説明

防塵衣用発塵防止装置

【課題】 従来、無塵衣用発塵防止装置において、吸引ベルトおよび小型吸引ボックスが別個に設けられ、作業中作業者に違和感があり、その上、それぞれが構造が複雑で、素材も製造上コストが係るという問題があった。
【構成】 通気性化繊織布によって、上衣および下衣が一体に縫製された超特殊環境用無塵衣内側の腰部に、設置する頭部、腹部および足部の空気を吸引する減圧ベルトおよび小型吸引ボックスからなる防塵用発塵防止装置において、減圧ベルトは、上部および下部にそれぞれ複数の吸気孔を有し、表部に小型吸引ボックスと接続する固定環を有し、その形状は、ベルトの長手方向に中空の波型帯状に成形され、ベルト上下の空気を相互に流通せしめる構造からなり、小型吸引ボックスは波形のメカニカル防塵フィルター、吸引ファン、バッテリおよび減圧ベルトと接続する固定環からなり排出口は下側に設けられ、該無塵衣内部に設けられ減圧ベルト固定環に直接、気密に接続することを特徴とする無塵衣用発塵防止装置。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、高清浄度クリーンルームでの着用に適する高機能防塵衣に用いる吸引ベルトおよび小型吸引ボックスからなる無塵衣用発塵防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、半導体産業における集積回路の集積度の増大など、クリーンルームを使用する産業分野の進展に伴って、さらに高い清浄度のクリーンルームに適用可能な清浄度クラス1および0.01に対応する防塵衣システムの構築は不可欠なこととなっている。
【0003】
従来、防塵衣の内部を無塵にするには、防塵衣内側の空気を吸引ポンプで防塵衣の外側に排出する試みが行われている。その試みはそれなりの防塵効果はあるが、防塵内部に装着する吸引部分の構造が複雑で大きいため着用者にとって違和感が大きく快適性に欠け且つ着脱が繁雑であるなどの問題点により量的実用化に結び付いていないのが実体である。
【0004】
一方、排気装置付きフードを装着した防塵衣を着るという方法も一部で採用されているが、この方法は吸引が頭部と顔面のみで、主な微粒子発生源である身体部に及ばないため微粒子汚染減少効果に乏しい。
また、防塵衣を着た作業者が運動すると、防塵衣内部の気圧はクリーンルームの気圧に対して陰圧ないし陽圧の変動を交互に繰返し、陽圧になったときに微粒子を含有する衣服内空気の漏洩と透過が起きる。衣服内圧力を外部に対して常に陰圧に保てば微粒子汚染を防ぐことができる。
【0005】
このような視点から、空気孔を排列した長いパイプを防塵衣内部各所に配置したものがあるが、これも吸引管と排出装置を別個に設けており、その接続にゴム管を使用し、作業者に違和感、不快感を与える。
【0006】
この吸引管の改良として、防塵衣内の空気を吸引する複数の経路とそれを排出する単独の経路とを組込んだ幅広のベルト状支持体であって、この支持体中の管内部を空気が容易に流通できるような厚みを有する立体的繊維編み物で構成したベルト状の支持体が使用された。しかし、これは製造に手間が掛り、そのためコストが高く製造上問題があった。
【0007】
【考案が解決しようとする課題】
本考案者らは上記の課題を改良するものとしてその吸引管および排出装置を種々検討した結果、吸引ベルトおよび排出装置の素材、構造を改良し、その上吸引ベルトと排出装置を直接連結することによって解決した。
本考案の目的は、吸引ベルトおよび排出装置の素材および構造を改良し、その上、吸引ベルトと排出装置を直接連結することによって製造も容易で装着も簡単な上、集塵能力も向上した防塵装置を提供するにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本考案は、通気性化繊織布によって、上衣および下衣が一体に縫製された超特殊環境用無塵衣内側の腰部に、設置する頭部、腹部および足部の空気を吸引する減圧ベルトおよび小型吸引ボックスからなる防塵衣用発塵防止装置において、減圧ベルトは、上部および下部にそれぞれ複数の吸気孔を有し、表面に小型吸引ボックスと接続する固定環を有し、その形状は、ベルトの長手方向に中空の波型帯状に成形され、ベルト上下の空気を相互に流通せしめる構造からなり、小型吸引ボックスは、波型のメカニカル防塵フィルター、吸引ファン、バッテリーおよび減圧ベルトと接続する固定環からなり、排出口は下側に設けられ、該無塵衣内部に設けられた減圧ベルト固定環に直接、気密に接続することを特徴とする無塵衣用発塵防止装置、
【0009】
