説明

関節リウマチ治療剤組成物

【課題】 関節リウマチの予防、治療および再発予防できる治療剤組成物を提供すること
【解決手段】 抗関節リウマチ作用を有する抗体として、ニワトリ、ウシ、ブタ等のII型コラーゲンに対する抗体、抗細菌内毒素抗体のいずれか、またはそれらの混合物を含有する組成物とする。抗体はウシ、ニワトリ、羊、ヤギ等の家畜をII型コラーゲン、グラム陰性細菌のホルマリン処理ないし加熱死菌をワクチンとして免疫して、乳、血清または卵から分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は関節リウマチの治療剤組成物に関し、さらに詳しくは抗リウマチ作用を有する抗体を含有する関節リウマチの治療・予防効果を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチは手や足の関節の発赤、疼痛、腫れ、に始まり、関節の破壊、変形に進み、痛みとともに関節の機能麻痺に至る炎症性の関節の疾患である。その薬物療法には炎症を止めるために、副腎皮質ホルモン剤、免疫抑制剤、酸性抗炎症剤、有機金化合物、抗サイトカイン抗体その他の薬剤の組み合わせによる治療が行われている。これらの薬物療法はいずれも所謂、対症療法である。
【0003】
関節リウマチの病因は今日、一般的には不明とされているが、関節軟骨の主成分であるII型コラーゲンに対する自己免疫が関係するという学説に基づく研究がなされている。
【0004】
食事中には、多くの抗原物質があるが、通常、経口摂取では、これらの抗原にたいする抗体産生が起こらない。この現象は経口免疫寛容と称される。
【0005】
抗体産生は、抗体産生の促進に働くリンパ球(ヘルパーT細胞、Th)と、抑制的に働くリンパ球(サプレッサーT細胞、Ts)により調節されている。サプレッサーT細胞が優位な状態では抗体産生は抑制されることから、II型コラーゲンに対する自己抗体の産生を抑制するために、II型コラーゲンに対するサプレッサーT細胞を賦活する意図で、動物由来のII型コラーゲン由来のペプチド、II型コラーゲンの変性物を投与する試みがなされている。この例として、例えば特許文献1〜3が挙げられ、これらはいずれも経口免疫寛容を意図した特許である。
【0006】
本発明者らは、関節リウマチの予防・治療に資するため、病因の解明をおこなってきた。関節リウマチの病因は、内的要因として、患者の体質的、遺伝的要因として、関節リウマチ患者では経口免疫の破綻があること、外的要因として、食物中の異種動物由来のII型コラーゲン、および、細菌内毒素の消化管からの吸収が原因となっているという仮説のもとに研究を開始した。
【0007】
経口免疫の破綻とは以下の状態である。経口摂取された抗原に対しては、経口免疫寛容が正常の免疫応答であるが、内因的、体質的、環境的要因により、正常な免疫寛容を誘導し得なくなり、自己抗体を産生するにいたるという考えである。この仮説の検証のために、マウスにおけるコラーゲン関節炎に関して、類似抗原および細菌内毒素の関節炎誘発活性について、マウスを用いて検討した。DBA/1系マウスはII型コラーゲン関節炎を容易に発症する遺伝形質を有するマウスである。このマウスにニワトリ由来II型コラーゲン、あるいは熱変性させたものを経口的に与えると、マウスの血液中にはマウスのII型コラーゲンに対する抗体が産生されるとともに、関節炎が発症した。この関節炎は細菌内毒素(別称リポポリサッカライドまたはLPS)の併用で増悪した。またニワトリ由来II型コラーゲンを除いた、細菌内毒素のみの長期投与でも関節炎を発症した(非特許文献1)。
【0008】
これらの結果はII型コラーゲンに対する抗体とともに、細菌内毒素による免疫系の非特異的賦活ないし疲弊が関節リウマチの発症に関与すること、さらに、経口免疫寛容が正立しない場合のあることを示している。この実験においては、前記特許文献1〜3で示された、免疫寛容を意図して調整した熱変性II型コラーゲンについても免疫寛容を誘導できないことがあることが示された。
【特許文献1】特開平07−138187号公報
【特許文献2】特開平09−059176号公報
【特許文献3】特開平09−255581号公報
