、融合タンパク質の精製を容易にし得る。タンパク質分解の切断部位を組換えタンパク質に付加し、それにより、精製の後に所望の配列をポリペプチド体から最終的に分離することができる。ポリペプチド体はまた、安定性が目的である場合、融合タンパク質に向上した安定性を付与するために選択され得る。適切なポリペプチド体の例には、例えば、得られた融合タンパク質をニッケルキレートカラム上で容易に精製することを可能にするポリヒスチジンタグが含まれる。グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースB結合タンパク質、またはプロテインAは、市販されている融合発現ベクターを用いてBRAF触媒ドメイン(またはPAD4)に融合され得る適切なポリペプチド体の他の例である。
【0078】
あるいは、本発明の自己抗原マーカーは、(例えばInvitrogenから)市販されているBRAF触媒ドメイン、またはPAD4を用いて調製され得る。
【0079】
特定の実施形態において、本発明の自己抗原マーカーは、固体の担体または支持体(例えば、ビーズまたはアレイ)上に固定化して提供される。固体表面上にポリペプチド分子を固定化するための方法は、当技術分野において知られている。とりわけ、本発明は、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーと、RAの少なくとも1つの他のバイオマーカーとを表面に固定化された状態で含む、RAの診断のためのアレイを提供する。特定の実施形態において、RAの少なくとも1つの他のバイオマーカーは、PAD4またはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーである。その代わりに、またはそれに加えて、アレイはさらに、対象から得られる生物学的試料における抗核抗体および/または抗CCP抗体の存在の検出を可能にするバイオマーカーを表面上に固定化された状態で含み得る。「RAの診断のためのアレイ」および「RAを診断するためのアレイ」という用語は、本明細書においてほぼ同じ意味で用いられる。それらは、より具体的には、生物学的試料におけるRA特異的自己抗体の検出のためのアレイを言う。
【0080】
II− 診断方法
本発明の自己抗原マーカーは、対象から得られる生物学的試料において、RAの指標となる自己抗体の存在を検出するために用いることができる。
【0081】
したがって、本発明は、対象におけるRAを診断するための方法を提供する。このような方法は、対象から得られる生物学的試料を、本発明の自己抗原マーカーと、自己抗原マーカーと生物学的試料内に存在する自己抗体との間での抗原抗体複合体の形成を可能にする時間および条件下で接触させることと、形成された任意の抗原抗体複合体の存在または不存在を検出することとを含み、抗原抗体複合体の存在は、対象におけるRAの指標となる。
【0082】
とりわけ、本発明は、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーを用いて生物学的試料における抗BRAF自己抗体の存在を検出することにより対象におけるRAを診断するための方法を提供する。このような方法はさらに、PAD4またはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーを用いて生物学的試料における抗PAD4自己抗体の存在を検出することを含み得る。
【0083】
生物学的試料
本発明の診断方法は、1つまたは複数の本発明のバイオマーカーをアッセイすることを可能にする、任意のタイプの生物学的試料の研究に適用され得る。適切な生物学的試料の例には、限定はしないが、尿、全血、血清、血漿、唾液、および滑液が含まれる。本発明の実施において用いられる生物学的試料は、対象から回収された新鮮なもしくは凍結された試料、または診断、治療、および/もしくは転帰の履歴が知られている保存された試料であり得る。生物学的試料は、例えば、対象からの血液の採取または細針吸引もしくは針生検の使用による、任意の非侵襲的手段により回収することができる。
【0084】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、試料の処理をすることなく、または限られた処理と共に、生物学的試料自体に対して実施される。
【0085】
しかし、あるいは、本発明の方法は、生物学的試料から調製されたタンパク質抽出物に対して実施され得る。この場合、タンパク質抽出物は、好ましくは、全タンパク質含有物を含む。タンパク質抽出の方法は、当技術分野において周知である(例えば、「Protein Methods」、D.M.Bollagら、第2版、1996、Wiley−Liss;「Protein Purification Methods:A Practical Approach」、E.L.HarrisおよびS.Angal(編)、1989;「Protein Purification Techniques:A Practical Approach」、S.Roe、第2版、2001、Oxford University Press;「Principles and Reactions of Protein Extraction,Purification,and Characterization」、H.Ahmed、2005、CRC Press:Boca Raton、FLを参照されたい)。様々なキットを、体液および組織からタンパク質を抽出するために用いることができる。このようなキットは、例えばBioRad Laboratories(Hercules、CA)、BD Biosciences Clontech(Mountain View、CA)、Chemicon International,Inc.(Temecula、CA)、Calbiochem(San Diego、CA)、Pierce Biotechnology(Rockford、IL)、およびInvitrogen Corp.(Carlsbad、CA)から市販されている。その後のプロトコルを非常に詳細に記載しているユーザーガイドが、通常はこれらのキットの全てに含まれる。感度、処理時間、および経費はキットごとに異なり得る。当業者であれば、特定の状況に最も適したキット(1つまたは複数)を容易に選択することができる。
【0086】
抗原抗体複合体の検出
本発明の診断方法は通常、自己抗原マーカーと生物学的試料内に存在するRA特異的自己抗体との間で形成される複合体の検出を伴う。本発明の実施において、このような抗原抗体複合体の検出は、任意の適切な方法によって行うことができる(例えば、E.HarlowおよびA.Lane、「Antibodies:A Laboratories Manual」、1988、Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor、NYを参照されたい)。
【0087】
例えば、抗原抗体複合体の検出は、免疫アッセイを用いて行うことができる。放射免疫アッセイ、酵素免疫アッセイ(EIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、および免疫蛍光免疫沈降を含む、広範な免疫アッセイ技術が利用可能である。免疫アッセイは当技術分野において周知である。このようなアッセイを実施するための方法、ならびに実用上の用途および手順は、テキストブックに要約されている。このようなテキストブックの例には、P.Tijssen,In:Practice and theory of enzyme immunoassays、R.H.Burdonおよびv.P.H.Knippenberg編、Elsevier、Amsterdam(1990)、221〜278ページ、ならびに、免疫学的検出方法を記載している、Methods in Enzymology、S.P.Colowickら編、Academic Pressの様々な巻、とりわけ第70、73、74、84、92、および121巻が含まれる。免疫アッセイは、競合的または非競合的であってよい。
【0088】
例えば、サンドイッチアッセイ技術の多くの変形のいずれかを用いて免疫アッセイを行うことができる。簡潔に述べると、本発明に従ったRA特異的自己抗体の検出に適用される典型的なサンドイッチアッセイにおいて、標識されていない自己抗原マーカーは固体基質上に固定化されており、試験される試料を、結合した自己抗原マーカーと、抗原抗体複合体の形成を可能にする時間および条件下で接触させる。インキュベーションの後、検出可能な部分構造で標識された抗体と、試験される種から得られる抗体(例えば、ヒト対象では抗ヒトIgG)を特異的に認識する抗体とを添加し、任意の抗原結合自己抗体と標識抗体との間の三重複合体の形成を可能にする条件下でインキュベートする。任意の結合していない材料を洗浄して取り除き、試料内の任意のRA特異的自己抗体の存在を、検出可能な部分構造から直接的にまたは間接的に生じたシグナルの観察によって決定する。このアッセイの変形には、固定化された自己抗原マーカーに生物学的試料および標識抗体の両方が同時に添加されるアッセイが含まれる。
【0089】
自己抗原マーカーは、固体の担体または支持体の表面に共有結合するかまたは受動的に結合することにより固定化され得る。適切な担体または支持体の材料の例には、限定はしないが、アガロース、セルロース、ニトロセルロース、デキストラン、セファデックス、セファロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、はんれい岩、フィルターペーパー、マグネタイト、イオン交換樹脂、ガラス、ポリアミンメチルビニルエーテルマレイン酸コポリマー、アミノ酸コポリマー、エチレンマレイン酸コポリマー、ナイロン、シルクなどが含まれる。固体の担体または支持体の表面上への自己抗原マーカーの固定化は、当技術分野において周知の方法を用いる、架橋、共有結合、または物理的吸着を伴い得る。固体の担体または支持体は、ビーズ、粒子、マイクロプレートウェル、アレイ、キュベット、管、膜の形態、または免疫アッセイを行うために適した任意の他の形状であり得る。特定の実施形態において、固体の担体または支持体への自己抗原マーカーの固定化には、当技術分野において周知のウェスタンブロッティング(または免疫ブロット)と呼ばれるプロセスにおける、ゲル電気泳動とその後に行われる膜(典型的には、ニトロセルロースまたはPVDF)への転写が含まれる。
【0090】
第2の抗体(すなわち、上記のサンドイッチアッセイにおいて添加される抗体)は、任意の適切な検出可能な部分構造で標識され得、前記部分構造はすなわち、その化学的性質により、三重複合体の検出、結果的には自己抗原自己抗体複合体の検出を可能にする、分析的に同定可能なシグナルをもたらす、任意の構成要素である。
【0091】
検出は、定性的または定量的であり得る。抗体などの生物学的分子を標識するための方法は、当技術分野において周知である(例えば、「Affinity Techniques.Enzyme Purification:Part B」、Methods in Enzymol.、1974、第34巻、W.B.JakobyおよびM.Wilneck(編)、Academic Press:New York、NY;ならびにM.WilchekおよびE.A.Bayer、Anal.Biochem.、1988、171:1〜32を参照されたい)。
【0092】
免疫アッセイにおいて最も一般的に用いられる検出可能な部分構造は、酵素およびフルオロフォアである。酵素免疫アッセイ(EIA)の場合、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼなどの酵素が、通常はグルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩により、第2の抗体に結合する。特異的な酵素と共に用いられる基質は通常、対応する酵素の加水分解の際の、検出可能なコロンの変化の発生について選択される。免疫蛍光の場合、第2の抗体は、その結合能を変えることなく、蛍光部分に化学的に結合する。蛍光標識された抗体が抗原抗体複合体に結合し、任意の結合していない材料が除去された後、蛍光部分により生じる蛍光シグナルが検出され、場合により定量される。あるいは、第2の抗体は、放射性同位体、化学発光部分、または生物発光部分で標識され得る。
【0093】
RAの診断
本発明の方法において、抗原抗体複合体の検出は、試験される生物学的試料におけるRA特異的自己抗体の存在の指標となり、したがって、生物学的試料を得た対象におけるRAの指標となる。したがって、本発明の方法は、患者におけるRAの診断のために用いることができる。とりわけ、本発明の方法は、RAを有することが疑われる対象を試験するために用いることができる。さらに、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーを用いる本発明の方法は、CCP陰性の患者におけるRAを診断するために用いることができる。実際、本出願人らは、BRAF触媒ドメインについて陽性のRA患者の33%がCCP陰性であったことを示している。
【0094】
当業者には、RAの診断が、本明細書において提供される方法によってもたらされる結果のみに応じて行われ得ることが理解されよう。あるいは、医者は、RAを診断するための既存の方法において用いられる他の臨床的または病理学的パラメーターも考慮し得る。したがって、本発明の方法を用いて得られる結果を、RAの診断のために行われる他の試験、アッセイ、または手順の結果と比較し、かつ/または組み合わせることができる。このような比較および/または組み合わせは、より精密な診断を提供するために役立ち得る。
【0095】
例えば、本発明のRA診断方法は、ARA基準(すなわち、F.C.Arnettら、Arthritis Rheum.、1988、31:315〜324に記載されている、RAの分類のためのAmerican College of Rheumatology 1987改定基準)と組み合わせて用いることができる。ARA基準に従うと、患者が、1)少なくとも1時間にわたる朝のこわばり、2)3つ以上の関節領域の関節炎、3)手の関節の関節炎、4)対称性関節炎、5)リウマチ結節、6)血清リウマチ因子(RF)、および7)X線画像の変化という7個の基準の少なくとも4個を示す場合、患者はRAを有していることになり、基準1〜4は少なくとも6ヶ月にわたり存在していなくてはならない。
【0096】
その代わりに、またはそれに加えて、本発明のRA診断方法の結果は、他のRAバイオマーカーを用いる1つまたは複数のアッセイの結果と組み合わせて用いることができる。したがって、特定の実施形態において、RAの診断は、本発明の方法の結果および異なるRAバイオマーカーを用いる1つまたは複数のさらなるアッセイの結果に基づき得る。例えば、RAバイオマーカーのパネルは、例えばチップまたはビーズに基づいたアレイ技術を用いて、個別にまたは同時に試験することができる。
【0097】
適切なRAバイオマーカーの例には、限定はしないが、CCP、C反応性タンパク質、血清アミロイドA、インターロイキン6(IL6)、S100タンパク質、オステオポンチン、リウマチ因子、マトリクスメタロプロテアーゼ1(MMP−1)、マトリクスメタロプロテアーゼ3(MMP−3)、ヒアルロン酸、sCD14、血管新生マーカー(血管内皮成長因子またはVEGFなど)、および骨、軟骨、または滑膜の代謝産物(ピリジノリンまたはそのグリコシル化形態、デオキシピリジノリン、架橋テロペプチド、コラーゲンネオエピトープ、CS846、軟骨オリゴマー基質タンパク質、軟骨中間層タンパク質、マトリリン、コンドロモジュラチン、オステオカルシンなど)が含まれる。
【0098】
III− キット
別の態様において、本発明は、本発明に従った診断方法を実施するために有用な材料を含むキットを提供する。本明細書において提供される診断手順は、診断研究所、実験研究所、または開業医により実施され得る。本発明は、これらの様々な状況において用いることができるキットを提供する。
【0099】
本発明に従って生物学的試料におけるRA特異的自己抗体を検出するため、および/または対象におけるRAを診断するための材料および試薬を、キット内で一緒に組み合わせることができる。本発明のそれぞれのキットは、本発明の少なくとも1つの自己抗原マーカーを、好ましくは生物学的試料における自己抗体の検出に適した量で含む。したがって、特定の実施形態において、本発明のキットは、BRAF触媒ドメインまたはその抗原結合断片を含む自己抗原マーカーを含む。他の実施形態において、本発明のキットは、BRAF触媒ドメインまたはその抗原結合断片を含む第1の自己抗原と、PAD4またはその抗原結合断片を含む第2の自己抗原とを含む。自己抗原マーカー(1つまたは複数)は、基質表面(例えば、ビーズ、アレイなど)上に固定化されていてもよく、または固定化していなくてもよい。例えば、本発明のキットは、本明細書において提供される、RAを診断するためのアレイを含み得る。あるいは、基質表面(例えば膜)が、(例えば、ゲル電気泳動および膜への転写を介して)自己抗原マーカーを固定化するために、本発明のキット内に含まれ得る。
【0100】
さらに、本発明のキットは、通常、キット内に含まれる自己抗原マーカーと生物学的試料内に存在する自己抗体との間で形成される抗原抗体複合体の検出のための少なくとも1つの試薬も含む。このような試薬は、例えば、上記の、試験される種から得られる抗体(例えば、ヒト対象では抗ヒトIgG)を特異的に認識する標識抗体であり得る。
【0101】
手順に応じて、キットはさらに、抽出用の緩衝液および/または試薬、ウェスタンブロッティング用の緩衝液および/または試薬、免疫検出用の緩衝液および/または試薬、標識用の緩衝液および/または試薬、ならびに検出手段の、1つまたは複数を含み得る。手順の様々なステップを行うためのこれらの緩衝液および試薬を用いるためのプロトコルは、キットに含まれ得る。
【0102】
本発明のキットに含まれる様々な試薬は、固体(例えば、凍結乾燥されたもの)または液体の形態で供給され得る。本発明のキットは、場合により、それぞれの個別の緩衝液および/または試薬のための様々な容器(例えば、バイアル、アンプル、試験管、フラスコ、またはボトル)を含み得る。それぞれの構成要素は通常、そのそれぞれの容器内に等分されるかまたは濃縮形態で提供されるので適している。開示される方法の特定のステップを実施するために適した他の容器もまた提供され得る。キットの個別の容器は好ましくは、市販のために厳重な管理下で維持される。
【0103】
特定の実施形態において、キットは、本発明の方法に従って対象におけるRAを診断するためにその構成要素を用いるための指示を含む。本発明の方法に従ってキットを用いるための指示は、対象から得られる生物学的試料を処理するため、および/または試験を行うための指示、または結果を解釈するための指示を含み得る。キットはまた、医薬品または生物学的製剤の製造、使用、または販売を管理する行政機関により規定されている形式の注意事項を含み得る。
【0104】
IV− RAのための新たな治療薬の開発
BRAF触媒ドメインは、RAの治療またはRAの進行の予防に潜在的に有用な化合物または物質を同定するための魅力的な標的であり得る。例えば、BRAF触媒ドメインに対する中和活性または阻害活性を有する化合物または物質を同定するためのスクリーニングが開発され得る。
【0105】
