説明

防刃材

【課題】 従来の技術では、全体としてぶ厚く、重く、通気性や可撓性に劣るため、着装時に違和感や負担感があり、一般生活の中に導入し難いという問題点があった。これは単位となる素材の耐刃性が不十分なため素材を重層して用いる必要があったからである。
【解決手段】 本発明は小平板を布基材に強固に接着した構造材を提供する。小平板の配列に当たって、隣り合う小平板の配置が稠密になるよう相互位置を調整したことが特徴で、突入しようとする刃物が小平板にかならず干渉してその突入を防止する。これにより薄く軽量な防刃素材を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【001】
本発明は防刃性を有する構造材に関する。
【背景技術】
【002】
従来の防刃材は必要な厚みが大である。例えば特許文献1では布厚が9mmに及ぶ例や構成の1部として5mm厚のクッションを最外部・身体側に使用する例を開示している。また、特許文献2では芳香族ポリアミド系繊維を30枚重ねたり、樹脂板や金属板を使用して積層厚さ8mm、全重量1Kgの例が開示されている。
【003】
【特許文献1】特開2005−194677
【特許文献2】特開平10−89898
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【004】
防刃衣は着装時に違和感あるいは負担感が無いよう、軽量で柔軟かつ薄手であることが望ましい。しかし上に述べた従来の技術では全体として厚く、重く、可撓性に劣る防刃衣しか実現できないため、着装時に違和感や負担感があり、運動機能が低下する。また通気性に劣り、気温の高い環境では使用し難い。このような理由で、一般生活の中に導入し難いという問題点があった。
【005】
本発明ではこのような問題点の解決を図るため、薄く、軽量かつ可撓性を備えた防刃構造を実現することを目的とする。
【006】
刃物が織物素材を貫通するメカニズムは、(1)刃物が織物素材を切断あるいは破壊して隙間を作り、その部分を通過するケースと、(2)刃物が織物素材をかきわけて隙間を作り、その隙間を通過するケースとがある。これらを防止すれば、防刃性の材料を実現できる。すなわち、刃の先端が織物素材を突き抜けるのを防止するには上記の(1)、(2)が生起することを防止すればよい。
【課題を解決するための手段】
【007】
それ自体が耐刃性を有する固体は、たとえば金属板に代表されるように可撓性に劣る。そこでこれを小サイズにしたもの(以下、小平板と記述する)をたとえば織物のような柔軟な基材に必要個数だけ取り付けて図1のような構造にすれば、全体として耐刃性を備え、かつ可撓性ある構造材が実現できる。このとき、刃物の刺突時にその相互の間隔が広がらないように基材に強固に接着し、かつ基材が刃物が小平板を広げようとする力で破断しない強度を備えていれば、上記(1)のメカニズムの生起を防止して、構造材全体が耐刃性を有することになる。
しかし小平板の配置方法によっては、刺突時の刃の向きによってはその隙間を容易に突き抜けて上記(2)のメカニズムが生起し、防刃の効果が制限される。
【008】
本発明は小平板の配列にあたって、相互の位置を調整して、配列した小平板の間隔を稠密にした。これにより小平板の配列体上に引いた任意の直線が必ず多数の小平板と交わることになる。その結果、刃物が、たとえばナイフや包丁、日本刀のようにほぼ平板形状である場合には、その刺突位置や角度に関係なく、刺突する刃が小平板と干渉して侵入が阻止され、構造材の裏面に突き出す長さが軽減される。
【009】
なお、布基材として、金属素材の繊維を使用した織物あるいは金網と第2の織物とを交互に接着して積層した構造材を使用すれば、この構造材によって千枚通しやアイスピックなど先端が針状になったものへの刺突への耐刃性能が向上し、針状物体と刃物の双方への耐刃性能を備えた構造材が実現する。
【010】
刺突時に小平板と布基材とを強固に接着する必要がある。該接着剤は刃物が小平板に加える横ずれ力を布基材に伝える。すなわち、刃物が貫通しようとするときに刃物が小平板を押しのける力を布基材に伝達し、該布基材の抗張力によって小平板の横ずれを防止する。
【発明の効果】
【011】
布基材は抗張力に優れたものを選定する。さらに、該布基材として軽量かつ通気性・吸湿性に優れたものを選定すれば、軽量、柔軟、薄手で、かつ通気性や吸湿性に優れた防刃衣を実現できる。
【012】
なおこの構造材を重ねて用いれば、より強靭な防刃衣を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【013】
接着剤としては、小平板と布基材を接着とを接着するのに適し、かつ引っ張り強度に優れ、柔軟性があるものが望ましい。伸びの大きな接着剤は刺突時に小平板押し広げへの抗力が少ないので好ましくない。また伸びの極端に少ない、例えば澱粉系や膠などの蛋白系、あるいはシアノアクリレート系などの接着剤は接着後の柔軟性がなく、折損するので好ましくない。接着剤の使用初期形態としてフィルム状あるいは粉の熱可塑性樹脂、1液形あるいは2液形の液状接着剤が、その素材としては金属と繊維とに接着力を有する、たとえばナイロン系、ウレタン系、混合系などが使用できる。
【014】
小平板の素材としては軽量かつ刃物による切断が困難なものが好ましい。厚さ0.5mm以上のアルミあるいは厚さ0.3mm以上の鉄板を小平板として用いれば、刺突と切断に耐えられる防刃材が実現できる。樹脂は軽量であるが厚みが必要であり、構造材全体の厚みが増大する。
【015】
小平板の形状は図2に示す円形だけでなく、3角形、5角形あるいは図3のような8角形などの多角形でもよい。また、小平板に穴を開ければ通気性と全体の軽量化を図ることができる。
【実施例】
【016】
小平板として外径10mm、穴径4mm、厚さ0.8mmのアルミ平ワッシャをウレタン接着剤あるいは熱可塑性接着フィルムでナイロン織物に接着した図1のような構造材を作成し、カッターナイフや切り出しナイフで刺突試験したところ、裏面への刃物の突出が見られず、すぐれた耐刃性を示した。また、小平板として外径10mm、穴径3mm、厚さ0.8mmの鉄平ワッシャを用いて上記と同様の構造材を構成したところ、さらに高い耐刃性が得られた。
【産業上の利用可能性】
【017】
この防刃材は軽量で薄く、柔軟性に優れているので、これを通常の着衣に組み込んでも違和感がない。さらに、着装しても外観的に目立たないことから、警備業務のみならず日常業務にも使用できる防刃素材である。
【図面の簡単な説明】
【018】
【図1】 本発明の構造材の構成を示す断面図
【図2】 小平板として円板を稠密配置した場合の小平板の配列例
【図3】 小平板として8角形板を稠密配置した場合の小平板の配列例
【符号の説明】
【019】
1 ・・・ 布基材
2 ・・・ 接着剤
3 ・・・ 小平板の配列
31・・・ 小平板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布基材に複数の平板を接着した構造体であって、該平板の配列関係を調整して、該構造体上で任意に引いた直線が複数の該平板と必ず交わるよう配置したことを特徴とする構造材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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