【非特許文献1】K. Terato et al. Br. J. Rheum. 35,828-838, 1996
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、関節リウマチの予防・治療および再発予防機能を有する組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、II型コラーゲン、グラム陰性腸内細菌死菌体の各々またはこれらの混合物をワクチンとしてウシ、ヤギ、羊、鶏を免疫し、抗体を産生させ、その抗体を、ウシ、ヤギ、羊の場合は乳として分泌させ、鶏は鶏卵黄抗体として分泌させ、それらの抗体を、食品または医薬品の組成物とすることにより、課題を達成できることを見出し、本発明に到達した。すなわち、それらの抗体を含有する食品または医薬品を摂取することにより、食品由来のII型コラーゲン、口腔や腸内において細菌によって産生される内毒素を、各々に対応する抗体と反応させることにより不活性化ないしは消化管からの吸収を防止できること、その結果として、関節リウマチを予防し、ないしは病態を改善し治療に役立つことを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は下記のとおりである。
1)抗リウマチ作用を有する抗体を有効成分とする関節リウマチ治療剤組成物、
2)抗リウマチ作用を有する抗体が抗II型コラーゲン抗体である前記1)に記載の関節リウマチ治療剤組成物、
3)抗II型コラーゲン抗体が、抗ニワトリII型コラーゲン抗体、抗ウシII型コラーゲン抗体、抗ブタII型コラーゲン抗体の少なくともいずれかである請求項2に記載の関節リウマチ治療剤組成物、
4)抗リウマチ作用を有する抗体が抗細菌内毒素抗体である請求項1に記載の関節リウマチ治療剤組成物、
5)抗リウマチ作用を有する抗体が、抗II型コラーゲン抗体と抗細菌内毒素抗体を任意の割合で混合したものである請求項1に記載の関節リウマチ治療剤組成物、および
6)抗II型コラーゲン抗体および抗細菌内毒素抗体の少なくともいずれかを含有し、総抗体量として0.1質量%以上を含有する請求項1に記載の関節リウマチ治療剤組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、それを含有する食品や医薬品等として摂取され、食品由来のII型コラーゲンや口腔内、腸内において細菌の産生する毒素と、組成物中の抗体が反応することにより、関節炎の発症を抑制し、関節リウマチの予防ないしは治療用に用いことのできる関節リウマチ治療剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明においては、関節リウマチの要因の1つであることが前記で判明している2種の抗原を家畜動物に接種して免疫し、産生したそれらの抗原に対する抗体を家畜の乳、卵または血液から分離し、得られた抗体を食品または医薬品のための組成物とするものである。以下に、各項ごとに説明する。
【0014】
1.免疫に用いる抗原
本発明においては、抗原として動物のII型コラーゲンおよびグラム陰性細菌もしくはその内毒素(LPS)を好ましく使用する。
1)ウシ、ブタ、およびニワトリのII型コラーゲンは市販品(Chondrex社)を用いることができる。抗原は単独でも混合でも良いが、ニワトリ、ウシ、ブタ、のII型コラーゲンを任意の組み合わせで混合した混合ワクチンが効率的かつ経済的である。
【0015】
2)細菌内毒素に対する抗体を産生させるために免疫に用いる抗原としては、人体寄生性グラム陰性細菌で、以下に示す属に該当する細菌である。 