このようなスクリーニングは、生体液、または細胞などの任意の適切な生物系において実施することができる。通常、スクリーニングは、標準的な組織培養器具において成長することができる細胞を用いて行われる。適切な細胞には、任意の認識されている供給源に由来する、全ての適切な正常細胞および形質転換細胞が含まれる。好ましくは、細胞は哺乳動物(ヒト、または齧歯動物もしくは猿などの動物)由来のものである。より具体的には、細胞はヒト由来のものである。哺乳動物細胞は、任意の器官または組織由来のものであり得(例えば、骨、軟骨、または滑液)、また、BRAFを発現する細胞である限りにおいて任意の細胞型のものであり得る。本発明の方法の実施において用いられる細胞は、初代細胞、二次細胞、または不死化細胞(例えば、樹立細胞系)であり得る。それらは、当業者に周知の技術により調製することができる(例えば、細胞は、骨、軟骨、もしくは滑液から単離することができる)か、または免疫学的微生物学的商業リソースから購入することができる(例えば、American Type Culture Collection、Manassas、VAから)。その代わりに、またはそれに加えて、細胞は、例えば目的の遺伝子を含むように、遺伝子操作することができる。最初の薬剤スクリーニング(すなわち、スクリーニングの第1回目(1つまたは複数))のために開発されたアッセイが、好ましくは、市販されており通常は比較的成長が容易な樹立細胞系を用いて行われるが、一方、薬剤開発のプロセスにおいてその後に用いられるアッセイが、好ましくは、入手、維持、および/または成長が通常は不死化細胞よりも困難であるがインビボの状況ではより良好な実験モデルとなる初代細胞および二次細胞を用いて行われる。スクリーニング方法は、マルチウェルアッセイプレートの複数のウェルに含まれる細胞を用いて行うことができる。
【0106】
当業者には理解されるように、任意の種類の化合物または作用物質をスクリーニングすることができる。候補化合物は合成または天然の化合物であり得、それは単一の分子、または異なる分子の混合物もしくは複合体であり得る。候補化合物は個別にスクリーニングすることができる。あるいは、コレクションまたはライブラリーに含まれる化合物は同時にスクリーニングすることができる。
【0107】
細菌、真菌、植物、および動物の抽出物の形態の天然化合物のコレクションは、例えば、Pan Laboratories(Bothell、WA)またはMycoSearch(Durham、NC)から入手可能である。合成化合物のライブラリーは、例えばComgenex(Princeton、NJ)、Brandon Associates(Merrimack、NH)、Microsource(New Milford、CT)、およびAldrich(Milwaukee、WI)から市販されている。候補化合物のライブラリーもまた、例えばMerck、Glaxo Welcome、Bristol−Meyers−Squibb、Novartis、Monsanto/Searle、およびPharmacia UpJohnを含む化学系大企業により開発されており、市販されている。さらに、天然物のコレクション、合成により作成されたライブラリーおよび化合物は、従来の化学的、物理的、および生化学的手段を介して容易に修飾される。化学的ライブラリーは、従来の自動合成、PCR、クローニング、または専売的な合成方法により比較的容易に調製される(例えば、S.H.DeWittら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.1993、90:6909〜6913;R.N.Zuckermannら、J.Med.Chem.1994、37:2678〜2685;Carellら、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1994、33:2059〜2060;P.L.Myers、Curr.Opin.Biotechnol.1997、8:701〜707を参照されたい)。
【0108】
BRAF触媒ドメインを標的として用いると、RAの治療のための有用な作用物質は、広範なクラスの化学物質のいずれかにおいて見出すことができる。
【0109】
抗BRAF触媒ドメイン抗体をRAの治療のための治療ツールとして開発することも想定される。抗TNFアルファ抗体および抗CD20抗体が、RAの治療において現在用いられている。抗CD20抗体で治療される患者においては高い臨床応答が観察され、これは、B細胞の枯渇の結果、ひいてはB細胞抗体の枯渇の結果生じる。しかし、全てのタイプのB細胞抗体の無差別的な枯渇は、免疫系を潜在的に弱め得る。より標的化された作用という利点をもたらす、抗BRAF触媒ドメイン抗体は、抗CD20抗体の注射に関する制限および潜在的な問題を解決し得る。
【実施例】
【0110】
以下の実施例は、本発明の製造および実施の好ましい様式のいくつかを記載するものである。しかし、実施例は例示的な目的のものに過ぎず、本発明の範囲を制限することを意味するものではないことを理解されたい。さらに、実施例における記載が過去形で表されていない限り、明細書の以降の部分などのテキストは、実験が実際に行われたことまたはデータが実際に得られたことを示唆することを意図したものではない。
【0111】
以下に示す結果のほとんどは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる科学論文において、本出願人らにより報告されている(I.Augerら、「New Autoantigens in Rheumatoid Arthritis:Screening 8268 Protein Arrays with RA Patient’s Sera」、Annals Rheumatic Disease、2009、68(4):591〜594)。
【0112】
序論
HLA−DR遺伝子および自己抗体という2つの要素が、RAの発症に重要である。RAは、対立遺伝子多型を示すHLA−DR遺伝子の制御下にある。HLA−DR対立遺伝子は、RAの発症に対して感受性を有し得るか(例えば、HLA−DRB1*0401、*0404、*0101、*0102、*1001)、中立であり得るか(例えば、HLA−DR15)、または防御的であり得る(例えば、HLA−DRB1*07、*08、*0402)(P.K.Gregersenら、Arthritis and Rheumatism、1987、30:1205〜1213;D.Revironら、Arthritis and Rheumatism、2001、44:535〜540)。RAを発症するリスクは、個体が発現する2つのHLA−DR対立遺伝子によって制御されており、HLA−DRについて個体を遺伝子型決定することにより評価することができる(W.Thomsonら、Arthritis Rheum.、1999、42:757〜762)。
【0113】
本出願人らは、1992年から、フランス、マルセイユのLa Conception Hospitalのリウマチ病棟における全てのRA患者についてHLA−DRの遺伝子型決定を行っている。1000人のRA患者を500人の対照と比較することにより、本出願人らは、個体群における72個の最も一般的な遺伝子型のそれぞれについて、RAを発症する相対的なリスクを示す、HLA−DR遺伝子型のリスク表を得ている。HLA−DRB1*0401とHLA−DRB1*0404との間の並はずれた相乗効果、およびHLA−DRB1*07により付与される非常に強力な保護が確認された。これらの実験によりまた、DR7/DR9遺伝子型が、感受性のある対立遺伝子を全く含まないにも関わらず、RAを発症する非常に高いリスクを付与することが、意外にも実証された。
【0114】
RAは、自己抗体介在性の疾患である。RAにおける最も重要な自己抗体は、フィブリン、フィラグリン、およびビメンチンなどのタンパク質上のシトルリン残基に対するものである。本出願人らは最近、HLA−DRB1*0404がRA患者の血清における抗シトルリン化フィブリノゲンにも関連することを観察した。実際、HLA−DRB1*0404を発現するRA患者の83%が、シトルリン化フィブリノゲンに対する抗体を有することが明らかになった(I.Augerら、Arthritis and Rheumatism、2005、52:3424〜3432)。しかし、カルパスタチンなどの非シトルリン化タンパク質もまた、RA患者から得られる自己抗体により標的化される。HLA−DR対立遺伝子についてホモ接合性のRA患者の血清で滑膜タンパク質をスクリーニングすることによって、本出願人らは、HLA−DRB1*0404についてホモ接合型のRA患者の血清が、カルパイン(軟骨の破壊に関与するプロテアーゼ)の天然阻害剤であるカルパスタチンとして同定される100kDの滑膜タンパク質を認識することを観察した。実際、HLA−DRB1*0404を発現するRA患者の50%が、滑膜カルパスタチンに対する自己抗体を有する(I.Augerら、Annals of Rheumatic Diseases、2007、66:1588〜1593)。本出願人らによって得られたデータは、HLA−DRB1*0404が、RAにおける多くの自己抗体応答との自らの関連を可能にする固有の機能を有するという考えを支持するものである。
【0115】
以下に示す研究において、本出願人らは、HLA−DRB1*0401/0404、*0401/0401、*0404/0404、*0404/07、*0401/07、*07/07、*09/07という特定のHLA−DR遺伝子型を有するRA患者から得られる血清を使用して、8000を超えるヒトタンパク質を含むタンパク質アレイをスクリーニングし、それにより特異的な自己抗体のパターンを同定した。
【0116】
患者および方法
タンパク質マイクロアレイ分析のためのRA患者の血清
フランス、マルセイユのLa Conception Hospitalのリウマチ棟の19人のRA患者を、この研究のために選択した。全てのRA患者は、American College of Rheumatology 1987改定基準(F.C.Arnettら、Arthritis Rheum.、1988、31:315〜324)を満たしていた。HLA−DRのオリゴ型決定を、それぞれの患者について行った(O.Ollerupら、Tissue Antigens、1992、39:225〜235)。患者のうち3人は、HLA−DRB1*0401およびHLA−DRB1*0404の両方を発現することが明らかになり、4人の患者はHLA−DRB1*0401についてホモ接合型であり、3人の患者はHLA−DRB1*0404についてホモ接合型であり、2人の患者はHLA−DRB1*0401およびHLA−DR7の両方を発現し、2人の患者はHLA−DRB1*0404およびHLA−DR7の両方を発現し、1人の患者はHLA−DR7およびHLA−DR13を発現し、2人の患者はHLA−DR7についてホモ接合型であり、2人の患者は予想外のハイリスクな遺伝子型HLA−DR7/DR9を発現した。
【0117】
タンパク質マイクロアレイ分析のための対照の血清
対象群は、マルセイユのLa Conception Hospitalのリウマチ棟の、7人の脊椎関節症(AS)患者および2人の全身性エリテマトーデス(SLE)患者、ならびに、フランス、パリのHospital Cochin、Hospital Saint Antoine、およびHospital Saint Louis、フランス、リールのHospital Claude Huriez、およびマルセイユのHospital La Conceptionとの協力で作られた全国的なコホートの、4人の全身性硬化(SSC)患者からなるものであった。10人の健康な対照は、自己免疫的な病状を排除するための健康評価の後に、研究所スタッフのボランティアおよびボランティアの骨髄ドナーから採用した。全ての参加者からインフォームドコンセントを得た。
【0118】
ヒトタンパク質マイクロアレイ
Invitrogenから市販されている「ProtoArrayヒトタンパク質マイクロアレイ」を本研究において用いた。このマイクロアレイは8268個のヒトタンパク質を含むものである(G.A.Michaudら、「Biomarker identification using Protoarray high density protein microarrays:Profiling autoantibodies in disease」、Invitrogen Note Information;M.E.Hudsonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、2007、44:17494〜17499)。
【0119】
ProtoArrayヒトタンパク質マイクロアレイ上のタンパク質の2%がプロテアーゼ/ペプチダーゼであり、2%が分泌タンパク質であり、3%が転写因子であり、3%が細胞死タンパク質であり、5%がプロテインキナーゼであり、11%が核タンパク質であり、17%が膜タンパク質であり、そして31%が代謝タンパク質であった(Invitrogenにより提供されるタンパク質含有量リスト4.0からのデータ)。マイクロアレイ上の全てのタンパク質は(以下に記載される)GST融合タンパク質として発現し、天然の条件下で精製され、ニトロセルロースで被覆したスライドガラス上に2つ組でスポットされた。このヒトタンパク質のコレクションは、ヒトUltimate ORFクローンコレクションに由来するものである(http://orf.invitrogen.comからのデータ)。それぞれのクローンについて、GenBankで配列の確認を行った。ヒトタンパク質コレクションを作成するために用いられたそれぞれのクローンは、Gateway(登録商標)ベクター内にクローニングされたヒトORFであった。それぞれの発現クローンを用いて、目的のタンパク質を、バキュロウイルス発現系を用いてN末端GST融合タンパク質として発現させた。それぞれの発現したタンパク質の分子量を、ウェスタンブロッティングによって決定した。
【0120】
タンパク質アレイ上での血清プロファイリングアッセイ
アレイスライドを1%BSA/PBSTでブロックし、次に、(tween20を含むリン酸緩衝生理食塩水内の)血清試料の存在下で、4℃で1時間にわたりインキュベートした。アレイスライドを次に、希釈した(1:500)ヒト血清を用いて4℃で1.5時間にわたりプローブした。PBSTで洗浄した後、Alexa Fluor(登録商標)647染料に結合した1μg/mLの抗ヒトIgGをスライドに添加した。スライドを次に洗浄し、乾燥させた(Partnership、Evry、France)。並行して、別のスライド上で、陰性対照の実験を行った。対照においては、血清の不存在下で緩衝液とインキュベートしたことを除いて、上記と同じ条件下でスライドを処理した。この対照の目的は、データの取得および分析のための基準点を得ることである。
【0121】
データの取得/分析
アレイのスライドを、GenePix(登録商標)4000B蛍光スキャナを用いてスキャンした。データは、GenePix(登録商標)Proソフトウェアを用いて取得し、ProtoArray(商標)Prospector 2.0を用いて処理した。
【0122】
データの分析
マイクロアレイのタンパク質の間の自己抗原を同定するために、それぞれのアレイタンパク質について、Zスコア、CI P値(チェビシェフの不等式の精度値)、およびCVを含む、一連の値を計算した。Zスコアは、全てのタンパク質特性と比較した、アレイ上のタンパク質スポットから得られるシグナルに基づいて計算した。Zスコアは、シグナル使用値から、アレイ上の全てのヒトタンパク質特性から得られるシグナル使用値の平均を引き、全てのヒトタンパク質特性についてのシグナル使用値に対する標準偏差で割ったものである。CI P値は、全ての陰性対照のスポットに対する強度を評価し、観察されたシグナルが陰性対照の分布に由来する可能性を計算する。CI P値が低いほど、シグナルがランダムな事象によるものではない可能性が高い。CVは、2つ組間の類似性を評価する。タンパク質は、Zスコア>3.0、CI P値<0.05、かつCV<0.5である場合、免疫反応性自己抗原として同定された。
【0123】
ELISAおよびウェスタンブロット分析のためのRA患者および対照
これらの実験のために、マルセイユのLa Conception Hospitalのリウマチ病棟の、RA患者および脊椎関節症(AS)患者を選択した。全てのRA患者は、RAについての1987年のAmerican College of Rheumatology基準を満たしていた。研究所スタッフおよびMarseille Blood Transfusion Centerのスタッフからのボランティアが、正常な対照として参加した。それぞれの患者および正常な対照に対して、HLA−DRオリゴ型決定を行った。全ての参加者からインフォームドコンセントを得た。
【0124】
ELISAによる自己抗体の検出
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.4で希釈した、0.1μg/mLの目的のタンパク質(すなわち、マイクロアレイ実験で同定された候補自己抗原マーカー)で、プレートを一晩被覆した。プレートを、5%ミルクを含むPBSでブロックし、次に、PBS内で1:100に希釈した血清の存在下で3時間にわたりインキュベートした。0.1%Tween20で洗浄した後、ペルオキシダーゼに結合した抗ヒトIgG(Sigma、France)をプレートに添加した。光学密度(OD)を405nmで読み取った。目的のタンパク質を含まないプレートのウェルに添加したそれぞれの血清の光学密度を測定することにより、バックグラウンドのODを得た。測定したOD値がバックグラウンドのODの2倍を超えた場合、血清はタンパク質について陽性であると判断された。
【0125】
ウェスタンブロッティングによる自己抗体の検出
タンパク質(すなわち、マイクロアレイ実験において同定された候補自己抗原マーカー)を、10%SDS PAGEゲル上で分離し、PVDF膜に転写した。ブロットを患者または対照の血清の存在下でインキュベートし、その後、ペルオキシダーゼに結合した抗ヒトIgGを添加した。検出は化学発光により行った(Roche Diagnostics、Meylan、France)。
【0126】
結果
RA患者に関する自己抗体パターン
19人のRA患者、ならびに23人の対照(脊椎関節症(AS)から7人、全身性エリテマトーデス(SLE)から2人、および全身性硬化(SSC)から4人、および健康な個体から10人)を用いて、8268個のヒトタンパク質を含むアレイをプローブした。アレイ上のタンパク質に結合した自己抗体の存在を、蛍光標識した抗ヒトIgG抗体によって検出した。免疫反応性自己抗原は、Zスコア>3.0、CI P値<0.05、およびCV<0.5により規定した。
【0127】
図1Aは、この研究において試験されたそれぞれの患者および対照により認識されるタンパク質の数を表す。図1Bおよび以下の表において示されるように、各群の参加者により認識されるタンパク質の数は非常に類似していることが明らかになった。
【0128】
各群の患者および健康な対照により認識されるタンパク質の平均数
【0129】
【表4】
【0130】
19人のRA患者(1から19と番号付けされている)のうち、14人がCCP陽性であり(患者2〜5、7〜9、11、12、14〜17、および19)、5人がCCP陰性であった(患者1、6、10、13、および18)。CCP陽性のRA患者の群により認識されるタンパク質の数は、CCP陰性のRA患者の群により認識されるタンパク質の数に匹敵するものであった(以下の表を参照されたい)。
【0131】
CCP陽性およびCCP陰性のRA患者により認識されるタンパク質の平均数
【0132】
【表5】
【0133】
試験したRA患者のうち、10人がRAに10年未満罹患しており(患者6および8〜16)、9人がRAに10年を超えて罹患していた(患者1〜5、7、および17〜19)。RA患者により認識されるタンパク質の数は、疾患の期間に依存しないことが明らかになった(以下の表を参照されたい)。
【0134】
RAを10年未満または10年を超えて有している患者により認識されるタンパク質の平均数
【0135】
【表6】
【0136】
要約すると、RA患者により認識されるタンパク質の平均数は、様々な対照により認識されるタンパク質の数とは有意には異ならなかった。疾患の期間およびCCP反応性もまた、RA患者により認識されるタンパク質の数に影響しないことが明らかになった。
【0137】