減圧ベルトは上部および下部にそれぞれ複数の吸気孔を有し、表面に小型吸引ボックスと接続する固定環を有し、その形状は、ベルトの長手方向に中空の波型帯状に成形され、ベルト上下の空気を相互に流通せしめる構造からなることを特徴とする減圧ベルト、
【0010】
小型吸引ボックスは波型のメカニカル防塵フィルター、吸引ファン、バッテリおよび減圧ベルトと接続する固定環からなり、空気の排出口は下側に設けられたことを特徴とする小型吸引ボックス、
【0011】
波型のメカニカル防塵フィルターを一枚有する小型吸引ボックスは、減圧ベルトの接続する固定環およびメカニカル防塵フィルターの内部に吸引ファンを固定し、該フィルターの外側に下側に設置した排出口を設けたことを特徴とする小型吸引ボックス、
【0012】
および波型のメカニカル防塵フィルターを二枚有する小型吸引ボックスは、減圧ベルトの接続する固定環の内部に吸引ファンを固定し、該小型吸引ボックスの内部に一枚のメカニカル防塵フィルター、一個の下側に設けた排出口をセットにした器具を二個設置したことを特徴とする小型吸引ボックスである。
【0013】
本考案を図面に基づいて説明する。図1は、本考案の通気性化繊織布によって、上衣および下衣が一体に縫製された超特殊環境用無塵衣内側の腰部に設置する頭部、腹部および足部の空気を吸引する減圧ベルト2および小型吸引ボックス3からなる防塵衣用発塵防止装置1である。即ち、図1は、本考案の吸引ベルト2と小型吸引ボックス3が固定環で固定された無塵衣発塵防止装置1の斜視図である。
【0014】
作業者は普通の下着の上に、減圧ベルト2をする。そして、超特殊環境用無塵衣を着用し、ベルトの真中に設けた口を開け、減圧ベルト2の表面の真中にある固定環と小型吸引ボックスの固定環を接続する。そして、小型吸引ボックス3の吸引ファンを作動する。吸引ベルト2の上部および下部に設けられた吸引口から作業者の頭部、腹部および足部の空気を吸い込む。そして、小型吸引ボックスの中の防塵フィルターによって塵は除去され、清浄度の高い空気は、クリーンルームに排出される。
【0015】
図2は本考案の吸引ベルト2の斜視図である。吸引ベルト2の表面の真中には小型吸引ボックス3の固定環5と連結する固定環4がある。この両者の固定環4、5で吸引ベルト2と小型吸引ボックス3が強固に気密に接続する。吸引ベルトの上部および下部にはそれぞれ複数の吸気口6が設けられている。この吸気口6は無塵衣の内部の空気を吸入する口である。この吸気口の設置する数は複数設けるとよい。図2は、上部および下部に計12個設けている。
【0016】
吸引ベルト2の形状は、ベルトの長手方向に中空の波型帯状7に成形され、ベルト上部および下部の空気を相互に流通せしめる構造からなる。ベルトが波型に成形されているので、頭部、腹部および足部の空気が均等に吸引されるため、防塵衣から発生する微細塵の放散や捕捉がむらなく確実に行われ、その上、体の腰部に確実にフィットする。
【0017】
吸引ベルト2の表面の真中に設けられた固定環4と小型ボックス3に設けられた固定環5と接続される。固定環の接続は気密性を保つため、Oーリング、爪によるロック方式で確実に接続される。
吸引ベルト2の上部および下部に設けられた吸気口6から吸入した空気は中空になっている波型の帯状に形成された内部を通じて吸引ベルト2の固定環4を通る。
吸引ベルトのベルト部への装着はベルトの両端に通常のファスナー接着が設けられ、装着できる。
この吸引ベルトは合成樹脂でできており、射出成形等で簡単、安価に製造できる。
【0018】
つぎに、小型吸引ボックス3について説明する。図3は、メカニカル防塵フィルター8が1枚使用の場合の小型吸引ボックス3の一部横断面平面図である。図4は、1枚使用の場合のメカニカル防塵フィルター8の平面図である。 5は吸引孔を有する固定環5である。8は波型メカニカル防塵フィルターである。9は吸引ファンであり、10は排出口であり下方に設けれる。
【0019】
吸引ベルトの固定環4と直接接続された小型吸引ボックスの固定環5から吸引ファン9により吸引された空気は先ずメカニカル防塵フィルター8の内部からフィルターを通って外側に排出され、その際、塵は除去される。そして、その無塵空気は、下側に設けられた排出口10から下方に排出される。
【0020】
図4は、図3に用いられる1枚使用のメカニカル防塵フィルターの平面図である。フィルターの外側の形状は楕円形であり、内側の形状は矩形である。外側と内側には波状の袋状になっており、表面積が大となっており、塵を集塵する面積が大きく、集塵能力は強力となる。
【0021】