すなわち、フソバクテリム(Fusobacterium), ベイヨネラ(Veillonella), メガスフェラ(Megasphaera),ナイセリア(Neisseria), モラクセラ(Moraxella), ブランハメラ(Branhamella), アシネトバクター(Acinetobacter), シトロバクター(Citrobacter), エンテロバクター(Enterobacter), 大腸菌(Escherichia), ハフニア(Hafnia),クレブシエラ(Klebsiella), モルガネラ)(Morganella), プロテウス(Proteus), プロビデンシア(Providencia), サルモネラ(Salmonella), セラチア(Serratia), シゲラ(Shigella), エルシニア(Yersinia), ビブリオ(Vibrio), エロモナス(Aeromonas), プレジオモナス(Plesiomonas), ヘモフィルス(Haemophillus), パスツレラ(Pasteurella), 緑膿菌(Pseudomonas), レジオネラ(Legionella)などのホルマリン処理ないし加熱死菌を死菌ワクチンとする。ワクチンは単独でも混合ワクチンでもよいが、混合ワクチンが効率的である。菌の培養は成書に記載された通常の方法でよい。
【0016】
3)動物は微生物と共生しており、各動物種の消化管には各動物固有の微生物とともに、ヒトと共通の微生物も生存し、これらが抗原となって動物は抗体を産生し,保有する。これらは自然抗体と称される。ヒトと共通のグラム陰性菌の内毒素に対する抗体も、自然抗体として存在するので、これらを用いることもできる。
【0017】
2.動物の選択
通常、自己ないし同種の抗原に対しては、それを注射しても動物は抗体を産生しないことが知られている。さらに、産生された抗体の量は、抗原と免疫される動物種の異種性の隔たりが大きいほど多くなる傾向がある。したがって、例えば、ウシII型コラーゲンに対する抗体の作成はウシII型コラーゲンを鶏に免疫し、鶏卵卵黄抗体として回収することが望ましい。また、ニワトリII型コラーゲンに対する抗体の作成はニワトリII型コラーゲンを牛に免疫して、抗体を乳汁または血清中に得ることができる。このように、II型コラーゲンで免疫される動物は異種由来のII型コラーゲンを接種する。異種由来であれば複数のコラーゲンを混合して混合ワクチンとして注射することが効率的、かつ経済的である。
細菌成分はすべての動物にとって抗原性を持つので、これらをワクチンとして、混合して免疫注射することができる。
【0018】
3.抗原接種方法
動物即ち乳牛および乳山羊、羊、鶏への摂取方法は、いずれの抗原も水溶液ないし懸濁液のままでもよいが、コラーゲンのように蛋白質性の抗原には各種免疫アジュバントと混合して投与することが望ましい。一回の免疫には蛋白乾燥重量10?1000μグラムを0.1?10ml に溶解ないし懸濁し、等容量のフロインドの完全アジュバントおよび不完全アジュバント、TiterMax Gold または Ribi Adjuvant R-730 などを用いて油中水型エマルジョンとして、皮内、皮下、筋肉内1箇所ないし10箇所に分けて、一箇所0.1?10mlを注射する。これを週1回ないし2月に1回行う。
【0019】
内毒素に体する抗体の作成には、0.01%?10%湿重量の一種の死菌液ないし複数の死菌液の混合物の0.1?10 mlを皮下、筋肉内、皮下ないし静脈内に1?4週に1回投与する。内毒素に体する抗体の作成をアジュバントと共に免疫して行うことも可能である。死菌液にフロインドの完全アジュバントおよび不完全アジュバント、TiterMax Gold または Ribi Adjuvant R-730 などを用いて油中水型エマルジョンとして、皮内、皮下、筋肉内1箇所ないし10箇所に分けて注射する。これを週1回ないし2月に1回行う。
【0020】
4.抗体の採取
1)乳汁抗体の採取
搾乳は通常の方法により手または搾乳機を用いて行う。
抗体は72℃を超える加熱で活性を失うため、最終製品まで過剰な加熱を避ける。生乳の殺菌は72℃以下での処理、紫外線照射殺菌または放射線照射殺菌が適当である。乳汁は遠心分離により、脂肪を除き、噴霧乾燥し、スキムミルクとしたもの、脂肪を除いた後、塩酸を加えてpH4.6とし、析出するカゼインをろ過除去し、さらに乳糖、ミネラルなどの低分子成分を限外ろ過により除いてホエーとしたもの、さらに限外ろ過によりラクトアルブミン、ラクトグロブリンをのぞき抗体蛋白を主とする分画などを、低温噴霧乾燥、または凍結乾燥し、抗体含有量0.1%台から約90%含有する粉末状の抗体組成物とすることができる。通常初乳を除く牛生乳1トンから総抗体として10〜100g、平均30gが得られる。また、抗体を含有する、市販のホエー、乳清タンパク濃縮物(WPC)、乳清タンパク分離物(WPI)を用いることもできる。