RA患者におけるHLA−DR遺伝子型と関連する自己抗体パターン
疾患を発症するリスクの高さまたは低さに関連するHLA−DR遺伝子型を有するRA患者の血清を試験して、タンパク質アレイ上でのそれらの反応性パターンを比較した。既に上述したように、2つの感受性対立遺伝子を含むHLA−DR遺伝子型は、感受性対立遺伝子を1つだけ含む遺伝子型よりも高いリスクを付与し、感受性対立遺伝子を1つだけ含む遺伝子型はそれ自体、感受性対立遺伝子を含まないDR遺伝子型よりも高いリスクを付与する。HLA−DRB1*0401およびHLA−DRB1*0404の両方を発現する3人の患者、HLA−DRB1*0401についてホモ接合型である4人の患者、HLA−DRB1*0404についてホモ接合型である3人の患者、HLA−DRB1*0401およびHLA−DR7の両方を発現する2人の患者、HLA−DRB1*0404およびHLA−DR7の両方を発現する2人の患者、HLA−DR7およびHLA−DR13を発現する1人の患者、HLA−DR7についてホモ接合型である2人の患者、ならびにHLA−DR7/DR9を発現する2人の患者を試験した。
【0138】
図2および以下の表に示されるように、2個、1個、または0個のRA関連HLA−DR対立遺伝子を発現するRA患者により認識されるタンパク質の数において、差は見られなかった。
【0139】
様々なHLA−DR遺伝子型を有するRA患者により認識されるタンパク質の平均数
【0140】
【表7】
【0141】
RAに関連する特異的抗体の同定
図3は、少なくとも1人のRA患者、少なくとも2人のRA患者、少なくとも3人のRA患者などにより認識される様々なタンパク質の総数を示す。図3ではまた、AS患者の少なくとも20%、SSC患者の少なくとも20%、および健康な個体の少なくとも20%によっても認識される、RA患者により認識されるタンパク質も示される。この図に表される結果により、RA患者の血清における自己抗体によって標的化される多くのタンパク質が、RAに特異的ではないが、対照群から得られる自己抗体とも反応性を有することが実証される。
【0142】
試験される個体の自己抗体により標的化されるタンパク質のうち、3つのタンパク質のみが、RA患者の血清により特異的に認識され、対照群の血清によっては認識されないことが明らかになった(図4)。これらのタンパク質は、PAD4(ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4)、PKCベータ1(プロテインキナーゼCベータ1)、およびPIP4K2C(ホスファチジルイノシトール4ホスフェート5キナーゼII型ガンマ)である。対照の0/23がPAD4について陽性であるのに対し、本研究で試験されたRA患者のうち9/19がPAD4について陽性であることが明らかになった(p=0)。同様に、対照の0/23がPCKベータ1について陽性であるのに対し、RA患者の6/19がPCKベータ1について陽性であることが明らかになった(p=0.014)。最後に、対照の0/23がPIP4K2Cに対して陽性であるのに対し、RA患者の5/19がPIP4K2Cに対して陽性であることが明らかになった(p=0.032)。
【0143】
BRAF触媒ドメイン(v rafマウス肉腫ウイルス癌遺伝子類似体B1触媒ドメイン)は、RAについての他の同定された候補マーカーのうち、最も興味深いタンパク質の1つである。実際、疾患対照の0/13および健康な個体の1/10のみがBRAFについて陽性であるのに対し、このアッセイにおいて試験されたRA患者の9/19がBRAFについて陽性であることが明らかになった(p=0.004、23人の対照に対し19の患者)。
【0144】
自己抗原の有効性の実証
タンパク質アレイの検出の有効性を確認するため、様々なアッセイを用いて同一のタンパク質を試験した。
【0145】
患者および対照における陽性血清の頻度を、精製PAD4およびPIP4K2Cを免疫吸着剤として用いて、ELISAによって決定した。本出願人らが用いた条件下では、ELISAアッセイを用いてPKCベータ1およびBRAF触媒ドメインについての反応性を検出することは不可能であったため、これらの自己抗原マーカー候補の有効性の実証において、代わりにウェスタンブロッティングアッセイを用いた。
【0146】
PAD4。ELISA実験の結果は、AS患者の0%および健康な対照の3%がPAD4について陽性であるのに対し、RA患者の29%がPAD4について陽性であることを示した(図5A)。抗PAD4抗体の産生に対するRA関連HLA−DR対立遺伝子の影響を評価するために、2個(SE+/SE+)、1個(SE+/SE−)、または0個(SE−/SE−)のRA関連HLA−DR対立遺伝子を発現する患者群の間で、PAD4について陽性の血清の頻度を比較した。図5Bに示すように、RA関連HLA−DR対立遺伝子を発現しない患者(SE−/SE−)と少なくとも1つのRA関連HLA−DR対立遺伝子を発現する患者(SE+/SE+およびSE+/SE−)との間で、PAD4について陽性のRA患者のパーセンテージに有意な差はなかった。
【0147】
HLA−DRB1*0401/HLA−DRB1*0404を発現する患者の36%、HLA−DRB1*0401/HLA−DRB1*0401を発現する患者の25%、およびHLA−DRB1*0404/HLA−DRB1*0404を発現する患者の17%がPAD4について陽性であるのに対し、SE+/SE+患者のうち、HLA−DRB1*0401/HLA−DRB1*0401を発現する患者の80%がPAD4について陽性であることが明らかになった。
【0148】
したがって、これらのELISA実験により、PAD4がRAにおける特異的自己抗原であることが確認された。
【0149】
PIP4K2C。ELISAアッセイを用いて、AS患者の18%および健康な対照の10%がPIP4K2Cについて陽性であるのに対し、試験したRA患者の18%がPIP4K2Cについて陽性であることが明らかになった(図6A)。したがって、これらの結果によっては、PIP4K2CはRAにおける特異的自己抗原として有効性を実証されなかった。
【0150】
PIP4K2Cについて陽性の患者のパーセンテージを、2個、1個、または0個のRA関連HLA−DR対立遺伝子を発現するRA患者についても計算した。驚くべきことに、1個または0個のRA関連HLA−DR対立遺伝子を発現するRA患者よりも高いパーセンテージの、2個のRA関連HLA−DR対立遺伝子を発現する患者が、PIP4K2Cについて陽性であることが明らかになった。実際、SE+/SE−患者の5%およびSE−/SE−患者の0%がPIP4PK2Cについて陽性であるのに対し、SE+/SE+患者の40%がPIP4PK2Cについて陽性であることが明らかになった。
【0151】
PKCベータ1。ウェスタンブロッティングにおいて、6人のRA患者のうち2人のみがPKCベータ1について陽性であることが明らかになった。この研究において用いられる条件下で観察された部分的な反応性に基づいては、PKCベータ1はRAにおける特異的自己抗原として有効性を実証され得ない。
【0152】
BRAF触媒ドメイン。ウェスタンブロッティングを用いて、この研究において試験された19人のRA患者の47%がBRAF触媒ドメインについて陽性であることが明らかになったが、一方、17人のAS患者および17人の健康な対照のいずれも反応性を示さなかった(図7A)。これらの結果により、BRAF触媒ドメインはRAにおける特異的自己抗原として確認される。
【0153】
RA患者において、BRAF触媒ドメインについての陽性とHLA−DR遺伝子型との間では関連は検出されなかった(図7B)。
【0154】
考察
既に上述したように、RAを発症するリスクは、個体により発現される2つのHLA−DR対立遺伝子により制御される。HLA−DR対立遺伝子は、RAの発症に対して感受性であり得るか、防御的であり得るか、または中立であり得る。さらに、個体により発現される2つのHLA−DR対立遺伝子は相互作用する。実際、RA患者においてほぼ例外なく見られるHLA−DRB1−0401/0404遺伝子型におけるように、2つの感受性対立遺伝子は協働し得、その結果、RAを発症する非常に高いリスクをもたらす。この相乗効果は依然として説明されておらず、RAの発症機序に対する各対立遺伝子のそれぞれの寄与は理解されていない。過去に、本出願人らは、HLA−DRB1*0401と0404との間の並はずれた相乗効果に焦点を当てており、これらの2つの対立遺伝子について固有の特性を記載した。HLA−DRB1*0401は、構成的な熱ショックタンパク質hsp73との相互作用を介して並はずれて良好な抗原のプロセシングを可能にする、QKRAAモチーフを含む(I.Augerら、Nature Medicine、1996、3:306〜310;I.Augerら、Arthritis and Rheumatism、2002、46:929〜933;S.Rothら、J.Immunol.、2002、169:3015〜3020)。HLA−DRB1−0404は、並はずれて良好な抗体産生に関連すると考えられる。これは抗シトルリン化フィブリン、抗カルパスタチン、抗CCP抗体にも当てはまり、HLA−DRB1*0404の広いペプチド結合特性にも関連し得る(I.Augerら、Arthritis and Rheumatism、2005、52:3424〜3432;I.Augerら、Annals of Rheumatic Diseases、2007、66:1588〜1593;C.Charpinら、Clin.Exp.Rheumatol.、2008、26:627〜631)。
【0155】
特異的なHLA−DR遺伝子型が特異的な自己抗体の産生パターンに関連していたかを確認するために、本出願人らは、8000を超えるヒトタンパク質を含むアレイを用いて、様々なHLA−DR遺伝子型を発現するRA患者の血清において自己抗体を分析した。本出願人らは、RA患者により認識されるタンパク質の大部分が対照の血清においても見られることを観察した。いずれの特異的な抗体パターンも、特定のHLA−DR遺伝子型と関連しないことが明らかになった。他方で、この研究により、RAの診断において用いることができるRAのタンパク質マーカーが同定された。とりわけ、本出願人らは、BRAF触媒ドメインおよびPAD4という2つの主要なタンパク質を自己抗原マーカーとして同定し、かつ有効性を実証した。
【0156】
他の実施形態
本発明の他の実施形態は、本明細書において開示される発明の明細事項および実施の検討から、当業者に明らかとなろう。明細事項および実施例は例示的なものにすぎないと見なされるべきものであり、本発明の真の範囲は以下の特許請求の範囲により示される。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2008年5月14日に出願された欧州特許出願EP08305167.2に対する優先権を主張するものである。この欧州特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチ(RA)は、世界人口の約1%が罹患している慢性自己免疫疾患である。これは、軟骨および骨の破壊、関節の変形、ならびに可動性の喪失を最終的にもたらし得る、関節の滑膜表層における炎症および細胞増殖を特徴とする。RAは通常、いくつかの関節において同時に問題を生じさせ、それは対称的であることが多い。初期のRAは、手首、手、足首、および足の関節などの小さめの関節に最初に罹患する傾向がある。疾患が進行するにつれて、肩、肘、膝、腰、顎、および首の関節もまた関与してくる可能性がある。関節内または関節周辺の領域のみに罹患する、他の関節の状態とは異なり、RAは、皮膚、血管、心臓、肺、および筋肉を含む体全体にわたる関節外の組織において炎症を生じさせ得る全身性疾患である。
【0003】
RAは、痛み、変形、生活の質の低下、および障害に関連し、これらは次に、正常かつ生産的な生活を送るための患者の能力に影響する。最近の研究により、この疾患の発病の5年後に、およそ3分の1のRA患者がもはや運動することができず、10年以内に患者の半分がかなりの機能障害を有することが示されている(A.Youngら、Rheumatology、2007、46:350〜357)。結果として、RAは社会に対して多大な経済的負担を強いる。また、かなりのデータが、RAが平均寿命の短縮に関連することを示唆している。
【0004】
RAは広く研究されてきているが、この疾患の原因および発症機序は依然として完全には理解されていない。RAのリスクを増大させ得る因子には、個体の性別(女性は男性よりも2から3倍この疾患を発症する可能性が高い)、年齢(RAはより一般的には40歳から60歳の間に生じるが、子供、十代、および高齢者も罹患し得る)、遺伝的特徴(RAは、遺伝性の組織型主要組織適合遺伝子複合体(MHC)抗原であるHLA−DR4、より具体的にはDRB1*0401およびDRB1*0404に強く関連することが明らかになった)、ならびに喫煙(RAは非喫煙者よりも喫煙者において約4倍多い)が挙げられる。
【0005】
現在、RAの信頼性のある治療法は存在しない。治療は基本的に、痛みを軽減させ、炎症を低減させ、関節の損傷および骨の破壊を停止または減速させることを目的とするものである。現在の治療アプローチは、状態の初期に疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)を処方することであり、それは、このような薬剤で初期に治療されたRA患者が、機能が良好に保持され、運動障害が少なく、かつ早期に死亡するリスクが小さい、良好な転帰を有するためである。RAの病態生理の理解における最近の進歩により、生物学的応答修飾物質と呼ばれる新たなDMARDが開発されている。生物学的DMARDは、RAに関連する異常な免疫反応に関与する、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、インターロイキン−1(IL−1)、T細胞、およびB細胞などの、鍵となる特定の細胞または分子の作用を標的化および遮断するように設計されている。従来のDMARDと比較して、生物学的作用物質は、作用の開始がはるかに速く、かつ、関節の損傷の有効な長期の予防を伴う良好な臨床応答をもたらし得る(J.K.D.de Vries−Bouwstraら、Rheum.Dis.Clin.North Am.、2005、31:745〜762)。
【0006】
回復不能な関節の破壊は、疾患の初期段階での介入により予防することができるため、RAの初期の診断が重要である。しかし、RAの確定診断は困難である可能性がある。RAの診断のために行われ得る免疫学的試験には、特に、リウマチ因子(RF)、抗核抗体(ANA)、および抗環状シトルリン化ペプチド(抗CCP)抗体のレベルの測定が含まれる。RFについての血清学的試験は、感度および特異性が中程度であり、他の慢性的炎症および感染性疾患における陽性率が高いことにより、複雑である(T.Dornerら、Curr.Opin.Rheumatol、2004、16:246〜253)。陽性のANAの結果は、異常に活性のある免疫系を示す。RA患者の約40%がANAについて陽性である。しかし、この疾患の発病の最初の数ヶ月はANAの試験は陰性であり得、一部の患者においては、それらは疾患が進行しても陰性であり続ける。RAの診断においては、抗CCP抗体の試験が特に有用であり、それは、特異性が高く、疾患プロセスの初期において陽性であり、重篤な疾患および回復不能な損傷を有する可能性が高い患者を同定することができる。しかし、抗CCP抗体の試験における陰性の結果はRAを排除するわけではない。
【0007】
したがって、RAおよびRA進行の新たな生物学的マーカーが大いに必要である。とりわけ、疾患の初期段階の信頼性のある診断およびモニタリングを可能にし、痛み、関節の破壊、および長期にわたる障害を潜在的に予防するための初期の介入を可能にするバイオマーカーが非常に望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、関節リウマチ(RA)の診断のための改良された系および戦略に関する。とりわけ、本発明は、RA患者における、臨床的に関連する疾患プロセスを反映するタンパク質の同定を提供する。より具体的には、本発明は、患者から得られるインビトロの生物学的試料においてRAの指標となる自己抗体の存在を検出するために用いることができるバイオマーカーを提供する。特定の実施形態において、本発明のバイオマーカーは、CCP陰性の患者においてRAの診断を可能にする利点を有する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
より具体的には、1つの態様において、本発明は、関節リウマチの診断において使用するための、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーを提供する。とりわけ、本発明は、対象における関節リウマチのインビトロでの診断方法において用いるための、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーを提供する。特定の実施形態において、関節リウマチのインビトロでの診断方法は、対象から得られる生物学的試料を、自己抗原マーカーと、抗原抗体複合体の形成を可能にする時間および条件下で接触させるステップと、形成された任意の抗原抗体複合体を検出するステップとを含み、抗原抗体複合体の存在は、対象における関節リウマチの指標となる。形成された任意の抗原抗体複合体の検出は、任意の適切な方法、例えば免疫アッセイにより行うことができる。
【0010】
特定の実施形態において、インビトロでの診断方法で試験される対象、例えばヒト患者は、関節リウマチを有することが疑われる。特定の実施形態において、対象はCCP陰性である。
【0011】
インビトロでの診断方法において用いられる生物学的試料は、全血、血清、血漿、尿、および滑液からなる群から選択され得る。
【0012】
特定の実施形態において、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーは、固体の担体または支持体上に固定化される。例えば、自己抗原マーカーはアレイ上に固定化される。
【0013】
特定の実施形態において、自己抗原マーカーに含まれるBRAF触媒ドメインは、ヒト由来のものである。例えば、BRAF触媒ドメインは、配列番号2のアミノ酸416からアミノ酸766にわたるアミノ酸配列を有するか、含むか、またはそれにより構成される。
【0014】
特定の実施形態において、BRAF触媒ドメインまたはその抗原結合断片を含む自己抗原マーカーは、対象から得られる生物学的試料において抗PAD4抗体を検出することをさらに含む、関節リウマチのインビトロでの診断方法において使用される。同一のまたは他の実施形態において、自己抗原マーカーは、対象から得られる生物学的試料においてC反応性タンパク質、血清アミロイドA、インターロイキン6、S100タンパク質、オステオポンチン、リウマチ因子、マトリクスメタロプロテアーゼ1、マトリクスメタロプロテアーゼ3、ヒアルロン酸、sCD14、血管新生マーカー、および骨、軟骨、または滑膜の代謝産物からなる群から選択される少なくとも1つのマーカーの濃度を測定することをさらに含む、関節リウマチのインビトロでの診断方法において使用される。
【0015】
関連する態様において、本発明は、関節リウマチの診断において用いるための、アレイの表面に付着した自己抗原マーカーを提供し、自己抗原マーカーは、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む。とりわけ、本発明は、対象における関節リウマチのインビトロでの診断方法において用いるための、アレイの表面に付着した自己抗原マーカーを提供し、自己抗原マーカーは、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む。
【0016】