図5は、メカニカル防塵フィルター2枚使用の場合の小型ボックスの一部横断面断面図である。5は吸引孔を有する固定環である。8はメカニカル防塵フィルターであり、9は吸引するファンであり、10は排出口である。
吸引ベルト2の固定環4と直接接続された小型吸引ボックス3の固定環5から吸引ファン9により吸引された空気は先ずボックスの内部に吸入され、メカニカル防塵フィルター8の外側からメカニカルフィルター8の内部を通って、外側には下側に設けた排出口10を通して排出され、その際、塵は除去される。この場合は、メカニカル防塵フィルターと排出口の装置は二セット設置してある。この場合の一セットの形状は箱型である。メカニカル防塵フィルターは同じく波型状の袋状になっており、同じく表面積が大きくなっている。
【0022】
【考案の効果】
本考案の効果は、吸引ベルトおよび排出装置の素材および構造を改良し、その上、吸引ベルトと排出装置を直接連結することによって製造も容易で装着も簡単な上、集塵能力も向上した防塵装置を提供した。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の防塵衣用発塵防止装置の斜視図である。
【図2】本考案の吸引ベルトの斜視図である。
【図3】本考案のメカニカル防塵フィルター一枚使用の小型吸引ボックスの一部横断面平面図である。
【図4】本考案の小型吸引ボックスの一枚使用のメカニカル防塵フィルターの平面図である。
【図5】本考案のメカニカル防塵フィルター二枚使用の小型吸引ボックスの一部横断面平面図である。
【符号の説明】
1 防塵衣用発塵防止装置
2 吸引ベルト
3 小型吸引ボックス
4 吸引ベルトの固定環
5 小型吸引ボックスの固定環
6 吸引ベルトの吸気口
7 吸引ベルトの波型形状
8 メカニカル防塵フィルター
9 吸引ファン
10 小型ボックスの排気口

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 通気性化繊織布によって、上衣および下衣が一体に縫製された超特殊環境用無塵衣内側の腰部に設置する頭部、腹部および足部の空気を吸引する減圧ベルトおよび小型吸引ボックスからなる防塵衣用発塵防止装置において、減圧ベルトは、上部および下部にそれぞれ複数の吸気孔を有し、表面に小型吸引ボックスと接続する固定環を有し、その形状は、ベルトの長手方向に中空の波型帯状に成形され、ベルト上下の空気を相互に流通せしめる構造からなり、小型吸引ボックスは、波型のメカニカル防塵フィルター、吸引ファン、バッテリーおよび減圧ベルトと接続する固定環からなり排出口は下側に設けられ、該無塵衣内部に設けられた減圧ベルト固定環に直接、気密に接続することを特徴とする無塵衣用発塵防止装置。
【請求項2】 請求項1の減圧ベルトは上部および下部にそれぞれ複数の吸気孔を有し、表面に小型吸引ボックスと接続する固定環を有し、その形状は、ベルトの長手方向に中空の波型帯状に成形され、ベルト上下の空気を相互に流通せしめる構造からなることを特徴とする減圧ベルト。
【請求項3】 請求項1の小型吸引ボックスは波型のメカニカル防塵フィルター、吸引ファン、バッテリおよび減圧ベルトと接続する固定環からなり空気の排出口は下側に設けられたことを特徴とする小型吸引ボックス。
【請求項4】 請求項3の波型のメカニカル防塵フィルターを一枚有する小型吸引ボックスは、減圧ベルトの接続する固定環およびメカニカル防塵フィルターの内部に吸引ファンを固定し、該フィルターの外側に下側に設置した排出口を設けたことを特徴とする小型吸引ボックス。
【請求項5】 請求項3の波型のメカニカル防塵フィルターを二枚有する小型吸引ボックスは、減圧ベルトの接続する固定環の内部に吸引ファンを固定し、該小型吸引ボックスの内部に一枚のメカニカル防塵フィルター、一個の下側に設けた排出口をセットにした器具を二個設置したことを特徴とする小型吸引ボックス。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【登録番号】第3040172号
【登録日】平成9年(1997)5月28日
【発行日】平成9年(1997)8月15日
【考案の名称】防塵衣用発塵防止装置
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平8−12719
【出願日】平成8年(1996)11月29日
【出願人】(390036881)三光化学工業株式会社 (7)
【出願人】(594142975)東洋リントフリー株式会社 (6)
【出願人】(591008823)株式会社カナエ (14)