【0021】
2)血清抗体の採取
免疫動物の血液は抗体含量が高く、原料として優れる。
採取した血液を遠心分離して血清とした後、硫安1/3飽和で沈殿するガンマグロブリン画分をろ過採取し、水に溶解後、脱塩し、低温噴霧乾燥ないし凍結乾燥し粉末とする。通常抗体含有量は70〜90%で、血液1kgから、総抗体約15gが得られる。
【0022】
3)鶏卵抗体の採取
免疫鶏卵の卵黄よりGITキット〔コスモバイオ(株)〕を用いて、一般に鶏卵1kgより純度90%のIgY抗体0.9〜1.5gが得られる。抗体溶液は低温噴霧乾燥ないし凍結乾燥し粉末とする。
【0023】
5.抗体の定量法
抗体の量については、抗体の抗原特異性とは関係なく、総抗体量を測定する方法と、各抗原に対する抗体の量の測定法としてELISA法(Fujii K, et al. J Immunol Methods 1989;124:63-70)による測定方法の両者が用いられる。
【0024】
1)総抗体量の測定
プロテインGカラムは、抗体を効率よく精製するための抗体精製用アフィニテイカラムとして市販されている(アマシャム バイオサイエンス、その他)。抗体を含む溶液を中性付近のpHで通過させると、抗体を100%近く吸着することが出来る。カラムを洗浄後、pHを2.5〜2.8の酸性溶液を流すと、抗体はカラムから遊離し回収される。抗体1%溶液の紫外部波長280nmにおける吸光度は種差に共通で約14であるので、吸光度から抗体の量を求める。
【0025】
2)総IgYの測定
市販の卵黄抗体の吸着カラム(HiTrapIgYPurificationHP,アマシャム バイオサイエンス)を用い、容易に定量することができる。抗体含有液を0.5M硫酸カリウム含有20mMリン酸緩衝溶液pH7.5で吸着させ、同液で洗浄後、20mMリン酸緩衝溶液pH7.5で溶出し、回収したIgY抗体を吸光度より算出する。
【0026】
3)アフィニテイ精製特異抗体のELISA法による測定
コラーゲンおよび細菌内毒素(LPS)をアクテイゲル(ステロジーン)やCNBr活性化(セファロースアマシャム バイオサイエン)に共有結合させ、抗体精製用の抗原アフィニテイカラムとして用いる。精製する抗体溶液をカラムに流し、目的とする抗体のみカラムに吸着させ、カラムに吸着しない免疫グロブリンなどを中性バッファーで洗い出した。カラムに結合した抗体はpH2.8の0.1Mグリシン緩衝液で溶出した。溶出抗体をさらにプロテインGカラムによりかけ、精製した抗体を標準品としてELISA(酵素免疫測定法)により検量線を作成し、定量した。各抗原によるウエルの感作条件、ブロッキング溶液を以下に記載する。
【0027】
・抗コラーゲン抗体のELISA測定:
コラーゲン10μg/mlとなるように0.15Mリン酸カリウム緩衝液pH 7.2に希釈し、その50μlをELISAプレートウエルに入れ、一昼夜4℃でコートした。ブロッキングは56℃、30分過熱したウサギ血清に0.05M トリス、0.15M食塩を加え、pHを7.8に調整した液をブロッキング液として用いる。抗体測定検体の希釈もこのブロッキング液をもちいる。
【0028】
・細菌内毒素に対する抗体のELISA測定:
グラム陰性菌菌体よりトリクロロ酢酸抽出したLPSをpH9.5の0.05M炭酸緩衝液に、それぞれ5μg/mlの濃度でふくむ溶液でELISAプレートウエルをコートする。ブロッキングは牛血清アルブミンを0.1%含有するリン酸緩衝生理食塩液により行う。
【0029】
抗体量は、成書に従って、それぞれペルオキシダーゼ標識した抗ウシ抗体、抗山羊抗体、抗羊抗体、抗IgY抗体を反応させ、OPDを基質として発色させ、吸光度を測定し、抗体の標準品を用いて作成した検量線より総抗体量または特異抗体量を求める。
【0030】
6.抗体含有組成物の作成