特定の実施形態において、BRAF自己抗原マーカーが付着しているアレイはさらに、その表面に付着した、PAD4またはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーを含む。同一のまたは他の実施形態において、BRAF自己抗原マーカーが付着しているアレイはさらに、その表面に付着した、RA特異的自己抗体、とりわけ抗核抗体および抗CCP抗体の存在を検出するための少なくとも1つのさらなるマーカーを含む。
【0017】
別の態様において、本発明は、関節リウマチのマーカーとしてのBRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーの使用を提供する。
【0018】
さらに別の態様において、本発明は、対象における関節リウマチのインビトロ診断のための方法を提供し、前記方法は、対象から得られる生物学的試料を、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーと、抗原抗体複合体の形成を可能にする時間および条件下で接触させるステップと、形成された任意の抗原抗体複合体を検出するステップとを含み、抗原抗体複合体の存在は、対象における関節リウマチの指標となる。
【0019】
特定の実施形態において、対象、例えばヒト患者は、関節リウマチを有することが疑われる。特定の実施形態において、対象、例えばヒト患者はCCP陰性である。
【0020】
対象から得られ、かつ本発明の診断方法における使用に適した生物学的試料は、全血、血清、血漿、尿、および滑液からなる群から選択され得る。
【0021】
本明細書において提供される診断方法において、自己抗原マーカーと対象から得られる生物学的試料内に存在する自己抗体との間で形成される任意の抗原抗体複合体の検出は、任意の適切な方法によって行うことができる。特定の実施形態において、検出は免疫アッセイによるものである。
【0022】
特定の実施形態において、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーは、固体の担体または支持体上に固定化される。
【0023】
対象が人間である実施形態において、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片は、好ましくはヒト由来のものである。特定の実施形態において、BRAF触媒ドメインは、本明細書において定義される配列番号2のアミノ酸416からアミノ酸766にわたるアミノ酸配列を有する。
【0024】
特定の実施形態において、本発明の診断方法はさらに、試験される対象から得られる生物学的試料における抗PAD4抗体を検出することを含む。これらまたは他の実施形態において、本方法はさらに、対象から得られる生物学的試料において抗CPP抗体を検出することを含む。その代わりに、またはそれに加えて、診断方法はさらに、対象から得られる生物学的試料においてC反応性タンパク質、血清アミロイドA、インターロイキン6、S100タンパク質、オステオポンチン、リウマチ因子、マトリクスメタロプロテアーゼ1、マトリクスメタロプロテアーゼ3、ヒアルロン酸、sCD14、血管新生マーカー、および骨、軟骨、または滑膜の代謝産物からなる群から選択される少なくとも1つのマーカーの濃度を測定することを含み得る。
【0025】
さらに別の態様において、本発明は、対象における関節リウマチの診断のためのキットを提供する。より具体的には、キットは、対象から得られる生物学的試料における抗BRAF自己抗体を検出するために提供され、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーと、自己抗原マーカーと生物学的試料内に存在する自己抗体との間で形成される抗原抗体複合体を検出するための試薬であって、自己抗体が、対象における関節リウマチの指標となる抗BRAF自己抗体である試薬とを含む。このキットにおいて、自己抗原マーカーは固体の担体もしくは支持体上に固定化され得るか、または、固体の担体もしくは支持体上に自己抗原マーカーを固定化するために用いられる試薬がキット内に含まれ得る。キットはさらに、本明細書において提供される診断方法のいずれかを実施するための指示を含み得る。
【0026】
特定の実施形態において、キットはさらに、PAD4またはその抗体結合断片を含む第2の自己抗原マーカーと、第2の自己抗原マーカーと生物学的試料内に存在する自己抗体との間で形成される抗原抗体複合体を検出するための第2の試薬であって、自己抗体が、対象におけるRAの指標となる抗PAD4自己抗体である試薬とを含む。
【0027】
さらに別の態様において、本発明は、対象におけるRAの診断のためのアレイを提供する。とりわけ、本発明は、試験される対象から得られる生物学的試料におけるRA特異的自己抗体の存在を検出するためのアレイを提供する。より具体的には、本発明に従ったアレイは、その表面に付着した、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーと、場合によっては、PAD4またはその抗体結合断片を含む第2の自己抗原マーカーとを含む。特定の実施形態において、本発明のアレイはさらに、その表面に付着した、抗核抗体および抗CCP抗体などのRA特異的自己抗体の存在を検出するための少なくとも1つのさらなる自己抗原マーカーを含む。
【0028】
本発明のこれらおよび他の目的、利点、および特徴が、以下の好ましい実施形態の詳細な説明を読んだ当業者には明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1A】19人のRA患者、7人のAS患者、2人のSLE患者、および4人のSSC患者、ならびに10人の健康な対照のそれぞれの血清により認識されるProtoArrayヒトタンパク質マイクロアレイのタンパク質の数を示すグラフである。
【図1B】患者および健康な対照のそれぞれの群により認識されるタンパク質マイクロアレイのタンパク質の平均数を示すグラフである。
【図2】AS患者、SLE患者、SSC患者、健康な対照、および2個、1個、または0個のRA関連HLA−DR対立遺伝子を発現するRA患者により認識されるProtoArrayヒトタンパク質マイクロアレイのタンパク質の平均数を示すグラフである。
【図3】少なくとも1人のRA患者、少なくとも2人のRA患者、少なくとも3人のRA患者などにより認識されるProtoArrayヒトタンパク質マイクロアレイのタンパク質の総数を示すグラフである。また、AS患者の少なくとも20%、SSC患者の少なくとも20%、および健康な個体の少なくとも20%によっても認識される、RA患者により認識されるタンパク質も、このグラフにおいて示される。
【図4】RA患者の血清により最も頻繁に認識されることが明らかになったタンパク質を列挙する表である。これらのタンパク質を認識したRA患者、AS患者、SLE患者、SSC患者、および健康な個体の数がこの表において表される。また、それぞれのタンパク質の対応するヌクレオチド配列のGenBank登録番号も表される。
【図5A】ELISAにより決定された、PAD4について陽性のRA患者、AS患者、および健康な個体のパーセンテージを示すグラフである。
【図5B】ELISAにより決定された、PAD4について陽性の、2個(SE+/SE+)、1個(SE+/SE−)、または0個(SE−/SE−)のRA関連HLA−DR対立遺伝子を発現するRA患者のパーセンテージを示すグラフである。
【図6A】ELISAにより決定された、PIP4K2Cについて陽性のRA患者、AS患者、および健康な個体のパーセンテージを示すグラフである。
【図6B】ELISAにより決定された、PIP4K2Cについて陽性の、2個(SE+/SE+)、1個(SE+/SE−)、または0個(SE−/SE−)のRA関連HLA−DR対立遺伝子を発現するRA患者のパーセンテージを示すグラフである。
【図7A】ウェスタンブロッティングにより決定された、BRAF触媒ドメインについて陽性のRA患者、AS患者、および健康な個体のパーセンテージを示すグラフである。
【図7B】ウェスタンブロッティングにより決定された、BRAF触媒ドメインについて陽性の、2個(SE+/SE+)、1個(SE+/SE−)、または0個(SE−/SE−)のRA関連HLA−DR対立遺伝子を発現するRA患者のパーセンテージを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
定義
本明細書を通して、以下の段落において定義されるいくつかの用語が用いられる。
【0031】
本明細書において用いられる場合、「対象」という用語は、RAに罹患し得るが疾患を有していてもよく、または有していなくてもよい、ヒトまたは別の哺乳動物(例えば、霊長類、犬、猫、山羊、馬、豚、マウス、ラット、ウサギなど)を言う。本発明の多くの実施形態において、対象は人間である。このような実施形態において、対象はしばしば「個体」と呼ばれる。「個体」という用語は特定の年齢を指すものではなく、したがって、子供、十代、および成人を包含する。
【0032】
「RAを有することが疑われる対象」という用語は、RAの指標となる1つもしくは複数の症状(例えば、関節の痛み、こわばり、もしくは腫れ)を示す対象、または(例えば、検診中に)RAについてスクリーニングされる対象を言う。その代わりに、またはそれに加えて、RAを有することが疑われる対象は、1つまたは複数の危険因子(例えば、年齢、性別、家族歴、喫煙など)を有し得る。この用語は、RAについて試験されていない対象および初期診断を受けた対象も包含する。
【0033】
「生物学的試料」という用語は、本明細書において、その最も広い意味で用いられる。生物学的試料は通常、対象から得られる。試料は、本発明のバイオマーカーと共にアッセイされ得る、任意の生物学的組織または液体のものであり得る。試料は、「臨床試料」、すなわち患者に由来する試料であることが多い。このような試料には、限定はしないが、細胞を含んでいてもよく、または含んでいなくてもよい体液、例えば血液(例えば全血、血清、または血漿)、尿、滑液、唾液、および関節液、骨または軟骨などから得られる組織または細針生検試料、ならびに診断、治療、および/または転帰の履歴が知られている保存された試料が含まれる。生物学的試料にはまた、組織学的な目的で採取された凍結切片などの組織切片が含まれ得る。「生物学的試料」という用語はまた、生物学的試料を処理することにより得られる任意の材料を包含する。得られる材料には、限定はしないが、試料またはその試料から抽出されるタンパク質から単離される細胞(またはその後代)が含まれる。生物学的試料の処理は、ろ過、蒸留、抽出、濃縮、干渉成分の不活性化、試薬の添加などの1つまたは複数を伴い得る。
【0034】
「正常な」および「健康な」という用語は、本明細書においてほぼ同じ意味で用いられる。それらは、いずれのRA症状も示していない対象、およびRAまたは軟骨もしくは骨の傷害と診断されていない対象を言う。好ましくは、正常な対象は、RAに対する投薬治療を受けておらず、いずれの他の疾患とも診断されていない(特に、自己免疫性炎症性疾患)。特定の実施形態において、正常な対象は、試験される生物学的試料を得た対象と比較して同様の性別、年齢、および/または肥満度指数を有する。「正常な」という用語はまた、本明細書において、健康な対象から得られる試料を特定するために用いられる。
【0035】
本発明の関連において、「対照」という用語は、対象を特徴付けるために用いられる場合、健康な対象またはRA以外の特定の疾患と診断された患者を言う。「対照試料」という用語は、健康な対象またはRA以外の疾患と診断された患者から得られた1つまたは2つ以上の試料を言う。
【0036】
「自己抗体」という用語は、本明細書において用いられる場合、その技術分野において理解されている意味を有し、かつ、対象の免疫系により産生され、対象自身のタンパク質の1つまたは複数に対する抗体を言う。自己抗体は、身体自体の細胞、組織、および/または器官を攻撃し得、炎症および損傷を生じさせる。
【0037】
本明細書において用いられる場合、「自己抗原」という用語は、自己免疫反応の場合と同様に対象の身体における自己抗体の産生を刺激する、内因性抗原またはその活性断片を言う。この用語はまた、対象内または対象から得られる生物学的試料内に存在する自己抗体と抗原抗体複合体を形成し得る、任意の物質を包含する。
【0038】
「抗体結合断片」という用語は、抗原と組み合わせて本明細書において用いられる場合、抗体に結合して抗原抗体複合体を形成するという抗原の能力を保持している、本発明の抗原の断片を言う。とりわけ、本発明の抗原の抗体結合断片は、RA特異的自己抗体を結合する能力を保持している。抗原の適切な抗体抗原断片は、RA特異的自己抗体を結合するそれらの能力を確認するための単純な検査によって当業者が同定することができる。
【0039】
「バイオマーカー」および「マーカー」という用語は、本明細書において、ほぼ同じ意味で用いられる。それらは、生物学的プロセス、生物学的事象、および/または病理学的状態の特徴的な指標となる物質を言う。本明細書において用いられる場合、「自己抗原マーカー」という用語は、本明細書において定義される、自己抗体を伴う生物学的プロセス、生物学的事象、および/または病理学的状態の特徴的な指標となる自己抗原を言う。
【0040】
本明細書において用いられる場合、「RAの指標となる」という用語は、プロセスまたは事象に適用される場合、プロセスまたは事象が健康な対象および/またはRA以外の疾患に罹患している対象におけるよりもRAを有する対象において有意に頻繁に見られるような、RAの診断に役立つプロセスまたは事象を言う。
【0041】
「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」という用語は、本明細書においてほぼ同じ意味で用いられ、それらの中性(荷電していない)形態の、または塩としての、およびグリコシル化、側鎖の酸化、またはリン酸化により修飾されていないかまたは修飾されている、様々な長さのアミノ酸配列を言う。特定の実施形態において、アミノ酸配列は、完全長の天然タンパク質である。他の実施形態において、アミノ酸配列は、完全長タンパク質の小断片である。さらに他の実施形態において、アミノ酸配列は、グリコシル単位、脂質、またはリン酸塩などの無機イオンなどの、アミノ酸の側鎖に付着したさらなる置換基により、およびスルフヒドリル基の酸化などの鎖の化学的変換に関する修飾により修飾される。したがって、「タンパク質」という用語(またはその同等の用語)は、その特異的特性を有意には変化させない修飾を受ける完全長の天然タンパク質のアミノ酸配列またはその断片を含むことを意図したものである。とりわけ、「タンパク質」という用語は、タンパク質アイソフォーム、すなわち、同一の遺伝子によりコードされるがpIもしくはMWまたはその両方が異なる変異体を包含する。このようなアイソフォームは、アミノ酸配列が異なり得るか(例えば、選択的スプライシングまたは制限タンパク質分解の結果として)、あるいは、差次的な翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、アシル化、ホスホリル化)から生じ得る。
【0042】
「タンパク質類似体」という用語は、本明細書において用いられる場合、タンパク質と同様のまたは同一の機能を有するが、そのタンパク質のアミノ酸配列と同様もしくは同一であるアミノ酸配列またはそのタンパク質の構造と同様もしくは同一の構造を含んでいる必要はないポリペプチドを言う。好ましくは、本発明の関連において、タンパク質類似体は、タンパク質のアミノ酸配列に少なくとも30%、より好ましくは少なくとも約35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一なアミノ酸配列を有する。
【0043】
「タンパク質断片」という用語は、本明細書において用いられる場合、タンパク質のアミノ酸配列の少なくとも5個のアミノ酸残基(好ましくは、少なくとも約10個、15個、20個、25個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、125個、150個、175個、200個、または250個のアミノ酸残基)からなるアミノ酸配列を含むポリペプチドを言う。タンパク質の断片は、タンパク質の機能的活性を有していてもよく、または有していなくてもよい。
【0044】
「相同」(または「相同性」)という用語は、本明細書において用いられる場合、「同一性」という用語と同義であり、2つのポリペプチド分子の間または2つの核酸分子の間の配列類似性を言う。比較される配列の両方における1つの位置に同一の塩基または同一のアミノ酸残基が存在する場合、それぞれの分子はその位置で相同である。2つの配列の間の相同性のパーセンテージは、2つの配列が共有する、一致するかまたは相同な位置の数を、比較される位置の数で割り、100をかけたものに対応する。通常、比較は、2つの配列をアラインして最大の相同性を得る場合に行われる。相同なアミノ酸配列は、同一のまたは類似のアミノ酸配列を共有する。類似の残基は、参照配列における対応するアミノ酸残基に対する保存的置換、または前記残基の「許容される点突然変異」である。参照配列における残基の「保存的置換」は、対応する参照残基に物理的または機能的に類似の置換、例えば、類似のサイズ、形状、電荷、共有結合または水素結合を形成する能力を含む化学的特性などを有する置換である。特に好ましい保存的置換は、Dayhoffらによる「認められた点突然変異」について規定された基準を満たす保存的置換である(「Atlas of Protein Sequence and Structure」、1978、Nat.Biomed.Res.Foundation、Washington,DC、Suppl.3、22:354〜352)。
【0045】
「タンパク質アレイ」および「タンパク質チップ」という用語は、本明細書においてほぼ同じ意味で用いられる。それらは、基質上の個別のスポットに異なるタンパク質が規則的な様式で固定化されている基質表面を言う。タンパク質アレイは、タンパク質/タンパク質相互作用(例えば、抗原/抗体相互作用)を同定するため、酵素の基質を同定するため、または生物学的に活性な小分子の標的を同定するために用いることができる。「マイクロアレイ」という用語は、より具体的には、小型化され、視覚的評価のための顕微鏡的試験が必要となるアレイを言う。
【0046】
「標識された」、「検出可能な作用物質で標識された」、および「検出可能な部分構造で標識された」という用語は、本明細書においてほぼ同じ意味で用いられる。これらの用語は、実体(例えば抗原)が例えば別の実体(例えば抗体)に結合した後に可視化され得ることを特定するために用いられる。好ましくは、検出可能な作用物質または部分構造はシグナルを生じさせるように選択され、前記シグナルは、測定可能であり、その強度が、結合した実体の量に関連するものである。アレイに基づいた方法において、検出可能な作用物質または部分構造はまた、好ましくは、局所的なシグナルを生じさせ、それによりアレイ上の各スポットからのシグナルの空間分解能を可能にするように選択される。タンパク質およびポリペプチドを標識するための方法は、当技術分野において周知である。標識ポリペプチドは、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、もしくは化学的手段、または任意の他の適切な手段により直接的または間接的に検出可能な、標識の組み込みまたは標識への結合により調製することができる。適切な検出可能な作用物質には、限定はしないが、様々なリガンド、放射性核種、蛍光染料、化学発光作用物質、微小粒子、酵素、比色標識、磁気標識、およびハプテンが含まれる。
【0047】
「治療」という用語は、(1)疾患もしくは状態の発病を遅らせるかもしくは予防すること、または(2)症状の状態の進行、重篤化、もしくは悪化を減速もしくは停止させること、または(3)症状の状態の改善をもたらすこと、または(4)状態を治癒させることを目的とする方法を特徴付けるために、本明細書において用いられる。治療は、予防的または防止的作用のために、疾患の発病の前に投与され得る。治療はまた、治療作用のために疾患の開始後にも投与され得る。
【0048】
特定の好ましい実施形態の詳細な説明
上述したように、本発明は、患者から得られる生物学的試料におけるRA特異的自己抗体の存在を検出するために用いることができる自己抗原マーカーを提供するものである。また、RAの診断のためにこれらの自己抗原マーカーを用いるための方法も提供される。
【0049】
I− RAの自己抗原マーカー
実施例の節において記載されるように、本出願人らは、Invitrogenから市販されているProtoArrayヒトタンパク質マイクロアレイを用いてRA患者の血清をスクリーニングすることにより、RAのバイオマーカーを同定した。このマイクロアレイは、プロテアーゼ/ペプチダーゼ、分泌タンパク質、転写因子、細胞死タンパク質、プロテインキナーゼ、核タンパク質、膜タンパク質、および代謝タンパク質を含む、8000個を超えるヒトタンパク質を含む。より具体的には、本出願人らは、RA患者、ならびに脊椎関節症(AS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、および全身性硬化(SSC)に罹患している患者と健康な個体とを含む様々な対照から得られる血清試料をスクリーニングし、試験した様々な群について結合パターンを比較した。本出願人らは、RA患者の血清により認識されるタンパク質の大部分が対照の血清によっても認識されることを見出した(図3を参照されたい)。
【0050】
RA患者の多くにより認識されたタンパク質を、図4に示される表に列挙する。これらのタンパク質には、PAD4、BRAF触媒ドメイン、腫瘍抑制副伝達性候補4、プロテインキナーゼCベータ1、ヌクレオシド二リン酸結合部分Xモチーフ21型、ヌクレオシド二リン酸結合部分Xモチーフ21型、EPH受容体B1、微小管関連RP EBファミリーのメンバー、PIP4K2C、プロテインキナーゼCシータ、V ERB B2、カルシウムカルモジュリン依存性プロテインキナーゼIIアルファ、プロテインキナーゼCアルファ、プロテインキナーゼCベータ1、およびDEPドメイン6が含まれる。
【0051】
これらのタンパク質の3つのみが、RA患者の血清により特異的に認識されることが明らかになり(図4を参照されたい)、それらをRAの潜在的な候補バイオマーカーとした。これらのタンパク質は、PAD4(ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4)、PKCベータ1(プロテインキナーゼCベータ1)、およびPIP4K2C(ホスファチルイノシトール4リン酸5キナーゼII型ガンマ)である。試験したRA患者のうち47%がPAD4について陽性であり、31%がPKCベータ1について陽性であり、26%がPIP4K2Cについて陽性であったが、対照群の個体はこれらのタンパク質のそれぞれについて全て陰性であった。これらの3つの候補バイオマーカーに加え、本出願人らは、BRAF触媒ドメイン(v rafマウス肉腫ウイルス癌遺伝子類似体B1触媒ドメイン)を選び出したが、それは、このタンパク質が興味深い選択性を示すことが明らかになったためである(図4を参照されたい)。実際、スクリーニング実験において、AS患者の0%、SLE患者の0%、SSC患者の0%、および健康な個体の10%がBRAF候補ドメインについて陽性であったのに対し、試験したRA患者の47%がBRAF候補ドメインについて陽性であることが明らかになった。
【0052】
実施例の節において記載されるように、本出願人らは次に、ウェスタンブロッティングおよび/またはELISAを用いて、スクリーニング実験において同定されたRAの潜在的な候補バイオマーカー(すなわち、PAD4、PKCベータ1、PIP4K2C、およびBRAF触媒ドメイン)の有効性を実証した。このさらなる試験により、4個の候補の2個のみがRAの自己抗原マーカーとして有効性を実証された。有効性を実証されたタンパク質は、BRAF触媒ドメインおよびPAD4である。実際、タンパク質アレイのスクリーニングおよびウェスタンブロッティング分析により、AS患者の0%、SLE患者の0%、SSC患者の0%、および健康な個体の4%のみがBRAF候補ドメインについて陽性であったのに対し、RA患者の47%がBRAF候補ドメインについて陽性であることが明らかになった。タンパク質アレイのスクリーニングおよびELISA分析により、AS患者の0%、SSC患者の0%、および健康な個体の3%がPAD4について陽性であったのに対し、RA患者の32%がPAD4について陽性であることが明らかになった。
【0053】
したがって、特定の実施形態において、本発明は、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片もしくは変異体を含む自己抗原マーカーを提供する。他の実施形態において、本発明は、PAD4またはその抗体結合断片もしくは変異体を含む自己抗原マーカーを提供する。
【0054】
BRAF触媒ドメイン
BRAF(B−rafとも呼ばれる)は、RAFタンパク質ファミリーのセリン−スレオニンキナーゼタンパク質である。これは、細胞の成長を調節する保存された経路であるマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナル伝達経路に関与する。この経路を介したシグナル伝達は、ヒトの癌のおよそ30%において上昇している。この経路はまた、関節の炎症および破壊をもたらす炎症性サイトカインの産生に関与することが知られている(C.M.CrewsおよびR.L.Erikson、Cell、1993、74:215〜217;T.Thalhamerら、Rheumatology、2008、47:409〜414)。
【0055】
RAFタンパク質は、N末端の調節領域およびC末端の触媒ドメインを含む。それらは、3つの保存領域、すなわちCR1、CR2、およびCR3からなる。CR1は2つのRas結合ドメイン(Raf様Ras結合ドメインであるRBD、およびシステインに富んだドメインであるCRD)を有し、CR2はセリン/スレオニンに富んだドメインであり、CR3は触媒キナーゼドメインである。ヒトにおいて、BRAF遺伝子は、766個のアミノ酸残基からなるBRAFタンパク質(GenBank登録番号:NP_004324.1)をコードし、その配列は配列番号1において定義される。
【0056】
【表1】
【0057】
このタンパク質において、RBDはアミノ酸156から227にわたり、プロテインキナーゼC保存領域1ドメインはアミノ酸235から280にわたり、セリン−スレオニンキナーゼ触媒ドメインはアミノ酸456から712にわたる。
【0058】
本発明の関連において、「BRAF触媒ドメイン」という用語は、BRAFタンパク質のセリン−スレオニンキナーゼ触媒ドメインの配列を含むアミノ酸配列を言う。したがって、例えば、BRAF触媒ドメインのアミノ酸配列は、BRAFのセリン−スレオニンキナーゼ触媒ドメインの配列を包含するBRAFタンパク質のアミノ酸配列であり得る。あるいは、BRAF触媒ドメインのアミノ酸配列は、BRAFタンパク質のセリン−スレオニンキナーゼ触媒ドメインの配列であり得る。
【0059】
本発明の実施において、BRAFタンパク質は任意の適切な哺乳動物(例えば、BRAFタンパク質の配列が決定されているかまたは予想されているラット、犬、牛、霊長類)由来のものであり得る。しかし、ヒト対象の生物学的試料が試験される実施形態において、BRAFタンパク質は好ましくはヒト由来のものである。「ヒト由来のもの」という用語は、タンパク質(またはその領域もしくは断片)を特徴付けるために本明細書において用いられる場合、ヒトタンパク質(すなわち、ヒトの身体において天然に生じる野生型タンパク質)に相同なタンパク質またはポリペプチドを言う。
【0060】
したがって、BRAFタンパク質がヒト由来のものである実施形態において、「BRAF触媒ドメイン」という用語は、配列番号1のアミノ酸456からアミノ酸712にわたる配列を含むアミノ酸配列を言う。したがって、特定の実施形態において、本発明は、配列番号1のアミノ酸456から712にわたる配列またはその抗原結合断片を含む自己抗原マーカーを提供する。BRAF触媒ドメインの抗原結合断片は、RA特異的自己抗体を結合する抗原の能力を保持している、BRAF触媒ドメインの任意の断片である。
【0061】
本出願人らが用いたInvitrogenヒトタンパク質マイクロアレイにおいて、BRAF触媒ドメインは、配列番号1のアミノ酸416から766にわたるアミノ酸配列(すなわち、セリン−スレオニンキナーゼ触媒ドメインを包含するBRAFタンパク質のアミノ酸配列)を含み、この配列は、配列番号2において示されているように、599位のバリン残基(V)がグルタミン酸残基(E)により置換されている。ヒトの癌においてしばしば見られるBRAFのV599E突然変異は、野生型BRAFと比較したキナーゼ活性の上昇に関連することが実証されている(H.Daviesら、Nature、2002、417:949〜954;M.H.Andersenら、Cancer Res.、2004、64:5456〜5460)。
【0062】
【表2】
【0063】
したがって、特定の実施形態において、本発明は、配列番号2のアミノ酸416から766にわたる配列またはその抗原結合断片を含む自己抗原マーカーを提供する。
【0064】
本発明はまた、BRAF触媒ドメインの変異体またはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーを包含する。適切な変異体には置換変異体が含まれ、この置換変異体は、天然の状態で保存的であり、かつ、イソロイシンもしくはバリン残基によるロイシン残基の置換、グルタミン酸残基によるアスパラギン酸残基の置換、またはセリン残基によるスレオニン残基の置換などの、天然に生じるポリペプチドで類似の構造的および/または化学的特性を有する別のアミノ酸による、1つまたは2つ以上のアミノ酸の置換により生じるものである。他の適切な変異体には、1つまたは2つ以上のアミノ酸の挿入または欠失により生じる、挿入変異体または欠失変異体が含まれる。適切な変異体は、天然に生じるポリペプチドの抗原結合活性を保持しているものである。それらは、単純な抗体結合アッセイにより容易に同定され得る。
【0065】
PAD4
PAD4(ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4)は、アルギニン残基をシトルリンに変換するCA2+依存性酵素である。PAD4遺伝子におけるRA関連の突然変異は様々な個体群において同定されており(A.Suzukiら、Nat.Genet.、2003、34:395〜402;T.Iwamotoら、Rheumatology、2006、45:804〜807;およびY.H.Leeら、Rheumatol.Int.、2007、27:827〜233)、また、RA患者はシトルリン含有タンパク質を認識する自己抗体を産生するため、PAD4は、RA疾患の発病および進行の原因となると広く考えられている。PAD4が一部のRA患者において立体構造依存性の自己抗原であることが既に示されている(Y.Takizawaら、Scand.J.Rheumatol.、2005、3:212〜215)。
【0066】
ヒトにおいて、PAD4タンパク質は、663個のアミノ酸残基(GenBank登録番号:NP_036519.1)を含み、配列番号3において定義される配列を有する。
【0067】
【表3】
【0068】
既に上述したように、本発明は、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーと組み合わせてRAの診断に用いることができる、PAD4またはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーを提供する。本発明の関連において、「PAD4」という用語は、天然に生じるPAD4タンパク質に相同なアミノ酸配列を言う。PAD4タンパク質は、任意の適切な哺乳動物由来のものであり得る。しかし、ヒト患者から得られる生物学的試料が試験される実施形態において、PAD4タンパク質は好ましくはヒト由来のものである。したがって、特定の実施形態において、本発明は、配列番号3により定義されるアミノ酸配列、その抗体結合断片、またはその変異体を含む、自己抗原マーカーを提供する。
【0069】
自己抗原マーカーの調製
本発明の自己抗原マーカーは、化学的合成および組換え方法を含む任意の適切な方法によって調製することができる。
【0070】
本発明のバイオマーカーは通常、十分に短いため、標準的な方法を用いる化学的合成が実行可能である。R.B.Merrifield(J.Am.Chem.Soc.1963、85:2149〜2154)により最初に記載された固相ペプチド合成は、既知の配列のペプチドおよび小ペプチド分子を合成するための迅速で容易なアプローチである。このような固相技術の資料は、例えば、「Solid Phase Peptide Synthesis」(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Methods in Enzymology、G.B.Fields(編)、1997、Academic Press:San Diego、CA)において見ることができる。これらの合成手順のほとんどは、成長中のペプチド鎖への、1つまたは複数のアミノ酸残基または適切に保護されたアミノ酸残基の連続的な付加を伴う。例えば、第1のアミノ酸のカルボキシル基は、不安定な結合を介して固相に付着しており、事前に化学的に保護されて自己縮合を避けるようになっているアミノ基を有する第2のアミノ酸と反応する。結合した後、アミノ基は脱保護され、次のアミノ酸とプロセスが反復される。所望のペプチドが組み立てられると、それは固相から切断され、沈殿され、得られた遊離ペプチドは所望により分析および/または精製され得る。例えば「The Proteins」(Vol.II、第3版、H.Neurathら(編)、1976、Academic Press:New York、NY、105〜237ページ)に記載されているような溶解方法もまた、本発明のバイオマーカーを合成するために用いることができる。
【0071】
あるいは、本明細書において提供される自己抗原マーカーは、組換えDNA法によって産生することができる。これらの方法は通常、所望のタンパク質をコードする遺伝子の単離、適切なベクターへの遺伝子の組み込み、および細胞培養系における大量発現を含む。本発明のポリペプチドの配列をコードするDNAは十分に短いため、当技術分野において知られている方法を用いて容易に合成的に調製される(例えば、M.P.Edgeら、Nature、1981、292:756〜762を参照されたい)。
【0072】
合成した後、所望のペプチドをコードするDNAは、プラスミド、ファージ、ウイルス粒子、または、ベクターを含む他の核酸分子もしくは媒体を含む核酸分子であり得る、組換え発現ベクター内に挿入され、前記核酸分子は、適切な宿主細胞内に導入されると、目的のコード配列の発現を指示するための必要な遺伝的要素を含むものである。当技術分野において周知の標準的な技術を用いて、発現ベクター内に核酸分子を挿入することができる。挿入により、コード配列が、必要な調節配列に作動可能に連結される。
【0073】
タンパク質の産生において用いるための宿主細胞は周知であり、容易に入手可能である。宿主細胞の例には、Escherichia coli、Bacillus subtilis、Salmonella typhimuriumの弱毒株などの細菌細胞、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces株、Candida、または異種タンパク質を発現し得る任意の酵母株などの酵母細胞、Spodoptera frugiperdaなどの昆虫細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、サルCOS細胞、およびマウス3T3細胞などのヒト以外の哺乳動物組織培養細胞、ならびにHeLa細胞、HL−60細胞、腎293細胞、および表皮S431細胞などのヒト組織培養細胞が含まれる。
【0074】
周知の発現系においてポリペプチドを産生するためのいくつかの発現ベクターが市販されている。例えば、プラスミドpSE420(Invitrogen、San Diego、CAから入手可能)およびpBR322(New England Biolabs、Beverly、MAから入手可能)を、E.coliにおける本発明のペプチドの産生に用いることができる。同様に、プラスミドpYES2(Invitrogen)を、酵母のS.cerevisiae株におけるペプチドの産生に用いることができる。バキュロウイルス発現系のための市販されているMacBacR(商標)キット(Invitrogen)またはPharMingen(San Diego、CA)から入手可能なBaculoGold(商標)トランスフェクションキットを、昆虫細胞における産生に用いることができ、一方、Invitrogenから市販されているプラスミドpcDNA I、pcDNA3、およびpRc/RSVを、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物細胞における本発明のペプチドの産生に用いることができる。
【0075】
他の発現ベクターおよび発現系を、当業者に周知の方法を用いて得るかまたは生成することができる。プロモーターおよびポリアデニル化シグナルなどの必須の制御配列、好ましくはエンハンサーを含有する発現系は、様々な宿主に対して容易に利用可能である(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、1989、Cold Spring Harbor Press:Cold Spring、NY;およびR.Kaufman、Methods in Enzymology、1990、185:537〜566を参照されたい)。
【0076】
所望のタンパク質をコードするDNAを含む発現ベクターを用いて、適合性のある宿主細胞を形質転換する。宿主細胞はその後、所望のタンパク質の発現を促進する条件下で培養および維持される。そのようにして産生されたタンパク質は、培地から直接的に、または細胞の溶解により、回収および単離される。次にそれを、核磁気共鳴(NMR)およびX線結晶構造解析などの様々な方法により特徴付けることができる。
【0077】
当業者に理解されているように、本発明の自己抗原マーカーは融合タンパク質(すなわち、抗体結合部分、例えばBRAF触媒ドメインがポリペプチド体に結合している分子)として産生され得る。このようなポリペプチド体は、得られる融合タンパク質に、多くの有利な特性のいずれかを付与するために選択され得る。例えば、ポリペプチド体は、組換え融合タンパク質の発現を増大させるために選択され得る。その代わりに、またはそれに加えて、ポリペプチド体は、例えばアフィニティー精製におけるリガンドとして作用することにより、融合タンパク質の精製を容易にし得る。タンパク質分解の切断部位を組換えタンパク質に付加し、それにより、精製の後に所望の配列をポリペプチド体から最終的に分離することができる。ポリペプチド体はまた、安定性が目的である場合、融合タンパク質に向上した安定性を付与するために選択され得る。適切なポリペプチド体の例には、例えば、得られた融合タンパク質をニッケルキレートカラム上で容易に精製することを可能にするポリヒスチジンタグが含まれる。グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースB結合タンパク質、またはプロテインAは、市販されている融合発現ベクターを用いてBRAF触媒ドメイン(またはPAD4)に融合され得る適切なポリペプチド体の他の例である。
【0078】