グラム陰性菌内毒素に対する抗体を含有する調整物とII型コラーゲンで免疫した抗体含有調整物の単独、または両者を混合して抗体含有組成物とすることができる。必要により、抗体含有調整物以外の食品材料、賦型剤を加えて食品、医薬品とすることもできる。最終製品の総抗体含有量が1%以上であることがのぞましい。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが本発明はそれらに限定されるものではない。実施例中、%は特にことわらない限り、質量%である。
【0032】
[実施例1]
a)ウシのコラーゲンによる免疫
鶏 II 型コラーゲン(コンドレックス社)2mgを0.05M 酢酸1mlに溶解し、2mg/ml のコラーゲン酢酸溶液とした。これと同量の2倍濃度のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)をまぜ2ml とし、この1mlをTiterMax gold 1mlに加え、良く撹拌してエマルションを作成した。 エマルジョン2mlを4頭の妊娠牛頚部皮下に、1mlずつ2箇所に分けて、出産予定の60日前、30日前、出産の30日後、60日後の4回注射して免疫した。
【0033】
b)大腸菌O-111:B4株によるウシの免疫
大腸菌O-111:B4株を普通寒天平板培地で培養増殖させ、1%ホルマリン加生理食塩液を加えてかきとり、80度Cで1時間加熱殺菌した。加熱菌液を洗浄後、濁度を波長660nmで吸光度1.0に調節した。菌液1mlをTiterMax gold 1mlに加え、良く撹拌してエマルションを作成した。この1mlずつを3頭の妊娠牛の皮下に、出産予定の60日前、30日前の2回に、首部皮内に注射した。
【0034】
c)ニワトリII型コラーゲン免疫牛の初乳、大腸菌O-111 :B4株免疫牛の初乳よりホエーの調整
前記a)、b)で免疫された各ウシの出産後3日間の生乳をプールして集めた。その1部8リットルについて、20000g30分遠心して脂肪層を除き脱脂乳を得た。脱脂乳を62.5度で30分加熱殺菌後、塩酸を加えてpH4.6とし、20000g30分遠心分離によりカゼインを除いた後、水酸化ナトリウム溶液を加えてpH7.0とし、凍結乾燥し、それぞれ乾燥物707g、780gを得た。
【0035】
[実施例2]
抗LPSウシ抗体の特異精製
実施例1c)で調整した大腸菌免疫牛ホエーは大腸菌内毒素O-111に対する抗体を0.25%含有した。これをリン酸緩衝整理食塩液50lに1%含有する溶液とし、500mlのO-111固相化アフィニテイカラムにかけ、洗浄、pH2.8溶出、中和後、さらにプロテインGカラムで濃縮精製し、抗原特異抗体580mgを得た。
【0036】
[実施例3]
抗ニワトリII型コラーゲンウシ抗体の特異精製
実施例1c)で調整したニワトリII型コラーゲン免疫牛の初乳より調整したホエーはニワトリII型コラーゲンに対する抗体を0.6%含有した。これをリン酸緩衝整理食塩液30lに1%含有する溶液とし、500mlのO-111固相化アフィニテイカラムにかけ、順次カラムを洗浄、pH2.8溶出、中和後、さらにプロテインGカラムで濃縮精製し、抗原特異抗体930mgを得た。
【0037】
[実施例4]
マウス抗コラーゲン・モノクローナル抗体混合物による関節炎発症モデルにおける抗LPSウシ抗体の関節炎発症阻止効果
マウス関節軟骨コラーゲンに対するモノクローナル抗体(関節炎用カクテル、コンドレックス社)の4 mgを注射投与するとマウスは関節炎を発症し、2日で関節の腫れは最大となる。ところが、関節炎用カクテルの量を減じ、2 mgでは関節炎は全く発症しない。しかし、このマウスに大腸菌LPS(E. coli O-111:B4 Sigma)を経口投与で3 mg/マウス/日で3回投与(関節炎用カクテル投与日を0日として0,1,2日)すると関節炎を発症し、6日で腫れは最高に達した。1群3匹の6週齢BALB/c 雄性マウスを一群3匹とし、関節炎用カクテル群、関節炎用カクテルとLPS経口併用群、関節炎用カクテルとLPS経口さらに抗LPS抗体経口投与の3群を設け、関節炎の腫れを両足容積測定により評価した。抗LPSウシ抗体は実施例2で示した精製特異抗体を3mg/マウス/日宛、LPS投与日に経口摂取させた。結果を表1に示した。