あるいは、本発明の自己抗原マーカーは、(例えばInvitrogenから)市販されているBRAF触媒ドメイン、またはPAD4を用いて調製され得る。
【0079】
特定の実施形態において、本発明の自己抗原マーカーは、固体の担体または支持体(例えば、ビーズまたはアレイ)上に固定化して提供される。固体表面上にポリペプチド分子を固定化するための方法は、当技術分野において知られている。とりわけ、本発明は、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーと、RAの少なくとも1つの他のバイオマーカーとを表面に固定化された状態で含む、RAの診断のためのアレイを提供する。特定の実施形態において、RAの少なくとも1つの他のバイオマーカーは、PAD4またはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーである。その代わりに、またはそれに加えて、アレイはさらに、対象から得られる生物学的試料における抗核抗体および/または抗CCP抗体の存在の検出を可能にするバイオマーカーを表面上に固定化された状態で含み得る。「RAの診断のためのアレイ」および「RAを診断するためのアレイ」という用語は、本明細書においてほぼ同じ意味で用いられる。それらは、より具体的には、生物学的試料におけるRA特異的自己抗体の検出のためのアレイを言う。
【0080】
II− 診断方法
本発明の自己抗原マーカーは、対象から得られる生物学的試料において、RAの指標となる自己抗体の存在を検出するために用いることができる。
【0081】
したがって、本発明は、対象におけるRAを診断するための方法を提供する。このような方法は、対象から得られる生物学的試料を、本発明の自己抗原マーカーと、自己抗原マーカーと生物学的試料内に存在する自己抗体との間での抗原抗体複合体の形成を可能にする時間および条件下で接触させることと、形成された任意の抗原抗体複合体の存在または不存在を検出することとを含み、抗原抗体複合体の存在は、対象におけるRAの指標となる。
【0082】
とりわけ、本発明は、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーを用いて生物学的試料における抗BRAF自己抗体の存在を検出することにより対象におけるRAを診断するための方法を提供する。このような方法はさらに、PAD4またはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーを用いて生物学的試料における抗PAD4自己抗体の存在を検出することを含み得る。
【0083】
生物学的試料
本発明の診断方法は、1つまたは複数の本発明のバイオマーカーをアッセイすることを可能にする、任意のタイプの生物学的試料の研究に適用され得る。適切な生物学的試料の例には、限定はしないが、尿、全血、血清、血漿、唾液、および滑液が含まれる。本発明の実施において用いられる生物学的試料は、対象から回収された新鮮なもしくは凍結された試料、または診断、治療、および/もしくは転帰の履歴が知られている保存された試料であり得る。生物学的試料は、例えば、対象からの血液の採取または細針吸引もしくは針生検の使用による、任意の非侵襲的手段により回収することができる。
【0084】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、試料の処理をすることなく、または限られた処理と共に、生物学的試料自体に対して実施される。
【0085】
しかし、あるいは、本発明の方法は、生物学的試料から調製されたタンパク質抽出物に対して実施され得る。この場合、タンパク質抽出物は、好ましくは、全タンパク質含有物を含む。タンパク質抽出の方法は、当技術分野において周知である(例えば、「Protein Methods」、D.M.Bollagら、第2版、1996、Wiley−Liss;「Protein Purification Methods:A Practical Approach」、E.L.HarrisおよびS.Angal(編)、1989;「Protein Purification Techniques:A Practical Approach」、S.Roe、第2版、2001、Oxford University Press;「Principles and Reactions of Protein Extraction,Purification,and Characterization」、H.Ahmed、2005、CRC Press:Boca Raton、FLを参照されたい)。様々なキットを、体液および組織からタンパク質を抽出するために用いることができる。このようなキットは、例えばBioRad Laboratories(Hercules、CA)、BD Biosciences Clontech(Mountain View、CA)、Chemicon International,Inc.(Temecula、CA)、Calbiochem(San Diego、CA)、Pierce Biotechnology(Rockford、IL)、およびInvitrogen Corp.(Carlsbad、CA)から市販されている。その後のプロトコルを非常に詳細に記載しているユーザーガイドが、通常はこれらのキットの全てに含まれる。感度、処理時間、および経費はキットごとに異なり得る。当業者であれば、特定の状況に最も適したキット(1つまたは複数)を容易に選択することができる。
【0086】
抗原抗体複合体の検出
本発明の診断方法は通常、自己抗原マーカーと生物学的試料内に存在するRA特異的自己抗体との間で形成される複合体の検出を伴う。本発明の実施において、このような抗原抗体複合体の検出は、任意の適切な方法によって行うことができる(例えば、E.HarlowおよびA.Lane、「Antibodies:A Laboratories Manual」、1988、Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor、NYを参照されたい)。
【0087】
例えば、抗原抗体複合体の検出は、免疫アッセイを用いて行うことができる。放射免疫アッセイ、酵素免疫アッセイ(EIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、および免疫蛍光免疫沈降を含む、広範な免疫アッセイ技術が利用可能である。免疫アッセイは当技術分野において周知である。このようなアッセイを実施するための方法、ならびに実用上の用途および手順は、テキストブックに要約されている。このようなテキストブックの例には、P.Tijssen,In:Practice and theory of enzyme immunoassays、R.H.Burdonおよびv.P.H.Knippenberg編、Elsevier、Amsterdam(1990)、221〜278ページ、ならびに、免疫学的検出方法を記載している、Methods in Enzymology、S.P.Colowickら編、Academic Pressの様々な巻、とりわけ第70、73、74、84、92、および121巻が含まれる。免疫アッセイは、競合的または非競合的であってよい。
【0088】
例えば、サンドイッチアッセイ技術の多くの変形のいずれかを用いて免疫アッセイを行うことができる。簡潔に述べると、本発明に従ったRA特異的自己抗体の検出に適用される典型的なサンドイッチアッセイにおいて、標識されていない自己抗原マーカーは固体基質上に固定化されており、試験される試料を、結合した自己抗原マーカーと、抗原抗体複合体の形成を可能にする時間および条件下で接触させる。インキュベーションの後、検出可能な部分構造で標識された抗体と、試験される種から得られる抗体(例えば、ヒト対象では抗ヒトIgG)を特異的に認識する抗体とを添加し、任意の抗原結合自己抗体と標識抗体との間の三重複合体の形成を可能にする条件下でインキュベートする。任意の結合していない材料を洗浄して取り除き、試料内の任意のRA特異的自己抗体の存在を、検出可能な部分構造から直接的にまたは間接的に生じたシグナルの観察によって決定する。このアッセイの変形には、固定化された自己抗原マーカーに生物学的試料および標識抗体の両方が同時に添加されるアッセイが含まれる。
【0089】
自己抗原マーカーは、固体の担体または支持体の表面に共有結合するかまたは受動的に結合することにより固定化され得る。適切な担体または支持体の材料の例には、限定はしないが、アガロース、セルロース、ニトロセルロース、デキストラン、セファデックス、セファロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、はんれい岩、フィルターペーパー、マグネタイト、イオン交換樹脂、ガラス、ポリアミンメチルビニルエーテルマレイン酸コポリマー、アミノ酸コポリマー、エチレンマレイン酸コポリマー、ナイロン、シルクなどが含まれる。固体の担体または支持体の表面上への自己抗原マーカーの固定化は、当技術分野において周知の方法を用いる、架橋、共有結合、または物理的吸着を伴い得る。固体の担体または支持体は、ビーズ、粒子、マイクロプレートウェル、アレイ、キュベット、管、膜の形態、または免疫アッセイを行うために適した任意の他の形状であり得る。特定の実施形態において、固体の担体または支持体への自己抗原マーカーの固定化には、当技術分野において周知のウェスタンブロッティング(または免疫ブロット)と呼ばれるプロセスにおける、ゲル電気泳動とその後に行われる膜(典型的には、ニトロセルロースまたはPVDF)への転写が含まれる。
【0090】
第2の抗体(すなわち、上記のサンドイッチアッセイにおいて添加される抗体)は、任意の適切な検出可能な部分構造で標識され得、前記部分構造はすなわち、その化学的性質により、三重複合体の検出、結果的には自己抗原自己抗体複合体の検出を可能にする、分析的に同定可能なシグナルをもたらす、任意の構成要素である。
【0091】
検出は、定性的または定量的であり得る。抗体などの生物学的分子を標識するための方法は、当技術分野において周知である(例えば、「Affinity Techniques.Enzyme Purification:Part B」、Methods in Enzymol.、1974、第34巻、W.B.JakobyおよびM.Wilneck(編)、Academic Press:New York、NY;ならびにM.WilchekおよびE.A.Bayer、Anal.Biochem.、1988、171:1〜32を参照されたい)。
【0092】
免疫アッセイにおいて最も一般的に用いられる検出可能な部分構造は、酵素およびフルオロフォアである。酵素免疫アッセイ(EIA)の場合、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼなどの酵素が、通常はグルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩により、第2の抗体に結合する。特異的な酵素と共に用いられる基質は通常、対応する酵素の加水分解の際の、検出可能なコロンの変化の発生について選択される。免疫蛍光の場合、第2の抗体は、その結合能を変えることなく、蛍光部分に化学的に結合する。蛍光標識された抗体が抗原抗体複合体に結合し、任意の結合していない材料が除去された後、蛍光部分により生じる蛍光シグナルが検出され、場合により定量される。あるいは、第2の抗体は、放射性同位体、化学発光部分、または生物発光部分で標識され得る。
【0093】
RAの診断
本発明の方法において、抗原抗体複合体の検出は、試験される生物学的試料におけるRA特異的自己抗体の存在の指標となり、したがって、生物学的試料を得た対象におけるRAの指標となる。したがって、本発明の方法は、患者におけるRAの診断のために用いることができる。とりわけ、本発明の方法は、RAを有することが疑われる対象を試験するために用いることができる。さらに、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーを用いる本発明の方法は、CCP陰性の患者におけるRAを診断するために用いることができる。実際、本出願人らは、BRAF触媒ドメインについて陽性のRA患者の33%がCCP陰性であったことを示している。
【0094】
当業者には、RAの診断が、本明細書において提供される方法によってもたらされる結果のみに応じて行われ得ることが理解されよう。あるいは、医者は、RAを診断するための既存の方法において用いられる他の臨床的または病理学的パラメーターも考慮し得る。したがって、本発明の方法を用いて得られる結果を、RAの診断のために行われる他の試験、アッセイ、または手順の結果と比較し、かつ/または組み合わせることができる。このような比較および/または組み合わせは、より精密な診断を提供するために役立ち得る。
【0095】
例えば、本発明のRA診断方法は、ARA基準(すなわち、F.C.Arnettら、Arthritis Rheum.、1988、31:315〜324に記載されている、RAの分類のためのAmerican College of Rheumatology 1987改定基準)と組み合わせて用いることができる。ARA基準に従うと、患者が、1)少なくとも1時間にわたる朝のこわばり、2)3つ以上の関節領域の関節炎、3)手の関節の関節炎、4)対称性関節炎、5)リウマチ結節、6)血清リウマチ因子(RF)、および7)X線画像の変化という7個の基準の少なくとも4個を示す場合、患者はRAを有していることになり、基準1〜4は少なくとも6ヶ月にわたり存在していなくてはならない。
【0096】
その代わりに、またはそれに加えて、本発明のRA診断方法の結果は、他のRAバイオマーカーを用いる1つまたは複数のアッセイの結果と組み合わせて用いることができる。したがって、特定の実施形態において、RAの診断は、本発明の方法の結果および異なるRAバイオマーカーを用いる1つまたは複数のさらなるアッセイの結果に基づき得る。例えば、RAバイオマーカーのパネルは、例えばチップまたはビーズに基づいたアレイ技術を用いて、個別にまたは同時に試験することができる。
【0097】
適切なRAバイオマーカーの例には、限定はしないが、CCP、C反応性タンパク質、血清アミロイドA、インターロイキン6(IL6)、S100タンパク質、オステオポンチン、リウマチ因子、マトリクスメタロプロテアーゼ1(MMP−1)、マトリクスメタロプロテアーゼ3(MMP−3)、ヒアルロン酸、sCD14、血管新生マーカー(血管内皮成長因子またはVEGFなど)、および骨、軟骨、または滑膜の代謝産物(ピリジノリンまたはそのグリコシル化形態、デオキシピリジノリン、架橋テロペプチド、コラーゲンネオエピトープ、CS846、軟骨オリゴマー基質タンパク質、軟骨中間層タンパク質、マトリリン、コンドロモジュラチン、オステオカルシンなど)が含まれる。
【0098】
III− キット
別の態様において、本発明は、本発明に従った診断方法を実施するために有用な材料を含むキットを提供する。本明細書において提供される診断手順は、診断研究所、実験研究所、または開業医により実施され得る。本発明は、これらの様々な状況において用いることができるキットを提供する。
【0099】
本発明に従って生物学的試料におけるRA特異的自己抗体を検出するため、および/または対象におけるRAを診断するための材料および試薬を、キット内で一緒に組み合わせることができる。本発明のそれぞれのキットは、本発明の少なくとも1つの自己抗原マーカーを、好ましくは生物学的試料における自己抗体の検出に適した量で含む。したがって、特定の実施形態において、本発明のキットは、BRAF触媒ドメインまたはその抗原結合断片を含む自己抗原マーカーを含む。他の実施形態において、本発明のキットは、BRAF触媒ドメインまたはその抗原結合断片を含む第1の自己抗原と、PAD4またはその抗原結合断片を含む第2の自己抗原とを含む。自己抗原マーカー(1つまたは複数)は、基質表面(例えば、ビーズ、アレイなど)上に固定化されていてもよく、または固定化していなくてもよい。例えば、本発明のキットは、本明細書において提供される、RAを診断するためのアレイを含み得る。あるいは、基質表面(例えば膜)が、(例えば、ゲル電気泳動および膜への転写を介して)自己抗原マーカーを固定化するために、本発明のキット内に含まれ得る。
【0100】
さらに、本発明のキットは、通常、キット内に含まれる自己抗原マーカーと生物学的試料内に存在する自己抗体との間で形成される抗原抗体複合体の検出のための少なくとも1つの試薬も含む。このような試薬は、例えば、上記の、試験される種から得られる抗体(例えば、ヒト対象では抗ヒトIgG)を特異的に認識する標識抗体であり得る。
【0101】
手順に応じて、キットはさらに、抽出用の緩衝液および/または試薬、ウェスタンブロッティング用の緩衝液および/または試薬、免疫検出用の緩衝液および/または試薬、標識用の緩衝液および/または試薬、ならびに検出手段の、1つまたは複数を含み得る。手順の様々なステップを行うためのこれらの緩衝液および試薬を用いるためのプロトコルは、キットに含まれ得る。
【0102】
本発明のキットに含まれる様々な試薬は、固体(例えば、凍結乾燥されたもの)または液体の形態で供給され得る。本発明のキットは、場合により、それぞれの個別の緩衝液および/または試薬のための様々な容器(例えば、バイアル、アンプル、試験管、フラスコ、またはボトル)を含み得る。それぞれの構成要素は通常、そのそれぞれの容器内に等分されるかまたは濃縮形態で提供されるので適している。開示される方法の特定のステップを実施するために適した他の容器もまた提供され得る。キットの個別の容器は好ましくは、市販のために厳重な管理下で維持される。
【0103】
特定の実施形態において、キットは、本発明の方法に従って対象におけるRAを診断するためにその構成要素を用いるための指示を含む。本発明の方法に従ってキットを用いるための指示は、対象から得られる生物学的試料を処理するため、および/または試験を行うための指示、または結果を解釈するための指示を含み得る。キットはまた、医薬品または生物学的製剤の製造、使用、または販売を管理する行政機関により規定されている形式の注意事項を含み得る。
【0104】
IV− RAのための新たな治療薬の開発
BRAF触媒ドメインは、RAの治療またはRAの進行の予防に潜在的に有用な化合物または物質を同定するための魅力的な標的であり得る。例えば、BRAF触媒ドメインに対する中和活性または阻害活性を有する化合物または物質を同定するためのスクリーニングが開発され得る。
【0105】
このようなスクリーニングは、生体液、または細胞などの任意の適切な生物系において実施することができる。通常、スクリーニングは、標準的な組織培養器具において成長することができる細胞を用いて行われる。適切な細胞には、任意の認識されている供給源に由来する、全ての適切な正常細胞および形質転換細胞が含まれる。好ましくは、細胞は哺乳動物(ヒト、または齧歯動物もしくは猿などの動物)由来のものである。より具体的には、細胞はヒト由来のものである。哺乳動物細胞は、任意の器官または組織由来のものであり得(例えば、骨、軟骨、または滑液)、また、BRAFを発現する細胞である限りにおいて任意の細胞型のものであり得る。本発明の方法の実施において用いられる細胞は、初代細胞、二次細胞、または不死化細胞(例えば、樹立細胞系)であり得る。それらは、当業者に周知の技術により調製することができる(例えば、細胞は、骨、軟骨、もしくは滑液から単離することができる)か、または免疫学的微生物学的商業リソースから購入することができる(例えば、American Type Culture Collection、Manassas、VAから)。その代わりに、またはそれに加えて、細胞は、例えば目的の遺伝子を含むように、遺伝子操作することができる。最初の薬剤スクリーニング(すなわち、スクリーニングの第1回目(1つまたは複数))のために開発されたアッセイが、好ましくは、市販されており通常は比較的成長が容易な樹立細胞系を用いて行われるが、一方、薬剤開発のプロセスにおいてその後に用いられるアッセイが、好ましくは、入手、維持、および/または成長が通常は不死化細胞よりも困難であるがインビボの状況ではより良好な実験モデルとなる初代細胞および二次細胞を用いて行われる。スクリーニング方法は、マルチウェルアッセイプレートの複数のウェルに含まれる細胞を用いて行うことができる。
【0106】
当業者には理解されるように、任意の種類の化合物または作用物質をスクリーニングすることができる。候補化合物は合成または天然の化合物であり得、それは単一の分子、または異なる分子の混合物もしくは複合体であり得る。候補化合物は個別にスクリーニングすることができる。あるいは、コレクションまたはライブラリーに含まれる化合物は同時にスクリーニングすることができる。
【0107】
細菌、真菌、植物、および動物の抽出物の形態の天然化合物のコレクションは、例えば、Pan Laboratories(Bothell、WA)またはMycoSearch(Durham、NC)から入手可能である。合成化合物のライブラリーは、例えばComgenex(Princeton、NJ)、Brandon Associates(Merrimack、NH)、Microsource(New Milford、CT)、およびAldrich(Milwaukee、WI)から市販されている。候補化合物のライブラリーもまた、例えばMerck、Glaxo Welcome、Bristol−Meyers−Squibb、Novartis、Monsanto/Searle、およびPharmacia UpJohnを含む化学系大企業により開発されており、市販されている。さらに、天然物のコレクション、合成により作成されたライブラリーおよび化合物は、従来の化学的、物理的、および生化学的手段を介して容易に修飾される。化学的ライブラリーは、従来の自動合成、PCR、クローニング、または専売的な合成方法により比較的容易に調製される(例えば、S.H.DeWittら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.1993、90:6909〜6913;R.N.Zuckermannら、J.Med.Chem.1994、37:2678〜2685;Carellら、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1994、33:2059〜2060;P.L.Myers、Curr.Opin.Biotechnol.1997、8:701〜707を参照されたい)。
【0108】
BRAF触媒ドメインを標的として用いると、RAの治療のための有用な作用物質は、広範なクラスの化学物質のいずれかにおいて見出すことができる。
【0109】
抗BRAF触媒ドメイン抗体をRAの治療のための治療ツールとして開発することも想定される。抗TNFアルファ抗体および抗CD20抗体が、RAの治療において現在用いられている。抗CD20抗体で治療される患者においては高い臨床応答が観察され、これは、B細胞の枯渇の結果、ひいてはB細胞抗体の枯渇の結果生じる。しかし、全てのタイプのB細胞抗体の無差別的な枯渇は、免疫系を潜在的に弱め得る。より標的化された作用という利点をもたらす、抗BRAF触媒ドメイン抗体は、抗CD20抗体の注射に関する制限および潜在的な問題を解決し得る。
【実施例】
【0110】
以下の実施例は、本発明の製造および実施の好ましい様式のいくつかを記載するものである。しかし、実施例は例示的な目的のものに過ぎず、本発明の範囲を制限することを意味するものではないことを理解されたい。さらに、実施例における記載が過去形で表されていない限り、明細書の以降の部分などのテキストは、実験が実際に行われたことまたはデータが実際に得られたことを示唆することを意図したものではない。
【0111】
以下に示す結果のほとんどは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる科学論文において、本出願人らにより報告されている(I.Augerら、「New Autoantigens in Rheumatoid Arthritis:Screening 8268 Protein Arrays with RA Patient’s Sera」、Annals Rheumatic Disease、2009、68(4):591〜594)。
【0112】
序論
HLA−DR遺伝子および自己抗体という2つの要素が、RAの発症に重要である。RAは、対立遺伝子多型を示すHLA−DR遺伝子の制御下にある。HLA−DR対立遺伝子は、RAの発症に対して感受性を有し得るか(例えば、HLA−DRB1*0401、*0404、*0101、*0102、*1001)、中立であり得るか(例えば、HLA−DR15)、または防御的であり得る(例えば、HLA−DRB1*07、*08、*0402)(P.K.Gregersenら、Arthritis and Rheumatism、1987、30:1205〜1213;D.Revironら、Arthritis and Rheumatism、2001、44:535〜540)。RAを発症するリスクは、個体が発現する2つのHLA−DR対立遺伝子によって制御されており、HLA−DRについて個体を遺伝子型決定することにより評価することができる(W.Thomsonら、Arthritis Rheum.、1999、42:757〜762)。
【0113】
本出願人らは、1992年から、フランス、マルセイユのLa Conception Hospitalのリウマチ病棟における全てのRA患者についてHLA−DRの遺伝子型決定を行っている。1000人のRA患者を500人の対照と比較することにより、本出願人らは、個体群における72個の最も一般的な遺伝子型のそれぞれについて、RAを発症する相対的なリスクを示す、HLA−DR遺伝子型のリスク表を得ている。HLA−DRB1*0401とHLA−DRB1*0404との間の並はずれた相乗効果、およびHLA−DRB1*07により付与される非常に強力な保護が確認された。これらの実験によりまた、DR7/DR9遺伝子型が、感受性のある対立遺伝子を全く含まないにも関わらず、RAを発症する非常に高いリスクを付与することが、意外にも実証された。
【0114】
RAは、自己抗体介在性の疾患である。RAにおける最も重要な自己抗体は、フィブリン、フィラグリン、およびビメンチンなどのタンパク質上のシトルリン残基に対するものである。本出願人らは最近、HLA−DRB1*0404がRA患者の血清における抗シトルリン化フィブリノゲンにも関連することを観察した。実際、HLA−DRB1*0404を発現するRA患者の83%が、シトルリン化フィブリノゲンに対する抗体を有することが明らかになった(I.Augerら、Arthritis and Rheumatism、2005、52:3424〜3432)。しかし、カルパスタチンなどの非シトルリン化タンパク質もまた、RA患者から得られる自己抗体により標的化される。HLA−DR対立遺伝子についてホモ接合性のRA患者の血清で滑膜タンパク質をスクリーニングすることによって、本出願人らは、HLA−DRB1*0404についてホモ接合型のRA患者の血清が、カルパイン(軟骨の破壊に関与するプロテアーゼ)の天然阻害剤であるカルパスタチンとして同定される100kDの滑膜タンパク質を認識することを観察した。実際、HLA−DRB1*0404を発現するRA患者の50%が、滑膜カルパスタチンに対する自己抗体を有する(I.Augerら、Annals of Rheumatic Diseases、2007、66:1588〜1593)。本出願人らによって得られたデータは、HLA−DRB1*0404が、RAにおける多くの自己抗体応答との自らの関連を可能にする固有の機能を有するという考えを支持するものである。
【0115】
以下に示す研究において、本出願人らは、HLA−DRB1*0401/0404、*0401/0401、*0404/0404、*0404/07、*0401/07、*07/07、*09/07という特定のHLA−DR遺伝子型を有するRA患者から得られる血清を使用して、8000を超えるヒトタンパク質を含むタンパク質アレイをスクリーニングし、それにより特異的な自己抗体のパターンを同定した。
【0116】
患者および方法
タンパク質マイクロアレイ分析のためのRA患者の血清
フランス、マルセイユのLa Conception Hospitalのリウマチ棟の19人のRA患者を、この研究のために選択した。全てのRA患者は、American College of Rheumatology 1987改定基準(F.C.Arnettら、Arthritis Rheum.、1988、31:315〜324)を満たしていた。HLA−DRのオリゴ型決定を、それぞれの患者について行った(O.Ollerupら、Tissue Antigens、1992、39:225〜235)。患者のうち3人は、HLA−DRB1*0401およびHLA−DRB1*0404の両方を発現することが明らかになり、4人の患者はHLA−DRB1*0401についてホモ接合型であり、3人の患者はHLA−DRB1*0404についてホモ接合型であり、2人の患者はHLA−DRB1*0401およびHLA−DR7の両方を発現し、2人の患者はHLA−DRB1*0404およびHLA−DR7の両方を発現し、1人の患者はHLA−DR7およびHLA−DR13を発現し、2人の患者はHLA−DR7についてホモ接合型であり、2人の患者は予想外のハイリスクな遺伝子型HLA−DR7/DR9を発現した。
【0117】
タンパク質マイクロアレイ分析のための対照の血清
対象群は、マルセイユのLa Conception Hospitalのリウマチ棟の、7人の脊椎関節症(AS)患者および2人の全身性エリテマトーデス(SLE)患者、ならびに、フランス、パリのHospital Cochin、Hospital Saint Antoine、およびHospital Saint Louis、フランス、リールのHospital Claude Huriez、およびマルセイユのHospital La Conceptionとの協力で作られた全国的なコホートの、4人の全身性硬化(SSC)患者からなるものであった。10人の健康な対照は、自己免疫的な病状を排除するための健康評価の後に、研究所スタッフのボランティアおよびボランティアの骨髄ドナーから採用した。全ての参加者からインフォームドコンセントを得た。
【0118】
ヒトタンパク質マイクロアレイ
Invitrogenから市販されている「ProtoArrayヒトタンパク質マイクロアレイ」を本研究において用いた。このマイクロアレイは8268個のヒトタンパク質を含むものである(G.A.Michaudら、「Biomarker identification using Protoarray high density protein microarrays:Profiling autoantibodies in disease」、Invitrogen Note Information;M.E.Hudsonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、2007、44:17494〜17499)。
【0119】
ProtoArrayヒトタンパク質マイクロアレイ上のタンパク質の2%がプロテアーゼ/ペプチダーゼであり、2%が分泌タンパク質であり、3%が転写因子であり、3%が細胞死タンパク質であり、5%がプロテインキナーゼであり、11%が核タンパク質であり、17%が膜タンパク質であり、そして31%が代謝タンパク質であった(Invitrogenにより提供されるタンパク質含有量リスト4.0からのデータ)。マイクロアレイ上の全てのタンパク質は(以下に記載される)GST融合タンパク質として発現し、天然の条件下で精製され、ニトロセルロースで被覆したスライドガラス上に2つ組でスポットされた。このヒトタンパク質のコレクションは、ヒトUltimate ORFクローンコレクションに由来するものである(http://orf.invitrogen.comからのデータ)。それぞれのクローンについて、GenBankで配列の確認を行った。ヒトタンパク質コレクションを作成するために用いられたそれぞれのクローンは、Gateway(登録商標)ベクター内にクローニングされたヒトORFであった。それぞれの発現クローンを用いて、目的のタンパク質を、バキュロウイルス発現系を用いてN末端GST融合タンパク質として発現させた。それぞれの発現したタンパク質の分子量を、ウェスタンブロッティングによって決定した。
【0120】
タンパク質アレイ上での血清プロファイリングアッセイ
アレイスライドを1%BSA/PBSTでブロックし、次に、(tween20を含むリン酸緩衝生理食塩水内の)血清試料の存在下で、4℃で1時間にわたりインキュベートした。アレイスライドを次に、希釈した(1:500)ヒト血清を用いて4℃で1.5時間にわたりプローブした。PBSTで洗浄した後、Alexa Fluor(登録商標)647染料に結合した1μg/mLの抗ヒトIgGをスライドに添加した。スライドを次に洗浄し、乾燥させた(Partnership、Evry、France)。並行して、別のスライド上で、陰性対照の実験を行った。対照においては、血清の不存在下で緩衝液とインキュベートしたことを除いて、上記と同じ条件下でスライドを処理した。この対照の目的は、データの取得および分析のための基準点を得ることである。
【0121】
データの取得/分析
アレイのスライドを、GenePix(登録商標)4000B蛍光スキャナを用いてスキャンした。データは、GenePix(登録商標)Proソフトウェアを用いて取得し、ProtoArray(商標)Prospector 2.0を用いて処理した。
【0122】
データの分析
マイクロアレイのタンパク質の間の自己抗原を同定するために、それぞれのアレイタンパク質について、Zスコア、CI P値(チェビシェフの不等式の精度値)、およびCVを含む、一連の値を計算した。Zスコアは、全てのタンパク質特性と比較した、アレイ上のタンパク質スポットから得られるシグナルに基づいて計算した。Zスコアは、シグナル使用値から、アレイ上の全てのヒトタンパク質特性から得られるシグナル使用値の平均を引き、全てのヒトタンパク質特性についてのシグナル使用値に対する標準偏差で割ったものである。CI P値は、全ての陰性対照のスポットに対する強度を評価し、観察されたシグナルが陰性対照の分布に由来する可能性を計算する。CI P値が低いほど、シグナルがランダムな事象によるものではない可能性が高い。CVは、2つ組間の類似性を評価する。タンパク質は、Zスコア>3.0、CI P値<0.05、かつCV<0.5である場合、免疫反応性自己抗原として同定された。
【0123】
ELISAおよびウェスタンブロット分析のためのRA患者および対照
これらの実験のために、マルセイユのLa Conception Hospitalのリウマチ病棟の、RA患者および脊椎関節症(AS)患者を選択した。全てのRA患者は、RAについての1987年のAmerican College of Rheumatology基準を満たしていた。研究所スタッフおよびMarseille Blood Transfusion Centerのスタッフからのボランティアが、正常な対照として参加した。それぞれの患者および正常な対照に対して、HLA−DRオリゴ型決定を行った。全ての参加者からインフォームドコンセントを得た。
【0124】
ELISAによる自己抗体の検出
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.4で希釈した、0.1μg/mLの目的のタンパク質(すなわち、マイクロアレイ実験で同定された候補自己抗原マーカー)で、プレートを一晩被覆した。プレートを、5%ミルクを含むPBSでブロックし、次に、PBS内で1:100に希釈した血清の存在下で3時間にわたりインキュベートした。0.1%Tween20で洗浄した後、ペルオキシダーゼに結合した抗ヒトIgG(Sigma、France)をプレートに添加した。光学密度(OD)を405nmで読み取った。目的のタンパク質を含まないプレートのウェルに添加したそれぞれの血清の光学密度を測定することにより、バックグラウンドのODを得た。測定したOD値がバックグラウンドのODの2倍を超えた場合、血清はタンパク質について陽性であると判断された。
【0125】
ウェスタンブロッティングによる自己抗体の検出
タンパク質(すなわち、マイクロアレイ実験において同定された候補自己抗原マーカー)を、10%SDS PAGEゲル上で分離し、PVDF膜に転写した。ブロットを患者または対照の血清の存在下でインキュベートし、その後、ペルオキシダーゼに結合した抗ヒトIgGを添加した。検出は化学発光により行った(Roche Diagnostics、Meylan、France)。
【0126】
結果
RA患者に関する自己抗体パターン
19人のRA患者、ならびに23人の対照(脊椎関節症(AS)から7人、全身性エリテマトーデス(SLE)から2人、および全身性硬化(SSC)から4人、および健康な個体から10人)を用いて、8268個のヒトタンパク質を含むアレイをプローブした。アレイ上のタンパク質に結合した自己抗体の存在を、蛍光標識した抗ヒトIgG抗体によって検出した。免疫反応性自己抗原は、Zスコア>3.0、CI P値<0.05、およびCV<0.5により規定した。
【0127】
図1Aは、この研究において試験されたそれぞれの患者および対照により認識されるタンパク質の数を表す。図1Bおよび以下の表において示されるように、各群の参加者により認識されるタンパク質の数は非常に類似していることが明らかになった。
【0128】
各群の患者および健康な対照により認識されるタンパク質の平均数
【0129】
【表4】
【0130】
19人のRA患者(1から19と番号付けされている)のうち、14人がCCP陽性であり(患者2〜5、7〜9、11、12、14〜17、および19)、5人がCCP陰性であった(患者1、6、10、13、および18)。CCP陽性のRA患者の群により認識されるタンパク質の数は、CCP陰性のRA患者の群により認識されるタンパク質の数に匹敵するものであった(以下の表を参照されたい)。
【0131】
CCP陽性およびCCP陰性のRA患者により認識されるタンパク質の平均数
【0132】
【表5】
【0133】
試験したRA患者のうち、10人がRAに10年未満罹患しており(患者6および8〜16)、9人がRAに10年を超えて罹患していた(患者1〜5、7、および17〜19)。RA患者により認識されるタンパク質の数は、疾患の期間に依存しないことが明らかになった(以下の表を参照されたい)。
【0134】
RAを10年未満または10年を超えて有している患者により認識されるタンパク質の平均数
【0135】
【表6】
【0136】
要約すると、RA患者により認識されるタンパク質の平均数は、様々な対照により認識されるタンパク質の数とは有意には異ならなかった。疾患の期間およびCCP反応性もまた、RA患者により認識されるタンパク質の数に影響しないことが明らかになった。
【0137】
RA患者におけるHLA−DR遺伝子型と関連する自己抗体パターン
疾患を発症するリスクの高さまたは低さに関連するHLA−DR遺伝子型を有するRA患者の血清を試験して、タンパク質アレイ上でのそれらの反応性パターンを比較した。既に上述したように、2つの感受性対立遺伝子を含むHLA−DR遺伝子型は、感受性対立遺伝子を1つだけ含む遺伝子型よりも高いリスクを付与し、感受性対立遺伝子を1つだけ含む遺伝子型はそれ自体、感受性対立遺伝子を含まないDR遺伝子型よりも高いリスクを付与する。HLA−DRB1*0401およびHLA−DRB1*0404の両方を発現する3人の患者、HLA−DRB1*0401についてホモ接合型である4人の患者、HLA−DRB1*0404についてホモ接合型である3人の患者、HLA−DRB1*0401およびHLA−DR7の両方を発現する2人の患者、HLA−DRB1*0404およびHLA−DR7の両方を発現する2人の患者、HLA−DR7およびHLA−DR13を発現する1人の患者、HLA−DR7についてホモ接合型である2人の患者、ならびにHLA−DR7/DR9を発現する2人の患者を試験した。