【0038】
【表1】

【0039】
表1に示すとおり、経口LPSの関節炎発症促進効果は特異精製した抗LPS抗体の経口投与により阻止された。
【0040】
[実施例5]
ニワトリII型コラーゲン、LPS長期経口投与によるマウス関節炎発症にたいする抗コラーゲン抗体および抗LPS抗体の阻止効果
ニワトリ II 型コラーゲンにLPS を加えてマウスに経口投与すると II 型コラーゲン単独投与群に比較して抗体産生と関節炎発症が増強される(K. Terato et al. Br. J. Rheum. 35,828-838, 1996)。そこで、それぞれに対する抗体の関節炎発症抑制作用をDBA/1 マウスを用いて検討した。関節炎好発系のDBA/1雄性6週齢マウスを1群6匹とし、コラーゲン(ニワトリII型コラーゲン コンドレックス社)単独群、コラーゲンにLPS(E.coli O-111 :B4 Sigma)を加えた群、および、これらにさらに抗コラーゲン抗体(実施例3)、抗LPS抗体(実施例2)を添加して投与する群を設定し、14週間にわたって2週を1クールとする4クールの経口免疫を行った。経口免疫期間の経口投与は、コラーゲン、LPSの経口吸収を促進するために、対照群1を含むすべての群にインドメタシン40μgグラムを加え、全容積0.4mlを経口投与した。16週の第1日に眼底採血し血清を得た後、一週間関節炎発症を意図して、LPS経口による惹起投与した。各免疫クールの第1日目と、17週の第一日に、関節の腫脹をスコアー化(表2記載文献)して評点した。動物群の構成と処置条件、足蹠容積を表2に示した。投与量はすべてマウスあたりの経口投与である。
【0041】
【表2】

【0042】
表2はコラーゲンおよび、LPSの長期間投与による経口感作によって、それぞれ単独でも関節炎を発症し、両者を加えて投与すると関節炎が強く発症すること。それに対し、抗コラーゲン抗体と抗細菌内毒素抗体(抗LPS抗体)の併用で阻止できることを示した。
【0043】
[実施例6]
抗関節リウマチ治療組成物
ニワトリに市販のウシII型コラーゲン、ブタII型コラーゲンを免疫して得た、総抗体量として50%抗体含有量の鶏卵抗体含有粉末と、ニワトリII型コラーゲンおよび市販大腸菌ワクチン(imocoliv,ゼンノウ)で免疫したウシより得た生乳より総抗体含有量5%のホエー粉末を用意し、これらを1対9の割合で混合し、賦形剤を添加して、約65℃の温度で、定法に準じて総抗体含量0.1%の顆粒を調整した。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗リウマチ作用を有する抗体を有効成分とする関節リウマチ治療剤組成物。
【請求項2】
抗リウマチ作用を有する抗体が抗II型コラーゲン抗体である請求項1に記載の関節リウマチ治療剤組成物。
【請求項3】
抗II型コラーゲン抗体が、抗ニワトリII型コラーゲン抗体、抗ウシII型コラーゲン抗体、抗ブタII型コラーゲン抗体の少なくともいずれかである請求項2に記載の関節リウマチ治療剤組成物。
【請求項4】
抗リウマチ作用を有する抗体が抗細菌内毒素抗体である請求項1に記載の関節リウマチ治療剤組成物。
【請求項5】
抗リウマチ作用を有する抗体が、抗II型コラーゲン抗体と抗細菌内毒素抗体を任意の割合で混合したものである請求項1に記載の関節リウマチ治療剤組成物。
【請求項6】
抗II型コラーゲン抗体および抗細菌内毒素抗体の少なくともいずれかを含有し、総抗体量として0.1質量%以上を含有する請求項1に記載の関節リウマチ治療剤組成物。


【公開番号】特開2006−151914(P2006−151914A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348131(P2004−348131)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年7月 静岡県畜産試験場発行の「静岡県畜産試験場試験研究報告 第30号」に発表
【出願人】(000101215)アサマ化成株式会社 (37)
【出願人】(590002389)静岡県 (173)
【Fターム(参考)】