【0138】
図2および以下の表に示されるように、2個、1個、または0個のRA関連HLA−DR対立遺伝子を発現するRA患者により認識されるタンパク質の数において、差は見られなかった。
【0139】
様々なHLA−DR遺伝子型を有するRA患者により認識されるタンパク質の平均数
【0140】
【表7】
【0141】
RAに関連する特異的抗体の同定
図3は、少なくとも1人のRA患者、少なくとも2人のRA患者、少なくとも3人のRA患者などにより認識される様々なタンパク質の総数を示す。図3ではまた、AS患者の少なくとも20%、SSC患者の少なくとも20%、および健康な個体の少なくとも20%によっても認識される、RA患者により認識されるタンパク質も示される。この図に表される結果により、RA患者の血清における自己抗体によって標的化される多くのタンパク質が、RAに特異的ではないが、対照群から得られる自己抗体とも反応性を有することが実証される。
【0142】
試験される個体の自己抗体により標的化されるタンパク質のうち、3つのタンパク質のみが、RA患者の血清により特異的に認識され、対照群の血清によっては認識されないことが明らかになった(図4)。これらのタンパク質は、PAD4(ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4)、PKCベータ1(プロテインキナーゼCベータ1)、およびPIP4K2C(ホスファチジルイノシトール4ホスフェート5キナーゼII型ガンマ)である。対照の0/23がPAD4について陽性であるのに対し、本研究で試験されたRA患者のうち9/19がPAD4について陽性であることが明らかになった(p=0)。同様に、対照の0/23がPCKベータ1について陽性であるのに対し、RA患者の6/19がPCKベータ1について陽性であることが明らかになった(p=0.014)。最後に、対照の0/23がPIP4K2Cに対して陽性であるのに対し、RA患者の5/19がPIP4K2Cに対して陽性であることが明らかになった(p=0.032)。
【0143】
BRAF触媒ドメイン(v rafマウス肉腫ウイルス癌遺伝子類似体B1触媒ドメイン)は、RAについての他の同定された候補マーカーのうち、最も興味深いタンパク質の1つである。実際、疾患対照の0/13および健康な個体の1/10のみがBRAFについて陽性であるのに対し、このアッセイにおいて試験されたRA患者の9/19がBRAFについて陽性であることが明らかになった(p=0.004、23人の対照に対し19の患者)。
【0144】
自己抗原の有効性の実証
タンパク質アレイの検出の有効性を確認するため、様々なアッセイを用いて同一のタンパク質を試験した。
【0145】
患者および対照における陽性血清の頻度を、精製PAD4およびPIP4K2Cを免疫吸着剤として用いて、ELISAによって決定した。本出願人らが用いた条件下では、ELISAアッセイを用いてPKCベータ1およびBRAF触媒ドメインについての反応性を検出することは不可能であったため、これらの自己抗原マーカー候補の有効性の実証において、代わりにウェスタンブロッティングアッセイを用いた。
【0146】
PAD4。ELISA実験の結果は、AS患者の0%および健康な対照の3%がPAD4について陽性であるのに対し、RA患者の29%がPAD4について陽性であることを示した(図5A)。抗PAD4抗体の産生に対するRA関連HLA−DR対立遺伝子の影響を評価するために、2個(SE+/SE+)、1個(SE+/SE−)、または0個(SE−/SE−)のRA関連HLA−DR対立遺伝子を発現する患者群の間で、PAD4について陽性の血清の頻度を比較した。図5Bに示すように、RA関連HLA−DR対立遺伝子を発現しない患者(SE−/SE−)と少なくとも1つのRA関連HLA−DR対立遺伝子を発現する患者(SE+/SE+およびSE+/SE−)との間で、PAD4について陽性のRA患者のパーセンテージに有意な差はなかった。
【0147】
HLA−DRB1*0401/HLA−DRB1*0404を発現する患者の36%、HLA−DRB1*0401/HLA−DRB1*0401を発現する患者の25%、およびHLA−DRB1*0404/HLA−DRB1*0404を発現する患者の17%がPAD4について陽性であるのに対し、SE+/SE+患者のうち、HLA−DRB1*0401/HLA−DRB1*0401を発現する患者の80%がPAD4について陽性であることが明らかになった。
【0148】
したがって、これらのELISA実験により、PAD4がRAにおける特異的自己抗原であることが確認された。
【0149】
PIP4K2C。ELISAアッセイを用いて、AS患者の18%および健康な対照の10%がPIP4K2Cについて陽性であるのに対し、試験したRA患者の18%がPIP4K2Cについて陽性であることが明らかになった(図6A)。したがって、これらの結果によっては、PIP4K2CはRAにおける特異的自己抗原として有効性を実証されなかった。
【0150】
PIP4K2Cについて陽性の患者のパーセンテージを、2個、1個、または0個のRA関連HLA−DR対立遺伝子を発現するRA患者についても計算した。驚くべきことに、1個または0個のRA関連HLA−DR対立遺伝子を発現するRA患者よりも高いパーセンテージの、2個のRA関連HLA−DR対立遺伝子を発現する患者が、PIP4K2Cについて陽性であることが明らかになった。実際、SE+/SE−患者の5%およびSE−/SE−患者の0%がPIP4PK2Cについて陽性であるのに対し、SE+/SE+患者の40%がPIP4PK2Cについて陽性であることが明らかになった。
【0151】
PKCベータ1。ウェスタンブロッティングにおいて、6人のRA患者のうち2人のみがPKCベータ1について陽性であることが明らかになった。この研究において用いられる条件下で観察された部分的な反応性に基づいては、PKCベータ1はRAにおける特異的自己抗原として有効性を実証され得ない。
【0152】
BRAF触媒ドメイン。ウェスタンブロッティングを用いて、この研究において試験された19人のRA患者の47%がBRAF触媒ドメインについて陽性であることが明らかになったが、一方、17人のAS患者および17人の健康な対照のいずれも反応性を示さなかった(図7A)。これらの結果により、BRAF触媒ドメインはRAにおける特異的自己抗原として確認される。
【0153】
RA患者において、BRAF触媒ドメインについての陽性とHLA−DR遺伝子型との間では関連は検出されなかった(図7B)。
【0154】
考察
既に上述したように、RAを発症するリスクは、個体により発現される2つのHLA−DR対立遺伝子により制御される。HLA−DR対立遺伝子は、RAの発症に対して感受性であり得るか、防御的であり得るか、または中立であり得る。さらに、個体により発現される2つのHLA−DR対立遺伝子は相互作用する。実際、RA患者においてほぼ例外なく見られるHLA−DRB1−0401/0404遺伝子型におけるように、2つの感受性対立遺伝子は協働し得、その結果、RAを発症する非常に高いリスクをもたらす。この相乗効果は依然として説明されておらず、RAの発症機序に対する各対立遺伝子のそれぞれの寄与は理解されていない。過去に、本出願人らは、HLA−DRB1*0401と0404との間の並はずれた相乗効果に焦点を当てており、これらの2つの対立遺伝子について固有の特性を記載した。HLA−DRB1*0401は、構成的な熱ショックタンパク質hsp73との相互作用を介して並はずれて良好な抗原のプロセシングを可能にする、QKRAAモチーフを含む(I.Augerら、Nature Medicine、1996、3:306〜310;I.Augerら、Arthritis and Rheumatism、2002、46:929〜933;S.Rothら、J.Immunol.、2002、169:3015〜3020)。HLA−DRB1−0404は、並はずれて良好な抗体産生に関連すると考えられる。これは抗シトルリン化フィブリン、抗カルパスタチン、抗CCP抗体にも当てはまり、HLA−DRB1*0404の広いペプチド結合特性にも関連し得る(I.Augerら、Arthritis and Rheumatism、2005、52:3424〜3432;I.Augerら、Annals of Rheumatic Diseases、2007、66:1588〜1593;C.Charpinら、Clin.Exp.Rheumatol.、2008、26:627〜631)。
【0155】
特異的なHLA−DR遺伝子型が特異的な自己抗体の産生パターンに関連していたかを確認するために、本出願人らは、8000を超えるヒトタンパク質を含むアレイを用いて、様々なHLA−DR遺伝子型を発現するRA患者の血清において自己抗体を分析した。本出願人らは、RA患者により認識されるタンパク質の大部分が対照の血清においても見られることを観察した。いずれの特異的な抗体パターンも、特定のHLA−DR遺伝子型と関連しないことが明らかになった。他方で、この研究により、RAの診断において用いることができるRAのタンパク質マーカーが同定された。とりわけ、本出願人らは、BRAF触媒ドメインおよびPAD4という2つの主要なタンパク質を自己抗原マーカーとして同定し、かつ有効性を実証した。
【0156】
他の実施形態
本発明の他の実施形態は、本明細書において開示される発明の明細事項および実施の検討から、当業者に明らかとなろう。明細事項および実施例は例示的なものにすぎないと見なされるべきものであり、本発明の真の範囲は以下の特許請求の範囲により示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における関節リウマチのインビトロ診断のための方法であって、
BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーを提供するステップと、
対象から得られる生物学的試料を、自己抗原マーカーと、抗原抗体複合体の形成を可能にする時間および条件下で接触させるステップと、
形成された任意の抗原抗体複合体の存在または不存在を検出するステップと
を含み、前記抗原抗体複合体の存在が対象における関節リウマチの指標となる方法。
【請求項2】
対象がCCP陰性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生物学的試料が、全血、血清、血漿、尿、および滑液からなる群から選択される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
自己抗原マーカーが固体の担体または支持体上に固定化される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
抗原抗体複合体の存在または不存在の検出が免疫アッセイによるものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
BRAF触媒ドメインがヒト由来のものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
BRAF触媒ドメインが、配列番号2のアミノ酸416からアミノ酸766にわたるアミノ酸配列を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記対象から得られる生物学的試料における抗PAD4抗体を検出するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記対象から得られる生物学的試料においてC反応性タンパク質、血清アミロイドA、インターロイキン6、S100タンパク質、オステオポンチン、リウマチ因子、マトリクスメタロプロテアーゼ1、マトリクスメタロプロテアーゼ3、ヒアルロン酸、sCD14、血管新生マーカー、および骨、軟骨、または滑膜の代謝産物からなる群から選択される少なくとも1つのマーカーの濃度を測定することをさらに含む、請求項1または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
対象から得られる生物学的試料における抗BRAF自己抗体を検出するためのキットであって、
BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーと、
自己抗原マーカーと生物学的試料内に存在する自己抗体との間で形成される抗原抗体複合体を検出するための試薬であって、前記自己抗体が、関節リウマチの指標となる抗BRAF自己抗体である試薬と
を含むキット。
【請求項11】
自己抗原マーカーが固体の担体または支持体上に固定化される、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法を実施するための指示をさらに含む、請求項10または請求項11に記載のキット。
【請求項13】
PAD4またはその抗体結合断片を含む第2の自己抗原マーカーと、
第2の自己抗原マーカーと生物学的試料内に存在する自己抗体との間で形成される抗原抗体複合体を検出するための第2の試薬であって、前記自己抗体が、関節リウマチの指標となる抗PAD4自己抗体である試薬と
をさらに含む、請求項10〜12のいずれか一項に記載のキット。
【請求項14】
対象における関節リウマチを診断するためのアレイであって、その表面に付着した、
BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーと、場合によっては
PAD4またはその抗体結合断片を含む第2の自己抗原マーカーと
を含むアレイ。
【請求項15】
その表面に付着した、生物学的試料におけるRA特異的自己抗体、とりわけ抗核抗体および抗CCP抗体の存在を検出するための少なくとも1つのさらなる自己抗原マーカーをさらに含む、請求項14に記載のアレイ。
【請求項16】
関節リウマチのマーカーとしての、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーの使用。
【請求項1】
対象における関節リウマチのインビトロ診断のための方法であって、
BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーを提供するステップと、
対象から得られる生物学的試料を、自己抗原マーカーと、抗原抗体複合体の形成を可能にする時間および条件下で接触させるステップと、
形成された任意の抗原抗体複合体の存在または不存在を検出するステップと
を含み、前記抗原抗体複合体の存在が対象における関節リウマチの指標となる方法。
【請求項2】
対象がCCP陰性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生物学的試料が、全血、血清、血漿、尿、および滑液からなる群から選択される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
自己抗原マーカーが固体の担体または支持体上に固定化される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
抗原抗体複合体の存在または不存在の検出が免疫アッセイによるものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
BRAF触媒ドメインがヒト由来のものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
BRAF触媒ドメインが、配列番号2のアミノ酸416からアミノ酸766にわたるアミノ酸配列を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記対象から得られる生物学的試料における抗PAD4抗体を検出するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記対象から得られる生物学的試料においてC反応性タンパク質、血清アミロイドA、インターロイキン6、S100タンパク質、オステオポンチン、リウマチ因子、マトリクスメタロプロテアーゼ1、マトリクスメタロプロテアーゼ3、ヒアルロン酸、sCD14、血管新生マーカー、および骨、軟骨、または滑膜の代謝産物からなる群から選択される少なくとも1つのマーカーの濃度を測定することをさらに含む、請求項1または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
対象から得られる生物学的試料における抗BRAF自己抗体を検出するためのキットであって、
BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーと、
自己抗原マーカーと生物学的試料内に存在する自己抗体との間で形成される抗原抗体複合体を検出するための試薬であって、前記自己抗体が、関節リウマチの指標となる抗BRAF自己抗体である試薬と
を含むキット。
【請求項11】
自己抗原マーカーが固体の担体または支持体上に固定化される、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法を実施するための指示をさらに含む、請求項10または請求項11に記載のキット。
【請求項13】
PAD4またはその抗体結合断片を含む第2の自己抗原マーカーと、
第2の自己抗原マーカーと生物学的試料内に存在する自己抗体との間で形成される抗原抗体複合体を検出するための第2の試薬であって、前記自己抗体が、関節リウマチの指標となる抗PAD4自己抗体である試薬と
をさらに含む、請求項10〜12のいずれか一項に記載のキット。
【請求項14】
対象における関節リウマチを診断するためのアレイであって、その表面に付着した、
BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーと、場合によっては
PAD4またはその抗体結合断片を含む第2の自己抗原マーカーと
を含むアレイ。
【請求項15】
その表面に付着した、生物学的試料におけるRA特異的自己抗体、とりわけ抗核抗体および抗CCP抗体の存在を検出するための少なくとも1つのさらなる自己抗原マーカーをさらに含む、請求項14に記載のアレイ。
【請求項16】
関節リウマチのマーカーとしての、BRAF触媒ドメインまたはその抗体結合断片を含む自己抗原マーカーの使用。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【公表番号】特表2011−521216(P2011−521216A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508900(P2011−508900)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055731
【国際公開番号】WO2009/138408
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(599176506)アンセルム(アンスチチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル) (23)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055731
【国際公開番号】WO2009/138408
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(599176506)アンセルム(アンスチチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル) (23)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]